説明

金属クリップ付樹脂製配線クランプ

【課題】 太陽光発電施設やビルなど電線ケーブルなどを敷設する際、形鋼などのフレームに沿わせて設置することが行われているが、敷設の際に電線ケーブルの表面に傷を付けてしまうことを防ぎ、かつ形鋼などのフレームの板厚が変わっても確実に挟持できる金属クリップ付樹脂製配線クランプを提供する。
【解決手段】 電線ケーブルなどを保持する合成樹脂製の保持手段10と形鋼などフレームに挟持する金属クリップ形状の嵌着手段20からなり、保持手段10と嵌着手段20は着脱可能な状態で係止され、一体構造となっている。嵌着手段20には逆止突起26を有し、形鋼などフレームに対し離脱の方向の妨げになるように作用している。前記逆止突起26は突起高さと角度が違う複数の突起からなり、形鋼などフレームの板厚が変わった場合に逆止突起が確実に形鋼などフレームの表面に接触し作用を維持する機能を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は形鋼等のフレームに沿って電線ケーブル等を配線する際、このフレームに支持取付けする金属クリップ付樹脂製配線クランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電施設やビル、工場、住宅などの建造物においてL字の形鋼などのフレームが設置されている場合、前記フレームの長手方向に沿って電源ケーブルや通信ケーブル等を敷設することが行われている。これらケーブルを形鋼等のフレームに固定支持するために、従来はケーブル支持金具(特許文献1参照)が用いられている。この従来のケーブル支持金具は図8に示すように取付部とケーブル抱持部が一体形状に構成されている。前記取付部によって形鋼を挟むように取付けられ、ケーブルを敷設する際はケーブル抱持部の端部を持ち上げながらケーブルを定位置に押し込み、持ち上げ力を取り去ることで復元し、ケーブルを保持している。また他の従来の方法として長尺物支持具(特許文献2参照)が用いられている。この従来の長尺物支持具は図9に示すように形鋼に取り付く長尺物支持具本体にケーブルとともに結束バンドで締め付け保持する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 意匠登録1294028号公報
【特許文献2】 特開2001−177958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこれら従来の支持具はケーブルが接する部分が金属であるため、ケーブル敷設や交換時にケーブルの被覆を傷つけてしまう虞があった。また金属製のため硬く、ケーブル取付け時にケーブル抱持部の先端部をこじ開ける様に変形させてケーブルを入れる必要があり作業性が悪かった。また力の加減によっては塑性変形を起こして元の形に戻らなくなってしまう可能性もあった。また、形鋼への取付けによる位置保持は支持金具の形状から成る挟持力により保持されており、形鋼の板厚が薄いものに変わった場合、挟持力が弱くなる傾向になり当初の取付け位置からずれる虞があった。本発明は、これらの問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明では、電線ケーブルなどの長尺物を保持する合成樹脂製の保持手段と、金属製クリップ等の嵌着手段とを備えた配線クランプであって、前記保持手段と前記嵌着手段は係止手段により一体化し、前記嵌着手段により形鋼等のフレームに嵌着することにより位置決めされる。前記保持手段は、電線ケーブルなどの長尺物を囲うような形状であり、かつ電線ケーブルなどの長尺物が嵌着手段の金属部に接することを回避する位置になるように形成されている。
【0006】
前記係止手段は前記嵌着手段における基準となる平板部の面に山型に形成され側面に孔が開口した係止孔に前記保持手段の固定部から延出した弾性を有する係止爪が嵌り込むことにより係止され、前記基準となる平板部の面の裏側には突起物が出ない構造を有し、前記係止爪の弾性を利用し前記係止孔から離脱させるように力を加えることにより前記保持手段を外すことが可能となる構造を有している。
【0007】
前記嵌着手段には形鋼等のフレームに対して離脱方向に対して抗するように作用する逆止突起を有しており、
【0008】
望ましくは突起の高さおよび角度が違う一組以上の逆止突起からなる金属クリップ付樹脂製配線クランプを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上のように構成されているので、電線ケーブル等の敷設、交換時に電線ケーブル等の被覆に傷をつける虞を無くすことができる。また形鋼等フレームの仕様(板厚)が変わっても形鋼等フレームに対する挟持力を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 本発明の実施例に係る配線クランプの斜視図である。
【図2】 本発明の実施例に係る配線クランプのクリップ体の斜視図である。
【図3】 本発明の実施例に係る配線クランプの長尺物保持体の斜視図である。
【図4】 本発明の実施例に係る配線クランプの係合部の縦断面図である。
【図5】 本発明の実施例に係る配線クランプの使用状態を示す正面図である。
【図6】 本発明の実施例に係る配線クランプの取付状態を示す部分図である。
【図7】 本発明の実施例に係る配線クランプの取付状態を示す部分図である。
【図8】 従来のケーブル支持金具を示す図である。
【図9】 従来の長尺支持具を示す図である。
【図10】 本発明の長尺物保持体の他の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1から図7は本発明の一実施形態を示している。
電線ケーブルなどの長尺物を保持する合成樹脂製の長尺物保持体10と形鋼等のフレームに嵌着する金属製のクリップ体20からなり、長尺物保持体10とクリップ体20は長尺物保持体10に有する係止突起部16とクリップ体20に有する係止孔27により連結係止される。
【0012】
クリップ体20は金属薄板の帯状からなり、基準となる平板部21と平板部21の一端は上方向斜めに折り曲げられた導入傾斜片25を形成し、平板部21の他端は平板部21に対し下向き折り返し方向に湾曲する湾曲部22が連設している。湾曲部22は弾性を持っている。さらに湾曲部22に続いて平板部21に向かう方向に伸びる挟持部23を有する。挟持部23の先端部は平板部21から離れる方向に斜めに折り曲げている傾斜片24が設けられている。
【0013】
傾斜片24の折り曲げ基部の幅方向両端部には逆止突起26が設けられている。逆止突起26は挟持部23の帯状幅方向端両側から切り込みを入れた後、帯状幅方向中央部分に対し折り曲げを行い、逆止突起26の部分だけが曲げられずに残ることで形成される。
【0014】
また前記逆止突起26は、基本となる突起26(a)と突起26(a)の高さ(前記折り曲げ基部から突起先端までの高さ)に比べて突起の高さを低くした突起26(b)を設けている。さらに突起26(a)は前記平板部21から離れる方向に曲げを加えている。
【0015】
クリップ体20を形鋼等のフレームに装着する際、クリップ体20は形鋼等のフレームの板厚に沿って押し込まれる。このとき湾曲部22を中心に弾性的に変形し平板部21と逆止突起26との間隔が前記板厚に沿って広がり、所望の位置で位置決めされる。形鋼等のフレームから外した場合、湾曲部22の変形が復元され元の状態に戻る。
【0016】
逆止突起26は、形鋼等フレームから離脱する方向に対し抗するように角度が付けられ形成されているが、形鋼等フレームの板厚が変わった場合、この抗するための相対角度が変わってきてしまう。そこで本発明の場合は、形鋼等のフレームの板厚が変わっても逆止効果を広く得るため、逆止突起26に高さと角度の違う突起26(a)と突起26(b)を設けている。図7に示すように板厚の厚い場合は突起26(a)が主に効果を発揮し、図6に示すように板厚の薄い場合は突起26(b)が主に効果を発揮するように構成して挟持力を維持している。
【0017】
前記平板部21には挟持部23側とは反対の面に山状突起28が絞り加工で設けられ、その山状突起28の両側面は係止孔27として開口している。係合孔27の形状は後述する長尺物保持体10の係止突起部16の断面形状と略合致する。
【0018】
前記傾斜片24と導入傾斜片25には工具(マイナスドライバー)の先端が入ることが可能な大きさの貫通孔があいている。貫通孔に工具を引っ掛けて外方向に力を加えることにより湾曲部22を弾性変形させ挟持部23を広げ、形鋼等のフレームから取り外す目的で使われる。
【0019】
長尺物保持体10は基礎となる固定部11を有し、固定部11の上面の一端から伸びた弾性体13と前記固定部11の上面の他端から略逆L字状に伸びた保持体19を有している。保持体19には、弾性体13の自由端と係合可能な位置に形成された係合部14を備えている。前記弾性体13は固定部11との連結部付近に弾性体13を略90度内側に折り曲げ出来るようにするために切り欠き17が設けられている。また、弾性体13の自由端には鉤形係合歯18が設けられている。
【0020】
前記係合部14は、弾性体13の自由端を貫通挿入する挿入孔30と、挿入孔30に貫通挿入された自由端の鉤形係合歯18と係合する鉤形状の係合片31とを備えている。
この長尺物保持体10にケーブル等を保持する際には、先ず、所望の本数のケーブルを固定部11と保持体19によって囲まれた空間に挿入した後、切り欠き17を支点にして弾性体13を略90度内側に折り曲げ、弾性体13の自由端を係合部14に接近させる。次に弾性体13の自由端を挿入孔30に挿入するとともに、鉤形係合歯18を係合片31に係合してケーブルを保持する囲い形状を構成する。
一方、長尺物保持体10からケーブルを取り外す際には、係合片31と鉤形係合歯18との係合を解除して、弾性体13の自由端を挿入孔30から抜き出せば良い。
【0021】
前記固定部11の側面15にはクリップ体20と係止される係止突起部16が形成されている。係止突起部16は側面15の略中央部から延出した係止爪40と側面15の係止爪40の両脇に形成されるばね突起41で構成されている。係止突起部16は前記クリップ体20の山状突起28と連結した状態でも山状突起28の上面が固定部11の上面より突出することがない位置に配置されている。係止爪40はその先端中央部に、段部46が突出形成されおり、この段部46は係止爪40の先端にいくにしたがって、序々にその厚さが薄くなる傾斜形状から成っている。また段部46の下側には空間47が設けられており、段部46の先端のみが係止爪40と繋がっている形状と成っている。この空間47により段部46が係合動作時に下方向に押し付けられる動きが可能になり、段部46を含む係止爪40が山状突起28を通り抜けた後、段部46は弾性的に復元し、係合が完了する。
また前記ばね突起41は、前記山状突起28の側面に対し弾性的に接触することにより長尺物保持体10のクリップ体20への取付けガタを吸収する機能を有している。
【0022】
長尺物保持体10の形状は本実施例に限るものではない。電線ケーブルの種類や太さ、本数などにより、さまざまな形状のものに変えることが出来る。たとえば他の実施例として図10に示す長尺物保持体100などが考えられる。図10の実施例は断面が丸いケーブルをそのまま保持するような形態で、弾性体130の形状もケーブル断面形状に沿うように略丸形状に形成され、鉤形係合歯180と係合片310が噛み合うことで係合しケーブルを保持するものである。また係止突起部160を有し、クリップ体20と連結係止される。
これら、さまざまな形状のものへの変更はケーブル等の施工後でも容易に可能である。
【符号の説明】
【0023】
10、100 長尺物保持体 26 逆止突起
11 固定部 27 係止孔
13、130 弾性体 28 山状突起
14 係合部 30 挿入孔
15 側面 31、310 係合片
16、160 係止突起部 40 係止爪
17 切り欠き 41 ばね突起
18、180 鉤形係合歯 46 段部
19 保持体 47 空間
20 クリップ体
21 平板部
22 湾曲部
23 挟持部
24 傾斜片
25 導入傾斜片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線ケーブルなどの長尺物を保持する合成樹脂製の保持手段と、金属製クリップ等の嵌着手段とを備えた配線クランプであって、前記保持手段と前記嵌着手段は係止手段により一体化し、前記嵌着手段は形鋼等のフレームに嵌着することにより位置決めされ、前記保持手段は、電線ケーブルなどの長尺物を囲うような形状であり、かつ電線ケーブルなどの長尺物が嵌着手段の金属部に接することを回避する位置になるように形成されたことを特徴とする金属クリップ付樹脂製配線クランプ。
【請求項2】
前記係止手段は前記嵌着手段における基準となる平板部の面に山型に形成され側面に孔が開口した係止孔に前記保持手段の固定部から延出した弾性を有する係止爪が嵌り込むことにより係止され、前記基準となる平板部の面の裏側には突起物が出ない構造を有し、前記係止爪の弾性を利用し前記係止孔から離脱させるように力を加えることにより前記保持手段を外すことが可能となる構造を有した請求項1記載の金属クリップ付樹脂製配線クランプ。
【請求項3】
前記嵌着手段には被嵌着物(形鋼等のフレーム)に対して離脱方向に対して抗するように作用する逆止突起を有する請求項1および2記載の金属クリップ付樹脂製配線クランプ。
【請求項4】
前記嵌着手段には被嵌着物(形鋼等のフレーム)に対して離脱方向に対して抗するように作用する逆止突起を有し、突起の高さおよび角度が違う一組以上の逆止突起からなる請求項1および2記載の金属クリップ付樹脂製配線クランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−110194(P2012−110194A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268787(P2010−268787)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000226507)株式会社ニックス (96)
【Fターム(参考)】