配線回路基板およびその製造方法
【課題】信号線路対の占有面積の増加を抑制しつつ信号線路対のインピーダンスの低減および信号のスキューの低減を可能とする配線回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】カバー絶縁層42aがベース絶縁層41上に形成される。書込用配線パターンW1は線路LA1〜LA3を含み、書込用配線パターンW2は線路LB1〜LB3を含む。書込用配線パターンW1,W2は信号線路対を構成し、線路LA2,LB2はカバー絶縁層42aの上面に配置され、線路LA3,LB3はベース絶縁層41の上面に配置される。線路LA2,LB2の少なくとも一部はカバー絶縁層42aを介してそれぞれ線路LB3,LA3に対向する。線路LA2,LA3は線路LA1と電気的に接続され、線路LB2,LB3は線路LB1と電気的に接続される。線路LB1はベース絶縁層41の下面のジャンパー配線を通して線路LB2,LB3の少なくとも一方と電気的に接続される。
【解決手段】カバー絶縁層42aがベース絶縁層41上に形成される。書込用配線パターンW1は線路LA1〜LA3を含み、書込用配線パターンW2は線路LB1〜LB3を含む。書込用配線パターンW1,W2は信号線路対を構成し、線路LA2,LB2はカバー絶縁層42aの上面に配置され、線路LA3,LB3はベース絶縁層41の上面に配置される。線路LA2,LB2の少なくとも一部はカバー絶縁層42aを介してそれぞれ線路LB3,LA3に対向する。線路LA2,LA3は線路LA1と電気的に接続され、線路LB2,LB3は線路LB1と電気的に接続される。線路LB1はベース絶縁層41の下面のジャンパー配線を通して線路LB2,LB3の少なくとも一方と電気的に接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ装置等のドライブ装置にはアクチュエータが用いられる。このようなアクチュエータは、回転軸に回転可能に設けられるアームと、アームに取り付けられる磁気ヘッド用の回路付きサスペンション基板とを備える。回路付きサスペンション基板は、磁気ディスクの所望のトラックに磁気ヘッドを位置決めするための配線回路基板である。
【0003】
回路付きサスペンション基板は磁気ヘッドを備え、他の電子回路と接続される。回路付きサスペンション基板には信号線路が形成され、他の電子回路と磁気ヘッドとの間では、信号線路を介して電気信号が伝送される。
【0004】
特許文献1には、読取/書込変換器ヘッドを読取/書込回路に電気的に相互接続するためのトレース相互接続アレイが記載されている。このトレース相互接続アレイにおいては、複数のトレース導体が単一の面に対称をなして交互に配置される。
【0005】
特許文献2には、回路付きサスペンション基板が記載されている。この回路付きサスペンション基板には、第1リード配線、第2リード配線、第1ライト配線および第2ライト配線が形成される。ベース絶縁層上に第1リード配線および第1ライト配線が形成されるとともに、第1リード配線および第1ライト配線を覆うようにベース絶縁層上に中間絶縁層が形成される。中間絶縁層上に、第1リード配線および第1ライト配線と厚み方向において対向するように第2リード配線および第2ライト配線が形成される。
【0006】
特許文献3には、記憶媒体に隣接して読取/書込ヘッド/スライダアセンブリを支持しかつヘッドを読取/書込回路構成に電気的に相互接続するための一体的なロードビームアセンブリが記載されている。このロードビームアセンブリのトレースアレイは、第1および第2の導電性トレースを含む。第1の導電性トレースは、第1および第2のトレース経路に分岐される。また、第2の導電性トレースは、第3および第4のトレース経路に分岐される。第1の導電性トレースの第1のトレース経路および第2の導電性トレースの第3のトレース経路は、第1の絶縁ポリイミド層上に配置される。第1の絶縁ポリイミド層上には第2の絶縁ポリイミド層が配置される。第1の導電性トレースの第2のトレース経路および第2の導電性トレースの第4のトレース経路は、第2の絶縁ポリイミド層上に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−124837号公報
【特許文献2】特開2009−99687号公報
【特許文献3】特開平10−125023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたトレース相互接続アレイにおいては、複数のトレース導体間のインダクタンスが低減される。それにより、複数のトレース導体の特性インピーダンスを低減することができる。しかしながら、複数のトレース導体が交互に配置されるため、トレース相互接続アレイの面積が大きくなる。
【0009】
特許文献2に記載された回路付きサスペンション基板においては、第2リード配線および第2ライト配線がそれぞれ第1リード配線および第1ライト配線の上方に配置される。それにより、回路付きサスペンション基板の面積を小さくすることが可能となる。しかしながら、第1リード配線および第2リード配線の特性インピーダンスならびに第1ライト配線および第2ライト配線の特性インピーダンスの低減が望まれる。
【0010】
特許文献3には、第1および第2の導電性トレースを第1〜第4のトレース経路に分岐させるための構成については記載されていない。例えば、第1の導電性トレースの第1または第2のトレース経路が第2の導電性トレースを大きく迂回するように分岐される場合、第1および第2のトレース経路を伝送する信号に大きなスキュー(タイミングのずれ)が発生する可能性がある。同様に、第2の導電性トレースの第3または第4のトレース経路が第1の導電性トレースを大きく迂回するように分岐される場合、第3および第4のトレース経路を伝送する信号に大きなスキューが発生する可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、信号線路対の占有面積の増加を抑制しつつ信号線路対のインピーダンスの低減および信号のスキューの低減を可能とする配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)第1の発明に係る配線回路基板は、第1および第2の面を有する第1の絶縁層と、第3および第4の面を有し、第4の面が第1の面に接するように第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層と、第1の絶縁層の第1の面上および第2の絶縁層の第3の面上に形成され、信号線路対を構成する第1および第2の配線パターンと、第1の絶縁層の第2の面上に形成される導電性の接続層とを備え、第1の配線パターンは、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に配置される第1の線路と、第2の絶縁層の第3の面上に配置され、第1の線路と電気的に接続される第2の線路と、第1の絶縁層の第1の面上に配置され、第1の線路と電気的に接続される第3の線路とを含み、第2の配線パターンは、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に配置される第4の線路と、第2の絶縁層の第3の面上に配置され、第4の線路と電気的に接続される第5の線路と、第1の絶縁層の第1の面上に配置され、第4の線路と電気的に接続される第6の線路とを含み、第2の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第6の線路に対向するように配置され、第5の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第3の線路に対向するように配置され、第4の線路は、接続層を通して第5および第6の線路の少なくとも一方と電気的に接続されるものである。
【0013】
この配線回路基板においては、第2の絶縁層の第4の面が第1の絶縁層の第1の面に接するように、第2の絶縁層が第1の絶縁層上に形成される。第1および第2の配線パターンにより信号線路対が構成される。
【0014】
第1の配線パターンの第1の線路は、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第2の線路は、第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第3の線路は、第1の絶縁層の第1の面上に配置される。第2および第3の線路は、第1の線路と電気的に接続される。それにより、第1の線路が第2の線路と第3の線路とに分岐する。第2の配線パターンの第4の線路は、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第5の線路は、第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第6の線路は、第1の絶縁層の第1の面上に配置される。第5および第6の線路は、第4の線路と電気的に接続される。それにより、第4の線路が第5の線路と第6の線路とに分岐する。
【0015】
ここで、第1の配線パターンの第2の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第2の配線パターンの第6の線路に対向する。また、第2の配線パターンの第5の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第1の配線パターンの第3の線路に対向する。さらに、第1の配線パターンの第2の線路と第2の配線パターンの第5の線路とは、第2の絶縁層上で互いに対向する。また、第1の配線パターンの第3の線路と第2の配線パターンの第6の線路とは、第1の絶縁層上で互いに対向する。
【0016】
これにより、第1の配線パターンと第2の配線パターンとの対向面積が大きくなるため、第1および第2の配線パターンのキャパシタンスが大きくなる。その結果、第1および第2の配線パターンの特性インピーダンスが低減される。
【0017】
また、第1の配線パターンの第2の線路と第2の配線パターンの第6の線路とが第2の絶縁層を介して重なるように配置され、第1の配線パターンの第3の線路と第2の配線パターンの第5の線路とが第2の絶縁層を介して重なるように配置される。それにより、第1の配線パターンの第2および第3の線路と第2の配線パターンの第5および第6の線路とによる占有面積が小さくなる。
【0018】
また、第4の線路は、第1の絶縁層の第2の面上の接続層を通して第5および第6の線路の少なくとも一方と電気的に接続される。この場合、第1の配線パターンの第1の線路から第2および第3の線路への分岐部分と第2の配線パターンの第4の線路から第5および第6の線路への分岐部分とを、第1の絶縁層の厚み方向において異なる位置に形成することができる。それにより、第1の配線パターンの分岐部分および第2の配線パターンの分岐部分の占有面積の増加を防止することができる。
【0019】
さらに、第1の配線パターンの分岐部分で第2および第3の線路の一方が第2の配線パターンを大きく迂回する必要がなく、第2の配線パターンの分岐部分で第5および第6の線路の一方が第1の配線パターンを大きく迂回する必要がない。したがって、第1の配線パターンの第2および第3の線路の長さを容易に等しくすることが可能となり、第2の配線パターンの第5および第6の線路の長さを容易に等しくすることが可能となる。それにより、第1の配線パターンの第2および第3の線路を伝送する信号のスキュー(タイミングのずれ)および第2の配線パターンの第5および第6の線路を伝送する信号のスキューを低減することができる。
【0020】
(2)第1の絶縁層は、第4の線路と接続層との間に第1の貫通孔を有し、かつ第5および第6の線路の少なくとも一方と接続層との間に第2の貫通孔を有し、第4の線路は、第1の貫通孔を通して接続層と電気的に接続され、第5および第6の線路の少なくとも一方は、第2の貫通孔を通して接続層と電気的に接続されてもよい。
【0021】
この場合、第4の線路は、第1の絶縁層の第1の貫通孔を通して接続層に電気的に接続される。また、第5および第6の線路の少なくとも一方は、第1の絶縁層の第2の貫通孔を通して接続層に電気的に接続される。これにより、第2の配線パターンの分岐部分の占有面積を小さくすることができる。その結果、配線回路基板を小型化することができる。
【0022】
(3)第1の線路および第4の線路は、第2の絶縁層の第3の面上に形成されてもよい。
【0023】
この場合、第1の配線パターンの第1の線路および第2の配線パターンの第4の線路が同一の第3の面上に配置される。これにより、第1および第2の配線パターンを同一の面上に設けられた他の回路または端子と容易に接続することができる。
【0024】
(4)第1の線路および第4の線路は、第1の絶縁層の第1の面上に形成されてもよい。
【0025】
この場合、第1の配線パターンの第1の線路および第2の配線パターンの第4の線路が同一の第1の面上に配置される。これにより、第1および第2の配線パターンを同一の面上に設けられた他の回路または端子と容易に接続することができる。
【0026】
(5)第1の線路および第4の線路の一方は、第1の絶縁層の第1の面上に形成され、第1の線路および第4の線路の他方は、第2の絶縁層の第3の面上に形成されてもよい。
【0027】
この場合、第1および第2の配線パターンの一方を第1の絶縁層の第1の面上に形成される他の回路または端子と容易に接続することができる。また、第1および第2の配線パターンの他方を第2の絶縁層の第3の面上に形成される他の回路または端子と容易に接続することができる。
【0028】
(6)第2の発明に係る配線回路基板の製造方法は、第1および第2の面を有する第1の絶縁層上に第3および第4の面を有する第2の絶縁層を第4の面が第1の面に接するように形成する工程と、第1の絶縁層の第1の面上および第2の絶縁層の第3の面上に信号線路対を構成する第1および第2の配線パターンを形成する工程と、第1の絶縁層の第2の面上に導電性の接続層を形成する工程とを備え、第1の配線パターンを形成する工程は、第2の絶縁層の第3の面上に第2の線路を形成する工程と、第1の絶縁層の第1の面上に第3の線路を形成する工程と、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に第1の線路を形成する工程とを含み、第2および第3の線路は第1の線路と電気的に接続され、第2の配線パターンを形成する工程は、第2の絶縁層の第3の面上に第5の線路を形成する工程と、第1の絶縁層の第1の面上に第6の線路を形成する工程と、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に第4の線路を形成する工程とを含み、第5および第6の線路は第4の線路と電気的に接続され、第2の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第6の線路に対向するように配置され、第5の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第3の線路に対向するように配置され、第4の線路は、接続層を通して第5および第6の線路の少なくとも一方と電気的に接続されるものである。
【0029】
この配線回路基板に製造方法によれば、第2の絶縁層の第4の面が第1の絶縁層の第1の面に接するように、第2の絶縁層が第1の絶縁層上に形成される。第1および第2の配線パターンにより信号線路対が構成される。
【0030】
第1の配線パターンの第1の線路は、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第2の線路は、第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第3の線路は、第1の絶縁層の第1の面上に配置される。第2および第3の線路は、第1の線路と電気的に接続される。それにより、第1の線路が第2の線路と第3の線路とに分岐する。第2の配線パターンの第4の線路は、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第5の線路は、第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第6の線路は、第1の絶縁層の第1の面上に配置される。第5および第6の線路は、第4の線路と電気的に接続される。それにより、第4の線路が第5の線路と第6の線路とに分岐する。
【0031】
ここで、第1の配線パターンの第2の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第2の配線パターンの第6の線路に対向する。また、第2の配線パターンの第5の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第1の配線パターンの第3の線路に対向する。さらに、第1の配線パターンの第2の線路と第2の配線パターンの第5の線路とは、第2の絶縁層上で互いに対向する。また、第1の配線パターンの第3の線路と第2の配線パターンの第6の線路とは、第1の絶縁層上で互いに対向する。
【0032】
これにより、第1の配線パターンと第2の配線パターンとの対向面積が大きくなるため、第1および第2の配線パターンのキャパシタンスが大きくなる。その結果、第1および第2の配線パターンの特性インピーダンスが低減される。
【0033】
また、第1の配線パターンの第2の線路と第2の配線パターンの第6の線路とが第2の絶縁層を介して重なるように配置され、第1の配線パターンの第3の線路と第2の配線パターンの第5の線路とが第2の絶縁層を介して重なるように配置される。それにより、第1の配線パターンの第2および第3の線路と第2の配線パターンの第5および第6の線路とによる占有面積が小さくなる。
【0034】
また、第4の線路は、第1の絶縁層の第2の面上の接続層を通して第5および第6の線路の少なくとも一方と電気的に接続される。この場合、第1の配線パターンの第1の線路から第2および第3の線路への分岐部分と第2の配線パターンの第4の線路から第5および第6の線路への分岐部分とを、第1の絶縁層の厚み方向において異なる位置に形成することができる。それにより、第1の配線パターンの分岐部分および第2の配線パターンの分岐部分の占有面積の増加を防止することができる。
【0035】
さらに、第1の配線パターンの分岐部分で第2および第3の線路の一方が第2の配線パターンを大きく迂回する必要がなく、第2の配線パターンの分岐部分で第5および第6の線路の一方が第1の配線パターンを大きく迂回する必要がない。したがって、第1の配線パターンの第2および第3の線路の長さを容易に等しくすることが可能となり、第2の配線パターンの第5および第6の線路の長さを容易に等しくすることが可能となる。それにより、第1の配線パターンの第2および第3の線路を伝送する信号のスキュー(タイミングのずれ)および第2の配線パターンの第5および第6の線路を伝送する信号のスキューを低減することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、信号線路対の占有面積の増加を抑制しつつ信号線路対のインピーダンスおよび信号のスキューを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態に係るサスペンション基板の上面図である。
【図2】書込用配線パターンの構成を示す平面図である。
【図3】図2のサスペンション基板のX部の透視的な斜視図である。
【図4】図2のサスペンション基板のX部のカバー絶縁層の上面上の書込用配線パターンの部分の拡大平面図である。
【図5】図2のサスペンション基板のX部のベース絶縁層の上面上の書込用配線パターンの部分の拡大平面図である。
【図6】図2のサスペンション基板のX部の支持基板の拡大平面図である。
【図7】図3〜図6のサスペンション基板の縦断面図である。
【図8】図3〜図6のサスペンション基板の縦断面図である。
【図9】サスペンション基板の製造工程を示す縦断面図である。
【図10】サスペンション基板の製造工程を示す縦断面図である。
【図11】サスペンション基板の製造工程を示す縦断面図である。
【図12】サスペンション基板の製造工程を示す縦断面図である。
【図13】第1の変形例におけるサスペンション基板の縦断面図である。
【図14】第2の変形例におけるサスペンション基板の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。以下、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板として、ハードディスクドライブ装置のアクチュエータに用いられるサスペンション基板の構造およびその製造方法について説明する。
【0039】
(1)サスペンション基板の構造
図1は、本発明の一実施の形態に係るサスペンション基板の上面図である。図1に示すように、サスペンション基板1は、金属製の長尺状の支持基板により形成されるサスペンション本体部100を備える。サスペンション本体部100上には、太い点線で示すように、書込用配線パターンW1,W2および読取用配線パターンR1,R2が形成されている。書込用配線パターンW1と書込用配線パターンW2とは、信号線路対を構成する。また、読取用配線パターンR1と読取用配線パターンR2とは、信号線路対を構成する。
【0040】
サスペンション本体部100の先端部には、U字状の開口部11を形成することにより磁気ヘッド搭載部(以下、タング部と呼ぶ)12が設けられている。タング部12は、サスペンション本体部100に対して所定の角度をなすように破線Rの箇所で折り曲げ加工される。タング部12の端部には4つの電極パッド21,22,23,24が形成されている。
【0041】
サスペンション本体部100の他端部には4つの電極パッド31,32,33,34が形成されている。タング部12上の電極パッド21〜24とサスペンション本体部100の他端部の電極パッド31〜34とは、それぞれ書込用配線パターンW1,W2および読込用R1,R2により電気的に接続されている。また、サスペンション本体部100には複数の孔部Hが形成されている。
【0042】
サスペンション基板1を備える図示しないハードディスク装置においては、磁気ディスクに対する情報の書込み時に一対の書込用配線パターンW1,W2に電流が流れる。また、磁気ディスクに対する情報の読込み時に一対の読込用配線パターンR1,R2に電流が流れる。
【0043】
(2)書込用配線パターン
次に、書込用配線パターンW1,W2の詳細な構成について説明する。図2は、書込用配線パターンW1,W2の構成を示す平面図である。図3は、図2のサスペンション基板1のX部の透視的な斜視図である。
【0044】
図2に示すように、書込用配線パターンW1は、線路LA1〜LA5により構成される。書込用配線パターンW2は、線路LB1〜LB5により構成される。図3に示すように、金属製の支持基板10上にベース絶縁層41が形成される。ベース絶縁層41の上面上に書込用配線パターンW1の線路LA3,LA5および書込用配線パターンW2のLB3,LB5が形成される。書込用配線パターンW1の線路LA3,LA5および書込用配線パターンW2のLB3,LB5を覆うように、ベース絶縁層41の上面上にカバー絶縁層42aが形成される。これにより、カバー絶縁層42aの下面とベース絶縁層41の上面とが接する。
【0045】
カバー絶縁層42aの上面上に書込用配線パターンW1の線路LA1,LA2,LA4および書込用配線パターンW2のLB1,LB2,LB4が形成される。書込用配線パターンW1の線路LA1,LA2,LA4および書込用配線パターンW2のLB1,LB2,LB4を覆うように、カバー絶縁層42aの上面上にカバー絶縁層42bが形成される。これにより、カバー絶縁層42bの下面とカバー絶縁層42aの上面とが接する。
【0046】
このように、線路LA3,LA5および線路LB3,LB5は第1の高さの平面上に形成される。線路LA1,LA2,LA4および線路LB1,LB2,LB4は第1の高さよりも高い第2の高さの平面上に形成される。線路LA3は線路LB2の下方に位置し、線路LB3は線路LA2の下方に位置する。
【0047】
図2に示すように、書込用配線パターンW1の線路LA2と書込用配線パターンW2の線路LB2とは、互いに間隔をおいて平行に配置される。書込用配線パターンW1の線路LA3と書込用配線パターンW2の線路LB3とは、互いに間隔をおいて平行に配置される。
【0048】
線路LA2の一端部は線路LA1の一端部に一体化し、線路LA2の他端部は線路LA4の一端部に一体化する。線路LA1の他端部は電極パッド31に接続され、線路LA4の他端部は電極パッド21に接続される。線路LA5の一端部は線路LA1の一端部に電気的に接続され、線路LA5の他端部は線路LA3の一端部に一体化される。線路LA3の他端部と線路LA2の他端部とが交差領域CN2において電気的に接続される。交差領域CN2の詳細については後述する。
【0049】
線路LB2の一端部は線路LB1の一端部に一体化し、線路LB2の他端部は線路LB4の一端部に一体化する。線路LB1の他端部は電極パッド32に接続され、線路LB4の他端部は電極パッド22に接続される。線路LB5の一端部は線路LB4の一端部に電気的に接続され、線路LB5の他端部は線路LB3の一端部に一体化される。線路LB3の他端部と線路LB2の一端部とが交差領域CN1において電気的に接続される。交差領域CN1の詳細については後述する。
【0050】
線路LA1,LB2が配置されるサスペンション基板1の一端部の領域を第1の領域D1と呼ぶ。線路LA2,LA3,LB2,LB3が配置されるサスペンション基板1の略中央部の領域を第2の領域D2と呼ぶ。線路LA4,LB4が配置されるサスペンション基板1の他端部の領域を第3の領域D3と呼ぶ。
【0051】
図4は、図2のサスペンション基板1のX部のカバー絶縁層42aの上面上の書込用配線パターンW1,W2の部分の拡大平面図である。図5は、図2のサスペンション基板1のX部のベース絶縁層41の上面上の書込用配線パターンW1,W2の部分の拡大平面図である。図6は、図2のサスペンション基板1のX部の支持基板10の拡大平面図である。
【0052】
図5に示すように、交差領域CN1におけるベース絶縁層41の上面上に書込用配線パターンW1の線路LA5が形成される。同様に、交差領域CN2(図2参照)におけるベース絶縁層41の上面上に書込用配線パターンW2の線路LB5(図2参照)が形成される。
【0053】
図4に示すように、第1の領域D1におけるカバー絶縁層42aの上面上に書込用配線パターンW1の線路LA1および書込用配線パターンW2の線路LB1が形成される。第2の領域D2におけるカバー絶縁層42aの上面上に書込用配線パターンW1の線路LA2および書込用配線パターンW2の線路LB2が形成される。同様に、第3の領域D3(図2参照)におけるカバー絶縁層42aの上面上に書込用配線パターンW1,W2の線路LA4,LB4(図2参照)が形成される。
【0054】
図6に示すように、交差領域CN1における支持基板10には長円形の開口部10hが形成される。開口部10h内には、支持基板10の他の領域から電気的に分離された長円形の島状領域RG1が形成される。本例においては、ベース絶縁層41の下面上に形成された支持基板10の島状領域RG1がジャンパー配線JL1となる。同様に、交差領域CN2(図2参照)における支持基板10には長円形の開口部が形成される。開口部内には、支持基板10の他の領域から電気的に分離された長円形の島状領域が形成される。本例においては、ベース絶縁層41の下面上に形成された支持基板10の島状領域がジャンパー配線JL2(図2参照)となる。
【0055】
開口部10hの形状は、長円形に限定されず、円形、長方形または多角形等の他の形状であってもよい。同様に、ジャンパー配線JL1,JL2の形状は、長円形に限定されず、円形、長方形または多角形等の他の形状であってもよい。
【0056】
図7および図8は、図3〜図6のサスペンション基板1の縦断面図である。図7(a),(b),(c)は、図3〜図6のサスペンション基板1のそれぞれA部断面、B部断面およびC部断面を示す。図8(a),(b)は、図3〜図6のサスペンション基板1のそれぞれD部断面およびE部断面を示す。図8(c)は、図4〜図6のサスペンション基板1のF部断面を示す。
【0057】
図7(c)および図8(c)に示すように、線路LB2とジャンパー配線JL1の一端部との間のベース絶縁層41およびカバー絶縁層42aの部分に貫通孔が形成され、その貫通孔内の導電材料を通して線路LB2とジャンパー配線JL1の一端部とが電気的に接続される。また、図8(a)および図8(c)に示すように、線路LB3とジャンパー配線JL1の他端部との間のベース絶縁層41およびカバー絶縁層42aの部分に貫通孔が形成され、その貫通孔内の導電材料を通して線路LB3とジャンパー配線JL1の他端部とが電気的に接続される。これにより、交差領域CN1において線路LB2と線路LB3とが、ジャンパー配線JL1を介して電気的に接続される。
【0058】
同様に、線路LA2とジャンパー配線JL2(図2参照)の一端部との間のベース絶縁層41およびカバー絶縁層42aの部分に貫通孔が形成され、その貫通孔内の導電材料を通して線路LA2とジャンパー配線JL2の一端部とが電気的に接続される。また、線路LA3とジャンパー配線JL2の他端部との間のベース絶縁層41およびカバー絶縁層42aの部分に貫通孔が形成され、その貫通孔内の導電材料を通して線路LA3とジャンパー配線JL2の他端部とが電気的に接続される。これにより、交差領域CN2において線路LA2と線路LA3とが、ジャンパー配線JL2を介して電気的に接続される。
【0059】
線路LA1,LB1は、サスペンション基板1の第1の領域D1(図2参照)において平行に配置される。図7(a),(b)に示すように、線路LA1,LB1は、支持基板10から第2の高さh2に位置する。図7(b),(c)に示すように、線路LA5は、支持基板10から第1の高さh1に配置される。図7(b)に示すように、線路LA1と線路LA5との間のベース絶縁層41の部分に貫通孔が形成され、その貫通孔内の導電材料を通して線路LA1と線路LA5とが電気的に接続される。同様に、図2の線路LB5は、支持基板10から第1の高さh1に配置される。線路LB4と線路LB5との間のベース絶縁層41の部分に貫通孔が形成され、その貫通孔内の導電材料を通して線路LB4と線路LB5とが電気的に接続される。
【0060】
線路LA3,LB3は、サスペンション基板1の第2の領域D2(図2参照)に平行に配置され、かつ線路LA2,LB2は、サスペンション基板1の第2の領域D2(図2参照)において平行に配置される。図7(c)および図8(a),(b),(c)に示すように、線路LA2,LB2は、支持基板10から第2の高さh2に位置し、線路LA3,LB3は、支持基板10から第1の高さh1に位置する。また、線路LA2の下面と線路LB3の上面とが対向し、線路LB2の下面と線路LA3の上面とが対向する。同様に、図2の線路LA4,LB4は、サスペンション基板1の第3の領域D3(図2参照)において平行に配置される。線路LA4,LB4は、支持基板10から第2の高さh2に位置する。
【0061】
(3)サスペンション基板の製造方法
次に、サスペンション基板1の製造方法について説明する。図9〜図12は、サスペンション基板1の製造工程を示す縦断面図である。ここで、図9(a)〜図12(b)の上段に図2のサスペンション基板1のC部断面の製造工程を示し、下段に図2のサスペンション基板1のD部断面の製造工程を示す。
【0062】
まず、図9(a)に示すように、例えばステンレスからなる支持基板10上に接着剤を用いて例えばポリイミドからなるベース絶縁層41を積層する。
【0063】
支持基板10の厚みは例えば5μm以上50μm以下であり、10μm以上30μm以下であることが好ましい。支持基板10としては、ステンレスに代えてアルミニウム等の他の金属または合金等を用いてもよい。
【0064】
ベース絶縁層41の厚みは例えば1μm以上15μm以下であり、2μm以上12μm以下であることが好ましい。ベース絶縁層41としては、ポリイミドに代えてエポキシ樹脂等の他の絶縁材料を用いてもよい。
【0065】
次に、図9(b)に示すように、交差領域CN1において、エッチング等により、支持基板10に開口部10hを形成する。これにより、支持基板10に、他の領域から分離された島状領域RG1が形成される。ベース絶縁層41の下面上に形成された支持基板10の島状領域RG1がジャンパー配線JL1となる。島状領域RG1の面積は、例えば2000μm2以上180000μm2以下であり、3000μm2以上80000μm2以下であることが好ましい。
【0066】
次に、図10(a)に示すように、交差領域CN1において、ジャンパー配線JL1上のベース絶縁層41の部分に、例えばレーザを用いたエッチングまたはウェットエッチングにより貫通孔H1,H2を形成する。貫通孔H1,H2の直径は例えば10μm以上200μm以下であり、20μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0067】
次に、図10(b)に示すように、ベース絶縁層41の上面上に例えば銅からなる線路LA3,LA5,LB3,LB5を形成する。なお、図9(d)には線路LB5は表れていない。貫通孔H2内には、例えば銅からなる導電材料が充填される。それにより、線路LB3は、貫通孔H2内の導電材料を通してジャンパー配線JL1と電気的に接続される。
【0068】
次に、図11(a)に示すように、線路LA3,LA5,LB3,LB5を覆うようにベース絶縁層41の上面上に例えばポリイミドからなるカバー絶縁層42aを形成する。カバー絶縁層42aの厚みは例えば4μm以上30μm以下であり、5μm以上25μm以下であることが好ましい。カバー絶縁層42aとしては、ポリイミド樹脂に代えてエポキシ樹脂等の他の絶縁材料を用いてもよい。
【0069】
次に、図11(b)に示すように、交差領域CN1において、カバー絶縁層42aの部分に、例えばレーザを用いたエッチングまたはウェットエッチングにより貫通孔H1に連通する貫通孔H3を形成する。貫通孔H3の直径は例えば20μm以上200μm以下であり、40μm以上100μm以下であることが好ましい。なお、図10(b)の工程でベース絶縁層41に貫通孔H1が形成されず、図11(b)の工程で貫通孔H1と貫通孔H3とが同時に形成されてもよい。
【0070】
次に、図12(a)に示すように、カバー絶縁層42aの上面上に例えば銅からなる線路LA1,LA2,LA4,LB1,LB2,LB4を形成する。貫通孔H3,H1内には、例えば銅からなる導電材料が充填される。それにより、線路LB2は、貫通孔H3,H1内の導電材料を通してジャンパー配線JL1と電気的に接続される。その結果、線路LB2と線路LB3とがジャンパー配線JL1を介して電気的に接続される。
【0071】
最後に、図12(b)に示すように、線路LA1,LA2,LA4,LB1,LB2,LB4を覆うようにカバー絶縁層42aの上面上に例えばポリイミドからなるカバー絶縁層42bを形成する。カバー絶縁層42bの厚みは例えば2μm以上26μm以下であり、4μm以上21μm以下であることが好ましい。カバー絶縁層42aとしては、ポリイミド樹脂に代えてエポキシ樹脂等の他の絶縁材料を用いてもよい。このようにして、サスペンション基板1が完成する。
【0072】
線路LA1〜LA5により書込用配線パターンW1が形成され、線路LB1〜LB5により書込用配線パターンW2が形成される。書込用配線パターンW1,W2は、例えばセミアディティブ法を用いて形成されてもよく、サブトラクティブ法等の他の方法を用いて形成されてもよい。
【0073】
書込用配線パターンW1,W2の厚みは例えば3μm以上16μm以下であり、6μm以上13μm以下であることが好ましい。また、書込用配線パターンW1の線路LA1〜LA5および書込用配線パターンW2の線路LB1〜LB5の幅は例えば10μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0074】
書込用配線パターンW1,W2としては、銅に限らず、金(Au)、アルミニウム等の他の金属、または銅合金、アルミニウム合金等の合金を用いてもよい。
【0075】
(4)効果
本実施の形態においては、書込用配線パターンW1の線路LA1,LA2および書込用配線パターンW2の線路LB1,LB2がカバー絶縁層42aの上面上に配置される。書込用配線パターンW1の線路LA3および書込用配線パターンW2の線路LB3がベース絶縁層41の上面上に配置される。線路LA2,LA3が線路LA1と電気的に接続されることにより、線路LA1が線路LA2と線路LA3とに分岐する。線路LB2,LB3が線路LB1と電気的に接続されることにより、線路LB1が線路LB2と線路LB3とに分岐する。
【0076】
ここで、書込用配線パターンW1の線路LA2がカバー絶縁層42aを介して書込用配線パターンW2の線路LB3に対向する。また、書込用配線パターンW2の線路LB2がカバー絶縁層42aを介して書込用配線パターンW1の線路LA3に対向する。さらに、書込用配線パターンW1の線路LA2と書込用配線パターンW2の線路LB2とは、カバー絶縁層42a上で互いに対向する。また、書込用配線パターンW1の線路LA3と書込用配線パターンW2の線路LB3とは、ベース絶縁層41上で互いに対向する。
【0077】
これにより、書込用配線パターンW1と書込用配線パターンW2との対向面積が大きくなるため、書込用配線パターンW1,W2のキャパシタンスが大きくなる。その結果、書込用配線パターンW1,W2の特性インピーダンスが低減される。
【0078】
また、書込用配線パターンW1の線路LA2と書込用配線パターンW2の線路LB3とがカバー絶縁層42aを介して重なるように配置され、書込用配線パターンW1の線路LA3と書込用配線パターンW2の線路LB2とがカバー絶縁層42aを介して重なるように配置される。それにより、書込用配線パターンW1の線路LA2,LA3と書込用配線パターンW2の線路LB2,LB3とによる占有面積が小さくなる。
【0079】
また、線路LB1は、ベース絶縁層41の下面上のジャンパー配線JL1を通して線路LB3と電気的に接続される。この場合、書込用配線パターンW1の線路LA1から線路LA2,LA3への分岐部分と書込用配線パターンW2の線路LB1から線路LB2,LB3への分岐部分とを、ベース絶縁層41の厚み方向において異なる位置に形成することができる。それにより、書込用配線パターンW1の分岐部分および書込用配線パターンW2の分岐部分の占有面積の増加を防止することができる。
【0080】
さらに、書込用配線パターンW1の分岐部分で線路LA2,LA3の一方が書込用配線パターンW2を大きく迂回する必要がなく、書込用配線パターンW2の分岐部分で線路LB2,LB3の一方が書込用配線パターンW1を大きく迂回する必要がない。したがって、書込用配線パターンW1の線路LA2,LA3の長さを容易に等しくすることが可能となり、書込用配線パターンW2の線路LB2,LB3の長さを容易に等しくすることが可能となる。それにより、書込用配線パターンW1の線路LA2,LA3を伝送する信号のスキュー(タイミングのずれ)および書込用配線パターンW2の線路LB2,LB3を伝送する信号のスキューを低減することができる。
【0081】
また、書込用配線パターンW2の線路LB1は、ベース絶縁層41の貫通孔H1およびカバー絶縁層42aの貫通孔H3を通してジャンパー配線JL1に電気的に接続される。さらに、書込用配線パターンW2の線路LB3は、ベース絶縁層41の貫通孔H2を通してジャンパー配線JL1に電気的に接続される。これにより、書込用配線パターンW2の分岐部分の占有面積を小さくすることができる。その結果、サスペンション基板1を小型化することができる。
【0082】
(5)他の実施の形態
(5−1)上記実施の形態において配線回路基板はサスペンション基板1であるが、これに限定されない。配線回路基板は、フレキシブル配線回路基板等の他の配線回路基板であってもよい。この場合、配線回路基板は支持基板10を含まないので、ジャンパー配線JL1,JL2は支持基板10の一部としてではなく、別個に形成される。
【0083】
(5−2)上記実施の形態において、線路LA1,LB1は支持基板10から第2の高さh2に位置するが、これに限定されない。図13は、第1の変形例におけるサスペンション基板1の縦断面図である。図13(a),(b),(c)のサスペンション基板1の断面は、図3〜図6のサスペンション基板1のA部断面に相当する。図13(a)に示すように、線路LA1,LB1は第1の高さh1に位置してもよい。また、図13(b)に示すように、線路LA1は第2の高さh2に位置し、線路LB1は第1の高さh1に位置してもよい。さらに、図13(c)に示すように、線路LA1は第1の高さh1に位置し、線路LB1は第2の高さh2に位置してもよい。
【0084】
同様に、線路LA4,LB4はベース絶縁層41から第2の高さh2に位置するが、これに限定されない。線路LA4,LB4は第1の高さh1に位置してもよい。また、線路LA4は第2の高さh2に位置し、線路LB4は第1の高さh1に位置してもよい。さらに、線路LA4は第1の高さh1に位置し、線路LB4は第2の高さh2に位置してもよい。
【0085】
(5−3)上記実施の形態において、線路LA1,LB1は、互いに間隔をおいて平行に配置されるが、これに限定されない。図14は、第2の変形例におけるサスペンション基板1の縦断面図である。図14のサスペンション基板1の断面は、図3〜図6のサスペンション基板1のA部断面に相当する。図14に示すように、線路LA1,LB1は、上下方向に対向するように配置されてもよい(スタック構造)。
【0086】
図14の例では、線路LA1がベース絶縁層41の上面上に形成され、線路LB1がカバー絶縁層42aの上面上に形成されることにより、線路LA1の上面と線路LB1の下面とが対向する。一方、線路LB1がベース絶縁層41の上面上に形成され、線路LA1がカバー絶縁層42aの上面上に形成されることにより、線路LB1の上面と線路LA1の下面とが対向してもよい。
【0087】
同様に、線路LA4,LB4は、互いに間隔をおいて平行に配置されるが、これに限定されない。線路LA4,LB4は、上下方向に対向するように配置されてもよい(スタック構造)。例えば、線路LA4がベース絶縁層41の上面上に形成され、線路LB4がカバー絶縁層42aの上面上に形成されることにより、線路LA4の上面と線路LB4の下面とが対向してもよい。一方、線路LB4がベース絶縁層41の上面上に形成され、線路LA4がカバー絶縁層42aの上面上に形成されることにより、線路LB4の上面と線路LA4の下面とが対向してもよい。
【0088】
(5−4)上記実施の形態において、線路LA2,LA3は、サスペンション基板1の交差領域CN2において線路LA4に接続されるが、これに限定されない。サスペンション基板1の磁気ヘッドにおいて、線路LA2と線路LA3とが接続される場合、線路LA2,LA3は、サスペンション基板1の交差領域CN2において線路LA4に接続されなくてもよい。
【0089】
同様に、線路LB2,LB3は、サスペンション基板1の交差領域CN2において線路LB4に接続されるが、これに限定されない。サスペンション基板1の磁気ヘッドにおいて、線路LB2と線路LB3とが接続される場合、線路LB2,LB3は、サスペンション基板1の交差領域CN2において線路LB4に接続されなくてもよい。
【0090】
(5−5)上記実施の形態において、読取用配線パターンR1,R2は、それぞれ1つの線路により形成されるが、これに限定されない。読取用配線パターンR1,R2は、書込用配線パターンW1,W2と同様に、電気信号が分岐して伝送されるように構成された複数の線路により形成されてもよい。
【0091】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0092】
サスペンション基板1が配線回路基板の例であり、ベース絶縁層41が第1の絶縁層の例であり、カバー絶縁層42aが第2の絶縁層の例である。ベース絶縁層41の上面および下面がそれぞれ第1および第2の面の例であり、カバー絶縁層42aの上面および下面が第3および第4の面の例である。書込用配線パターンW1,W2がそれぞれ第1および第2の配線パターンの例であり、ジャンパー配線JL1が接続層の例である。線路LA1〜LA3がそれぞれ第1〜第3の線路の例であり、線路LB1〜LB3がそれぞれ第4〜第6の線路の例であり、貫通孔H1,H2がそれぞれ第1および第2の貫通孔の例である。
【0093】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、配線回路基板を備えた種々の電気機器に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 サスペンション基板
10 支持基板
11 開口部
12 タング部
21〜24,31〜34 電極パッド
41 ベース絶縁層
42a,42b カバー絶縁層
100 サスペンション本体部
CN1,CN2 交差領域
D1 第1の領域
D2 第2の領域
D3 第3の領域
H 孔部
H1〜H3 貫通孔
JL1,JL2 ジャンパー配線
LA1〜LA5,LB1〜LB5 線路
R 破線
R1,R2 読取用配線パターン
RG1 島状領域
W1,W2 書込用配線パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ装置等のドライブ装置にはアクチュエータが用いられる。このようなアクチュエータは、回転軸に回転可能に設けられるアームと、アームに取り付けられる磁気ヘッド用の回路付きサスペンション基板とを備える。回路付きサスペンション基板は、磁気ディスクの所望のトラックに磁気ヘッドを位置決めするための配線回路基板である。
【0003】
回路付きサスペンション基板は磁気ヘッドを備え、他の電子回路と接続される。回路付きサスペンション基板には信号線路が形成され、他の電子回路と磁気ヘッドとの間では、信号線路を介して電気信号が伝送される。
【0004】
特許文献1には、読取/書込変換器ヘッドを読取/書込回路に電気的に相互接続するためのトレース相互接続アレイが記載されている。このトレース相互接続アレイにおいては、複数のトレース導体が単一の面に対称をなして交互に配置される。
【0005】
特許文献2には、回路付きサスペンション基板が記載されている。この回路付きサスペンション基板には、第1リード配線、第2リード配線、第1ライト配線および第2ライト配線が形成される。ベース絶縁層上に第1リード配線および第1ライト配線が形成されるとともに、第1リード配線および第1ライト配線を覆うようにベース絶縁層上に中間絶縁層が形成される。中間絶縁層上に、第1リード配線および第1ライト配線と厚み方向において対向するように第2リード配線および第2ライト配線が形成される。
【0006】
特許文献3には、記憶媒体に隣接して読取/書込ヘッド/スライダアセンブリを支持しかつヘッドを読取/書込回路構成に電気的に相互接続するための一体的なロードビームアセンブリが記載されている。このロードビームアセンブリのトレースアレイは、第1および第2の導電性トレースを含む。第1の導電性トレースは、第1および第2のトレース経路に分岐される。また、第2の導電性トレースは、第3および第4のトレース経路に分岐される。第1の導電性トレースの第1のトレース経路および第2の導電性トレースの第3のトレース経路は、第1の絶縁ポリイミド層上に配置される。第1の絶縁ポリイミド層上には第2の絶縁ポリイミド層が配置される。第1の導電性トレースの第2のトレース経路および第2の導電性トレースの第4のトレース経路は、第2の絶縁ポリイミド層上に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−124837号公報
【特許文献2】特開2009−99687号公報
【特許文献3】特開平10−125023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたトレース相互接続アレイにおいては、複数のトレース導体間のインダクタンスが低減される。それにより、複数のトレース導体の特性インピーダンスを低減することができる。しかしながら、複数のトレース導体が交互に配置されるため、トレース相互接続アレイの面積が大きくなる。
【0009】
特許文献2に記載された回路付きサスペンション基板においては、第2リード配線および第2ライト配線がそれぞれ第1リード配線および第1ライト配線の上方に配置される。それにより、回路付きサスペンション基板の面積を小さくすることが可能となる。しかしながら、第1リード配線および第2リード配線の特性インピーダンスならびに第1ライト配線および第2ライト配線の特性インピーダンスの低減が望まれる。
【0010】
特許文献3には、第1および第2の導電性トレースを第1〜第4のトレース経路に分岐させるための構成については記載されていない。例えば、第1の導電性トレースの第1または第2のトレース経路が第2の導電性トレースを大きく迂回するように分岐される場合、第1および第2のトレース経路を伝送する信号に大きなスキュー(タイミングのずれ)が発生する可能性がある。同様に、第2の導電性トレースの第3または第4のトレース経路が第1の導電性トレースを大きく迂回するように分岐される場合、第3および第4のトレース経路を伝送する信号に大きなスキューが発生する可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、信号線路対の占有面積の増加を抑制しつつ信号線路対のインピーダンスの低減および信号のスキューの低減を可能とする配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)第1の発明に係る配線回路基板は、第1および第2の面を有する第1の絶縁層と、第3および第4の面を有し、第4の面が第1の面に接するように第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層と、第1の絶縁層の第1の面上および第2の絶縁層の第3の面上に形成され、信号線路対を構成する第1および第2の配線パターンと、第1の絶縁層の第2の面上に形成される導電性の接続層とを備え、第1の配線パターンは、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に配置される第1の線路と、第2の絶縁層の第3の面上に配置され、第1の線路と電気的に接続される第2の線路と、第1の絶縁層の第1の面上に配置され、第1の線路と電気的に接続される第3の線路とを含み、第2の配線パターンは、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に配置される第4の線路と、第2の絶縁層の第3の面上に配置され、第4の線路と電気的に接続される第5の線路と、第1の絶縁層の第1の面上に配置され、第4の線路と電気的に接続される第6の線路とを含み、第2の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第6の線路に対向するように配置され、第5の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第3の線路に対向するように配置され、第4の線路は、接続層を通して第5および第6の線路の少なくとも一方と電気的に接続されるものである。
【0013】
この配線回路基板においては、第2の絶縁層の第4の面が第1の絶縁層の第1の面に接するように、第2の絶縁層が第1の絶縁層上に形成される。第1および第2の配線パターンにより信号線路対が構成される。
【0014】
第1の配線パターンの第1の線路は、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第2の線路は、第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第3の線路は、第1の絶縁層の第1の面上に配置される。第2および第3の線路は、第1の線路と電気的に接続される。それにより、第1の線路が第2の線路と第3の線路とに分岐する。第2の配線パターンの第4の線路は、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第5の線路は、第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第6の線路は、第1の絶縁層の第1の面上に配置される。第5および第6の線路は、第4の線路と電気的に接続される。それにより、第4の線路が第5の線路と第6の線路とに分岐する。
【0015】
ここで、第1の配線パターンの第2の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第2の配線パターンの第6の線路に対向する。また、第2の配線パターンの第5の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第1の配線パターンの第3の線路に対向する。さらに、第1の配線パターンの第2の線路と第2の配線パターンの第5の線路とは、第2の絶縁層上で互いに対向する。また、第1の配線パターンの第3の線路と第2の配線パターンの第6の線路とは、第1の絶縁層上で互いに対向する。
【0016】
これにより、第1の配線パターンと第2の配線パターンとの対向面積が大きくなるため、第1および第2の配線パターンのキャパシタンスが大きくなる。その結果、第1および第2の配線パターンの特性インピーダンスが低減される。
【0017】
また、第1の配線パターンの第2の線路と第2の配線パターンの第6の線路とが第2の絶縁層を介して重なるように配置され、第1の配線パターンの第3の線路と第2の配線パターンの第5の線路とが第2の絶縁層を介して重なるように配置される。それにより、第1の配線パターンの第2および第3の線路と第2の配線パターンの第5および第6の線路とによる占有面積が小さくなる。
【0018】
また、第4の線路は、第1の絶縁層の第2の面上の接続層を通して第5および第6の線路の少なくとも一方と電気的に接続される。この場合、第1の配線パターンの第1の線路から第2および第3の線路への分岐部分と第2の配線パターンの第4の線路から第5および第6の線路への分岐部分とを、第1の絶縁層の厚み方向において異なる位置に形成することができる。それにより、第1の配線パターンの分岐部分および第2の配線パターンの分岐部分の占有面積の増加を防止することができる。
【0019】
さらに、第1の配線パターンの分岐部分で第2および第3の線路の一方が第2の配線パターンを大きく迂回する必要がなく、第2の配線パターンの分岐部分で第5および第6の線路の一方が第1の配線パターンを大きく迂回する必要がない。したがって、第1の配線パターンの第2および第3の線路の長さを容易に等しくすることが可能となり、第2の配線パターンの第5および第6の線路の長さを容易に等しくすることが可能となる。それにより、第1の配線パターンの第2および第3の線路を伝送する信号のスキュー(タイミングのずれ)および第2の配線パターンの第5および第6の線路を伝送する信号のスキューを低減することができる。
【0020】
(2)第1の絶縁層は、第4の線路と接続層との間に第1の貫通孔を有し、かつ第5および第6の線路の少なくとも一方と接続層との間に第2の貫通孔を有し、第4の線路は、第1の貫通孔を通して接続層と電気的に接続され、第5および第6の線路の少なくとも一方は、第2の貫通孔を通して接続層と電気的に接続されてもよい。
【0021】
この場合、第4の線路は、第1の絶縁層の第1の貫通孔を通して接続層に電気的に接続される。また、第5および第6の線路の少なくとも一方は、第1の絶縁層の第2の貫通孔を通して接続層に電気的に接続される。これにより、第2の配線パターンの分岐部分の占有面積を小さくすることができる。その結果、配線回路基板を小型化することができる。
【0022】
(3)第1の線路および第4の線路は、第2の絶縁層の第3の面上に形成されてもよい。
【0023】
この場合、第1の配線パターンの第1の線路および第2の配線パターンの第4の線路が同一の第3の面上に配置される。これにより、第1および第2の配線パターンを同一の面上に設けられた他の回路または端子と容易に接続することができる。
【0024】
(4)第1の線路および第4の線路は、第1の絶縁層の第1の面上に形成されてもよい。
【0025】
この場合、第1の配線パターンの第1の線路および第2の配線パターンの第4の線路が同一の第1の面上に配置される。これにより、第1および第2の配線パターンを同一の面上に設けられた他の回路または端子と容易に接続することができる。
【0026】
(5)第1の線路および第4の線路の一方は、第1の絶縁層の第1の面上に形成され、第1の線路および第4の線路の他方は、第2の絶縁層の第3の面上に形成されてもよい。
【0027】
この場合、第1および第2の配線パターンの一方を第1の絶縁層の第1の面上に形成される他の回路または端子と容易に接続することができる。また、第1および第2の配線パターンの他方を第2の絶縁層の第3の面上に形成される他の回路または端子と容易に接続することができる。
【0028】
(6)第2の発明に係る配線回路基板の製造方法は、第1および第2の面を有する第1の絶縁層上に第3および第4の面を有する第2の絶縁層を第4の面が第1の面に接するように形成する工程と、第1の絶縁層の第1の面上および第2の絶縁層の第3の面上に信号線路対を構成する第1および第2の配線パターンを形成する工程と、第1の絶縁層の第2の面上に導電性の接続層を形成する工程とを備え、第1の配線パターンを形成する工程は、第2の絶縁層の第3の面上に第2の線路を形成する工程と、第1の絶縁層の第1の面上に第3の線路を形成する工程と、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に第1の線路を形成する工程とを含み、第2および第3の線路は第1の線路と電気的に接続され、第2の配線パターンを形成する工程は、第2の絶縁層の第3の面上に第5の線路を形成する工程と、第1の絶縁層の第1の面上に第6の線路を形成する工程と、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に第4の線路を形成する工程とを含み、第5および第6の線路は第4の線路と電気的に接続され、第2の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第6の線路に対向するように配置され、第5の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第3の線路に対向するように配置され、第4の線路は、接続層を通して第5および第6の線路の少なくとも一方と電気的に接続されるものである。
【0029】
この配線回路基板に製造方法によれば、第2の絶縁層の第4の面が第1の絶縁層の第1の面に接するように、第2の絶縁層が第1の絶縁層上に形成される。第1および第2の配線パターンにより信号線路対が構成される。
【0030】
第1の配線パターンの第1の線路は、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第2の線路は、第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第3の線路は、第1の絶縁層の第1の面上に配置される。第2および第3の線路は、第1の線路と電気的に接続される。それにより、第1の線路が第2の線路と第3の線路とに分岐する。第2の配線パターンの第4の線路は、第1の絶縁層の第1の面上または第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第5の線路は、第2の絶縁層の第3の面上に配置される。第6の線路は、第1の絶縁層の第1の面上に配置される。第5および第6の線路は、第4の線路と電気的に接続される。それにより、第4の線路が第5の線路と第6の線路とに分岐する。
【0031】
ここで、第1の配線パターンの第2の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第2の配線パターンの第6の線路に対向する。また、第2の配線パターンの第5の線路の少なくとも一部は、第2の絶縁層を介して第1の配線パターンの第3の線路に対向する。さらに、第1の配線パターンの第2の線路と第2の配線パターンの第5の線路とは、第2の絶縁層上で互いに対向する。また、第1の配線パターンの第3の線路と第2の配線パターンの第6の線路とは、第1の絶縁層上で互いに対向する。
【0032】
これにより、第1の配線パターンと第2の配線パターンとの対向面積が大きくなるため、第1および第2の配線パターンのキャパシタンスが大きくなる。その結果、第1および第2の配線パターンの特性インピーダンスが低減される。
【0033】
また、第1の配線パターンの第2の線路と第2の配線パターンの第6の線路とが第2の絶縁層を介して重なるように配置され、第1の配線パターンの第3の線路と第2の配線パターンの第5の線路とが第2の絶縁層を介して重なるように配置される。それにより、第1の配線パターンの第2および第3の線路と第2の配線パターンの第5および第6の線路とによる占有面積が小さくなる。
【0034】
また、第4の線路は、第1の絶縁層の第2の面上の接続層を通して第5および第6の線路の少なくとも一方と電気的に接続される。この場合、第1の配線パターンの第1の線路から第2および第3の線路への分岐部分と第2の配線パターンの第4の線路から第5および第6の線路への分岐部分とを、第1の絶縁層の厚み方向において異なる位置に形成することができる。それにより、第1の配線パターンの分岐部分および第2の配線パターンの分岐部分の占有面積の増加を防止することができる。
【0035】
さらに、第1の配線パターンの分岐部分で第2および第3の線路の一方が第2の配線パターンを大きく迂回する必要がなく、第2の配線パターンの分岐部分で第5および第6の線路の一方が第1の配線パターンを大きく迂回する必要がない。したがって、第1の配線パターンの第2および第3の線路の長さを容易に等しくすることが可能となり、第2の配線パターンの第5および第6の線路の長さを容易に等しくすることが可能となる。それにより、第1の配線パターンの第2および第3の線路を伝送する信号のスキュー(タイミングのずれ)および第2の配線パターンの第5および第6の線路を伝送する信号のスキューを低減することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、信号線路対の占有面積の増加を抑制しつつ信号線路対のインピーダンスおよび信号のスキューを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態に係るサスペンション基板の上面図である。
【図2】書込用配線パターンの構成を示す平面図である。
【図3】図2のサスペンション基板のX部の透視的な斜視図である。
【図4】図2のサスペンション基板のX部のカバー絶縁層の上面上の書込用配線パターンの部分の拡大平面図である。
【図5】図2のサスペンション基板のX部のベース絶縁層の上面上の書込用配線パターンの部分の拡大平面図である。
【図6】図2のサスペンション基板のX部の支持基板の拡大平面図である。
【図7】図3〜図6のサスペンション基板の縦断面図である。
【図8】図3〜図6のサスペンション基板の縦断面図である。
【図9】サスペンション基板の製造工程を示す縦断面図である。
【図10】サスペンション基板の製造工程を示す縦断面図である。
【図11】サスペンション基板の製造工程を示す縦断面図である。
【図12】サスペンション基板の製造工程を示す縦断面図である。
【図13】第1の変形例におけるサスペンション基板の縦断面図である。
【図14】第2の変形例におけるサスペンション基板の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。以下、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板として、ハードディスクドライブ装置のアクチュエータに用いられるサスペンション基板の構造およびその製造方法について説明する。
【0039】
(1)サスペンション基板の構造
図1は、本発明の一実施の形態に係るサスペンション基板の上面図である。図1に示すように、サスペンション基板1は、金属製の長尺状の支持基板により形成されるサスペンション本体部100を備える。サスペンション本体部100上には、太い点線で示すように、書込用配線パターンW1,W2および読取用配線パターンR1,R2が形成されている。書込用配線パターンW1と書込用配線パターンW2とは、信号線路対を構成する。また、読取用配線パターンR1と読取用配線パターンR2とは、信号線路対を構成する。
【0040】
サスペンション本体部100の先端部には、U字状の開口部11を形成することにより磁気ヘッド搭載部(以下、タング部と呼ぶ)12が設けられている。タング部12は、サスペンション本体部100に対して所定の角度をなすように破線Rの箇所で折り曲げ加工される。タング部12の端部には4つの電極パッド21,22,23,24が形成されている。
【0041】
サスペンション本体部100の他端部には4つの電極パッド31,32,33,34が形成されている。タング部12上の電極パッド21〜24とサスペンション本体部100の他端部の電極パッド31〜34とは、それぞれ書込用配線パターンW1,W2および読込用R1,R2により電気的に接続されている。また、サスペンション本体部100には複数の孔部Hが形成されている。
【0042】
サスペンション基板1を備える図示しないハードディスク装置においては、磁気ディスクに対する情報の書込み時に一対の書込用配線パターンW1,W2に電流が流れる。また、磁気ディスクに対する情報の読込み時に一対の読込用配線パターンR1,R2に電流が流れる。
【0043】
(2)書込用配線パターン
次に、書込用配線パターンW1,W2の詳細な構成について説明する。図2は、書込用配線パターンW1,W2の構成を示す平面図である。図3は、図2のサスペンション基板1のX部の透視的な斜視図である。
【0044】
図2に示すように、書込用配線パターンW1は、線路LA1〜LA5により構成される。書込用配線パターンW2は、線路LB1〜LB5により構成される。図3に示すように、金属製の支持基板10上にベース絶縁層41が形成される。ベース絶縁層41の上面上に書込用配線パターンW1の線路LA3,LA5および書込用配線パターンW2のLB3,LB5が形成される。書込用配線パターンW1の線路LA3,LA5および書込用配線パターンW2のLB3,LB5を覆うように、ベース絶縁層41の上面上にカバー絶縁層42aが形成される。これにより、カバー絶縁層42aの下面とベース絶縁層41の上面とが接する。
【0045】
カバー絶縁層42aの上面上に書込用配線パターンW1の線路LA1,LA2,LA4および書込用配線パターンW2のLB1,LB2,LB4が形成される。書込用配線パターンW1の線路LA1,LA2,LA4および書込用配線パターンW2のLB1,LB2,LB4を覆うように、カバー絶縁層42aの上面上にカバー絶縁層42bが形成される。これにより、カバー絶縁層42bの下面とカバー絶縁層42aの上面とが接する。
【0046】
このように、線路LA3,LA5および線路LB3,LB5は第1の高さの平面上に形成される。線路LA1,LA2,LA4および線路LB1,LB2,LB4は第1の高さよりも高い第2の高さの平面上に形成される。線路LA3は線路LB2の下方に位置し、線路LB3は線路LA2の下方に位置する。
【0047】
図2に示すように、書込用配線パターンW1の線路LA2と書込用配線パターンW2の線路LB2とは、互いに間隔をおいて平行に配置される。書込用配線パターンW1の線路LA3と書込用配線パターンW2の線路LB3とは、互いに間隔をおいて平行に配置される。
【0048】
線路LA2の一端部は線路LA1の一端部に一体化し、線路LA2の他端部は線路LA4の一端部に一体化する。線路LA1の他端部は電極パッド31に接続され、線路LA4の他端部は電極パッド21に接続される。線路LA5の一端部は線路LA1の一端部に電気的に接続され、線路LA5の他端部は線路LA3の一端部に一体化される。線路LA3の他端部と線路LA2の他端部とが交差領域CN2において電気的に接続される。交差領域CN2の詳細については後述する。
【0049】
線路LB2の一端部は線路LB1の一端部に一体化し、線路LB2の他端部は線路LB4の一端部に一体化する。線路LB1の他端部は電極パッド32に接続され、線路LB4の他端部は電極パッド22に接続される。線路LB5の一端部は線路LB4の一端部に電気的に接続され、線路LB5の他端部は線路LB3の一端部に一体化される。線路LB3の他端部と線路LB2の一端部とが交差領域CN1において電気的に接続される。交差領域CN1の詳細については後述する。
【0050】
線路LA1,LB2が配置されるサスペンション基板1の一端部の領域を第1の領域D1と呼ぶ。線路LA2,LA3,LB2,LB3が配置されるサスペンション基板1の略中央部の領域を第2の領域D2と呼ぶ。線路LA4,LB4が配置されるサスペンション基板1の他端部の領域を第3の領域D3と呼ぶ。
【0051】
図4は、図2のサスペンション基板1のX部のカバー絶縁層42aの上面上の書込用配線パターンW1,W2の部分の拡大平面図である。図5は、図2のサスペンション基板1のX部のベース絶縁層41の上面上の書込用配線パターンW1,W2の部分の拡大平面図である。図6は、図2のサスペンション基板1のX部の支持基板10の拡大平面図である。
【0052】
図5に示すように、交差領域CN1におけるベース絶縁層41の上面上に書込用配線パターンW1の線路LA5が形成される。同様に、交差領域CN2(図2参照)におけるベース絶縁層41の上面上に書込用配線パターンW2の線路LB5(図2参照)が形成される。
【0053】
図4に示すように、第1の領域D1におけるカバー絶縁層42aの上面上に書込用配線パターンW1の線路LA1および書込用配線パターンW2の線路LB1が形成される。第2の領域D2におけるカバー絶縁層42aの上面上に書込用配線パターンW1の線路LA2および書込用配線パターンW2の線路LB2が形成される。同様に、第3の領域D3(図2参照)におけるカバー絶縁層42aの上面上に書込用配線パターンW1,W2の線路LA4,LB4(図2参照)が形成される。
【0054】
図6に示すように、交差領域CN1における支持基板10には長円形の開口部10hが形成される。開口部10h内には、支持基板10の他の領域から電気的に分離された長円形の島状領域RG1が形成される。本例においては、ベース絶縁層41の下面上に形成された支持基板10の島状領域RG1がジャンパー配線JL1となる。同様に、交差領域CN2(図2参照)における支持基板10には長円形の開口部が形成される。開口部内には、支持基板10の他の領域から電気的に分離された長円形の島状領域が形成される。本例においては、ベース絶縁層41の下面上に形成された支持基板10の島状領域がジャンパー配線JL2(図2参照)となる。
【0055】
開口部10hの形状は、長円形に限定されず、円形、長方形または多角形等の他の形状であってもよい。同様に、ジャンパー配線JL1,JL2の形状は、長円形に限定されず、円形、長方形または多角形等の他の形状であってもよい。
【0056】
図7および図8は、図3〜図6のサスペンション基板1の縦断面図である。図7(a),(b),(c)は、図3〜図6のサスペンション基板1のそれぞれA部断面、B部断面およびC部断面を示す。図8(a),(b)は、図3〜図6のサスペンション基板1のそれぞれD部断面およびE部断面を示す。図8(c)は、図4〜図6のサスペンション基板1のF部断面を示す。
【0057】
図7(c)および図8(c)に示すように、線路LB2とジャンパー配線JL1の一端部との間のベース絶縁層41およびカバー絶縁層42aの部分に貫通孔が形成され、その貫通孔内の導電材料を通して線路LB2とジャンパー配線JL1の一端部とが電気的に接続される。また、図8(a)および図8(c)に示すように、線路LB3とジャンパー配線JL1の他端部との間のベース絶縁層41およびカバー絶縁層42aの部分に貫通孔が形成され、その貫通孔内の導電材料を通して線路LB3とジャンパー配線JL1の他端部とが電気的に接続される。これにより、交差領域CN1において線路LB2と線路LB3とが、ジャンパー配線JL1を介して電気的に接続される。
【0058】
同様に、線路LA2とジャンパー配線JL2(図2参照)の一端部との間のベース絶縁層41およびカバー絶縁層42aの部分に貫通孔が形成され、その貫通孔内の導電材料を通して線路LA2とジャンパー配線JL2の一端部とが電気的に接続される。また、線路LA3とジャンパー配線JL2の他端部との間のベース絶縁層41およびカバー絶縁層42aの部分に貫通孔が形成され、その貫通孔内の導電材料を通して線路LA3とジャンパー配線JL2の他端部とが電気的に接続される。これにより、交差領域CN2において線路LA2と線路LA3とが、ジャンパー配線JL2を介して電気的に接続される。
【0059】
線路LA1,LB1は、サスペンション基板1の第1の領域D1(図2参照)において平行に配置される。図7(a),(b)に示すように、線路LA1,LB1は、支持基板10から第2の高さh2に位置する。図7(b),(c)に示すように、線路LA5は、支持基板10から第1の高さh1に配置される。図7(b)に示すように、線路LA1と線路LA5との間のベース絶縁層41の部分に貫通孔が形成され、その貫通孔内の導電材料を通して線路LA1と線路LA5とが電気的に接続される。同様に、図2の線路LB5は、支持基板10から第1の高さh1に配置される。線路LB4と線路LB5との間のベース絶縁層41の部分に貫通孔が形成され、その貫通孔内の導電材料を通して線路LB4と線路LB5とが電気的に接続される。
【0060】
線路LA3,LB3は、サスペンション基板1の第2の領域D2(図2参照)に平行に配置され、かつ線路LA2,LB2は、サスペンション基板1の第2の領域D2(図2参照)において平行に配置される。図7(c)および図8(a),(b),(c)に示すように、線路LA2,LB2は、支持基板10から第2の高さh2に位置し、線路LA3,LB3は、支持基板10から第1の高さh1に位置する。また、線路LA2の下面と線路LB3の上面とが対向し、線路LB2の下面と線路LA3の上面とが対向する。同様に、図2の線路LA4,LB4は、サスペンション基板1の第3の領域D3(図2参照)において平行に配置される。線路LA4,LB4は、支持基板10から第2の高さh2に位置する。
【0061】
(3)サスペンション基板の製造方法
次に、サスペンション基板1の製造方法について説明する。図9〜図12は、サスペンション基板1の製造工程を示す縦断面図である。ここで、図9(a)〜図12(b)の上段に図2のサスペンション基板1のC部断面の製造工程を示し、下段に図2のサスペンション基板1のD部断面の製造工程を示す。
【0062】
まず、図9(a)に示すように、例えばステンレスからなる支持基板10上に接着剤を用いて例えばポリイミドからなるベース絶縁層41を積層する。
【0063】
支持基板10の厚みは例えば5μm以上50μm以下であり、10μm以上30μm以下であることが好ましい。支持基板10としては、ステンレスに代えてアルミニウム等の他の金属または合金等を用いてもよい。
【0064】
ベース絶縁層41の厚みは例えば1μm以上15μm以下であり、2μm以上12μm以下であることが好ましい。ベース絶縁層41としては、ポリイミドに代えてエポキシ樹脂等の他の絶縁材料を用いてもよい。
【0065】
次に、図9(b)に示すように、交差領域CN1において、エッチング等により、支持基板10に開口部10hを形成する。これにより、支持基板10に、他の領域から分離された島状領域RG1が形成される。ベース絶縁層41の下面上に形成された支持基板10の島状領域RG1がジャンパー配線JL1となる。島状領域RG1の面積は、例えば2000μm2以上180000μm2以下であり、3000μm2以上80000μm2以下であることが好ましい。
【0066】
次に、図10(a)に示すように、交差領域CN1において、ジャンパー配線JL1上のベース絶縁層41の部分に、例えばレーザを用いたエッチングまたはウェットエッチングにより貫通孔H1,H2を形成する。貫通孔H1,H2の直径は例えば10μm以上200μm以下であり、20μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0067】
次に、図10(b)に示すように、ベース絶縁層41の上面上に例えば銅からなる線路LA3,LA5,LB3,LB5を形成する。なお、図9(d)には線路LB5は表れていない。貫通孔H2内には、例えば銅からなる導電材料が充填される。それにより、線路LB3は、貫通孔H2内の導電材料を通してジャンパー配線JL1と電気的に接続される。
【0068】
次に、図11(a)に示すように、線路LA3,LA5,LB3,LB5を覆うようにベース絶縁層41の上面上に例えばポリイミドからなるカバー絶縁層42aを形成する。カバー絶縁層42aの厚みは例えば4μm以上30μm以下であり、5μm以上25μm以下であることが好ましい。カバー絶縁層42aとしては、ポリイミド樹脂に代えてエポキシ樹脂等の他の絶縁材料を用いてもよい。
【0069】
次に、図11(b)に示すように、交差領域CN1において、カバー絶縁層42aの部分に、例えばレーザを用いたエッチングまたはウェットエッチングにより貫通孔H1に連通する貫通孔H3を形成する。貫通孔H3の直径は例えば20μm以上200μm以下であり、40μm以上100μm以下であることが好ましい。なお、図10(b)の工程でベース絶縁層41に貫通孔H1が形成されず、図11(b)の工程で貫通孔H1と貫通孔H3とが同時に形成されてもよい。
【0070】
次に、図12(a)に示すように、カバー絶縁層42aの上面上に例えば銅からなる線路LA1,LA2,LA4,LB1,LB2,LB4を形成する。貫通孔H3,H1内には、例えば銅からなる導電材料が充填される。それにより、線路LB2は、貫通孔H3,H1内の導電材料を通してジャンパー配線JL1と電気的に接続される。その結果、線路LB2と線路LB3とがジャンパー配線JL1を介して電気的に接続される。
【0071】
最後に、図12(b)に示すように、線路LA1,LA2,LA4,LB1,LB2,LB4を覆うようにカバー絶縁層42aの上面上に例えばポリイミドからなるカバー絶縁層42bを形成する。カバー絶縁層42bの厚みは例えば2μm以上26μm以下であり、4μm以上21μm以下であることが好ましい。カバー絶縁層42aとしては、ポリイミド樹脂に代えてエポキシ樹脂等の他の絶縁材料を用いてもよい。このようにして、サスペンション基板1が完成する。
【0072】
線路LA1〜LA5により書込用配線パターンW1が形成され、線路LB1〜LB5により書込用配線パターンW2が形成される。書込用配線パターンW1,W2は、例えばセミアディティブ法を用いて形成されてもよく、サブトラクティブ法等の他の方法を用いて形成されてもよい。
【0073】
書込用配線パターンW1,W2の厚みは例えば3μm以上16μm以下であり、6μm以上13μm以下であることが好ましい。また、書込用配線パターンW1の線路LA1〜LA5および書込用配線パターンW2の線路LB1〜LB5の幅は例えば10μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0074】
書込用配線パターンW1,W2としては、銅に限らず、金(Au)、アルミニウム等の他の金属、または銅合金、アルミニウム合金等の合金を用いてもよい。
【0075】
(4)効果
本実施の形態においては、書込用配線パターンW1の線路LA1,LA2および書込用配線パターンW2の線路LB1,LB2がカバー絶縁層42aの上面上に配置される。書込用配線パターンW1の線路LA3および書込用配線パターンW2の線路LB3がベース絶縁層41の上面上に配置される。線路LA2,LA3が線路LA1と電気的に接続されることにより、線路LA1が線路LA2と線路LA3とに分岐する。線路LB2,LB3が線路LB1と電気的に接続されることにより、線路LB1が線路LB2と線路LB3とに分岐する。
【0076】
ここで、書込用配線パターンW1の線路LA2がカバー絶縁層42aを介して書込用配線パターンW2の線路LB3に対向する。また、書込用配線パターンW2の線路LB2がカバー絶縁層42aを介して書込用配線パターンW1の線路LA3に対向する。さらに、書込用配線パターンW1の線路LA2と書込用配線パターンW2の線路LB2とは、カバー絶縁層42a上で互いに対向する。また、書込用配線パターンW1の線路LA3と書込用配線パターンW2の線路LB3とは、ベース絶縁層41上で互いに対向する。
【0077】
これにより、書込用配線パターンW1と書込用配線パターンW2との対向面積が大きくなるため、書込用配線パターンW1,W2のキャパシタンスが大きくなる。その結果、書込用配線パターンW1,W2の特性インピーダンスが低減される。
【0078】
また、書込用配線パターンW1の線路LA2と書込用配線パターンW2の線路LB3とがカバー絶縁層42aを介して重なるように配置され、書込用配線パターンW1の線路LA3と書込用配線パターンW2の線路LB2とがカバー絶縁層42aを介して重なるように配置される。それにより、書込用配線パターンW1の線路LA2,LA3と書込用配線パターンW2の線路LB2,LB3とによる占有面積が小さくなる。
【0079】
また、線路LB1は、ベース絶縁層41の下面上のジャンパー配線JL1を通して線路LB3と電気的に接続される。この場合、書込用配線パターンW1の線路LA1から線路LA2,LA3への分岐部分と書込用配線パターンW2の線路LB1から線路LB2,LB3への分岐部分とを、ベース絶縁層41の厚み方向において異なる位置に形成することができる。それにより、書込用配線パターンW1の分岐部分および書込用配線パターンW2の分岐部分の占有面積の増加を防止することができる。
【0080】
さらに、書込用配線パターンW1の分岐部分で線路LA2,LA3の一方が書込用配線パターンW2を大きく迂回する必要がなく、書込用配線パターンW2の分岐部分で線路LB2,LB3の一方が書込用配線パターンW1を大きく迂回する必要がない。したがって、書込用配線パターンW1の線路LA2,LA3の長さを容易に等しくすることが可能となり、書込用配線パターンW2の線路LB2,LB3の長さを容易に等しくすることが可能となる。それにより、書込用配線パターンW1の線路LA2,LA3を伝送する信号のスキュー(タイミングのずれ)および書込用配線パターンW2の線路LB2,LB3を伝送する信号のスキューを低減することができる。
【0081】
また、書込用配線パターンW2の線路LB1は、ベース絶縁層41の貫通孔H1およびカバー絶縁層42aの貫通孔H3を通してジャンパー配線JL1に電気的に接続される。さらに、書込用配線パターンW2の線路LB3は、ベース絶縁層41の貫通孔H2を通してジャンパー配線JL1に電気的に接続される。これにより、書込用配線パターンW2の分岐部分の占有面積を小さくすることができる。その結果、サスペンション基板1を小型化することができる。
【0082】
(5)他の実施の形態
(5−1)上記実施の形態において配線回路基板はサスペンション基板1であるが、これに限定されない。配線回路基板は、フレキシブル配線回路基板等の他の配線回路基板であってもよい。この場合、配線回路基板は支持基板10を含まないので、ジャンパー配線JL1,JL2は支持基板10の一部としてではなく、別個に形成される。
【0083】
(5−2)上記実施の形態において、線路LA1,LB1は支持基板10から第2の高さh2に位置するが、これに限定されない。図13は、第1の変形例におけるサスペンション基板1の縦断面図である。図13(a),(b),(c)のサスペンション基板1の断面は、図3〜図6のサスペンション基板1のA部断面に相当する。図13(a)に示すように、線路LA1,LB1は第1の高さh1に位置してもよい。また、図13(b)に示すように、線路LA1は第2の高さh2に位置し、線路LB1は第1の高さh1に位置してもよい。さらに、図13(c)に示すように、線路LA1は第1の高さh1に位置し、線路LB1は第2の高さh2に位置してもよい。
【0084】
同様に、線路LA4,LB4はベース絶縁層41から第2の高さh2に位置するが、これに限定されない。線路LA4,LB4は第1の高さh1に位置してもよい。また、線路LA4は第2の高さh2に位置し、線路LB4は第1の高さh1に位置してもよい。さらに、線路LA4は第1の高さh1に位置し、線路LB4は第2の高さh2に位置してもよい。
【0085】
(5−3)上記実施の形態において、線路LA1,LB1は、互いに間隔をおいて平行に配置されるが、これに限定されない。図14は、第2の変形例におけるサスペンション基板1の縦断面図である。図14のサスペンション基板1の断面は、図3〜図6のサスペンション基板1のA部断面に相当する。図14に示すように、線路LA1,LB1は、上下方向に対向するように配置されてもよい(スタック構造)。
【0086】
図14の例では、線路LA1がベース絶縁層41の上面上に形成され、線路LB1がカバー絶縁層42aの上面上に形成されることにより、線路LA1の上面と線路LB1の下面とが対向する。一方、線路LB1がベース絶縁層41の上面上に形成され、線路LA1がカバー絶縁層42aの上面上に形成されることにより、線路LB1の上面と線路LA1の下面とが対向してもよい。
【0087】
同様に、線路LA4,LB4は、互いに間隔をおいて平行に配置されるが、これに限定されない。線路LA4,LB4は、上下方向に対向するように配置されてもよい(スタック構造)。例えば、線路LA4がベース絶縁層41の上面上に形成され、線路LB4がカバー絶縁層42aの上面上に形成されることにより、線路LA4の上面と線路LB4の下面とが対向してもよい。一方、線路LB4がベース絶縁層41の上面上に形成され、線路LA4がカバー絶縁層42aの上面上に形成されることにより、線路LB4の上面と線路LA4の下面とが対向してもよい。
【0088】
(5−4)上記実施の形態において、線路LA2,LA3は、サスペンション基板1の交差領域CN2において線路LA4に接続されるが、これに限定されない。サスペンション基板1の磁気ヘッドにおいて、線路LA2と線路LA3とが接続される場合、線路LA2,LA3は、サスペンション基板1の交差領域CN2において線路LA4に接続されなくてもよい。
【0089】
同様に、線路LB2,LB3は、サスペンション基板1の交差領域CN2において線路LB4に接続されるが、これに限定されない。サスペンション基板1の磁気ヘッドにおいて、線路LB2と線路LB3とが接続される場合、線路LB2,LB3は、サスペンション基板1の交差領域CN2において線路LB4に接続されなくてもよい。
【0090】
(5−5)上記実施の形態において、読取用配線パターンR1,R2は、それぞれ1つの線路により形成されるが、これに限定されない。読取用配線パターンR1,R2は、書込用配線パターンW1,W2と同様に、電気信号が分岐して伝送されるように構成された複数の線路により形成されてもよい。
【0091】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0092】
サスペンション基板1が配線回路基板の例であり、ベース絶縁層41が第1の絶縁層の例であり、カバー絶縁層42aが第2の絶縁層の例である。ベース絶縁層41の上面および下面がそれぞれ第1および第2の面の例であり、カバー絶縁層42aの上面および下面が第3および第4の面の例である。書込用配線パターンW1,W2がそれぞれ第1および第2の配線パターンの例であり、ジャンパー配線JL1が接続層の例である。線路LA1〜LA3がそれぞれ第1〜第3の線路の例であり、線路LB1〜LB3がそれぞれ第4〜第6の線路の例であり、貫通孔H1,H2がそれぞれ第1および第2の貫通孔の例である。
【0093】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、配線回路基板を備えた種々の電気機器に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 サスペンション基板
10 支持基板
11 開口部
12 タング部
21〜24,31〜34 電極パッド
41 ベース絶縁層
42a,42b カバー絶縁層
100 サスペンション本体部
CN1,CN2 交差領域
D1 第1の領域
D2 第2の領域
D3 第3の領域
H 孔部
H1〜H3 貫通孔
JL1,JL2 ジャンパー配線
LA1〜LA5,LB1〜LB5 線路
R 破線
R1,R2 読取用配線パターン
RG1 島状領域
W1,W2 書込用配線パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の面を有する第1の絶縁層と、
第3および第4の面を有し、前記第4の面が前記第1の面に接するように前記第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上および前記第2の絶縁層の前記第3の面上に形成され、信号線路対を構成する第1および第2の配線パターンと、
前記第1の絶縁層の前記第2の面上に形成される導電性の接続層とを備え、
前記第1の配線パターンは、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上または前記第2の絶縁層の前記第3の面上に配置される第1の線路と、
前記第2の絶縁層の前記第3の面上に配置され、前記第1の線路と電気的に接続される第2の線路と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上に配置され、前記第1の線路と電気的に接続される第3の線路とを含み、
前記第2の配線パターンは、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上または前記第2の絶縁層の前記第3の面上に配置される第4の線路と、
前記第2の絶縁層の前記第3の面上に配置され、前記第4の線路と電気的に接続される第5の線路と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上に配置され、前記第4の線路と電気的に接続される第6の線路とを含み、
前記第2の線路の少なくとも一部は、前記第2の絶縁層を介して前記第6の線路に対向するように配置され、
前記第5の線路の少なくとも一部は、前記第2の絶縁層を介して前記第3の線路に対向するように配置され、
前記第4の線路は、前記接続層を通して前記第5および第6の線路の少なくとも一方と電気的に接続される、配線回路基板。
【請求項2】
前記第1の絶縁層は、前記第4の線路と前記接続層との間に第1の貫通孔を有し、かつ前記第5および第6の線路の前記少なくとも一方と前記接続層との間に第2の貫通孔を有し、前記第4の線路は、前記第1の貫通孔を通して前記接続層と電気的に接続され、前記第5および第6の線路の前記少なくとも一方は、前記第2の貫通孔を通して前記接続層と電気的に接続される、請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記第1の線路および前記第4の線路は、前記第2の絶縁層の前記第3の面上に形成される、請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記第1の線路および前記第4の線路は、前記第1の絶縁層の前記第1の面上に形成される、請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記第1の線路および前記第4の線路の一方は、前記第1の絶縁層の前記第1の面上に形成され、前記第1の線路および前記第4の線路の他方は、前記第2の絶縁層の前記第3の面上に形成される、請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項6】
第1および第2の面を有する第1の絶縁層上に第3および第4の面を有する第2の絶縁層を前記第4の面が前記第1の面に接するように形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上および前記第2の絶縁層の前記第3の面上に信号線路対を構成する第1および第2の配線パターンを形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記第2の面上に導電性の接続層を形成する工程とを備え、
前記第1の配線パターンを形成する工程は、
前記第2の絶縁層の前記第3の面上に第2の線路を形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上に第3の線路を形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上または前記第2の絶縁層の前記第3の面上に第1の線路を形成する工程とを含み、
前記第2および第3の線路は前記第1の線路と電気的に接続され、
前記第2の配線パターンを形成する工程は、
前記第2の絶縁層の前記第3の面上に第5の線路を形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上に第6の線路を形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上または前記第2の絶縁層の前記第3の面上に第4の線路を形成する工程とを含み、
前記第5および第6の線路は前記第4の線路と電気的に接続され、
前記第2の線路の少なくとも一部は、前記第2の絶縁層を介して前記第6の線路に対向するように配置され、
前記第5の線路の少なくとも一部は、前記第2の絶縁層を介して前記第3の線路に対向するように配置され、
前記第4の線路は、前記接続層を通して前記第5および第6の線路の少なくとも一方と電気的に接続される、配線回路基板の製造方法。
【請求項1】
第1および第2の面を有する第1の絶縁層と、
第3および第4の面を有し、前記第4の面が前記第1の面に接するように前記第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上および前記第2の絶縁層の前記第3の面上に形成され、信号線路対を構成する第1および第2の配線パターンと、
前記第1の絶縁層の前記第2の面上に形成される導電性の接続層とを備え、
前記第1の配線パターンは、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上または前記第2の絶縁層の前記第3の面上に配置される第1の線路と、
前記第2の絶縁層の前記第3の面上に配置され、前記第1の線路と電気的に接続される第2の線路と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上に配置され、前記第1の線路と電気的に接続される第3の線路とを含み、
前記第2の配線パターンは、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上または前記第2の絶縁層の前記第3の面上に配置される第4の線路と、
前記第2の絶縁層の前記第3の面上に配置され、前記第4の線路と電気的に接続される第5の線路と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上に配置され、前記第4の線路と電気的に接続される第6の線路とを含み、
前記第2の線路の少なくとも一部は、前記第2の絶縁層を介して前記第6の線路に対向するように配置され、
前記第5の線路の少なくとも一部は、前記第2の絶縁層を介して前記第3の線路に対向するように配置され、
前記第4の線路は、前記接続層を通して前記第5および第6の線路の少なくとも一方と電気的に接続される、配線回路基板。
【請求項2】
前記第1の絶縁層は、前記第4の線路と前記接続層との間に第1の貫通孔を有し、かつ前記第5および第6の線路の前記少なくとも一方と前記接続層との間に第2の貫通孔を有し、前記第4の線路は、前記第1の貫通孔を通して前記接続層と電気的に接続され、前記第5および第6の線路の前記少なくとも一方は、前記第2の貫通孔を通して前記接続層と電気的に接続される、請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記第1の線路および前記第4の線路は、前記第2の絶縁層の前記第3の面上に形成される、請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記第1の線路および前記第4の線路は、前記第1の絶縁層の前記第1の面上に形成される、請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記第1の線路および前記第4の線路の一方は、前記第1の絶縁層の前記第1の面上に形成され、前記第1の線路および前記第4の線路の他方は、前記第2の絶縁層の前記第3の面上に形成される、請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項6】
第1および第2の面を有する第1の絶縁層上に第3および第4の面を有する第2の絶縁層を前記第4の面が前記第1の面に接するように形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上および前記第2の絶縁層の前記第3の面上に信号線路対を構成する第1および第2の配線パターンを形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記第2の面上に導電性の接続層を形成する工程とを備え、
前記第1の配線パターンを形成する工程は、
前記第2の絶縁層の前記第3の面上に第2の線路を形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上に第3の線路を形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上または前記第2の絶縁層の前記第3の面上に第1の線路を形成する工程とを含み、
前記第2および第3の線路は前記第1の線路と電気的に接続され、
前記第2の配線パターンを形成する工程は、
前記第2の絶縁層の前記第3の面上に第5の線路を形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上に第6の線路を形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上または前記第2の絶縁層の前記第3の面上に第4の線路を形成する工程とを含み、
前記第5および第6の線路は前記第4の線路と電気的に接続され、
前記第2の線路の少なくとも一部は、前記第2の絶縁層を介して前記第6の線路に対向するように配置され、
前記第5の線路の少なくとも一部は、前記第2の絶縁層を介して前記第3の線路に対向するように配置され、
前記第4の線路は、前記接続層を通して前記第5および第6の線路の少なくとも一方と電気的に接続される、配線回路基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
【図11】
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【図14】
【公開番号】特開2013−109803(P2013−109803A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254039(P2011−254039)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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