説明

防振ブッシュの取付構造

【課題】防振ブッシュを被取付部材の円筒部に取り付けたり円筒部から取り外したりする作業を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】ロアアーム(被取付部材)12の円筒部14の内周面に軸方向溝42を設ける一方、防振ブッシュ10の外筒26の一端部に突起50を設け、外筒26がその一端部側から円筒部14内に相対的に嵌合され、フランジ40によって規定される嵌合端まで嵌合されると、円筒部14の軸方向の一端部から突起50が突き出す。その状態で軸心Sまわりに所定角度だけ相対回転させると、円筒部14の一端部に設けられた係止部44に突起50が係止され、防振ブッシュ10が円筒部14に対して軸方向の抜け出し不能に取り付けられる。また、フランジ40を弾性変形させながら防振ブッシュ10と円筒部14とを相対回転させて突起50と軸方向溝42とを一致させれば、防振ブッシュ10を軸方向へ抜き出して取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防振ブッシュに係り、特に、その防振ブッシュを被取付部材の円筒部に取り付けたり円筒部から取り外したりする作業を容易に行うことができる取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の軸部材の外周側に設けられたゴム弾性体と、そのゴム弾性体の外周側に設けられた外筒と、を有する防振ブッシュが、例えば車両のサスペンション装置などに広く用いられており、ロアアーム等の所定の被取付部材の円筒部内に上記外筒が嵌合されて軸方向の抜け出し不能に取り付けられるようになっている。特許文献1に記載の防振ブッシュはその一例で、外筒が変形可能な樹脂製で、被取付部材の円筒部の内周面には段差が設けられており、外筒を縮径させながら円筒部内に圧入することにより、その外筒が円筒部の内周面の段差に倣って変形させられ、軸方向の抜け出し不能に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−211810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の取付構造においては、被取付部材の円筒部内に防振ブッシュが圧入され、樹脂製の外筒が変形して軸方向の抜け出しが阻止されるため、その防振ブッシュを取り外すことが困難で、例えば特性が異なる複数種類の防振ブッシュを交換しながら性能試験等を行う場合、交換が面倒で時間が掛かるとともに外筒が変形したり破損したりする恐れがあった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、防振ブッシュを被取付部材の円筒部に取り付けたり円筒部から取り外したりする作業を容易に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、所定の軸部材の外周側に設けられたゴム弾性体と、そのゴム弾性体の外周側に設けられた外筒と、を有する防振ブッシュに関し、前記外筒が所定の被取付部材の円筒部内に相対的に嵌合されて軸方向の抜け出し不能に取り付けられる取付構造であって、(a) 互いに嵌合される前記外筒および前記円筒部の軸方向の嵌合端を規定するストッパと、(b) 前記外筒および前記円筒部の何れか一方に設けられた軸方向溝と、(c) 前記外筒および前記円筒部の他方に設けられ、それ等の外筒と円筒部とを軸方向に嵌合する際に前記軸方向溝内を移動させられる突起と、(d) 前記軸方向溝が設けられる一方の部材に設けられ、前記外筒および前記円筒部が前記嵌合端まで嵌合された後に軸心まわりに所定角度だけ相対回転させられることにより、前記軸方向溝から抜け出した前記突起が係止される係止部と、を有することを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明の防振ブッシュの取付構造において、(a) 前記被取付部材は車両のロアアームで、(b) 前記軸部材は、前記防振ブッシュから軸方向の両側へ突き出す一対の連結部を介して車体に固定されるもので、(c) 前記軸方向溝は前記円筒部の内周面に軸方向の全長に亘って設けられており、(d) 前記突起は前記外筒の軸方向の一端部に設けられ、その外筒がその一端部側から前記円筒部に対して前記嵌合端まで嵌合されることによりその円筒部の軸方向の一端部から突き出し、軸心まわりに相対回転させられることによりその円筒部の一端部に設けられた前記係止部に係止されることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第2発明の防振ブッシュの取付構造において、(a) 前記ストッパは、前記外筒の軸方向の他端部においてその外筒よりも外周側へ突き出すように前記ゴム弾性体に一体に設けられたフランジで、(b) 前記円筒部の一端部に設けられた前記係止部は、前記フランジがその円筒部の他端部に当接して弾性変形させられることにより前記突起が乗り越えることができる突出傾斜部と、その突出傾斜部を乗り越えた突起を位置決めする凹所と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このような防振ブッシュの取付構造においては、被取付部材の円筒部内に外筒を嵌合すると、突起が軸方向溝内を移動させられ、ストッパによって規定される嵌合端まで嵌合した後に軸心まわりに所定角度だけ相対回転させると、軸方向溝から抜け出した突起が係止部に係止され、防振ブッシュが円筒部に対して軸方向の抜け出し不能に取り付けられる。また、このように被取付部材の円筒部に防振ブッシュが取り付けられた状態において、その防振ブッシュと円筒部とを軸心まわりに相対回転させれば、軸心まわりにおいて突起と軸方向溝とを一致させることが可能で、突起がその軸方向溝内を通って軸方向へ移動できるようになり、円筒部から防振ブッシュを抜き出すことが許容される。すなわち、被取付部材の円筒部と防振ブッシュとを軸方向へ相対移動させたり軸心まわりに相対回転させたりすることにより、その防振ブッシュを被取付部材の円筒部に取り付けたり円筒部から取り外したりすることが可能で、その取付け、取外し作業を容易且つ迅速に行うことができるようになる。これにより、例えば特性が異なる複数種類の防振ブッシュを交換しながら性能試験等を行う場合、防振ブッシュの外筒や被取付部材の円筒部等を損傷することなく交換作業を短時間で容易に行うことができる。
【0010】
第2発明は、車両のロアアームと車体との連結部に配設される防振ブッシュに関するもので、軸方向溝は円筒部の内周面に軸方向の全長に亘って設けられており、外筒の一端部に設けられた突起は、その外筒がその一端部側から円筒部に対して嵌合端まで嵌合されることにより、その円筒部の軸方向の一端部から突き出し、軸心まわりに相対回転させられることによりその円筒部の一端部に設けられた係止部に係止される。したがって、例えば軸方向溝を軸方向の途中まで設け、その軸方向溝の先端からL字型に溝を形成して係止部とし、突起を軸方向の中間位置に設ける場合に比較して、構造が簡単で安価に構成できる。
【0011】
第3発明では、ゴム弾性体に一体に設けられたフランジによってストッパが構成されており、そのフランジが円筒部の他端部に当接して弾性変形させられることにより、突起が突出傾斜部を乗り越えて凹所内に位置決めされるため、軸部材を車体に固定する前の運搬時や車体に固定した後の車両駆動時等に、軸心まわりに相対回転して突起と軸方向溝とが一致して防振ブッシュが円筒部から軸方向へ抜け出すことが一層確実に防止される。この場合でも、防振ブッシュを軸方向へ押圧してフランジを弾性変形させれば、突起を凹所から脱出させて軸方向溝と一致する位置まで相対回転させることができるため、取外しの際の作業性を十分に確保できる。また、ゴム弾性体に一体に設けられたフランジによってストッパが構成されているため、弾性変形可能なストッパ等を別個に設ける場合に比較して安価に構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を説明する図で、(a) は防振ブッシュが車両のロアアームに配設された状態を示す斜視図、(b) は(a) におけるIB部の拡大図である。
【図2】図1の防振ブッシュがロアアームの円筒部に取り付けられる前の状態を示す斜視図である。
【図3】図1の防振ブッシュがロアアームの円筒部に取り付けられた部分を軸方向に切断した断面図である。
【図4】本発明の他の実施例を説明する図で、図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の防振ブッシュは、例えば車両のロアアームと車体との連結部などサスペンション装置に好適に用いられるが、サスペンション装置以外の防振ブッシュや車両用以外の防振ブッシュに適用することもできる。ゴム弾性体は、軸部材の外周面に直接固着されても良いが、軸部材とゴム弾性体との間に内筒等が設けられても良い。ゴム弾性体は、単純な円筒形状であっても良いが、中空部を設けたり端部に凹所を設けたりしても良いなど、種々の態様が可能である。互いに嵌合される外筒および円筒部は、何れも金属製が望ましいが、合成樹脂材料等の他の材料を採用することもできる。
【0014】
第2発明では、軸方向溝が軸方向の全長に亘って設けられ、突起が軸方向の一端部に設けられ、係止部が軸方向の一端部に設けられているが、第1発明の実施に際しては、例えば軸方向溝を軸方向の途中まで設け、その軸方向溝の先端からL字型に溝を形成して係止部として用いるとともに、突起を軸方向の中間位置に設けるようにしても良い。軸方向溝は、軸心と平行な直線溝が望ましいが、軸心まわりにねじれたねじれ溝でも良い。突起および軸方向溝は、軸心まわりの一箇所に設けるだけでも良いが、例えば軸心を挟んで反対側に位置する2箇所に設けることもできるし、等角度間隔等で3箇所以上に設けることもできる。
【0015】
第3発明ではゴム弾性体に一体に設けられたフランジによってストッパが構成されているが、第1発明や第2発明では金属製のストッパを採用し、そのストッパが当接させられる相手側にゴム等の弾性体が設けられても良い。また、必ずしも嵌合端において円筒部と外筒とが軸方向へ弾性変位可能である必要はなく、突起が係止部に係止された状態で軸方向に相対変位不能であっても良い。
【0016】
係止部は、例えば第3発明のように突出傾斜部および凹所を有して構成することが望ましいが、軸心に対して直角な円筒部の一端部の端面等をそのまま係止部として用いることもできるし、その端面に凹所を設けるだけでも良いなど、種々の態様が可能である。突起を位置決めする凹所は、円筒部と外筒とを相対回転不能に位置決めするものでも良いが、所定角度の相対回転を許容するように突起との間に所定の遊び(隙間)が設けられても良いなど、防振ブッシュの使用部位や要求機能等に応じて適宜定められる。所定角度の相対回転を許容する場合、円筒部および外筒は摺動可能に嵌合されるが、円筒部と外筒とを最終的に一体的に結合した状態で用いる場合、それ等の円筒部および外筒は所定の摩擦力を発生する状態で嵌合(圧入)されても良い。
【0017】
また、第2発明では円筒部に軸方向溝が設けられ、外筒に突起が設けられているが、第1発明の実施に際しては、外筒に軸方向溝を設けるとともに円筒部に突起を設けるようにしても良い。具体的には、(a) 前記軸方向溝は前記外筒の外周面に軸方向の全長に亘って設けられており、(b) 前記突起は前記円筒部の軸方向の一端部に設けられ、該円筒部がその一端部側から前記外筒に対して前記嵌合端まで嵌合されることにより該外筒の軸方向の一端部から突き出し、軸心まわりに相対回転させられることにより該外筒の一端部に設けられた前記係止部に係止されるように構成することができる。その場合には更に、(c) 前記ストッパは、前記円筒部の軸方向の他端部に内周側へ突き出すように一体に設けられたフランジで、前記ゴム弾性体に当接させられることによって前記嵌合端を規定するように構成され、(d) 前記外筒の一端部に設けられた前記係止部は、前記フランジが前記ゴム弾性体に当接して該ゴム弾性体を弾性変形させることにより前記突起が乗り越えることができる突出傾斜部と、その突出傾斜部を乗り越えた突起を位置決めする凹所と、を有して構成されても良い。
【0018】
本発明の防振ブッシュの取付構造は、例えば円筒部から防振ブッシュを取外し可能に構成され、特性が異なる複数種類の防振ブッシュを交換しながら性能試験等を行う場合に好適に採用されるが、被取付部材の円筒部に取り付けられた防振ブッシュの取外しを想定していない場合にも適用され得る。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例を説明する図で、(a) は防振ブッシュ10が車両のロアアーム12に配設された状態を示す斜視図、(b) は(a) におけるIB部の拡大図である。図2は、防振ブッシュ10がロアアーム12の円筒部14に取り付けられる前の状態を示す斜視図で、図3は、防振ブッシュ10がロアアーム12の円筒部14に取り付けられた部分を軸方向に切断した断面図である。ロアアーム12は、車体側に連結される一対の第1連結部16および第2連結部18と、車輪を支持するキャリアが取り付けられるキャリア取付部20とを備えており、第1連結部16に金属パイプから成る円筒部14が溶接等により一体的に固設されている。この円筒部14は、例えば軸心Sが車両の前後方向と略一致する姿勢で配設される。ロアアーム12は被取付部材に相当する。なお、図2の円筒部14は、ロアアーム12の本体部分を省略した図である。
【0020】
防振ブッシュ10は、図3の断面図から明らかなように、軸部材22の外周側に同心に設けられたゴム弾性体24と、そのゴム弾性体24の外周側に同心に設けられた外筒26とを有して構成されている。軸部材22および外筒26は何れも金属製で、軸部材22は軸方向の中間部分に円筒外周面を有する円柱形状の軸部30を備えており、その軸部30の外周面に円筒形状のゴム弾性体24が一体的に固着されているとともに、そのゴム弾性体24の外周面に円筒形状の外筒26が一体的に固着されている。軸部30の軸方向の両側には、防振ブッシュ10から軸方向へ突き出すように一対の偏平な連結部32、34が設けられており、軸部材22は、それ等の連結部32、34に設けられた貫通穴32h、34hを介して取付ボルト等により車体のフレーム等に一体的に固定される。なお、軸部30には、防振ブッシュ10の軸方向変位を規制するフランジ36が防振ブッシュ10から所定寸法だけ軸方向に離間した位置に一体に設けられている。
【0021】
上記ゴム弾性体24には、軸方向の一方の端部すなわち図3における左端部に、外筒26の端面に沿って外周側へ延び出し、外筒26の外周面よりも所定寸法だけ外周側へ突き出す円板状のフランジ40が一体に設けられている。このフランジ40はストッパとして機能するもので、円筒部14に防振ブッシュ10を取り付けるために、図3における右側から外筒26の外周側に円筒部14が相対的に嵌合される際に、その円筒部14の先端部(左端部)がフランジ40に当接することによって嵌合端が規定される。また、円筒部14の内周面には、軸方向の全長に亘って軸心Sと平行に直線状の軸方向溝42が設けられているとともに、その円筒部14の軸方向の一端部すなわち図3における右端部の端面には、軸方向溝42から軸心Sまわりに所定角度(例えば90°程度)だけ隔てた位置に係止部44が設けられている(図2参照)。一方、外筒26の軸方向の一端部、すなわち円筒部14内に嵌合する際の先端側の端部で図3における右端部には、外周側へ突き出す突起50が設けられており、外筒26がその一端部側から円筒部14内に相対的に嵌合される際に突起50が軸方向溝42内を通過させられ、フランジ40によって規定される嵌合端まで嵌合されると、突起50は軸方向溝42から抜け出して円筒部14から反対側へ突き出す。そして、その状態で防振ブッシュ10が軸部材22と共に円筒部14に対して軸心Sまわりに所定角度相対回転させられると、円筒部14の一端部に設けられた上記係止部44に突起50が係止され、軸方向の抜け出し不能とされる。
【0022】
上記係止部44は、図1の(b) および図2に明らかに示されるように、軸心Sまわりの周方向へ進むに従って滑らかに軸方向へ突き出す一対の突出傾斜部46と、その一対の突出傾斜部46の間に設けられた凹所48とを備えており、一対の突出傾斜部46は突出側が対向するように凹所48を挟んで対称的に設けられている。突出傾斜部46の突出寸法は、突起50と突出傾斜部46との係合で円筒部14が相対的にフランジ40に押圧されてそのフランジ40が弾性変形させられることにより、突起50がその突出傾斜部46を乗り越えることができる寸法で、この突出傾斜部46を乗り越えた突起50は凹所48内に位置決めされる。このように突起50が凹所48内に位置決めされることにより、防振ブッシュ10が円筒部14から抜け出すことが一層確実に防止される。上記突出傾斜部46および凹所48の位置や凹所48の幅寸法は、車両駆動時において防振ブッシュ10に対するロアアーム12の相対回動を阻害しないように、突起50の位置や大きさを考慮して定められており、突起50は軸心Sまわりに所定の遊び(隙間)を有する状態で凹所48内に位置決めされる。また、防振ブッシュ10と円筒部14との相対回動を許容するように、外筒26および円筒部14は摺動可能に嵌合されている。
【0023】
このような防振ブッシュ10の取付構造においては、ロアアーム12の円筒部14内に外筒26を嵌合すると、突起50が軸方向溝42内を移動させられ、フランジ40によって規定される嵌合端まで嵌合した後に、突起50と突出傾斜部46との係合でフランジ40を弾性変形させながら軸心Sまわりに所定角度だけ相対回転させると、軸方向溝42から抜け出した突起50が係止部44の凹所48に係止され、防振ブッシュ10が円筒部14に対して軸方向の抜け出し不能に取り付けられる。また、このようにロアアーム12の円筒部14に防振ブッシュ10が取り付けられた状態において、フランジ40を弾性変形させながら防振ブッシュ10と円筒部14とを所定角度だけ相対回転させれば、軸心Sまわりにおいて突起50と軸方向溝42とを一致させることが可能で、突起50がその軸方向溝42内を通って軸方向へ移動できるようになり、円筒部14から防振ブッシュ10を軸部材22と共に抜き出して取り外すことができる。
【0024】
すなわち、ロアアーム12の円筒部14と防振ブッシュ10とを軸方向へ相対移動させたり軸心Sまわりに相対回転させたりすることにより、その防振ブッシュ10をロアアーム12の円筒部14に対して取り付けたり円筒部14から取り外したりすることが可能で、その取付け、取外し作業を容易且つ迅速に行うことができるようになる。これにより、例えば特性が異なる複数種類の防振ブッシュ10を交換しながら性能試験等を行う場合、防振ブッシュ10の外筒26やロアアーム12の円筒部14等を損傷することなく交換作業を短時間で容易に行うことができる。
【0025】
また、軸方向溝42が円筒部14の内周面に軸方向の全長に亘って設けられており、外筒26の一端部に設けられた突起50は、その外筒26がその一端部側から円筒部14に対して嵌合端まで嵌合されることにより、軸方向溝42を通過して円筒部14の軸方向の一端部から突き出し、軸心Sまわりに相対回転させられることによりその円筒部14の一端部に設けられた係止部44に係止される。したがって、例えば軸方向溝を軸方向の途中まで設け、その軸方向溝の先端からL字型に溝を形成して係止部とし、突起を軸方向の中間位置に設ける場合に比較して、構造が簡単で安価に構成できる。
【0026】
また、ゴム弾性体24に一体に設けられたフランジ40によってストッパが構成されており、そのフランジ40が円筒部14の他端部に当接して弾性変形させられることにより、突起50が突出傾斜部46を乗り越えて凹所48内に位置決めされるため、軸部材22を車体に固定する前の運搬時や車体に固定した後の車両駆動時等に、軸心Sまわりに相対回転して突起50と軸方向溝42とが一致して防振ブッシュ10が円筒部14から軸方向へ抜け出すことが一層確実に防止される。この場合でも、防振ブッシュ10を軸方向へ押圧してフランジ40を弾性変形させれば、突起50を凹所48から脱出させて軸方向溝42と一致する位置まで相対回転させることができるため、取外しの際の作業性を十分に確保できる。
【0027】
また、ゴム弾性体24に一体に設けられたフランジ40によってストッパが構成されているため、弾性変形可能なストッパ等を別個に設ける場合に比較して安価に構成される。
【実施例2】
【0028】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0029】
上記実施例では、円筒部14に軸方向溝42が設けられ、外筒26に突起50が設けられていたが、図4の防振ブッシュ60のように、外筒26に軸方向溝62を設けるとともに円筒部14に突起64を設けるようにしても良い。すなわち、軸方向溝62は外筒26の外周面に軸心Sと平行に軸方向の全長に亘って設けられており、突起64は円筒部14の軸方向の一端部(この実施例では図4における左端部)に内周側へ突き出すように設けられ、円筒部14がその一端部側から外筒26に対して相対的に嵌合され、ストッパ66によって規定される嵌合端まで嵌合されることにより、外筒26の軸方向の一端部(この実施例では図4における左端部)から突き出す。そして、その状態で軸心Sまわりに所定角度だけ相対回転させると、外筒26の一端部に設けられた係止部68に突起64が係止され、これにより防振ブッシュ60が円筒部14から軸方向へ抜け出すことが防止される。
【0030】
上記ストッパ66は、円筒部14の軸方向の他端部に内周側へ突き出すように一体に設けられたフランジで、前記ゴム弾性体24に当接させられることによって嵌合端を規定するようになっている。ゴム弾性体24には、外筒26の端面に沿って外周側へ延びるフランジ状の当接部70が一体に設けられており、ストッパ66はこの当接部70に当接させられる。ストッパ66の内径は外筒26の内径と略同じである。また、係止部68は、図示は省略するが前記係止部44と同様に一対の突出傾斜部46および凹所48を有して構成されており、軸心Sまわりに所定角度だけ相対回転させて突起64を係止部68に係止する際に、ストッパ66をゴム弾性体24の当接部70に押圧して弾性変形させることにより、突起64が突出傾斜部46を乗り越えて凹所48内に位置決めされるようになっている。
本実施例においても、実質的に前記実施例と同様の作用効果が得られる。
【0031】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0032】
10、60:防振ブッシュ 12:ロアアーム(被取付部材) 14:円筒部 22:軸部材 24:ゴム弾性体 26:外筒 32、34:連結部 40:フランジ(ストッパ) 42、62:軸方向溝 44、68:係止部 46:突出傾斜部 48:凹所 50、64:突起 66:ストッパ S:軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸部材の外周側に設けられたゴム弾性体と、該ゴム弾性体の外周側に設けられた外筒と、を有する防振ブッシュに関し、前記外筒が所定の被取付部材の円筒部内に相対的に嵌合されて軸方向の抜け出し不能に取り付けられる取付構造であって、
互いに嵌合される前記外筒および前記円筒部の軸方向の嵌合端を規定するストッパと、
前記外筒および前記円筒部の何れか一方に設けられた軸方向溝と、
前記外筒および前記円筒部の他方に設けられ、該外筒と該円筒部とを軸方向に嵌合する際に前記軸方向溝内を移動させられる突起と、
前記軸方向溝が設けられる一方の部材に設けられ、前記外筒および前記円筒部が前記嵌合端まで嵌合された後に軸心まわりに所定角度だけ相対回転させられることにより、前記軸方向溝から抜け出した前記突起が係止される係止部と、
を有することを特徴とする防振ブッシュの取付構造。
【請求項2】
前記被取付部材は車両のロアアームで、
前記軸部材は、前記防振ブッシュから軸方向の両側へ突き出す一対の連結部を介して車体に固定されるもので、
前記軸方向溝は前記円筒部の内周面に軸方向の全長に亘って設けられており、
前記突起は前記外筒の軸方向の一端部に設けられ、該外筒が該一端部側から前記円筒部に対して前記嵌合端まで嵌合されることにより該円筒部の軸方向の一端部から突き出し、軸心まわりに相対回転させられることにより該円筒部の一端部に設けられた前記係止部に係止される
ことを特徴とする請求項1に記載の防振ブッシュの取付構造。
【請求項3】
前記ストッパは、前記外筒の軸方向の他端部において該外筒よりも外周側へ突き出すように前記ゴム弾性体に一体に設けられたフランジで、
前記円筒部の一端部に設けられた前記係止部は、前記フランジが該円筒部の他端部に当接して弾性変形させられることにより前記突起が乗り越えることができる突出傾斜部と、該突出傾斜部を乗り越えた該突起を位置決めする凹所と、を備えている
ことを特徴とする請求項2に記載の防振ブッシュの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−172746(P2012−172746A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34450(P2011−34450)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000241496)豊田鉄工株式会社 (104)
【Fターム(参考)】