説明

銅充填後微孔の凹みまたは凸起の分析方法

【課題】本発明は、微孔(micro viaまたはlaser via)に銅を充填後の凹みまたは凸起の分析方法を開示する。
【解決手段】高さスキャン装置を利用して、プリント基板に銅を充填するステップを実施後に積層材料表面にできる銅めっき層の高さ分布を測定してから、各微孔の所在箇所の局部における銅被覆面積の複数個の高さ値を選択する。当該局部の銅被覆面積の該微孔周囲の複数個の高さ値を平均または計算して相対的標準高さを得、さらに該相対的標準高さと該微孔範囲内の銅被覆表面の各高さ値を比較して、その差の値を出す。それぞれの差の値の許容凹み量または許容凸起量を上回る累積数量が設定値を超えているか否かを計算する。超えていれば当該微孔範囲内の銅被覆表面に凹みまたは凸起欠陥があると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微孔に銅を充填した後の凹みまたは凸起の分析方法に関する。これはプリント基板上の微孔に銅を充填後、表面に凹みまたは凸起の欠陥があるか否かを分析する方法である。
【背景技術】
【0002】
電子製品のニーズに後押しされて、プリント基板は、形態面では次第に軽く、薄く、短く、小さくなる方向に進み、機能面では性能の安定、多機能、高速化が求められている。相対的に、その製造工程の技術開発がますます難しくなっている上、軽量化、薄型化、細線化、小孔化などの高密度設計に対するニーズも満たさなければならない。現在非常に重視されているボールグリッドアレイ(Ball Grid Array;BGA)やフリップチップ(flip chip)基板および使用量が日増しに増えている携帯式製品の回線基板、例えば携帯電話、コンピュータの中央処理装置、電子辞書、PCMCIAカードなどは、やがて高密度(High Density Integration;HDI)基板を大量に使用するようになる。従来の基板は製造面で穿孔機、エッチング装置などの製造設備の改良を絶えず重ねているものの、その密度不足のために4ミル(mil)の線距離と直径6ミルのスルーホールまでしか製造できず、上記ニーズと将来の狭いピン距離の電子構造設計の制限に対応できない。そこで、細線と小孔を有する高密度基板が時運に乗じて登場し、従来の多層圧着基板やプリント基板の製造工程に取って代るものとして期待されている。
【0003】
それに対して、多層化(build−up)法は基板製造工程にレーザ穿孔技術を組み合わせることによってスルーホールの使用面積を効果的に減少させることができ、容易に細線、小孔の高密度要件を満たすことができる。これによって従来の基板構造内に一層または数層の細線層を加えれば、経済的で効果的な基板製造方法となる。このような基板の中間層は従来のFR−4やABF基板でよく、その後に層を重ねるごとに誘電層と銅箔を加え、重ねられたこれらの回線と孔径はすべて従来の基板より細かく、また層間の厚さも相対的に縮小される。密度がこのように高まり、厚さが薄くなるため、基板の面積も小さくなる。
【0004】
しかし、多層化法では、基板に銅を充填するステップの後に最もよく発生する欠陥は、図1に示すように、微孔15の上方の銅めっき層14に凹み141(または凸起、図示せず)が生じ易いことである。上層絶縁層11に微孔15があり、さらに内部銅回線層の銅パッド(pad)12が当該微孔15の底部に設けられている。銅パッド12とその後に上層絶縁層11表面に形成される銅回線層を連結できるようにするために、微孔15の中および上層絶縁層11表面に銅めっき層14を堆積させる。しかし、微孔15の上方の銅被覆面積に凹み141(または凸起)欠陥があると、銅めっき層14上に積層を続けようとするときに、当該凹み141が大きければ基板の内部回線の失効をもたらし、電気信号を正常に伝達できなくなる。
【0005】
以上を総合すると、市場では、プリント基板の中の各積層板材の品質を確認できるように、プリント基板上の微孔の銅めっき後の表面に凹み欠陥があるか否かを分析する方法が取り急ぎ必要となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、微孔に銅を充填後の凹みまたは凸起の分析方法を提供することである。この方法は、プリント基板の積層板材の変形量の影響を除去して、各盲孔上方の銅めっき層の実際の凹みの深さと有効面積を分析できる。
【0007】
本発明のもう1つの目的は、銅めっき層上の凹みまたは凸起欠陥の分布を表す方法を提供することである。この方法では、凹みまたは凸起欠陥の存在箇所を画面表示することにより、さらにこうした凹み欠陥がもたらすプリント基板セルの失効結果を表す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は微孔に銅を充填後の凹みまたは凸起の分析方法を開示する。これは高さスキャン装置を利用して、プリント基板に銅を充填するステップを実施後に積層材料表面にできる銅めっき層の高さ分布を測定してから、各微孔の所在箇所の局部(または微孔周囲)の銅被覆面積の複数個の高さ値を選択する。当該局部の銅被覆面積の該微孔周囲の複数個の高さ値を、相対的な標準高さとするために平均し、さらに該相対的標準高さと該微孔範囲内の銅被覆表面の各高さ値を比較して、各差の値を出す。各差の値の許容凹み量または許容凸起量を上回る累積量が設定値を超えるか否かを計算する。超えていれば当該微孔範囲内の銅被覆表面に凹みまたは凸起欠陥があると判定できる。
【0009】
画面や図表を利用してプリント基板上の凹み欠陥の存在箇所を表示でき、さらに画面や図表を利用して当該凹み欠陥が失効をもたらしたプリント基板セル位置を表すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図2は、本発明で分析したプリント基板中の積層板材の外観説明図である。積層板材20が9個のセル26に区分され、それぞれのセル26の中に複数個の微孔25があり、さらに微孔25の中も積層板材20表面全体も銅めっき層24で被覆されている。高さスキャン装置を利用して、当該銅めっき層24表面の高さ分布を測定してから、特に各微孔25の所在箇所について、それぞれ微孔25の断面積より大きい銅被覆面積271または272を選定する。あるいは当該選定面積を選択範囲(range of interest)と呼ぶこともできる。銅被覆面積271または272に指定微孔25が含まれるようにするために、当該銅被覆面積271または272を実際の微孔寸法より許容幅を加えた大きさで形成するとよい。
【0011】
図3をみると、当該選定された銅被覆面積271内の表面の高さ分布値がすでに全部得られており、当該局部の高さ分布値についてそれぞれ分析を行って、許容規格を超える凹み32(または凸起)が生じているか否かを判断することができる。図中の破線の円柱体31は当該凹み32の下側微孔25に対する位置関係を示しており、当該微孔25の断面の半径はrである。明らかに、円柱体31の上側中央の凹み32の曲面の高さが円柱体31周囲の表面高さより低い(中央が凸起している場合は、円柱体31周囲の表面高さより高くなる)。
【0012】
図4(a)は、図3の中の円柱体31の直径を通るX−Y平面に沿った高さ分布図である。積層板材20が材料内の残留応力によって跳ね上がり現象を起こす場合があるため、Z軸上に示されている高さ値は必ずしも積層板材20の表面の実際の凹みまたは凸起の高さではない。したがって標準高さまたは参考高さをまず出してから初めて有意な凹みまたは凸起の量を定義できる。本発明では、銅被覆面積271の微孔25周囲(図4(a)中の2rの外)の高さ分布値を平均または計算して相対的標準高さRを得、さらに各微孔25についてそれぞれ相対的標準高さを計算する。
【0013】
凹み状況を例(逆の凸起状況も然りである)にとると、当該相対的標準高さRより許容凹み量hだけ下にずれて高さ閾値Tを定義でき、高さ値がTの表面より低ければ有効凹みの領域であるとみなされる。図4(a)の中のdが有効凹み領域と判定されている。
【0014】
図4(b)に示すように、有効凹み領域が存在する銅被覆面積271と判定されても、必ずしも凹み欠陥とみなされるわけではない。一般的には、さらに当該有効凹み領域の占める面積を計算する必要があり、そうして初めて真に凹み欠陥であるか否かを確認できる。例を挙げると、銅被覆面積271の中に微細な針孔41があり、この針孔41の最小高さは明らかに高さ閾値Tよりはるかに小さい。しかし、さらに針孔41底部の総面積に占める割合を分析せずに、この高さ閾値Tとの比較のみによる場合、凹み欠陥の認定が多すぎる上に不適当という結果を招く可能性が大きく、不良品と判定されるセル26が多すぎれば重大なコスト負担につながる。実際、もし銅被覆面積271内に微細な針孔41しかなく、他の面積の高さがすべて高さ閾値Tより高ければ、この針孔41によって垂直導通機能の正常な働きがだめになることはまずない。また、針孔41の許容面積は使用者が設定できる。
【0015】
図5に示すように、微孔25の断面積に含まれる範囲内(直径2rの円の面積)は、高さ値測定点の位置によって複数個の面積基本セル51に分けることができ、各面積基本セル51はすべて最低1つの高さ値をもっている。前記相対的標準高さRを各面積基本セル51の高さ値と比較することにより、それぞれの差の値が得られる。例えば、図5中に示された数字は差の値を表している(あるいは色や記号で差の値の大きさを表すと使用者にとって判読し易くなる)。差の値が許容凹み量h(本実施例ではh=4と仮定)より大きく、面積も設定値より大きければ、凹み欠陥があるとみなされる。つまり、差の値が4を超える累積数量(図5中では合計7個の数字が4を超えている)が設定値(5と仮定)を上回れば、銅被覆面積271は有効凹み(凹み欠陥)であると認定される。
【0016】
積層板材20上の各微孔25の箇所で選定された銅被覆面積をそれぞれ上記の高さ分析をした後、画面または図表を利用して凹み欠陥のある銅充填微孔25の位置を表示できる。例えば図6は×の記号またはマークで凹み欠陥発生箇所を表している。もちろん×の代わりに色で表示してもよい。例えば凹み欠陥のある微孔25を赤色で表示する(あるいは凸起欠陥のある微孔25を青色で埋める)場合、他の正常な微孔25を緑色で表す。もちろん異なる色、記号やマークで凹み量の大きさを表してもよい。例えば、濃い赤で凹み量が相対的に最も深い箇所を表し、濃い赤から次第に薄い赤に変わり、凹み量が相対的に小さいものを黄色で表す。
【0017】
各積層板材20が順次圧着接合(sequential lamination)されて最終基板となった後、その中のある層の積層板材20に凹み欠陥があった場合、当該凹み欠陥のあるプリント基板セルは廃棄するものとみなされる。したがって、図7に示すように、各プリント基板セル76内に凹み欠陥または凸起欠陥が存在するか否か統計を出し、凹み欠陥または凸起欠陥があれば×の記号またはマークをつけて使用不能または廃棄されるプリント基板セル76を表すことができる。
【0018】
本発明はエッチング前の銅めっき層24の品質を分析できる他に、図8に示すように、エッチング後の銅めっき層84も同様に凹み欠陥があるか否かを分析できる。積層板材80上の微孔85のある箇所に設定した選択範囲87の中にエッチング後の銅めっき層84があるため、図9に示すように、銅めっき層84の外側の表面高さは凹み発生可能箇所の高さよりはるかに低い。しかし上記実施例と異なるステップは、相対的標準高さRの計算方式のみである。本実施例では、選択範囲87の中の銅被覆面積を2rと2Rcの間の環状領域内の高さ分布値を平均して相対的標準高さR’を得る。つまり、両側の高さが最低閾値Lよりはるかに低い区間は、相対的標準高さの平均データの中に入れない。同様に、高さ閾値T’によって銅めっき層84の有効凹み領域が選択範囲内に存在するか否かを確認でき、有効凹み領域が設定値を超えていれば、当該微孔85に凹み欠陥があると判定できる。
【0019】
本発明の技術的内容および技術的特徴は上記に開示したとおりであるが、当技術分野の熟練者は本発明の教示と開示に基づきさまざまな本発明の精神から逸脱しない置換えおよび改変を行うことができる。したがって、本発明の保護範囲は、実施例に開示したものに限定すべきではなく、本発明から逸脱しない各種の置換えおよび改変を含み、特許請求の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】周知の多層化法基板の中の積層板材の凹み発生を示す図
【図2】本発明で分析するプリント基板の中の積層板材の外観を示す図
【図3】図2中の銅被覆面積を選択する立体の高さ分布図
【図4(a)】図3の中の微孔直径を通るX−Y平面で切断した高さ分布図
【図4(b)】針孔のある銅充填後の微孔の直径に沿ったX−Y平面で切断した高さ分布図
【図5】本発明の銅めっき層の微孔断面積を含む範囲内の有効凹み面積の分析を示す図
【図6】本発明の凹み欠陥のある微孔位置を示す図
【図7】本発明の凹み欠陥により使用不能になったプリント基板セルを示す図
【図8】銅めっき層上の選択範囲を設定するもう1つの実施例を示す図
【図9】図8の中の微孔直径を通るX−Y平面で切断した高さ分布図
【符号の説明】
【0021】
11 上層絶縁層
12 銅パッド
13 下層絶縁層
14 銅めっき層
15 盲孔
20 積層板材
24 銅めっき層
25 微孔
26 セル
31 円柱体
32 凹み
41 針孔
51 面積基本セル
76 プリント基板セル
80 積層板材
84 銅めっき層
85 微孔
87 選択範囲
141 凹み
271、272 銅被覆面積
T、T’ 高さ閾値
r 盲孔の半径
d 有効凹み領域
R、R’ 相対的標準高さ
h 許容凹み量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅充填微孔の凹み分析方法であって、
銅充填ステップ実施後の積層板材表面上の高さ分布をスキャンするステップと、
前記積層板材の中の少なくとも1つの微孔のある箇所の局部銅被覆面積の複数個の高さ値を選択するステップと、
前記局部銅被覆面積が前記微孔範囲以外にある複数個の高さ値を計算して相対的標準高さを得るステップと、
前記相対的標準高さと前記微孔範囲内の前記銅被覆面積の各複数個の高さ値の間に存在する各差の値を比較するステップと、
前記各差の値が許容凹み量を超える累積数量を計算するステップであって、前記累積数量が設定値を超えていれば前記微孔上の前記銅被覆面積に凹み欠陥があると判定するステップと
を含むことを特徴とする銅充填微孔の凹み分析方法。
【請求項2】
前記積層板材の画像上に前記凹み欠陥発生箇所を記号、マークまたは色で表すステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の銅充填微孔の凹み分析方法。
【請求項3】
前記積層板材を有するプリント基板の画像上に前記凹み欠陥が存在する故の廃棄セルを記号、マークまたは色で表すステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の銅充填微孔の凹み分析方法。
【請求項4】
前記各差の値が、数字、色または記号でその大きさを表すことができ、さらに前記微孔断面積に含まれる範囲内の各差の値の所在位置を表示することを特徴とする請求項1に記載の銅充填微孔の凹み分析方法。
【請求項5】
前記相対的標準高さから前記許容凹み量を引くと高さ閾値になり、前記累積数量が前記設定値を超えると、前記微孔断面積に含まれる範囲内の高さ閾値より低い面積で前記凹み欠陥が定義された許容凹み面積を超えたことを示すことを特徴とする請求項1に記載の銅充填微孔の凹み分析方法。
【請求項6】
前記積層板材上の銅被覆面積がエッチングステップを経ていることを特徴とする請求項1に記載の銅充填微孔の凹み分析方法。
【請求項7】
最低閾値によって非銅被覆面積の箇所の高さ値を除去して、前記相対的標準高さを求める計算の中に入れないステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の銅充填微孔の凹み分析方法。
【請求項8】
前記相対的標準高さが、前記局部銅被覆面積の前記微孔範囲外にある複数個の高さ値を平均して得られることを特徴とする請求項1に記載の銅充填微孔の凹み分析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4(a)】
image rotate

【図4(b)】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−147591(P2007−147591A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267114(P2006−267114)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(506329856)マークヴィジョン インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Machvision, Inc.
【Fターム(参考)】