説明

酸素を含む流体の反応解析方法及び装置

【課題】酸素を含む流体の反応の進行状況等を正確に且つ速やかに評価することができる反応解析方法及び装置を提供する。
【解決手段】反応解析装置1は、酸素を含む反応ガスを改質する触媒層11を有する含む反応管10と、酸素分圧を測定可能な参照電極と複数の測定電極とを備える計測部201を有し、触媒層11内に配置される酸素センサ20と、酸素センサ20の出力を取得する計測装置30とを備える。酸素センサ20の複数個の前記測定電極は、一定間隔を置いて一の方向に配列され、この配列方向が反応ガスの流通方向に沿うように、酸素センサ20が触媒層20内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素を含む流体の反応の進行状況等を知見するための反応解析方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の組成を分析する手法として、クロマトグラフ法、特にガスクロマトグラフィーが汎用されている。このガスクロマトグラフィーは、例えば水素を製造する際に適用されるメタンガスの水蒸気改質反応の解析にも用いられている。近年、自動車に搭載される燃料電池への水素燃料の供給装置として、メタノールタンクと水蒸気改質ユニットとを組み合わせた燃料供給装置が研究されている。水蒸気改質ユニットは、高温環境において水蒸気とメタンとを金属触媒の存在下で反応させるユニットであるが、前記触媒の性能を評価するために、例えばメタン転化率等を測定してメタンガスの水蒸気改質反応を解析する必要がある。
【0003】
図8は、触媒を用いたメタンガスの水蒸気改質反応の解析を、ガスクロマトグラフィー90を用いて行う場合を示す模式的な図である(例えば特許文献1参照)。ガスの流路となる反応管91の内部には、ガス流方向に所定の長さを有する触媒層92が設けられている。反応管91の入口側からは反応ガス(メタンガスと水蒸気の混合ガス)が導入され、出口側からは触媒層92で改質された改質ガス(一酸化炭素と水素)が排出される。ここで、触媒層92の内部におけるメタン転化率を測定する場合、ガスクロマトグラフィー90のサンプリングチューブ93が触媒層92内へ挿入される。例えば、サンプリングチューブ93の先端口93Sが測定点A、B及びCの位置に順次配置され、各測定点において試料ガスが吸引採取される。そして、この試料ガスの成分がガスクロマトグラフィー90により求められ、その成分値からメタン転化率が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−39425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスクロマトグラフィー90自体は、高精度にガス成分の特定が行えるので望ましい。しかしながら、図8に示した手法では、測定点A、B又はCの位置のガスのみを採取することが困難である。すなわち、図示するように例えば測定点Cの位置にサンプリングチューブ93の先端口93Sを対向させ、ガス吸引動作を行わせると、測定点Cのガスだけではなく、その周囲のガスも併せて吸引してしまうことになる。他の測定点A,Bでも同様である。
【0006】
このように、測定点A、B及びCにおけるガスの採取を意図しても、各測定点に実際に存在するガスが採取できない結果、メタン転化率が的確に算出できなくなる。従って、触媒層92の性能を表す、例えば触媒層92内におけるメタン転化率の変化のデータを正確に取得できないという問題がある。さらに、ガスクロマトグラフィー90は、成分分析のためにある程度の時間が必要であり、迅速に評価データを取得できないという問題もある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたもので、酸素を含む流体の反応の進行状況等を正確に且つ速やかに評価することができる反応解析方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に係る反応解析方法は、酸素を含む第1流体を流通させたときに前記第1流体とは異なる第2流体に変化させる反応経路を準備し、前記第1流体の流通方向に沿って、酸素分圧を測定可能なセンサエレメントを、前記反応経路内に所定間隔を置いて複数個配置し、前記第1流体を前記反応経路に流通させつつ、前記複数個のセンサエレメントの各々から酸素分圧値を取得することを特徴とする(請求項1)。
【0009】
上記の方法によれば、第1流体の流通方向に沿って、反応経路内に複数個のセンサエレメントが配置されるので、各センサエレメントの配置位置に応じた酸素分圧値を各々取得することができる。従って、これら酸素分圧値に基づいて、反応経路中における第1流体から第2流体への変化(反応)度合いを、的確に評価することができる。また、酸素分圧値は酸素濃度比に基づく起電力として得られるので、即時にデータを取得することができる利点もある。
【0010】
上記の方法において、前記反応経路が、管路中に配置された触媒層であることが望ましい(請求項2)。この方法によれば、触媒層内における第1流体から第2流体への変化度合いを把握できるので、触媒層の性能評価を正確に行うことができる。
【0011】
この場合、前記センサエレメントは、等間隔を置いて前記反応経路内に配置されていることが望ましい(請求項3)。この方法によれば、流体の流通方向において一定間隔で触媒層の性能評価を行うことが可能となる。
【0012】
また、前記第1流体が、メタンガスと水蒸気との混合ガスであり、前記第2流体が、前記混合ガスが前記触媒層で改質された改質ガスであることが望ましい(請求項4)。この方法によれば、メタンガスの水蒸気改質反応を解析でき、例えば触媒層内におけるメタン転化率の変化のデータ等を正確に取得することができる。
【0013】
本発明の他の局面に係る反応解析装置は、酸素を含む第1流体を流通させたときに前記第1流体とは異なる第2流体に変化させる反応領域を含む反応管と、酸素分圧を測定可能なセンサエレメントを複数個有し、前記反応管の反応領域内に配置される酸素センサと、前記酸素センサの出力を取得する計測手段と、を備え、前記酸素センサの複数個の前記センサエレメントは、所定間隔を置いて一の方向に配列され、前記一の方向が前記第1流体の流通方向に沿うように、前記酸素センサが反応領域内に配置されていることを特徴とする(請求項5)。
【0014】
この構成によれば、第1流体の流通方向と複数個のセンサエレメントの配列方向とを一致させて、反応管の反応領域内に酸素センサが配置されるので、各センサエレメントの配置位置に応じた酸素分圧値を各々取得することができる。従って、これら酸素分圧値に基づいて、反応経路中における第1流体から第2流体への変化度合いを、的確に評価することができる。また、酸素分圧値に基づく計測であるので、計測手段は即時にデータを取得することができる。
【0015】
上記構成において、前記酸素センサがジルコニア式酸素センサであって、前記センサエレメントとしての白金からなる複数個の測定電極と、白金からなる1つの参照電極と、前記複数個の測定電極を外周面で保持すると共に前記1つの参照電極を内周面で保持する安定化ジルコニアチューブと、を含み、前記計測手段は、前記各測定電極と前記参照電極との間の起電力を測定することが望ましい(請求項6)。この構成によれば、構造がシンプルで高温に耐性のあるジルコニア式酸素センサを用いて、酸素分圧値を取得することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、酸素を含む流体の反応の進行状況等を正確に且つ速やかに評価することができる反応解析方法及び装置を提供することができるので、例えば反応触媒の性能評価等を迅速且つ的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の反応解析方法を説明するための模式図である。
【図2】本発明の反応解析装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図3】酸素センサの一例を示す斜視図である。
【図4】酸素センサの断面構造を示す図であると共に、計測装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5】計測装置による転化率測定のフローを示すフローチャートである。
【図6】触媒温度とメタン転化率との関係を示すグラフであって、本実施形態の装置の測定結果、ガスクロマトグラフィーの測定結果、及び理論値を示すグラフである。
【図7】各測定点におけるメタン転化率の導出結果を示すグラフである。
【図8】従来のガスクロマトグラフィーによる反応解析方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0019】
まず、図1に基づいて、本発明の実施形態に係る反応解析方法の概要を説明する。当該反応解析方法の実行に際しては、酸素を含む気体や液体(流体)を流通させることが可能な筒体からなる流通管100(管路)が準備される。この流通管100の内部には、酸素を含む第1流体を流通させたときに前記第1流体とは異なる第2流体に変化させる反応領域101(反応経路)が備えられている。
【0020】
反応領域101には、前記第1流体の組成を改変させて前記第2流体を生成することが可能な、様々な部材や環境が提供されて良い。例えば、化学反応を促進させる触媒を反応領域101に配置することができる。この他、反応領域101は、加熱又は冷却装置を配置して前記第1流体を熱改質したり、電界発生装置、磁界発生装置或いはプラズマ発生装置等を配置して前記第1流体を改質したりする領域であっても良い。
【0021】
このような反応領域101を備える流通管100の一端102から第1流体から導入し流通させると、第1流体は反応領域101で改変され、第2流体となって流通管100の他端から導出される。例えばメタンガスを水蒸気改質して水素を生成する反応を解析する場合は、第1流体はメタンガスと水蒸気との混合ガス(酸素を含む流体)であり、反応領域101には白金や白金ルテニウムを用いた触媒が配置される。そして、第2流体は、下記反応式で示す通り前記混合ガスが前記触媒で改質された改質ガス(一炭化酸素と水素を含むガス)となる。
CH+HO→CO+3H
【0022】
本実施形態に係る反応解析方法では、上記のような反応領域101に、第1流体の流通方向(図1の矢印方向)に沿って、酸素分圧を測定可能なセンサエレメントが複数個配置される。図1の例では、流通方向に沿って等間隔で設定された測定点A、B、C、D、Eに、それぞれセンサエレメントSa、Sb、Sc、Sd、Seが配置されている例を示している。勿論、解析目的によっては、測定点A、B、C、D、Eは等間隔で設置されない場合もある。
【0023】
第1流体を流通管100(反応領域101)に流通させつつ、センサエレメントSa、Sb、Sc、Sd、Seの各々から酸素分圧値が取得される。すなわち、各センサエレメントSa、Sb、Sc、Sd、Seの出力(酸素分圧に基づく起電力)は計測装置104に入力され、測定点A、B、C、D、Eにおける酸素分圧値が取得される。酸素分圧は、基準ガスと被測定ガスとの酸素濃度比により発生する起電力であることから、各測定点A、B、C、D、Eにおけるデータを的確に、しかも即時に取得することができる。
【0024】
これにより、反応領域101中における第1流体から第2流体への変化度合いを評価することができる。すなわち、酸素分圧値と変化度合いの評価値とを対応付けたテーブルを計測装置104に具備させておくことにより、実測された酸素分圧値から各測定点A、B、C、D、Eにおける変化度合いを求めることができる。従って、第1流体が反応領域101を通過する過程において、どのように第2流体へ改変されているのかを正確に把握することができる。
【0025】
続いて、図2〜図7に基づいて、本発明のより具体的な実施形態について説明する。図2は、メタンガスの水蒸気改質反応の解析を行う反応解析装置1を示すブロック図である。反応解析装置1は、解析対象の反応ガスが流通される反応管10と、酸素分圧を測定可能なセンサエレメントを複数個有する酸素センサ20と、酸素センサ20の出力を取得する計測装置30と、酸素分圧測定のために必要な酸素濃度が既知の基準ガスを供給する基準ガス供給装置40とを備えている。
【0026】
反応管10は、所定の口径を有する直線状の石英管であり、その内部に供試用の触媒層11が備えられている。具体的には、反応管10の中央付近に石英綿12、13で区画された一定幅の領域(反応領域)が形成され、該領域内に反応解析対象となる触媒が装填されている。反応管10は、入口部14と出口部15とを備え、入口部14からはメタンガスと水蒸気との混合物からなる反応ガスが導入される。この反応ガスは、触媒層11を通過した後、改質ガス(一炭化酸素と水素を含むガス)として出口部15から導出される。
【0027】
酸素センサ20は、ジルコニア式酸素センサであって、センサエレメント(参照電極22及び測定電極23)を備える計測部201が触媒層11内に挿入された状態で、反応管10内に配置される。図3は、酸素センサ20の構成を示す斜視図である。酸素センサ20は、安定化ジルコニアチューブ21と、白金からなる1つの参照電極22と、白金からなる複数個(図例では5個)の測定電極23とを備えている。
【0028】
安定化ジルコニアチューブ21は、一端に開口部211を有し、他端に底壁212を有する細長いチューブである。500℃程度以上の高温環境において、安定化ジルコニアチューブ21は固体電解質の性質を示すようになり、チューブ壁面が酸化物イオンを選択的に通過させ得る状態となる。
【0029】
参照電極22は、チューブ21の内周側において底壁212に取り付けられている。この参照電極22からはリードワイヤ221が引き出され、開口部211を通して外部まで延出されている。測定電極23はチューブ21の外周に環状設けられた電極であり、ここでは反応ガスの流通方向に沿って等ピッチで設けられた5個の測定電極23a、23b、23c、23d、23eが備えられている例を示している。これら測定電極23a、23b、23c、23d、23eが形成されている領域が上述の計測部201である。このように、チューブ21の内周側には参照電極22が、チューブ21の外周側には測定電極23a、23b、23c、23d、23eが配置されている結果、これら内外の電極間には、チューブ21の内周側と外周側との酸素濃度差に応じた起電力が発生する。
【0030】
計測装置30は、参照電極22と、各測定電極23a、23b、23c、23d、23eとの間で発生する起電力に基づき酸素分圧を算出すると共に、メタンの転化率を算出する。この計測装置30の詳細構成については、図4に基づき後記で詳述する。
【0031】
基準ガス供給装置40は、チューブ21の内周側に酸素濃度が一定である基準ガス(例えば空気)を供給する。これにより、チューブ21の内周側に配置されている参照電極22は、常時基準ガスに曝される状態とすることができる。その一方で、チューブ21の外周側の測定電極23a、23b、23c、23d、23eは、触媒層11を通過する反応ガスと接することとなる。従って、基準ガスと被測定ガス(反応ガス〜改質ガスへ変化中のガス)との酸素分圧差に応じた起電力を、参照電極22と各測定電極23a、23b、23c、23d、23eとの間で得ることができる。
【0032】
このときの起電力Eは、ネルンストの式に従い、次式で示すことができる。
E=(RT/4F)In(P/P
但し、R;気体定数=8.3145[J・mol−1−1
T;絶対温度[K]
F;ファラデー定数=9.649×10[C・mol−1
;基準ガス中の酸素分圧[atm]
;被測定ガス中の酸素分圧[atm]
【0033】
図4は、酸素センサ20の断面構造を示す図であると共に、計測装置30の機能構成を示すブロック図である。ここでは、チューブ21の内周側の温度を計測する熱電対24が、酸素センサ20に具備されている例を示している。計測装置30は、マルチプレクサ(MUX)31、電圧計32、酸素分圧算出部33、転化率導出部34、記憶部35、温度測定部36及び全体制御部37を備えている。また、計測装置30には、操作部381、表示部382及びプリント部383が接続されている。
【0034】
マルチプレクサ31は、500℃を超過する高温環境下において反応管10内に反応ガスが流通されている状態で、各測定電極23a、23b、23c、23d、23eから引き出されているリード線のいずれかと電圧計32とを、順次切り換え接続させる。例えばマルチプレクサ31は、ガスの流通方向の最上流側に位置する測定電極23aを最初に電圧計32に接続させ、その後、順次下流側の測定電極23b、23c、23d、23eを電圧計32に接続させる。
【0035】
電圧計32は、参照電極22と、マルチプレクサ31により切り換え接続される各測定電極23a、23b、23c、23d、23eとの間において発生する起電力を測定する。計測された各々の起電力データは、測定電極23a、23b、23c、23d、23e毎に与えられた識別子に関連付けて、酸素分圧算出部33に出力される。
【0036】
酸素分圧算出部33は、取得した起電力データを、測定電極23a、23b、23c、23d、23eの配置位置における酸素分圧に換算する演算処理を行う。
【0037】
転化率導出部34は、酸素分圧算出部33により求められた酸素分圧を用いて、反応ガスの反応進行度合いを示すメタン転化率を導出する。この際、転化率導出部34は、酸素分圧とメタン転化率との関係に基づいて予め作成された換算テーブル、つまり、ある酸素分圧値が検出されるとき、メタン転化率は何%かを理論的に求めたテーブルを使用する。記憶部35は、この酸素分圧とメタン転化率との関係を示す換算テーブルを記憶しており、転化率導出部34は、得られた酸素分圧をこの換算テーブルに当て嵌めて、メタン転化率を導出する。
【0038】
温度測定部36は、チューブ21の内周側に配置されている熱電対24の出力電圧に基づいて、チューブ21内の温度を算出する。上記のネルンスト式に示したように、酸素分圧により発生する起電力は温度により変化するため、メタン転化率の導出に当たり温度情報が必要となる。また、触媒の性能評価に際しては、温度条件を変化させてメタン転化率を計測する場合がある。温度測定部36は、このような要請のために、温度データを生成する。
【0039】
全体制御部37は、計測装置30の各部の動作を制御する。全体制御部37、所定のプログラムに従って、例えば、マルチプレクサ31に切り換え動作を行わせるタイミング信号、電圧計32に電圧計測動作を行わせる指示信号、酸素分圧算出部33及び転化率導出部34に演算処理を行わせる指示信号、温度測定部36に所定のサンプリング周期で検温データを出力させるタイミング信号等を生成する。
【0040】
操作部381は、キーボード等からなり、ユーザから計測装置30に対する操作信号を受け付ける。表示部382は、液晶ディスプレイ等からなり、計測装置30による測定ガイダンス情報、測定結果、解析結果などを画像情報として表示する。プリント部383は、上記測定結果や解析結果等を用紙に印刷して出力する。
【0041】
続いて、計測装置30の動作について、図5のフローチャートに基づき説明する。計測装置30の全体制御部37は、測定準備が完了するまで、すなわち操作部381から計測動作開始の指示信号が与えられるまで待機する(ステップS1)。この際、ユーザは、反応管10内に供試触媒をセットして触媒層11を形成すると共に、酸素センサ20を該触媒層11内に挿入する。
【0042】
測定準備が完了すると(ステップS1でYES)、全体制御部37は、測定電極のカウンタをn=1に設定し(ステップS2)、マルチプレクサ31を動作させてn=1番目の測定電極(例えば測定電極23a)と電圧計32とを接続させる(ステップS3)。そして、電圧計32に測定電極23aと参照電極22との間の起電力を測定させる。得られた電圧値は、所定のメモリ領域に一次的に記憶される(ステップS4)。
【0043】
次に、本実施形態では5つの測定電極23a、23b、23c、23d、23eが備えられていることから、カウンタn=5であるか否かが確認される(ステップS5)。n=5に到達していない場合(ステップS5でNO)、カウンタnを1つインクリメントし(ステップS6)、ステップS3に戻ってn=2番目の測定電極(例えば測定電極23b)と電圧計32とを接続させ、同様な処理を実行させる。
【0044】
n=5に到達した場合(ステップS5でYES)、全体制御部37は、各5つの測定電極23a、23b、23c、23d、23eと参照電極22との間で得られた起電力のデータを用いて、酸素分圧算出部33に酸素分圧を算出させる(ステップS7)。この際、温度測定部36からチューブ21内の温度情報が取得され、参照される。続いて、転化率導出部34に、この酸素分圧のデータと記憶部35に格納されている換算テーブルとを照合させ(ステップS8)、メタン転化率を導出させる(ステップS8)。
【0045】
その後、条件を変更して同様な計測処理を再実行するか否かが確認される(ステップS10)。再実行される場合(ステップS10でYES)、ステップS1に戻って処理が繰り返される。この際、同一触媒で温度条件や反応ガスの流量を変化させる準備や、反応管10内の触媒を他の触媒に取り替える準備等が為されることとなる。再実行されない場合は(ステップS10でNO)、そのまま処理を終える。
【0046】
図6は、触媒温度とメタン転化率との関係を示すグラフであって、本実施形態の計測装置30で用いられている酸素センサの精度を確認するために、当該酸素センサによる測定結果、ガスクロマトグラフィーの測定結果、及び熱力学的計算から得られた理論値を示すグラフである。触媒として、1重量%のNi/Alを用い、その触媒の下流側に酸素センサ及びガスクロマトグラフィーの吸引部を配置した。反応条件は、CH:10%、HO:12%、Nバランス、HO/CH=1.2、SV=5000lkg−1−1とした。図6から明らかな通り、概ね550℃〜800℃の範囲において、酸素センサによる測定結果は、ガスクロマトグラフィーの測定結果及び理論値に良く追従していることが確認された。
【0047】
図7は、本実施形態の計測装置30で求められた、各測定点(測定電極23a、23b、23c、23d、23eの配置位置)におけるメタン転化率の導出結果を示すグラフである。図7の横軸に示す(A)〜(E)の測定点は、それぞれ測定電極23a〜23eに対応する。使用した触媒、反応条件は図6の場合と同じである。本実施形態の計測装置30では、このような解析結果が得られることから、例えば650℃の条件では、触媒層11の上流側(測定電極23bの配置位置付近まで)で、ほとんど反応が完了しているという事実を的確に知見することができる。この結果、例えば実使用時における触媒層の厚さや温度条件を把握することができるようになる。
【0048】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変形実施形態を取ることができる。例えば、上記実施形態では安定化ジルコニアチューブ21の内周側に参照電極22を配置すると共に基準ガスを送り込む例を示した。これに代えて、チューブ21の外周側に参照電極22を配置する一方で、内周側に測定電極23a、23b、23c、23d、23eを配置し、該内周側に反応ガスを通過させるようにしても良い。また、測定電極の配置数や配置ピッチは、解析目的に応じて適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 反応解析装置
10 反応管
11 触媒層
20 酸素センサ
21 安定化ジルコニアチューブ
22 参照電極
23(23a〜23e) 測定電極
30 計測装置
31 マルチプレクサ
32 電圧計
33 酸素分圧算出部
34 転化率導出部
35 記憶部
36 温度測定部
37 全体制御部
40 基準ガス供給装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を含む第1流体を流通させたときに前記第1流体とは異なる第2流体に変化させる反応経路を準備し、
前記第1流体の流通方向に沿って、酸素分圧を測定可能なセンサエレメントを、前記反応経路内に所定間隔を置いて複数個配置し、
前記第1流体を前記反応経路に流通させつつ、前記複数個のセンサエレメントの各々から酸素分圧値を取得することを特徴とする酸素を含む流体の反応解析方法。
【請求項2】
前記反応経路が、管路中に配置された触媒層であることを特徴とする請求項1に記載の反応解析方法。
【請求項3】
前記センサエレメントは、等間隔を置いて前記反応経路内に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の反応解析方法。
【請求項4】
前記第1流体が、メタンガスと水蒸気との混合ガスであり、
前記第2流体が、前記混合ガスが前記触媒層で改質された改質ガスであることを特徴とする請求項2又は3に記載の反応解析方法。
【請求項5】
酸素を含む第1流体を流通させたときに前記第1流体とは異なる第2流体に変化させる反応領域を含む反応管と、
酸素分圧を測定可能なセンサエレメントを複数個有し、前記反応管の反応領域内に配置される酸素センサと、
前記酸素センサの出力を取得する計測手段と、を備え、
前記酸素センサの複数個の前記センサエレメントは、所定間隔を置いて一の方向に配列され、前記一の方向が前記第1流体の流通方向に沿うように、前記酸素センサが反応領域内に配置されていることを特徴とする酸素を含む流体の反応解析装置。
【請求項6】
前記酸素センサがジルコニア式酸素センサであって、前記センサエレメントとしての白金からなる複数個の測定電極と、白金からなる1つの参照電極と、前記複数個の測定電極を外周面で保持すると共に前記1つの参照電極を内周面で保持する安定化ジルコニアチューブと、を含み、
前記計測手段は、前記各測定電極と前記参照電極との間の起電力を測定することを特徴とする請求項5に記載の反応解析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−47684(P2011−47684A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194273(P2009−194273)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】