説明

開放弁

【課題】この発明は、シリンダ内の異物をピストンの動作時にシリンダから二次側流路内に排出できるようにし、シリンダ内の異物に起因する動作不良の発生を抑制できるとともに、弁ボディをダイカストし易くし、かつ、材料を削減し、製造コストを低減できる開放弁を得る。
【解決手段】弁ボディ1には、一次側流路2と二次側流路3とが連通孔4を介して連通され、円筒状のシリンダ5がその円筒状の開口を二次側流路3に臨ませて、かつ、その軸心を連通孔4の孔中心に一致させて、二次側流路3を挟んで連通孔4と相対して形成されている。そして、ピストン16がシリンダ5内に摺動自在に配設されて、シリンダ5内をピストン室5aと作動室5bとに区分している。また、ステム19が一端をピストン16の軸心位置に固着され、他端をディスク部7のステム嵌合凹部9に嵌着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スプリンクラ消火設備等の消防用設備に用いられる開放弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のピストンを有する開放弁は、バルブ主体の一次側流路と手動バルブを介して接続した一次圧流入孔を有し、小孔を穿設したピストンにより下部室と上部室に区分されたシリンダの上壁面に設けたステム挿入孔にシールリングを嵌装するとともに、ピストンに臨む部分に所定長さの細径部を形成し、上部室に設けた小孔とバルブ主体の二次側流路に嵌装したエゼクタに設けた小孔と連通するバルブ主体の小孔とを制御バルブを有する配管で接続して構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−258137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の開放弁では、シリンダはピストンにより上部室と下部室とに区分されているので、作業者は、組立時、下部室側から上部室内を見ることができず、ナットなどの部品が上部室内に置き忘れられたり、ゴミなどが上部室内に混入したままとなる、という不具合がある。しかし、従来の開放弁では、上部室が上壁面により二次側流路と隔離されているので、弁動作時に、上部室内に混入している部品やゴミなどの異物がピストンと上壁面との間に挟まれて、ピストンの変形をもたらし、弁の動作不良を発生させるという問題があった。また、異物が薄い場合には、弁動作時に、ピストンのシリンダとの摺動部に嵌装されているOリングを傷つけ、弁の動作不良を発生させるという問題もあった。
また、従来の開放弁では、上壁面が上部室と二次側流路とを隔離するようにバルブ主体に一体に形成され、ピストンに突設されたステムを挿通するためのステム挿入孔が上壁面に穿設されているので、バルブ主体の構造が複雑なものとなり、製造コストが高くなるという問題もあった。
【0005】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、弁ボディに形成されるシリンダと二次側流路との間の隔壁をなくして、シリンダ内の異物をピストンの動作時にシリンダから二次側流路内に排出できるようにし、シリンダ内の異物に起因する動作不良の発生を抑制できるとともに、弁ボディをダイカストし易くし、かつ、材料を削減し、製造コストを低減できる開放弁を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による開放弁は、一次側流路と二次側流路とが連通孔を介して連通され、円筒状のシリンダがその円筒状の開口を一次側流路と二次側流路とのいずれかの流路に臨ませて、かつ、その軸心を該連通孔の孔中心に一致させて、当該流路を挟んで該連通孔と相対して形成された弁ボディと、流路側の上記連通孔の開口縁部に接離して該連通孔を開閉するディスク部、該ディスク部の一側から延設されて該連通孔に摺動自在に嵌挿されるガイド部および該ディスク部の一側中央部に凹設されたステム嵌合凹部を有する主弁と、上記ディスク部を上記連通孔の開口縁部に押圧するように付勢するスプリングと、上記シリンダ内に摺動自在に配設されて、該シリンダ内を流路側のピストン室と反流路側の作動室とに区分し、該作動室内への作動流体の導入および該作動室からの作動流体の排出により該シリンダの軸心方向に往復移動するピストンと、一端が上記ピストンの軸心位置に固着され、他端が上記ステム嵌合凹部に嵌着されて、該ピストンの移動力を上記主弁に伝達するステムと、上記シリンダの内壁面の流路側の開口端部に突設され、流路側に移動する上記ピストンの外周縁部に当接して該ピストンの流路側への移動量を規制するストッパと、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、円筒状のシリンダがその円筒状の開口を流路に臨ませて、かつ、その軸心を連通孔の孔中心に一致させて、流路を挟んで連通孔と相対して弁ボディに形成されている。そこで、ピストン室と流路とを隔離する隔壁がなく、弁ボディの構造が簡素化されるので、ダイカストし易くなり、かつ、材料が削減され、製造コストを低減できるとともに、小型化が図られる。また、ピストン室内に置き忘れた部品やピストン室内に混入したゴミなどの異物は、ピストンの移動によりシリンダの開口から流路内に排出されるので、組立時に、異物がピストン室5a内に入り込んでも、開放弁の動作不良の発生が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に開放弁における弁全閉状態を示す断面図、図2はこの発明の実施の形態1に開放弁における弁全開状態を示す断面図、図3は図1のIII−III矢視断面図である。なお、図1および図2における主弁の断面は、便宜上、図3のA−B断面を示している。
【0009】
図1乃至図3において、弁ボディ1は、例えば、鉄等のダイカスト製であり、一次側流路2と、二次側流路3と、一次側流路2と二次側流路3とを連通する連通孔4と、軸心を連通孔4の孔中心に一致させて、かつ、二次側流路3を挟んで連通孔4と相対して、二次側流路3に開口するように形成された円筒状のシリンダ5と、を備えている。
【0010】
主弁6は、ディスク部7と、ディスク部7の一側の縁部近傍から周方向に等角ピッチで主弁6の軸心方向に延設された4本のガイド部8と、ディスク部7の一側中央部に凹設されたステム嵌合凹部9と、ディスク部7の外周部に嵌着されたOリング10と、を備えている。そして、主弁6は、一次側流路2側からガイド部8を連通孔4に挿入して、摺動自在に装着されている。
【0011】
ガイドロッド11は、ディスク部7の他側中央部に突設され、蓋体12に穿設されたロッド挿通孔12aに摺動自在に嵌挿されている。そして、Oリング13が、ガイドロッド11とロッド挿通孔12aとの間に介装され、一次側流路2からロッド挿通孔12aを介しての流体の漏れを防止している。また、スプリング14がディスク部7と蓋体12との間に縮設され、ディスク部7を二次側流路3側に押圧している。これにより、Oリング10が連通孔4の外周縁部で構成されるバルブシート4aに密接している。
【0012】
シリンダ蓋体15は、シリンダ5の反二次側流路3側の開口を塞口するように弁ボディ1に取り付けられている。そして、ピストン16がシリンダ5内に摺動自在に挿入され、Oリング17がピストン16の外周部に嵌装されて、シリンダ5内が二次側流路3側のピストン室5aとシリンダ蓋体15側の作動室5bとに区画されている。さらに、ストッパ18が、シリンダ5の内壁面の二次側流路3側の開口端部に周方向の全周にわたって径方向に突設され、ピストン16の二次側流路3側への移動量を規制している。なお、ストッパ18は過度に突出させる必要はなく、ピストン16の外周縁部に当接してピストン16の移動を阻止できる程度の突出量であればよい。
ステム19は、一端をピストン16の中心位置に固着され、他端をディスク部7のステム嵌合凹部9に嵌着されて、その軸心がシリンダ5の軸心に一致するように取り付けられている。
【0013】
ここで、このように構成された開放弁を加圧開放式に用いた場合についての動作について説明する。
まず、開放弁が閉止しているとき、流体である水が一次側流路2内に導入されており、一次側の水圧とスプリング14のばね力がディスク部7を加圧して、Oリング10がバルブシート4aに密接している。これにより、一次側流路2から連通孔4を介して二次側流路3への水の流入が阻止される。
ついで、開放弁に開放信号があると、パイロット弁(図示せず)が開放され、作動流体としての水が蓋体15に設けられた導入孔15aから作動室5b内に導入される。そして、作動室5b内の水圧がディスク部7を加圧している一次側の水圧とスプリング14のばね力との総和を上回ると、ピストン16が二次側流路3側に移動する。このピストン16の移動力がステム19を介して主弁6に伝達され、主弁6が一次側流路2側に移動し、Oリング10が連通孔4の開口縁部で構成されるバルブシート4aから離れ、開放弁が開放される。そして、ピストン16が移動してストッパ18に当接すると、それ以上の移動が阻止される。これにより、水が、図2中矢印で示されるように、一次側流路2から連通孔4を介して二次側流路3に流入する。
ついで、開放弁に閉止信号があると、パイロット弁が閉止され、作動室5b内の水がシリンダ蓋体15に設けられた排出孔15bから排出される。そして、作動室5b内の水圧が低下すると、スプリング14の付勢力により主弁6が二次側流路3側に押圧され、Oリング10がバルブシート4aに密接し、開放弁が閉止状態となる。
ここで、導入孔15aと排出孔15bを記載したが、導入孔15aおよび排出孔15bの一方の孔のみを設置し、1つの孔で導入と排出とを行うことも可能である。
【0014】
このように、この実施の形態1では、シリンダ5が二次側流路3に開口しているので、ピストン室5a内に置き忘れた部品やピストン室5a内に混入したゴミなどの異物は、開放弁の開放動作時のピストン16の移動によりピストン室5aから二次側流路3内に排出される。これにより、組立時に、異物がピストン室5a内に入り込んでも、開放弁の動作不良の発生が抑制される。
また、ピストン室5aと二次側流路3とを隔離する隔壁がないので、弁ボディ1の構造が簡素化され、ダイカストし易くなり、かつ、材料が削減され、製造コストを低減できるとともに、小型化が図られる。
また、ステム19の他端がディスク部7のステム嵌合凹部9に嵌着されているので、ピストン16の動作時に、ステム19の軸心がシリンダ5の軸心に対してずれることがない。これにより、ピストン16の動作が安定し、開放弁の動作不良を引き起こすことが抑制される。
【0015】
なお、上記実施の形態1では、ストッパ18が周方向の全周にわたって一続きに形成されているものとしているが、ストッパは必ずしも周方向に一続きに形成されている必要はなく、島状に分割形成されてもよい。そして、ストッパを島状に分割形成する場合、分割形成された各ストッパ部を周方向に等角ピッチに配列させることで、各ストッパ部の周方向長さを短くすることができる。例えば、2つ、或いは3つのストッパ部を周方向に等角ピッチに配列させれば、ストッパ部間の周方向間隔が広くなり、ストッパ部の周方向隙間が後述する実施の形態2,3における切り欠き部として機能する。
また、上記実施の形態1では、開放弁を加圧開放式に使用しているが、連通孔4に対してディスク部7を逆側に配置することで減圧開放式とすることも可能である。さらに、上記実施の形態1の流水方向を逆にして、一次側と二次側とを逆にすることも可能である。
【0016】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2に係る開放弁の要部断面図である。
図4において、切り欠き部20a,20bがストッパ18の一部を切り欠いて形成されている。この切り欠き部20aは、開放弁が縦置きに設置された場合に、即ち図1が鉛直面における断面を示すような状態に開放弁が設置された場合に、ストッパ18の鉛直下方の部位を切り欠いて形成されている。また、切り欠き部20bは、開放弁が横置きに設置された場合に、即ち図1が水平面における断面を示すような状態に開放弁が設置された場合に、ストッパ18の鉛直下方の部位を切り欠いて形成されている。そして、切り欠き部20a,20bは90度ずれて形成され、その切り欠き幅Lがその弁サイズに使用されるナット六角寸法もしくは六角ナットが滑らず保持される位置より広く形成されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0017】
この実施の形態2によれば、開放弁を縦置き或いは横置きに設置しても、切り欠き部20a,20bのいずれかが、鉛直下方に位置している。そこで、異物がピストン室5a内に入り込んでも、異物はピストン室5aの鉛直下方に集まり、ピストン16がシリンダ5内を摺動移動しつつ異物を二次側流路3側に移動させ、切り欠き部20a,20bから二次側流路3内に押し出す。これにより、組立時に、異物がピストン室5a内に入り込んでも、開放弁の動作不良の発生がより確実に抑制される。
【0018】
また、切り欠き部20a,20bの切り欠き幅Lがその弁サイズに使用されるナット六角寸法もしくは六角ナットが滑らず保持される位置より広く形成されているので、例えナットがピストン室5a内に入り込んでも、ピストン16の動作時にナットを切り欠き部20a,20bから確実に二次側流路3に排出することができる。
また、切り欠き部20a,20bは90度ずれて形成されているので、開放弁の縦置きに設置されても、横置きに設置されても、ピストン16の動作時に、異物を二次側流路3に確実に排出できる。
【0019】
なお、開放弁を縦置きに設置する場合、図1が鉛直面における断面を示すような第1の縦置き状態と、この第1の縦置き状態をシリンダ5の軸心周りに180度回転させた第2の縦置き状態とがある。また、開放弁を横置きに設置する場合、図1が水平面における断面を示すような第1の横置き状態と、この第1の横置き状態をシリンダ5の軸心周りに180度回転させた第2の横置き状態とがある。そこで、各設置状態で、切り欠き部がシリンダ5内の鉛直下方に位置するように、90度間隔で4つの切り欠き部を形成してもよい。この場合、開放弁は4つの設置状態のいずれの状態に設置されても、ピストン16の動作時に、切り欠き部から異物を確実に二次側流路3に排出でき、さらに優れた汎用性が得られる。
【0020】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3に開放弁における弁全閉状態を示す断面図である。
図5において、ステム嵌合凹部9aがステム嵌合凹部9より深くしてディスク部7の一側中央部に凹設されている。この深さは、ピストン16とディスク部7が最も離れた場合でもステム19がステム嵌合凹部9aから外れない量とする。そして、ステム19が、一端をピストン16の中心位置に固着され、他端をディスク部7のステム嵌合凹部9aに嵌着されて、その軸心がシリンダ5の軸心に一致するように取り付けられている。さらに、切り欠き部20aがシリンダ5内の鉛直下方に位置するストッパ18の部位を切り欠いて形成されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0021】
この実施の形態3によれば、ステム嵌合凹部9aがステム嵌合凹部9より深く形成され、ピストン16とディスク部7が最も離れた場合でもステム19がステム嵌合凹部9aから外れないので、ステム19の軸心ずれがより起こりにくくなり、より安定したピストン16の動作が実現できる。
また、切り欠き部20aがシリンダ5内の鉛直下方に位置するように形成されているので、シリンダ5内に入り込み、シリンダ5内の鉛直下方に集まった異物は、ピストン16の移動とともに二次側流路3側に押され、切り欠き部20aから二次側流路3に排出される。これにより、異物がピストン室5a内に入り込んでも、開放弁の動作不良の発生がより確実に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態1に開放弁における弁全閉状態を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に開放弁における弁全開状態を示す断面図である。
【図3】図1のIII−III矢視断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る開放弁の要部断面図である。
【図5】この発明の実施の形態3に開放弁における弁全閉状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 弁ボディ、2 一次側流路、3 二次側流路、4 連通孔、5 シリンダ、5a ピストン室、5b 作動室、6 主弁、7 ディスク部、8 ガイド部、9,9a ステム嵌合凹部、14 スプリング、16 ピストン、18 ストッパ、19 ステム、20a,20b 切り欠き部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側流路と二次側流路とが連通孔を介して連通され、円筒状のシリンダがその円筒状の開口を一次側流路と二次側流路とのいずれかの流路に臨ませて、かつ、その軸心を該連通孔の孔中心に一致させて、当該流路を挟んで該連通孔と相対して形成された弁ボディと、
流路側の上記連通孔の開口縁部に接離して該連通孔を開閉するディスク部、該ディスク部の一側から延設されて該連通孔に摺動自在に嵌挿されるガイド部および該ディスク部の一側中央部に凹設されたステム嵌合凹部を有する主弁と、
上記ディスク部を上記連通孔の開口縁部に押圧するように付勢するスプリングと、
上記シリンダ内に摺動自在に配設されて、該シリンダ内を流路側のピストン室と反流路側の作動室とに区分し、該作動室内への作動流体の導入および該作動室からの作動流体の排出により該シリンダの軸心方向に往復移動するピストンと、
一端が上記ピストンの軸心位置に固着され、他端が上記ステム嵌合凹部に嵌着されて、該ピストンの移動力を上記主弁に伝達するステムと、
上記シリンダの内壁面の流路側の開口端部に突設され、流路側に移動する上記ピストンの外周縁部に当接して該ピストンの流路側への移動量を規制するストッパと、
を備えたことを特徴とする開放弁。
【請求項2】
切り欠き部が上記ストッパの一部を切り欠いて上記シリンダ内の鉛直下方に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の開放弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−271701(P2006−271701A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95494(P2005−95494)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】