説明

酸素化された脱ロウ触媒を使用して高VIを有する基油を調製する方法

水素化処理工程、水素化脱ロウ工程、および場合により水素化精製工程を含んでなる高いVIの潤滑基油を調製する方法。水素化処理した原料油は、酸素化物処理によって選択的に活性化されている脱ロウ触媒を使用して水素化脱ロウされる。次いで、水素化脱ロウされた生成物を水素化精製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料を含むワックスから、高い粘度指数(VI)を有する潤滑基油を調製する方法に関する。より詳しくは、原料油を含むワックスが、緩やかな条件下で水素化処理され、酸素化物による処理によって選択的に活性化されている脱ロウ触媒を使用して、触媒的に水素化脱ロウされ、かつ水素化精製される。
【背景技術】
【0002】
歴史的に、自動車のエンジンオイルなどの用途に使用するための潤滑油製品は、使用する基油の特定の特性を改善する添加剤を使用して、完成した製品を調製していた。環境への懸念が増大してきたのに伴い、基油自体の性能要件が増大してきた。グループII基油に対する米国石油協会(American Petroleum Institute)(API)の要件には、少なくとも90%の飽和物含有量、0.03重量%以下の硫黄含有量、および80と120の間の粘度指数(VI)が含まれる。グループIII基油に対する要件は、VIが少なくとも120であることを除き、グループII基油の要件である。
【0003】
水素化分解または溶剤抽出などの基油を調製する従来技術は、これらのより高品質の基油に到達するためには、高い圧力および温度、または高い溶剤:油の比、および高い抽出温度などの過酷な運転条件を必要とする。いずれの代替法も、費用のかかる運転条件および低い収率を伴う。
【0004】
水素化分解が、予備的な工程として、水素化処理と併用されてきた。しかし、この組合せもまた、一般に水素化分解プロセスを伴う留出物への転化の故に、潤滑油の収率が低下する結果となる。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,294,077号明細書
【特許文献2】米国特許第5,246,566号明細書
【特許文献3】米国特許第5,282,958号明細書
【特許文献4】米国特許第4,975,177号明細書
【特許文献5】米国特許第4,397,827号明細書
【特許文献6】米国特許第4,585,747号明細書
【特許文献7】米国特許第5,075,269号明細書
【特許文献8】米国特許第4,440,871号明細書
【特許文献9】米国特許第6,310,265号明細書
【特許文献10】国際公開第0242207号パンフレット
【特許文献11】国際公開第0078677号パンフレット
【特許文献12】米国特許第4,900,707号明細書
【特許文献13】米国特許第6,383,366号明細書
【特許文献14】米国特許第5,098,684号明細書
【特許文献15】米国特許第5,198,203号明細書
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・カタリシス(J.Catalysis)、1984年、86、24〜31
【非特許文献2】ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J.Amer.Chem.Soc.)1992年、114、10834
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
低沸点留出物への転化率を最小にすることによって高収率でグループIII基油を調製し、一方、同時に、優れた低温特性、高い粘度指数(VI)、および高い安定性を有する製品を製造する経済的な方法を有することが望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも約125の粘度指数(VI)を有する潤滑基油を調製する方法に関し、この方法は、
(a)有効な水素化処理条件下で水素化処理触媒により、原料油を基準にして少なくとも約50重量%のワックス含有量を有する潤滑原料油を水素化処理する工程と、
(b)水素化処理した原料油をストリッピングして、液状生成物からガス生成物を分離する工程と、
(c)脱ロウ触媒を、120〜400℃の温度かつ791〜20786kPaの水素圧力で、酸素として測定して、少なくとも約100wppmの少なくとも1種の酸素化物を含むストリームと接触させて、選択活性化された脱ロウ触媒を製造する工程と、
(d)工程(c)からの選択活性化された脱ロウ触媒を、工程(b)からの液状生成物と接触させて、触媒的に有効な脱ロウ条件下で液状生成物を脱ロウする工程と、
を含んでなる。
【0008】
別の実施形態は、少なくとも約125のVIを有する潤滑基油を調製する方法に関し、この方法は、
(a)有効な水素化処理条件下で水素化処理触媒により、原料油を基準にして少なくとも約50重量%のワックス含有量を有する潤滑原料油を水素化処理する工程と、
(b)水素化処理した原料油をストリッピングして、液状生成物からガス生成物を分離する工程と、
(c)少なくとも1つの10または12環チャネル(ring channel)を含む少なくとも1種のモレキュラーシーブを含む脱ロウ触媒を、120〜400℃の温度かつ101〜20786kPaの水素圧力で、酸素として測定して、少なくとも約100wppmの少なくとも1種のアルコール、カルボン酸、エステル、アルデヒド、ケトン、またはエーテルを含むストリームと接触させ、選択活性化された脱ロウ触媒を製造する工程と、
(d)工程(c)からの選択活性化された脱ロウ触媒を、工程(b)からの液状生成物と接触させて、触媒的に有効な脱ロウ条件下で液状生成物を脱ロウする工程と、
を含んでなる。
【0009】
さらに別の実施形態は、少なくとも約125のVIを有する潤滑基油を調製する方法に関し、この方法は、
(a)有効な水素化処理条件下で水素化処理触媒により、原料油を基準にして少なくとも約50重量%のワックス含有量を有する潤滑原料油を水素化処理する工程と、
(b)水素化処理した原料油をストリッピングして、液状生成物からガス生成物を分離する工程と、
(c)少なくとも1つの10または12環チャネルを含む少なくとも1種のモレキュラーシーブを含む脱ロウ触媒を、120〜400℃の温度かつ101〜20786kPaの水素圧力で、酸素として測定して、少なくとも約100wppmの少なくとも1種のアルコール、カルボン酸、エステル、アルデヒド、ケトン、またはエーテルを含むストリームと接触させて、選択活性化された脱ロウ触媒を製造する工程と、
(d)工程(c)からの選択活性化された脱ロウ触媒を、工程(b)からの液状生成物と接触させて、触媒的に有効な脱ロウ条件下で液状生成物を脱ロウする工程と、
(e)工程(d)からの脱ロウされた生成物を、有効な水素化精製条件下で水素化精製触媒により水素化精製する工程と、
を含んでなる。
【0010】
さらに別の実施形態は、少なくとも約125のVIを有する潤滑基油を調製する方法に関し、この方法は、
(a)有効な水素化処理条件下で水素化処理触媒により、原料油を基準にして少なくとも約50重量%のワックス含有量を有する潤滑原料油を水素化処理する工程と、
(b)水素化処理した原料油をストリッピングして、液状生成物からガス生成物を分離する工程と、
(c)ZSM−48、および、PtまたはPdのうちの少なくとも1種を含む金属水素化成分を含む脱ロウ触媒を、120〜400℃の温度かつ101〜20786kPaの水素圧力で、酸素として測定して、少なくとも約100wppmの少なくとも1種のアルコール、カルボン酸、エステル、アルデヒド、ケトン、またはエーテルを含むストリームと接触させ、選択活性化された脱ロウ触媒を製造する工程と、
(d)工程(c)からの選択活性化された脱ロウ触媒を、工程(b)からの液状生成物と接触させて、触媒的に有効な脱ロウ条件下で液状生成物を脱ロウする工程と、
(e)工程(d)からの脱ロウされた生成物を、有効な水素化精製条件下でM41S族からのメソ細孔性水素化精製触媒により水素化精製する工程と、
を含んでなる。
【0011】
さらなる実施形態は、少なくとも約125のVIを有する潤滑基油を調製する方法に関し、この方法は、
(a)有効な水素化処理条件下で水素化処理触媒により、原料油を基準にして少なくとも約50重量%のワックス含有量を有する潤滑原料油を水素化処理する工程と、
(b)水素化処理した原料油をストリッピングして、液状生成物からガス生成物を分離する工程と、
(c)少なくとも1種の酸素化物を工程(b)からの液状生成物に加えて、少なくとも約100wppmの酸素を含む第2の液状生成物を提供する工程と、
(d)工程(c)からの第2の液状生成物を、脱ロウ触媒を選択活性化するのに有効な時間、120〜400℃の温度かつ791〜20786kPaの水素圧力で、脱ロウ触媒と接触させる工程と、
(e)工程(d)からの選択活性化された脱ロウ触媒を、触媒的に有効な脱ロウ条件下で、工程(c)からの第2の液状生成物または工程(b)からの液状生成物のうちの少なくとも1種と接触させる工程と、
を含んでなる。
【0012】
別の実施形態は、少なくとも約125のVIを有する潤滑基油を調製する方法に関し、この方法は、
(a)有効な水素化処理条件下で水素化処理触媒により、原料油を基準にして少なくとも約50重量%のワックス含有量を有する潤滑原料油を水素化処理する工程と、
(b)水素化処理した原料油をストリッピングして、液状生成物からガス生成物を分離する工程と、
(c)少なくとも1種のアルコール、カルボン酸、エステル、アルデヒド、ケトン、またはエーテルを、工程(b)からの液状生成物に加えて、少なくとも約100wppmの酸素を含む第2の液状生成物を提供する工程と、
(d)工程(c)からの第2の液状生成物を、脱ロウ触媒を選択活性化するのに有効な時間、120〜400℃の温度かつ791〜20786kPaの水素圧力で、少なくとも1つの10または12環チャネルを含む少なくとも1種のモレキュラーシーブを含む脱ロウ触媒と接触させる工程と、
(e)工程(d)からの選択活性化された脱ロウ触媒を、触媒的に有効な脱ロウ条件下で、工程(c)からの第2の液状生成物または工程(b)からの液状生成物のうちの少なくとも1種と接触させる工程と、
を含んでなる。
【0013】
さらに別の実施形態は、少なくとも約125のVIを有する潤滑基油を調製する方法に関し、この方法は、
(a)有効な水素化処理条件下で水素化処理触媒により、原料油を基準にして少なくとも約50重量%のワックス含有量を有する潤滑原料油を水素化処理する工程と、
(b)水素化処理した原料油をストリッピングして、液状生成物からガス生成物を分離する工程と、
(c)少なくとも1種のアルコール、カルボン酸、エステル、アルデヒド、ケトン、またはエーテルを工程(b)からの液状生成物に加えて、少なくとも約100wppmの酸素を含む第2の液状生成物を提供する工程と、
(d)工程(c)からの第2の液状生成物を、脱ロウ触媒を選択活性化するのに有効な時間、120〜400℃の温度かつ791〜20786kPaの水素圧力で、少なくとも1つの10または12環チャネルを含む少なくとも1種のモレキュラーシーブを含む脱ロウ触媒と接触させる工程と、
(e)工程(d)からの選択活性化された脱ロウ触媒を、触媒的に有効な脱ロウ条件下で、工程(c)からの第2の液状生成物または工程(b)からの液状生成物のうちの少なくとも1種と接触させる工程と、
(f)工程(e)からの脱ロウされた生成物を、有効な水素化精製条件下で水素化精製触媒により水素化精製する工程と、
を含んでなる。
【0014】
なおさらに別の実施形態は、少なくとも約125のVIを有する潤滑基油を調製する方法に関し、この方法は、
(a)有効な水素化処理条件下で水素化処理触媒により、原料油を基準にして、少なくとも約50重量%のワックス含有量を有する潤滑原料油を水素化処理する工程と、
(b)水素化処理した原料油をストリッピングして、液状生成物からガス生成物を分離する工程と、
(c)少なくとも1種のアルコール、カルボン酸、エステル、アルデヒド、ケトン、またはエーテルを、工程(b)からの液状生成物に加えて、少なくとも約100wppmの酸素を含む第2の液状生成物を提供する工程と、
(d)工程(c)からの第2の液状生成物を、脱ロウ触媒を選択活性化するのに有効な時間、120〜400℃の温度かつ791〜20786kPaの水素圧力で、ZSM−48、および、PtまたはPdのうちの少なくとも1種を含む金属水素化成分を含む脱ロウ触媒と接触させる工程と、
(e)工程(d)からの選択活性化された脱ロウ触媒を、触媒的に有効な脱ロウ条件下で、工程(c)からの第2の液状生成物または工程(b)からの液状生成物のうちの少なくとも1種と接触させる工程と、
(f)工程(e)からの脱ロウされた生成物を、有効な水素化精製条件下でM41S族からの水素化精製触媒により、水素化精製する工程と、
を含んでなる。
【0015】
本発明による基油は、グループIII基油の要件を満たし、高収率で調製することができ、一方、同時に高い粘度指数(VI)および低い流動点などの優れた特性を有する。脱ロウ触媒の選択的な酸素化物活性化により、収率および粘度指数(VI)がさらに改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[原料油]
本発明の方法で使用する原料油は、潤滑油範囲で沸騰する、ASTM D86またはASTM D2887で測定して、典型的には650°F(343℃)より高い10%留出点を有するワックス含有原料であり、鉱物または合成供給源から誘導される。原料油のワックス含有量は、原料油を基準にして、少なくとも約50重量%であり、100重量%までのワックスに及ぶことができる。原料のワックス含有量は、核磁気共鳴スペクトル法(ASTM D5292)によって、相間n−d−M法(ASTM D3238)によって、または溶剤法(ASTM D3235)によって、定めることができる。ワックス質原料は、ラフィネート、部分的に溶剤脱ロウした油、脱アスファルト油、留出物、減圧ガスオイル、コーカー・ガスオイル、スラックワックス、およびフーツ油等などの溶剤精製法から誘導される油、並びに、フィッシャー−トロプシュワックスなどの、相当数の供給源から誘導することができる。好適な原料は、スラックワックスおよびフィッシャー−トロプシュワックスである。スラックワックスは、一般に溶剤またはプロパン脱ロウ法によって炭化水素原料から誘導される。スラックワックスは、多少の残油を含み、一般に脱油される。フーツ油は、脱油したスラックワックスから誘導される。フィッシャー−トロプシュワックスは、フィッシャー−トロプシュ合成法によって調製される。
【0017】
原料油は、高い含有量の窒素および硫黄汚染物質をを有している可能性がある。原料を基準にして、0.2重量%までの窒素および3.0重量%までの硫黄を含む原料を、本発明の方法で処理することができる。高いワックス含有量を有する原料は、一般に200まで、またはそれ以上の高粘度指数を有する。硫黄および窒素含有量は、それぞれ標準のASTM法D5453およびD4629により測定することができる。
【0018】
溶剤抽出法から誘導される原料の場合、常圧蒸留からの高沸点石油留分は、減圧蒸留装置に送られ、この装置からの蒸留留分が溶剤抽出される。減圧蒸留からの残留物は、脱アスファルトすることができる。溶剤抽出法は、よりパラフィン性の成分を抽残相に残しながら、芳香族化合物成分を抽出相に選択的に溶解させる。ナフテンは、抽出相と抽残相の間に分配される。溶剤抽出法の代表的な溶剤には、フェノール、フルフラール、およびN−メチルピロリドンが含まれる。溶剤対油の比、抽出温度、および抽出すべき留出物を溶剤と接触させる方法を制御することによって、抽出相と抽残相の間の分離度を制御することができる。
【0019】
[水素化処理]
水素化処理用の触媒は、第6族金属(第1〜18族を有するIUPAC周期表フォーマットをベースにして)、第8〜10族金属、およびこれらの混合物を含む触媒などの、水素化処理するのに有効なものである。好適な金属には、ニッケル、タングステン、モリブデン、コバルト、およびこれらの混合物が含まれる。これらの金属または金属の混合物は、一般に耐火性金属酸化物担体上に、酸化物または硫化物として存在する。金属の混合物はまた、バルク金属触媒として存在することができ、この場合、金属の量は、触媒を基準にして30重量%以上である。適切な金属酸化物担体には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、またはチタニア、好ましくはアルミナなどの酸化物が含まれる。好適なアルミナは、ガンマまたはエータなどの多孔性のアルミナである。金属の量は、個別または混合物中のどちらも、触媒を基準にして約0.5〜35重量%の範囲にある。第9〜10族金属と、第6族金属、第9〜10族金属との好適な混合物の場合、触媒を基準にして0.5〜5重量%の量で存在し、第6族金属は、5〜30重量%の量で存在する。金属の量は、原子吸光スペクトル分析法、誘導結合高周波プラズマ−原子発光分析法、または、個々の金属についてASTMによって指定された他の方法によって、測定することができる。
【0020】
金属酸化物担体の酸性度は、助触媒および/またはドーパントを加えることによって、あるいは、金属酸化物担体の性状を制御することによって、例えば、シリカ−アルミナ担体に組み込まれるシリカの量を制御することによって、制御することができる。助触媒および/またはドーパントの例には、ハロゲン、特にフッ素、リン、ホウ素、イットリア、希土類酸化物、およびマグネシアが含まれる。ハロゲンなどの助触媒は、一般に金属酸化物担体の酸性度を増大させ、一方、イットリアまたはマグネシアなどの緩やかに塩基性のドーパントは、かかる担体の酸性度を低下させる傾向がある。
【0021】
水素化処理条件には、150〜400℃、好ましくは200〜350℃の温度、1480〜20786kPa(200〜3000psig)、好ましくは2859〜13891kPa(400〜2000psig)の水素分圧、0.1〜10LHSV、好ましくは0.1〜5LHSVの空間速度、および、89〜1780m/m(500〜10000scf/B)、好ましくは178〜890m/mの水素対原料の比が含まれる。
【0022】
水素化処理は、それに続く脱ロウ工程における脱ロウ触媒に許容不可能な影響を及ぼさないようなレベルまで、窒素および硫黄含有汚染物質の量を低減する。また、この緩やかな水素化処理工程を通過するであろうある種の多核芳香族化学種が存在する可能性がある。これらの汚染物質は、存在する場合、これに続く水素化精製工程で除去されることになる。
【0023】
水素化処理の間、原料油の5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満が、650°F(343℃)マイナスの生成物に転化されて、原料油のVI増加が、原料油のVIより4未満、好ましくは3未満、より好ましくは2未満大きい、水素化処理された原料油が製造される。このワックス含有量の高い原料では、水素化処理工程の間のVI増加が最小になる。
【0024】
水素化処理した原料油は、脱ロウ工程に直接通すことができ、または、脱ロウの前に、好ましくはストリッピングして、硫化水素およびアンモニアなどのガス状汚染物質を除去することができる。ストリッピングは、フラッシュドラムまたは分留塔などの従来の手段によることができる。
【0025】
[脱ロウ触媒および酸素化物処理]
ワックス質原料の接触脱ロウのための本方法は、触媒を酸素化物と接触させることによって活性化されている触媒を利用する。好適な脱ロウ触媒は、脱ロウの触媒モードが、ワックス分子を潤滑油範囲に沸点を有する異性化油に異性化することによるものである。
【0026】
脱ロウ触媒は、結晶質でも非晶質でもよい。結晶性材料は、少なくとも1つの10または12環チャネル(ring channel)を含むモレキュラーシーブであり、アルミノケイ酸塩(ゼオライト)を基礎にすることができ、または、アルミノリン酸塩を基礎にすることができる。酸素化物処理に使用するゼオライトは、少なくとも1つの10または12環チャネルを含むことができる。かかるゼオライトの例には、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、EU−1、NU−87、ITQ−13、およびMCM−71が含まれる。少なくとも1つの10環チャネルを含むアルミノリン酸塩の例には、SAPO−11およびSAPO−41が含まれる。12環チャネルを含むモレキュラーシーブの例には、ゼオライト・ベータ、ZSM−12、MCM−68、SAPO−5、SAPO−31、MAPO−36、ZSM−18、モルデナイト、ホージャサイト、およびオフレタイトが含まれる。ZSM−5などの脱ロウ触媒は、(特許文献1)に言及されているように、酸性度、金属分散、および触媒粒子径などの触媒特性を調節することによって、脱ロウ特性を変えることができることに留意する必要がある。このモレキュラーシーブは、(特許文献2〜8)に記載されている。MCM−68は、(特許文献9)に記載されている。MCM−71およびITQ−13は、PCT出願の(特許文献10)および(特許文献11)に記載されている。好適な触媒には、ZSM−48、ZSM−22、およびZSM−23が含まれる。特に好ましいのはZSM−48である。本明細書で使用されるとき、ZSM−48には、EU−2、EU−11、およびZBM−30が含まれ、それらは、構造的にZSM−48に等価である。モレキュラーシーブは、水素形であることが好ましい。還元は、脱ロウ工程自体のその場で起こすことができ、または、実験施設内の別の容器中で起こすことができる。
【0027】
非晶質の脱ロウ触媒には、アルミナ、フッ化アルミナ、シリカ−アルミナ、フッ化シリカ−アルミナ、および第3族金属をドープしたシリカ−アルミナが含まれる。かかる触媒は、例えば、(特許文献12)および(特許文献13)に記載されている。
【0028】
この脱ロウ触媒は、二官能性であり、すなわちそれらには、少なくとも1種の第6族金属、少なくとも1種の第8〜10族金属、またはこれらの混合物である金属水素化成分が充填されている。好適な金属は、第9〜10族金属である。特に好ましいのは、Pt、Pd、またはこれらの混合物などの第9〜10族(第1〜18族を有するIUPAC周期表フォーマットをベースにして)貴金属である。これらの金属は、触媒を基準にして0.1〜30重量%の割合で充填される。触媒調製および金属の充填方法は、例えば(特許文献1)に記載されており、例えば、分解可能な金属塩を使用したイオン交換および含浸が含まれる。金属分散技術および触媒粒子径制御は、(特許文献3)に記載されている。小さい粒子径および十分に分散した金属を有する触媒が好ましい。
【0029】
モレキュラーシーブは、典型的には高温度に抵抗力があるバインダ材料とともに合成され、脱ロウ条件下で使用して、完成した脱ロウ触媒を形成することができ、または、バインダなしでもよい(自己結合)。バインダ材料は、通常シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカとチタニア、マグネシア、トリア、ジルコニアなどの他の金属酸化物との二成分の組合せ、並びに、シリカ−アルミナ−トリアおよびシリカ−アルミナ・マグネシアなどのこれら酸化物の第三の組合せなどの、無機質酸化物である。完成した脱ロウ触媒中のモレキュラーシーブの量は、触媒を基準にして10〜100重量%、好ましくは35〜100重量%である。かかる触媒は、噴霧乾燥、押出成形等などの方法によって形成される。脱ロウ触媒は、硫化形または非硫化形で使用することができ、好ましくは硫化形で使用される。
【0030】
脱ロウ条件には、250〜400℃、好ましくは275〜350℃の温度、791〜20786kPa(100〜3000psig)、好ましくは1480〜17339kPa(200〜2500psig)の圧力、0.1〜10hr−1、好ましくは0.1〜5hr−1の液空間速度、および、45〜1780m/m(250〜10000scf/B)、好ましくは89〜890m/m(500〜5000scf/B)の水素処理ガス速度が含まれる。
【0031】
脱ロウ触媒を選択的に活性化するために使用する酸素化物は、水素化脱ロウ条件下で水を生成する有機質酸素含有化合物(有機酸素化物)である。酸素化物には、カルボン酸、ポリオールを含むアルコール、エステル、アルデヒド、エーテル、ケトン、およびこれらの混合物、または、水である無機質酸素化物が含まれる。好適な酸素化物は、アルコール、エステル、エーテル、およびカルボン酸、特にアルコールである。この有機部分は、少なくとも1個の炭素原子を含み、潤滑油沸点範囲(ASTM D86またはASTM D2887で測定して343℃+)にある酸化された炭化水素原料中に含まれる酸素まで及んでもよい。
【0032】
触媒を選択的に活性化するために使用する原料は、酸素として測定して、少なくとも約100wppmの少なくとも1種の酸素化物、好ましくは、酸素として測定して、少なくとも約400wppmの少なくとも1種の酸素化物を含む。10000wppmを超える量でも脱ロウまたは生成物に悪影響を及ぼすことはないので、必要に応じて、かかる量の酸素化物を使用することができる。酸素化物の合計酸素含有量は、高分解能プロトン核磁気共鳴と併用できる中性子放射化分析、酸素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)、またはフーリエ変換赤外分光などの計器による方法によって測定することができる。低い濃度の酸素化物の場合、中性子放射化分析が好ましい。原料の酸素化物含有量は(酸素化物として)、プロトン核磁気共鳴によって、またはGC−MSによって定めることができる。
【0033】
脱ロウ触媒の選択性を測定するために様々な方法が提案されてきた。(非特許文献1)に記載されている一つの方法では、原料油は、異なる生成物流動点を達成するために様々な反応過酷度で、その選択性が定められるゼオライト上で触媒的に脱ロウされる。次いで、所与の程度の脱ロウを達成するのに必要になる転化率を、ZSM−5などの基準の触媒と比較して、相対的な選択性を定めることができる。(特許文献3)では、規定された微結晶サイズおよび細孔直径を有する所与のレキュラーシーブの選択性が、テスト条件の所与の組の下でn−ヘキサデカンの異性化を測定することによって、測定される。
【0034】
本発明においては、所与の触媒の選択性は、原料のワックス成分から目標の流動点で生成される潤滑油沸点範囲の異性化油の部分的な量として定義される。所与の脱ロウ触媒に対する酸素化物処理の結果としての選択性の向上は、流動点目標で、ワックス成分のうちの少なくとも4相対%超、好ましくは少なくとも6相対%、より好ましくは少なくとも10相対%を、潤滑油沸点範囲の異性化油に異性化することである。
【0035】
任意の所与の脱ロウ触媒についての選択性の向上は、次の表に与えられている仮定の例で示したように算出することができ、この表では、ワックス質原料を脱ロウする場合の対応する流動点における異性化油の収率向上を示す。触媒Aおよび触媒B(これは、酸素化物で処理した触媒Aである)。この例の収率は、必要に応じて、対応する流動点を達成するための温度および空間速度の脱ロウ条件を調節することによって、得られる。
【0036】
【表1】

【0037】
任意の所与の触媒について、原料のワックス含有量が増加するのに伴い、異性油収率は向上するはずである。したがって、より高い、例えば、原料を基準にして40重量%を超えるワックス含有量を有する原料が好ましい。
【0038】
[水素化精製]
脱ロウ工程からの生成物のうちの少なくとも一部は、離脱なしで直接に水素化精製工程に通される。製品品質を所望の規格に調節するためには、脱ロウから得られた生成物を水素化精製することが好ましい。水素化精製は、潤滑油範囲のあらゆるオレフィンおよび残留芳香族化合物を飽和させること、並びに、あらゆる残留ヘテロ原子および色相体を除去することを目的とする緩やかな水素化処理形態である。脱ロウ後水素化精製は、通常脱ロウ工程とカスケードで行われる。一般に、水素化精製は、約150℃〜350℃、好ましくは180℃〜250℃の温度で行われることになる。全圧力は、一般に2859〜20786kPa(約400〜3000psig)である。液空間速度は、一般に0.1〜5LHSV(hr−1)、好ましくは0.5〜3hr−1であり、44.5〜1780m/m(250〜10,000scf/B)の水素処理ガス速度である。
【0039】
水素化精製触媒は、第6族金属(第1〜18族を有するIUPAC周期表フォーマットをベースにして)、第8〜10族金属、およびこれらの混合物を含むものである。好適な金属には、強い水素化機能を有する少なくとも1種の貴金属、特に白金、パラジウム、およびこれらの混合物が含まれる。金属の混合物もまた、バルク金属触媒として存在することができ、この場合、金属の量は、触媒を基準にして30重量%以上である。適切な金属酸化物担体には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、またはチタニアなどの酸性の低い酸化物、好ましくはアルミナが含まれる。芳香族化合物の飽和用の好適な水素化精製触媒は、多孔性の担体上に、相対的に強い水素化機能を有する少なくとも1種の金属を含んでなるものである。代表的な担体材料には、アルミナ、シリカ、およびシリカ−アルミナなどの非晶質または結晶質の酸化物材料が含まれる。触媒の金属含有量は、非貴金属の場合、しばしば約20重量%ほどの高さである。貴金属は、通常約l重量%以下の量で存在する。好適な水素化精製触媒は、触媒のM41S類または族に属するメソ細孔性材料である。触媒のM41S族は、高いシリカ含有量を有するメソ細孔性材料であり、その調製法は、(非特許文献2)に記載されている。MCM−41、MCM−48、およびMCM−50が例に含まれる。メソ細孔性材料は、15〜100オングストロームの細孔径を有する触媒を指す。このクラスの好適な構成要素は、MCM−41であり、その調製法は、(特許文献14)に記載されている。MCM−41は、均一の大きさの細孔の六角形の配列を有する無機質多孔性の非層状相である。MCM−41の物理的構造は、ストローの束のようであり、この場合、ストローの開口部(細孔のセル直径)は、15〜100オングストロームの範囲にある。MCM−48は、立方対称性を有し、例えば、(特許文献15)に記載されており、一方、MCM−50はラメラ構造を有する。MCM−41は、メソ細孔範囲が異なるサイズの細孔開口部で製造することができる。メソ細孔性材料は、金属水素化成分を保持することができ、それは、第8族、第9族、または第10族金属のうちの少なくとも1種である。好ましいのは、貴金属、特に第10族貴金属、最も好ましくはPt、Pd、またはこれらの混合物である。
【0040】
一般に、水素化精製は、約150℃〜350℃、好ましくは180℃〜250℃の温度で行われることになる。全圧力は、一般に2859〜20786kPa(約400〜3000psig)である。液空間速度は、一般に0.1〜5LHSV(hr−1)、好ましくは0.5〜3hr−1であり、44.5〜1780m/m(250〜10,000scf/B)の水素処理ガス速度である。
【0041】
[触媒調製法およびプロセスの説明]
石油から誘導される通常の炭化水素原料は、脱ロウ触媒に有害な硫黄および窒素量を含むので、かかる原料油を、脱ロウの前に水素化処理することが好ましい。したがって、許容不可能なレベルの硫黄および窒素汚染物質を含む、本接触脱ロウプロセスへの原料油は、水素処理し、その後ストリッピングして、硫化水素およびアンモニアなどのガス状の硫黄および窒素含有汚染物質を除去することが好ましい。水素化処理した原料油は、次いで脱ロウ工程に送られる。
【0042】
接触脱ロウ工程で使用する触媒は、通常触媒製造業者から購入する。ユーザーは、触媒に金属を充填するか、または、金属充填した形態で触媒を購入するかの選択の自由を有する。先に注記したように、金属充填は、脱ロウ触媒をアミン塩、例えば白金テトラミン錯体などの分解可能な金属塩に含浸し、続けて加熱することによって、達成することができる。硫化は、金属充填触媒を水素/硫化水素もしくは他の硫化剤などの硫化混合物で処理することよって、触媒を水素および硫化剤を加えた原料油と接触させることによって、または、有機硫黄化合物を含む原料油を使用することによって、達成することができる。
【0043】
脱ロウ触媒を選択的に活性化する(選択活性化する)ために、酸素化物または酸素化物の混合物を、脱ロウすべき炭化水素原料に直接に加えることができる。あるいは、脱ロウ触媒を、別途に選択的に活性化し、この活性化された触媒を脱ロウプロセスに使用することができる。前者の方法では、酸素として測定して、少なくとも約100wppmの少なくとも1種の酸素化物を含む炭化水素原料を、脱ロウ条件下で脱ロウ触媒と接触させる。その触媒を選択活性化するのに有効な時間は、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも24時間である。触媒の選択活性化は、さらに、脱ロウからの異性化油の収率を監視することをあとに続けてもよい。あるいは、脱ロウ触媒を、脱ロウプロセスで使用する前に選択的に活性化することができる。この場合、脱ロウ触媒は、酸素として測定して、少なくとも約100wppmの少なくとも1種の酸素化物を含む原料の存在下に、120〜400℃の温度かつ101〜20786kPa(0〜3000psig)の水素圧力で加熱される。触媒を選択活性化するのに有効な時間は、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも24時間である。触媒の選択活性化は、また、脱ロウプロセスの異性化の収率の増加について触媒サンプルをテストすることによって、監視することができる。この原料は、脱ロウすべき炭化水素原料と同じかもしくは異なってもよい。したがって、原料は、キャリヤ原料かまたは脱ロウすべき炭化水素原料のいずれでもよい。原料がキャリヤ原料である場合、このキャリヤが、本接触脱ロウプロセスから得られる生成物などの炭化水素であることが好ましい。先に注記したように、脱ロウ触媒は、硫化または非硫化の形で使用してもよく、還元されていてもよい。
【0044】
触媒調製およびそれに続く脱ロウは、単一の反応器でまたは別々の反応器で達成することができる。好適な実施形態では、貴金属充填ZSM−48脱ロウ触媒を反応器に置き、水素および硫化剤を含むキャリヤ原料油を反応器に加える。キャリヤ原料油が、最終生成物、例えば100N油として予期される基油留分に類似していることが好ましい。この触媒は、還元される、硫化される、または還元かつ硫化される。還元および/または硫化された触媒は、その後少なくとも1種の酸素化物を含むキャリヤと接触させることによって、選択的に活性化することができる。このキャリヤは、脱ロウすべき原料油か、それとも触媒を硫化するのに使用するキャリヤなどの他のいくつかの炭化水素原料油とすることができる。
【0045】
一旦触媒が酸素化物によって選択的に活性化されると、脱ロウすべき原料油が反応器に加えられ、上記定義した条件下で脱ロウが起こる。触媒活性を維持する必要に応じて、さらに酸素化物処理を加えてもよい。
【0046】
接触脱ロウからの生成物は、その間になんらの離脱を起こさずに、別の反応器における水素化精製に送ることができる。脱ロウ装置から水素化精製装置までの直接型カスケードが好ましく、したがって、追加のストリッピング・工程に関与する費用が回避される。水素化精製は、水素および水素化精製触媒の存在下に行われる。水素化精製反応条件は、先に注記されている。水素化精製は、色相体を除去するのに、安定性を改良するのに、および、毒物上の特性を向上させるのに有用である。
【0047】
次いで、水素化精製した生成物は、分留されて、所望の潤滑油製品が分離される。この潤滑油製品の個々の留分は、グループIIおよびグループIII要件を満たす基油として魅力がある。これらのグループ分類は、米国石油協会(API)によって使用されるものである。APIグループII基油は、90重量%以上の飽和物含有量、0.03重量%以下の硫黄含有量、および80を超えしかし120未満のVIを有する。APIグループIII基油は、VIが120を超えることを除いて、グループII基油と同じ要件を有する。
【0048】
本方法で製造された基油は、他に例をみない特性の組合せを有する。この基油は、145〜155のVI、100℃で3.0〜4.3、好ましくは3.0〜3.6cStの粘度、および、−15〜−40℃の流動点を有する。非常に低い粘度および流動点における非常に高いVIの組合せは、この基油の顕著な品質を示す。
【0049】
さて図1を参照すると、スラックワックスなどのワックス質原料油は、管路10を経由して水素化処理装置14に供給される。水素は、管路12を経由して水素化処理装置14に加えられる。水素化処理装置14には、水素化処理触媒の床16が充填されている。水素化処理された原料油は、管路18を経由してストリッパー20に導かれ、管路22を経由して軽質ガスが除去される。次いで、液状生成物は、ストリッパー20から管路24を経由して水素化脱ロウ装置28に送られる。追加の水素が、管路26を経由して加えられる。水素化脱ロウ装置28は、水素化脱ロウ触媒の床30で充填され、その触媒は、酸素化物処理によって選択的に活性化されている。次いで、水素化脱ロウされた生成物は、管路32を経由して、水素化精製触媒の床36を充填した水素化精製装置34に送られる。次いで、水素化精製された生成物は、管路38を経由して減圧ストリッパー40に送られる。軽質生成物は、管路42を経由して除去され、残留している液状生成物は、管路44を経由して減圧蒸留装置(図示せず)に送られる。
【0050】
本発明は、限定するものとして意図しない次の実施例によってさらに例示される。
【実施例】
【0051】
[実施例1]
この実施例は、還元され、硫化され、かつ酸素化物処理された水素化脱ロウ触媒でクリーンな原料を処理することにより、優れた収率で高品質の脱ロウされた油を製造できることを例示する。原料は、340℃で水素化処理した600Nスラックワックス(SW)であり、その特性は表2に与えられている。粘度は、標準のASTM試験法(D445−94およびD2270−91)を使用して、0.5%の再現性を有するホイロン自動化粘度計(Houillon Automated Viscometer)を用いて測定した。流動点は、標準のASTM試験法(D97)によって定められる。硫黄および窒素含有量は、それぞれ標準のASTM法D5453およびD4629で測定することができる。収率および流動点の誤差限界は、それぞれ±1および±3である。
【0052】
【表2】

【0053】
表2の原料を、次の水素化処理条件下でアクゾ・ノーベル(Akzo Nobel)KF848触媒を用いて水素化処理した:340℃、0.7v/v/hのLHSV、1000psig(6996kPa)、1500scf/B H処理速度(267m/m)。この水素化処理された生成物の370℃+収率は、原料に関して94.1重量%であった。この水素化処理された生成物の特性は、表3に与えられている。
【0054】
【表3】

【0055】
水素化処理した生成物を、35重量%のガンマ・アルミナを結合し、0.6重量%のPtを充填したZSM−48触媒を含んでなる触媒を有する反応器中で水素化脱ロウした(HDW)。触媒を、この場合120℃で乾燥させ、水素中で還元し、320℃までの温度で窒素中400wppmの硫化水素を用いて破過するまで硫化した。次いで、この触媒に、中性子活性化法で測定して600wppm酸素化物を含むフィッシャー・トロプシュ・ワックスを使用して、その場酸素化物選択活性化手続きを施した。選択活性化および水素化脱ロウ条件は、以下のようであった:1v/v/h、1000psig(6996kPa)、2500scf/B H(445m/m)。水素化脱ロウの結果は、表4に与えられている。
【0056】
【表4】

【0057】
[実施例2]
この実施例は、還元され、硫化され、かつ酸素化物処理された水素化脱ロウ触媒でクリーンな原料を処理することにより、優れた収率で高品質の脱ロウされた油を製造できることを例示する。原料は、150Nスラックワックスであり、その特性は表5に与えられている。この原料は、345℃で水素化処理した。
【0058】
【表5】

【0059】
表5の原料を、次の水素化処理条件下でアクゾ・ノーベルKF848触媒を用いて水素化処理した:345℃、0.7v/v/h、1000psig(6996kPa)、1500scf/B H(267m/m)。水素化処理された生成物の370℃+収率は、原料に関して93.2重量%であった。水素化処理された生成物の特性は、表6に与えられている。
【0060】
【表6】

【0061】
水素化処理した生成物を、35重量%のガンマ・アルミナを結合し、0.6重量%のPtを充填したZSM−48触媒を含んでなる触媒を用いて水素化脱ロウした。触媒を、この場合120℃で乾燥させ、水素中で還元し、320℃までの温度で窒素中400wppmの硫化水素を用いて破過するまで硫化した。次いで、この触媒に、中性子活性化法で測定して600wppm酸素化物を含むフィッシャー・トロプシュ・ワックスを使用して、その場選択活性化処理を施した。選択活性化および水素化脱ロウ条件は、以下のようであった:1v/v/h、1000psig(6996kPa)、2500scf/B H(445m/m)。水素化脱ロウの結果は、表7に与えられている。
【0062】
【表7】

【0063】
335℃の反応器温度で製造された生成物は、粘度指数(VI)、粘度、および流動点のその組合せが、非常に高品質の製品を示すという点で他に例をみないものである。データによって示されるように、この基油は、低い流動点(−29℃)において、非常に高いVI(148)、非常に低い粘度(3.428cSt)を有する。非常に低い粘度および流動点でかかる高いVIを有する生成物は、この基油特性の通常でない組合せを表す。
【0064】
[実施例3]
この実施例は、還元され、かつ硫化された触媒の性能と、還元され、硫化され、600ppm酸素化物を含むフィッシャー・トロプシュ原料油ストリーム(流れ)によって、追加として酸素化物でその場選択活性化された触媒の性能とを比較する。原料は、150Nスラックワックス(SW)であり、次の水素化処理条件下でアクゾ・ノーベルKF848触媒を用いて水素化処理されていた:345℃、0.7v/v/h、1000psig(6996kPa)、1500scf/B H(267m/m)。水素化処理した生成物の370℃+収率は、原料に関して93.2重量%であった。水素化処理した生成物の特性は、表8に与えられている。
【0065】
【表8】

【0066】
表8は、還元、硫化、および酸素化物処理によって選択活性化された触媒が、還元および硫化だけによって処理された触媒に比べて、一定収率で優れた低温物性およびVIを有する(欄A対欄C)ことを示す。あるいは、一定の流動点で(欄A対欄B)、酸素化物によって選択活性化された触媒は、原料に関して15.8重量%の収率クレジットを与える。さらに、欄Bに示す生成物は、VI、粘度、および流動点のその組合せが、非常に高品質の製品を実証するという点で他に例をみない。データによって示されるように、この基油は、低い流動点(−27℃)において非常に高いVI(148)、非常に低い粘度(3.404cSt)を有する。
【0067】
ワックス異性化油の選択性は、次のように定義される:
【数1】

【0068】
選択性の向上は、次のように定義される:
【数2】

【0069】
実施例3の計算例:
【数3】

【0070】
[実施例4]
この実施例は、SW600N[16.5%のOIW(ワックス中の油分)]原料油について、還元され、硫化された触媒と、還元され、硫化され、酸素化物処理を加えた触媒との比較を示す。原料特性は、表9に挙げてある。
【0071】
【表9】

【0072】
この実施例は、還元され、かつ硫化された触媒の性能と、還元され、硫化され、600ppmの酸素化物を含むフィッシャー・トロプシュ原料油流れによって、追加として選択活性化された触媒の性能とを比較する。原料は、600Nスラックワックス(SW)であり、次の水素化処理条件下でアクゾ・ノーベルKF848触媒を用いて水素化処理されていた:345℃、0.7v/v/h、1000psig(6996kPa)、1500scf/B H(267m/m)。水素化処理された生成物の370℃+収率は、原料に関して93.2重量%であった。水素化処理された生成物の特性は、表10に与えられている。
【0073】
【表10】

【0074】
【表11】

【0075】
表11は、一定流動点において、還元、硫化、および酸素化によって選択活性化された触媒は、還元および硫化だけによって処理された触媒と比較して(欄A対欄B)、原料に関して16.4重量%の収率クレジットおよび9ポイントのVIクレジットを与えることを示す。
【0076】
[実施例5]
この実施例は、選択活性化された触媒に関して、高温度運転の選択性に及ぼす影響を示す。この実施例はさらに、選択活性化が高温度運転の後、可逆的であること、並びに、その場再選択活性化に対する可能性を示す。
【0077】
実験施設内で硫化した触媒(触媒−C)を充填し、実施例1に記載した手順に従って乾燥させた。
【0078】
図2に示すように:
*段階1;この触媒は、酸素化物を含まない水素化処理された150Nスラックワックスでラインアウト(lined−out)された。
*段階2;次いで、この触媒を、1000〜3000ppmの酸素(酸素化物)を含む、実施例1に記載した酸化され水素化処理された150Nスラックワックス原料油で処理した。
段階2の後、医薬用品位のホワイト油を使用して装置を洗浄し、微量の極性および芳香族化合物全てを除去した。次いで、触媒温度を、1000psig圧力でホワイト油下で350℃に上げ、350℃で36時間維持した。36時間保持した後、温度を、328℃の運転温度に下げ、ホワイト油下でさらにこの運転を行った。
*段階3;この高温度処理の後、段階1で使用したのと同じ酸素化物を含まない水素化処理した150Nスラックワックスを使用して10日間運転した。
段階3の終わりに、この触媒を、1000〜3000ppmの酸素化物を含む、実施例1に記載した酸化され水素化処理された150N−スラックワックス原料油に、328℃で3日間暴露させた。
段階4;この高温度処理の後、段階1で使用したのと同じ酸素化物を含まない水素化処理した150Nスラックワックスを使用して10日間運転した。
【0079】
【表12】

【0080】
表12および図2のデータは、
(i)高温度処理後の収率クレジットの部分的な損失(段階2対段階3)、
(ii)ZSM−48は、酸素化物含有原料油で処理後、その場で「再選択活性化」できること(段階3対段階4)、
を示す。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の方法の概略系統図である。
【図2】選択活性化された触媒の選択性に及ぼす温度の効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも125の粘度指数(VI)を有する潤滑基油を調製する方法であって、
(a)有効な水素化処理条件下で水素化処理触媒により、原料油を基準にして、少なくとも50重量%のワックス含有量を有する潤滑原料油を水素化処理する工程と、
(b)前記水素化処理した原料油をストリッピングして、液状生成物からガス生成物を分離する工程と、
(c)脱ロウ触媒を、120〜400℃の温度かつ791〜20786kPaの水素圧力で、酸素として測定して、少なくとも100wppmの少なくとも1種の酸素化物を含むストリームと接触させて、選択活性化された脱ロウ触媒を製造する工程と、
(d)工程(c)からの前記選択活性化された脱ロウ触媒を、工程(b)からの前記液状生成物と接触させ、触媒的に有効な脱ロウ条件下で、前記液状生成物を脱ロウする工程と、
を含んでなることを特徴とする潤滑基油の調製方法。
【請求項2】
少なくとも125の粘度指数(VI)を有する潤滑基油を調製する方法であって、
(a)有効な水素化処理条件下で水素化処理触媒により、原料油を基準にして、少なくとも50重量%のワックス含有量を有する潤滑原料油を水素化処理する工程と、
(b)前記水素化処理した原料油をストリッピングして、液状生成物からガス生成物を分離する工程と、
(c)少なくとも1種の酸素化物を工程(b)からの前記液状生成物に加えて、少なくとも100wppmの酸素を含む第2の液状生成物を提供する工程と、
(d)工程(c)からの前記第2の液状生成物を、脱ロウ触媒を選択活性化するのに有効な時間、120〜400℃の温度及び791〜20786kPaの水素圧力で、脱ロウ触媒と接触させる工程と、
(e)工程(d)からの前記選択活性化された脱ロウ触媒を、触媒的に有効な脱ロウ条件下で、工程(c)からの前記第2の液状生成物または工程(b)からの前記液状生成物のうちの少なくとも1種と接触させる工程と、
を含んでなることを特徴とする潤滑基油の調製方法。
【請求項3】
前記水素化処理触媒は、少なくとも1種の第6族、第9族、または第10族金属を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項4】
前記水素化処理条件は、150〜400℃の温度、1480〜20786kPaの圧力、0.1〜10hr−1の液空間速度、および89〜1780m/mの水素処理速度を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項5】
前記脱ロウ触媒は、少なくとも1つの10または12環チャネルを含む少なくとも1種のモレキュラーシーブを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項6】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、EU−1、NU−87、SAPO−11、SAPO−41、ITQ−13、MCM−71、ゼオライト・ベータ、ZSM−12、MCM−68、SAPO−5、SAPO−31、MAPO−36、ZSM−18、オフレタイト、モルデナイト、またはホージャサイトのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項7】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−48であることを特徴とする請求項6に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項8】
前記酸素化物は、少なくとも1種のアルコール、カルボン酸、エステル、アルデヒド、ケトンまたはエーテルであることを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項9】
前記酸素化物は、水であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項10】
前記脱ロウ触媒は、金属水素化成分を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項11】
前記脱ロウ触媒は、硫化される、還元される、または硫化かつ還元されることを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項12】
脱ロウ条件は、250〜400℃の温度、791〜20786kPaの圧力、0.1〜10hr−1の液空間速度、および45〜1780m/mの水素処理速度を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項13】
水素化精製工程をさらに含んでなり、
前記水素化精製工程は、前記脱ロウされた生成物を、150〜350℃の温度、2889〜20786kPaの圧力、0.1〜5hr−1の液空間速度、および45〜1780m/mの水素処理速度を含む有効な水素化精製条件下で、水素化精製触媒と接触させる工程を含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項14】
前記脱ロウ触媒を選択活性化するのに有効な時間は、少なくとも1時間であることを特徴とする請求項2に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項15】
前記金属水素化成分は、PtまたはPdのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項10に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項16】
前記ストリームは、潤滑原料油または潤滑基油のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑基油の調製方法。
【請求項17】
前記水素化精製触媒は、M41S族触媒のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項13に記載の潤滑基油の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−502294(P2006−502294A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543635(P2004−543635)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/032095
【国際公開番号】WO2004/033590
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】