説明

金属膜作製装置及び金属膜作製方法

【課題】基板の周縁部以外の被成膜部に金属膜を形成しうる金属膜作製装置及び金属膜作製方法を提供する。
【解決手段】チャンバ1の内部において、塩素ガスをプラズマ化して得る塩素ラジカルで、ハロゲン化物を生成し得る金属を含む材料で形成した被エッチング部材11をエッチングして金属と塩素とからなる前駆体24を形成する一方、この前駆体24を被エッチング部材11の温度よりも低温の基板3に吸着させ、その後前駆体24を塩素ラジカルで還元して金属成分を析出させることにより所定の金属膜を形成する金属膜作製装置であって、基板3を載置すると共にその載置面2aの半径が基板3の半径よりも短いサセプタ2と、載置面2aを介して基板3の被成膜部3aの温度を周縁部3bの温度よりも低温に保持する温度制御手段6を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属膜作製装置及び金属膜作製方法に関し、特に、基板の周縁部以外の被成膜部に選択的に金属膜を形成する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体の製造等において基板に金属膜を作成する方法として、ハロゲンラジカルを利用し、金属をハロゲン化して再び還元し堆積させる技術(以下、MCR−CVD法(塩化金属還元気相成長法)という。)が本発明者等によって提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、金属(M)製の被エッチング部材が備えられたチャンバ内にハロゲンガスを供給し、誘導プラズマを発生させてハロゲンガスプラズマを発生させ、ハロゲンラジカルを生成する。その後、ハロゲンラジカルで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分とハロゲンガス成分との前駆体を生成し、被エッチング部材よりも低い温度の基板上において、前駆体をハロゲンラジカルにより還元し、金属成分を基板表面に吸着させる方法である。
【0004】
かかる一連の反応はハロゲンを塩素とした場合、次式の様に示される。
(1)プラズマの解離反応;Cl2→2Cl*
(2)エッチング反応;M+Cl*→MCl(g)
(3)基板への吸着反応;MCl(g)→MCl(ad)
(4)成膜反応;MCl(ad)+Cl*→M+Cl2
式中のCl*は塩素ラジカル、(g)はガス状態、(ad)は吸着状態を示す。金属Mにはハロゲン化物を作る物質(銅など)が使用される。
【0005】
上述した方法による成膜工程では、基板の前駆体(g)が吸着し得るあらゆる面に金属膜が形成される。例えばサセプタが基板の下面を支持している場合、基板の周縁部の表面にも金属膜が形成される。このような基板の周縁部表面に形成された金属膜は、この金属膜の成膜後に種々の工程をさらに実施する過程において基板の中心方向に拡散し、半導体素子の動作不良を引き起こす原因となる。このため、従来では基板に金属膜を形成した後に、周縁部表面の金属膜を除去する工程として、例えばウェットエッチング等を更に実施していた。この結果、半導体デバイスの製造に掛かる時間が増加するという問題が生じていた。
【0006】
【特許文献1】特開2003−147534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、基板の周縁部以外の被成膜部に金属膜を形成しうる金属膜作製装置及び金属膜作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、真空容器であるチャンバの内部において、ハロゲンを含有する作用ガスをプラズマ化して得るハロゲンラジカルで、ハロゲン化物を生成し得る金属を含む材料で形成した被エッチング部材をエッチングして前記金属とハロゲンとからなる前駆体を形成する一方、この前駆体を前記被エッチング部材の温度よりも低温の基板に吸着させ、その後前記前駆体を前記ハロゲンラジカルで還元して前記金属成分を析出させることにより所定の金属膜を形成する金属膜作製装置であって、前記基板の周縁部の温度を当該周縁部以外の被成膜部の温度よりも高温に保持する温度制御手段を具備することを特徴とする金属膜作製装置にある。
【0009】
かかる第1の態様では、基板の周縁部以外の被成膜部の温度が周縁部の温度よりも低温に保持されるため、前駆体は被成膜部の表面に吸着し易く、周縁部の表面には吸着し難い状態になる。これにより、被成膜部の表面に金属膜が形成される一方、周縁部の表面には金属膜が成膜され難くなるため、後処理として周縁部に形成された金属膜を除去する工程を省略することができ、その分迅速に基板に金属膜を形成することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する金属膜作製装置において、前記基板を載置すると共にその載置面の半径が前記基板の半径よりも短いサセプタを具備し、前記温度制御手段は、前記サセプタの載置面を介して前記基板の被成膜部の温度を前記基板の周縁部の温度よりも低温に保持することを特徴とする金属膜作製装置にある。
【0011】
かかる第2の態様では、基板の被成膜部がサセプタに載置されると共にこの被成膜部が温度制御手段により基板の周縁部の温度よりも低温に保持される。これにより、周縁部の表面に金属膜が形成されず、被成膜部の表面に金属膜が形成される。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載する金属膜作製装置において、前記基板の周縁部が載置される載置面を有するサセプタを具備し、前記温度制御手段は、前記サセプタの載置面を介して前記基板の周縁部の温度を前記基板の被成膜部の温度よりも高温に保持することを特徴とする金属膜作製装置にある。
【0013】
かかる第3の態様では、基板の周縁部がサセプタに載置されると共にこの周縁部が温度制御手段により基板の被成膜部の温度よりも高温に保持される。これにより、周縁部の表面に金属膜が形成されず、被成膜部の表面に金属膜が形成される。
【0014】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載する金属膜作製装置において、前記サセプタは、内径が前記基板の直径よりも短く且つ外径が前記直径よりも長い円筒体であり、前記載置面は、中心に向かい傾斜するようテーパ状に形成された前記円筒体の上部開口端面であり、前記基板の周縁部は前記上部開口端面に載置されることを特徴とする金属膜作製装置にある。
【0015】
かかる第4の態様では、基板の周縁部は、テーパ状の上部開口端面に載置されると共に、当該上部開口端面を介して被成膜部よりも高温に保持される。これにより周縁部の表面には金属膜が成膜され難くなる。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1の態様に記載する金属膜作製装置において、前記温度制御手段は、前記基板の周縁部にレーザー光を照射して当該周縁部の温度を前記被成膜部の温度よりも高温に保持するレーザー光照射装置であることを特徴とする金属膜作製装置にある。
【0017】
かかる第5の態様では、基板の周縁部がレーザー光に照射されることにより周縁部の温度が上昇して前記被成膜部の温度よりも高温となる。これにより、周縁部の表面に金属膜が形成されず、被成膜部の表面に金属膜が形成される。
【0018】
上記目的を達成するための本発明の第6の態様は、真空容器であるチャンバの内部にハロゲン化物を形成する金属を含む材料で形成した被エッチング部材を配設すると共に当該被エッチング部材にハロゲンガスをプラズマ化して得られるハロゲンラジカルを作用させることにより金属とハロゲンとの化合物である前駆体を形成する一方、基板を前記チャンバ内に収納した状態でその周縁部以外の被成膜部の温度を前記被エッチング部材よりも低温に保持し且つ前記周縁部の温度を前記被成膜部の温度よりも高温に保持して前記前駆体を前記被成膜部の表面に吸着させ、前記ハロゲンガスのラジカルを作用させることにより前記被成膜部の表面に前記金属の膜を形成することを特徴とする金属膜作製方法にある。
【0019】
かかる第6の態様では、基板の周縁部以外の被成膜部の温度が周縁部の温度よりも低温に保持されるため、前駆体は被成膜部の表面に吸着し易く、周縁部の表面には吸着し難い状態になる。これにより、被成膜部の表面に金属膜が形成される一方、周縁部の表面には金属膜が成膜され難くなるため、後処理として周縁部に形成された金属膜を除去する工程を省略することができ、その分迅速に基板に金属膜を形成することができる。
【0020】
上記目的を達成するための本発明の第7の態様は、真空容器であるチャンバの内部にハロゲン化物を形成する金属を含む材料で形成した被エッチング部材を配設すると共に当該被エッチング部材にハロゲンガスをプラズマ化して得られるハロゲンラジカルを作用させることにより金属とハロゲンとの化合物である前駆体を形成する一方、基板を前記チャンバ内に収納した状態でその温度を前記被エッチング部材よりも低温に保持して前記前駆体を前記基板の表面に吸着させると共に前記ハロゲンガスのラジカルを作用させることにより前記基板に前記金属の膜を形成するに際し、前記基板の周縁部近傍に前記ハロゲンガス又はそのラジカルを供給することを特徴とする金属膜作製方法にある。
【0021】
かかる第7の態様では、基板の周縁部近傍ではハロゲンガス又はそのラジカルがリッチな雰囲気となるため、周縁部近傍ではエッチングが行われる。この結果、周縁部の表面には金属膜が形成され難くなり、後処理として周縁部に形成された金属膜を除去する工程を省略することができ、その分迅速に基板に金属膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板の周縁部の表面には金属膜が形成されず、周縁部以外の被成膜部の表面に金属膜が形成される。これにより、前記周縁部の表面に形成された金属膜を除去する工程が不要となり、その分迅速に基板に金属膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0024】
〈実施形態1〉
図1は、実施形態1に係る金属膜作製装置(MCR−CVD装置)の概略を示す正面図である。
【0025】
図1に示すように、例えばセラミックス製(絶縁材製)のチャンバ1の底部近傍にはサセプタ2が設けられ、サセプタ2には基板3が載置される。サセプタ2にはヒータ4及び冷媒流通手段5を備えた温度制御手段6が設けられ、サセプタ2は温度制御手段6により所定温度(例えば、100℃から300℃)に制御される。
【0026】
チャンバ1の上面は開口部とされ、開口部は絶縁材料製の板状の天井板7によって塞がれている。天井板7の上方にはチャンバ1の内部をプラズマ化するためのプラズマアンテナ8が設けられ、プラズマアンテナ8は天井板7の面と平行な平面リング状に形成されている。プラズマアンテナ8には整合器9及び電源10が接続されて高周波電流が供給される。これら、プラズマアンテナ8、整合器9及び電源10により誘導プラズマを発生させるプラズマ発生手段が構成されている。
【0027】
チャンバ1にはハロゲン化物を形成する金属を含む材料、例えば銅で形成した被エッチング部材11が保持され、この被エッチング部材11はプラズマアンテナ8の電気の流れに対して基板3と天井板7との間に不連続状態で配置されている。例えば、被エッチング部材11は、棒状の突起部12とリング部13とからなり、突起部12がチャンバ1の中心側に延びるようにリング部13が設けられている。これにより、被エッチング部材11はプラズマアンテナ8の電気の流れ方向である周方向に対して構造的に不連続な状態とされている。
【0028】
なお、プラズマアンテナ8の電気の流れに対して不連続状態にする構成としては、被エッチング部材を格子状に形成したり、網目状に形成する等の態様が挙げられる。
【0029】
被エッチング部材11の上方におけるチャンバ1の周囲にはチャンバ1の内部にハロゲンである塩素を含有する作用ガス(Cl2ガス)21を供給するノズル14が周方向に等間隔で複数(例えば8箇所:図には2箇所を示してある)接続されている。ノズル14には流量及び圧力が制御される流量制御器15を介してCl2ガス21が送られる。流量制御器15によりチャンバ1内に供給されるCl2ガス21の量を制御することで、チャンバ1内のガスプラズマ密度を制御している。
【0030】
なお、反応に関与しないガス等は排気口18から排気され、天井板7によって塞がれたチャンバ1の内部は真空装置19によって真空引きすることにより所定の真空度に維持される。
【0031】
ここで、作用ガスに含有されるハロゲンとしては、フッ素、臭素及びヨウ素等を適用することが可能である。ただ、本形態ではハロゲンとして安価なCl2ガスを用いたことによりランニングコストの低減を図ることができる。
【0032】
かかる装置を使用して、基板3上に金属膜を形成する場合には、基板3をサセプタ2上に載置した状態でノズル14からCl2ガス21をチャンバ1の内に供給するとともに、プラズマアンテナ8から高周波電磁波をチャンバ1の内に入射することで、Cl2ガス21をイオン化してガスプラズマ23を発生させ、Clラジカルを生成する。
【0033】
ここで、ガスプラズマ23が被エッチング部材11に作用することにより、被エッチング部材11を加熱する(例えば300℃〜700℃)と共に、被エッチング部材11にエッチング反応を生じさせる。このエッチング反応により被エッチング部材11の材料である金属と塩素との化合物であるガス状の前駆体24が形成される。
【0034】
前駆体24は、前記被エッチング部材11よりも低温部となっている基板3の被成膜部3a(詳細は後述する。)の表面に吸着され、この吸着状態の前駆体24には塩素ラジカルが作用して還元する。この結果、基板3の被成膜部3aには被エッチング部材11の材料である金属の膜が形成される。
【0035】
このように、本実施形態の金属膜作製装置は、前駆体24が基板3の相対的に低温に制御された部位に吸着されると共に塩素ラジカルの作用で金属化されるという特徴を有し、このような特徴を利用して基板3の被成膜部3aに金属膜を形成するものである。すなわち、本実施形態の金属膜作製装置では、前駆体24が基板3の相対的に高温となる部位において吸着され難く、そのような部位に対して金属膜が形成され難くなる。
【0036】
図2は、図1のサセプタ及び基板を抽出した要部拡大図である。図示するように、基板3の周縁部3b以外の被成膜部3aがサセプタ2の載置面2aに載置されている。サセプタ2は、その載置面2aの半径が基板3の半径よりも所定の長さ分だけ短い円板状の部材であり、この所定の長さは周縁部3bの幅Wと等しくなっている。すなわち、サセプタ2は、載置面2aに基板3が同軸上に載置されると、基板3の周縁部3bがサセプタ2の載置面2aから突出するよう形成されている。
【0037】
ここで、上述した状態でサセプタ2上に載置された基板3に成膜を実行する際においては、サセプタ2に当接する部分の基板3は、温度制御手段6により被エッチング部材11よりも低温、詳細には100℃〜300℃になるように制御されている。その一方で、サセプタ2の半径方向に突出した基板3の周縁部3bがプラズマ環境下に直接さらされるため、基板3の周縁部3bの表面及び裏面からの入熱により、基板3の周縁部3bの温度が局所的に上昇する。この結果、基板3の周縁部3bだけが被成膜部3aと比べて相対的に高温となるように制御することができる。図3には、成膜状況下での基板3における被成膜部3a及び周縁部3bの温度分布状況を示す。図3(a)には、基板3の周縁部3bはサセプタ2から遠ざかる領域ほど高温となっていることが各等温領域T0、T1、T2、T3、T4(T0<T1<T2<T3<T4)により示されている。これは、被成膜部3aがサセプタ2の載置面2aに当接しており、この載置面2aを介して温度制御手段6により所定温度に維持されているからである。つまり、基板3の被成膜部3aを所定温度に制御することができるため、基板3の被成膜部3aの温度をその周縁部3bの温度よりも低温とすることが可能となる。
【0038】
この結果、基板3の周縁部3bの表面には前駆体24が吸着され難く、基板3の被成膜部3aの表面に前駆体24が吸着されて金属膜が形成される。すなわち、基板3の被成膜部3aの表面に対して金属膜を形成する工程と、基板3の周縁部3bの表面に形成された金属膜を除去する工程とを同時に実施したことと同様の効果を得ることができる。これにより基板3から半導体デバイスを形成するまでの全工程数を従来よりも削減することができ、半導体デバイスの生産性を向上することができる。
【0039】
なお、基板3の周縁部3bの幅Wは任意に設定することができるが、数mm程度であることが望ましい。これは、以下に説明するように、基板3の被成膜部3aに金属膜が均一の膜厚で形成されることを考慮したからである。
【0040】
図3(a)には基板3の周縁部3bの幅Wを十分に確保した基板3が示されている。すなわち、基板3の周縁部3bがサセプタ2の載置面2aから十分に突出している場合、基板3の被成膜部3aにおける各等温領域T0、T1、T2は基板3の表面とほぼ平行になっている。つまり、すなわち基板3の被成膜部3aの表面の温度は一様になっているため、金属膜も均一な厚さで形成される。
【0041】
一方、図3(b)には、基板3の周縁部3bの幅Wを十分に確保していない基板3が示されている。図示するように、基板3の被成膜部3aの周縁部3b側における各等温領域T0、T1、T2、T3は図3(a)に示した各等温領域T0、T1、T2、T3のように平行になっていない。つまり、基板3の被成膜部3aの周縁部3b近辺の温度は一様になっておらず、金属膜は不均一な厚さで形成される。
【0042】
したがって、基板3の周縁部3bの幅Wは、基板3の被成膜部3aの温度が一様となるよう十分に長く確保されていることが好ましい。本実施形態では、基板3の厚さが0.725mmであり周縁部3bの曲率半径Rはその半分の0.3625mmであることから、幅Wは曲率半径Rよりも大きい0.5mm乃至5mm程度であることが好ましく、1.5mm程度であることが最も好ましい。
【0043】
〈実施形態2〉
実施形態1では、温度制御手段6がサセプタ2の載置面2aを介して基板3の被成膜部3aの温度を制御したが、逆に、温度制御手段6が基板3の周縁部3bの温度を制御するようにしてもよい。基板3の周縁部3bが相対的な高温部に、基板3の被成膜部3aが相対的な低温部になればよいからである。
【0044】
図4は、実施形態2に係る金属膜作製装置のサセプタ及び基板を抽出した要部拡大図である。実施形態2に係る金属膜作製装置の各構成のうち、このサセプタ以外の構成は実施形態1に係る金属膜作製装置の各構成と同一である。したがって同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
図示するように、サセプタ2Aは、内径が基板3の直径よりも短く且つ外径がその直径よりも長い円筒状の部材(円筒体)であり、その上部開口端面は中心に向かい傾斜するようにテーパ状に形成されている。このテーパ状の上部開口端面(載置面2a)には、基板3の周縁部3bが載置されている。
【0046】
これにより、温度制御手段6はサセプタ2Aの載置面2aを介して基板3の周縁部3bの温度を直接的に加熱できるため、当該温度を基板3の被成膜部3aの温度よりも高温に保持することができる。この結果、基板3の周縁部3bの表面には金属膜が形成されずに、基板3の被成膜部3aの表面には前駆体24が吸着されて、Clラジカルが作用することにより金属膜が形成されるという実施形態1と同様の作用・効果を得る。
【0047】
なお、本実施形態に係るサセプタ2Aと、実施形態1に係るサセプタ2とを組み合わせて一つのサセプタとしてもよい。これにより基板3の被成膜部3aの表面近傍の温度を一様に保持することができると共に、基板3の被成膜部3aとその周縁部3bとの温度差をより大きくすることができる。この結果、基板3の周縁部3bの表面に金属膜が形成されることを確実に防止することができ、基板3の被成膜部3aの表面に均一な膜厚の金属膜を形成することができる。
【0048】
〈実施形態3〉
実施形態1及び実施形態2では、温度制御手段6は、サセプタ2、2Aの載置面2aを介して直接的に基板3の温度制御をしたがこれに限定されず、間接的に温度制御をしてもよい。
【0049】
図5は、実施形態3に係る金属膜作製装置の概略を示す正面図である。なお、実施形態3に係る金属膜作製装置のうち、実施形態1に係る金属膜作製装置と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
本実施形態に係る金属膜作製装置では、基板3の周縁部3bはレーザー光により加熱される。具体的には、チャンバ1の底面の一部にはレーザー光が透過可能なレーザー光入射窓30が設けられている。このレーザー光入射窓30の天井板7側の面には、複数のピンからなるサセプタ2Bが配設され、これらのピンの先端部には基板3が載置されている。
【0051】
一方、レーザー光入射窓30の下方には、基板3の軸心に沿いチャンバ1の下方に向けてレーザー光を照射するレーザー光照射装置31(温度制御手段)が配設されている。また、その軸心上には、照射されたレーザー光を反射するミラー32が配設されている。ミラー32は、その鏡面が基板3に対して所定角度傾斜した状態で回動自在に配設されており、この所定角度は、レーザー光照射装置31からのレーザー光がミラー32の鏡面に反射して基板3の周縁部3bに照射されるよう設定されている。
【0052】
レーザー光照射装置31からレーザー光が照射されている状態でミラー32が回動すると、基板3の周縁部3b全体にレーザー光が照射される。これによりレーザー光照射装置31は基板3の周縁部3bの温度を上昇させて、基板3の被成膜部3aの温度よりも高温に保持することができる。この結果、基板3の周縁部3bの表面には金属膜が形成されずに、基板3の被成膜部3aの表面には前駆体24が吸着されて、Clラジカルが作用することにより金属膜が形成されるという実施形態1と同様の作用・効果を得る。
【0053】
〈実施形態4〉
実施形態1乃至実施形態3では、基板3の周縁部3bに金属膜が成膜され難くするために、基板3の周縁部3bの温度が基板3の被成膜部3aの温度よりも高温となるように温度制御を行った。しかしながら、このような温度制御のみならず、基板3の周縁部3b近傍ではハロゲンガス又はハロゲンラジカルがリッチな雰囲気となるようにすることで、基板3の周縁部3bには金属膜が成膜され難くなるようにしてもよい。
【0054】
具体的には、金属膜作製装置にハロゲンガス又はハロゲンラジカルを基板3の周縁部3b近傍に噴射するハロゲンガス供給手段を設ける。そして、金属膜の成膜プロセスにおいて、基板3の周縁部3b近傍にハロゲンガス又はハロゲンラジカルを噴射することで、基板3の周縁部3bには、金属膜が成膜され難くなる。なぜならば、基板3の周縁部3bの表面にMCl(ad)が吸着し、ハロゲンラジカルが作用することにより金属が残ったとしても、基板3の周縁部3b近傍はハロゲンラジカルがリッチな雰囲気であるため、当該金属がハロゲンラジカルによりエッチングされるからである。すなわち被エッチング部材11で生じていたエッチングと同様のことが基板3の周縁部3b近傍でも生じるため、基板3の周縁部3bの表面には金属膜が成膜され難く、一方、基板3の被成膜部3aの表面には金属膜が形成され、この結果、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は半導体デバイスを製造するため装置等の製造、販売に関する産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施形態1に係る金属膜作製装置の概略を示す正面図である。
【図2】図1のサセプタ及び基板を抽出した要部拡大図である。
【図3】成膜状況下での基板における被成膜部及び周縁部の温度分布状況を示す図である。
【図4】実施形態2に係る金属膜作製装置のサセプタ及び基板を抽出した要部拡大図である。
【図5】実施形態3に係る金属膜作製装置の概略を示す正面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 チャンバ
2、2A、2B サセプタ
2a 載置面
3 基板
3a 被成膜部
3b 周縁部
4 ヒータ
5 冷媒流通手段
6 温度制御手段
11 被エッチング部材
24 前駆体
30 レーザー光入射窓
31 レーザー光照射装置
32 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器であるチャンバの内部において、ハロゲンを含有する作用ガスをプラズマ化して得るハロゲンラジカルで、ハロゲン化物を生成し得る金属を含む材料で形成した被エッチング部材をエッチングして前記金属とハロゲンとからなる前駆体を形成する一方、この前駆体を前記被エッチング部材の温度よりも低温の基板に吸着させ、その後前記前駆体を前記ハロゲンラジカルで還元して前記金属成分を析出させることにより所定の金属膜を形成する金属膜作製装置であって、
前記基板の周縁部の温度を当該周縁部以外の被成膜部の温度よりも高温に保持する温度制御手段を具備することを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項2】
請求項1に記載する金属膜作製装置において、
前記基板を載置すると共にその載置面の半径が前記基板の半径よりも短いサセプタを具備し、
前記温度制御手段は、前記サセプタの載置面を介して前記基板の被成膜部の温度を前記基板の周縁部の温度よりも低温に保持することを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項3】
請求項1に記載する金属膜作製装置において、
前記基板の周縁部が載置される載置面を有するサセプタを具備し、
前記温度制御手段は、前記サセプタの載置面を介して前記基板の周縁部の温度を前記基板の被成膜部の温度よりも高温に保持することを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項4】
請求項3に記載する金属膜作製装置において、
前記サセプタは、内径が前記基板の直径よりも短く且つ外径が前記直径よりも長い円筒体であり、
前記載置面は、中心に向かい傾斜するようテーパ状に形成された前記円筒体の上部開口端面であり、
前記基板の周縁部は前記上部開口端面に載置されることを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項5】
請求項1に記載する金属膜作製装置において、
前記温度制御手段は、前記基板の周縁部にレーザー光を照射して当該周縁部の温度を前記被成膜部の温度よりも高温に保持するレーザー光照射装置であることを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項6】
真空容器であるチャンバの内部にハロゲン化物を形成する金属を含む材料で形成した被エッチング部材を配設すると共に当該被エッチング部材にハロゲンガスをプラズマ化して得られるハロゲンラジカルを作用させることにより金属とハロゲンとの化合物である前駆体を形成する一方、
基板を前記チャンバ内に収納した状態でその周縁部以外の被成膜部の温度を前記被エッチング部材よりも低温に保持し且つ前記周縁部の温度を前記被成膜部の温度よりも高温に保持して前記前駆体を前記被成膜部の表面に吸着させ、前記ハロゲンガスのラジカルを作用させることにより前記被成膜部の表面に前記金属の膜を形成することを特徴とする金属膜作製方法。
【請求項7】
真空容器であるチャンバの内部にハロゲン化物を形成する金属を含む材料で形成した被エッチング部材を配設すると共に当該被エッチング部材にハロゲンガスをプラズマ化して得られるハロゲンラジカルを作用させることにより金属とハロゲンとの化合物である前駆体を形成する一方、
基板を前記チャンバ内に収納した状態でその温度を前記被エッチング部材よりも低温に保持して前記前駆体を前記基板の表面に吸着させると共に前記ハロゲンガスのラジカルを作用させることにより前記基板に前記金属の膜を形成するに際し、
前記基板の周縁部近傍に前記ハロゲンガス又はそのラジカルを供給することを特徴とする金属膜作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−150673(P2008−150673A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340339(P2006−340339)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(506239658)株式会社フィズケミックス (37)
【Fターム(参考)】