説明

金型回動装置

【課題】金型の反転を短時間で容易に行える金型回動装置を提供する。
【解決手段】金型回動装置100は金型200を回動させるものであり、移動可能な本体部10と、金型クランプ部20aおよび20bと、金型クランプ回動部30とを備える。本体部10には、金型クランプ部20aおよび20bと金型クランプ回動部30とが取り付けられる。金型クランプ部20aおよび20bは金型200を金型200の側面側からクランプするものである。金型クランプ部20aおよび20bで金型200をクランプする場合、金型クランプ部20aおよび20bのそれぞれに備えられた挿入部材22a乃至23bを移動部24により矢印A方向に移動させて金型200の穴201a、201b等に挿入させる。金型クランプ回動部30は、例えば中心軸Eを回動軸として金型クランプ部20aおよび20bを回動させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を回動させる金型回動装置に関し、特に金型の反転を容易に行える金型回動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型を180度反転させる場合、以下の方法により行われていた。まず、ホイストクレーンに備えられた2基のホイストから伸びるワイヤーをそれぞれ金型の端部に取り付ける。次に、一方のホイストによりワイヤーを吊り上げて金型の一方を吊り上げる。これにより、金型は90度回転したことになる。さらに、他方のホイストによりワイヤーを吊り上げて金型の他方を吊り上げる。これにより、金型は180度反転したことになる。
【0003】
上記方法はホイストクレーンを必要とするが、ホイストクレーンは大型であるため、広い場所を必要としその場所に固定される。また、上記方法により金型を180度反転させる場合、金型を180度反転させるのに時間を要する。また、上記作業は、熟練した作業者によらないと危険であるという問題点があった。
【0004】
以上のような問題点を解決する従来技術として、補強アングルを介して一対の支持台を連設するとともにその支持台の間には回転軸が架設され、かつ、その回転軸に装着された一対の支持アーム間に金型反転フックを受け止める係止パイプが架設された少なくとも一以上のハンガー部を備えた金型反転用の基台と、金型反転フックとにより金型を180度反転させる金型反転方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この金型反転方法は、クレーン等で金型の一端を吊り上げた後に、上記金型反転フックを金型の他端に取り付ける。その後、金型反転フックを金型反転用の基台における係止パイプに引っ掛ける。その状態からクレーン等で吊り上げた金型の一端を下降させる。すると、金型は係止パイプを支点として金型の一端が傾倒するように下方へ移動する。これにより、金型は180度反転させられたことになる。
【特許文献1】特開2007−38495号公報(図7乃至図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、金型の一端をクレーン等により吊り上げる工程や、また、金型の一端をクレーン等により吊り上げた状態において他端に取り付けられた金型反転フックを金型反転用の基台における係止パイプに引っ掛ける工程、さらには金型の一端を下降させる工程において、熟練していない作業者が作業を行う場合安全性が確保されているとは言い難い。また、上記工程を経て金型を180度反転させるため、時間を要する。
【0007】
そこで、本発明は、金型の反転を短時間で容易に行える金型回動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の金型回動装置は、移動可能な本体部と、上記本体部に取り付けられ、金型を上記金型の側面側からクランプする金型クランプ部と、上記本体部に取り付けられ、上記金型クランプ部にクランプされた上記金型の側面と略直角を成す方向の上記金型クランプ部における所定の軸である側面直角回動軸を回動軸として上記金型クランプ部を回動させる金型クランプ回動部とを具備することを特徴とするものである。これにより、金型クランプ部により金型を側面側からクランプして、金型クランプ回動部により金型クランプ部を回動させることにより金型を回動させるという作用をもたらす
【0009】
また、本発明の金型回動装置において、上記金型クランプ部は、金型クランプ本体部と、上記金型クランプ本体部に取り付けられ、上記金型に設けられた少なくとも1つの穴に挿入する少なくとも1つの挿入部材とを備え、上記金型に設けられた穴に上記挿入部材を挿入することにより上記金型を上記金型の側面側からクランプすることを特徴とする。これにより、金型に設けられた穴に挿入部を挿入させることにより、金型の側面側から金型をクランプさせるという作用をもたらす。
【0010】
また、本発明の金型回動装置において、上記金型クランプ部は、上記金型に設けられた穴に上記挿入部材を移動させる移動部をさらに備えたことを特徴とする。これにより、移動部により挿入部を移動させることにより金型の側面側から金型をクランプさせるという作用をもたらす。
【0011】
また、本発明の金型回動装置において、上記移動部は、上記挿入部材の全部または上記挿入部材の一部が挿入された少なくとも1つのシリンダーと、上記シリンダー内における圧力を制御する圧力制御部とを具備し、上記挿入部材は、シリンダー内における圧力により移動させられることを特徴とする。これにより、シリンダー内の圧力を制御することにより挿入部を移動させるという作用をもたらす。
【0012】
また、本発明の金型回動装置において、上記金型クランプ部は2つあり、その2つの上記金型クランプ部は上記側面直角回動軸が同一となる位置に配置されたことを特徴とする。これにより、2つの金型クランプ部により金型をクランプさせるという作用をもたらす。
【0013】
また、本発明の金型回動装置において、上記金型クランプ回動部は、回動力を発生する回動力発生部と、上記回動力発生部に連結された軸である回動軸部材と、上記回動軸部材に取り付けられた第1の回動部材と、上記金型クランプ部に連結され、上記側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である金型クランプ回動機構と、上記金型クランプ回動機構に取り付けられた第2の回動部材と、上記第1の回動部材における回動力を上記第2の回動部材に伝達する回動伝達部材とを備えたことを特徴とする。これにより、回動力発生部において発生した回動力により金型クランプ部を回動させるという作用をもたらす。
【0014】
また、本発明の金型回動装置において、上記金型クランプ部は第1の金型クランプ部と第2の金型クランプ部とを備え、上記第1の金型クランプ部と第2の金型クランプ部とは上記側面直角回動軸が同一となる位置に配置され、上記金型クランプ回動部は、回動力を発生する回動力発生部と、上記回動力発生部に連結された軸である回動軸部材と、上記回動軸部材に取り付けられた第1の回動部材と、上記第1の金型クランプ部に連結され、上記側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である第1の金型クランプ回動機構と、上記第1の金型クランプ回動機構に取り付けられた第2の回動部材と、上記第1の回動部材における回動力を上記第2の回動部材に伝達する回動伝達部材と、上記第2の金型クランプ部に連結され、上記側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である第2の金型クランプ回動機構とを備えたことを特徴とする。これにより、回動力発生部において発生した回動力が一方の金型クランプ部に直接伝達され、他方の金型クランプ部には上記一方の金型クランプ部と伴に回動する金型より回動力が伝達されるという作用をもたらす。
【0015】
また、本発明の金型回動装置において、上記金型クランプ部は第1の金型クランプ部と第2の金型クランプ部とを備え、上記第1の金型クランプ部と第2の金型クランプ部とは上記側面直角回動軸が同一となる位置に配置され、上記金型クランプ回動部は、回動力を発生する回動力発生部と、上記回動力発生部に連結された軸である回動軸部材と、上記回動軸部材に取り付けられた2つの第1の回動部材と、上記第1の金型クランプ部に連結され、上記側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である第1の金型クランプ回動機構と、上記第2の金型クランプ部に連結され、上記側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である第2の金型クランプ回動機構と、上記第1の金型クランプ回動機構および上記第2の金型クランプ回動機構のそれぞれに取り付けられた2つの第2の回動部材と、上記第1の回動部材における回動力を上記第2の回動部材に伝達する2つの回動伝達部材とを備えたことを特徴とする。これにより、回動力発生部において発生した回動力が直接2つの金型クランプ部に伝達されるという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金型の反転を短時間で容易に行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態における金型回動装置100を示す図である。本発明の実施の形態における金型回動装置100は金型200を回動させるものであり、本体部10と、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bと、(図示しない)金型クランプ回動部30とを備える。
【0019】
本体部10には、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bと、(図示しない)金型クランプ回動部30とが取り付けられる。本体部10の形状として、例えば図1に示すようなコの字形状が想定されるが、これに限るものではなく、その他の形状であってもよい。
【0020】
また、本体部10は、容易に移動可能なものとすることが好ましい。この場合、本体部10の大きさおよび重量は、例えば、小型のクレーンで吊り上げて移動させることができたり、フォークリフト車で持ち上げて移動させることができたりする程度の大きさおよび重量とすることが想定される。これにより、複数の金型200がそれぞれ別の場所に置かれていても、フォークリフト車等で金型回動装置100を移動させることによりそれぞれの金型200を回動させて180度反転させることができる。
【0021】
金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bは、金型200を金型200の側面側からクランプするものである。本発明の実施の形態において金型クランプ部は、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bの2つの金型クランプ部により構成されているが、これに限るものではなく、1つ金型クランプ部により構成してもよい。また、金型クランプ部が3つ以上ある場合、本発明の金型回動装置は、3つ以上の金型クランプ部を後述する金型クランプ回動部30により回動させた結果、3つ以上の金型クランプ部によりクランプされた金型200を回動させることができるような構造とすることが必要であるが、そのような構造の金型回動装置も本発明の範囲に含まれる。
【0022】
金型クランプ部20aは、金型クランプ本体部21aと、挿入部材22aおよび挿入部材23aとを備える。挿入部材22aおよび挿入部材23aは、金型クランプ本体部21aの所定の位置に取り付けられており、金型クランプ本体部21aの所定の面から外部に突起した態様になっている。また、上記において金型クランプ部20aにおける挿入部材は金型クランプ本体部21aに2つ取り付けられているが、これに限るものではなく、挿入部材は少なくとも1つ金型クランプ本体部21aに取り付けられていればよい。金型クランプ本体部21aの形状は、例えば図1に示すように直方体形状が想定されるが、これに限るものではなく、円盤形状・その他の形状であってもよい。
【0023】
挿入部材22aおよび挿入部材23aは、それぞれ金型200の側面に設けられた穴201aおよび穴202aに挿入する部材である。挿入部材22aおよび挿入部材23aを矢印A方向に移動させることができるように、例えば金型クランプ本体部21aの内部に挿入部材22aおよび挿入部材23aを矢印A方向に移動させることができる(図示しない)移動機構を設けるようにしてもよい。この移動機構については図2で詳細に説明することとする。
【0024】
なお、例えば本体部10内部に金型クランプ本体部21aを矢印A方向に移動させることができる(図示しない)移動機構を設けてもよい。このような機構にすれば、挿入部材22aおよび挿入部材23aを矢印A方向に移動させているのと実質的に同様の動作を実現することができる。
【0025】
金型クランプ部20bも金型クランプ部20aと同様の構造をしており、上記金型クランプ部20aの説明は金型クランプ部20bにも当てはまるため、金型クランプ部20bの説明は省略する。
【0026】
金型クランプ部20aと金型クランプ部20bとにより金型200をクランプするには、金型200を金型クランプ部20aと金型クランプ部20bとの間に位置させる。そして、例えば上記説明した2つの移動機構のいずれかにより挿入部材22aおよび挿入部材23a、並びに(図示しない)挿入部材22bおよび挿入部材23bを移動させて、金型200の側面に設けられた穴201aおよび穴202aに挿入部材22aおよび挿入部材23aを挿入させ、金型200に設けられた穴201bおよび穴202bに(図示しない)挿入部材22bおよび挿入部材23bを挿入させる。これにより、金型200は、挿入部材22aおよび挿入部材23a、並びに(図示しない)挿入部材22bおよび挿入部材23bの側面方向からの力、および挿入部材と穴の嵌合力によりクランプされる。
【0027】
なお、挿入部材22aおよび挿入部材23a、並びに(図示しない)挿入部材22bおよび挿入部材23bの形状は、穴201aおよび穴202a、並びに穴201bおよび穴202bの形状に適合するような形状とすることが想定されるが(例えば、穴を円柱形状とした場合、挿入部材の形状も上記円柱形状とほぼ同じ大きさの円柱形状とする等)、これに限るものではない。
【0028】
すなわち、挿入部材22aおよび挿入部材23a、並びに(図示しない)挿入部材22bおよび挿入部材23bの形状は、穴201aおよび穴202a、並びに穴201bおよび穴202bに、それぞれの穴に対応する挿入部材22aおよび挿入部材23a、並びに(図示しない)挿入部材22bおよび挿入部材23bを挿入することにより、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bが金型200をクランプすることができる形状であれば、どのような形状であってもよい。例えば、挿入部材22aおよび挿入部材23a、並びに(図示しない)挿入部材22bおよび挿入部材23bの形状をネジ形状とし、穴201aおよび穴202a、並びに穴201bおよび穴202bの形状をネジ穴の形状とすることが考えられる。
【0029】
また、上記において金型クランプ部20aと金型クランプ部20bとが金型200をクランプする方式として、金型200の側面に設けられた穴に挿入部材を挿入する方式を示しているが、これに限るものではない。すなわち、金型200を金型200の側面側からクランプすることができれば、どのような方式であってもよい。金型クランプ部20aと金型クランプ部20bとが金型200をクランプする方式として、例えば挿入部材の代わりに万力の構造をした万力部材を金型クランプ本体部に設けて、万力部材により金型200の両端付近を挟み込むようにクランプする方式が挙げられる。
【0030】
(図示しない)金型クランプ回動部30は、金型200を金型クランプ部20aと金型クランプ部20bとの間に位置させた際に、金型200の側面と略直角を成す方向の金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bにおける所定の軸(以下、側面直角回動軸と呼ぶ。)を回動軸として、矢印B、C方向に金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bを回動させるものである。側面直角回動軸として、例えば、金型クランプ本体部21aおよび21bの中心点D、D´を通り、金型200の側面と直角を成す中心軸Eが想定されるが、これに限るものではない。(図示しない)金型クランプ回動部30については、図2および図3でさらに説明することとする。
【0031】
なお、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bをそれぞれ矢印B、C方向に回動させる際には、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bにおける側面直角回動軸が同一である必要がある。これは、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bにおける側面直角回動軸が同一でないと金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bにクランプされた金型200を回動させることができないからである。このため、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bは、上記中心軸Eが側面直角回動軸となるように本体部10に取り付けることが好ましい。
【0032】
金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bにより金型200をクランプした後に、(図示しない)金型クランプ回動部30により、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bをそれぞれ矢印B、C方向に180度回動させれば、金型200を180度反転させることができる。
【0033】
図2は、本発明の実施の形態における金型回動装置100の正面内部図である。本発明の実施の形態における金型回動装置100は、上記説明したように本体部10と、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bと、金型クランプ回動部30とを備える。また、図2における金型回動装置100においては、図1において言及した挿入部材の移動機構の一例として移動部24を示している。
【0034】
本体部10は、図1において説明したため、説明を省略する。金型クランプ部20aは、金型クランプ本体部21aと、挿入部材22aおよび挿入部材23aと、移動部24とを備える。挿入部材22aは、挿入主部材221aと、挿入主部材221aに連結された挿入補助部材222aとを備える。なお、挿入部材23aは、挿入部材22aの紙面奥にあり、図2においては隠れた状態になっている。
【0035】
挿入主部材221aは、金型200の穴201aに嵌合させる挿入部223aと真っ直ぐに連なる部材であり、その一部が金型クランプ本体部21a内において矢印A方向に移動できる状態で埋め込まれている。挿入補助部材222aは、後述するシリンダー241に挿入されてピストンの役割を果たすものである。
【0036】
以上のように挿入部材22aを挿入主部材221aと挿入補助部材222aとにより構成させているのは、金型200の重量に対する挿入部材22aの強度を十分なものにするためである。なお、金型200の重量に対する挿入部材22aの強度を十分なものにできるなら、挿入主部材221aをシリンダー241に挿入して挿入補助部材222aを省略してもよい。なお、挿入部材23aについても挿入部材22aと同様に説明できるため、その説明を省略する。
【0037】
移動部24は、挿入部材22aおよび挿入部材23aを金型200の穴201aおよび穴202aに移動させるものである。図2において移動部24は、挿入部材22aおよび挿入部材23a、並びに挿入部材22bおよび挿入部材23bを矢印A方向に移動させる。挿入部材22aおよび挿入部材23a、並びに挿入部材22bおよび挿入部材23bを矢印A方向に移動させる移動部24の態様としては、例えば油圧による方式、空圧による方式等の圧力により移動させる方式が挙げられるが、これに限るものではない。すなわち、移動部24の態様としては、例えばボールネジおよびステッピングモーターを用いる方式や、手動により挿入部材を移動させて挿入部材をストッパ等で固定する方式等その他の方式であってもよい。
【0038】
図2においては、特に圧力により移動させる方式を採用した移動部24を示している。移動部24は、シリンダー241と、圧力制御部242とを備える。シリンダー241には、上記説明したように挿入補助部材222aが挿入されている。
【0039】
圧力制御部242は、シリンダー241内の圧力を制御するものである。そして、シリンダー241内の圧力を油圧により制御する場合、圧力制御部242は、図2に示すようにシリンダー241内の油圧を制御する油圧制御部243と、油通路部244とにより構成することが想定される。また、シリンダー241内の圧力を空圧により制御する場合、圧力制御部242はシリンダー241内の空圧を制御する空圧制御部と、空気通路部とにより構成することが想定される。以下において、シリンダー241内の圧力を油圧により制御する場合について説明する。
【0040】
油圧制御部243は、例えば操作部40からの指示にしたがってシリンダー241内の油圧を制御するものである。例えば操作部40から挿入部材22aを金型200の穴201aに挿入するよう指示された場合、油圧制御部243は、油通路部244を通じてシリンダー241に所定量の油を供給する。これにより、挿入補助部材222aは外に押し出され、挿入部223aと真っ直ぐに連なる挿入主部材221aは穴201aに挿入される。一方、例えば操作部40から金型200の穴201aに挿入された挿入部材22aを引き抜くよう指示された場合、油圧制御部243は、油通路部244を通じてシリンダー241内の油を吸い上げる。これにより、挿入補助部材222aはシリンダー241の内部に引き寄せられ、挿入部223aと真っ直ぐに連なる挿入主部材221aは金型200の穴201aの外に押し出される。
【0041】
なお、シリンダー241内の圧力を空圧により制御する場合は、上記油圧の説明の場合の油を空気に置き換えて説明することができるため、その説明は省略する。
【0042】
なお、以上の挿入部材22aについての移動部24の説明は、挿入部材23aについても同様に説明できるため、説明を省略する。また、以上の図2における説明は、金型クランプ部20bについても同様に説明できるため、金型クランプ部20bについての説明を省略する。
【0043】
金型クランプ回動部30は、図1において説明したように側面直角回動軸(例えば、図1で説明した中心軸E)を回動軸として金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bを回動させるものであり、例えば回動力発生部31と、回動軸部材32と、回動部材33および34と、金型クランプ回動機構35および36と、回動伝達部材37とを備える。
【0044】
回動力発生部31は、回動力を発生するものである。回動力発生部31で発生した回動力は、回動力発生部31と連結された軸である回動軸部材32に伝達される。回動軸部材32には回動部材33が取り付けられており、回動軸部材32に伝達された回動力は回動部材33に伝達される。
【0045】
一方、金型クランプ部20bには、側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である金型クランプ回動機構35が連結されている。そして、金型クランプ回動機構35には、回動部材34が取り付けられている。回動伝達部材37は、回動部材33の回動力を回動部材34に伝達するものであるため、回動部材33における回動力は回動伝達部材37を通じて回動部材34に伝達される。回動部材34は、上記説明したように金型クランプ回動機構35に取り付けられているため、回動部材34に伝達された回動力は金型クランプ回動機構35に伝達されることになる。そして、金型クランプ回動機構35に連結された金型クランプ部20bは、金型クランプ回動機構35に伝達された回動力により回動する。
【0046】
一方、金型クランプ部20aには、側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である金型クランプ回動機構36が連結されている。金型200を金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bによりクランプすることにより、金型クランプ部20bより金型200を通じて金型クランプ部20aに回動力が伝達される。金型クランプ部20aに伝達された回動力が金型クランプ回動機構36に伝達され、金型クランプ部20aは回動するようになる。
【0047】
図3は、本発明の実施の形態における金型回動装置100の側面図である。図3において本発明の実施の形態における金型回動装置100は、回動力発生部31の一例としてモーター310を用い、回動部材33および34の一例としてスプロケット330およびスプロケット340を用い、金型クランプ回動機構35の一例として、回動軸351と軸受け352から成る回動機構350を用い、回動伝達部材37の一例としてチェーン370を用いた場合を示している。上記のように構成された金型クランプ回動部30の動作を以下説明する。
【0048】
(図示しない)操作部40から回動すべき旨の指示を受けたモーター310は回動し始める。モーター310が回動すると、モーターに連結された回動軸部材32の端部付近に取り付けられたスプロケット330が回動する。スプロケット330が回動すると、スプロケット330およびスプロケット340に噛合しているチェーン370が動作し、回動軸351の端部付近に取り付けられているスプロケット340を回動させる。軸受け352に支持された回動軸351は、スプロケット340の回動とともに回動し始める。そして、回動軸351の他端に連結された金型クランプ部20bは、回動軸351の回動とともに回動し始める。
【0049】
図4は、本発明の別の実施の形態における金型回動装置400の正面内部図である。本発明の別の実施の形態における金型回動装置400は、金型回動装置100と同様に本体部410と、金型クランプ部420aおよび金型クランプ部420bと、金型クランプ回動部430とを備える。
【0050】
本体部410と、金型クランプ部420aおよび金型クランプ部420bとは、本体部10と、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bと同様の構造を有するものであり、これについては上記において説明済みであるため、説明を省略する。
【0051】
金型回動装置100と金型回動装置400との相違点は、金型クランプ回動部の構造である。金型クランプ回動部30は、金型クランプ部20bに対しては直接回動力を伝達し、金型クランプ部20aに対しては金型200を通じて回動力を伝達するようにしている。すなわち、金型クランプ部20a、金型クランプ部20bおよび金型200によりクラッチ機構が構成されていると見ることができる。
【0052】
一方、金型クランプ回動部430は、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bの両方に対して直接回動力を伝達するように構成されている。金型クランプ回動部430においては金型200がなくても金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bを回動させることができる。以下、具体的に金型クランプ回動部430について説明する。
【0053】
金型クランプ回動部430は、回動力発生部431と、回動軸部材432と、回動部材433a、回動部材433b、回動部材434aおよび回動部材434bと、金型クランプ回動機構435および金型クランプ回動機構436と、回動伝達部材437および回動伝達部材438とを備える。
【0054】
回動力発生部431で発生した回動力は、回動力発生部431と連結された軸である回動軸部材432に伝達される。回動軸部材432には、回動部材433aおよび回動部材433bが取り付けられており、回動軸部材432に伝達された回動力は回動部材433aおよび回動部材433bに伝達される。
【0055】
一方、金型クランプ部420aには、側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である金型クランプ回動機構436が連結されている。また、金型クランプ部420bには、側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である金型クランプ回動機構435が連結されている。なお、金型クランプ回動機構435における側面直角回動軸と、金型クランプ回動機構436における側面直角回動軸とは、同一とすることが想定される。そして、金型クランプ回動機構436には回動部材434aが取り付けられており、金型クランプ回動機構435には回動部材434bが取り付けられている。
【0056】
回動伝達部材437および回動伝達部材438は、それぞれ回動部材433bおよび回動部材433aの回動力を回動部材434bおよび434aに伝達するものであるため、回動部材433bおよび回動部材433aにおける回動力は、それぞれ回動伝達部材437および回動伝達部材438を通じて回動部材434bおよび回動部材434aに伝達される。
【0057】
回動部材434bおよび回動部材434aは、上記説明したようにそれぞれ金型クランプ回動機構435および金型クランプ回動機構436に取り付けられているため、回動部材434bおよび回動部材434aに伝達された回動力は金型クランプ回動機構435および金型クランプ回動機構436に伝達されることになる。そして、金型クランプ回動機構436に連結された金型クランプ部420a、および金型クランプ回動機構435に連結された金型クランプ部20bは、それぞれ伝達された回動力により回動する。
【0058】
図5は、本発明の実施の形態における金型回動装置100により金型200を180度反転させる様子を示す図である。まず、図5(a)に示すように、金型クランプ部20aと金型クランプ部20bとの間に金型200が位置するように、例えばフォークリフトまたは小型クレーン等で金型回動装置100を矢印F方向に移動させる。
【0059】
図5(b)に示すように、金型200を金型クランプ部20aと金型クランプ部20bとの間に位置させた後に、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bにより金型200の側面側から金型200をクランプする。具体的には、金型200の側面に設けられた穴に金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bに備えられた(図示しない)挿入部材22a、挿入部材22b、挿入部材23aおよび挿入部材23bを(図示しない)移動部24により挿入させる。これにより、金型200は、金型クランプ部20aと金型クランプ部20bとによりクランプされる。
【0060】
金型クランプ部20aと金型クランプ部20bとにより金型200をクランプした後に、金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bを図5(c)に示すように(図示しない)金型クランプ回動部30により矢印G方向に回動させる。
【0061】
そして、図5(d)に示すように金型200を反転させた後に、(図示しない)金型クランプ回動部30による金型クランプ部20aおよび金型クランプ部20bの回動を停止させる。そして、金型200の穴に挿入された(図示しない)挿入部材22a、挿入部材22b、挿入部材23aおよび挿入部材23bを(図示しない)移動部24により穴から引き抜く方向へ移動させる。これにより、金型200はクランプから開放された状態になる。
【0062】
そして、金型回動装置100を、図5(e)に示すように、例えばフォークリフトまたは小型クレーン等で矢印H方向へ移動させる。これにより、金型200の反転作業が完了する。
【0063】
以上のような構成をした金型回動装置100および400であれば、金型200を回動させる装置としては小型なものにできる。このため、金型回動装置100および400を用いた場合、金型200の反転作業に際して大型の作業スペースを必要としない。また、以上のような構成をした金型回動装置100および400であれば、金型回動装置100および400は容易に移動させることができし、金型回動装置100および400の保管に際しても大きな面積を要しない。
【0064】
また、金型回動装置100および400によれば、金型200を回動させて180度反転させるのに、作業者は、金型回動装置100(または金型回動装置400)における金型クランプ部20aと金型クランプ部20b(または金型クランプ部420aと金型クランプ部420b)との間に金型200を位置させるだけで、後は、例えば金型回動装置100(または金型回動装置400)に備えられたコントローラ等の操作部による簡易な操作で金型を180度反転させることができるため、作業者の熟練を必要としない。また、金型回動装置100および400によれば、金型200を180度反転させるのに、短時間で行うことができるため、作業の効率化が図れる。
【0065】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、これに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形を施すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の活用例として、例えば金型を180度反転させる際に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態における金型回動装置100を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における金型回動装置100の正面内部図である。
【図3】本発明の実施の形態における金型回動装置100の側面図である。
【図4】本発明の別の実施の形態における金型回動装置400の正面内部図である。
【図5】本発明の別の実施の形態における金型回動装置100により金型200を180度反転させる様子を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
10、410 本体部
20a、20b、420a、420b 金型クランプ部
21a 金型クランプ本体部
22a、22b、23a、23b 挿入部材
24 移動部
30、430 金型クランプ回動部
31、431 回動力発生部
32、432 回動軸部材
33、34、433a、433b、434a、434b 回動部材
35、36、435、436 金型クランプ回動機構
37、437、438 回動伝達部材
40 操作部
100、400 金型回動装置
221a 挿入主部材
222a 挿入補助部材
223a 挿入部
241 シリンダー
242 圧力制御部
243 油圧制御部
244 油通路部
310 モーター
330、340 スプロケット
340 スプロケット
350 回動機構
351 回動軸
352 軸受け
370 チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な本体部と、
前記本体部に取り付けられ、金型を前記金型の側面側からクランプする金型クランプ部と、
前記本体部に取り付けられ、前記金型クランプ部にクランプされた前記金型の側面と略直角を成す方向の前記金型クランプ部における所定の軸である側面直角回動軸を回動軸として前記金型クランプ部を回動させる金型クランプ回動部と
を具備することを特徴とする金型回動装置。
【請求項2】
前記金型クランプ部は、
金型クランプ本体部と、
前記金型クランプ本体部に取り付けられ、前記金型に設けられた少なくとも1つの穴に挿入する少なくとも1つの挿入部材と
を備え、
前記金型に設けられた穴に前記挿入部材を挿入することにより前記金型を前記金型の側面側からクランプすることを特徴とする請求項1記載の金型回動装置。
【請求項3】
前記金型クランプ部は、前記金型に設けられた穴に前記挿入部材を移動させる移動部をさらに備えたことを特徴とする請求項2記載の金型回動装置。
【請求項4】
前記移動部は、
前記挿入部材の全部または前記挿入部材の一部が挿入された少なくとも1つのシリンダーと、
前記シリンダー内における圧力を制御する圧力制御部と
を具備し、
前記挿入部材は、シリンダー内における圧力により移動させられることを特徴とする請求項3記載の金型回動装置。
【請求項5】
前記金型クランプ部は2つあり、その2つの前記金型クランプ部は前記側面直角回動軸が同一となる位置に配置されたことを特徴とする請求項1乃至4記載の金型回動装置。
【請求項6】
前記金型クランプ回動部は、
回動力を発生する回動力発生部と、
前記回動力発生部に連結された軸である回動軸部材と、
前記回動軸部材に取り付けられた第1の回動部材と、
前記金型クランプ部に連結され、前記側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である金型クランプ回動機構と、
前記金型クランプ回動機構に取り付けられた第2の回動部材と、
前記第1の回動部材における回動力を前記第2の回動部材に伝達する回動伝達部材と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の金型回動装置。
【請求項7】
前記金型クランプ部は第1の金型クランプ部と第2の金型クランプ部とを備え、前記第1の金型クランプ部と第2の金型クランプ部とは前記側面直角回動軸が同一となる位置に配置され、
前記金型クランプ回動部は、
回動力を発生する回動力発生部と、
前記回動力発生部に連結された軸である回動軸部材と、
前記回動軸部材に取り付けられた第1の回動部材と、
前記第1の金型クランプ部に連結され、前記側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である第1の金型クランプ回動機構と、
前記第1の金型クランプ回動機構に取り付けられた第2の回動部材と、
前記第1の回動部材における回動力を前記第2の回動部材に伝達する回動伝達部材と、
前記第2の金型クランプ部に連結され、前記側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である第2の金型クランプ回動機構と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の金型回動装置。
【請求項8】
前記金型クランプ部は第1の金型クランプ部と第2の金型クランプ部とを備え、前記第1の金型クランプ部と第2の金型クランプ部とは前記側面直角回動軸が同一となる位置に配置され、
前記金型クランプ回動部は、
回動力を発生する回動力発生部と、
前記回動力発生部に連結された軸である回動軸部材と、
前記回動軸部材に取り付けられた2つの第1の回動部材と、
前記第1の金型クランプ部に連結され、前記側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である第1の金型クランプ回動機構と、
前記第2の金型クランプ部に連結され、前記側面直角回動軸を回動軸とした回動機構である第2の金型クランプ回動機構と、
前記第1の金型クランプ回動機構および前記第2の金型クランプ回動機構のそれぞれに取り付けられた2つの第2の回動部材と、
前記第1の回動部材における回動力を前記第2の回動部材に伝達する2つの回動伝達部材と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の金型回動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−279903(P2009−279903A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136893(P2008−136893)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(505476652)五友工業株式会社 (3)
【出願人】(508155985)
【Fターム(参考)】