説明

長尺体貫通用孔防火措置具

【課題】長尺体貫通用孔の孔内周面との間で発生するコンクリート付着力を確実且つ効果的に高めることのできる長尺体貫通用孔防火措置具を提供する。
【解決手段】床板Sに形成される長尺体貫通用孔Aの孔内周面との間で発生するコンクリート付着力により孔内周面を被覆する状態で長尺体貫通用孔Aに取り付けられる環状枠体1に、これに挿通された長尺体Pの外周面と環状枠体1の内周面1aとの間の環状空間で耐火充填材4を受け止め支持可能な受止支持片部2と、床板Sの下面S1における長尺体貫通用孔Aの孔口周縁部との間でコンクリート付着力を発生可能な補助付着片部3とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床板に形成される長尺体貫通用孔を通じて火炎や煙が伝播するのを防止するために長尺体貫通用孔に取り付けて使用される長尺体貫通用孔防火措置具に関し、詳しくは、長尺体貫通用孔の孔内周面との間で発生するコンクリート付着力により孔内周面を被覆する状態で長尺体貫通用孔に取り付けられる環状枠体に、これに挿通された長尺体の外周面と環状枠体の内周面との間の環状空間で耐火充填材を受け止め支持可能な受止支持片部が形成されている長尺体貫通用孔防火措置具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の長尺体貫通用孔防火措置具は、前記環状枠体の外周面と長尺体貫通用孔の孔内周面とを前記コンクリート付着力(例えば、床板自体を成形するコンクリートや長尺体貫通用孔の周縁部を成形するために床板との間に充填される充填モルタルなどの付着力)で密着させることにより、長尺体貫通用孔への取り付けと合せて、それらの間に隙間ができるのを抑止するとともに、前記受止支持片部に前記耐火充填材を受け止め支持させることにより環状枠体の内周面と長尺体の外周面との間を閉塞し、これにより、長尺体貫通用孔を確実に閉塞して、長尺体貫通用孔を通じて火炎や煙が伝播するのを防止するものである。
【0003】
そして、従来、この種の長尺体貫通用孔防火措置具では、前記環状枠体の外周面の上下方向中間部に周方向に延びる凸条を形成することで、その凸状をコンクリート製の床板に埋め込ませる形態で長尺体貫通用孔と環状枠体との付着面積を増大させて、長尺体貫通用孔と環状枠体との間のコンクリート付着力を高く確保し、これにより、火災時の火炎や熱による環状枠体の変形を抑止して、長尺体貫通用孔と環状枠体との間に隙間ができるのを抑止したものが知られている。(下記特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−353229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の如き従来の長尺体貫通用孔防火措置具では、床板を成形するコンクリート(すなわち、前記コンクリート付着力を発生させるコンクリート)を打設するとき、環状枠体の外周面に形成された凸条の周囲(特に下方部位)にコンクリートが回り込み難いことから、その凸条の周囲でコンクリートの充填精度が低下してクラックやジャンカなどの不良が発生してしまい、そのことで、長尺体貫通用孔との間で発生するコンクリート付着力が却って低くなって、火災時の火炎や熱による環状枠体の変形により長尺体貫通用孔と環状枠体との間に隙間が生じ易くなったり、或いは、床板の強度が低くなったりする問題あった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、長尺体貫通用孔との間で発生するコンクリート付着力を確実且つ効果的に高めることのできる長尺体貫通用孔防火措置具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は長尺体貫通用孔防火措置具に係り、その特徴は、
床板に形成される長尺体貫通用孔の孔内周面との間で発生するコンクリート付着力により孔内周面を被覆する状態で長尺体貫通用孔に取り付けられる環状枠体に、これに挿通された長尺体の外周面と環状枠体の内周面との間の環状空間で耐火充填材を受け止め支持可能な受止支持片部と、前記床板の下面における長尺体貫通用孔の孔口周縁部との間でコンクリート付着力を発生可能な補助付着片部とが形成されている点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、環状枠体と長尺体貫通用孔の孔内周面との間でのコンクリート付着力に加えて、前記補助付着片部と前記床板の下面との間でコンクリート付着力を発生させることができるから、先述の従来の長尺体貫通用孔防火措置具の如く、前記コンクリート付着力を発生させるコンクリートにクラックやジャンカなどの不良が発生するのを回避しながら、長尺体貫通用孔との間でのコンクリ−ト付着力を確実且つ効果的に高めることができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補助付着片部には、前記コンクリート付着力を発生させるコンクリートをそれの打設時において受け止めるコンクリート受止板に対して仮固定するための仮固定部が備えられている点にある。
【0009】
つまり、例えば、前記仮固定部が前記受止支持片部に備えられている場合では、前記コンクリート受止板への仮固定作業を環状枠体の内側から行う必要がある。
【0010】
それに対し、仮固定部が前記補助付着片部に備えられている上記特徴構成であれば、前記コンクリート受止板への仮固定作業を環状枠体の外側から行うことができるから、上述の如く仮固定部が前記受止支持片部に備えられている場合に比べ、仮固定作業のための作業空間を広く確保することができて、作業内容の簡略化と作業時間の短縮化を図ることができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記受止支持片部の先端部が曲面形状に形成されている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、例えば、前記受止支持片部の先端部に角部が形成されている場合に比べ、受止支持片部の先端部と長尺体の外周面との接触抵抗を小さくすることができるから、長尺体を環状枠体に挿通する挿通操作を極力スムーズに行うことができる。
【0013】
また、受止支持片部の先端部と長尺体の外周面との接触によって長尺体に破損が生じることも効果的に抑止することができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記受止支持片部の先端側を折り返す形態に折り曲げることにより受止支持片部の先端部が曲面形状に形成されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、前記受止支持片部の先端部が曲面形状に形成するのに合せて、受止支持片部の体積を増加させることができるから、その体積の増加分、受止支持片部の強度を効果的に高めることができて、受止支持片部の変形を抑止することができ、これにより、受止支持片部の変形により受止支持片部に受け止め支持させた耐火充填材が不測に脱落したりするなどの不具合を効果的に抑止することができる。
【0016】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記環状枠体の下端部を内側に折り曲げることにより前記受止支持片部が形成され、その受止支持片部の先端側を折り返す形態に外側に折り曲げることにより前記補助付着片部が形成されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、前記受止支持片部と前記補助付着片部が前記環状枠体に一体的に構成されているから、例えば、受止支持片部と補助付着片部を環状枠体とは別部材として構成して、環状枠体に取り付ける場合に比べ、受止支持片部と補助付着片部が環状枠体から不測に離脱してしまうなどの不具合を確実に防止することができる。
【0018】
しかも、受止支持片部を2層構造にする形態で受止支持片部の体積を一層増加させることができるから、その体積の増加分、受止支持片部の強度を一層効果的に高めることができて、受止支持片部の変形を一層抑止することができ、これにより、受止支持片部の変形により受止支持片部に受け止め支持させた耐火充填材が不測に脱落したりするなどの不具合を一層効果的に抑止することができる。
【0019】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記環状枠体が複数の枠体形成片から構成されているとともに、それら複数の枠体形成片を連結する連結部が外方に突出する形態に構成されている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、例えば、前記環状枠体が単一の部材から構成されている場合に比べ、運搬時の占有体積を小さくすることができるから、製作現場からの運搬効率を効果的に向上させることができる。
【0021】
しかも、複数の枠体形成片を連結する連結部が外方に突出する形態に構成されているから、その外方に突出する連結部の表面積の分だけ長尺体貫通用孔の孔内周面との付着面積を広く確保することができ、これにより、長尺体貫通用孔との間でのコンクリート付着力を一層効果的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1〜図4は、複数の空調配管や電気ケーブル等の長尺体Pを床板S(本例では、コンクリート製)を貫通させる目的で床板Sに形成される長尺体貫通用孔Aに取り付けられる長尺体貫通用孔防火措置具Tを示し、この長尺体貫通用孔防火措置具Tは、長尺体貫通用孔Aの孔内周面との間で発生するコンクリート付着力により孔内周面を被覆する状態で長尺体貫通用孔Aに取り付けられる板金製の環状枠体1に、これに挿通された長尺体Pの外周面と環状枠体1の内周面1aとの間の環状空間sで耐火充填材4(図7、8を参照)を受け止め支持可能な複数の受止支持片部2と、床板Sの下面S1における長尺体貫通用孔Aの孔口周縁部との間でコンクリート付着力を発生可能な複数の補助付着片部3とを形成して構成されている。
【0023】
前記環状枠体1は、上下両端面に長尺体挿通用の開口部1c、1dを有する平面視略長方形の箱型形状に構成されており、その内周面1aの下端部には、複数の前記受止支持片部2が環状に配置形成されているとともに、外周面1bの下端部には、複数の前記補助付着片部3が略環状に配置形成され、更に、外周面1bの上端部には、環状枠体1の上端面の開口部1cを一時的に閉塞するコンクリート型枠用合板製などの蓋体6(例えば、図7、図8を参照)を取り付けるための蓋体取付片部5が環状に配置形成されている。
【0024】
具体的には、前記環状枠体1は、複数の枠体形成片としての一対の側面視略長方形状の長辺板部材1Aと一対の側面視略正方形状の短片板部材1Bとをボルトやナット等の締結手段7により連結して構成されていて、それら長辺板部材1Aと短片板部材1Bの各々の下端部に、前記受止支持片部2が、枠体連結時において環状枠体1の内周面1aの下端部に環状に配置される形態に内向き略水平姿勢で突出形成されているとともに、前記補助付着片部3が、枠体連結時において環状枠体1の外周面1bの下端部に環状に配置される形態に外向き略水平姿勢に突出されている。
【0025】
また、長辺板部材1Aと短片板部材1Bの各々の上端部には、前記蓋体取付片部5が、枠体連結時において環状枠体1の外周面1bの上端部に環状に配置される形態に外向き略水平姿勢で突出形成されている。
【0026】
つまり、前記受止支持片部2は、その上面部で後述する耐火充填材4を受け止め支持可能に構成され、前記補助付着片部3は、その上面部で床板Sの下面S1における長尺体貫通用孔Aの孔口周縁部に付着可能に構成され、前記蓋体取付片部5は、その上面部で蓋体6を取付可能に構成されている。
【0027】
すなわち、この長尺体貫通用孔防火措置具Tは、環状枠体1と長尺体貫通用孔Aの孔内周面との間でのコンクリート付着力に加えて、補助付着片部3の上面と床板Sの下面S1との間でコンクリート付着力を発生させて、長尺体貫通用孔1との間でのコンクリ−ト付着力を高く確保する。
【0028】
また、長片板部材1Aに形成された補助付着片部5には、前記コンクリート付着力を発生させるコンクリート(本例では、床板Sを成形するコンクリート)をそれの打設時において受け止めるコンクリート受止板8に対して釘、ビス、ネジ等の仮固定具9により仮固定するための仮固定部としての挿通孔が多数形成されており、具体的には、コンクリート受止板8の一例であるコンクリート型枠用合板に仮固定するための小径の一対の第1挿通孔10aと、コンクリート受止板8の一例であるデッキプレートに仮固定するための第1挿通孔10aよりも大径の一対の第2挿通孔10bとが形成されている。
【0029】
そのため、コンクリート受止板8への仮固定作業を環状枠体1の外側から極力広い作業空間を用いて行うことができ、作業内容の簡略化と作業時間の短縮化を図ることができる。
【0030】
さらに説明を加えると、受止支持片部2は、図3に示すように、環状枠体1(詳しくは、長辺板部材1A及び短辺板部材1B)の下端部を内側に折り曲げることにより形成されているとともに、補助付着片部3は、受止支持片部2の先端側を折り返す形態に外側に折り曲げることにより形成されている。
【0031】
つまり、受止支持片部2と補助付着片部3が環状枠体1に一体的に構成されているから、受止支持片部2と補助付着片部3が環状枠1から不測に離脱してしまうなどの不具合を確実に防止することができるとともに、受止支持片部2を2層構造にする形態で受止支持片部2の体積を増加させることができるから、その体積の増加分、受止支持片部2の強度を効果的に高めることができて、受止支持片部2の変形を効果的に抑止することができる。
【0032】
11は、長辺板部材1Aと短片板部材1Bとを連結する外向き突出形状の縦姿勢の連結部であり、この連結部11は、前記長辺板部材1Aの横方向両端縁部1eと、前記短片板部材1Bの左右方向両端縁部に形成された長辺板部材1Aの横方向両端縁部1eに接合するための外向き突出形状の縦姿勢の接合片部1fとから構成されている。
【0033】
そして、短片板部材1Bの接合片部1fと長辺板部材1Aの横方向両端縁部1eの各々には、前記締結手段7が挿通可能な挿通孔11aが枠体連結時において相対向する配置で形成されており、短片板部材1Bの接合片部1fと長辺板部材1Aの横方向両端縁部1eの各々を相対向させた状態で締結手段7により短片板部材1Bと長片板部材1Aとを挿通孔11aを通じて締結可能に構成されている。
【0034】
そのため、施工現場において短片板部材1Bと長片板部材1Aとを連結する使用形態を採ることにより、運搬時の占有体積を小さくして製作現場からの運搬効率を効果的に向上させることができるとともに、外方に突出する連結部11の表面積の分だけコンクリート製の床板との付着面積を広く確保することがでて、長尺体貫通用孔Aとの間でのコンクリート付着力を一層効果的に高めることができる。
【0035】
なお、2aは、耐火充填材4の種別や長尺体貫通用孔の大きさ等により受止支持片部3よりも内方位置で耐火充填材を受け止める必要がある場合に、適宜に別部材(専用の受止支持部材や木片など)をネジやビスなどの締結具14により取り付けるためのネジ受け孔であり、このネジ受け孔2aは、環状枠体1の長手側の受止支持片部3(すなわち、長辺板部材1Aの受止支持片部3)の中央部の各々に形成されている。
【0036】
次に、長尺体貫通用孔防火措置具T(以下、単に、防火措置具Tと略称する)の使用方法の一例について説明する。
【0037】
(イ)長尺体貫通用孔Aへの取り付け
図5に示すように、前記コンクリート受止板8(詳しくは、コンクリート型枠用合板)を、床板Sを形成すべき所定位置に配置したのち、防火措置具Tをコンクリート受止板8の所定位置(すなわち、床板Sに長尺体貫通用孔Aを形成する位置)に載置し、環状枠体1に形成された補助付着片部3の挿通孔10(詳しくは、第1挿通孔10a)を通して仮固定具9によりコンクリート受止板8に対して仮固定する。
【0038】
そして、コンクリート受止板8の上方からコンクリートを防火措置具Tの内部に入り込まないように打設し、コンクリートが硬化したのち(詳しくは、所定期間が経過してコンクリートが所定強度に達したのち)、コンクリート受止板8を撤去し、長尺体貫通用孔Aを成形するのと同時に長尺体貫通用孔Aへの防火措置具Tの取り付けを完了する。
【0039】
つまり、防火措置具Tは、コンクリートの硬化に伴い、長尺体貫通用孔Aの孔内周面と環状枠体1の外周面1bとの間、及び、床板Sの下面S1における長尺体貫通用孔Aの孔口周縁部と環状枠体1の下端部に形成の補助付着片部3の上面との間で夫々発生するコンクリート付着力により長尺体貫通用孔Aに対し取り付けられる。
【0040】
なお、コンクリートを打設するのに先立ち、コンクリート型枠用合板等で形成された蓋体6(図7、図8を参照)を環状枠体1の上端部の蓋体取付片部5に対し取り付けて、環状枠体4の上端面の開口部1cを閉塞しておくのが好ましい。このようにしておけば、コンクリート打設時において環状枠体1の内部にコンクリートが入り込んでしまうのを確実に防止することができるとともに、コンクリート受止板8の撤去後において、作業者が環状枠体1の内部に脚を捕られてしまったり、或いは、作業者が環状枠体1の内部を通じて落下してしまうなどの不具合を防止することができる。
【0041】
(ロ)防火措置具Tへの長尺体Pの挿通(図6を参照)
長尺体貫通用孔Aへの防火措置具Tの取り付けが完了したあと、まず、長尺体貫通用孔Aに取り付けられた環状枠体1の受止支持片部2に対し、環状枠体1の下端面の開口部1dを被覆する状態で受止支持補助部材としての合成樹脂製(例えば、PP製など)の補助ネット12を貼設する。
【0042】
この補助ネット12は、前記環状枠体1の下端面の開口部1dの開口形状及び開口面積に対応した大きさに形成されているとともに、ネット中央部に長手方向に沿って一連の切り込み12aが予め形成されており、長尺体Pの挿通を許容するように構成されている。
【0043】
次に、防火措置具Tの環状枠体1、及び、貼設された補助ネット12に対して上方又は下方から長尺体Pを挿通させる。このとき、環状枠体1の下端部に形成の受止支持片部2の先端部は曲面形状に構成されているから、受止支持片部2の先端部と長尺体Pの外周面との接触抵抗を小さくすることができて、長尺体Pを環状枠体1に挿通する挿通操作を極力スムーズに行うことができるとともに、受止支持片部2の先端部と長尺体Pの外周面との接触によって長尺体Pに破損が生じることも効果的に抑止することができる。
【0044】
(ハ)環状空間sへの耐火充填材Tの充填(図6を参照)
防火措置具Tへの長尺体Pの挿通が完了したあと、環状枠体1の内周面1aと、これに挿通された長尺体Pの外周面との間の環状空間sに対し、大きさの異なる複数サイズ(本例では、3サイズ)の多数の耐火充填材4を充填して環状空間sを閉塞し、長尺体貫通用孔Aの防火措置を完了する(図7、図8の状態)。
【0045】
前記耐火充填材4は、本例では、図6に示すように、耐火材を主体とする耐火ブロックを袋体に袋詰して構成された袋入耐火ブロック4Aと、熱膨張性耐火材を主体とする熱膨張性シートを可撓性の袋体に袋詰して構成された袋入熱膨張性耐火シート4Bとを一体化して構成されており、詳しくは、袋入熱膨張性耐火シート4Bを袋入耐火ブロック4Aに対し袋入耐火ブロック4Aの両端面が露出する状態で巻装するとともに、袋入熱膨張性耐火シート4Bの巻装方向と交差する方向に不織布などで製作された帯状バンド4Cを巻着して構成されている。
【0046】
前記耐火ブロックとしては、ロックウールやグラスウールの短繊維どうしを絡ませた綿塊状のものを採用しており、また、前記熱膨張性耐火シートとしては、断熱性を備えるロックウール(耐火性材料の一例)の短繊維を主体に、膨張黒鉛などの熱膨張性材料をパルプ材などの有機性繊維に含浸させたフェルト状のものを採用している。
【0047】
なお、耐火充填材4の充填順序としては、まず、環状空間sの長手方向両端部から充填するのが好ましい。このような順序で充填すれば、長手方向両端部への耐火充填材4の充填により、補助ネット12を引張状態にすることができ、これに続く耐火充填材4の充填作業を行い易くすることができる。
【0048】
〔その他の実施形態〕
(1)前述の第1実施形態の改良として、図9、図10に示すように、環状枠体1の長手側の受止支持片部2の中央部の各々に形成されたネジ受け孔2aに、受止支持片部2よりも内方で耐火充填材4を受止支持可能な板金製の補助受止支持部材13を設けてもよい。
【0049】
前記補助受止支持部材13は、図10(イ)、(ロ)に示すように、前記受止支持片部2のネジ受け孔2aを通じてネジ止め可能な取り付け孔13aを有し、受止支持片部2に取り付けた状態で長尺体Pの挿通方向と直交する姿勢で受止支持片部2の内方に突出配置される形態に構成された第1受け片部13Aの先端側に、長尺体の挿通方向と直交する姿勢で第1受け部受止支持片部の内方に突出配置可能な第2受け片部13Bが、長孔の切欠からなる脆弱部13cを介して長尺体から遠ざける側に折り曲げ可能な状態で一体成形されている。
【0050】
また、第1受け片部13Aの中央部には、前記補助ネット12の網目に係止可能なネット係止部13bが長尺体Pの挿通方向に沿う起立姿勢に折り曲げ形成されている。
【0051】
つまり、この実施形態では、補助受止支持部材13のネット係止部13bにより、補助ネット12の貼付作業の簡略化と作業時間の短縮化を図ることができる。また、補助受止支持部材13の第1、第2受け片部13A、1Bにも耐火充填材4を受け止め支持させることができるから、特に、長尺体貫通用孔の長手方向長さが大きくなる場合の使用に有効である。
【0052】
なお、第2受け片部13Bが、長尺体Pの挿通操作の邪魔になる場合には、第2受け片部13Bを長尺体Pから遠ざける側に折り曲げればよい。
【0053】
(2)前述の実施形態では、環状枠体1が板金製である場合を例に示したが、例えば、プラスチックなどの合成樹脂製や木製などであってもよい。
【0054】
(3)環状枠体1の大きさや形状などの具体的構成は、前述の実施形態で示した如き構成に限られるものではなく、種々の構成変更が可能であり、例えば、形状としては、正面視正方形、正面視円形、称面視多角形などの箱型形状であってもよい。
【0055】
(4)前述の実施形態では、環状枠体1に受止支持片部2が複数形成されている場合を例に示したが、環状枠体1に受止支持片部2が1つだけ形成されていてもよい。
【0056】
(5)前述の実施形態では、環状枠体1に補助付着片部が複数形成されている場合を例に示したが、環状枠体1に補助付着片部3が1つだけ形成されていてもよい。
【0057】
(6)前述の実施形態では、受止支持片部2、補助付着片部3、蓋体取付片部5が環状枠体1に一体成形されている場合を例に示したが、それらの全部又は一部を環状枠体1とは別部材として成形し、環状枠体1に取り付けるようにしてもよい。
【0058】
(7)前述の実施形態では、床板Sがコンクリート製である場合において、床板Sを成形するコンクリートのコンクリート付着力により環状枠体1を長尺体貫通用孔Aに取り付ける場合を例に示したが、例えば、床板Sを発泡コンクリートや不燃ボードなどの材料で構成するとともに、床板Sと環状枠体1との間にモルタルを充填することで、その充填モルタルのコンクリート付着力により環状枠体1を長尺体貫通用孔Aに取り付ける構成にしてもよい。
【0059】
(8)補助ネット12の具体的構成は、前述の実施形態に示した如き構成のものに限らず、種々の構成変更が可能である。
【0060】
(9)前述の実施形態では、受止支持片部2の上面に補助ネット12を貼設する場合を例に示したが、必ずしも補助ネット12を貼設する必要はない。また、補助ネット12に代えて、長尺体Pを挿通可能な開口部を中央に備える板材を設けてもよい。
【0061】
(10)前述の実施形態では、受止支持片部2の上面に補助ネット12を一枚だけ貼付する場合を例に示したが、二枚以上貼付してもよい。
【0062】
前述の如く、補助ネット12を二枚以上貼付する場合において、例えば、補助ネット12のネット中央部に長手方向に沿う一連の切り込み12aを形成するのに代え、ネット中央からネット一端面に亘るネット一端部に一連の切り込みを形成するとともに、その補助ネット12の二枚を、夫々のネット一端部側から夫々の切り込みに長尺体Pを差し込むことにより、それら二枚の補助ネット12により長尺体Pを挟み込む形態でネット一端部どうしを重合させた重合姿勢で受止支持片部2の上面に貼付する構成にしてもよい。
【0063】
(11)耐火充填材4は、前述の実施形態に示した如き構成のものに限らず、種々のものを採用できる。
【0064】
なお、耐火充填材4として、例えば、パテ等の流動材を採用する場合には、受止支持片部2に補助ネット12を貼設するのに代えて、パテ等の流動材を受け止め支持可能な板材を設けるのが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る長尺体貫通用孔防火措置具を示す斜視図
【図2】本発明に係る長尺体貫通用孔防火措置具を示す平面図
【図3】本発明に係る長尺体貫通用孔防火措置具を示す側面断面図
【図4】本発明に係る長尺体貫通用孔防火措置具の分解斜視図
【図5】本発明に係る長尺体貫通用孔防火措置具の使用方法を示す説明図
【図6】本発明に係る長尺体貫通用孔防火措置具の使用方法を示す説明図
【図7】本発明に係る長尺体貫通用孔防火措置具の使用方法を示す説明図
【図8】本発明に係る長尺体貫通用孔防火措置具の使用方法を示す説明図
【図9】本発明に係る長尺体貫通用孔防火措置具のその他の実施形態を示す平面図
【図10】本発明に係る長尺体貫通用孔防火措置具のその他の実施形態を示す要部斜視図
【符号の説明】
【0066】
S 床板
S1 床板の下面
A 長尺体貫通用孔
P 長尺体
T 長尺体貫通用孔防火措置具
1 環状枠体
1a 環状枠体の内周面
1A、1B 枠体形成片(長辺板部材、短辺板部材)
2 受止支持片部
3 補助付着片部
4 耐火充填材
10a、10b 仮固定部(挿通孔)
11 連結部
s 環状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板に形成される長尺体貫通用孔の孔内周面との間で発生するコンクリート付着力により孔内周面を被覆する状態で長尺体貫通用孔に取り付けられる環状枠体に、これに挿通された長尺体の外周面と環状枠体の内周面との間の環状空間で耐火充填材を受け止め支持可能な受止支持片部と、前記床板の下面における長尺体貫通用孔の孔口周縁部との間でコンクリート付着力を発生可能な補助付着片部とが形成されている長尺体貫通用孔防火措置具。
【請求項2】
前記補助付着片部には、前記コンクリート付着力を発生させるコンクリートをそれの打設時において受け止めるコンクリート受止板に対して仮固定するための仮固定部が備えられている請求項1記載の長尺体貫通用孔防火措置具。
【請求項3】
前記受止支持片部の先端部が曲面形状に形成されている請求項1又は2記載の長尺体貫通用孔防火措置具。
【請求項4】
前記受止支持片部の先端側を折り返す形態に折り曲げることにより受止支持片部の先端部が曲面形状に形成されている請求項3記載の長尺体貫通用孔防火措置具。
【請求項5】
前記環状枠体の下端部を内側に折り曲げることにより前記受止支持片部が形成され、その受止支持片部の先端側を折り返す形態に外側に折り曲げることにより前記補助付着片部が形成されている請求項4記載の長尺体貫通用孔防火措置具。
【請求項6】
前記環状枠体が複数の枠体形成片から構成されているとともに、それら複数の枠体形成片を連結する連結部が外方に突出する形態に構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の長尺体貫通用孔防火措置具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−136581(P2008−136581A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324023(P2006−324023)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000119830)因幡電機産業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】