説明

配線基板の接続方法

【課題】配線基板のデッドスペースを小さくすることが可能な配線基板の接続方法を提供すること。
【解決手段】本発明の配線基板の接続方法は、第一配線基板1と、この第一配線基板1を接続する面の反対面にチップ24などが搭載されている第二配線基板2とを、異方性導電性ペースト3を用いて接続する配線基板の接続方法であって、第二配線基板2上に異方性導電性ペースト3を塗布する塗布工程と、異方性導電性ペースト3上に第一配線基板1を配置し、第一配線基板1上からヒーター4を接触させ、0.35MPa以下の圧力で、第一配線基板1を第二配線基板2に熱圧着する熱圧着工程と、を備え、前記熱圧着工程では、第二配線基板2の反対面に、板状の弾性体5を、平面視にてヒーター4の接触する箇所と弾性体5とが重複するようにして介在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電性ペーストを用いて配線基板同士を接続する配線基板の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキ基板(フレキシブル性を有する配線基板)とリジット基板(フレキシブル性を有しない配線基板)との接続には、異方性導電材(異方性導電性フィルム、異方性導電性ペースト)を用いた接続方式が利用されている。例えば、フレキ基板とリジット基板とを接続する場合には、電極が形成されたフレキ基板と、電極のパターンが形成されたリジット基板との間に異方性導電材を配置し、フレキ基板とリジット基板とを熱圧着して電気的接続を確保している。
【0003】
異方性導電材としては、例えば、基材となるバインダー樹脂に、金属微粒子や表面に導電膜を形成した樹脂ボールなどの導電性フィラーを分散させた材料が提案されている(例えば、特許文献1)。例えば、電子部品と配線基板とを熱圧着させると、接続対象である電子部品および配線基板の電極同士の間には、ある確率で導電性フィラーが存在するため、導電性フィラーが面状に配置された状態となる。このように、接続対象である電子部品および配線基板の電極同士が導電性フィラーを介して接触することにより、これらの電極同士の間での導電性が確保される。一方、電子部品の電極同士の間隙や配線基板の電極同士の間隙では、バインダー樹脂内に導電性フィラーが埋設されたような状態となり、面方向への絶縁性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−165825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような実装法では、異方性導電材中の導電性フィラーを面状に配置された状態とするために、熱圧着時の圧力が比較的に高くなるため(例えば10MPa)、配線基板の両面に電子部品が実装されている場合には、熱圧着時にかかる圧力により電子部品が破損してしまう。また、上記のような実装法では、異方性導電材中の導電性フィラーを面状に配置された状態とするために、熱圧着時に圧着部全体に均一に圧力がかかるようにする必要があるが、接続面の反対面にある電子部品の存在により圧着部にかかる圧力が不均一になる。そこで、従来は、熱圧着時に圧力がかかる箇所、例えば、反対面において熱圧着時に配線基板を担持する箇所には、電子部品などを配置しなかった。このように、上記のような実装法では、電子部品などを配置できないスペース、いわゆるデッドスペースが大きくなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、配線基板のデッドスペースを小さくすることが可能な配線基板の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような配線基板の接続方法を提供するものである。
すなわち、本発明の配線基板の接続方法は、第一配線基板と、この第一配線基板を接続する面の反対面に電子部品が搭載されている第二配線基板とを、異方性導電性ペーストを用いて接続する配線基板の接続方法であって、前記第二配線基板上に前記異方性導電性ペーストを塗布する塗布工程と、前記異方性導電性ペースト上に前記第一配線基板を配置し、前記第一配線基板上からヒーターを接触させ、0.35MPa以下の圧力で、前記第一配線基板を前記第二配線基板に熱圧着する熱圧着工程と、を備え、前記熱圧着工程では、前記第二配線基板の前記反対面に、板状の弾性体を、平面視にて前記ヒーターの接触する箇所と前記弾性体とが重複するようにして介在させることを特徴とする方法である。
【0008】
本発明の配線基板の接続方法においては、前記異方性導電性ペーストが、240℃以下の融点を有する鉛フリーはんだ粉末10質量%以上50質量%以下と、熱硬化性樹脂および有機酸を含有する熱硬化性樹脂組成物50質量%以上90質量%以下とを含有し、前記熱硬化性樹脂組成物の酸価が、20mgKOH/g以上50mgKOH/gであることが好ましい。
本発明の配線基板の接続方法においては、前記鉛フリーはんだ粉末が、スズ、銅、銀、ビスマス、アンチモン、インジウムおよび亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0009】
なお、本発明において、異方性導電性ペーストとは、所定値以上の熱および所定値以上の圧力をかけた箇所では熱圧着方向(厚み方向)に導電性を持つようになるが、それ以外の箇所では面方向に絶縁性を有する異方性導電材を形成できるペーストのことをいう。
【0010】
本発明の配線基板の接続方法においては、以下説明するように、配線基板のデッドスペースを小さくすることが可能となる。
すなわち、本発明者らは、第一配線基板と、この第一配線基板を接続する面の反対面に電子部品が搭載されている第二配線基板とを、異方性導電性ペーストを用いて接続する場合において、熱圧着時に圧力がかかる箇所(反対面において熱圧着時に配線基板を担持する箇所)には、電子部品などを配置しないという従来の技術常識を覆し、熱圧着時に圧力がかかる箇所に電子部品を配置しても、配線基板同士を接続できる方法について鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成した。
本発明の配線基板の接続方法においては、熱圧着時の圧力が比較的に低くできる異方性導電性ペーストを用い、熱圧着時の圧力を0.35MPa以下としている。また、熱圧着工程では、第二配線基板の前記反対面に、板状の弾性体を、(配線基板上面側から見た)平面視にてヒーターの接触する箇所と板状の弾性体とが重複するようにして介在させている。このような場合には、板状の弾性体により、電子部品が存在する箇所やそれ以外の箇所に圧力が集中することを抑制することができ、第二配線基板および第一配線基板の接続面同士の平行を十分に確保することができる。その結果として、これらの電極同士の間での導電性を確保できる。また、熱圧着時にかかる圧力により電子部品が破損してしまうことを十分に防止することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配線基板のデッドスペースを小さくすることが可能な配線基板の接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の配線基板の接続方法により、第一配線基板および第二配線基板が接続した状態を示す上面図である。
【図2】本発明の配線基板の接続方法により、第一配線基板および第二配線基板が接続した状態を示す一部断面の側面図である。
【図3】本発明の熱圧着工程において、第一配線基板と第二配線基板とを熱圧着する前の接続部分を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の熱圧着工程において、第一配線基板と第二配線基板とを熱圧着する際の接続部分を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の配線基板の接続方法の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4は、本発明の配線基板の接続方法を説明するための図である。
本発明の配線基板の接続方法は、図1および図2に示すように、第一配線基板1と、この第一配線基板1を接続する面の反対面に電子部品(チップ24、パッケージ部品25)が搭載されている第二配線基板2とを、異方性導電性ペースト3を用いて接続する配線基板の接続方法であって、以下説明する塗布工程と、熱圧着工程と、を備える方法である。
【0014】
第一配線基板1は、図1および図2に示すように、第一基材11と、第一配線12と、第一絶縁膜13とを備える積層体である。また、第一配線基板1には、電子部品(図示しない)が搭載されていてもよい。なお、第一配線基板1としては、フレキシブル性を有するフレキ基板、フレキシブル性を有しないリジット基板のいずれも用いることができる。また、第一配線基板1は、単層基板であってもよく、多層基板であってもよい。さらに、第一配線基板1は、片面基板であってもよく、両面基板であってもよい。
第二配線基板2は、図1および図2に示すように、第二基材21と、第二配線22と、第二絶縁膜23とを備える積層体である。また、第二配線基板2には、チップ24、パッケージ部品25などの電子部品が搭載されている。なお、第二配線基板2としては、フレキシブル性を有するフレキ基板、フレキシブル性を有しないリジット基板のいずれも用いることができる。また、第二配線基板2は、単層基板であってもよく、多層基板であってもよい。さらに、第二配線基板2は、片面基板であってもよく、両面基板であってもよい。また、第一配線基板1としてフレキ基板を用いる場合には、2つの第二配線基板2(リジット基板であってもフレキ基板であってもよい)とそれぞれ接続を図ることで、リジット基板同士をフレキ基板を介して電気的に接続することもできる。
【0015】
塗布工程においては、第二配線基板2上に異方性導電性ペースト3を塗布する。
ここで用いる塗布装置としては、例えば、ディスペンサー、スクリーン印刷機、ジェットディスペンスメタルマスク印刷機が挙げられる。
また、塗布膜の厚みは、特に限定されないが、50μm以上500μm以下であることが好ましく、100μm以上300μm以下であることがより好ましい。厚みが前記下限未満では、第二配線基板の電極上に第一配線基板を搭載した際の付着力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、接続部分以外にもペーストがはみ出しやすくなる傾向にある。
【0016】
熱圧着工程においては、図3および図4に示すように、前記異方性導電性ペースト上に第一配線基板1を配置し、第一配線基板1上からヒーター4を接触させ、0.35MPa以下の圧力で、第一配線基板1を第二配線基板2に熱圧着する。そして、本発明においては、熱圧着工程では、図4に示すように、第二配線基板2の反対面(第一配線基板1と接触しない面)に、板状の弾性体5を、平面視にてヒーター4の接触する箇所と弾性体5とが重複するようにして介在させる。
この弾性体5により、熱圧着時の圧力が所定値以下の場合には、チップ24などが存在する箇所やそれ以外の箇所に圧力が集中することを抑制することができ、第二配線基板2および第一配線基板1の接続面同士の平行を十分に確保することができる。その結果として、これらの電極同士の間での導電性を確保できる。
【0017】
弾性体5としては、例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムが挙げられる。
弾性体5の厚みは、0.5mm以上10mm以下であることが好ましい。厚みが上記範囲内であれば、電子部品が存在する箇所やそれ以外の箇所に圧力が集中することを抑制することができる。
弾性体5の耐熱温度は、140℃以上であることが好ましい。耐熱温度は、JIS K 6257の記載に準拠した方法で測定することができる。
弾性体5の見掛け密度(かさ比重)は、0.1g/cm以上1.0g/cm以下であることが好ましい。見掛け密度は、JIS K 6720の記載に準拠した方法で測定することができる。
弾性体5の引張り強さは、0.1MPa以上4.5MPa以下であることが好ましい。引張り強さは、JIS K 6250の記載に準拠した方法で測定することができる。
弾性体5の伸びは、120%以上であることが好ましい。伸びは、JIS K 6301の記載に準拠した方法で測定することができる。
【0018】
前記熱圧着工程において、熱圧着時の圧力は、0.35MPa以下とすることが必要である。圧力が0.35MPaを超えると、弾性体5にある場合でも、第二配線基板2および第一配線基板1の接続面同士の平行を十分に確保することができなくなる。また、熱圧着時の圧力は、0.05MPa以上0.3MPa以下とすることが好ましく、0.1MPa以上0.25MPa以下とすることがより好ましい。圧力が前記上限未満では、配線基板同士の間に十分なはんだ接合を形成できず、配線基板同士の間の導電性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、配線基板にストレスがかかり、デッドスペースを広くとらなければならなくなる傾向にある。
熱圧着時の温度は、異方性導電性ペースト3中の鉛フリーはんだ粉末の融点よりも高いことが好ましく、鉛フリーはんだ粉末の融点よりも20℃以上高いことがより好ましい。この条件を満たさない場合には、鉛フリーはんだを十分に溶融させることができず、配線基板同士の間に十分なはんだ接合を形成できず、配線基板同士の間の導電性が不十分となる傾向にある。
熱圧着時の時間は、特に限定されないが、通常、5秒以上60秒以下であり、7秒以上20秒以下であることが好ましい。
【0019】
次に、本発明に用いる異方性導電性ペーストについて説明する。
本発明においては、公知の異方性導電性ペーストを用いてもよいが、以下説明する異方性導電性ペーストを用いることが好ましい。これによれば、熱圧着時の圧力を、従来の異方性導電性フィルムや異方性導電性ペーストを用いる場合と比較して、低い圧力範囲に設定することができる。
【0020】
本発明に用いる異方性導電性ペーストは、以下説明する鉛フリーはんだ粉末10質量%以上50質量%以下と、以下説明する熱硬化性樹脂組成物50質量%以上90質量%以下とを含有するものであることが好ましい。
この鉛フリーはんだ粉末の含有量が10質量%未満の場合(熱硬化性樹脂組成物の含有量が90質量%を超える場合)には、得られる異方性導電性ペーストを熱圧着した場合に、配線基板同士の間に十分なはんだ接合を形成できず、配線基板同士の間の導電性が不十分となり、他方、鉛フリーはんだ粉末の含有量が50質量%を超える場合(熱硬化性樹脂組成物の含有量が50質量%未満の場合)には、得られる異方性導電性ペーストにおける絶縁性、特に加湿状態に放置した場合の湿中絶縁性が不十分となり、結果として、はんだブリッジにより、異方性を示さなくなる。また、得られる異方性導電性ペーストにおいて、絶縁性と熱圧着した場合の導電性とのバランスをとるという観点から、この鉛フリーはんだ粉末の含有量は、20質量%以上45質量%以下であることが好ましく、30質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
本発明に用いる鉛フリーはんだ粉末は、240℃以下の融点を有するものである。この鉛フリーはんだ粉末の融点が240℃を超えるものを用いる場合には、異方性導電性ペーストにおける通常の熱圧着温度では鉛フリーはんだ粉末を溶融させることができない。また、異方性導電性ペーストにおける熱圧着温度を低くするという観点からは、鉛フリーはんだ粉末の融点が220℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
ここで、鉛フリーはんだ粉末とは、鉛を添加しないはんだ金属または合金の粉末のことをいう。ただし、鉛フリーはんだ粉末中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に、鉛の量は、100質量ppm以下であることが好ましい。
【0022】
前記鉛フリーはんだ粉末は、スズ(Sn)、銅(Cu)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)および亜鉛(Zn)からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
また、前記鉛フリーはんだ粉末における具体的なはんだ組成(質量比率)としては、以下のようなものを例示できる。
2元系合金としては、例えば、95.3Ag/4.7BiなどのAg−Bi系、66Ag/34LiなどのAg−Li系、3Ag/97InなどのAg−In系、67Ag/33TeなどのAg−Te系、97.2Ag/2.8TlなどのAg−Tl系、45.6Ag/54.4ZnなどのAg−Zn系、80Au/20SnなどのAu−Sn系、52.7Bi/47.3InなどのBi−In系、35In/65Sn、51In/49Sn、52In/48SnなどのIn−Sn系、8.1Bi/91.9ZnなどのBi−Zn系、43Sn/57Bi、42Sn/58BiなどのSn−Bi系、98Sn/2Ag、96.5Sn/3.5Ag、96Sn/4Ag、95Sn/5AgなどのSn−Ag系、91Sn/9Zn、30Sn/70ZnなどのSn−Zn系、99.3Sn/0.7CuなどのSn−Cu系、95Sn/5SbなどのSn−Sb系が挙げられる。
3元系合金としては、例えば、95.5Sn/3.5Ag/1InなどのSn−Ag−In系、86Sn/9Zn/5In、81Sn/9Zn/10InなどのSn−Zn−In系、95.5Sn/0.5Ag/4Cu、96.5Sn/3.0Ag/0.5CuなどのSn−Ag−Cu系、90.5Sn/7.5Bi/2Ag、41.0Sn/58Bi/1,0AgなどのSn−Bi−Ag系、89.0Sn/8.0Zn/3.0BiなどのSn−Zn−Bi系が挙げられる。
その他の合金としては、Sn/Ag/Cu/Bi系などが挙げられる。
【0023】
また、前記鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径は、1μm以上34μm以下であることが好ましく、3μm以上20μm以下であることがより好ましい。鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径が前記下限未満では、配線基板同士の間の導電性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、異方性導電性ペーストにおける絶縁性が低下する傾向にある。
【0024】
本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および有機酸を含有するものである。そして、この熱硬化性樹脂組成物の酸価は、20mgKOH/g以上50mgKOH/gであることが好ましい。酸価が20mgKOH/g未満の場合には、得られる異方性導電性ペーストを熱圧着した場合に、はんだを十分に活性化することができず、配線基板同士の間の導電性が不十分となる傾向にあり、他方、50mgKOH/gを超えると、得られる異方性導電性ペーストにおける絶縁性、特に加湿状態に放置した場合の湿中絶縁性が不十分となる傾向にある。また、得られる異方性導電性ペーストにおいて、絶縁性と熱圧着した場合の導電性とのバランスをとるという観点から、この熱硬化性樹脂組成物の酸価は、30mgKOH/g以上45mgKOH/gであることが好ましい。
【0025】
本発明に用いる熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂を適宜用いることができるが、フラックス作用を有するという観点から、特にエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
なお、本発明において、フラックス作用を有するとは、通常のロジン系フラックスのように、その塗布膜は被はんだ付け体の金属面を覆って大気を遮断し、はんだ付け時にはその金属面の金属酸化物を還元し、この塗布膜が溶融はんだに押し退けられてその溶融はんだと金属面との接触が可能となり、その残渣は回路間を絶縁する機能を有するものである。
【0026】
このようなエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を適宜用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型などのエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらのエポキシ樹脂は、常温で液状のものを含有することが好ましく、常温で固形のものを用いる場合には、常温で液状のものと併用することが好ましい。また、これらのエポキシ樹脂の型の中でも、金属粒子の分散性およびペースト粘度を調整でき、さらに硬化物の落下衝撃に対する耐性が向上できるという観点や、はんだの濡れ広がり性が良好となるという観点から、液状ビスフェノールA型、液状ビスフェノールF型、液状水添タイプのビスフェノールA型が好ましい。
前記エポキシ樹脂の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、70質量%以上92質量%以下であることが好ましく、75質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量が前記下限未満では、配線基板を固着させるために十分な強度が得られないため、落下衝撃に対する耐性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物中の有機酸や硬化剤の含有量が減少し、エポキシ樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にある。
【0027】
本発明に用いる有機酸としては、公知の有機酸を適宜用いることができる。このような有機酸の中でも、エポキシ樹脂との溶解性に優れるという観点、並びに保管中において結晶の析出が起こりにくいという観点から、アルキレン基を有する二塩基酸を用いることが好ましい。このようなアルキレン基を有する二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、2,5−ジエチルアジピン酸、グルタル酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2,2−ジエチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2−エチル−3−プロピルグルタル酸、セバシン酸、コハク酸、マロン酸、ジグリコール酸が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸が好ましい。
前記有機酸の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、1質量%以上8質量%以下であることが好ましく、2質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。有機酸の含有量が前記下限未満では、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延することで硬化不良となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる異方性導電性ペーストにおける絶縁性が低下する傾向にある。
【0028】
また、本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂および前記有機酸の他に、チクソ剤および硬化剤を用いることが好ましい。
本発明に用いるチクソ剤としては、公知のチクソ剤を適宜用いることができる。このようなチクソ剤としては、例えば、ソルビトール誘導体、脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油が挙げられる。これらの中でも、ソルビトール誘導体、脂肪酸アマイドが好ましい。
前記チクソ剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。チクソ剤の含有量が前記下限未満では、チクソ性が得られず、配線基板の電極上でダレが生じやすくなり、配線基板の電極上に他の配線基板を搭載した際の付着力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、チクソ性が高すぎてシリンジニードルの詰まりにより塗布不良となりやすい傾向にある。
【0029】
本発明に用いる硬化剤としては、適宜公知の硬化剤を用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を用いる場合には、以下のようなものを用いることができる。
潜在性硬化剤としては、例えば、ノバキュアHX−3722、HX−3721、HX−3748、HX−3088、HX−3613、HX−3921HP、HX−3941HP(旭化成エポキシ社製、商品名)が挙げられる。
脂肪族ポリアミン系硬化剤としては、例えば、フジキュアFXR−1020、FXR−1030、FXR−1050、FXR−1080(富士化成工業社製、商品名)が挙げられる。
エポキシ樹脂アミンアダクト系硬化剤としては、例えば、アミキュアPN−23、PNF、MY−24 、VDH、UDH、PN−31、PN−40(味の素ファインテクノ製、商品名)、EH−3615S、EH−3293S、EH−3366S、EH−3842、EH−3670S、EH−3636AS、EH−4346S(ADEKA社製、商品名)が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2P4MHZ、2MZA、2PZ、C11Z、C17Z、2E4MZ、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNZ(以上、商品名)が挙げられる。
【0030】
前記硬化剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、10質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。硬化剤の含有量が前記下限未満では、熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応性が速くなり、ペースト使用時間が短くなる傾向にある。
【0031】
本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、前記エポキシ樹脂、前記有機酸、前記チクソ剤および前記硬化剤以外に、界面活性剤、カップリング剤、消泡剤、粉末表面処理剤、反応抑制剤、沈降防止剤などの添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。添加剤の含有量が前記下限未満では、それぞれの添加剤の効果を奏しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物による接合強度が低下する傾向にある。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
熱硬化性樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON 860」、DIC社製
チクソ剤:商品名「ゲルオールD」、新日本理化社製
有機酸:アジピン酸、関東電化工業社製
硬化剤:商品名「キュアゾール2P4MHZ」、四国化成工業社製
界面活性剤:商品名「BYK361N」、ビックケミージャパン社製
消泡剤:商品名「KS−66」、信越シリコーン社製
鉛フリーはんだ粉末A:平均粒子径は5μm、はんだの融点は139℃、はんだの組成は42Sn/58Bi
鉛フリーはんだ粉末B:平均粒子径は5μm、はんだの融点は217℃、はんだの組成は96.5Sn/3Ag/0.5Cu
金メッキ処理樹脂粉末:Au/Niメッキ樹脂粉末、商品名「ミクロパールAu−205」、積水化学社製
[実施例1]
熱硬化性樹脂82.9質量%、チクソ剤2質量%、有機酸2.6質量%、硬化剤11.5質量%、界面活性剤0.5質量%および消泡剤0.5質量%を容器に投入し、らいかい機を用いて混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。
その後、得られた熱硬化性樹脂組成物62.5質量%、および鉛フリーはんだ粉末A37.5質量%を容器に投入し、混練機にて2時間混合することで異方性導電性ペーストを調製した。
次に、図3に示すように、反対面にチップ24が搭載されている第二配線基板2(リジット基板、電極:銅電極に金メッキ処理(Cu/Ni/Au))上に、得られた異方性導電性ペースト3を塗布した(厚み:0.2mm)。そして、塗布後の異方性導電性ペースト3上に、第一配線基板1(フレキ基板、電極:銅電極に金メッキ処理(Cu/Ni/Au))を配置し、熱圧着装置(アドバンセル社製)を用いて、温度240℃、圧力0.23MPa(接続荷重10N)、圧着時間5秒の条件で、第一配線基板1を第二配線基板2に熱圧着した。なお、熱圧着時には、図4に示すように、第二配線基板2の反対面に、下記(i)に示す弾性体5を、平面視にてヒーター4の接触する箇所と弾性体5とが重複するようにして介在させた。
(i)弾性体5の物性
材質:シリコーンゴム(サンポリマー社製)
大きさ:50mm×50mm
厚み:2mm
耐熱温度:200℃
見掛け密度:0.38g/cm
引張り強さ:0.9MPa
伸び:245%
【0033】
[実施例2〜7]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物および異方性導電性ペーストを得た。
実施例1で用いた異方性導電性ペーストに代えて上記のようにして得られた異方性導電性ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして、第一配線基板1を第二配線基板2に熱圧着した。
【0034】
[比較例1]
熱圧着時における圧力を0.47MPa(接続荷重20N)とした以外は、実施例1と同様にして、第一配線基板1を第二配線基板2に熱圧着した。
[比較例2]
熱圧着時において、第二配線基板2の反対面に弾性体5を介在させなかった以外は、実施例1と同様にして、第一配線基板1を第二配線基板2に熱圧着した。
【0035】
[比較例3]
表2に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物および異方性導電性ペーストを得た。
実施例1で用いた異方性導電性ペーストに代えて上記のようにして得られた異方性導電性ペーストを用い、熱圧着時における圧力を1.87MPa(接続荷重80N)とした以外は、実施例1と同様にして、第一配線基板1を第二配線基板2に熱圧着した。
[比較例4]
熱圧着時において、第二配線基板2の反対面に弾性体5を介在させなかった以外は、比較例3と同様にして、第一配線基板1を第二配線基板2に熱圧着した。
【0036】
<異方性導電性ペーストおよび配線基板の接続方法の評価>
異方性導電性ペーストの性能(樹脂組成物の酸価)、および、配線基板の接続方法の評価(初期抵抗値、絶縁抵抗値、チップ破壊)を以下のような方法で評価または測定した。得られた結果を表1および表2に示す。
(1)樹脂組成物の酸価
樹脂組成物を量りとり、溶剤にて溶解させる。そして、フェノールフタレイン溶液を指示薬として0.5mol/L・KOHにて滴定した。
(2)初期抵抗値
回路パターンとして0.2mmピッチランド(ライン/スペース=100μm/100μm)を有し、かつ、反対面にチップ24が搭載されている第二配線基板2を準備した。そして、この配線基板のランド上に、それぞれ前記の実施例および比較例に記載の方法で、0.2mmピッチランド(ライン/スペース=100μm/100μm)を有する第一配線基板1を熱圧着した。そして、デジタルマルチメーター(Agilent社製、商品名「34401A」)を用いて、接続したランドの端子同士の間の抵抗値を測定した。なお、抵抗値が高すぎて(100MΩ以上)、導通できなかった場合には、「導通不可」と判定した。
(3)絶縁抵抗値
回路パターンとして0.2mmピッチランド(ライン/スペース=100μm/100μm)を有し、かつ、反対面にチップ24が搭載されている第二配線基板2を準備した。そして、この配線基板のランド上に、それぞれ前記の実施例および比較例に記載の方法で、0.2mmピッチランド(ライン/スペース=100μm/100μm)を有する第一配線基板1を熱圧着して試験片を得た。この試験片を85℃、85%RH(相対湿度)中、15V電圧を印加して、168時間後の絶縁抵抗値を測定した。
(4)チップ破壊
実施例および比較例にて、第一配線基板1を第二配線基板2に熱圧着したものを試験片として、この試験片の第二配線基板2の反対面に搭載されたチップ24の状態を目視にて観察して、チップ破壊の有無を評価した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表1および表2に示す結果からも明らかなように、本発明の配線基板の接続方法(実施例1〜7)によれば、第二配線基板2の反対面にチップ24を搭載しているような場合でも、配線基板同士を接続できることが確認された。つまり、本発明の配線基板の接続方法(実施例1〜7)によれば、配線基板のデッドスペースを小さくすることができることが確認された。
これに対し、0.35MPaを超える圧力で熱圧着した場合(比較例1)、および、第二配線基板2の反対面に弾性体5を介在させなかった場合(比較例2)には、熱圧着時における配線基板の接続面同士の平行が十分に確保できず、配線基板同士の導電性を確保できないことが確認された。
また、金メッキ処理樹脂粉末を含有する異方性導電性ペーストを用い、0.35MPaを超える圧力で熱圧着した場合(比較例3)にも、配線基板同士の導電性を確保できないことが確認された。また、金メッキ処理樹脂粉末を含有する異方性導電性ペーストを用い、0.35MPaを超える圧力で熱圧着するとともに、第二配線基板2の反対面に弾性体5を介在させなかった場合(比較例4)には、配線基板同士の導電性を確保できないだけでなく、第二配線基板2の反対面のチップ24が破壊されてしまった。
さらに、本発明の配線基板の接続方法の中でも、所定の条件を満たす異方性導電性ペーストを用いた場合(実施例1〜3)には、絶縁抵抗値がより高くでき、より高度の絶縁性が確保できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の配線基板の接続方法は、配線基板同士を接続するための技術として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…第一配線基板
2…第二配線基板
3…異方性導電性ペースト
4…ヒーター
5…弾性体
24…チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一配線基板と、この第一配線基板を接続する面の反対面に電子部品が搭載されている第二配線基板とを、異方性導電性ペーストを用いて接続する配線基板の接続方法であって、
前記第二配線基板上に前記異方性導電性ペーストを塗布する塗布工程と、
前記異方性導電性ペースト上に前記第一配線基板を配置し、前記第一配線基板上からヒーターを接触させ、0.35MPa以下の圧力で、前記第一配線基板を前記第二配線基板に熱圧着する熱圧着工程と、を備え、
前記熱圧着工程では、前記第二配線基板の前記反対面に、板状の弾性体を、平面視にて前記ヒーターの接触する箇所と前記弾性体とが重複するようにして介在させる
ことを特徴とする配線基板の接続方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板の接続方法において、
前記異方性導電性ペーストが、240℃以下の融点を有する鉛フリーはんだ粉末10質量%以上50質量%以下と、熱硬化性樹脂および有機酸を含有する熱硬化性樹脂組成物50質量%以上90質量%以下とを含有し、
前記熱硬化性樹脂組成物の酸価が、20mgKOH/g以上50mgKOH/gである
ことを特徴とする配線基板の接続方法。
【請求項3】
請求項2に記載の配線基板の接続方法において、
前記鉛フリーはんだ粉末が、スズ、銅、銀、ビスマス、アンチモン、インジウムおよび亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む
ことを特徴とする配線基板の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−51353(P2013−51353A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189377(P2011−189377)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】