説明

鋼製部材の接合構造、構造物、及び鋼製部材の接合方法

【課題】鋼製部材の構造性能を確保しつつ、鋼製部材を構造躯体に対して容易に高精度に接合する。
【解決手段】波形鋼板18の下端部21のフランジ24Aからスタッド50を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、形鋼110、120にスタッド150を介して伝達される。そして、形鋼110、120に伝達された応力はスタッド160を介して梁16Aに伝達される。波形鋼板18の下端部21と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18の下端部21からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。コンクリートQを充填する前に波形鋼板18位置や姿勢等を調整することで、波形鋼板18を梁16Aに対して容易に高精度に接合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製部材の接合構造、構造物、及び鋼製部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
梁や基礎などの構造躯体に柱や壁などを構成する鋼製部材を接合する接合構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、鉄筋コンクリート造の基礎上にアンカーベースを固定し、そのアンカーベース内に鋼管柱の柱脚部を差し込んで接合することによって、アンカーベースを介して鋼管柱を基礎に接合する接続構造が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、基礎コンクリートの上部に中空の柱脚接合部材が埋設され、この柱脚接合部材の中に柱部材の柱脚部が挿設された構成とすることで、柱脚接合部材を介して柱部材の柱脚部と基礎コンクリート(コンクリート体)とを剛接合させる柱脚部接合構造が記載されている。
【0005】
ここで、特許文献3には、耐震壁として波形鋼板を用いた波形鋼板耐震壁が記載されている。波形鋼板は、鋼板を波形形状に折り曲げて形成されており、平板状の鋼板よりも面外剛性が大きい。したがって、波形鋼板は平板状の鋼板と比較して、せん断座屈耐力が大きく、この結果、せん断座屈防止用の補剛リブの数量等を減らす又は無くすことができる。また、波形鋼板は、折目筋を水平方向に配置することで、鉛直方向にアコーディオンのように伸縮するため、周辺の架構(梁や柱等)からの導入軸力が低減される。更に、鋼板の重ね合わせ枚数、波形のピッチ、波高等を増減することにより、剛性、耐力を調整可能であるため、設計自由度が高い点で優れているとされている。
【0006】
そして、特許文献4には、このような波形鋼鈑と周辺架構とにスタッドを設け、当該部位に充填材を充填して、波形鋼鈑と周辺架構とを一体化して耐震補強する構造が記載されている。
【0007】
また、特許文献5には、架構を構成する周辺部材に含まれる水平部材に波形鋼板を取り付ける取付構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−9344号公報
【特許文献2】特開2007−277913号公報
【特許文献3】特開2005−264713号公報
【特許文献4】特開2006−037628号公報
【特許文献5】特開2009−108499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
鋼製部材からの応力を構造躯体に伝達する構造性能の確保と、鋼製部材を構造躯体に対して容易に高精度に接合することと、の両立は困難であった。よって、鋼製部材の構造性能を確保しつつ、鋼製部材を構造躯体に対して容易に高精度に接合することが求められている。
【0010】
本発明は、鋼製部材の構造性能を確保しつつ、鋼製部材を構造躯体に対して容易に高精度に接合することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、構造躯体に設けられ、充填材が充填空間に充填され固化することによって形成された固定部と、前記充填材が固化することによって、前記固定部に固定された鋼製部材と、前記鋼製部材に設けられ、前記鋼製部材から前記固定部に応力を伝達する第一応力伝達手段と、前記第一応力伝達手段によって前記固定部に伝達された応力を前記構造躯体に伝達する第二応力伝達手段と、を備える。
【0012】
請求項1の発明では、鋼製部材から固定部に第一応力伝達手段によって応力が伝達される。更に第一応力伝達手段によって固定部に伝達された応力は、第二応力伝達手段によって構造躯体に伝達される。これにより、鋼製部材と構造躯体とが構造的に一体化されている。よって、鋼製部材からの応力を構造躯体に伝達する構造性能が確保される。
【0013】
また、充填部材が充填空間に充填され固化することによって構造躯体に固定部が形成されると共に、充填材が固化することによって固定部に鋼製部材が固定される。よって、充填材を充填する前に、或いは充填材が固化する前に、鋼製部材の位置や姿勢等を調整することで、例えば、構造躯体に固定した別部材に高力ボルトや溶接等で鋼製部材を接合する構成と比較し、鋼製部材を構造躯体に対して容易に高精度に接合することができる。言い換えると、固定部の施工誤差や鋼製部材の製造誤差などの各種施工誤差が鋼製部材の位置や姿勢等を調整することで吸収される。
【0014】
このように、鋼製部材の構造性能を確保しつつ、鋼製部材を構造躯体に対して容易に高精度に接合することができる。
【0015】
請求項2の発明は、前記第二応力手段は、前記構造躯体に固定されると共に、前記充填材が充填される充填空間を形成する接合部材を有する。
【0016】
請求項2の発明では、構造躯体に固定された接合部材が形成する充填空間に、充填材が充填される。つまり、接合部材が、構造躯体に応力を伝達する部材と、充填空間を形成する型枠と、の両方の機能を有している。よって、充填部材を充填する際(固定部を形成する際)に、別途型枠を設ける必要がない。
【0017】
請求項3の発明は、前記接合部材には、前記固定部における前記鋼製部材側の外面の一部又は全部を覆う第三応力伝達手段材が設けられている。
【0018】
請求項3の発明では、第三応力伝達手段によって、固定部に固定された鋼製部材が構造躯体から離れる方向の応力が接合部材に伝達され、接合部材から構造躯体に伝達される。すなわち、鋼製部材に作用する引張応力が効果的に構造躯体に伝達される。
【0019】
請求項4の発明は、前記第二応力伝達手段は、前記接合部材と前記構造躯体とを接着する接着層を有する。
【0020】
請求項4の発明では、接合部材は構造躯体に接着層によって構造躯体に接着されているので、構造躯体を形成した後であっても、接合部材が容易に構造躯体に固定される。
【0021】
請求項5の発明は、前記鋼製部材は、前記充填材が充填される充填空間を形成する型枠部材を有する。
【0022】
請求項5の発明では、鋼製部材の型枠部材が形成する充填空間に充填材が充填され固化することによって固定部が形成される。よって、充填部材を充填する際(固定部を形成する際)に、別途型枠を設ける必要がない。
【0023】
請求項6の発明は、前記固定部は、前記構造躯体に設けられた穴部によって形成された充填空間に、前記充填材が充填され固化することよって形成され、前記第二応力伝達手段は、前記穴部に形成され開口側に向かって幅狭とされた部位で構成されている。
【0024】
請求項6の発明では、穴部に形成され開口側に向かって幅狭とされた部位によって、固定部に固定された鋼製部材が構造躯体から離れる方向の応力、すなわち鋼製部材に作用する引張応力が効果的に構造躯体に伝達される。
【0025】
請求項7の発明は、前記第一応力伝達手段は、前記鋼製部材から突出し、前記固定部内に埋設された突出部を有する。
【0026】
請求項7の発明では、鋼製部材から突出し固定部内に埋設された突出部によって、鋼製部材から固定部に応力が伝達される。
【0027】
請求項8の発明は、前記第二応力伝達手段は、前記固定部と前記構造躯体とに跨って埋設された連結部材を有する。
【0028】
請求項8の発明では、固定部と構造躯体とに跨って埋設された連結部材によって、固定部から構造躯体に応力が伝達される。
【0029】
請求項9の発明は、前記鋼製部材は、波形鋼鈑で構成され、前記構造躯体は、水平力で層間変形が発生する架構とされ、前記架構の面内に前記波形鋼板の折筋を水平方向として配置され、前記架構の層間変形に抵抗するように、前記架構に前記波形鋼鈑が接合されている。
【0030】
請求項9の発明では、風や地震等によって架構に外力が作用し層間変形が発生すると、架構に配置された波形鋼板にせん断力が伝達され、波形鋼板がせん断変形する。これにより、波形鋼板が外力に抵抗して耐震性能を発揮する。また、外力に対して波形鋼板が早期に降伏するように設計することで振動エネルギーが吸収され、制振性能を発揮する。
【0031】
なお、波形鋼板を立ち上げて構造躯体に対して位置や姿勢等を調整して高精度に構造躯体に接合することよって、波形鋼鈑と構造躯体とが一体化されている。
【0032】
つまり、波形鋼鈑による耐震性能や制振性能を確保しつつ、波形鋼鈑を構造躯体に対して容易に高精度に接合することができる。また、波形鋼鈑が高精度に接合されていない構成と比較し、波形鋼板が有する耐震効果や制振効果が効果的に発揮される。
【0033】
請求項10の発明は、構造躯体と鋼製部材とが、請求項1〜請求項9のいずれか1項の鋼製部材の接合構造で接合された接合部位を有する。
【0034】
請求項10の発明では、鋼製部材の構造性能を確保しつつ、鋼製部材を構造躯体に対して容易に高精度に接合される。よって、構造物の構造性能が確保されると共に、施工が容易である。
【0035】
請求項11の発明は、応力を伝達する第一応力伝達手段が設けられた鋼製部材を、構造躯体に対して位置及び姿勢の少なくとも一方を調整して配置する鋼製部材配置工程と、充填材を充填空間に充填し固化させることよって、位置及び姿勢の少なくとも一方が調整された前記鋼製部材を固定すると共に、前記鋼製部材に設けられた前記第一伝達部材によって伝達された応力を、第二応力伝達手段によって前記構造躯体に伝達する固定部を、前記構造躯体に形成する固定部形成工程と、を備える。
【0036】
請求項11の発明では、鋼製部材配置工程で、応力を伝達する第一応力伝達手段が設けられた鋼製部材を、構造躯体に対して位置及び姿勢の少なくとも一方を調整して配置する。
【0037】
固定部形成工程で、充填材を充填空間に充填し固化させることよって位置及び姿勢の少なくとも一方が調整された鋼製部材を固定すると共に、鋼製部材に設けられた第一伝達部材によって伝達された応力を、第二応力伝達手段によって構造躯体に伝達する固定部を構造躯体に形成する。
【0038】
よって、鋼製部材の位置及び姿勢の少なくとも一方を調整することで、例えば、構造躯体に固定した別部材に高力ボルトや溶接等で鋼製部材を接合する構成と比較し、鋼製部材を構造躯体に対して容易に高精度に接合することができる。
【0039】
したがって、鋼製部材の構造性能を確保しつつ、鋼製部材を構造躯体に対して容易に高精度に接合することができる。
【0040】
なお、鋼製部材の位置及び姿勢の少なくとも一方を調整してから、充填材を充填空間に充填してもよいし、充填材を充填したのち固化する前に、鋼製部材の位置及び姿勢の少なくとも一方を調整してもよい。
【発明の効果】
【0041】
請求項1に記載の発明によれば、鋼製部材の構造性能を確保しつつ、鋼製部材を構造躯体に対して容易に高精度に接合することができる。
【0042】
請求項2に記載の発明によれば、構造躯体に固定された接合部材が形成する充填空間に、充填材を充填するので、充填部材を充填する際に、別途型枠を設ける必要がない。
【0043】
請求項3に記載の発明によれば、第三応力伝達手段が構造躯体から離れる方向の応力を接合部材に伝達するので、鋼製部材に作用する引張応力を効果的に構造躯体に伝達することができる。
【0044】
請求項4に記載の発明によれば、接合部材を接着層によって構造躯体に接着するので、構造躯体を形成した後であっても、構造躯体を形成した後であっても、接合部材を容易に構造躯体に固定することができる。
【0045】
請求項5に記載の発明によれば、構造躯体の型枠部材が形成する充填空間に充填材を充填し固化させることによって固定部を形成するので、充填部材を充填する際に、別途型枠を設ける必要がない。
【0046】
請求項6に記載の発明によれば、穴部に形成した開口側に向かって幅狭とされた部位によって、鋼製部材に作用する引張応力を効果的に構造躯体に伝達することができる。
【0047】
請求項7に記載の発明によれば、固定部内に埋設した突出部によって、鋼製部材から固定部に応力を効果的に伝達することができる。
【0048】
請求項8に記載の発明によれば、固定部と構造躯体とに跨って埋設された連結部材によって、固定部から構造躯体に応力を効果的に伝達することができる。
【0049】
請求項9に記載の発明によれば、波形鋼板を立ち上げて構造躯体に対して位置及び姿勢の少なくとも一方を調整して高精度に構造躯体に接合することよって波形鋼鈑と構造躯体とを一体化するので、波形鋼鈑による制振性能を確保しつつ、波形鋼鈑を構造躯体に対して容易に高精度に接合することができる。
【0050】
請求項10に記載の発明によれば、鋼製部材の構造性能を確保しつつ、鋼製部材を構造躯体に対して容易に高精度に接合することがきるので、構造物の構造性能が確保しつつ、施工を容易にすることができる。
【0051】
請求項11に記載の発明によれば、鋼製部材の構造性能を確保しつつ、鋼製部材を構造躯体に対して容易に高精度に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第一実施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る接合構造を模式的に示す断面斜視図である。
【図3】波形鋼板が梁に接合される前の図2に対応する分解斜視図である。
【図4】発明の第一実施形態に係る接合構造の施工工程を(A)から(C)へと順番に示す工程図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の第四実施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の第四実施形態に係る接合構造の変形例を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の第五実施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明の第五実施形態に係る接合構造の他の例を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の第六施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の第七施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図13】本発明の第七施形態に係る接合構造の変形例を模式的に示す断面図である。
【図14】本発明の第八施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図15】本発明の第八施形態に係る接合構造の第一変形例を模式的に示す断面図である。
【図16】本発明の第八施形態に係る接合構造の第二変形例を模式的に示す断面図である。
【図17】本発明の第九施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図18】本発明の第九施形態に係る接合構造の第一変形例を模式的に示す断面図である。
【図19】本発明の第十施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図20】本発明の第十一施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図21】本発明の第十二施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図22】本発明の第十三施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図23】本発明の第十四施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図24】本発明の第十五施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図25】本発明の第十五施形態に係る接合構造の第一変形例を模式的に示す断面図である。
【図26】本発明の第十五施形態に係る接合構造の第二変形例を模式的に示す断面図である。
【図27】本発明の第十五施形態に係る接合構造の第三変形例を模式的に示す断面図である。
【図28】本発明の第十七施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図29】本発明の第十七施形態に係る接合構造の第一変形例を模式的に示す断面図である。
【図30】本発明の第十七施形態に係る接合構造の第二変形例を模式的に示す断面図である。
【図31】本発明の第十八施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図である。
【図32】本発明の第十八施形態に係る接合構造の変形例を模式的に示す断面図である。
【図33】(A)〜(D)は、波形鋼板のバリエーションを説明する断面図である。
【図34】(A)は本発明の第一実施形態に係る接合構造によって波形鋼板が接合された架構を模式的に示す正面図であり、(B)は(A)のA−A線に沿った断面図である。
【図35】本発明の第一実施形態に係る接合構造の第一変形例を模式的に示す断面図である。
【図36】本発明の第一実施形態に係る接合構造の第二変形例を模式的に示す断面図である。
【図37】本発明の第一実施形態に係る接合構造の第三変形例を模式的に示す断面図である。
【図38】(A)は本発明の第十六施形態に係る接合構造を模式的に示す断面図であり、(B)は(A)のB部の拡大図である。
【図39】本発明が適用されていない第一比較例の接合構造を模式的に示す断面図である。
【図40】本発明が適用されていない第二比較例の接合構造を模式的に示す断面図である。
【図41】本発明が適用されていない第三比較例の接合構造を模式的に示す断面図である。
【図42】本発明の第六実施形態の接合構造の変形例を模式的に示す断面図である。
【図43】本発明の第九実施施形態に係る接合構造の第二変形例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態の鋼製部材の接合構造について説明する。
【0054】
図34に示すように、鉄筋コンクリート造の構造物10を構成する架構12に耐震壁としての波形鋼板18が設置されている。
【0055】
なお、図34(A)の左右方向をX方向、鉛直方向をZ方向とし、図34(B)の左右方向、すなわちX方向とZ方向とに直交する方向をY方向とする。なお、Y方向は波形鋼板18の面外方向である。
【0056】
図34に示すように、架構12は、左右の柱14A、14Bと上下の梁16A、16Bとから構成されたラーメン構造とされている。また、図1と図2に示すように、梁16A,16Bと床スラブ17とが、構造的に一体に構成されている。
【0057】
本実施形態においては、柱14A、14B、梁16A、16B、及び床スラブ17は、鉄筋コンクリート造とされている。
【0058】
図34(B)に示すように、梁16A、16Bには、複数の主筋34と、当該主筋34を補強するせん断補強筋36と、が埋設されている。図1と図2とに示すように、床スラブ17には、複数の主筋35と、当主筋34と直角に配置される補強筋37と、が埋設されている。
【0059】
図34(B)に示すように、波形鋼板18は、鋼板を波形形状に折り曲げて形成されており、図34(A)に示すように、その折筋18Aを横(折筋18Aの向きを横方向)にして架構12の構面内に配置されている。別の言い方をすると、波形鋼板18は、架構12の構面内に折筋18Aを水平方向として配置され、架構12の層間変形に抵抗するように、架構12を構成する柱14A、14B及び梁16A、16Bに接合されている。
【0060】
なお、波形鋼板18の材料としては、普通鋼(例えば、SM490、SS400等)や低降伏点鋼(例えば、LY225等)等を用いることができる。
【0061】
また、波形鋼板18の断面形状は、波形であればよく、例えば、図33(A)〜(D)の断面形状を適用することができる
波形鋼板18の左右の縦辺には、鋼製のフランジ22A、22B(端部フランジ)がそれぞれ設けられている。このフランジ22A、22Bは板状に形成されており、波形鋼板18の左右の縦辺に沿って溶接等で固定されている。
【0062】
また、波形鋼板18の上下の横辺には、鋼製のフランジ24A、24B(端部フランジ)がそれぞれ設けられている。このフランジ24A、24Bは板状に形成されており、波形鋼板18の上下の横辺に沿って溶接等で固定されている。
【0063】
これらのフランジ22A、22B及びフランジ24A、24Bの端部同士は溶接等で接合されている。これにより、波形鋼板18の外周部を囲む枠体20(図34(A)参照)が構成されている。
【0064】
なお、上下方向を長手方向として配置された補剛リブを一つ又は複数、溶接やボルト締結等で波形鋼板18の板面に接合してもよい。補剛リブの長手方向(上下方向)両端部は、フランジ24A、24Bにそれぞれ溶接等で接合される。
【0065】
フランジ22A、22B及びフランジ24A、24Bには、それぞれ内側に向かって突出するスタッド50が設けられている。各スタッド56は、それぞれのフランジの長手方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0066】
例えば、下側のフランジ24Aでは、スタッド50は、上側に向かって突出し、X方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられている
そして、波形鋼板18の外周部が、架構12を構成する柱14A、14B及び梁16A、16Bに、本発明が適用された接合構造100によって接合されている。
【0067】
なお、上下左右の接合構造は、同様の構成である。つまり、波形鋼板18の上端部の接合構造は、下端部の接合構造を180°回転させた状態と同じであり、左右端部の接合構造は、下端部の接合構造を90°回転させた状態と同じである。よって、以降の説明では、波形鋼板18の下端部21の接合構造を代表して説明する。
【0068】
図1〜図3に示すように、梁16Aの上には、断面が溝状(コ字状、又はC状)の形鋼(チャンネル)110、120が配置されている。形鋼110と形鋼120とは、Y方向に間隔をあけて、且つ開口同士が対向するように配置されている。
【0069】
形鋼110、120は、ウェブ112、122と、ウェブ112、122の上下の端部からY方向に沿って延出するフランジ114、116、124、126と、を有している。
【0070】
また、形鋼110、120のウェブ112、122には、開口側に向けて突出するスタッド150が設けられている。更に、形鋼110、120の下側のフランジ116、126には、下側に突出するスタッド160が設けられている。なお、スタッド150、160は、長手方向(X方向)に沿って、所定の間隔をあけて複数設けられている(図2と図3を参照)。
【0071】
そして、形鋼110、120の下側のフランジ116、126が、梁16Aの上に配置され、且つ、下側に突出するスタッド160が梁16Aに埋設されている。
【0072】
形鋼110と形鋼120との間の梁16Aの上に、波形鋼板18のフランジ24Aが配置されている。なお、後述するように、波形鋼板18の姿勢は梁16Aに対して位置・姿勢が調整されているので、梁16Aとフランジ24Aとは、接触していなくてもよい。
【0073】
形鋼110と形鋼120との間に形成される充填空間102(図3、図4(B)参照)に、充填材としてのコンクリートQが打設されることによって、固定部104が形成されている。この固定部104に波形鋼板18のフランジ24A及びスタッド50を含む下端部21が埋設されている。
【0074】
形鋼110、120のフランジ114、124の先端間の隙間(フランジ114、124のY方向の隙間)は、波形鋼板18のフランジ24AのY方向の長さよりも大きく設定されている。
【0075】
また、固定部104の上面104AのY方向の両端部を、形鋼110、120の上側のフランジ114、124が覆っている。
【0076】
つぎに、本接合構造の施工方法について説明する。
【0077】
図3と図4(A)に示すように、梁16Aを施工する際に、形鋼110、120の下側のフランジ116、126から突出するスタッド160を埋設する。
【0078】
図3と図4(B)とに示すように、波形鋼板18の下端部21を形鋼110と形鋼120との間に配置する。このとき波形鋼板18を梁16A(又は架構12(図34参照)全体)に対して位置・姿勢(位置及び姿勢のいずれか一方又は両方)を調整して配置する。
【0079】
なお、形鋼110、120のフランジ114、124の先端部間の隙間は、波形鋼板18のフランジ24の横方向の長さよりも大きく設定されているので、波形鋼板18の下端部21を形鋼110と形鋼120との間に容易に配置することができる。
【0080】
図1、図2、図4(C)に示すように、波形鋼板18の位置・姿勢が調整された状態を維持したまま、形鋼110と形鋼120との間の充填空間102(図3、図4(A)、図4(B)参照)にコンクリートQを充填する。充填されたコンクリートQが固化することで、波形鋼板18の下端部21が埋設されたコンクリート製の固定部104が形成される。これにより波形鋼板18の下端部21が固定部104に固定される。
【0081】
なお、波形鋼板18の位置・姿勢が調整された状態を維持するために、波形鋼板18のフランジ24Aと梁16Aとの間に調整部材(図示略)を挟んでもよい。調整部材は、どのようなものであってもよいが、例えば、レベル調整用の充填材(均しモルタルやセメント等)、スペーサ(樹脂材、鋼材、木材など)等があげられる。
【0082】
また、梁16Aの表面を削って均すことによって、波形鋼板18の位置・姿勢を調整してもよい。
【0083】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0084】
風や地震等によって架構12に外力が作用すると、架構12に取り付けられた波形鋼板18にせん断力が伝達され、波形鋼板18がせん断変形する。これにより、波形鋼板18が外力に抵抗して耐震性能を発揮する。また、外力に対して波形鋼板18が降伏するように設計することで、履歴エネルギーによって振動エネルギーが吸収され、制振性能を発揮する。
【0085】
なお、波形鋼板18は、鋼板を波形形状に折り曲げて形成されており、平板状の鋼板よりも面外剛性が大きい。したがって、波形鋼板18は平板状の鋼板と比較して、せん断座屈耐力が大きい。また、波形鋼板18は、折筋18Aを水平方向に配置することで、鉛直方向にアコーディオンのように伸縮するため、周辺の架構12(梁16A,16Bや柱14A,14B)からの導入軸力が低減される。
【0086】
ここで、波形鋼板18と架構12との間の応力の伝達について説明する。なお、波形鋼板18の下端部21と梁16Aとの間の応力の伝達を代表して説明する。
【0087】
図1と図2とに示すように、波形鋼板18の下端部21のフランジ24Aからスタッド50を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、形鋼110、120にスタッド150を介して伝達される。そして、形鋼110、120に伝達された応力はスタッド160を介して梁16Aに伝達される。
【0088】
このように、波形鋼板18の下端部21と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18の下端部21からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0089】
また、コンクリートQが形鋼110と形鋼120との間の充填空間102(図3、図4(A)、図4(B)を参照)に充填され固化することによって梁16Aに固定部104が形成されると共に、コンクリートQが固化することによって固定部104に波形鋼板18の下端部21が固定される。
【0090】
よって、図4(B)に示すように、コンクリートQを充填する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。言い換えると、波形鋼板18や架構12の製造誤差や各種施工誤差が、波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで吸収される。
【0091】
なお、コンクリートQを充填する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整するのでなく、コンクリートQを充填したのち固化するまでの間に波形鋼板18の位置・姿勢を調整してもよい。
【0092】
このように、波形鋼板18の構造性能を確保しつつ、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0093】
また、応力を梁16Aに伝達する形鋼110、120が充填空間102を形成する。つまり、形鋼110、120は、梁16Aに応力を伝達する部材と、コンクリートQが充填される空間を形成する型枠と、の両方の機能を有している。
【0094】
また、固定部104の上面104Aの一部を形鋼110、120の上側のフランジ114、124が覆っている。よって、波形鋼板18が梁16Aから離れる方向(ここでは上側)の応力が固定部104に伝達されると、応力を形鋼110、120の上側のフランジ114、124が受ける。よって、波形鋼板18が梁16Aから離れる方向(ここでは上側)の応力がフランジ114、124によって効果的に形鋼110、120に伝達され、形鋼110、120から梁16Aに伝達される。つまり、波形鋼板18の下端部21及び固定部104に作用する引張応力が効果的に梁16Aに伝達される。
【0095】
一方、波形鋼板18の面外方向(Y方向)に沿った方向の応力(水平方向のせん断力)は、形鋼110、120のウェブ112、122が受ける。波形鋼板18の面外方向(Y方向)に沿った方向の応力(水平方向のせん断力)は、形鋼110、120のウェブ112、122に伝達され、形鋼110、120から梁16Aに伝達される。つまり、波形鋼板18の下端部21及び固定部104に作用する面外方向(Y方向)に沿った方向の応力(水平方向のせん断力)が効果的に梁16Aに伝達される。
【0096】
また、形鋼110、120を低降伏点鋼とすることで、地震時等において、当該形鋼110、120を他の部材よりも先行して部材降伏させ、地震エネルギーを吸収させることができるため、制振効果をより高めることができる。
【0097】
なお、本実施形態では、図1に示すように、波形鋼板18の外周全体と周辺の架構12(梁16A、16B、柱14A,14B)との接合部位の全部に、本発明に係る接合構造を適用したが、これに限定されない。接合部位の少なくも一つに、本発明に係る接合構造が適用されていればよい。例えば、梁16Aと波形鋼板18の下端部21との接合部位のみに本発明に係る接合構造が適用され、他の接合部位は本発明が適用されていない接合構造で接合されていてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、固定部104は、コンクリートQを充填し固化して形成されている。しかし、コンクリート以外の充填材であってもよい。例えば、グラウトやモルタル等であってもよい。或いは、繊維補強されたコンクリートであってもよい。
【0099】
なお、以降の実施形態や変形例においても、充填材はコンクリートQで説明するが、コンクリート以外の充填材であってもよい。
「比較例」
ここで、比較例として、本発明が適用されていない接合構造について説明する。
【0100】
図39に示す比較例1と図40に示す比較例2は、波形鋼板18のフランジ24AにHTB接合などで接合された接合部材990、992のスタッド994を、梁16Aに埋設させることで、梁16Aと波形鋼板18とが接合されている。
【0101】
このような比較例1と比較例2は、梁16Aを打設する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整し、位置・姿勢が調整された状態を維持して梁16Aを打設する必要がある。よって、波形鋼板18の精度確保が困難であった。或いは、波形鋼板18の精度確保と施工性との両立が困難であった。
【0102】
また、図41に示す比較例3は、梁16Aに埋設されたアンカーボルト996に波形鋼板18のフランジ24Aの貫通孔998に挿通させて接合することで、梁16Aと波形鋼板18とが接合されている。
【0103】
このような比較例3における水平方向のせん断力は、アンカーボルト996と波形鋼板18のフランジ24Aの貫通孔998との隙間分、水平方向ずれてから伝達される。つまり、水平せん断力に対して初期滑りが発生する。よって、水平せん断力に対する初期滑りの発生を防止又は抑制させるために、アンカーボルト996と波形鋼板18のフランジ24Aとを溶接接合する必要があり、施工効率がよくない。また、このような溶接接合は、専門の技術を持った溶接工によって行なう必要がある。
【0104】
これに対して、本実施形態の接合構造100では、既に説明したように、梁16Aを打設したのちに、コンクリートQを形鋼110と形鋼120との間の充填空間102に充填され固化することによって梁16Aに固定部104が形成されると共に、コンクリートQが固化することによって固定部104に波形鋼板18の下端部21が固定される。よって、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。また、溶接を行なうことなく、波形鋼板18の下端部21を固定することができる。
「変形例」
つぎに本実施形態の変形例について説明する。
<第一変形例>
図35に示す第一変形例では、形鋼111、121に長手方向(X方向)に所定の間隔をあけて板状のリブ125が設けられている。板状のリブ125は、厚み方向をX方向として配置され、上端がフランジ114に接合され、下端がフランジ116に接合され、側端がウェブ112、122に接合されている。
【0105】
このようにリブ125が設けられた形鋼111、121は、リブ125が設けられていない形鋼と比較し、剛性が大きい。よって、固定部104(図2などを参照)から伝達された応力を、より確実に梁16Aに伝達することができる。
【0106】
また、鋼製部材である波形鋼板18の面内方向(形鋼111、121の長手方向(X方向))の応力伝達は、リブ125を介しても行われる。よって、固定部104(図2などを参照)からの応力伝達がより確実になり、その結果、形鋼111、12のスタッド150を減らすことが可能となる。
<第二変形例>
図36に示す第二変形例では、第一実施形態の波形鋼板18に替えて鋼材ブロック耐震壁900が用いられている。
【0107】
鋼材ブロック耐震壁900は、ブロック鋼材の一例としての断面C型の鋼板910を用上下に重ねてボルト接合された構成とされている。なお、高力ボルト及びナットでせん断力を伝達可能に接合されている。
【0108】
水平方向に隣接する鋼板910は、補剛リブ914で連結されている。補剛リブ914はT形鋼からなり、長手方向を上下方向(鉛直方向)として鋼板910の裏面側に配置され高力ボルト及びナットにより、鋼板910と補剛リブ914とがせん断力を伝達可能に接合されている。
【0109】
なお、補剛リブ914は、T形鋼に限らず、L型鋼、C形鋼、H形鋼、I形鋼でもよいし、平板状の鋼板を用いても良い。
【0110】
また、水平方向及び上下方向に隣接する鋼板910は、せん断力を伝達可能に接合されていれば良く、溶接やエポキシ樹脂等の接着剤で接合しても良い。
【0111】
鋼板910の最下端のフランジ912には、上側に突出するスタッド50が設けられている。
【0112】
そして、形鋼110と形鋼120との間にコンクリートQが充填され固化することによって形成された固定部104に鋼板910のフランジ912とスタッド50とが埋設されている。
【0113】
なお、本変形例の鋼材ブロック耐震壁900は、鋼板910を上下方向に積み上げる段数や水平方向に並べる列数を、必要に応じて適宜変更することが可能である。
<第三変形例>
図37に示す第三変形例では、板状の鋼板960に補剛リブ970が接合された鋼製耐震壁950とされている。鋼板960には、波形鋼板18と同様に、左右の端部に鋼製のフランジ22A、22Bが設けられ、上下の端部に鋼製のフランジ24A、24Bが設けられており、これらのフランジ22A、22B及びフランジ24A、24Bによって鋼板960の外周部を囲む枠体が構成されている。
【0114】
鋼板960にはせん断座屈防止用の補剛リブ970が格子状に設けられている。なお、これ以外の構造は、第一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
<第二実施形態>
つぎに、本発明の第二実施形態の接合構造について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、第一実施形態と同様に、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0115】
図5に示すように、波形鋼板18のフランジ24Aには、下側に突出するスタッド52が設けられている。
【0116】
第一実施形と同様に、形鋼110と形鋼120との間に形成される充填空間102に、コンクリートQが打設され固定部104が形成されている。この固定部104の上に波形鋼板18のフランジ24Aが配置され、フランジ24Aから突出するスタッド52が固定部104に埋設されている。
【0117】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0118】
波形鋼板18のスタッド52のみが固定部104に埋設されているので、固定部104を充填し固化する間に行なう波形鋼板18の位置・姿勢の調整が行いやすい。
【0119】
なお、本実施形態では、スタッド52のみが固定部104に埋設されているが、これに限定されない。例えば、フランジ24Aの一部又は全部が固定部104に埋設されていてもよい。更に、波形鋼板18の下端部のウェブ19の一部又は全部が固定部104に埋設されていてもよい。
<第三実施形態>
つぎに、本発明の第三実施形態の接合構造について説明する。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0120】
図6に示すように、梁16Aの上には、断面が溝状(コ字状、又はC状)の形鋼(チャンネル)210が、開口側を上側として配置されている。
【0121】
形鋼210は、溝の底を構成するウェブ212と、ウェブ212の左右の端部に設けられ溝の側壁を構成するフランジ214、216を有している。更にフランジ214、216の先端部は屈曲され、水平方向に沿って延在する延在部218、220が形成されている。
【0122】
形鋼210のフランジ214、216には、Y方向に沿って内側(波形鋼板18側)に向けて突出するスタッド150が設けられている。なお、スタッド150は、上下に間隔をあけて複数(本実施形態では二つ)、設けられている。つまり、長手方向(X方向)に沿って並んだスタッド150の列が複数列(本実施形形態では2列)、設けられている。
【0123】
形鋼210のウェブ212には、下側に突出するスタッド160が設けられている。なお、スタッド160は、Y方向に沿って、所定の間隔をあけて複数(本実施形態では四つ)設けられている。つまり、長手方向(X方向)に沿って並んだスタッド160の列が複数列(本実施形形態では4列)、設けられている。
【0124】
そして、形鋼210のウェブ212が、梁16Aの上に配置され、且つ、下側に突出するスタッド160が梁16Aに埋設されている。
【0125】
形鋼210のウェブ212の上に、波形鋼板18のフランジ24Aが配置されている。なお、ウェブ212とフランジ24Aとは接触していなくてもよい。
【0126】
波形鋼板18のフランジ24Aには、上側に突出するスタッド50が設けられている。更に下端部21のウェブ19の両側面には、形鋼210のフランジ214、216に向かって突出するスタッド60が設けられている。
【0127】
そして、形鋼210を構成するウェブ212とフランジ214、216とで形成された充填空間102に、コンクリートQが打設され固定部104が形成されている。この固定部104に波形鋼板18のフランジ24A及びスタッド50、60を含む下端部21が埋設されている。
【0128】
また、固定部104の上面104AのY方向の両側部を形鋼210の延在部218、220が覆っている。
【0129】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0130】
本実施形態における波形鋼板18に設けられたスタッド50水平方向(Y方向)に沿って配置され、スタッド60は鉛直方向(Z方向)に沿って配置されている。つまり、スタッド50、60が水平方向と鉛直方向との両方向に沿って配置されている。よって、いずれか一方向に沿ってのみのスタッドが配置されている構成と比較し、より効果的に固定部104に伝達することができる。
【0131】
また、形鋼210には、第一実施形態よりも多くのスタッド150とスタッド160とが設けられている。よって、固定部104から形鋼210により確実に応力が伝達されると共に、伝達された応力がより確実に梁16Aに伝達される。
<第四実施形態>
つぎに、本発明の第四実施形態の接合構造について説明する。なお、第一実施形態〜第三実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0132】
図7に示すように、梁16Aの上には、断面が溝状(コ字状)の形鋼(チャンネル)250が、開口側を上側として配置されている。
【0133】
形鋼250は、溝の底を構成するウェブ252と、ウェブ252の左右の端部に設けられ溝の側壁を構成するフランジ254、256を有している。
【0134】
形鋼250のフランジ254、256には、Y方向に沿って内側(波形鋼板18側)に向けて突出するスタッド150が設けられている。
【0135】
形鋼250のウェブ252には、下側に突出するスタッド160が設けられている。なお、スタッド160は、Y方向に沿って、所定の間隔をあけて複数(本実施形態では二つ)設けられている。つまり、長手方向(X方向)に沿って並んだスタッド160の列が4二列、設けられている。
【0136】
そして、形鋼250のウェブ252が、梁16Aの上に配置され、且つ、下側に突出するスタッド160が梁16Aに埋設されている。
【0137】
形鋼250のウェブ212の上に、波形鋼板18のフランジ24Aが配置されている。なお、ウェブ212とフランジ24Aとは接触していなくてもよい。波形鋼板18のフランジ24Aには、上側に突出するスタッド50が設けられている。
【0138】
そして、形鋼250を構成するウェブ252とフランジ254、256とで形成された充填空間103に、コンクリートQが打設され固定部105が形成されている。この固定部105に波形鋼板18のフランジ24A及びスタッド50を含む下端部21が埋設されている。
【0139】
形鋼250のフランジ254、256の上端部間の隙間は、波形鋼板18のフランジ24AのY方向の長さよりも大きく設定されている。
【0140】
なお、本実施形態の形鋼250には、第三実施形態の形鋼210のように延在部218、220が形成されていないので、延在部218、220分、Y方向に幅狭となっている。
【0141】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0142】
本実施形態の形鋼250のY方向の幅は、第三実施形態の形鋼210よりも幅狭とされている。つまり、本実施形形態の固定部105のY方向の幅は、固定部104(図6を参照)よりも幅狭とされている。よって、省スペース化されている。
<変形例>
つぎに本実施形態の変形例について説明する。
【0143】
図8に示すように、変形例では、断面L字形状の抑部材258、260が形鋼250のフランジ254、256に接合されている。抑部材258、260は、充填空間103にコンクリートQが充填された後に接合される。
【0144】
なお、抑部材258、260はコンクリートQが固化する前に接合してもよいし、固化した後に接合してもよい。
【0145】
また、接合方法は、どのような方法であってもよい。例えば、溶接であってもよいし接着剤によって接合してもよい。或いは、ボルトで締結して接合してもよい。
【0146】
つぎに本変形例の作用及び効果について説明する。
【0147】
固定部105の上面105Aの一部を形鋼250のフランジ254、256に接合された抑部材258、260が覆っている。よって、波形鋼板18が梁16Aから離れる方向(ここでは上側)の応力が固定部105に伝達されると、固定部105を形鋼250のフランジ254、256に接合された抑部材258、260が受ける。よって、波形鋼板18が梁16Aから離れる方向(ここでは上側)の応力が抑部材258、260によって効果的に形鋼250に伝達され、形鋼250から梁16Aに伝達される。
【0148】
このように、形鋼250のY方向の幅を幅狭としつつ、波形鋼板18が梁16Aから離れる方向(ここでは上側)の応力が抑部材258、260によって効果的に形鋼250に伝達される。
【0149】
また、抑部材258、260は充填空間103にコンクリートQが充填された後に接合されるので、固定部105に鋼製部材である波形鋼板18を施工する際には固定部105の開口幅が大きくとれ、施工が容易である。そして、抑部材258、260を接合した後は、波形鋼板18が梁16Aから離れる方向(ここでは上側)の応力を確実に躯体に伝達することができる。
<第五実施形態>
つぎに、本発明の第五実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第四実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0150】
図9に示すように、形鋼270は、図6に示す形鋼210とスタッド150、160の数が少ない以外は、同様の構成とされている、この形鋼270全体が梁16Aの中に埋設されている。つまり、固定部104が梁16Aの中に形成されている。
【0151】
形鋼270の延在部218、220は、上側の補強筋(スラブ上端筋)37やせん断補強筋(梁スターラップ筋)36の下側に配置されている。なお、形鋼270に貫通孔をあけて上側の補強筋37やせん断補強筋梁36等をしてもよい。
【0152】
つぎに、本接合構造の施工方法について説明する。
【0153】
梁16Aを施工する際に、形鋼270全体を埋設さする。このとき、形鋼270が形成する充填空間102にはコンクリートQは打設しない。
【0154】
波形鋼板18の下端部21を形鋼270の充填空間102に配置する。このとき波形鋼板18を梁16A(又は架構12(図34参照)全体)に対して位置・姿勢を調整して配置する。
【0155】
波形鋼板18の位置・姿勢が調整された状態を維持したまま、形鋼270が形成する充填空間102にコンクリートQを充填する。充填されたコンクリートQが固化することで、波形鋼板18の下端部21が埋設されたコンクリート製の固定部104が、梁16Aの中に形成される。これにより波形鋼板18の下端部21が固定部104に固定される。
【0156】
なお、梁16Aに埋設されているせん断補強筋36と床スラブ17に埋設されている補強筋37には、形鋼270及び波形鋼板18の下端部21と交差する部位36A、37Aがある。よって、本実施形態では、形鋼270及び波形鋼板18の下端部21と干渉しないように、形鋼270及び波形鋼板18の下端部21とにスリットや孔を設け、このスリットや孔に、せん断補強筋36の部位36A及び補強筋37の部位37Aが配置されている。
【0157】
これによって、せん断補強筋36や補強筋37等の鉄筋と形鋼270及び波形鋼板18の下端部21とが干渉しないことに加え、鋼製部材である波形鋼板18から梁16Aや床スラブ17などの躯体への応力伝達手段として、当該鉄筋が寄与することとなり、応力伝達がより確実になる。
【0158】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0159】
形鋼270全体が梁16Aの中に埋設され、梁16Aから固定部104が突出していない。よって、床スラブ17に段差が生じない。
【0160】
また、形鋼270全体が梁16Aの中に埋設されているので、形鋼270が梁16Aに対してより強固に固定される。よって、固定部104から梁16Aに応力がより確実に伝達される。つまり、波形鋼板18の下端部21と梁16Aとが構造的により一体化されている。
【0161】
なお、本実施形態では、形鋼270(固定部104)の全体が梁16Aの中に埋設したがこれに限定されない。形鋼270(固定部104)の一部のみが埋設された構造であってもよい。
【0162】
例えば、図10に示すように、形鋼270(固定部104)の下側半分が梁16Aに埋設された構造であってもよい。
【0163】
なお、図10の構成の場合は、形鋼270に貫通孔91をあけて上側の補強筋37やせん断補強筋36等を通してもよい。
【0164】
また、梁16Aを下げて、梁16の主筋34やせん断補強筋36を形鋼270の下に配置してもよい。
【0165】
また、第一実施形〜第四実施形態の形鋼及び固定部の一部又は全部が梁16Aの中に埋設された構造であってもよい。更に、以降に説明する実施形態においても、形鋼や固定部の全体及び一部を梁の中に埋設することが可能であれば、埋設された構造としてもよい。
【0166】
<第六実施形態>
つぎに、本発明の第六実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第五実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0167】
図11に示すように、形鋼110、120のY方向の間隔は第一実施形態よりも狭く配置されている。よって、第四実施形態の充填空間103及び固定部105(図7参照)と同じ大きさとされている。この固定部105の中に、波形鋼板18の下端部のウェブ19が埋設されている。
【0168】
波形鋼板18の下端部のウェブ19には、面外方向(Y方向)に貫通孔25が形成されている。また、形鋼110、120のウェブ112、122にも面外方向に貫通孔29が形成されている。そして、貫通孔25、29に、面外方向(Y方向)沿って水平に配置された棒部材170が貫通している。
【0169】
波形鋼板18の下端部のウェブ19と棒部材170とが溶接やその他の方法等によって、接合されている。なお、波形鋼板18の下端部のウェブ19と棒部材170との接合部位を補強してもよい。
【0170】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0171】
波形鋼板18の下端部のウェブ19から棒部材170を介して、固定部105に応力が伝達される。固定部105に伝達された応力は、形鋼110、120にスタッド150を介して伝達される。そして、形鋼110、120に伝達された応力はスタッド160を介して梁16Aに伝達される。
【0172】
このように、波形鋼板18の下端部21と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18の下端部21からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0173】
また、形鋼110、120のようにフランジ114、124が、固定部105の上面105Aの一部を覆う構成であっても、固定部105を幅狭にしつつ、波形鋼板18の下端部を配置することができる。
<第六実施形態の変形例>
図42に示す変形例は、棒部材170(図11参照)でなく、波形鋼板18の下端部21のウェブ19の両側面に面外方向(Y方向)に沿って水平方向に突出するスタッド60が設けられている。
【0174】
そして、波形鋼板18の下端部のスタッド60を介して、固定部105に応力が伝達される。固定部105に伝達された応力は、形鋼110、120にスタッド150を介して伝達される。そして、形鋼110、120に伝達された応力はスタッド160を介して梁16Aに伝達される。
<第七実施形態>
つぎに、本発明の第七実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第六実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0175】
図12に示すように、梁16Aの上には、断面が溝状(コ字状、又はC状)の形鋼(チャンネル)310、320が配置されている。形鋼310と形鋼320とは、Y方向に間隔をあけて、且つ開口同士が対向するように配置されている。
【0176】
形鋼310、320は、第一実施形態の形鋼110、120(図1参照)とスタッド150、160が設けられていない以外は同様の構成とされている。
【0177】
形鋼310と形鋼320との間に形成された充填空間102に、コンクリートが打設され固定部104が形成されている。この固定部104に波形鋼板18のフランジ24A及びスタッド50を含む下端部21が埋設されている。
【0178】
また、固定部104と梁16Aとに跨ってスタッド350が埋設されている。
【0179】
つぎに、本接合構造部分の施工方法について説明する。
【0180】
梁16Aを施工する際に、スタッド350の上部側350Aを突出させて梁16Aに埋設させる。梁16Aの上に形鋼310、320を配置する。
【0181】
波形鋼板18の下端部21を形鋼310と形鋼320との間に配置する。このとき波形鋼板18を梁16A(又は架構12(図34参照)全体)に対して位置・姿勢を調整して配置する。
【0182】
波形鋼板18の位置・姿勢が調整された状態を維持したまま、形鋼310と形鋼320との間の充填空間102にコンクリートQを充填する。充填されたコンクリートQが固化することで、波形鋼板18の下端部21とスタッド350の上部側350Aが埋設されたコンクリート製の固定部104が形成される。
【0183】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0184】
波形鋼板18の下端部21のフランジ24Aからスタッド50を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、スタッド350に伝達される。そして、スタッド350を介して梁16Aに伝達される。
【0185】
このように、波形鋼板18の下端部21と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18の下端部21からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0186】
また、コンクリートQが固化する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0187】
したがって、波形鋼板18の構造性能を確保しつつ、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
<変形例>
図13に示す変形例では、形鋼310、320が第一実施形態の形鋼110、120とされている。これ以外の構成は、同様であるので、説明を省略する。
【0188】
つぎに、本変形例の作用及び効果について説明する。
【0189】
波形鋼板18の下端部21のフランジ24Aからスタッド50を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、スタッド350に伝達される。そして、スタッド350を介して梁16Aに伝達される。
【0190】
更に固定部104に伝達された応力は、スタッド150を介して、形鋼110、120に伝達される。そして、スタッド160を介して梁16Aに伝達される。
【0191】
このように、波形鋼板18の下端部21と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18の下端部21からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0192】
また、固定部104に伝達された応力は、スタッド350と、形鋼110、120(及びスタッド150、160)と、を介して、梁16Aに伝達される。よって、波形鋼板18の下端部21と梁16Aとがより一層一体化される。
<第八実施形態>
つぎに、本発明の第八実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第七実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0193】
図14に示すように、形鋼310と形鋼320との間に形成される充填空間102に、コンクリートQが打設され固定部104が形成されている。この固定部104に波形鋼板18のフランジ24A及びスタッド50を含む下端部21が埋設されている。
【0194】
固定部104には、梁16Aの鉄筋を構成する複数の主筋362の上部側二本と、当該主筋362を補強するせん断補強筋360の上部側360Aと、が埋設されている。
【0195】
せん断補強筋360は、四本の主筋362の回りを囲むように帯状に配置されている。そして、せん断補強筋360上部側360Aは、梁16Aから突出し、固定部104に埋設されている。つまり、せん断補強筋360は、固定部104と梁16Aとに跨って埋設されている。
【0196】
別の言い方をすると、梁16Aと固定部104とは、主筋362とせん断補強筋360とによって構造的に一体となった鉄筋コンクリート構造とされている。
【0197】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0198】
波形鋼板18の下端部21のフランジ24Aからスタッド50を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、せん断補強筋360に伝達される。そして、せん断補強筋360を介して梁16Aに伝達される。
【0199】
このように、波形鋼板18の下端部21と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18の下端部21からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0200】
また、コンクリートQが固化する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0201】
したがって、波形鋼板18の構造性能を確保しつつ、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
「変形例」
つぎに本実施形態の変形例について説明する。
<第一変形例>
図15に示す第一変形例は、上記実施形態の帯状のせん断補強筋360が、本変形例では二本のせん断補強筋364で構成されている点が異なっている。これ以外の構造及び作用効果は、上記実施形態と同様であるので、説明を省略する。
<第二変形例>
図16に示す第二変形例では、形鋼310、320が第一実施形態の形鋼110、120とされている。これ以外の構成は、上記実施形態と、同様であるので、説明を省略する。
【0202】
つぎに、本変形例の作用及び効果について説明する。
【0203】
波形鋼板18の下端部21のフランジ24Aからスタッド50を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、せん断補強筋360に伝達される。そして、せん断補強筋360を介して梁16Aに伝達される。
【0204】
更に固定部104に伝達された応力は、スタッド150を介して、形鋼110、120に伝達される。そして、スタッド160を介して梁16Aに伝達される。
【0205】
このように、固定部104に伝達された応力は、せん断補強筋360と、形鋼110、120(及びスタッド150、160)と、を介して、梁16Aに伝達される。よって、波形鋼板18の下端部21と梁16Aとがより一層一体化される。
【0206】
<第九施形態>
つぎに、本発明の第九実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第八実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0207】
図17に示すように、形鋼310と形鋼320との間に形成される充填空間102に、コンクリートQが打設され固定部104が形成されている。この固定部104に波形鋼板18のフランジ24A及びスタッド50を含む下端部21が埋設されている。
【0208】
固定部104と梁16Aとに跨ってアンカーボルト450が埋設されている。なお、後述するように、本実施形態においては、アンカーボルト450は、梁16Aを施工したのちに、梁16Aに埋め込む方式の、後施工型のカプセル型接着系アンカーボルト、所謂ケミカルアンカーボルトとされている。
【0209】
なお、ケミカルアンカー以外の各種後施工アンカー(メカニカルアンカー、ホールインアンカーなど)を用いてもよい。
【0210】
また、波形鋼板18のフランジ24Aに貫通孔が形成され、この貫通孔にアンカーボルト450が挿通されている。
【0211】
つぎに、本接合構造部分の施工方法について説明する。
【0212】
梁16Aを施工したのちに、アンカーボルト450を梁16Aに打ち込み埋設させる。アンカーボルト450を梁16Aに打ち込み埋設させる方法は、既存の方法と同様である。例えば、梁16Aにドリルで穴をあけ、ブロワーやブラシで切り粉を除去する。カプセル型接着系のアンカーボルト450を穴に挿入し、先端を斜めに切った全ネジや異形鋼棒を打ち込むことによって接着剤のカプセルが破壊され、化学反応が起こることで固定される。
【0213】
波形鋼板18の下端部21を形鋼310と形鋼320との間に配置する。このとき波形鋼板18を梁16A(又は架構12(図34参照)全体)に対して位置・姿勢を調整して配置する。なお、本実施形形態では、波形鋼板18のフランジ24Aに貫通孔が形成され、この貫通孔にアンカーボルト450が挿通されている。
【0214】
波形鋼板18の位置・姿勢が調整された状態を維持したまま、形鋼310と形鋼320との間の充填空間102にコンクリートQを充填する。充填されたコンクリートQが固化することで、波形鋼板18の下端部21とアンカーボルト450の上部側450Aが埋設されたコンクリート製の固定部104が形成される。
【0215】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0216】
波形鋼板18の下端部21のフランジ24Aからスタッド50を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、アンカーボルト450に伝達される。そして、アンカーボルト450を介して梁16Aに伝達される。
【0217】
このように、波形鋼板18の下端部21と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18の下端部21からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保される。
【0218】
また、コンクリートQが固化する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0219】
したがって、波形鋼板18の構造性能を確保しつつ、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0220】
また、後施工型のアンカーボルト450を用いることで、梁16Aを施工した後(既存の梁)にも容易に波形鋼板18を接合することができる。
【0221】
なお、梁16Aを施工した後にアンカーボルト450を埋設するのではなく、梁16Aの施工時にアンカーボルト450を埋設してもよい。
【0222】
また、図17に想像線で示すように、ナット452で、波形鋼板18のフランジ24Aをアンカーボルト450に締結してもよい。なお、この場合、波形鋼板18のフランジ24Aと梁16Aとの間に調整部材(図示略)を挟む等して、ナット452を締めこんでも波形鋼板18の姿勢が調整された状態が維持されるようにする。
【0223】
調整部材はどのようなものであってもよいが、例えば、レベル調整用の充填材(均しモルタルやセメント等)、スペーサ(樹脂材、鋼材、木材など)等があげられる。
【0224】
このようにナット452で締結することで、波形鋼板18が梁16Aから離れる方向(ここでは上側)の応力が、アンカーボルト450に直接に伝達される。よって、波形鋼板18に作用する引張応力が効果的に梁16Aに伝達される。
<第一変形例>
図18に示す第一変形例は、形鋼310、320のフランジ314、316、324、326に貫通孔が形成され、この貫通孔にアンカーボルト450が挿通されている。
【0225】
よって、形鋼310、320が形成する充填空間102にコンクリートQを充填する際に、形鋼310、320がずれるなどの不具合が防止される。
【0226】
なお、形鋼310、320のフランジ314、316、324、326とアンカーボルト450とをボルト締結してもよい。
<第二変形例>
図43に示す第二変形例は、形鋼273が図9に示す第五実施形態の形鋼270とウェブ212から突出するスタッド160とフランジ214、216から突出するスタッド150が無い構成とされている。そして、波形鋼板18のフランジ24Aと形鋼273とウェブ212とを上下方向に貫通する貫通孔が形成され、これら上下方向に貫通する貫通孔にアンカーボルト450が挿通されている。
【0227】
よって、形鋼273が形成する充填空間102にコンクリートQを充填する際に、形鋼273と波形鋼板18との位置がずれるなどの不具合が防止される。
<第十実施形態>
つぎに、本発明の第十実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第九実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0228】
図19に示すように、梁16Aの上にコンクリートが打設され固定部104が形成されている。この固定部104の上に波形鋼板18のフランジ24Aが配置され、フランジ24Aから突出するスタッド52が固定部104に埋設されている。また、固定部104と梁16Aとに跨ってスタッド160が埋設されている。
【0229】
つぎに、本接合構造部分の施工方法について説明する。
【0230】
梁16Aを施工する際に、スタッド350の上部側350Aを突出させて梁16Aに埋設させる。
【0231】
図19に想像線で示すように、型枠510、520を設け、この型枠510、520の上端部間に、波形鋼板18のフランジ24Aを配置する。このとき波形鋼板18を梁16A(又は架構12(図34参照)全体)に対して位置・姿勢を調整して配置する。
【0232】
波形鋼板18の位置・姿勢が調整された状態を維持したまま、型枠510と型枠520との間の充填空間102にコンクリートQを充填する。
【0233】
なお、充填空間102にコンクリートQを充填する方法はどのような方法であってもよい。例えば、型枠510、520に充填用の孔を設けここから充填するようにしてもよい。
【0234】
充填されたコンクリートQが固化することで、波形鋼板18のスタッド50とスタッド350の上部側350Aとが埋設されたコンクリート製の固定部104が形成される。最後に、型枠510、520を取り除く。
【0235】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0236】
波形鋼板18の下端部21のフランジ24Aからスタッド50を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、スタッド350に伝達される。そして、スタッド350を介して梁16Aに伝達される。
【0237】
このように、波形鋼板18と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0238】
また、コンクリートQが固化する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0239】
したがって、波形鋼板18の構造性能を確保しつつ、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0240】
なお、固定部104の中に、波形鋼板18のフランジ24Aやウェブ19が埋設された構造であってもよい。
【0241】
<第十一実施形態>
つぎに、本発明の第十一実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第十実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0242】
図20に示すように、梁16Aの上にコンクリートが打設され固定部104が形成されている。この固定部104の中に波形鋼板18の下端部21が埋設されている。また、固定部104と梁16Aとに跨ってスタッド350埋設されている。
【0243】
波形鋼板18の下端部21のウェブ19の両側面には、面外方向(Y方向)に沿って水平方向に突出するスタッド60が設けられている。
【0244】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0245】
波形鋼板18の下端部21からスタッド60を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、スタッド350に伝達される。そして、スタッド350を介して梁16Aに伝達される。
【0246】
このように、波形鋼板18と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0247】
また、コンクリートQが固化する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0248】
したがって、波形鋼板18の構造性能を確保しつつ、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0249】
<第十二実施形態>
つぎに、本発明の第十二実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第十一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0250】
図21に示すように、波形鋼板18の下端には、鋼製の型枠部材530が設けられている。型枠部材530は、下側を開口側として配置された垂直断面がコ字状の溝状とされている。型枠部材530の上面を構成するウェブ532には、貫通孔538が形成されている。また、型枠部材530の側壁を構成するフランジ534、536には、内側に向かって突出するスタッド550が設けられている。
【0251】
波形鋼板18の型枠部材530が梁16Aの上に配置され、型枠部材530で形成される充填空間102にコンクリートが打設され固定部104が形成されている。この固定部104の中にスタッド550に埋設されている。また、固定部104と梁16Aとに跨ってスタッド350が埋設されている。
【0252】
つぎに、本接合構造部分の施工方法について説明する。
【0253】
梁16Aを施工する際に、スタッド350の上部側350Aを突出させて梁16Aに埋設させる。
【0254】
波形鋼板18の型枠部材530の中にスタッド350の上部側350Aが収まるように、波形鋼板18の型枠部材530を梁16の上に配置する。このとき波形鋼板18を梁16A(又は架構12(図34参照)全体)に対して位置・姿勢を調整して配置する。
【0255】
波形鋼板18の位置・姿勢が調整された状態を維持したまま、型枠部材530のウェブ532の貫通孔538からコンクリートQを充填空間102に充填する。
【0256】
このようにして、充填空間102に充填されたコンクリートQが固化することで、波形鋼板18のスタッド550とスタッド350の上部側350Aとが埋設されたコンクリート製の固定部104が形成される。これにより波形鋼板18が固定部104に固定される。
【0257】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0258】
波形鋼板18の型枠部材530からスタッド550を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、スタッド350に伝達される。そして、スタッド350を介して梁16Aに伝達される。
【0259】
このように、波形鋼板18と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0260】
また、コンクリートQが固化する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0261】
したがって、波形鋼板18の構造性能を確保しつつ、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0262】
また、波形鋼板18の型枠部材530が形成する充填空間102にコンクリートQが充填され固化することによって固定部104が形成される。つまり、型枠としての機能を有する型枠部材530が波形鋼板18に設けられている。よって、別途型枠を設ける必要がない。
【0263】
ここで、本実施形態のように型枠としての機能を有する型枠部材530が波形鋼板18に設けられている構成の場合、波形鋼板18の上端部と梁16B(図34参照)との接合部位に固定部104を形成する際に、充填されたコンクリートQの落下等が防止又は抑制されるので、施工性が良い。
【0264】
<第十三実施形態>
つぎに、本発明の第十三実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第十二実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0265】
図22に示すように、波形鋼板18の下端部のウェブ19の一方の側面19Aには、面外方向(Y方向)に沿って水平方向に突出するスタッド60が設けられている
梁16Aの上には、板状の形鋼380が配置されている。形鋼380の一方の側面380Aには、面外方向(Y方向)に沿って水平方向に突出するスタッド60が設けられている。また、形鋼380の下端には下側に突出するスタッド160が設けられている。スタッド160は梁16Aに埋設されている。
【0266】
波形鋼板18のウェブ19のスタッド60が設けられた側面19Aと、形鋼380のスタッド150が設けられた側面380Aと、が向き合うように配置されている。
【0267】
そして、波形鋼板18のウェブ19と形鋼380と形成される充填空間101にコンクリートQが充填され固化することによって固定部107が形成されている。この固定部107の中に波形鋼板18のスタッド60と形鋼380のスタッド150が埋設されている。
【0268】
つぎに、本接合構造の施工方法について説明する。
【0269】
形鋼380のスタッド160を埋設して、梁16Aを施工する。波形鋼板18のウェブ19と形鋼380とをY方向に間隔をあけて配置する。このとき波形鋼板18を梁16A(又は架構12(図34参照)全体)に対して位置・姿勢を調整して配置する。
【0270】
波形鋼板18の位置・姿勢が調整された状態を維持したまま、形鋼110と形鋼120との間の充填空間101にコンクリートQを充填する。充填されたコンクリートQが固化することで、波形鋼板18のスタッド60と形鋼380のスタッド160とが埋設されたコンクリート製の固定部107が形成される。
【0271】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0272】
波形鋼板18からスタッド60を介して、固定部107に応力が伝達される。固定部107に伝達された応力は、スタッド150を介して形鋼380に伝達される。そして、形鋼380からスタッド160を介して梁16Aに伝達される。
【0273】
このように、波形鋼板18と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0274】
また、コンクリートQが固化する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0275】
したがって、波形鋼板18の構造性能を確保しつつ、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0276】
また、波形鋼板18のウェブ19と形鋼380とが形成する充填空間101にコンクリートQが充填され固化することによって固定部107が形成される。つまり、波形鋼板18のウェブ19と形鋼380とが充填空間101を形成する型枠としての機能を有している。
<第十四実施形態>
つぎに、本発明の第十四実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第十三実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0277】
図23に示すように、梁16の上には、断面が溝状(コ字状、又はC状)の形鋼(チャンネル)271が、開口側を上側として配置されている。
【0278】
形鋼271は、図9に示す第五実施形態の形鋼270とウェブ212から突出するスタッド160が無い構成とされている。
【0279】
形鋼271のウェブ212が、梁16の上に接着剤Pによって接着されている。別の言い方をすると、形鋼271のウェブ212と梁16Aとの間に形成された接着層480によって接合されている。なお、接着剤P(接着層480)については後述する。
【0280】
そして、形鋼271が形成された充填空間102に、コンクリートQが打設され固定部104が形成されている。この固定部104に波形鋼板18のフランジ24A及びスタッド50を含む下端部21が埋設されている。
【0281】
つぎに、本接合構造部分の施工方法について説明する。
【0282】
梁16Aを施工したのち、梁16Aと形鋼271のウェブ212とを接着剤Pで接着する。
【0283】
波形鋼板18の下端部21を形鋼271の充填空間102に配置する。このとき波形鋼板18を梁16A(又は架構12(図34参照)全体)に対して位置・姿勢を調整して配置する。
【0284】
波形鋼板18の位置・姿勢が調整された状態を維持したまま、形鋼271が形成する充填空間102にコンクリートQを充填する。充填されたコンクリートQが固化することで、波形鋼板18の下端部21が埋設されたコンクリート製の固定部104が、梁16Aの中に形成される。これにより波形鋼板18の下端部21が固定部104に固定される。
【0285】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0286】
波形鋼板18のフランジ24Aからスタッド50を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、スタッド150を介して形鋼271に伝達される。そして、形鋼271から接着層480を介して梁16Aに伝達される。
【0287】
このように、波形鋼板18と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0288】
また、コンクリートQが固化する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0289】
したがって、波形鋼板18の構造性能を確保しつつ、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0290】
また、接着剤Pを用いることで、梁16Aを施工した後(既存の梁)にも容易に波形鋼板18を接合することができる。
【0291】
ここで、形鋼271のウェブ212と梁16Aとを接着する接着剤Pは、接着層480を介して梁16Aに応力を伝達することが可能な接着強度を有していれば、どのようなものであってもよい。
【0292】
例えば、エポキシ樹脂系の接着剤であってもよい。また、特開平11−71906号公報に記載されている接着剤や工法を適用することができる。
【0293】
例えば、形鋼271のウェブ212と梁16Aとの隙間に接着剤Pを注入して接着してもよい。更に、形鋼271のウェブ212と梁16Aとの隙間が接着剤Pの強度の発現に好ましい大きさの隙間となるように、ウェブ212に隙間調整板を接着することで隙間を形成し、この隙間に接着剤Pを注入し接着するようにしてもよい。
【0294】
また、例えば、接着剤(エポキシ樹脂)に砂(細骨材)又は玉砂利(粗骨材)を混ぜて増量し、接着剤の使用量と実質層厚を小さくした混合接着材であってもよい。
<第十五施形態>
つぎに、本発明の第十五実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第十四実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0295】
図24に示すように、波形鋼板18の下端部21のフランジ24Aには、下側に突出するスタッド52が設けられている。
【0296】
梁16Aの中には、固定部604がY方向に沿って二つ形成されている。固定部604は、梁16Aに設けられた穴部602にコンクリートQを充填することによって形成されている。
【0297】
固定部604(穴部602)の側面604A、604Bは上方向に向かって幅狭となるように傾斜する傾斜面となっている。これらの固定部604の中に波形鋼板18のフランジ24Aから突出するスタッド52が埋設されている。
【0298】
つぎに、本接合構造部分の施工方法について説明する。
【0299】
梁16Aを施工する際に、型枠などを用いて穴部602を形成する。穴部602の中にスタッド52が配置されるように、波形鋼板18のフランジ24Aを梁16Aの上に配置する。このとき波形鋼板18を梁16A(又は架構12(図34参照)全体)に対して位置・姿勢を調整して配置する。
【0300】
波形鋼板18の位置・姿勢が調整された状態を維持したまま、穴部602にコンクリートQを充填する。充填されたコンクリートQが固化することで、波形鋼板18のスタッド52が埋設されたコンクリート製の固定部604が、梁16Aの中に形成される。これにより波形鋼板18が固定部604に固定される。
【0301】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0302】
波形鋼板18のフランジ24Aからスタッド52を介して、固定部604に応力が伝達される。固定部604に伝達された応力は、穴部602(の壁面)を介して梁16Aに伝達される。
【0303】
このとき波形鋼板18が梁16Aから離れる方向(ここでは上側)に作用する応力は、側面(傾斜面)602A,602Bによって効果的に梁16Aに伝達される。よって、波形鋼板18に作用する引張応力が効果的に梁16Aに伝達される。
【0304】
このように、波形鋼板18と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0305】
また、コンクリートQが固化する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0306】
したがって、波形鋼板18の構造性能を確保しつつ、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0307】
なお、固定部604(穴部602)の側面604A、604Bが傾斜面となっていなくてもよい(固定部604(穴部602)は、上側に向かって幅狭となっていなくてもよい)。
【0308】
しかし、このような構成の固定部604(穴部602)は、上側に向かって幅狭となった構造と比較よりも、波形鋼板18に作用する引張応力を梁16Aに伝達する効果が小さくなる。よって、このような固定部604(穴部602)は、引張応力が小さい波形鋼板18のX方向の中央部に設けることが望ましい。
「変形例」
つぎに本実施形態の変形例について説明する。
<第一変形例>
図25に示す第一変形例の固定部610は、上側の上側固定部612が下側の下側固定部614よりも幅狭となっている。別の言い方をすると、Y方向に長い下側固定部614の水平方向中央部から上側に上側固定部612が延在する形状とされている。固定部610は逆T字形状とされている。なお、穴部611は固定部610の外形と同じである。
【0309】
これら固定部610の中に波形鋼板18のフランジ24Aから突出するスタッド52が埋設されている。
<第二変形例>
図26に示す第二変形例の固定部620は、側壁にはコッター622が形成されているなお、穴部621は固定部620の外形と同じである。
【0310】
これら固定部610の中に波形鋼板18のフランジ24Aから突出するスタッド52が埋設されている。
<第三変形例>
図27に示す第三変形例では、穴部603は、梁16Aの下面まで貫通する貫通孔とされている。つまり、上記実施形態の穴部602が貫通孔となった構成とされている。そして、穴部603にコンクリートQが充填され固化することによって、固定部605が形成されている。
【0311】
このように穴部603が貫通孔とされているので、穴部603へのコンクリートQの充填が容易である。
【0312】
なお、第一変形例と第二変形例の穴部611、621も貫通孔とされていてもよい。
<第十六施形態>
つぎに、本発明の第十六実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第十五実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0313】
図38に示すように、波形鋼板18の下端部のウェブ19には、面外方向(Y方向)に貫通孔27が形成されている。なお、貫通孔27は、第六実施形態の貫通孔27(図11参照)よりも大きい。また、第六実施形態のように棒部材170(図11参照)が貫通されていない。
【0314】
そして、このウェブ19の貫通孔27にコンクリートQが入り込み固化することで、コンクリートQで構成されたコッター109が形成される。
【0315】
つぎに本変形例の作用について説明する。
【0316】
波形鋼板18の下端部のウェブ19からコッター109を介して、固定部105に応力が伝達される。固定部105に伝達された応力は、形鋼110、120にスタッド150を介して伝達される。そして、形鋼110、120に伝達された応力はスタッド160を介して梁16Aに伝達される。
【0317】
このように、波形鋼板18の下端部21と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18の下端部21からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0318】
なお、図38に想像線で示す鉄筋などの補強筋55を、貫通孔27に入れると応力伝達がより確実になる。
【0319】
また、コンクリートQが固化する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0320】
したがって、波形鋼板18の構造性能を確保しつつ、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0321】
なお、図38では、貫通孔27は一つであるが、これに限定されない。貫通孔27が複数形成され、複数のコッター109が形成されるようにしてもよい。
【0322】
また、図1のようにフランジ24Aを備える構成の場合、フランジ24Aに貫通孔を形成し、この貫通孔にコンクリートQが入り込み固化することでコッター109が形成されるように構成されていてもよい。
「鉄骨コンクリート構造への適用」
ここまでは、架構12を構成する柱14A、14B及び梁16A、16Bは、鉄筋コンクリート造とされていたが、これに限定されない。鉄骨コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造であってもよい。よって、つぎに鉄骨コンクリート造への適用について説明する。
<第十七実施形態>
つぎに、本発明の第十七実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第十六実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。また、本実施形態においても、梁16Aと波形鋼板18の下端部との接合部位(接合構造)を例として説明する。
【0323】
図28に示すように、梁16Aには、断面H形の鉄骨710が埋設されている。梁16Aの上には、断面が溝状の形鋼310、320が配置されている。形鋼310と形鋼320とは、Y方向に間隔をあけて、且つ開口同士が対向するように配置されている。
【0324】
形鋼310、320の下側のフランジ116、126が、鉄骨710のフランジ714に溶接され接合されている。すなわち、形鋼310、320のフランジ116、126と鉄骨710のフランジ714とが、溶接部R1、R2によって接合された構成とされている。
【0325】
そして、形鋼310と形鋼320との間に形成される充填空間102に、コンクリートQが充填され固化することで固定部104が形成されている。この固定部104に波形鋼板18のフランジ24A及びスタッド50を含む下端部21が埋設されている。
【0326】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0327】
波形鋼板18の下端部21のフランジ24Aからスタッド52を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、形鋼110、120にスタッド150を介して伝達される。そして、形鋼110、120に伝達された応力は、溶接部Rを介して梁16Aに伝達される。
【0328】
このように、波形鋼板18の下端部21と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、波形鋼板18の下端部21からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0329】
また、コンクリートQが固化する前に波形鋼板18の位置・姿勢を調整することで、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0330】
したがって、波形鋼板18の構造性能を確保しつつ、波形鋼板18を梁16A(架構12)に対して容易に高精度に接合することができる。
【0331】
なお、本実施形態では、図28に示すように、形鋼310、320のフランジ116、126のY方向の両端部を溶接部R1、R2で接合していたが、これに限定されない。溶接部R1と溶接部R2のいずれか一方のみで接合してもよい。
「変形例」
本実施形形態では、形鋼310、320と鉄骨710のフランジ714とは溶接部R1、R2によって接合されていたが、これに限定されない。どのような接合方法であってもよい。よって、溶接以外の接合方法を変形例として説明する。
<第一変形例>
図29に示す第一変形例では形鋼310、320のフランジ116、126と鉄骨710のフランジ714とが、ボルト750とナット752とで締結されている。
【0332】
なお、ボルト750とナット752は、高力ボルト及びナットとされ、せん断力を伝達可能に接合されている。
<第二変形例>
図30に示す第二変形例では形鋼310、320のフランジ116、126と鉄骨710のフランジ714とが、接着剤Pによって接着されている。言い換えると、形鋼310、320のフランジ116、126と鉄骨710のフランジ714との間に形成された接着層480によって接合されている。
【0333】
なお、接着剤P(接着層480)は、第十四実施形態で説明したエポキシ樹脂系の接着剤を用いることができる。また、特開平11−71906号公報に記載されている工法も適用することができる。
「間柱への適用」
ここまでは、鋼製部材としての波形鋼板18と構造躯体としての梁16A(架構12)との接合部位への適用を説明したが、これに限定されない。よって、他の例として、鋼製部材としての間柱と梁との接合部位への適用について説明する。
<第十八実施形態>
つぎに、本発明の第十八実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第十七実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は記載を省略又は簡略化する。
【0334】
図31に示すように、水平断面H形状のH形鋼である鉄骨800の上下の端部は、鋼製のフランジ810がそれぞれ設けられている。このフランジ810は板状に形成されており、溶接等で接合されている。なお、図31では、下部のみ図示されているが、上部も下部を上下逆となっている以外は同じ構造である。よって、以降の説明では、下部を代表して説明する。
【0335】
フランジ810には、上側に向かって突出するスタッド50が設けられている。なお、スタッド50は、Y方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0336】
梁16Aの上には、断面が溝状(コ字状、又はC状)の形鋼(チャンネル)110、120が配置されている。形鋼110、120は、第一実施形の形鋼とY方向の長さが短い以外は同様の構造とされている。よって、ここでは説明を省略すると共に同一の符号を付す。
【0337】
形鋼110と形鋼120との間に形成される充填空間102に、コンクリートQが打設されることによって、固定部104が形成されている。この固定部104に鉄骨800のフランジ810及びスタッド50を含む下端部が埋設されている。
【0338】
つぎに、本接合構造の施工方法について説明する。
【0339】
梁16A、16Bを施工する際に、形鋼110、120の下側のフランジ116、126から突出するスタッド160を埋設する。
【0340】
鉄骨800の下端部821を形鋼110と形鋼120との間に配置する。このとき鉄骨800を梁16Aに対して位置・姿勢を調整して配置する。鉄骨800の位置・姿勢が調整された状態を維持したまま、形鋼110と形鋼120との間の充填空間102にコンクリートQを充填する。充填されたコンクリートQが固化することで、鉄骨800の下端部821が埋設されたコンクリート製の固定部104が形成される。これにより鉄骨800の下端部821が固定部104に固定される。
【0341】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0342】
鉄骨800の下端部821のフランジ810からスタッド50を介して、固定部104に応力が伝達される。固定部104に伝達された応力は、形鋼110、120にスタッド150を介して伝達される。そして、形鋼110、120に伝達された応力はスタッド160を介して梁16Aに伝達される。
【0343】
このように、鉄骨800の下端部821と梁16Aとが構造的に一体化されている。よって、鉄骨800の下端部821からの応力を梁16Aに伝達する構造性能が確保されている。
【0344】
また、コンクリートQが固化する前に鉄骨800の姿勢を調整することで、鉄骨800を梁16Aに対して容易に高精度に接合することができる。
【0345】
したがって、鉄骨800の構造性能を確保しつつ、鉄骨800を梁16Aに対して容易に高精度に接合することができる。
<変形例>
本実施形形態では、鉄骨800は、断面H形状のH形鋼とされていたが、これに限定されない。
【0346】
例えば、図32に示す変形例のように、断面が矩形状の鋼管830の上下にフランジ810が接合された鋼製部材であってもよい。
【0347】
また、図は省略するが、断面が円形の鋼管であってもよい。或いは、H形鋼以外の例えば、L字形状やC形状の、他の形状の形鋼であってもよい。
「その他」
本発明に係る実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこうした実施形態及び変形例に限定されるものでない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0348】
例えば、床スラブ17に鋼製部材が接合された構成の場合、床スラブ17と鋼製部材との接合部位に本発明に係る接合構造が適用されていてもよい。或いは、小梁や壁等と鋼製部材との接合部位に本発明に係る接合構造を適用してもよい。
【0349】
また、構造物や架構を構成する柱及び梁は、鉄筋コンクリート造に限らず、鉄骨鉄筋コンクリート造、プレストレスコンクリート造、鉄骨造、CFT造、更には現場打ち工法、プレキャスト工法等の種々の工法を用いることができる。
【0350】
更に、構造物の鋼製部材と構造躯体との接合部位の一部に本発明の接合構造を適用してもよいし、全ての接合部位に適用してもよい。また、耐震構造、免震構造等の種々の構造の新築構造や改築構造物(既存の構造物)に適用することができる。
【0351】
また、本発明の上記各実施形態及び各変形例を組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0352】
10 構造物
12 架構(構造躯体)
14A 柱(構造躯体)
14B 柱(構造躯体)
16A 梁(構造躯体)
16B 梁(構造躯体)
17 床スラブ(構造躯体)
18 波形鋼板(鋼製部材)
27 貫通孔(第一応力伝達手段)
50 スタッド(突出部、第一応力伝達手段)
52 スタッド(突出部、第一応力伝達手段)
60 スタッド(突出部、第一応力伝達手段)
100 接合構造
101 充填空間
102 充填空間
103 充填空間
104 固定部
104A 上面(外面)
105 固定部
105A 上面(外面)
107 固定部
109 コッター(第一応力伝達手段)
110 形鋼(接合部材、第二応力伝達手段)
111 形鋼(接合部材、第二応力伝達手段)
114 フランジ(第三応力伝達手段)
120 形鋼(接合部材、第二応力伝達手段)
121 形鋼(接合部材、第二応力伝達手段)
124 フランジ(第三応力伝達手段)
150 スタッド(第二応力伝達手段)
160 スタッド(第二応力伝達手段)
170 棒部材(第一応力伝達手段)
210 形鋼(接合部材、第二応力伝達手段)
218 延在部(第三応力伝達手段)
220 延在部(第三応力伝達手段)
240 接着層(第二応力伝達手段)
250 形鋼(接合部材、第二応力伝達手段)
258 抑部材(第三応力伝達手段)
260 抑部材(第三応力伝達手段)
270 形鋼(接合部材、第二応力伝達手段)
271 形鋼(接合部材、第二応力伝達手段)
350 スタッド(連結部材、第二応力伝達手段)
360 せん断補強筋(連結部材、第二応力伝達手段)
364 せん断補強筋(連結部材、第二応力伝達手段)
380 形鋼(接合部材、第二応力伝達手段)
450 アンカーボルト(連結部材、第二応力伝達手段)
530 型枠部材
550 スタッド(突出部、第一応力伝達手段)
602 穴部(充填空間、第二応力伝達手段)
603 穴部(充填空間、第二応力伝達手段)
604 固定部
604A 側面(幅狭とされた部位、第二応力伝達手段)
604B 側面(幅狭とされた部位、第二応力伝達手段)
605 固定部
610 固定部
611 穴部(充填空間、第二応力伝達手段)
612 上側固定部(幅狭とされた部位、第二応力伝達手段)
620 固定部
621 穴部(充填空間、第二応力伝達手段)
622 コッター(第二応力伝達手段)
750 ボルト(第二応力伝達手段)
752 ナット(第二応力伝達手段)
800 鉄骨(鋼製部材)
830 鋼管(鋼製部材)
900 鋼材ブロック耐震壁(鋼製部材)
950 鋼製耐震壁(鋼製部材)
P 接着剤(第二応力伝達手段)
Q コンクリート(充填材)
R 溶接部(第二応力伝達手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造躯体に設けられ、充填材が充填空間に充填され固化することによって形成された固定部と、
前記充填材が固化することによって、前記固定部に固定された鋼製部材と、
前記鋼製部材に設けられ、前記鋼製部材から前記固定部に応力を伝達する第一応力伝達手段と、
前記第一応力伝達手段によって前記固定部に伝達された応力を前記構造躯体に伝達する第二応力伝達手段と、
を備える鋼製部材の接合構造。
【請求項2】
前記第二応力手段は、前記構造躯体に固定されると共に、前記充填材が充填される充填空間を形成する接合部材を有する、
請求項1項に記載の鋼製部材の接合構造。
【請求項3】
前記接合部材には、前記固定部における前記鋼製部材側の外面の一部又は全部を覆う第三応力伝達手段材が設けられている、
請求項2に記載の鋼製部材の接合構造。
【請求項4】
前記第二応力伝達手段は、前記接合部材と前記構造躯体とを接着する接着層を有する、
請求項2又は請求項3に記載の鋼製部材の接合構造。
【請求項5】
前記鋼製部材は、前記充填材が充填される充填空間を形成する型枠部材を有する、
請求項1に記載の鋼製部材の接合構造。
【請求項6】
前記固定部は、前記構造躯体に設けられた穴部によって形成された充填空間に、前記充填材が充填され固化することよって形成され、
前記第二応力伝達手段は、前記穴部に形成され開口側に向かって幅狭とされた部位で構成されている、
請求項1に記載の鋼製部材の接合構造。
【請求項7】
前記第一応力伝達手段は、前記鋼製部材から突出し、前記固定部内に埋設された突出部を有する、
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の鋼製部材の接合構造。
【請求項8】
前記第二応力伝達手段は、前記固定部と前記構造躯体とに跨って埋設された連結部材を有する、
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の鋼製部材の接合構造。
【請求項9】
前記鋼製部材は、波形鋼鈑で構成され、
前記構造躯体は、水平力で層間変形が発生する架構とされ、
前記架構の面内に前記波形鋼板の折筋を水平方向として配置され、前記架構の層間変形に抵抗するように、前記架構に前記波形鋼鈑が接合されている、
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の鋼製部材の接合構造。
【請求項10】
構造躯体と鋼製部材とが、請求項1〜請求項9のいずれか1項の鋼製部材の接合構造で接合された接合部位を有する構造物。
【請求項11】
応力を伝達する第一応力伝達手段が設けられた鋼製部材を、構造躯体に対して位置及び姿勢の少なくとも一方を調整して配置する鋼製部材配置工程と、
充填材を充填空間に充填し固化させることよって、位置及び姿勢の少なくとも一方が調整された前記鋼製部材を固定すると共に、前記鋼製部材に設けられた前記第一伝達部材によって伝達された応力を、第二応力伝達手段によって前記構造躯体に伝達する固定部を、前記構造躯体に形成する固定部形成工程と、
を備える鋼製部材の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【公開番号】特開2011−184866(P2011−184866A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48302(P2010−48302)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】