説明

配線体接続構造体およびその製造方法

【課題】 柔軟な配線体と電気回路との接続を、高い信頼性で低コストに実現するために有用な配線体接続構造体、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 配線体接続構造体1は、エラストマー製の基板11と、基板11の厚さ方向一面に配置されエラストマーと該エラストマー中に充填されている導電材とを含む複数の配線12と、複数の配線12が表出した第一接続部13と、を有する伸縮可能な第一配線体10と、複数の配線22と、複数の配線22が表出し第一接続部13と対向して配置される第二接続部23と、を有し、回路基板のコネクタ9に接続可能な第二配線体20と、第一接続部13と第二接続部23との間に介装され、対向する配線12、22同士を接着すると共に厚さ方向に導通させる異方導電接着剤30と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマーを利用した柔軟で伸縮可能な配線体と、回路基板のコネクタに接続可能な他の配線体と、を電気的に接続した配線体接続構造体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマーを利用して、柔軟なセンサ、アクチュエータ等の開発が進められている。柔軟なセンサ、アクチュエータでは、エラストマーからなる基材や誘電膜等の変形に、電極や配線が追従可能であることが要求される。すなわち、例えばエラストマーからなる誘電膜の表裏両面に、一対の電極を配置してセンサを構成した場合、センサに荷重が加わると、誘電膜は変形する。この際、電極は、誘電膜の変形を妨げないように、誘電膜の変形に応じて伸縮可能であることが望ましい。同様に、電極に接続される配線も、誘電膜および電極の変形に追従して伸縮可能であることが望ましい。このため、電極や配線を、エラストマーに導電性カーボンや金属粉末を配合した導電材料から形成する試みがなされている。
【0003】
上記柔軟なセンサ等において、配線の一端は電極に接続され、他端は電気回路に接続される。しかし、伸縮する柔軟な配線と電気回路とを安定して接続できる方法は、未だ確立されていない。一方、フレキシブルプリント配線板(FPC)等の既存の回路基板の端子間を電気的に接続する手段として、異方導電接着剤等が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−218634号公報
【特許文献2】特開平5−25446号公報
【特許文献3】特公昭62−17825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した導電材料からなる配線を、エラストマー製の基板表面に形成することにより柔軟な配線体を作製し、当該配線体を電気回路に接続しようとした場合、配線体と回路基板に設けられた既存のコネクタとを直接接続する方法が考えられる。既存のコネクタによると、コネクタ電極を配線体に噛み込ませて、配線体と電気回路とを電気的に接続する。しかし、上述したように、配線は、接続される電極、誘電膜の変形に追従して伸縮する。伸縮を繰り返すと、エラストマーの圧縮永久歪みにより、配線にへたりが生じてしまう。この場合、配線体とコネクタとの機械的な噛み合わせによる接続では、接続部分が配線のへたりに追従することはできない。その結果、配線体とコネクタとの接触不良が生じるおそれがある。また、伸縮を繰り返すことでエラストマーが疲労して、接触不良が生じるおそれもある。また、配線体はエラストマーからなる。このため、機械的強度が比較的小さい。したがって、コネクタの噛み込みにより、配線に亀裂が生じるおそれがある。このように、エラストマー製の柔軟な配線体を既存のコネクタに接続した場合、接続部分の信頼性に問題がある。したがって、エラストマー製の柔軟な配線体を、既存のコネクタに直接接続することは難しい。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、柔軟な配線体と電気回路との接続を、高い信頼性で低コストに実現するために有用な配線体接続構造体、およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明の第一の配線体接続構造体は、エラストマー製の基板と、該基板の厚さ方向一面に配置されエラストマーと該エラストマー中に充填されている導電材とを含む複数の配線と、複数の該配線が表出した第一接続部と、を有する伸縮可能な第一配線体と、複数の配線と、複数の該配線が表出し該第一接続部と対向して配置される第二接続部と、を有し、回路基板のコネクタに接続可能な第二配線体と、該第一接続部と該第二接続部との間に介装され、対向する該配線同士を接着すると共に厚さ方向に導通させる異方導電接着剤と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第一の配線体接続構造体は、第一配線体と第二配線体とが、異方導電接着剤により接続されてなる。第一配線体は、エラストマー製であり、伸縮可能である。本発明の第一の配線体接続構造体によると、第二配線体の一端を回路基板のコネクタに接続することにより、エラストマー製の第一配線体を、間接的に回路基板のコネクタに接続することができる。第二配線体としては、例えば、フレキシブルプリント配線板(FPC)、フレキシブルフラットケーブル(FFC)等の既存の配線体を使用すればよい。FPC等の既存の配線体は、ZIF(Zero Insertion Force)コネクタ等の既存のコネクタに、接続することができる。したがって、本発明の第一の配線体接続構造体によると、信頼性の高い既存の接続技術を活かして、エラストマー製の第一配線体を、回路基板のコネクタに接続することができる。これにより、第一配線体とコネクタとの接続を、低コストで実現することができる。よって、本発明の第一の配線体接続構造体の実用性は高い。
【0009】
本発明の第一の配線体接続構造体において、第一配線体と第二配線体とは、異方導電接着剤により接着されている。噛み込みによる機械的な接続ではないため、第一配線体が伸縮を繰り返しても、接触不良を生じにくい。また、他の部材を用いて接続部分を固定する必要もない。このため、部品点数を減らせると共に、小型化、薄型化しやすい。
【0010】
異方導電接着剤は、接着性を有する絶縁樹脂や絶縁ゴム(母材)の中に導電粒子を分散させたものである。異方導電接着剤としては、母材の種類により、熱硬化型異方導電接着剤、熱可塑型異方導電接着剤、紫外線硬化型異方導電接着剤、エラストマー系異方導電接着剤等が挙げられる。異方導電接着剤に圧力を加えると、母材中の導電粒子が接続部材間の一方向に点接触して導通経路を形成する。この状態で固化または硬化することにより、導電性が発現する。なお、本明細書では、化学反応を伴わない可逆的な状態変化を「固化」と称し、架橋反応等の化学反応を伴う不可逆的な状態変化を「硬化」と称す。
【0011】
異方導電接着剤は、一方向の導電性が高い性質(異方導電性)を有する。このため、異方導電接着剤を、第一配線体の第一接続部と第二配線体の第二接続部との間に介装すると、対向して配置されている配線同士を接着することができると共に、異方導電接着剤の厚さ方向(第一接続部と第二接続部との積層方向)に、配線同士を導通させることができる。この場合、異方導電接着剤の面方向における導電性は低い。したがって、第一接続部および第二接続部の各々において、隣接する配線同士が導通するおそれはない。
【0012】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記異方導電接着剤は、熱硬化型接着剤に導電粒子が分散されてなる構成とする方がよい。
【0013】
異方導電接着剤の母材としては、熱硬化型接着剤、熱可塑型接着剤、紫外線硬化型接着剤、エラストマー系接着剤等を使用することができる。一方、異方導電接着剤の片側に配置される第一配線体の配線には、金属粉末やカーボン粉末等の導電材が含まれている。例えば、異方導電接着剤の母材として、紫外線硬化型接着剤を使用した場合には、硬化させる際に照射した紫外線が、当該配線中の導電材により遮られ、充分に硬化できないおそれがある。この点、本構成によると、加熱により硬化する熱硬化型接着剤を使用する。したがって、紫外線硬化型接着剤を使用した場合と比較して、確実に硬化を進行させることができる。
【0014】
また、熱硬化型接着剤によると、幅広い温度範囲で強固な接着力が得られるという利点がある。また、100℃以上のガラス転移温度(Tg)を容易に実現できるため、熱可塑型接着剤と比較して、使用可能な温度範囲が広いという利点がある。一般に、熱可塑型接着剤よりも、熱硬化型接着剤の方がガラス転移温度が高い。使用温度範囲内にガラス転移が生じる場合、ガラス転移温度以下ではガラス状態であり、高弾性率である。一方、ガラス転移温度を超えると、ゴム状態になるため、急激な弾性率の低下、および急激な熱膨張係数の増大が生じる。このように、ガラス転移温度を境に、異方導電接着剤の物性が大きく変化すると、弾性率変化に伴う接着強度の変化、熱膨張係数変化による寸法変化、導電性能の変化等が誘起される可能性がある。したがって、ガラス転移温度が高い熱硬化型接着剤によると、信頼性を保障できる温度範囲を広く設定することができる。
【0015】
(2−1)好ましくは、上記(2)の構成において、前記熱硬化型接着剤は、低温かつ短時間で硬化するものが望ましい。
【0016】
異方導電接着剤は、第一接続部と第二接続部との間に挟装された状態で固化または硬化される。異方導電接着剤の母材として熱硬化型接着剤を使用した場合、硬化時の加熱により、第一配線体を構成するエラストマーが熱膨張するおそれがある。例えば、加熱によりエラストマーが膨張した後、冷却されて収縮すると、予め形成されていた配線の幅や位置が変化してしまう。一方、第二配線体では、熱膨張はほとんど生じない。このように、第一配線体における配線の位置ずれにより、第一接続部と第二接続部との間で、配線同士が対向しなくなる。その結果、対向する配線間の導通が得られなくなる。したがって、エラストマーの熱膨張を抑制するという観点から、熱硬化型接着剤は、低温かつ短時間で硬化するものが望ましい。
【0017】
(3)本発明の第一の配線体接続構造体の製造方法は、エラストマー製の基板と、該基板の厚さ方向一面に配置されエラストマーと該エラストマー中に充填されている導電材とを含む複数の配線と、複数の該配線が表出した第一接続部と、を有する伸縮可能な第一配線体と、複数の配線と、複数の該配線が表出し該第一接続部と対向して配置される第二接続部と、を有し、回路基板のコネクタに接続可能な第二配線体と、について、該第一接続部と該第二接続部との間に異方導電接着剤を挟装し、該第一接続部と該第二接続部とを対向させて配置する配置工程と、挟装された該異方導電接着剤を固化または硬化させることにより、対向する該配線同士を厚さ方向に導通可能に接着する接着工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の製造方法によると、第一配線体の第一接続部と異方導電接着剤と第二配線体の第二接続部とを積層し、異方導電接着剤を固化または硬化させるだけで、容易に上記本発明の第一の配線体接続構造体を製造することができる。
【0019】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記異方導電接着剤は、熱硬化型接着剤に導電粒子が分散されてなり、前記接着工程において、該異方導電接着剤の硬化を、前記第一接続部と該異方導電接着剤と前記第二接続部とが積層された積層部を該第二配線体側から加熱すると共に積層方向に加圧して行う構成とする方がよい。
【0020】
上述したように、異方導電接着剤の母材として熱硬化型接着剤を使用した場合、硬化時の加熱により、第一配線体を構成するエラストマーが熱膨張するおそれがある。本構成によると、異方導電接着剤を硬化させる際、熱膨張しにくい第二配線体側から加熱する。これにより、第一配線体におけるエラストマーの熱膨張を抑制することができる。その結果、配線の位置ずれ等が抑制され、対向する配線間を確実に導通させることができる。
【0021】
(5)本発明の第二の配線体接続構造体は、エラストマー製の基板と、該基板の厚さ方向一面に配置されエラストマーと該エラストマー中に充填されている導電材とを含む複数の配線と、複数の該配線が表出した第一接続部と、を有する伸縮可能な第一配線体と、複数の配線と、複数の該配線が表出し該第一接続部と対向して配置される第二接続部と、を有し、回路基板のコネクタに接続可能な第二配線体と、該第一接続部と該第二接続部との間に介装される異方導電ゴム部材と、該異方導電ゴム部材を介して対向する該配線同士が厚さ方向に導通するように、該第一接続部と該異方導電ゴム部材と該第二接続部とが積層された積層部を弾性的に挟圧しながら固定する固定部材と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の第二の配線体接続構造体は、第一配線体と第二配線体とが、異方導電ゴム部材および固定部材により接続されてなる。第一配線体は、上記本発明の第一の配線接続構造体と同様に、エラストマー製であり、伸縮可能である。本発明の第二の配線体接続構造体によると、第二配線体の一端を回路基板のコネクタに接続することにより、エラストマー製の第一配線体を、間接的に回路基板のコネクタに接続することができる。第二配線体については、上記本発明の第一の配線接続構造体と同じである。したがって、本発明の第二の配線体接続構造体によると、信頼性の高い既存の接続技術を活かして、エラストマー製の第一配線体を、回路基板のコネクタに接続することができる。これにより、第一配線体とコネクタとの接続を、低コストで実現することができる。よって、本発明の第二の配線体接続構造体の実用性は高い。
【0023】
本発明の第二の配線体接続構造体において、第一配線体と第二配線体とは、異方導電ゴム部材を挟持した状態で、固定部材により弾性的に挟圧されている。第一配線体と第二配線体との接続部分には、常に略一定の荷重が加えられている。このため、第一配線体が伸縮を繰り返して、エラストマーの圧縮永久歪みにより配線にへたりが生じても、接続部分がへたりに追従することができる。これにより、対向する配線間における良好な導通状態を維持することができる。
【0024】
異方導電ゴム部材は、絶縁ゴムの中に導電材を配向させて充填したものである。異方導電ゴム部材は、導電材の配向方向に導電性が高い性質(異方導電性)を有する。このため、導電材が厚さ方向に配向した異方導電ゴム部材を、第一配線体の第一接続部と第二配線体の第二接続部との間に介装して、両側から押圧すると、対向する配線同士を厚さ方向に導通させることができる。この場合、異方導電ゴム部材の面方向における導電性は低い。したがって、第一接続部および第二接続部の各々において、隣接する配線同士が導通するおそれはない。
【0025】
(6)好ましくは、上記(5)の構成において、前記固定部材は、前記積層部を押圧するばね部材を有する構成とする方がよい。
【0026】
ばね部材によると、積層部に対する弾性的な押圧を、容易に行うことができる。
【0027】
(7)本発明の第二の配線体接続構造体の製造方法は、エラストマー製の基板と、該基板の厚さ方向一面に配置されエラストマーと該エラストマー中に充填されている導電材とを含む複数の配線と、複数の該配線が表出した第一接続部と、を有する伸縮可能な第一配線体と、複数の配線と、複数の該配線が表出し該第一接続部と対向して配置される第二接続部と、を有し、回路基板のコネクタに接続可能な第二配線体と、について、該第一接続部と該第二接続部との間に異方導電ゴム部材を挟装し、該第一接続部と該第二接続部とを対向させて配置する配置工程と、該異方導電ゴム部材を介して対向する該配線同士が厚さ方向に導通するように、該第一接続部と該異方導電ゴム部材と該第二接続部とが積層された積層部を、弾性的に挟圧可能な固定部材で挟持することにより固定する固定工程と、を有することを特徴とする。
【0028】
本発明の製造方法によると、第一配線体の第一接続部と異方導電ゴム部材と第二配線体の第二接続部とを積層し、固定部材で積層部を弾性的に挟持して固定するだけで、容易に上記本発明の第二の配線体接続構造体を製造することができる。また、異方導電ゴム部材を介して対向する配線同士を導通させるためには、第一接続部と異方導電ゴム部材と第二接続部との積層部を、固定部材により弾性的に挟持するだけでよい。つまり、加熱処理は必要ない。したがって、製造時において、エラストマーの熱膨張を考慮する必要はない。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、エラストマー製の第一配線体を、第二配線体を介して、低コストかつ高い信頼性で、回路基板のコネクタに接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一実施形態の配線体接続構造体の透過上面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】本発明の第二実施形態の配線体接続構造体の斜視図である。
【図4】同配線体接続構造体の斜視分解図である。
【図5】同配線体接続構造体における閉状態のクリップ単体の断面図である。
【図6】図3のVI−VI断面図である。
【図7】実施例および比較例の配線体接続構造体における、各々の配線の電気抵抗の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の配線体接続構造体およびその製造方法の実施形態について説明する。
【0032】
<第一実施形態>
[構成]
まず、本実施形態の配線体接続構造体の構成について説明する。図1に、本実施形態の配線体接続構造体の透過上面図を示す。図2に、図1のII−II断面図を示す。図1、図2に示すように、配線体接続構造体1は、第一配線体10と、第二配線体20と、異方導電接着剤30と、を備えている。
【0033】
第一配線体10は、エラストマーシート11と、配線12と、第一接続部13と、を有している。エラストマーシート11は、エステル系ウレタンゴム製であって、前後方向に延びる帯状を呈している。エラストマーシート11の硬度(タイプAデュロメータ硬度:JIS K6253(2006))は、90度である。エラストマーシート11は、本発明の第一配線体を構成する基板に含まれる。
【0034】
配線12は、エラストマーシート11の下面(裏面)に、合計13本配置されている。配線12は、各々、ウレタンゴムと銀粉末とを含んで形成されている。配線12は、各々、線状を呈している。配線12は、各々、前後方向に延在している。13本の配線12は、左右方向に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように配置されている。
【0035】
第一接続部13は、第一配線体10の下面後端に配置されている。第一接続部13は、後述する第二接続部と対向して配置されている。
【0036】
第二配線体20は、フレキシブルプリント配線板(FPC)であり、絶縁基板21と、配線22と、第二接続部23と、を有している。絶縁基板21は、ポリイミド製であって、後方から前方に向かって拡がる扇状を呈している。
【0037】
配線22は、絶縁基板21の上面(表面)に、合計13本配置されている。配線22は、銅箔製であり、各々、線状を呈している。配線22は、各々、前後方向に延在している。13本の配線22は、左右方向に、所定間隔ごとに離間して配置されている。13本の配線22は、絶縁基板21の形状に沿って、後方から前方に向かって、放射状に延在している。配線22の幅は、後方から前方に向かって、徐々に広くなっている。左右方向に隣り合う任意の一対の配線22間の間隔は、後方から前方に向かって、徐々に広くなっている。
【0038】
第二接続部23は、第二配線体20の上面前端に配置されている。第二接続部23は、前述した第一接続部13と対向して配置されている。第二接続部23における配線22の幅および間隔は、第一接続部13における配線12の幅および間隔と同じである。つまり、第一接続部13の配線12と、第二接続部23の配線22とは、各々、対向している。
【0039】
第二配線体20の後端は、コネクタ9に接続されている。コネクタ9は、電気回路基板(図略)に設置されている。
【0040】
異方導電接着剤30は、エポキシ樹脂中にニッケル粒子が分散されてなる。異方導電接着剤30は、長方形のシート状を呈している。異方導電接着剤30は、対向する第一接続部13と第二接続部23との間に介装されている。異方導電接着剤30は、配線12、22の各々と接着している。すなわち、対向する配線12と配線22は、異方導電接着剤30を介して、接着されている。これにより、対向する配線12と配線22とは、異方導電接着剤30を介して導通している。
【0041】
[製造方法]
次に、配線体接続構造体1の製造方法について説明する。本実施形態の配線体接続構造体の製造方法は、配線体作製工程と、配置工程と、接着工程と、を有する。
【0042】
配線体作製工程においては、第一配線体10と第二配線体20とを作製する。すなわち、第一配線体10については、エラストマーシート11の下面に、配線用塗料を所定のパターンでスクリーン印刷することにより、13本の配線12を形成する。第二配線体20については、FPC用銅張絶縁基板の上面の銅箔を、所定のパターンにエッチングすることにより、絶縁基板21の上面に、13本の配線22を形成する。
【0043】
配置工程においては、第一配線体10の第一接続部13と、第二配線体20の第二接続部23と、の間に異方導電接着剤30を挟装し、第一接続部13と第二接続部23とを対向させて配置する。具体的には、まず、第二配線体20の第二接続部23の上面に、硬化前のペースト状の異方導電接着剤30を塗布する。次に、第一配線体10の第一接続部13を、異方導電接着剤30を介して、第一接続部13の配線12と第二接続部23の配線22とが各々対向するように、第二接続部23に重ねる。
【0044】
接着工程においては、挟装された異方導電接着剤30を硬化させることにより、対向する配線12、22同士を、厚さ方向に導通可能に接着する。具体的には、第一接続部13と異方導電接着剤30と第二接続部23とが積層された積層部を、第二配線体20側から加熱すると共に、積層方向に加圧する。これにより、第一接続部13と第二接続部23との間で異方導電接着剤30が硬化して、配線12、22同士が接着される。
【0045】
[作用効果]
次に、本実施形態の配線体接続構造体1、およびその製造方法の作用効果について説明する。本実施形態の配線体接続構造体1によると、第二配線体20の前端(第二接続部23)は第一配線体10に、後端は電気回路基板に設置されているコネクタ9に、各々接続されている。これにより、エラストマー製の第一配線体10を、第二配線体20を介して、低コストかつ高信頼性で、電気回路基板に接続することができる。また、第二配線体20として、フレキシブルプリント配線板(FPC)を使用している。FPCによると、エッチングにより、容易に所望の配線パターンを形成することができる。このため、隣り合う配線22間の間隔を変化させたり、配線22同士を接合して集約することが容易である。この点、本実施形態の配線体接続構造体1によると、配線22の幅、および隣り合う配線22間の間隔は、後方から前方に向かって、徐々に広くなっている。すなわち、配線12とコネクタ9とを接続するために、配線22のピッチ変換を行っている。このように、FPCのピッチ変換を活用することにより、第一配線体10における配線12のピッチに制約されることなく、任意のコネクタを使用することができる。
【0046】
本実施形態の配線体接続構造体1によると、第一配線体10と第二配線体20とは、異方導電接着剤30により接着されている。噛み込みによる機械的な接続ではないため、第一配線体10が伸縮を繰り返しても、接触不良を生じにくい。また、他の部材を用いて接続部分を固定する必要もない。このため、部品点数を減らせると共に、小型化、薄型化しやすい。また、異方導電接着剤30によると、対向する配線12、22同士を接着することができると共に、厚さ方向(上下方向)に、導通させることができる。一方、異方導電接着剤30の左右方向における導電性は低い。このため、第一接続部13において、左右方向に隣接する配線12同士が導通するおそれはない。同様に、第二接続部13において、左右方向に隣接する配線22同士が導通するおそれはない。このように、異方導電接着剤30によると、対向する複数の配線12、22同士を、まとめて接着および導通させることができる。
【0047】
本実施形態の配線体接続構造体1によると、異方導電接着剤30の母材として、エポキシ樹脂を主剤とする熱硬化型接着剤を使用している。異方導電接着剤30の硬化は、150℃程度の低温で、かつ10〜15秒程度の短時間で完了する。このため、第一配線体10を構成するエラストマーは熱膨張しにくい。よって、硬化時の加熱により、予め形成されていた配線12の幅や位置が変化するおそれは小さい。
【0048】
本実施形態の製造方法によると、配線体作製工程と、配置工程と、接着工程と、により、配線体接続構造体1を容易に製造することができる。また、接着工程において、熱膨張しにくい第二配線体20側から加熱すると共に、積層方向に加圧する。したがって、第一配線体10を構成するエラストマーの熱膨張を、抑制することができる。その結果、配線12の位置ずれ等が抑制され、対向する配線12、22間を確実に導通させることができる。
【0049】
<第二実施形態>
本実施形態の配線体接続構造体およびその製造方法と、第一実施形態の配線体接続構造体およびその製造方法と、の主な相違点は、第一配線体と第二配線体とを、異方導電接着剤ではなく、異方導電ゴム部材とクリップとを用いて接続した点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0050】
まず、本実施形態の配線体接続構造体の構成について説明する。図3に、本実施形態の配線体接続構造体の斜視図を示す。図4に、同配線体接続構造体の斜視分解図を示す。なお、図1、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図3、図4に示すように、配線体接続構造体1は、第一配線体10と、第二配線体20と、異方導電ゴム部材40と、クリップ50と、を備えている。
【0051】
第一配線体10において、配線12は、エラストマーシート11の下面に、合計16本配置されている。また、第一接続部13の左右方向両端には、上下方向に貫通する一対のピン穴130a、130bが形成されている。第二配線体20において、配線22は、絶縁基板21の上面に、合計16本配置されている。第二接続部23における配線22の幅および間隔は、第一接続部13における配線12の幅および間隔と同じである。つまり、第一接続部13の配線12と、第二接続部23の配線22とは、各々、対向している。また、第二接続部23の左右方向両端には、上下方向に貫通する一対のピン穴230a、230bが形成されている。
【0052】
異方導電ゴム部材40は、シリコーンゴム中にカーボン繊維が厚さ方向に配向されてなる。異方導電ゴム部材40は、長方形のシート状を呈している。異方導電ゴム部材40は、対向する第一接続部13と第二接続部23との間に介装されている。異方導電ゴム部材40の左右方向両端には、上下方向に貫通する一対のピン穴400a、400bが形成されている。
【0053】
クリップ50は、樹脂製である。クリップ50は、本発明における固定部材に含まれる。クリップ50は、上側挟持部51と下側挟持部52とを有する。上側挟持部51と下側挟持部52とは、連結部53により連結されている。クリップ50は、連結部53を湾曲させることにより、図4に示す開状態から図3に示す閉状態に、切り替え可能である。
【0054】
上側挟持部51は、板ばね54と、フレーム58と、を有する。板ばね54は、本発明のばね部材に含まれる。フレーム58は、矩形枠状を呈している。フレーム58は、連結部53に連なってる。板ばね54は、押圧部540と、一対の取付部541a、541bと、からなる。押圧部540は、直方体ブロック状を呈している。押圧部540は、フレーム58の枠内に配置されている。一対の取付部541a、541bは、押圧部540の左右方向端部と、フレーム58と、を連結している。一対の取付部541a、541bは、弾性変形可能である。図3に示す閉状態において、押圧部540は、下側挟持部52の上面520と対向するように配置されている。押圧部540は、第一配線体10の上面における第一接続部13に対応する領域に弾接している。
【0055】
下側挟持部52の左右方向両端には、一対のピン55a、55bが突設されている。一対のピン55a、55bは、下から順に第二配線体20のピン穴230a、230b、異方導電ゴム部材40のピン穴400a、400b、および第一配線体10のピン穴130a、130b、に挿通されている。これにより、下側挟持部52の上面520に、第二配線体20の第二接続部23、異方導電ゴム部材40、および第一配線体10の第一接続部13が積層されて配置されている。
【0056】
図5に、閉状態のクリップ単体の断面図を示す。本クリップの断面は、図3のVI−VI断面に対応する。図6に、図3のVI−VI断面図を示す。図5、図6に示すように、上側挟持部51の左右方向両端には、一対の上側爪部56a、56bが配置されている。下側挟持部52の左右方向両端にも、一対の下側爪部57a、57bが配置されている。上側爪部56aと下側爪部57a、上側爪部56bと下側爪部57bが、各々係合することにより、上側挟持部51と下側挟持部52とが係止されている。
【0057】
図5に示すように、何も挟持せずにクリップ50が閉じた状態では、板ばね54の押圧部540と下側挟持部52の上面520との間に、若干隙間が生じている。この状態では、板ばね54は圧縮されずに自然状態で存在している。また、図6に示すように、第一配線体10、異方導電ゴム部材40、および第二配線体20(以下適宜、これらをまとめて「配線体等」と総称する)を挟持した状態では、配線体等の厚さの分だけ、押圧部540が上方に圧縮されると共に、一対の取付部541a、541bが弾性的に湾曲する。これにより、図5に示した自然状態よりも、板ばね54は上方に移動する(図6中、自然状態の板ばね54の位置を一点鎖線で示す)。これにより、板ばね54には、元の位置に戻ろうとする付勢力が生じる。この付勢力により、配線体等は上方から押圧される。
【0058】
次に、配線体接続構造体1の製造方法について説明する。本実施形態の配線体接続構造体の製造方法は、配線体作製工程と、配置工程と、固定工程と、を有する。
【0059】
配線体作製工程においては、第一配線体10と第二配線体20とを作製する。本工程は、第一実施形態の配線体作製工程と同様である。
【0060】
配置工程においては、第一配線体10の第一接続部13と、第二配線体20の第二接続部23と、の間に異方導電ゴム部材40を挟装し、第一接続部13と第二接続部23とを対向させて配置する。具体的には、まず、クリップ50を開いた状態で、下側挟持部52のピン55a、55bを、第二配線体20のピン穴230a、230bに挿通して、第二接続部23を下側挟持部52の上面520に配置する。次に、ピン55a、55bを、異方導電ゴム部材40のピン穴400a、400bに挿通して、異方導電ゴム部材40を第二接続部23の上に積層する。続いて、ピン55a、55bを、第一配線体10のピン穴130a、130bに挿通して、第一接続部13を異方導電ゴム部材40の上に積層する。
【0061】
固定工程においては、第一接続部13と異方導電ゴム部材40と第二接続部23とが積層された積層部を、弾性的に挟圧可能な固定部材(クリップ50)で挟持することにより固定する。具体的には、上側爪部56aと下側爪部57a、および上側爪部56bと下側爪部57bを、各々係合させて、上側挟持部51と下側挟持部52とを係止する。つまり、クリップ50を閉じる。クリップ50を閉じると、図6に示すように、付勢力を蓄えながら、板ばね54が弾性変形する。板ばね54の付勢力により、積層された配線体等は、押圧された状態で固定される。
【0062】
本実施形態の配線体接続構造体およびその製造方法は、第一実施形態の配線体接続構造体およびその製造方法と共通する部分については、第一実施形態と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態の配線体接続構造体1によると、第一配線体10と第二配線体20とは、異方導電ゴム部材40およびクリップ50により接続されている。すなわち、第一配線体10と第二配線体20とは、異方導電ゴム部材40を挟持した状態で、クリップ50により弾性的に挟圧されている。第一配線体10と第二配線体20との接続部分には、板ばね54により、常に略一定の圧縮力が加えられている。このため、第一配線体10が伸縮を繰り返して、エラストマーの圧縮永久歪みにより配線12にへたりが生じても、接続部分はへたりに追従することができる。これにより、対向する配線12、22間における良好な導通状態を維持することができる。
【0063】
また、板ばね54の取付部541a、541bは、弾性的に湾曲しやすい。このため、板ばね54を有しないクリップ(例えば、爪部係合の締結力により配線体等を固定するタイプのクリップ)と比較して、クリップ50のばね定数は小さい。ここで、板ばね54が配線体等に加える付勢力Fは、ばね定数kと、板ばね54の変位量xと、の積である(F=kx)。第一配線体10の伸縮や経時的な劣化等により配線体等がへたると、その分変位量xが小さくなる。このため、付勢力Fも小さくなる。しかし、板ばね54、つまりクリップ50のばね定数kは小さい。このため、付勢力Fの減少幅が小さい。したがって、所定の付勢力Fを、長期間に亘って、配線体等に加え続けることができる。
【0064】
また、上側挟持部51の上側爪部56aと下側挟持部52の下側爪部57a、上側挟持部51の上側爪部56bと下側挟持部52の下側爪部57bが、各々係合することにより、クリップ50は閉じられる。すなわち、左右方向の二箇所で、上側挟持部51と下側挟持部52とが係止されるため、配線体等の左右方向に略均一に付勢力を加えることができる。
【0065】
また、クリップ50の下側挟持部52には、一対のピン55a、55bが突設されている。一対のピン55a、55bを、下から順に第二配線体20のピン穴230a、230b、異方導電ゴム部材40のピン穴400a、400b、および第一配線体10のピン穴130a、130b、に挿通するだけで、下側挟持部52の上面520に、配線体等を配置することができる。すなわち、配線体等の位置決めが容易になる。
【0066】
また、異方導電ゴム部材40によると、対向する配線12、22同士を、厚さ方向(上下方向)に、導通させることができる。一方、異方導電ゴム部材40の左右方向における導電性は低い。このため、第一接続部13において、左右方向に隣接する配線12同士が導通するおそれはない。同様に、第二接続部13において、左右方向に隣接する配線22同士が導通するおそれはない。このように、異方導電ゴム部材40によると、対向する複数の配線12、22同士を、まとめて導通させることができる。
【0067】
本実施形態の製造方法によると、配線体作製工程と、配置工程と、接着工程と、により、配線体接続構造体1を容易に製造することができる。また、異方導電ゴム部材40を介して対向する配線12、22同士を導通させるためには、第一接続部13と異方導電ゴム部材40と第二接続部23との積層部を、クリップ50で挟持するだけでよい。つまり、加熱処理は必要ない。したがって、製造時において、エラストマーの熱膨張を考慮する必要はない。
【0068】
<その他>
以上、本発明の配線体接続構造体およびその製造方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0069】
例えば、第一配線体の下面に、配線を外部から絶縁するための絶縁被覆層を配置してもよい。この場合、第一配線体の第一接続部以外に形成されている配線を、下方から覆うように、絶縁被覆層を配置すればよい。同様に、第二配線体の上面に、配線を外部から絶縁するための絶縁被覆層を配置してもよい。この場合、第二配線体の第二接続部以外に形成されている配線を、上方から覆うように、絶縁被覆層を配置すればよい。絶縁被覆層を配置すると、各配線体を補強できると共に、防水性等の向上を図ることができる。
【0070】
また、第一実施形態において、配線体接続構造体の全体を、弾性変形可能な絶縁フィルム等により被覆してもよい。こうすることにより、第一配線体の伸縮を規制することなく、配線体接続構造体を補強できると共に、防水性等の向上を図ることができる。被覆用の絶縁フィルム材料としては、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム等が好適である。これらの材料は、弾性変形可能であるため、第一配線体に配置する絶縁被覆層としても好適である。
【0071】
上記実施形態では、第二配線体として、FPCを使用した。しかし、第二配線体はFPCに限定されない。第二配線体として、例えば、フレキシブルフラットケーブル(FFC)等を使用してもよい。この場合、FFCの一端の絶縁フィルムを取り除き、配線を表出させて第二接続部とすればよい。また、第二配線体を接続するコネクタの種類は、特に限定されない。例えば、FPC、FFC等と接続可能な既存のコネクタ(ZIFコネクタ等)を使用すればよい。
【0072】
第一配線体の基板材料であるエラストマーとしては、上記実施形態のウレタンゴムの他、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン等を用いることができる。
【0073】
また、第一配線体の配線は、エラストマーと導電材とを含む。エラストマーは、基板材料のエラストマーと同じでもよく、異なっていてもよい。上記実施形態のウレタンゴムの他、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン等が好適である。導電材の種類は、特に限定されない。例えば、銀、金、銅、ニッケル等の金属粉末、導電性を有するカーボン粉末等が好適である。所望の導電性を発現させるため、エラストマーにおける導電材の充填率は、配線の体積を100vol%とした場合の20vol%以上であることが望ましい。一方、導電材の充填率が65vol%を超えると、エラストマーへの混合が困難となり、成形加工性が低下する。加えて、配線の伸縮性が低下する。このため、導電材の充填率は、50vol%以下であることが望ましい。
【0074】
配線の形成方法は、特に限定されない。例えば、まず、配線の形成成分を含む配線用塗料から、未加硫の薄膜状の配線を作製する。次に、当該配線を基板の一面に配置して、所定の条件下でプレスして加硫接着すればよい。また、配線用塗料を、基板の一面に印刷し、その後、加熱により乾燥させて、塗料中の溶剤を揮発させてもよい。印刷法によると、加熱時に、エラストマー分の架橋反応を同時に進行させることもできる。印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、パッド印刷、リソグラフィー等が挙げられる。なかでも、高粘度の塗料も使用可能であり、塗膜厚さの調整が容易であるという理由から、スクリーン印刷法が好適である。配線用塗料は、配線の形成成分(エラストマー、導電材、添加剤等)を溶剤に混合して、調製すればよい。この場合、所望の粘度になるよう、固形分濃度を調整するとよい。
【0075】
第一実施形態では、エポキシ樹脂(熱硬化型接着剤)を母材とする異方導電接着剤を使用した。熱硬化型接着剤の主剤としては、上記エポキシ樹脂の他、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン等を使用することができる。主剤の種類に応じて、適宜、硬化剤等の添加剤を組み合わせればよい。
【0076】
エラストマーの熱膨張を抑制するという観点から、熱硬化型接着剤は、低温かつ短時間で硬化するものが望ましい。具体的には、硬化温度が、130℃以上180℃以下のものが望ましい。また、硬化時間が60秒以下、さらには20秒以下のものが望ましい。また、異方導電接着剤の物性変化を抑制して、接続部分の信頼性を確保するという観点から、できるだけガラス転移温度(Tg)の高いものが望ましい。例えば、Tgが130℃以上のものが好適である。熱硬化型接着剤を母材とする好適な異方導電接着剤として、京セラケミカル(株)製の異方導電接続材料「TAP0402F」、「TAP0401C」等が挙げられる。
【0077】
熱硬化型接着剤を母材として使用する場合、エラストマーの熱膨張を抑制するという観点から、第一配線体側に放熱手段を配置した状態で、異方導電接着剤の硬化を行うとよい。すなわち、本発明の第一の配線体接続構造体の製造方法における接着工程を、積層部の第一配線体側に放熱手段を配置した状態で行うとよい。放熱手段としては、放熱板、冷媒による熱交換装置等が挙げられる。
【0078】
また、異方導電接着剤は、紫外線硬化型接着剤を母材とするものでもよい。紫外線硬化型接着剤の主剤としては、上記熱硬化型接着剤と同様に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を使用することができる。主剤の種類に応じて、適宜、硬化剤等の添加剤を組み合わせればよい。
【0079】
また、異方導電接着剤は、熱可塑型接着剤を母材とするものでもよい。使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。熱可塑型接着剤を母材とする好適な異方導電接着剤として、サンユレック(株)製の異方導電接着剤「NIR−30E」等が挙げられる。
【0080】
また、異方導電接着剤は、エラストマー系接着剤を母材とするものでもよい。使用されるエラストマーとしては、例えば、クロロプレンゴム、アクリルゴム等が挙げられる。エラストマー系接着剤を母材とする好適な異方導電接着剤として、サンユレック(株)製の異方導電接着剤「NIR−11」、(株)スリーボンド製の「TB3373C」等が挙げられる。
【0081】
母材に充填される導電粒子の種類は、特に限定されない。ニッケル等の金属粒子や、樹脂粒子の表面を金属でめっきした粒子等を使用することができる。
【0082】
異方導電接着剤の固化または硬化は、使用する母材の種類に応じて、その方法、条件等を適宜決定すればよい。また、異方導電接着剤の固化または硬化は、積層部を加圧しながら行うことが望ましい。例えば、圧力を、9.8〜490kPa程度とするとよい。
【0083】
第二実施形態では、シリコーンゴムを母材とする異方導電ゴム部材を使用した。シリコーンゴムは、電気絶縁性が高いため、好適である。しかし、母材の種類は、特に限定されない。また、母材に充填される導電材の種類も、特に限定されない。母材中に配向可能な、導電性カーボンや金属等の繊維、粒子等を使用することができる。好適な異方導電ゴム部材として、信越ポリマー(株)製の「異方導電シートAFタイプ」、「異方導電シートMAFタイプ」、「異方導電シートGB−Matrixタイプ」等が挙げられる。
【0084】
上記実施形態では、配線体接続構造体の製造方法を、配線体作製工程を含んで構成した。しかし、第一配線体と第二配線体とが予め準備されている場合には、配線体作製工程を省略することができる。
【0085】
上記第二実施形態では、固定部材として、板ばねを有するクリップを使用した。しかし、固定部材の構成、材質等は、上記第二実施形態に限定されない。固定部材は、積層部に略一定の荷重を加え続けられる部材を有することが望ましい。このような部材として、上記板ばね等のばね部材が好適である。固定部材のばね定数は、エラストマーの圧縮弾性率および圧縮永久歪み等を考慮して、適宜調整するとよい。例えば、積層部に加える荷重を、10kPa〜1000kPa程度とするとよい。また、上記第二実施形態のクリップには、第二挟持部に一対のピンを配置した。しかし、一対のピンは、必ずしも必要ではない。
【実施例】
【0086】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。上記第二実施形態の配線体接続構造体について、異方導電ゴム部材を介して導通した各々の配線の導電性を評価した。まず、第一配線体の前端(方位は前出図3参照)にコネクタを接続した(以下、本態様の配線体接続構造体を実施例の配線体接続構造体と称す)。次に、16本の配線の各々について、第一配線体の前端のコネクタと、第二配線体の後端のコネクタと、の間の電気抵抗を測定した。16本の配線は、左右方向からNo.1〜No.16と番号づけした。
【0087】
一方、比較のため、積層部をクリップで挟持するのではなく、布テープで固定して、配線体接続構造体を製造した(以下、比較例の配線体接続構造体と称す)。そして、実施例の配線体接続構造体と同様にして、16本の配線における電気抵抗を測定した。図7に、測定結果を示す。
【0088】
図7に示すように、実施例の配線体接続構造体では、いずれの配線についても電気抵抗が小さく、導電性は良好であった。また、16本の配線の電気抵抗を比較した場合、ほとんど差は見られなかった。つまり、16本の配線において、電気抵抗のばらつきがほとんどなかった。これに対して、比較例の配線体接続構造体では、いずれの配線についても電気抵抗が大きく、導電性は、配線として使用できるレベルではなかった。また、16本の配線を比較した場合、電気抵抗のばらつきが大きかった。このように、第一配線体と第二配線体とを、異方導電ゴム部材を介して接続する場合には、所定の荷重を加えた状態で接続部分を固定する必要があることが確認された。
【0089】
また、実施例の配線体接続構造体について、第一配線体を200回伸縮させた後に、電気抵抗を測定した(伸縮率20%)。その結果、伸縮前後において、電気抵抗の変化は小さかった。すなわち、本発明の配線体接続構造体によると、第一配線体が伸縮を繰り返しても、良好な導通状態が維持されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の配線体接続構造体は、エラストマーを利用した柔軟なセンサ、アクチュエータ等における伸縮可能な配線を、電気回路に接続するのに有用である。
【符号の説明】
【0091】
1:配線体接続構造体
10:第一配線体 11:エラストマーシート(基板) 12:配線 13:第一接続部
130a、130b:ピン穴
20:第二配線体 21:絶縁基板 22:配線 23:第二接続部
230a、230b:ピン穴
30:異方導電接着剤
40:異方導電ゴム部材 400a、400b:ピン穴
50:クリップ(固定部材) 51:上側挟持部 52:下側挟持部 53:連結部
54 板ばね(ばね部材) 55a、55b:ピン 56a、56b:上側爪部
57a、57b:下側爪部 58:フレーム
520:上面 540:押圧部 541a、541b:取付部
9:コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー製の基板と、該基板の厚さ方向一面に配置されエラストマーと該エラストマー中に充填されている導電材とを含む複数の配線と、複数の該配線が表出した第一接続部と、を有する伸縮可能な第一配線体と、
複数の配線と、複数の該配線が表出し該第一接続部と対向して配置される第二接続部と、を有し、回路基板のコネクタに接続可能な第二配線体と、
該第一接続部と該第二接続部との間に介装され、対向する該配線同士を接着すると共に厚さ方向に導通させる異方導電接着剤と、
を備えることを特徴とする配線体接続構造体。
【請求項2】
前記異方導電接着剤は、熱硬化型接着剤に導電粒子が分散されてなる請求項1に記載の配線体接続構造体。
【請求項3】
エラストマー製の基板と、該基板の厚さ方向一面に配置されエラストマーと該エラストマー中に充填されている導電材とを含む複数の配線と、複数の該配線が表出した第一接続部と、を有する伸縮可能な第一配線体と、複数の配線と、複数の該配線が表出し該第一接続部と対向して配置される第二接続部と、を有し、回路基板のコネクタに接続可能な第二配線体と、について、該第一接続部と該第二接続部との間に異方導電接着剤を挟装し、該第一接続部と該第二接続部とを対向させて配置する配置工程と、
挟装された該異方導電接着剤を固化または硬化させることにより、対向する該配線同士を厚さ方向に導通可能に接着する接着工程と、
を有することを特徴とする配線体接続構造体の製造方法。
【請求項4】
前記異方導電接着剤は、熱硬化型接着剤に導電粒子が分散されてなり、
前記接着工程において、該異方導電接着剤の硬化を、前記第一接続部と該異方導電接着剤と前記第二接続部とが積層された積層部を該第二配線体側から加熱すると共に積層方向に加圧して行う請求項3に記載の配線体接続構造体の製造方法。
【請求項5】
エラストマー製の基板と、該基板の厚さ方向一面に配置されエラストマーと該エラストマー中に充填されている導電材とを含む複数の配線と、複数の該配線が表出した第一接続部と、を有する伸縮可能な第一配線体と、
複数の配線と、複数の該配線が表出し該第一接続部と対向して配置される第二接続部と、を有し、回路基板のコネクタに接続可能な第二配線体と、
該第一接続部と該第二接続部との間に介装される異方導電ゴム部材と、
該異方導電ゴム部材を介して対向する該配線同士が厚さ方向に導通するように、該第一接続部と該異方導電ゴム部材と該第二接続部とが積層された積層部を弾性的に挟圧しながら固定する固定部材と、
を備えることを特徴とする配線体接続構造体。
【請求項6】
前記固定部材は、前記積層部を押圧するばね部材を有する請求項5に記載の配線体接続構造体。
【請求項7】
エラストマー製の基板と、該基板の厚さ方向一面に配置されエラストマーと該エラストマー中に充填されている導電材とを含む複数の配線と、複数の該配線が表出した第一接続部と、を有する伸縮可能な第一配線体と、複数の配線と、複数の該配線が表出し該第一接続部と対向して配置される第二接続部と、を有し、回路基板のコネクタに接続可能な第二配線体と、について、該第一接続部と該第二接続部との間に異方導電ゴム部材を挟装し、該第一接続部と該第二接続部とを対向させて配置する配置工程と、
該異方導電ゴム部材を介して対向する該配線同士が厚さ方向に導通するように、該第一接続部と該異方導電ゴム部材と該第二接続部とが積層された積層部を、弾性的に挟圧可能な固定部材で挟持することにより固定する固定工程と、
を有することを特徴とする配線体接続構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−34822(P2011−34822A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180398(P2009−180398)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】