説明

金属酸化物積層基板

【課題】本発明は、光学特性、金属酸化物膜と透明基板の密着性に優れた金属酸化物積層基板を提供することにある。
【解決手段】基材にアクリル系樹脂およびポリ乳酸系樹脂の樹脂組成物を用い、さらにハードコート層を被覆する事で表面硬度を高めて金属酸化物膜を形成することにより、光学特性、金属酸化物膜と透明基板の密着性に優れた金属酸化物積層基板が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物膜を形成してなる金属酸化物積層基板に関するものであり、詳しくは金属酸化物がガスバリア膜であり、もしくは透明導電膜が液晶ディスプレイ・プラズマディスプレイ・無機ELディスプレイ・有機ELディスプレイ・電子ペーパー等の透明電極、太陽電池の光電変換素子の窓電極、透明タッチパネル等の入力装置の電極、電磁シールドの電磁遮蔽膜、透明電波吸収体、紫外線吸収体等に好適に用いられ、光学特性、導電性、透明導電膜との密着性およびシート抵抗値の安定性に優れた金属酸化物積層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
透明樹脂基材上にアルミニウム、ケイ素、チタン、インジウム、亜鉛などの金属酸化物を真空蒸着法やスパッタリング法により積層することが広く検討されている。
酸化ケイ素膜や酸化窒化ケイ素膜は水蒸気や酸素の透過を阻止する高いガスバリア性を有するとともに、さらに高い透明性を有するためディスプレイ用途として期待されている。
酸化チタン膜は光触媒作用があり、基板、ガラス、タイルおよびレンガなどにコーティングして脱臭、消臭、防汚、除菌など身近な環境汚染物質の浄化に利用され注目されている。
【0003】
透明導電膜は可視光透過性と電気伝導性を兼ね備えた膜として広く知られており、その代表的なものとして、スズ添加酸化インジウム膜(以下「ITO膜」という)が挙げられる。ITO膜を透明基材上に積層した積層体は、電極、通電による発熱体、電磁波の遮蔽材や透光体として広く用いられている。透光体の用途としては、自動車、航空機や、建物の窓、スクリーン、モニター等の電磁波シールド板、液晶表示基板等がある。透光体の形状としては、使用する用途に応じた平面形状や曲面形状等がある。透明基材上にITO膜を形成する手段としては、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が知られている。
【0004】
このような透光体の基材としては、これまでガラスが主に用いられてきたが、需要や用途が増えるにつれ、加工性や生産性の向上が求められるようになってきた。そのため近年、ガラスに比べ軽量で加工性・生産性に優れたプラスチックが注目されポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート、環状オレフィン樹脂などが用いられるようになってきた。液晶ディスプレイに用いられる電極基板では、全光線透過率が同じであっても複屈折がより小さい高分子材料成形体が必要とされ、さらに近年、液晶ディスプレイが大型化し、それに必要な高分子光学材料成形品が大型化するにつれて、外力の偏りによって生じる複屈折の分布を小さくするために、外力による複屈折の変化、即ち光弾性係数の小さい材料が求められている。
【0005】
中でもアクリル系樹脂は、その透明性の高さから幅広く用いられており、基材に使用する場合、基材とITO膜との密着力不足を補うために、アクリル系樹脂基材とITO膜との間に3次元架橋したアクリル系樹脂系の中間層を介することが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。また、ITO膜とアクリル基材を直接密着させる試みとして、アクリル基材においてメチルメタクリレートを主成分としてエチレングリコールジアクリレートなどを共重合している(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかし、アクリル系樹脂基材にITO膜を形成してなる透明導電膜基板は実用化には至っておらず、基材とITO膜との密着性不良、基材の変形によるITO膜の破壊のため、抵抗値の安定性が保たれないものと考えられる。
【特許文献1】特開昭62−71111号公報
【特許文献2】特開平10−244629号公報
【特許文献3】特開昭62−173248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、透明樹脂基板、その中でも特に外力による複屈折の変化、即ち光弾性係数の小さいアクリル系樹脂およびポリ乳酸系樹脂からなる透明基板上にハードコート層を設け、その上に金属酸化物膜を形成することにより、光学特性、金属酸化物膜と透明基板の密着性に優れた金属酸化物積層基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、基材に極性基を有しているアクリル系樹脂およびポリ乳酸系樹脂の樹脂組成物を用い、その透明樹脂基板にハードコート処理を施したこの透明基板上に金属酸化物膜を形成することにより、光学特性、金属酸化物膜と透明基板の密着性に優れた金属酸化物積層基板が出来ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)アクリル系樹脂(a)50〜99.9質量%、およびポリ乳酸系樹脂(b)50〜0.1質量%からなる樹脂組成物の透明基板に片面又は両面に、1種以上のハードコート層が被覆され、該ハードコート層上に、金属酸化物膜が形成されてなる金属酸化物膜積層基板、
(2)金属酸化物膜が、ガリウム、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズ、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、チタン、アンチモン、イリジウム、レニウム、セリウム、ジルコニウム、スカンジウム、及びイットリウムから選ばれる元素を少なくとも1種以上を含む事を特徴とする(1)に記載の金属酸化物膜積層基板、
(3)金属酸化物膜が、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素又はこれらの2種以上からなる無機バリア層の薄膜であることを特徴とする(1)または(2)に記載の金属酸化物膜積層基板、
(4)金属酸化物膜が、スズ添加酸化インジウム膜、亜鉛添加酸化インジウム膜からなる透明導電膜であることを特徴とする(1)または(2)に記載の金属酸化物膜積層基板、
(5)透明基板が、フィルム、もしくはシートであることを特徴とする(1)〜(4)に記載の金属酸化物膜積層基板であることを特徴とする(1)〜(4)に記載の金属酸化物膜積層基板、
(6)全光線透過率が70%以上、シート抵抗値が100Ω/□以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の金属酸化物膜積層基板のディスプレイ用透明電極への使用、
である。
【発明の効果】
【0010】
アクリル系樹脂およびポリ乳酸系樹脂からなる樹脂組成物を用いる事でハードコート層の形成を容易にし、さらにハードコート層を被覆する事で表面硬度が高まり金属酸化物膜の形成を容易にし、光学特性、金属酸化物膜と透明基板の密着性に優れた金属酸化物膜積層基板を得る事ができる。さらに、得られた金属酸化物積層基板はディスプレイ用透明電極に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、アクリル系樹脂(a)およびポリ乳酸系樹脂(b)からなる樹脂組成物の透明基板上にハードコート処理を施し、この透明基板上に金属酸化物膜が形成されている金属酸化物膜積層基板である。
本発明におけるアクリル系樹脂(a)としては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、及びアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルから選ばれる1種以上の単量体を重合したものが挙げられる。なかでも、メタクリル酸メチルの単独重合体又は他の単量体との共重合体が好ましい。
【0012】
メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、他のメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アルキルエステル類、スチレン及びo−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン,p−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類等が挙げられる。
【0013】
メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の中でも、特にアクリル酸アルキルエステル類は耐熱分解性に優れ、またアクリル酸アルキルエステル類を共重合させて得られるメタクリル系樹脂は成形加工時の流動性が高く好ましい。メタクリル酸メチルにアクリル酸アルキルエステル類を共重合させる場合のアクリル酸アルキルエステル類の使用量は、耐熱分解性の観点から0.1質量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15質量%以下であることが好ましい。0.2〜14質量%であることがさらに好ましく、1〜12質量%であることがとりわけ好ましい。このアクリル酸アルキルエステル類の中でも、特にアクリル酸メチル及びアクリル酸エチルは、それを少量メタクリル酸メチルと共重合させても上記改良効果は著しく最も好ましい。上記メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体は一種又は二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0014】
アクリル系樹脂の重量平均分子量は5万〜20万のものが望ましい。重量平均分子量は成形品の強度の観点から5万以上が望ましく、成形加工性、流動性の観点から20万以下が望ましい。さらに望ましい範囲は7万〜15万である。また、アイソタクチックポリメタクリル酸エステルとシンジオタクチックポリメタクリル酸エステルを同時に用いることもできる。
【0015】
アクリル系樹脂を製造する方法として、例えばキャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、アニオン重合等の一般に行われている重合方法を用いることができるが、光学用途としては微小な異物の混入はできるだけ避けるのが好ましく、この観点からは懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合や溶液重合が望ましい。溶液重合を行う場合には、単量体の混合物をトルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調製した溶液を用いることができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
【0016】
重合反応に用いられる開始剤としては、一般にラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えばアゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物が用いられ、また特に90℃以上の高温下で重合を行わせる場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上であり、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤等が好ましく、具体的には1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。これらの開始剤は0.005〜5質量%の範囲で用いられる。重合反応に必要に応じて用いられる分子量調節剤は、一般的なラジカル重合において用いる任意のものが使用され、例えばブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。これらの分子量調節剤は、重合度が上記の範囲内に制御されるような濃度範囲で添加される。アクリル系樹脂は、分子量、組成等が異なる2種以上のものを同時に用いることができる。
【0017】
ポリ乳酸系樹脂(b)の製造方法としては、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法等を採用することができる。本発明におけるポリ乳酸系樹脂(b)は乳酸、すなわちL−乳酸、D−乳酸を主とする重合体である。ポリ乳酸系樹脂(b)において、L−乳酸単位と、D−乳酸単位の構成モル比は、L体とD体あわせて100%に対し、L体ないしD体いずれかが85%以上が好ましく、更に好ましくは一方が90%以上であり、更に好ましくは一方が94%以上の重合体である。本発明においてはL−乳酸を主体とするポリL−乳酸とD−乳酸を主体とするポリD−乳酸を同時に用いることもできる。
【0018】
ポリ乳酸系樹脂(b)は、L体ないしD体以外の乳酸誘導体モノマーまたは、ラクチドと共重合可能な他成分を共重合していてもよく、このような成分としてはジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が例示される。ポリ乳酸系樹脂(b)は、直接脱水縮合、ラクチドの開環重合等公知の重合法で重合することが出来る。また必要に応じてポリイソシアネートや他の結合剤を用いて、高分子量化することも出来る。
ポリ乳酸系樹脂(b)に含まれる低分子微量成分である乳酸やその他の酸等は、残存することにより黄変着色の原因となるため、含量は5000ppm以下が好ましく、より好ましくは1000ppm以下、最も好ましくは500ppm以下である。
ポリ乳酸系樹脂(b)の好ましい質量平均分子量範囲は、機械的性質の観点から質量平均分子量が30,000以上であることが好ましく、加工性の観点から1000,000以下であることが好ましい。更に好ましくは50,000〜500,000、最も好ましくは100,000〜280,000である。
【0019】
本発明のアクリル系樹脂(a)およびポリ乳酸系樹脂(b)を含有する樹脂組成物におけるアクリル系樹脂(a)の含有割合(質量部)は、光弾性係数、強度、耐熱性等の点から50質量部以上99.9質量部以下であることが好ましく、70質量部以上98質量部以下であることがさらに好ましく、90質量部以上95質量部以下であることがとりわけ好ましい。この樹脂組成物中の組成において、透明性を損なわない限り、ポリ乳酸系樹脂(b)の量が多いほどハードコート層とアクリル系樹脂(a)およびポリ乳酸系樹脂(b)を含有する樹脂組成物透明基板との密着性が向上すると考えられる。
【0020】
本発明におけるアクリル系樹脂(a)およびポリ乳酸系樹脂(b)を含有する樹脂組成物の透明基板を製造する際、必要に応じて染料、顔料、ヒンダードフェノール系やリン酸塩等の熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、2-ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチル酸フェニルエステル系などの紫外線吸収剤、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系などの可塑剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ、またはトリグリセリド系などの離型剤、高級脂肪酸エステル、ポリオレフィン系などの滑剤、ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩などの帯電防止剤、リン系、リン/塩素系、リン/臭素系などの難燃剤、反射光のぎらつきを防止するためにメタクリル酸メチル/スチレン共重合体ビーズなどの有機系光拡散剤、硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルクなどの無機系光拡散剤、補強剤として多段重合で得られるアクリル系ゴム等を使用してもよい。これらの添加剤を配合するときには、公知の方法で実施しうる。例えば、単量体混合物にあらかじめ添加剤を溶解しておき重合する方法や、溶融状態、ビーズ状あるいはペレット状の樹脂に添加剤をミキサー等でドライブレンドし、押出し機を用いて混練、造粒する方法などが挙げられる。
【0021】
本発明のアクリル系樹脂(a)およびポリ乳酸系樹脂(b)を含有する樹脂組成物の透明基板は、フィルム、もしくはシートであることが好ましい。フィルム・シートは、厚さの違いのみであり、フィルムは300μm以下の厚さのものを言い、シートは300μmを超えるものである。透明樹脂基板の厚さは、0.01〜10.0mmの範囲のフィルムまたはシートであることが好ましい。0.01〜10.0mmの範囲のフィルムまたはシートは、パネル加工時に変形しにくく取り扱いやすい。また、基板の荷重による変形も生じにくくなるので、液晶表示素子を組み立てた際に、二重像が顕著になり表示品位が損なわれにくくなる。さらに好ましい厚さは0.1〜5.0mmの範囲である。
【0022】
本発明におけるアクリル系樹脂(a)およびポリ乳酸系樹脂(b)を含有する樹脂組成物の透明基板のフィルムまたはシートは透明性が必須であり、その透明性の指標として全光線透過率が80%以上、ヘイズ値が5%以下であることが好ましい。さらに好ましくは全光線透過率が85%以上、ヘイズ値が2%以下である。ただし、ディスプレイ用透明電極に適しているのは70%以上であれば適用できる。
【0023】
本発明におけるアクリル系樹脂(a)およびポリ乳酸系樹脂(b)を含有する樹脂組成物の透明基板のフィルムまたはシートは光学等方性が優れるものが好ましく、リタデーション値が30nm以下、遅相軸のバラツキが40度以内、より好ましくはリタデーション値が20nm以下、遅相軸のバラツキが20度以内のものが好適である。ここで、リタデーション値は、公知の測定装置を用いて測定した波長590nmにおける複屈折の屈折率の差△nと膜厚dとの積△n・dで表されるものである。
【0024】
本発明におけるアクリル系樹脂(a)およびポリ乳酸系樹脂(b)を含有する樹脂組成物の透明基板のフィルム又はシートは光弾性係数の絶対値が3.0×10−12/Pa未満であることが好ましい。光弾性係数がこの範囲内であれば、応力による複屈折の変化が少ないため、液晶表示装置等に使用した場合にコントラストや画面の均一性に優れる。
【0025】
光弾性係数は種々の文献に記載があり(例えばMacromolecules 2004,37,1062−1066参照)、下式により定義される。
|CR|=|Δn|/σR |Δn|=|n1−n2|
(式中、|CR|:光弾性係数の絶対値、σR:伸張応力、|Δn|:複屈折の絶対値、n1:伸張方向の屈折率、n2:伸張方向と垂直な屈折率)
光弾性係数の値がゼロに近いほど外力による複屈折の変化が小さいことを示しており、各用途において設計された複屈折の変化が小さいことを意味する。
【0026】
本発明における金属酸化物膜に用いる材料としては、ガリウム、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズ、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、チタン、アンチモン、イリジウム、レニウム、セリウム、ジルコニウム、スカンジウム、及びイットリウムから選ばれる元素を少なくとも1種以上を含む金属酸化物膜を利用することができる。
金属酸化物膜は、無機バリア層として用いることが好ましい。
無機バリア層に用いる材料としては、ケイ素やアルミニウムの金属酸化物、金属酸化窒化物、又はこれらの混合物で構成された薄膜であることが好ましい。具体的な無機バリア層の構成成分としては、一般的に真空成膜される材料であれば原則的に使用可能であり、中でもセラミック材料を用いると、透明性の高い薄膜を形成することができる。セラミック材料としては、SiOx、AlOx、SiOxNy、SiOxNyCz、SiNxCy、AlOxNy、AlOxNyCz、及びAlNxCy等を例示することができる。ここで、x、y、zは、それぞれ数を表す。
【0027】
これらの金属化合物材料の中でも、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、及び、これらの混合材料が無機バリア層として好ましい。さらに好ましくは、SiOx(ただし、1<x≦2)膜であり、表面硬度が硬く、非導電性である。この中で、ガスバリア性、透明性、表面平滑性、屈曲性、膜応力、コスト等の点からケイ素原子数に対する酸素原子数の割合xが1.5〜2.0のケイ素酸化物を主成分とする金属酸化物が良好である。ケイ素酸化物のケイ素原子数に対する酸素原子数の割合は、X線光電子分光法、X線マイクロ分光法、オージェ電子分光法、ラザホード後方散乱法等により分析、決定される。この割合の範囲であると、透明性が良好である。更に上記ケイ素酸化物中に、酸化マグネシウム及び/又はフッ化マグネシウムを全体の重量に対して5〜30質量%含有すると、透明性をより高くすることができる。
無機バリア層の厚さは1〜1000nmが好ましく、より好ましくは2〜100nm、さらに好ましくは3〜50nmである。
【0028】
さらに、金属酸化物膜は、透明導電膜として使用することも好ましい。
透明導電膜に用いる材料としては、スズ、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、マグネシウムのうち少なくとも1種類を含む酸化インジウム膜、アンチモン、フッ素、亜鉛のうち少なくとも1種類を含む酸化スズ膜を利用することができる。
酸化インジウム膜に添加されるスズ、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、マグネシウムの含有量は、これらのうち1種類を添加する場合は、インジウムに対するこれらの材料の原子比(Sn/In,Ge/In,Zn/In,Ga/In,Mg/In)をいずれも0.5〜20.0%が好ましい。より好ましくは5〜10%が好ましい。中でも導電性と透明性のバランスがよいスズが最も好ましい。
このような比率で添加すると、膜の導電性及び透明性を良好に維持できる。また、これらの材料の複数種類を添加する場合は、添加する材料の全体の添加量をインジウムに対して20.0%以下が好ましい。
【0029】
酸化スズ膜に添加されるアンチモン、フッ素、亜鉛の含有量は、これらのうち1種類を添加する場合は、インジウムに対するこれらの材料の原子比(Sb/Sn,F/Sn,Zn/Sn)をいずれも0.5〜20.0%が好ましい。このような比率で添加すると、膜の導電性及び透明性を良好に維持できる。また、これらの材料の複数種類を添加する場合は、添加する材料の全体の添加量をスズに対して20.0%以下が好ましい。
これらの透明導電性金属酸化物膜の膜厚は、10nm〜1000nmの範囲が好ましい。この膜厚の範囲では、用途によって異なるが、可撓性が保たれた連続的な膜を得る事が出来る。さらに、本発明の透明導電膜の膜厚は用途に応じて20〜500nmとすることが望ましい。
【0030】
金属酸化物膜積層基板のシート抵抗値は、用途によって異なるが、5〜10000Ω/□の範囲のものが導電性材料として好ましい。さらに好ましくは10〜300Ω/□の範囲のものが好ましい。ただし、ディスプレイ用透明電極に適しているのは10〜100Ω/□の範囲のものが好ましい。
【0031】
本発明のハードコート層としては、例えば、分子中に少なくとも2個の官能基を有する化合物からなる被膜を硬化したもの等が挙げられる。ハードコート層を形成するための官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基のような不飽和二重結合を有する基、エポキシ基やシラノール基のような反応性の置換基等が挙げられる。なかでも、不飽和二重結合を有する基は、紫外線や電子線のような活性化エネルギー線の照射により容易に硬化しうるので、好ましく用いられる。不飽和二重結合を有する基を分子中に少なくとも2個有する化合物としては、例えば、多官能アクリレート化合物等が挙げられる。ここで、多官能アクリレート化合物とは、分子中に少なくとも2個のアクリロイルオキシ基及び/又はメタクロイルオキシ基を有する化合物をいう。以下、アクリロイルオキシ基とメタクロイルオキシ基とをまとめて(メタ)アクリロイルオキシ基と呼ぶ。
【0032】
多官能アクリレート化合物としては、例えば、次のようなものを挙げることができる。エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ホスファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたホスファゼン系(メタ)アクリレート化合物、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個の水酸基を有するポリオール化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物、分子中に少なくとも2個のカルボニル基を有するカルボン酸ハロゲン化物と少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリオール化合物とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート化合物等である。
【0033】
これらの化合物は、それぞれ単独で又は2種以上混合して用いることができる。またこれら各化合物の2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。
ハードコート層は、通常の方法、例えば、ハードコート剤を樹脂基材の表面に塗布することにより被膜とし、これに活性化エネルギー線を照射すること等により設けることができる。塗布方法としては、例えば、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ディッピングコート法、スピンコート法、ダイコート法、フローコート法、スプレーコート法等が挙げられる。ハードコート層の厚みは、0.5〜50μmが好ましく、さらに好ましくは1〜20μmで、より好ましくは2〜10μmである。その厚みが0.5〜50μmであると、耐擦傷性が良く、亀裂の発生が起こりにくくなる。
【0034】
本発明のハードコート層は、帯電防止性のハードコート層であってもよい。帯電防止性のハードコート層としては、例えば、導電性粒子が分散されたハードコート層、界面活性剤を含有するハードコート層等が挙げられる。導電性粒子が分散されたハードコート層としては、不飽和二重結合を少なくとも2個有する化合物が硬化されてなる硬化被膜に、導電性粒子が分散されてなる層等が挙げられる。導電性粒子としては、例えば、スズ、アンチモン、チタン、インジウムの如き金属の酸化物や、これらの金属の複合酸化物、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)やアンチモンドープ酸化スズ等の粒子が挙げられる。導電性粒子の粒子径は、一次粒子径で通常、0.001〜0.1μm程度が好ましい。この範囲内では、透明性が維持される傾向にある。
【0035】
塗膜の耐摩耗性の向上と硬化時における体積収縮率の減少のために、無機微粒子を含有させても構わない。無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン等の金属酸化物からなる微粒子が好ましい。かかる無機微粒子の含有量は20〜60質量%が好ましく、無機微粒子の平均粒径は100μm以下のものが好ましい。この含有量の範囲内では、製品フィルムのカール発生を抑えられ、ハードコート樹脂の伸縮性不良と屈曲によるクラックの発生も低減できる。また、この平均粒径は100nm以上であることが好ましい。
反射防止層のハードコート性(傷防止性)向上のために、無機微粒子表面に光重合反応性を有する感光性基を導入したものが好ましい。この感光性基としては単官能性又は多官能性アクリレートが好ましい。
【0036】
本発明におけるハードコート層は、その表面が鉛筆硬度で4H以上の硬さを有することが好ましい。
本発明の透明導電性金属酸化物積層基板は、ハードコート層を施した透明樹脂基板に透明導電膜を形成できるが、透明樹脂基板に無機バリア層を介して透明導電膜を形成しても構わない。透明樹脂基板の片面又は両面に層構成を有しても構わない。
無機バリア層は、透明樹脂基板に耐スクラッチ性、表面硬度、耐透湿性、耐透気性、耐熱性、耐溶剤性等の性質を付与するのに貢献する。透明樹脂基板に無機バリア層を介して透明導電膜を形成する際、耐スクラッチ性及び表面硬度を一段と向上させる役割を果たすと共に、透明導電性金属酸化物膜の形成時、熱によるダメージをさらに軽減化させていると考えられる。
【0037】
さらに透明導電性金属酸化物積層基板に最外層として、任意の樹脂又は無機化合物の層を1層又は2層以上積層してもよい。このような最外層には、保護膜、反射防止膜、フィルター等の役割、又は、液晶の視野角の調整、曇り止め等の機能を持たせることができる。
上記金属酸化物膜積層基板は、全光線透過率が70%以上、ヘイズ値が10%以下であることが好ましく、この範囲では、透明感が良好である。さらに好ましくは全光線透過率が80%以上、ヘイズ値が5%以下である。ただし、ディスプレイ用透明電極に適しているのは70%以上であれば適用できる。
金属酸化物膜を形成してなる金属酸化物膜積層基板の製造方法において、成膜法は、特に限定するものではなく、スパッタリング法や、真空蒸着法、CVD法を用いることもできるが、好適な方法は、スパッタリング法やイオンプレーティング法によるものである。
【実施例】
【0038】
以下に実施例、比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
<評価法>
(A)無機バリア膜を有したアクリル系樹脂積層基板の評価
(A−1)全光線透過率、ヘイズ
JIS K 6711に準拠して評価した。
(A−2)面内レタデーション(Re)の測定
大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100を用いて、回転検光子法により23℃における面内レタデーション(Re)を測定した。
(A−3)無機バリア膜の状態
無機バリア膜を有したアクリル系樹脂積層基板表面を顕微鏡で800倍に拡大し、無機バリア膜の亀裂が認められない場合は「○」(良好)と評価し、亀裂が認められる場合は「×」(不良)と評価した。
(A−4)密着性評価
密着性の評価方法として粘着テープ(ニチバン製1.8cm幅のセロテープ)の粘着面を透明導電性積層基板の無機バリア膜に密着させ、引き剥がす剥離テストにより評価する。無機バリア膜が全く剥離しない場合を「○」(良好)とし、全面剥離した場合を「×」(不良)と表示した。
【0039】
(A−5)光弾性係数の測定
Macromolecules 2004,37,1062-1066に詳細の記載のある複屈折測定装置を用いた。レーザー光の経路にシート片の引張装置を配置し、23℃で伸張応力をかけながら複屈折を測定した。伸張時の歪速度は20%/分(チャック間:30mm、チャック移動速度:6mm/分)、試験片幅は7mmで測定を行った。複屈折(Δn)と伸張応力(σR)の関係から、最小二乗近似により線形領域の直線の傾きをもとめ光弾性係数(CR)を計算し、光惰性係数の絶対値(|CR|)を求めた。傾きの絶対値が小さいほど光弾性係数が0に近いことを示し、好ましい光学特性であることを示す。
|CR|=|Δn|/σR
(CR:光弾性係数、σR:伸張応力、Δn:複屈折、n1:伸張方向の屈折率、n2:伸張方向と垂直な屈折率)
【0040】
(B)透明導電膜を形成してなる透明導電性積層基板の評価
(B−1)全光線透過率、ヘイズ
上記(A−1)と同様に測定した。
(B−2)面内レタデーション(Re)の測定
上記(A−2)と同様に測定した。
(B−3)ITO膜の外観評価:
透明導電性積層基板表面を顕微鏡で800倍に拡大し、ITO膜の亀裂が認められない場合は「○」(良好)と評価し、亀裂が認められる場合は「×」(不良)と評価した。
(B−4)密着性評価
密着性の評価方法として粘着テープ(ニチバン製1.8cm幅のセロテープ)の粘着面を透明導電性積層基板のITO膜に密着させ、引き剥がす剥離テストにより評価する。ITOO膜が全く剥離しない場合を「○」(良好)とし、全面剥離した場合を「×」(不良)と表示した。
(B−5)基板の変形評価:熱オーブンテスト
温度80℃の雰囲気下、約30分間静置して目視でそり・変形を評価した。透明導電性積層基板が全く変形・そりがない場合を「○」(良好)、変形・そりがわずかに認められる場合を「△」(可)とし、変形・そりが認められる場合を「×」(不良)と表示する。
【0041】
<用いた原材料>
(a)アクリル系樹脂
メタクリル酸メチル96.7質量%、アクリル酸メチル2.1質量%、及びキシレン1質量%からなる単量体混合物に、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,3-トリメチルシクロヘキサン0.0294質量%、及びn-オクチルメルカプタン0.28質量%を添加し、均一に混合する。この溶液を内容積10リットルの密閉耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した後、反応器に接続された貯層に連続的に送り出し、一定条件下で揮発分を除去し、さらに押出機に連続的に溶融状態で移送し、以下の実施例に使用したアクリル系樹脂である(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル)共重合体ペレットを得た。得られた共重合体のアクリル酸メチル含量は2.0%、重量平均分子量は102,000、ASTM-D1238に準拠して測定した230℃3.8kg荷重のメルトフロー値は2.0g/分であった。
(b)ポリ乳酸系樹脂
カーギル・ダウ(株)社製NatureWorks 4040D(質量平均分子量 約18万)を用い、ホッパードライヤーで60℃で1時間乾燥した後、真空乾燥機で60℃で24時間乾燥し、微量不純物を除去した。
【0042】
[実施例1および比較例1]
クロックナー社製 F40の射出成形機を利用し、(a)アクリル系樹脂と(b)ポリ乳酸系樹脂を表1に記載の組成で押出し、各樹脂について平板シート(80×80×2mmt)を成形温度260℃で作成した。その透明樹脂基板のシート(80×80×2mmt)について、市販のJPC製ハードコート液TKH-36Aに、シートを浸漬し、引き上げて、紫外線を照射し、ハードコート層をシート表面に形成した。ハードコート層の膜厚は約5μmに調整した。そして成膜前にあらかじめ真空乾燥機で60℃、約1時間乾燥し、水分などの微量不純物を除去した。そのシート上に無機バリア層としてSiOx(ただし、1<x≦2)膜をイオンプレーティング法により成膜した。SiOx膜の膜厚は約10nmに調整した。この金属酸化物積層基板の評価結果を表1に併記する。
【0043】
[実施例2]
無機バリア層として酸化窒化ケイ素膜(SiOxNy)をイオンプレーティング法により成膜した以外は、実施例1と同様にして金属酸化物積層基板を得た。酸化窒化ケイ素膜の厚みは100nmであった。この金属酸化物積層基板の評価結果を表1に併記する。
【0044】
[実施例3、4、5、6および比較例2]
クロックナー社製 F40の射出成形機を利用し、(a)アクリル系樹脂と(b)ポリ乳酸系樹脂を各々任意の組成で押出し、各樹脂について平板(80*80*2mmt)を作成した。成形温度は260℃で行った。その透明樹脂基板のシート(80×80×2mmt)について、市販のJPC製ハードコート液TKH-36Aに、シートを浸漬し、引き上げて、紫外線を照射し、ハードコート層をシート表面に形成した。ハードコート層の膜厚は約5μmに調整した。そして成膜前にあらかじめ真空乾燥機で60℃、約1時間乾燥し、水分などの微量不純物を除去した。各樹脂組成のシート上に、DCマグネトロンスパッタリング法により透明導電膜としてITOを製膜し、透明導電性金属酸化物積層基板を得た。透明導電膜の膜厚は約1200nmに調整した。また、このスパッタリングにおいては、質量比90/10のIn2O3/SnO2をターゲットとし、10-3Paまで排気し、体積比92.5/7.5のアルゴン/酸素を導入ガスとし、室温下でDCマグネトロンスパッタリングを行った。成膜時間は約30分とした。透明導電性金属酸化物積層基板の評価結果を表2に併記する。
【0045】
[実施例7]
実施例1で得られたSiOx膜の金属酸化物積層基板上に実施例3、4、5、6と同様にしてITO膜の透明導電性金属酸化物積層基板を得た。この透明導電性金属酸化物積層基板の評価結果を表2に併記する。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は金属酸化物膜を形成してなる金属酸化物積層基板に関するものであり、詳しくは透明導電膜を形成した透明導電性積層基板、すなわち光学特性、透明導電膜密着性、抵抗値の安定性、耐熱性に優れた透明導電性積層基板は、太陽電池の光電変換素子の窓電極、電磁シールドの電磁遮蔽膜、透明電波吸収体、透明タッチパネル等の入力装置の電極、液晶表示体,EL(エレクトロルミネセンス)発光体,EC(エレクトロクロミック)表示体等の透明電極などの基板を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(a)50〜99.9質量%、およびポリ乳酸系樹脂(b)50〜0.1質量%からなる樹脂組成物の透明基板に片面又は両面に、1種以上のハードコート層が被覆され、該ハードコート層上に、金属酸化物膜が形成されてなる金属酸化物膜積層基板。
【請求項2】
金属酸化物膜が、ガリウム、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズ、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、チタン、アンチモン、イリジウム、レニウム、セリウム、ジルコニウム、スカンジウム、及びイットリウムから選ばれる元素を少なくとも1種以上を含む事を特徴とする請求項1に記載の金属酸化物膜積層基板。
【請求項3】
金属酸化物膜が、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素又はこれらの2種以上からなる無機バリア層の薄膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化物膜積層基板。
【請求項4】
金属酸化物膜が、スズ添加酸化インジウム膜、亜鉛添加酸化インジウム膜からなる透明導電膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化物膜積層基板。
【請求項5】
透明基板が、フィルム、もしくはシートであることを特徴とする請求項1〜4に記載の金属酸化物膜積層基板。
【請求項6】
全光線透過率が70%以上、シート抵抗値が100Ω/□以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の金属酸化物膜積層基板のディスプレイ用透明電極への使用。

【公開番号】特開2008−94062(P2008−94062A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281871(P2006−281871)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】