説明

鉄筋コンクリート製の梁の接合構造

【課題】鉄筋コンクリート製の梁の梁端部における鉄筋のエネルギー吸収能力を向上させる。
【解決手段】鉄筋コンクリート製の梁50に荷重がかかり梁端部52の塑性ヒンジ部分が回転変形することよって、主筋40が伸張し降伏すると、降伏した領域が塑性変形領域となる。そして、梁端部52に引張力が作用して塑性ヒンジ状態になると、定着部材60と定着部材60との間の凹部54に露出する主筋40のアンボンド領域部42が、コンクリートに拘束されることなく、塑性変形してエネルギーを吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート製の梁の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造の梁の載荷重を増加していくと曲げ応力度が増大し、コンクリートの弾性限度を超えると、梁は接合端(最外縁)から塑性域に入る。全断面が塑性域に達すると、中立軸の一方側(例えば上面側)は塑性圧縮、他方側(例えば下面側)は塑性引張りを受ける。この状態では曲げモーメントは一定の値を保ったまま、梁はヒンジのように回転を続ける。そして、この状態のモーメントを全塑性モーメントとされ、全塑性モーメントをもつ梁の断面の力学的状態が塑性ヒンジとされている。別の言い方をすると、部材断面が荷重によって降伏することにより形成されるピン状態のヒンジとされている。
【0003】
鉄筋コンクリート構造において、一般的に地震時に入力したエネルギーは、各階の梁端部に形成される塑性ヒンジによって吸収されるように構成されている。よって、塑性ヒンジの形成が想定される部分には、脆性破壊を防ぎ、十分な耐力と回転変形能力を持たせる目的で剪断補強筋や帯筋を密に配筋することなどが行われる。
【0004】
特許文献1には、梁端部における塑性ヒンジの形成が想定される範囲を繊維補強セメント系材料により形成すると共に、梁端部間の中間部分を普通コンクリートで形成したプレキャスト梁部材で梁を構築することで、梁端部の塑性変形回転能力を増大させ建物全体の地震応答制御を可能にし、さらに梁端部のせん断補強筋量を節減しつつ変形能力を増大させ、全体として大きな地震エネルギー吸収能力を発揮させることが提案されている(特許文献1を参照)。
【0005】
ここで、梁に荷重がかかり梁端部の塑性ヒンジ部分が回転変形することよって鉄筋が伸張し降伏すると、降伏した領域が塑性変形領域となると共に、コンクリートにせん断ひび割れ(亀裂)が発生する。また、除荷重時にひび割れ部分が閉じるため、伸張し降伏した鉄筋はコンクリート断面に押し込まれる。そして、これが繰り返されることによって徐々にコンクリートとの付着特性が劣化する。つまり、梁端部の塑性ヒンジ部位の繰り返し変形による鉄筋のコンクリートに対する付着特性が劣化し、これにより鉄筋のエネルギー吸収能力が低下し、復元力特性が低下する。
【0006】
別の観点から説明すると、鉄筋コンクリート構造では、鉄骨造のように完全弾塑性の履歴特性を形成することができないので、梁に荷重がかかり梁端部の塑性ヒンジ部分が繰り返し回転変形することよって、復元力特性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3999591号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、鉄筋コンクリート製の梁の梁端部における鉄筋のエネルギー吸収能力を向上させることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、躯体と接合された鉄筋コンクリート製の梁の梁端部に設けられ、鉄筋をアンボンド状態としたアンボンド領域部と、前記アンボンド領域部の外側の前記梁に設けられ、前記鉄筋を前記梁に定着させる第一定着部材と、前記アンボンド領域部の外側の前記躯体に設けられ、前記鉄筋を前記躯体に定着させる第二定着部材と、を備える。
【0010】
請求項1の発明では、梁端部に引張力が作用して塑性ヒンジの状態になると、第一定着部材と第二定着部材との間のアンボンド領域部の鉄筋が、コンクリートを破壊することなく、或いは、コンクリートに拘束されることなく、塑性変形してエネルギーを吸収する。
【0011】
また、梁端部におけるアンボンド領域部以外の鉄筋のコンクリートへの付着特性の劣化が抑制又は防止される。
【0012】
したがって、鉄筋コンクリート製の梁の梁端部における鉄筋のエネルギー吸収能力が向上する。
【0013】
ここで、「アンボンド状態」とは、「鉄筋のコンクリートへの付着強度を実質的にゼロ、又は略ゼロとした状態」、或いは「鉄筋をコンクリートに定着させていない状態又は略定着させていない状態」とする。
【0014】
請求項2の発明は、前記アンボンド領域部は、前記梁端部に形成され、前記鉄筋が露出する凹部である。
【0015】
請求項2の発明では、鉄筋が露出する凹部によって、アンボンド状態が保障されると共に、鉄筋が自由に伸張するので、鉄筋コンクリート製の梁の梁端部における鉄筋のエネルギー吸収能力が確実に向上する。
【0016】
請求項3の発明は、前記凹部には、前記鉄筋とアンボンド状態で、前記躯体に圧縮力を伝達するブロック体が設けられている。
【0017】
請求項3の発明では、ブロック体が圧縮力の伝達を受け持つので、圧縮時における梁端部の剛性が向上する。また、凹部に露出した鉄筋の座屈が防止又は抑制される。
【0018】
請求項4の発明は、前記第一定着部材と前記第二定着部材とに、前記鉄筋が着脱可能に接合さている。
【0019】
請求項4の発明では、例えば、地震等で破損又は劣化した第一定着部材と第二定着部材との間の鉄筋を容易に交換することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鉄筋コンクリート製の梁の梁端部における鉄筋のエネルギー吸収能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一実施形態に係る鉄筋コンクリート製の梁の接合構造によって柱に接合された梁端部を示す斜視図である。
【図2】図1に示す梁端部における(A)は梁長方向に沿った垂直断面を示す断面図であり、(B)は平面図である。
【図3】図2(A)の要部を拡大した断面図である。
【図4】第一実施形態の第一変形例を示す(A)は図3に対応する断面図であり、(B)は主筋のアンボンド領域部が取り外され分解された状態の断面図であり、(C)は継手全体が一方の鉄筋側に螺合した状態の図である。
【図5】第一実施形態の第二変形例の梁端部を示す図1に対応する斜視図である。
【図6】(A)は第一実施形態の第二変形例に用いるブロック体を示す斜視図であり、(B)は第一実施形態の第三変形例に用いるブロック体を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る鉄筋コンクリート製の梁の接合構造によって柱に接合された梁端部における梁長方向に沿った垂直断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第一実施形態>
図1〜図3を用いて、本発明の第一実施形態に係る鉄筋コンクリート製の梁の接合構造について説明する。
【0023】
図1と図2とには、コンクリートQに鉄筋が埋設され補強された鉄筋コンクリート製の柱の一部を構成する立方体状の仕口ブロック部20と鉄筋コンクリート製の梁50とが一体的に構成された柱梁仕口PCaセグメント10が図示されている。そして、柱梁仕口PCa(プレキャスト)セグメント10を構成する鉄筋コンクリート製の仕口ブロック部20と鉄筋コンクリート製の梁50とが、本発明の第一実施形態に係る鉄筋コンクリート製の梁の接合構造が適用されて接合されている。
【0024】
なお、梁50の梁長(長手)方向をX方向とし、鉛直方向をZ方向とし、X方向とZ方向と直交する方向をY方向とする。また、Y方向が梁50の梁幅方向(平面視における梁長方向と直交する方向)である。
【0025】
柱梁仕口PCa(プレキャスト)セグメント10は、仕口ブロック部20のX方向両外側に梁50が接合された構成とされている。この柱梁仕口PCaセグメント10の仕口ブロック部20の上下に、柱17,19が、隙間をあけて配置され、グラウト等が注入されることによって、柱12、19と柱梁仕口PCaセグメント10とが一体化される。
【0026】
柱17、19には、鉛直方向(長手方向)に沿って配筋され、仕口ブロック部20に挿入され埋設される複数の主筋22と、主筋22と直交する方向に沿って配筋されたせん断補強筋(図示略)と、が埋設されている。
【0027】
左右の両梁50には、梁長方向(軸方向)に沿って配筋され、仕口ブロック部20を貫通するように(左右の梁50と仕口ブロック部20とに跨って)埋設された(配筋された複数の主筋40と、主筋40と直交する方向に沿って配筋されたせん断補強筋30(図2(A)参照)と、が埋設されている。
【0028】
なお、本発明が適用された左右の梁50の梁端部52の接合構造は、左右対称である以外は、同様の構成であるので、以降の説明においては、特に区別することなく説明する。
【0029】
また、仕口ブロック部20を貫通する主筋40は、梁50の鉛直方向の中央の中立軸S(図1参照)の上側と下側とにそれぞれ配筋されている。なお、以降、梁50の中立軸Sの上側にある部材には、符号の後にUを付し、下側にある部材にはLを付して説明する場合がある。但し、上下を区別して説明する必要がない場合は、U,Lを省略する。
【0030】
梁50における仕口ブロック部20と接合された梁端部52の上側と下側には凹部54U,54Lが形成されている。そして、この凹部54を主筋40U,40Lが露出するように配筋されている。なお、この主筋40における凹部54に露出した部位をアンボンド領域部42とする。
【0031】
図1、図2(A)、図3に示すように、梁端部52における凹部54の梁長方向の外側には、定着部材60が設けられ、この定着部材60によって主筋40が梁50を構成するコンクリートQに定着している。
【0032】
図2(A)と図3とに示すように、同様に、凹部54の梁長方向の外側の仕口ブロック部20には、定着部材60が設けられ、この定着部材60によって主筋40が仕口ブロック部20を構成するコンクリートQに定着している。
【0033】
なお、図3に示すように、本実施形態では、定着部材60は、機械式の定着部材とされている。更に本実施形態では、定着板62と、主筋40に装着するナット64と、が一体となった構成(例えば、定着板62とナット64とが一体に鋳造された構成)の機械式の定着金物とされている。
【0034】
<作用及び効果>
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
鉄筋コンクリート製の梁50に荷重がかかり梁端部52の塑性ヒンジ部分が回転変形することよって、主筋40が伸張し降伏すると、降伏した領域が塑性変形領域となる。
【0036】
このように梁端部52に引張力が作用して塑性ヒンジ状態になると、梁50側の定着部材60と仕口ブロック部20側の定着部材60との間の凹部54に露出する主筋40のアンボンド領域部42が、コンクリートQに拘束されることなく、塑性変形してエネルギーを吸収する。
【0037】
また、主筋40のアンボンド領域部42が塑性変形するので、アンボンド領域部42以外の部位におけるコンクリートQへの付着特性の劣化が抑制又は防止される。
【0038】
また、定着部材60に機械式定着金物を用いることによって、主筋40に生じる引張応力が、定着部材60を構成する定着板62に生じる支圧力を介して、定着部材60の周囲のコンクリートQ(梁50及び仕口ブロック部20)に、より確実に伝達される。
【0039】
したがって、鉄筋コンクリート製の梁50の梁端部52における主筋40のエネルギー吸収能力が向上する。すなわち、梁端部52に形成される塑性ヒンジによるエネルギー吸収効果が向上する。
【0040】
また、主筋40におけるアンボンド領域部42は、凹部54に露出することで、アンボンド状態が保障される。また、主筋40のアンボンド領域部42が自由に伸縮する。このように、主筋40を凹部54に露出させアンボンド領域部42を形成する構成とすることで、鉄筋コンクリート製の梁50の梁端部52における主筋40のエネルギー吸収能力が確実に向上する。
【0041】
<変形例>
つぎに、本実施形態の変形例について説明する。
【0042】
「第一変形例」
図4に示す第一変形例では、主筋140は、ねじ鉄筋とされている。主筋140における凹部54に露出するアンボンド領域部142は、鉄筋143と鉄筋145とが継手146に螺合されて接続された構成となっている。そして、アンボンド領域部142の長手方向の両端部(鉄筋143,145の端部)が定着部材160に螺合され接続されている。
【0043】
なお、定着部材160は、定着板62とねじ鉄筋140が螺合するナット164とが一体となった構成(例えば、定着板62とナット164とが一体に鋳造された構成)の機械式の定着金物とされている。
【0044】
前述したように凹部54に露出するアンボンド領域部142は、鉄筋143と鉄筋145とが継手146に螺合されて接続された構成となっている(図4(B)を参照)。
【0045】
よって、例えば、継手146全体を鉄筋143(又は鉄筋145)側に螺合させた状態で(図4(C)を参照)、まず鉄筋143と鉄筋145とをそれぞれ定着部材160に螺合させて、つぎに継手146を回して鉄筋145に螺合させることで、容易にアンボンド領域部142(鉄筋143,145)を両定着部材160に接続させることができる。なお、アンボンド領域部142を取り外す場合は、この逆の手順で行えばよい。
【0046】
このように、主筋140を構成するアンボンド領域部142は、凹部54から容易に着脱可能な構成となっている。別の言い方をすると、アンボンド領域部142は、定着部材160に交換可能(着脱可能)に接続されている。
【0047】
したがって、アンボンド領域部142が、繰り返し塑性変形し、破損又は劣化した場合、アンボンド領域部142のみを容易に交換することができる。
【0048】
なお、図4の構成は一例であってこの構成に限定されるものではない。アンボンド領域部142が定着部材60に着脱可能に接合され、交換可能な構成であればよい。
【0049】
「第二変形例」
図5と図6(A)に示す第二変形では、梁50の梁端部52の凹部54に、直方体形状のブロック体150が設けられている(嵌め込まれている)。ブロック体150は貫通孔152(図6(A)を参照)が形成され、貫通孔152に主筋40(のアンボンド領域部42)が挿通されている。
【0050】
なお、ブロック体150の貫通孔152には充填材やコンクリートQなどが充填されていない。よって、凹部54にブロック体150が設けられていても、主筋40のアンボンド領域部42は、アンボンド状態が維持されている。
【0051】
このような構成によって、鉄筋コンクリート製の梁50の梁端部52の塑性ヒンジ部分が回転変形する際、ブロック体150が仕口ブロック部20に圧縮力を伝達する。つまり、ブロック体150が圧縮力の伝達を受け持つので、圧縮時における梁端部52の剛性が向上する。
【0052】
また、ブロック体150の貫通孔152に、アンボンド領域部42が挿通されているので、圧縮時におけるアンボンド領域部42の座屈が防止又は抑制される。
【0053】
なお、ブロック体150を構成する材料は特に限定されないが、仕口ブロック部20に圧縮力を伝達することが可能な強度と剛性を有する材料で構成されている。
【0054】
「第三変形例」
図6(B)に示す第二変形では、梁50の梁端部52の凹部54に、直方体形状のブロック体170が設けられている(嵌め込まれている)。ブロック体170は、板状の第一ブロック体176と、半円形状の凹部174が形成された第二ブロック体172と、で構成されている。
【0055】
ここで、梁端部52の凹部54にブロック体170を設ける方法の一例を説明する。まず板状の第一ブロック体176を主筋40と梁端部52の凹部54の底面55C(図1、図2(A)、図5等を参照)との間に差し込む。そして、第二ブロック体172を鉛直方向の外側から設け、第一ブロック体176と接合することで、半円形状の凹部174に主筋40のアンボンド領域部42が挿通されたブロック体170となる。
【0056】
よって、図2に示す状態の梁端部52の凹部54に、後からブロック体170を容易に設けることができる。つまり、ブロック体を凹部54に設ける場合の施工性が向上する。
【0057】
なお、第一ブロック体176及び第二ブロック体172のいずれか一方のみを梁端部52の凹部54に設ける構成であってもよい。但し、第一ブロック体176のみを設ける構成の場合は、圧縮時におけるアンボンド領域部42の座屈の防止効果又は抑制効果は低減する。
【0058】
<第二実施形態>
図7を用いて、本発明の第二実施形態に係る鉄筋コンクリート製の梁の接合構造について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0059】
図7には、柱梁仕口PCa(プレキャスト)セグメント11が図示されている。この柱梁仕口PCa(プレキャスト)セグメント11を構成する鉄筋コンクリート製の仕口ブロック部20と鉄筋コンクリート製の梁50とが、本発明の第二実施形態に係る鉄筋コンクリート製の梁の接合構造が適用されて接合されている
【0060】
第一実施形態と同様に、機械式の定着部材60よって、主筋40が、梁50を構成するコンクリートQに定着すると共に、仕口ブロック部20を構成するコンクリートQに定着している。
【0061】
仕口ブロック部20と梁50との境界と定着部材60の仕口ブロック部20側、言い換えると、柱50側の定着部材60と梁50側の定着部材60との梁長方向のそれぞれ内側に、板部材202と板部材204とが設けられている。
【0062】
そして、これら板部材202と板部材204とで仕切られた部位205における鉛直方向の外側には、複数のスリット206が形成されている。スリット206は梁幅方向(Y方向)に沿って形成され、梁長方向(X方向)に並んで(平行に)設けられている。
【0063】
また、梁50側の定着部材60と柱50側の定着部材60と間の主筋40には、コンクリートQとの定着を防ぐ剥離剤Jが塗布されている。
【0064】
「施工方法」
つぎに、本実施形態の施工方法の一例について説明する。
【0065】
定着部材60が取り付けられ、剥離剤Jが塗布された状態の主筋40を配筋する。板部材202,204を設けた状態で、コンクリートQを打接する。コンクリートQが固化したあと、スリット206を形成する。なお、梁50側の定着部材60と仕口ブロック部20側の定着部材60と間の主筋40には、剥離剤Jが塗布されているので、コンクリートQに定着されていない。
【0066】
<作用及び効果>
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0067】
本実施形態では、上述したように、主筋40における梁50側の定着部材60と仕口ブロック部20側の定着部材60との間の部位には、剥離剤Jが塗布されている。また、定着部材60と定着部材60との間が板部材202,204で仕切られ、この仕切られた部位205にスリット206が形成さている。
【0068】
よって、梁端部52に引張力が作用して塑性ヒンジの状態になると、板部材202,204で仕切られた部位205は、各スリット206の間隔が伸縮し変形し、梁50側の定着部材60と仕口ブロック部20側の定着部材60との間の剥離剤Jが塗布されたコンクリートQに定着していない部位の主筋40がアンボンド状態のアンボンド領域部42として機能する。
【0069】
すなわち、梁端部52に引張力が作用して塑性ヒンジ状態になると、定着部材60間の主筋40のアンボンド領域部42が、コンクリートQを破壊することなく、またコンクリートQに拘束されることなく、塑性変形してエネルギーを吸収する。
【0070】
また、アンボンド領域部42以外の部位におけるコンクリートQへの付着特性の劣化が抑制又は防止される。
【0071】
したがって、鉄筋コンクリート製の梁50の梁端部52における主筋40のエネルギー吸収能力が向上する。すなわち、梁端部52に形成される塑性ヒンジによるエネルギー吸収効果が向上する。
【0072】
なお、発泡スチロール等の容易に変形(圧縮)可能な材料で構成された充填材を、スリット206に充填していてもよい。
【0073】
<その他>
本発明を適用し、鉄筋コンクリート製の梁の履歴を向上させることで,梁の構造特性係数DSを低減させることができる。また、本発明を適用することで、例えば、DSを0.05低減、より具体的には0.30から0.025まで低減されれば、保有水平耐力が約15%低減され,使用材料の削減によるコスト減及び省資源化される。
【0074】
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0075】
例えば、上記実施形態では、鉄筋コンクリート製の柱の一部である仕口ブロック部20と鉄筋コンクリート製の梁50とが一体的に構成された柱梁仕口PCa(プレキャスト)セグメント10、11に本発明を適用したが、これに限定されない。プレキャスト工法でなく、コンクリートを現場にて打設する工法(現場打ち工法)における鉄筋コンクリート製の柱と鉄筋コンクリート製の梁との接合部位にも、本発明を適用することできる。
【0076】
また、上記、複数の実施形態や複数の変形例は、適宜、組み合わされて実施可能である。更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
【符号の説明】
【0077】
20 仕口ブロック部(躯体)
50 梁
52 梁端部
40 主筋(鉄筋)
42 アンボンド領域部
54 凹部
60 定着部材(第一定着部材、第二定着部材)
140 主筋(鉄筋)
142 アンボンド領域部
150 ブロック体
160 定着部材(第一定着部材、第二定着部材)
170 ブロック体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体と接合された鉄筋コンクリート製の梁の梁端部に設けられ、鉄筋をアンボンド状態としたアンボンド領域部と、
前記アンボンド領域部の外側の前記梁に設けられ、前記鉄筋を前記梁に定着させる第一定着部材と、
前記アンボンド領域部の外側の前記躯体に設けられ、前記鉄筋を前記躯体に定着させる第二定着部材と、
を備える鉄筋コンクリート製の梁の接合構造。
【請求項2】
前記アンボンド領域部は、前記梁端部に形成され、前記鉄筋が露出する凹部である、
請求項1に記載の鉄筋コンクリート製の梁の接合構造。
【請求項3】
前記凹部には、前記鉄筋とアンボンド状態で、前記躯体に圧縮力を伝達するブロック体が設けられている、
請求項2に記載の鉄筋コンクリート製の梁の接合構造。
【請求項4】
前記第一定着部材と前記第二定着部材とに、前記鉄筋が着脱可能に接合されている、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリート製の梁の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−207414(P2012−207414A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72809(P2011−72809)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】