説明

配管内作業装置および方法

【課題】配管内における走行駆動力が非常に大きい「配管内作業装置および方法」を提供する。また、「濡れた配管内面を強制乾燥させる手段」を備えた「配管内作業装置および方法」を提供する。
【解決手段】配管の内壁にその自由端部分が接触する環状の圧力境界シールを備え;該シールは、配管の内部の空間を、該シールを境界として、空間Aと空間Bの二つの空間に分割しており;空間Aの該シールに近接した一方の端部は、ホースを介して吸引ポンプに連通されており;且つ、空間Aの該シールから離れた他方の端部は、空間Aの内部の負の圧力を調整する真空破壊弁を介して配管を包囲する流体に連通されており;空間Bには、ホースが配置されており;且つ、空間Bの該シールから離れた端部は、配管を包囲する流体に連通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給水用配管や排水用配管あるいはガス配管などの各種配管の内面に付着した錆や水棲生物などの異物を除去し、これらを除去した後に、例えば塗料や耐蝕合金などの被覆材料のコーティングを行うなど、配管内で走行しながら配管の保守作業を行う配管内作業装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の公知技術としては、特許公開2003−225626号公報に記載の「配管内作業方法および装置」が知られている。
【特許文献1】特許公開2003−225626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したに特許公開2003−225626号公報開示された「配管内作業方法および装置」においては次の通りの解決すべき問題が存在する。
すなわち、かかる「配管内作業方法および装置」においては、
配管内において作業用装置を走行させるために、該配管の外部に巻上げ装置を配置し、該巻上げ装置に巻き取られる策状体の端部に作業用装置を連結し、該策状体を該巻上げ装置によって巻上げて該作業用装置を配管の軸方向に沿って牽引し、而して該作業用装置を該配管内において走行させるものであった。
しかしながら、かかる「配管内作業方法および装置」においては、開口した該配管の一方の開口部から他方の開口部側に索状体を挿通する工程が必須であるため、該配管の長さが長い場合、あるいは該配管の途中に曲管部が有る場合においては、該索状体を挿通する工程が煩雑である。
また、かかる「配管内作業方法および装置」においては、ジェット噴射機構部により該配管内面に付着した異物を剥離する洗浄作業が行われ、次に、該剥離した異物を吸引回収する作業が行われ、次に、該配管内面をコーティング材料にて被覆することにより補修する作業が行われるものであるが、該洗浄作業工程と該補修作業工程との間に必要不可欠な「濡れた配管内面を強制乾燥させる工程」が記載されていない。
配管内面をコーティング材料にて良好に被覆するためには、「濡れた配管内面を強制乾燥させる工程」が必須であるが、濡れた配管内面を乾燥させる手段が「自然乾燥」であれば該濡れた配管内面を「自然乾燥」させるために多くの時間を要し、かつ多くの時間を要するほど洗浄作業により得られた折角の鉄の地肌を再び錆させることになる。
さらに、塗装された配管内面を「自然乾燥」させるために多くの時間を要する。
従って、本発明の技術的解決課題は次のとおりである。
すなわち、本発明においては、配管内において作業用装置を走行させるための走行駆動手段として、巻上げ装置を利用する必要が無く、すなわち走行駆動力が非常に大きい「配管内作業装置および方法」を提供するものである。
また、本発明においては、「濡れた配管内面を強制乾燥させる手段」を備えた「配管内作業装置および方法」を提供するものである。
また、本発明においては、「塗装された配管内面を強制乾燥させる手段」を備えた「配管内作業装置および方法」を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の技術的解決課題を達成するために、請求項1に係る発明においては、
配管の内部を走行しながら作業を行う配管内作業装置において;
該配管の内壁にその自由端部分が接触する環状の圧力境界シールを備え;
該圧力境界シールは、該配管の内部の空間を、該圧力境界シールを境界として、空間Aと空間Bの二つの空間に分割しており;
該空間Aの該圧力境界シールに近接した一方の端部は、ホースを介して吸引ポンプに連通されており;
且つ、該空間Aの該圧力境界シールから離れた他方の端部は、該空間Aの内部の負の圧力を調整する真空破壊弁を介して該配管を包囲する流体に連通されており;
該空間Bには、該ホースが配置されており;
且つ、該空間Bの該圧力境界シールから離れた端部は、該配管を包囲する流体に連通されている;
ことを特徴とする配管内作業装置が提供される。
【0005】
請求項2に係る発明においては、
該圧力境界シールは、該配管の軸線が在る面で切断した断面形状において、装置に装着された固定部と、該固定部を起点として該空間Aから離れる方向かつ該配管の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触する自由端部から少なくとも構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の配管内作業装置が提供される。
【0006】
請求項3に係る発明においては、
該圧力境界シールは、該配管の軸線が在る面で切断した断面形状において、装置に装着された2箇所の固定部と、該2箇所の固定部のそれぞれから該配管の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触し且つ該それぞれから延びた部分が合体している円弧状の自由端部から少なくとも構成されており、該圧力境界シールの内側の空間と空間Bとを連通させる弁を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の配管内作業装置が提供される。
【0007】
請求項4に係る発明においては、
該配管に曲管部があっても、該圧力境界シールの軸線が該配管の軸線の近傍に在るように成すため、該圧力境界シールは球面軸受を介して装置に装着されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の配管内作業装置が提供される。
【0008】
請求項5に係る発明においては、
該配管の内壁を清掃するために、水や研掃材などの清掃材料を衝突させる手段を備えた、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の配管内作業装置が提供される。
【0009】
請求項6に係る発明においては、
配管の内部を走行しながら作業を行う配管内作業装置において;
該配管の内壁にその自由端部分が接触する環状の圧力境界シールを備え;
該圧力境界シールは、該配管の内部の空間を、該圧力境界シールを境界として、空間Aと空間Bの二つの空間に分割しており;
該空間Aの該圧力境界シールに近接した一方の端部は、ホースを介して吐出ポンプに連通されており;
且つ、該空間Aの該圧力境界シールから離れた他方の端部は、該空間Aの内部の正の圧力を調整する圧力逃がし弁を介して該配管を包囲する流体に連通されており;
該空間Bには、該ホースが配置されており;
且つ、該空間Bの該圧力境界シールから離れた端部は、該配管を包囲する流体に連通されている;
ことを特徴とする配管内作業装置が提供される。
なお、空気を吐出する吐出ポンプの特性として、該ポンプは空気を圧縮する機能を保有しており、該空気の圧縮時に熱が発生するので、該ポンプから吐出される空気は熱風である。而して、空間Aには熱風が送気される。
【0010】
請求項7に係る発明においては、
該圧力境界シールは、該配管の軸線が在る面で切断した断面形状において、装置に装着された固定部と、該固定部を起点として該空間Bから離れる方向かつ該配管の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触する自由端部から少なくとも構成されている、ことを特徴とする請求項6に記載の配管内作業装置が提供される。
【0011】
請求項8に係る発明においては、
該圧力境界シールは、該配管の軸線が在る面で切断した断面形状において、装置に装着された2箇所の固定部と、該2箇所の固定部のそれぞれから該配管の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触し且つ該それぞれから延びた部分が合体している円弧状の自由端部から少なくとも構成されており、該圧力境界シールの内側の空間と空間Aとを連通させる弁を備えている、ことを特徴とする請求項6に記載の配管内作業装置が提供される。
【0012】
請求項9に係る発明においては、
該配管に曲管部があっても、該圧力境界シールの軸線が該配管の軸線の近傍に在るように成すため、該圧力境界シールは球面軸受を介して装置に装着されている、ことを特徴とする請求項6乃至請求項8に記載の配管内作業装置が提供される。
【0013】
請求項10に係る発明においては、
該配管の内壁に被覆を施すために、塗料や耐蝕合金などの被覆材料をコーティングする手段を備えた、ことを特徴とする請求項6乃至請求項9に記載の配管内作業装置が提供される。
【0014】
請求項11に係る発明においては、
水や研掃材などの清掃材料を衝突させる手段を備えた請求項1乃至請求項5に記載の配管内作業装置を、空間Bから空間Aに向かう方向に走行させて実施する該配管の内壁を清掃する第1の工程と、
塗料や耐蝕合金などの被覆材料をコーティングする手段を備えた請求項6乃至請求項10に記載の配管内作業装置を、空間Aから空間Bへ向かう方向に走行させて実施する該配管の内壁に被覆を施す第2の工程とを備える、ことを特徴とする配管内作業方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明は下記の効果をもたらすものである。
すなわち、
配管内において作業用装置を走行させるための走行駆動手段として、巻上げ装置を利用する必要が無く、すなわち走行駆動力が非常に大きい「配管内作業装置および方法」が提供される。
また、本発明においては、「濡れた配管内面を強制乾燥させる手段」を備えた「配管内作業装置および方法」が提供される。
また、本発明においては、「塗装された配管内面を強制乾燥させる手段」を備えた「配管内作業装置および方法」が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に従って構成された装置の好適実施例について、添付図を参照して更に詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明に従って構成された「配管内作業装置」の第1の好適実施例の装置において、装置本体および該装置本体に付帯する装置類の構成を示す全体図;
図2は、図1に示す装置本体の拡大断面図;
図3は、図2に示す装置本体の上面図;
図4は、図2に示す装置本体におけるA−A矢視の側面図;
図5は、図2に示す装置本体におけるB−B矢視の側面図;
図6は、図2に示す装置本体におけるC−C矢視の側面図;
図7は、図2に示す装置本体におけるD−D矢視の側面図;
図8は、図1に示す真空破壊弁の拡大断面図;
図9は、図2に示す装置本体における圧力境界シール部の拡大断面図;
図10は、図2に示す装置本体の曲管部における態様を示す断面図である。
【0018】
図1において、
本発明に従って構成された「配管1内作業装置」の第1の好適実施例の装置は;
配管1の内部に配置された装置本体2と;
上流側の端部が装置本体2に連結され、下流側の端部が固体・流体分離装置4の上流側入口に連結されたホース5と;
上流側の入口が固体・流体分離装置4の下流側出口に連結され、下流側の出口が配管1を包囲している空間に開放された、容積型ポンプの一種であるルーツ式真空ポンプ3と;
配管1の2箇所の端部において、ホースが配置されていない側の端部に接続された真空破壊弁6;
により構成されている。
なお、配管1の2箇所の端部において、ホース5が配置されている側の端部は配管1を包囲している空間に開放されている。
【0019】
図2乃至図10において、装置本体2の構成について述べると;
装置本体2は;
配管1の内部の軸線方向に配置された第1筒状体21において、第1筒状体21の内部には軸線方向に延びる円筒状の空洞があり、該空洞には減速機付きエアモータ31が固定され、且つ減速機付きエアモータ31の出力軸に連結された主回転軸32が2個のベアリング33により保持され、第1筒状体21の中央部の外周部には非揺動車輪ユニット38の4個のロッド非回転式シリンダ39が固定され、第1筒状体21の外周部の右側の端部には高圧チューブ継手42が装着され、以上のように構成された第1筒状体21と;
第1筒状体21の左側の外周部に配置され、一方の端部が第1筒状体21と第1球面軸受211を介して連結され、他方の端部はその口径が拡大されてフランジ状を成し、端部と端部の間の円周部に複数の穴が設けられた第2筒状体22と;
一方の端部が第2筒状体22のフランジ部とフランジ連結された第3筒状体23と;
第3筒状体23の外周部に配置され、一方の端部が第3筒状体23と第2球面軸受231を介して連結され、他方の端部がフランジ状を成す第4筒状体24と;
一方の端部が第4筒状体24のフランジ部とフランジ連結され、他方の端部はその口径が縮小されて円筒状を成す第5筒状体25と;
一方の端部が第5筒状体25と第3球面軸受251を介して連結されたホース継手26と;
ホース継手26に連結されたホース5と;
第2筒状体22のフランジ部と第3筒状体23のフランジ部により挟みこまれて固定され、該固定部201を起点としてホース5が延伸する方向かつ配管1の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触する自由端部202を備える、ポリウレタンなどの柔軟材料から形成された圧力境界シール20と;
第1筒状体21の中央部の外周部に固定された非揺動車輪ユニット38と;
主回転軸32の右側の端部に高圧チューブ継手42が装着されており、回転している高圧チューブ継手42と回転していない第1筒状体21の高圧チューブ継手42との間において、すなわち回転体と非回転体の間においても常に流体の流路を確保可能なロータリージョイント機構34が組み込まれた主回転軸32と;
主回転軸32に連結されたユニバーサルジョイント35と;
ユニバーサルジョイント35に連結され、外周部には揺動車輪ユニット37の4個のロッド非回転式シリンダ39が固定され、且つ右側の端部には清掃材料を噴射するノズル44と高圧チューブ継手42を備えた従動回転軸36と;
配管1の内壁を清掃するために、水や研掃材などの清掃材料を噴射するノズル44と;
従動回転軸36の外周部に固定された揺動車輪ユニット37と;
主回転軸32の高圧チューブ継手42と従動回転軸36の高圧チューブ継手42とを連結する高圧チューブ43と;
第5筒状体25の外周部に配置された3個の従動車輪41から成るガイド車輪ユニット8と;
ホース5の外周部に配置された3個の従動車輪41から成る多数個のホース用ガイド車輪ユニット9;
から構成されている。
なお圧力境界シール20は、配管1の内部の空間を、該シール20を境界として、空間A:A0と空間B:B0の二つの空間に分割しており、真空破壊弁6に連通された空間を空間Aと呼称し、ホース5が配置された空間を空間Bと呼称する。
【0020】
図2乃至図4において、揺動車輪ユニット37の構成について述べると;
揺動車輪ユニット37は;
従動回転軸36の外周部に放射状に配置されて固定された4個のロッド非回転式シリンダ39と;
該4個のロッド非回転式シリンダ39の各々のピストンロッドの先端部に装着された各々2個、合計4式すなわち合計8個の従動車輪41;
から構成されており;
該各々2個の従動車輪41の軸線は、配管1の軸線と平行では無く、やや傾いた状態で配置されている。
4個のロッド非回転式シリンダ39は、4式の従動車輪41を配管1の内壁に強く押し付ける機能を有しているが、各々のロッド非回転式シリンダ39は、その機能を達成するために、各々のシリンダケースの内部に圧縮コイルバネが配置されても良いし、あるいはロッド非回転式シリンダ39をロッド非回転式エアシリンダとし、ロータリジョイント(図示せず)を介して外部から圧縮空気が供給されても良い。
【0021】
図2乃至図3及び図5において、非揺動車輪ユニット38の構成について述べると;
非揺動車輪ユニット38は;
第1筒状体21の中央部の外周部に放射状に配置されて固定された4個のロッド非回転式シリンダ39と;
該4個のロッド非回転式シリンダ39の各々のピストンロッドの先端部に装着された各々2個、合計4式すなわち合計8個の従動車輪41;
から構成されており;
該各々2個の従動車輪41の軸線は、配管1の軸線と直交した状態で配置されている。
4個のロッド非回転式シリンダ39は、4式の従動車輪41を配管1の内壁に強く押し付ける機能を有しているが、各々のロッド非回転式シリンダ39は、その機能を達成するために、各々のシリンダケースの内部に圧縮コイルバネが配置されても良いし、あるいはロッド非回転式シリンダ39をロッド非回転式エアシリンダとし外部から圧縮空気が供給されても良い。
【0022】
図8において、公知の真空破壊弁6の構成について述べると;
真空破壊弁6は、上流側の弁穴61と下流側のホース継手62を備えた弁ケース63と、弁ケース63の内部に配置された弁板64と、弁板64に固定された摺動自在な弁ロッド65と、弁板64を弁穴に強く押し当てるための圧縮コイルバネ66、から構成されている。
【0023】
以上のように構成された「配管内作業装置」の第1の好適実施例の装置の作用について、図1乃至図10を参照して説明する。
吸引風量が十分にあるルーツ式真空ポンプ3が作動すると、
配管1の内部の空間A:A0に在る大気は下流側の方向、すなわちルーツ式真空ポンプ3の方向に吸引され、空間A:A0は真空破壊弁6の設定圧力(仮に−200mmHgとする)まで減圧される。
空間A:A0の減圧に伴い、空間B:B0に在る大気は、図9において、配管1の内壁と圧力境界シール20との間の隙間を通って空間A:A0へ流入する。
図中の黒矢印は空気が流れる方向を示している。
端部が開放されている空間B:B0の圧力は大気圧に近い圧力であるのに対して、空間A:A0の圧力は−200mmHgであるので、圧力境界シール20の自由端部202は、空間A:A0と空間B:B0との圧力差に起因して、配管1の内壁へ強く押し付けられ、而して、配管1の内壁と圧力境界シール20との間の隙間はさらに僅かなものになる。
配管1の内壁と圧力境界シール20との間の隙間について、実際の配管1の内壁には錆などにより腐食された凹凸があり、圧力境界シール20の表面にも細かい傷が有るので、これ等の凹凸や傷に起因する僅かな隙間を通って、空間B:B0から空間A:A0へ高速の空気流が流入するものである。
図8の真空破壊弁6において、空間A:A0の圧力が−200mmHg以下になると、大気の圧力が圧縮コイルバネ66の力に打ち勝って弁板64を押し開くので大気が真空破壊弁6の内部へ流入し、而して空間A:A0の圧力は−200mmHgに維持される。
なお、空間A:A0と空間B:B0の圧力差(200mmHg)に起因して、装置本体2は空間B:B0から空間A:A0の方向へ作用する強い力を受けている。
【0024】
図2乃至図5において、減速機付きエアモータ31の出力軸が、図2において左から右を見た状態において、時計方向へ回転駆動されると、主回転軸32、ユニバーサルジョイント35、従動回転軸36及び揺動車輪ユニット37は時計方向へ回転駆動され、揺動車輪ユニット37に装着された従動車輪41は回転する。
この時、従動車輪41の軸線が、配管1の外周部の方向から見て反時計方向に僅かに傾いていることに起因して、揺動車輪ユニット37には配管1の軸線に沿って左から右へ向かう走行駆動力が発生する。
この時、非揺動車輪ユニット38には反時計方向へ回転させようとする反作用が作用するが、非揺動車輪ユニット38に装着された従動車輪41の軸線は配管1の軸線と直交する面上に在るので、従動車輪41は回転せず、而して非揺動車輪ユニット38の反時計方向へ回転は阻止される。
すなわち、図2において左から右を見た状態において、減速機付きエアモータ31が時計方向へ回転駆動されると、装置本体2は白矢印方向へ走行する。
この時の装置本体2の白矢印方向へ向かう走行駆動力は、揺動車輪ユニット37の走行駆動力に加えて、空間A:A0と空間B:B0の圧力差(200mmHg)に起因して装置本体2を白矢印方向へ押す力が加算されるので、合計された走行駆動力は非常に大きいものとなる。
【0025】
第1筒状体21に装着された高圧チューブ継手42に、例えば高圧水が供給されると、該高圧水は、ロータリージョイント機構34、主回転軸32に装着された高圧チューブ継手42、高圧チューブ43、従動回転軸36に装着された高圧チューブ継手42を経由して移送され、ノズル44から配管1の内壁に向け勢いよく噴射され、該内壁に付着した錆などの異物が剥離され清掃される。
真空破壊弁6から空間A:A0、空間B:B0、ホース5、固体・流体分離装置4を経由してルーツ式真空ポンプ3に至る空気流の作用により、剥離された異物と使用済みの水は吸引移送され、固体・流体分離装置4にて異物と使用済みの水が分離された後の清浄な空気はルーツ式真空ポンプ3の出口から大気中へ放出される。
なお、配管1の内壁と圧力境界シール20との間の僅かな隙間を通って、空間B:B0から空間A:A0へ高速の空気流が流入しているので、濡れた配管1の内壁は、該高速空気流の作用により強制乾燥される。
【0026】
図10は、図2に示す装置本体2の曲管部における態様を示す断面図であるが、圧力境界シール20は球面軸受を介して装置本体2に装着されているため、配管1に曲管部があっても、圧力境界シール20の軸線は配管1の軸線の近傍に常に在り、而して圧力境界シール20の自由端部202は配管1の内壁に常に密着可能となるものである。
【0027】
以下、本発明に従って構成された「配管内作業装置」の第2の好適実施例の装置について、添付図を参照して更に詳細に説明する。
図11は、本発明に従って構成された「配管内作業装置」の第2の好適実施例の装置において、装置本体2および該装置本体2に付帯する装置類の構成を示す全体図;
図12は、図11に示す装置本体2の拡大断面図;
図13は、図11に示す圧力逃がし弁7の拡大断面図;
図14は、図12に示す装置本体2における圧力境界シール部の拡大断面図である。
なお、第1の好適実施例の装置本体2と第2の好適実施例の装置本体2との相違点において、圧力境界シール20の配置を除いてその他の部分の態様は同様であるので係る図面を省略する。
【0028】
図11において、
本発明に従って構成された「配管内作業装置」の第2の好適実施例の装置は;
配管1の内部に配置された装置本体2と;
下流側の端部が装置本体2に連結され、上流側の端部がルーツ式ポンプ3の出口に連結されたホース5と;
容積型ポンプの一種であるルーツ式ポンプ3と;
配管1の2箇所の端部において、ホース5が配置されていない側の端部に接続された圧力逃がし弁7;
により構成されている。
なお、配管1の2箇所の端部において、ホース5が配置されている側の端部は配管1を包囲している空間に開放されている。
【0029】
図12と図14において、装置本体2の構成について述べると;
装置本体2は;
配管1内の軸線方向に配置された第1筒状体21において、第1筒状体21の内部には軸線方向に延びる円筒状の空洞があり、該空洞には減速機付きエアモータ31が固定され、且つ減速機付きエアモータ31の出力軸に連結された主回転軸32が2個のベアリング33により保持され、第1筒状体21の中央部の外周部には非揺動車輪ユニット38の4個のロッド非回転式シリンダ39が固定され、第1筒状体21の外周部の右側の端部には高圧チューブ継手42が装着され、以上のように構成された第1筒状体21と;
第1筒状体21の左側の外周部に配置され、一方の端部が第1筒状体21と第1球面軸受211を介して連結され、他方の端部はその口径が拡大されてフランジ状を成し、端部と端部の間の円周部に複数の穴が設けられた第2筒状体22と;
一方の端部が第2筒状体22のフランジ部とフランジ連結された第3筒状体23と;
第3筒状体23の外周部に配置され、一方の端部が第3筒状体23と第2球面軸受231を介して連結され、他方の端部がフランジ状を成す第4筒状体24と;
一方の端部が第4筒状体24のフランジ部とフランジ連結され、他方の端部はその口径が縮小されて円筒状を成す第5筒状体25と;
一方の端部が第5筒状体25と第3球面軸受251を介して連結されたホース継手26と;
ホース継手26に連結されたホース5と;
第4筒状体24のフランジ部と第5筒状体25のフランジ部により挟みこまれて固定され、該固定部201を起点としてホース5が延伸する方向の反対方向、かつ配管1の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触する自由端部202を備える、ポリウレタンなどの柔軟材料から形成された圧力境界シール20と;
第1筒状体21の中央部の外周部に固定された非揺動車輪ユニット38と;
主回転軸32の右側の端部に高圧チューブ継手42が装着されており、回転している該高圧チューブ継手42と回転していない第1筒状体21の高圧チューブ継手42との間において、すなわち回転体と非回転体の間においても常に流体の流路を確保可能なロータリージョイント機構34が組み込まれた主回転軸32と;
主回転軸32に連結されたユニバーサルジョイント35と;
ユニバーサルジョイント35に連結され、外周部には揺動車輪ユニット37の4個のロッド非回転式シリンダ39が固定され、且つ右側の端部にはコーティング材料を噴射するノズル44と高圧チューブ継手42を備えた従動回転軸36と;
配管1の内壁をコーティングするために、塗料や耐蝕合金などの被覆材料を噴射するノズル44と;
従動回転軸36の外周部に固定された揺動車輪ユニット37と;
主回転軸32の高圧チューブ継手42と従動回転軸36の高圧チューブ継手42とを連結する高圧チューブ43と;
第5筒状体25の外周部に配置された3個の従動車輪41から成るガイド車輪ユニット8と;
ホース5の外周部に配置された3個の従動車輪41から成る多数個のホース用ガイド車輪ユニット9;
から構成されている。
なお圧力境界シール20は、配管1の内部の空間を、該シール20を境界として、空間A:A0と空間B:B0の二つの空間に分割しており、圧力逃がし弁7に連通された空間を空間Aと呼称し、ホース5が配置された空間を空間Bと呼称する。
【0030】
図2乃至図4において、揺動車輪ユニット37の構成について述べると;
揺動車輪ユニット37は;
従動回転軸36の外周部に放射状に配置されて固定された4個のロッド非回転式シリンダ39と;
該4個のロッド非回転式シリンダ39の各々のピストンロッドの先端部に装着された各々2個、合計4式すなわち合計8個の従動車輪41;
から構成されており;
該各々2個の従動車輪41の軸線は、配管1の軸線と平行では無く、やや傾いた状態で配置されている。
4個のロッド非回転式シリンダ39は、4式の従動車輪41を配管1の内壁に強く押し付ける機能を有しているが、各々のロッド非回転式シリンダ39は、その機能を達成するために、各々のシリンダケースの内部に圧縮コイルバネが配置されても良いし、あるいはロッド非回転式シリンダ39をロッド非回転式エアシリンダとし、ロータリジョイント(図示せず)を介して外部から圧縮空気が供給されても良い。
【0031】
図2乃至図3及び図5において、非揺動車輪ユニット38の構成について述べると;
非揺動車輪ユニット38は;
第1筒状体21の中央部の外周部に放射状に配置されて固定された4個のロッド非回転式シリンダ39と;
該4個のロッド非回転式シリンダ39の各々のピストンロッドの先端部に装着された各々2個、合計4式すなわち合計8個の従動車輪41;
から構成されており;
該各々2個の従動車輪41の軸線は、配管1の軸線と直交した状態で配置されている。
4個のロッド非回転式シリンダ39は、4式の従動車輪41を配管1の内壁に強く押し付ける機能を有しているが、各々のロッド非回転式シリンダ39は、その機能を達成するために、各々のシリンダケースの内部に圧縮コイルバネが配置されても良いし、あるいはロッド非回転式シリンダ39をロッド非回転式エアシリンダとし、外部から圧縮空気が供給されても良い。
【0032】
図8において、公知の圧力逃がし弁7の構成について述べると;
圧力逃がし弁7は、下流側の弁穴71と上流側のホース継手72を備えた弁ケース73と、弁ケース73の外部に配置された弁板74と、弁板74に固定された摺動自在な弁ロッド75と、弁板74を弁穴71に強く押し当てるための圧縮コイルバネ76、から構成されている。
【0033】
以上のように構成された「配管内作業装置」の第2の好適実施例の装置の作用について、図11乃至図14を参照して説明する。
吐出風量が十分にあるルーツ式ポンプ3が作動すると、大気は該ポンプ3により配管1の内部の空間A:A0へ送気され、空間A:A0は圧力逃がし弁7の設定圧力(仮に200mmHgとする)まで昇圧される。
空間A:A0の昇圧に伴い、空間A:A0に在る空気は、図14において、配管1の内壁と圧力境界シール20との間の隙間を通って空間B:B0へ流入する。
図中の黒矢印は空気が流れる方向を示している。
端部が開放されている空間B:B0の圧力は大気圧に近い圧力であるのに対して、空間A:A0の圧力は200mmHgであるので、圧力境界シール20の自由端部202は、空間A:A0と空間B:B0との圧力差に起因して、配管1の内壁へ強く押し付けられ、而して、配管1の内壁と圧力境界シール20との間の隙間はさらに僅かなものになる。
配管1の内壁と圧力境界シール20との間の隙間について、実際の配管1の内壁には錆などにより腐食された凹凸があり、圧力境界シール20の表面にも細かい傷が有るので、これ等の凹凸や傷に起因する僅かな隙間を通って、空間A:A0から空間B:B0へ高速の空気流が流入するものである。
図13の圧力逃がし弁7において、空間A:A0の圧力が200mmHg以上になると、空間A:A0 の空気の圧力が圧縮コイルバネ76の力に打ち勝って弁板74を押し開くので該空気は圧力逃がし弁7の外部へ流出し、而して空間A:A0の圧力は200mmHgに維持される。
なお、空間A:A0と空間B:B0の圧力差(200mmHg)に起因して、装置本体2は空間A:A0から空間B:B0の方向へ作用する強い力を受けている。
【0034】
図12、図4及び図5において、減速機付きエアモータ31の出力軸が、図12において左から右を見た状態において、反時計方向へ回転駆動されると、主回転軸32、ユニバーサルジョイント35、従動回転軸36及び揺動車輪ユニット37は反時計方向へ回転駆動され、揺動車輪ユニット37に装着された従動車輪41は回転する。
この時、従動車輪41の軸線が、配管1の外周部の方向から見て反時計方向に僅かに傾いていることに起因して、揺動車輪ユニット37には配管1の軸線に沿って右から左へ向かう走行駆動力が発生する。
この時、非揺動車輪ユニット38には時計方向へ回転させようとする反作用が作用するが、非揺動車輪ユニット38に装着された従動車輪41の軸線は配管1の軸線と直交する面上に在るので、従動車輪41は回転せず、而して非揺動車輪ユニット38の時計方向への回転は阻止される。
すなわち、図12において左から右を見た状態において、減速機付きエアモータ31が反時計方向へ回転駆動されると、装置本体2は白矢印方向へ走行する。
この時の装置本体2の白矢印方向へ向かう走行駆動力は、揺動車輪ユニット37の走行駆動力に加えて、空間A:A0と空間B:B0の圧力差(200mmHg)に起因して装置本体2を白矢印方向へ押す力が加算されるので、合計された走行駆動力は非常に大きいものとなる。
【0035】
第1筒状体21に装着された高圧チューブ継手42に、例えば塗料が供給されると、該塗料は、ロータリージョイント機構34、主回転軸32に装着された高圧チューブ継手42、高圧チューブ43、従動回転軸36に装着された高圧チューブ継手42を経由して移送され、ノズル44から配管1の内壁に向け噴霧され、該内壁は塗装される。
なお、配管1の内壁と圧力境界シール20との間の僅かな隙間を通って、空間A:A0から空間B:B0へ高速の空気流が流入しているので、配管1の内壁が濡れていても、高速かつ高温の空気流の作用により強制乾燥される。
また、ルーツ式ポンプ3から、ホース5、空間B:B0、空間A:A0を経由して圧力逃がし弁7に至る、高速かつ高温の空気流の作用により、塗装は早く乾燥する。
なお、空気を吐出する吐出ポンプの特性として、該ポンプは空気を圧縮する機能を保有しており、該空気の圧縮時に熱が発生するので、該ポンプから吐出される空気は熱風である。而して、空間A:A0には熱風が送気される。
【0036】
以上に述べた、本発明に従って構成された「配管内作業装置」の第1の好適実施例の装置は、配管1の内壁に対して水や研掃材などの清掃材料を衝突させて清掃する第1の工程において好都合に使用することができる。
また、本発明に従って構成された「配管内作業装置」の第2の好適実施例の装置は、配管1の内壁に対して塗料や耐蝕合金などの被覆材料をコーティングする第2の工程において好都合に使用することができる。
そこで、該第1の好適実施例の装置本体と、該第2の好適実施例の装置本体とが同一の装置であれば大変都合が良い。
該第1の好適実施例の装置本体と、該第2の好適実施例の装置本体との相違点について述べると、
該第1の好適実施例の装置本体においては、圧力境界シールがその固定部を起点として「ホースが延伸する方向」、かつ配管の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触する自由端部を備えているのに対して、
該第2の好適実施例の装置本体においては、圧力境界シールがその固定部を起点として「ホースが延伸する方向の反対方向」、かつ配管の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触する自由端部を備えている。
すなわち、圧力境界シールの自由端部が「ホースが延伸する方向」に延びているか、あるいは「ホースが延伸する方向の反対方向」に延びているか、が異なるのみである。
そこで、該第1の好適実施例の装置本体と、該第2の好適実施例の装置本体とを、同一の形状を備えた装置とする目的を達成する手段として、本発明に従って構成された「配管内作業装置」の第3の好適実施例の装置と、同じく第4の好適実施例の装置を以下に提案する。
【0037】
以下、本発明に従って構成された「配管内作業装置」の第3の好適実施例の装置について、添付図を参照して説明する。
図15は、図9と図14に示す圧力境界シール部の別の実施態様を示す拡大断面図である。
なお、第1乃至第2の好適実施例の装置本体と、第3の好適実施例の装置本体との相違点において、圧力境界シールを除いてその他の部分の態様は同様であるので係る図面を省略する。
図15において、圧力境界シール20は、配管1の軸線が在る面で切断した断面形状において、装置に装着された2箇所の固定部201と、2箇所の固定部201のそれぞれから配管1の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触し且つ該それぞれから延びた部分が合体している円弧状の自由端部202から少なくとも構成されており、圧力境界シールの内側の空間203と空間B:B0、もしくは圧力境界シールの内側の空間203と空間A:A0とを選択的に連通させる3ポート2位置シングル電磁弁204を備えている。
3ポート2位置シングル電磁弁204は、第1の好適実施例の装置構成時においては、圧力境界シールの内側の空間203と空間B:B0とを連通させ、第2の好適実施例の装置構成時においては、圧力境界シールの内側の空間203と空間A:A0とを連通させる。
なお、電磁弁を使用すること無く、第1の好適実施例の装置構成時においては、圧力境界シールの内側の空間203と空間B:B0とを連通させ、第2の好適実施例の装置構成時においては、圧力境界シールの内側の空間203と空間A:A0とを連通させる手段、があれば該手段を使用しても良い。
【0038】
以下、本発明に従って構成された「配管内作業装置」の第4の好適実施例の装置について、添付図を参照して説明する。
図16は、図1と図11に示す装置本体の別の実施態様を示す一部拡大断面図;
図17は、図16に示す装置本体におけるB−B矢視の側面図である。
なお、第1乃至第3の好適実施例の装置本体と、第4の好適実施例の装置本体との相違点において、圧力境界シールと非揺動車輪ユニットを除いてその他の部分の態様は同様であるので係る図面を省略する。
第4の好適実施例の装置本体は、第1乃至第3の好適実施例の装置本体と異なり2個の圧力境界シールを備えている。
該2個の圧力境界シールを備えたことに起因して、非揺動車輪ユニットの形状を変更する必要が生じたものである。
先ず図16乃至図17に示す第4の好適実施例の非揺動車輪ユニットについて、
該非揺動車輪ユニットは;
第1筒状体21の中央部の外周部に放射状に配置されて固定された4個のロッド非回転式シリンダ39と;
該4個のロッド非回転式シリンダ39の各々のピストンロッドの先端部に装着された各々2個、合計4式すなわち合計8個の従動車輪41;
から構成されており;
該各々2個の従動車輪41の軸線は、配管1の軸線と直交した状態で配置されている。
4個のロッド非回転式シリンダ39は、4式の従動車輪41を配管1の内壁に強く押し付ける機能を有しているが、各々のロッド非回転式シリンダ39は、その機能を達成するために、各々のシリンダケースの内部に圧縮コイルバネが配置されても良いし、あるいはロッド非回転式シリンダ39をロッド非回転式エアシリンダとし、外部から圧縮空気が供給されても良い。
第4の好適実施例の装置本体は、下記の2個の圧力境界シールを備えている。
すなわち、
第2筒状体22のフランジ部と第3筒状体23のフランジ部により挟みこまれて固定され、該固定部201を起点としてホース5が延伸する方向かつ配管1の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触する自由端部202を備える、ポリウレタンなどの柔軟材料から形成された圧力境界シール20A;と、
第4筒状体24のフランジ部と第5筒状体25のフランジ部により挟みこまれて固定され、該固定部201を起点としてホース5が延伸する方向の反対方向、かつ配管1の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触する自由端部202を備える、ポリウレタンなどの柔軟材料から形成された圧力境界シール20B;とを備えている。
圧力境界シール20Aは、第1の好適実施例の装置構成時においては、
その自由端部202は、空間A:A0と空間B:B0との圧力差に起因して、配管1の内壁へ強く押し付けられてシールの機能を有するが、第2の好適実施例の装置構成時においては、その自由端部202は配管1の内壁へ強く押し付けられることは無いのでシールの機能を有さない。
圧力境界シール20Bは、第1の好適実施例の装置構成時においては、その自由端部202は配管1の内壁へ強く押し付けられることは無いのでシールの機能を有さず、第2の好適実施例の装置構成時においては、その自由端部202は、空間A:A0と空間B:B0との圧力差に起因して、配管1の内壁へ強く押し付けられてシールの機能を有する。
【0039】
配管の端部に真空破壊弁または圧力逃がし弁を備えた端部において、真空破壊弁と圧力逃がし弁の両方の弁を備えても良い。
何故ならば、配管の端部に真空破壊弁を備えた端部において、さらに圧力逃がし弁を備えても真空破壊弁の機能は棄損されることがなく、一方、配管の端部に圧力逃がし弁を備えた端部において、さらに真空破壊弁を備えても圧力逃がし弁の機能は棄損されることがないからである。
【0040】
以上に本発明の装置の好適実施例について説明したが、本発明の装置は該好適実施例の他にも特許請求の範囲に従って種々実施例を考えることができる。
例えば、第1及び第2の好適実施例の装置の説明においては、装置本体を配管の内部で走行させるための手段として、該装置本体に揺動車輪ユニットと非揺動車輪ユニットを備えている。
なお、該揺動車輪ユニットは;
回転駆動される回転軸体の外周部に放射状に配置された複数個のロッド非回転式シリンダと;該ロッド非回転式シリンダの各々に装着され、その軸線は配管の軸線からやや傾いた状態で配置された従動車輪と;該従動車輪を該ロッド非回転式シリンダにより該配管の内壁に強く押し付けるための、該ロッド非回転式シリンダに圧力を付与された流体を供給するための手段、あるいは該ロッド非回転式シリンダの内部に配置された圧縮コイルバネ;から構成されており、
また、該非揺動車輪ユニットは;
非回転軸体の外周部に放射状に配置された複数個のロッド非回転式シリンダと;該ロッド非回転式シリンダの各々に装着され、その軸線は配管の軸線と直交する面上に在る従動車輪と;該従動車輪を該ロッド非回転式シリンダにより該配管の内壁に強く押し付けるための、該ロッド非回転式シリンダに圧力を付与された流体を供給するための手段、あるいは該ロッド非回転式シリンダの内部に配置された圧縮コイルバネ;から構成されている。
装置本体を配管の内部で走行させるための手段は、以上に述べた手段に限定されることなく、例えば、該装置本体にワイヤロープを連結し、該装置本体を該ワイヤロープにより牽引走行させても良い。
また、第1及び第2の好適実施例の装置の説明においては、装置も配管も大気中にあるものとして説明を行ったが、装置と配管が水中にある場合においても本発明の装置を適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、例えば給水用配管や排水用配管あるいはガス配管などの各種配管の内面に付着した錆や水棲生物などの異物を除去し、これらを除去した後に、例えば塗料や耐蝕合金などの被覆材料のコーティングを行うなど、配管内で走行しながら配管の保守作業を行う配管内作業装置および方法として、好都合に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に従って構成された「配管内作業装置」の第1の好適実施例の装置において、装置本体および該装置本体に付帯する装置類の構成を示す全体図。
【図2】図1に示す装置本体の拡大断面図。
【図3】図2に示す装置本体の上面図。
【図4】図2に示す装置本体におけるA−A矢視の側面図。
【図5】図2に示す装置本体におけるB−B矢視の側面図。
【図6】図2に示す装置本体におけるC−C矢視の側面図。
【図7】図2に示す装置本体におけるD−D矢視の側面図。
【図8】図1に示す真空破壊弁の拡大断面図。
【図9】図2に示す装置本体における圧力境界シール部の拡大断面図。
【図10】図2に示す装置本体の曲管部における態様を示す断面図。
【図11】本発明に従って構成された「配管内作業装置」の第2の好適実施例の装置において、装置本体および該装置本体に付帯する装置類の構成を示す全体図。
【図12】図11に示す装置本体の拡大断面図。
【図13】図11に示す圧力逃がし弁の拡大断面図。
【図14】図12に示す装置本体における圧力境界シール部の拡大断面図。
【図15】図9と図14に示す圧力境界シール部の別の実施態様を示す拡大断面図。
【図16】図1と図11に示す装置本体の別の実施態様を示す一部拡大断面図。
【図17】図16に示す装置本体におけるB−B矢視の側面図。
【符号の説明】
【0043】
空間A:A0
空間B:B0
配管1
配管端部栓101
ルーツ式ポンプ3
固体・流体分離装置4
ホース5
ガイド車輪ユニット8
ホース用ガイド車輪ユニット9
真空破壊弁6
上流側の弁穴61
下流側のホース継手62
弁ケース63
弁板64
弁板に固定された弁ロッド65
圧縮コイルバネ66
圧力逃がし弁7
下流側の弁穴71
上流側のホース継手72
弁ケース73
弁板74
弁板に固定された弁ロッド75
圧縮コイルバネ76
装置本体2
圧力境界シール20
固定部201
自由端部202
圧力境界シールの内側の空間203
3ポート2位置シングル電磁弁204
減速機付きエアモータ31
主回転軸32
ベアリング33
ロータリージョイント機構34
ユニバーサルジョイント35
従動回転軸36
第1筒状体21
第2筒状体22
第3筒状体23
第4筒状体24
第5筒状体25
ホース継手26
第1球面軸受211
第2球面軸受231
第3球面軸受251
揺動車輪ユニット37
非揺動車輪ユニット38
ロッド非回転式シリンダ39
従動車輪41
高圧チューブ継手42
高圧チューブ43
ノズル44


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の内部を走行しながら作業を行う配管内作業装置において;
該配管の内壁にその自由端部分が接触する環状の圧力境界シールを備え;
該圧力境界シールは、該配管の内部の空間を、該圧力境界シールを境界として、空間Aと空間Bの二つの空間に分割しており;
該空間Aの該圧力境界シールに近接した一方の端部は、ホースを介して吸引ポンプに連通されており;
且つ、該空間Aの該圧力境界シールから離れた他方の端部は、該空間Aの内部の負の圧力を調整する真空破壊弁を介して該配管を包囲する流体に連通されており;
該空間Bには、該ホースが配置されており;
且つ、該空間Bの該圧力境界シールから離れた端部は、該配管を包囲する流体に連通されている;
ことを特徴とする配管内作業装置。
【請求項2】
該圧力境界シールは、該配管の軸線が在る面で切断した断面形状において、装置に装着された固定部と、該固定部を起点として該空間Aから離れる方向かつ該配管の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触する自由端部から少なくとも構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の配管内作業装置。
【請求項3】
該圧力境界シールは、該配管の軸線が在る面で切断した断面形状において、装置に装着された2箇所の固定部と、該2箇所の固定部のそれぞれから該配管の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触し且つ該それぞれから延びた部分が合体している円弧状の自由端部から少なくとも構成されており、該圧力境界シールの内側の空間と空間Bとを連通させる弁を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の配管内作業装置。
【請求項4】
該配管に曲管部があっても、該圧力境界シールの軸線が該配管の軸線の近傍に在るように成すため、該圧力境界シールは球面軸受を介して装置に装着されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の配管内作業装置。
【請求項5】
該配管の内壁を清掃するために、水や研掃材などの清掃材料を衝突させる手段を備えた、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の配管内作業装置。
【請求項6】
配管の内部を走行しながら作業を行う配管内作業装置において;
該配管の内壁にその自由端部分が接触する環状の圧力境界シールを備え;
該圧力境界シールは、該配管の内部の空間を、該圧力境界シールを境界として、空間Aと空間Bの二つの空間に分割しており;
該空間Aの該圧力境界シールに近接した一方の端部は、ホースを介して吐出ポンプに連通されており;
且つ、該空間Aの該圧力境界シールから離れた他方の端部は、該空間Aの内部の正の圧力を調整する圧力逃がし弁を介して該配管を包囲する流体に連通されており;
該空間Bには、該ホースが配置されており;
且つ、該空間Bの該圧力境界シールから離れた端部は、該配管を包囲する流体に連通されている;
ことを特徴とする配管内作業装置。
【請求項7】
該圧力境界シールは、該配管の軸線が在る面で切断した断面形状において、装置に装着された固定部と、該固定部を起点として該空間Bから離れる方向かつ該配管の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触する自由端部から少なくとも構成されている、ことを特徴とする請求項6に記載の配管内作業装置。
【請求項8】
該圧力境界シールは、該配管の軸線が在る面で切断した断面形状において、装置に装着された2箇所の固定部と、該2箇所の固定部のそれぞれから該配管の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触し且つ該それぞれから延びた部分が合体している円弧状の自由端部から少なくとも構成されており、該圧力境界シールの内側の空間と空間Aとを連通させる弁を備えている、ことを特徴とする請求項6に記載の配管内作業装置。
【請求項9】
該配管に曲管部があっても、該圧力境界シールの軸線が該配管の軸線の近傍に在るように成すため、該圧力境界シールは球面軸受を介して装置に装着されている、ことを特徴とする請求項6乃至請求項8に記載の配管内作業装置。
【請求項10】
該配管の内壁に被覆を施すために、塗料や耐蝕合金などの被覆材料をコーティングする手段を備えた、ことを特徴とする請求項6乃至請求項9に記載の配管内作業装置。
【請求項11】
水や研掃材などの清掃材料を衝突させる手段を備えた請求項1乃至請求項5に記載の配管内作業装置を、空間Bから空間Aに向かう方向に走行させて実施する該配管の内壁を清掃する第1の工程と、
塗料や耐蝕合金などの被覆材料をコーティングする手段を備えた請求項6乃至請求項10に記載の配管内作業装置を、空間Aから空間Bへ向かう方向に走行させて実施する該配管の内壁に被覆を施す第2の工程とを備える、ことを特徴とする配管内作業装置および方法。
【請求項12】
配管内作業装置を配管の内部に沿って走行させるための手段として;
回転駆動される回転軸体の外周部に放射状に配置された複数個のロッド非回転式シリンダと;該ロッド非回転式シリンダの各々に装着され、その軸線は配管の軸線からやや傾いた状態で配置された従動車輪と;該従動車輪を該ロッド非回転式シリンダにより該配管の内壁に強く押し付けるための、該ロッド非回転式シリンダに圧力を付与された流体を供給するための手段、あるいは該ロッド非回転式シリンダの内部に配置された圧縮コイルバネ;から構成された揺動車輪ユニットと、
非回転軸体の外周部に放射状に配置された複数個のロッド非回転式シリンダと;該ロッド非回転式シリンダの各々に装着され、その軸線は配管の軸線と直交する面上に在る従動車輪と;該従動車輪を該ロッド非回転式シリンダにより該配管の内壁に強く押し付けるための、該ロッド非回転式シリンダに圧力を付与された流体を供給するための手段、あるいは該ロッド非回転式シリンダの内部に配置された圧縮コイルバネ;から構成されている非揺動車輪ユニットを備えた、ことを特徴とする請求項1乃至請求項11に記載の配管内作業装置。
【請求項13】
該圧力境界シールの態様において、該配管の軸線が在る面で切断した断面形状において、装置に装着された固定部と、該固定部を起点として該空間Aから離れる方向かつ該配管の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触する自由端部から少なくとも構成されている圧力境界シールと;
装置に装着された固定部と、該固定部を起点として該空間Bから離れる方向かつ該配管の内壁に接近する方向に延びて該内壁に接触する自由端部から少なくとも構成されている圧力境界シールとを備えた;ことを特徴とする請求項1乃至請求項12に記載の配管内作業装置。
【請求項14】
該配管の端部に真空破壊弁または圧力逃がし弁を備えた端部において、真空破壊弁と圧力逃がし弁の両方の弁を少なくとも備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項13に記載の配管内作業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−5451(P2011−5451A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153079(P2009−153079)
【出願日】平成21年6月28日(2009.6.28)
【出願人】(710006367)ウラカミ合同会社 (9)
【Fターム(参考)】