説明

防振装置

【課題】質量体の質量が変化しても、質量変化の前後の期間を通じて十分な防振効果を発揮しつつ、防振ゴムの耐久性を維持可能な防振装置を提供することを目的とする。
【解決手段】設置面2上に設置され、質量体を載置する載置台1と、載置台1と設置面2との間に介装される防振ゴム3と、防振ゴム3の上端面と下端面とを水平方向に相対的に変位させる変位機構4とを備え、載置台にかかる荷重の変化にしたがって、防振ゴムの上端面と下端面との相対的変位量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置面上に設置される防振装置に関するものであり、特に、載置台に載置する質量体の質量が変化しても、一定レベル以上の防振効果を発揮し得る防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発電機やポンプ等の振動が周囲に伝わるのを防止したり、周囲の振動から制御機器等を保護するために防振装置が使用されている。この防振装置は、具体的には、特許文献1の図6に示すように、設置面上において、防振ゴムによって支持された載置台に発電機、ポンプ等の質量体を載置し、載置台と設置面との間を防振するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−61077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、防振装置の防振効果は、図9の式に示すように、振動の伝達率τで表わすことができ、この値が低いほど、防振効果が高くなる。伝達率τの値は、防振ゴムの撓み量δが大きくなるほど小さくなるため、防振効果を高めるには、防振ゴムの撓み量δを大きくするのが効果的である。その一方で、防振ゴムの撓み量δが大きくなりすぎると、防振ゴムが劣化して耐久性が低下するおそれが生じる問題があった。
【0005】
したがって、従来、防振装置に用いられる防振ゴムについては、負荷荷重を考慮した上で、高い防振効果を発揮することができ、かつ防振ゴムの耐久性が低下しない程度の撓み量になるように設計されたものが使用されていた。
【0006】
しかしながら、上記構成の防振装置において、載置台に載置される質量体の質量が変化する場合、例えば、揚水ポンプのように、ポンプの停止時と駆動時とで載置台にかかる質量が変化する場合には、以下のような問題が生じていた。
【0007】
すなわち、ポンプ停止時に載置台にかかる荷重を基に防振ゴムを設計すると、ポンプ駆動時には防振ゴムの撓み量が大きくなりすぎて防振ゴムの耐久性に影響を与えるおそれがあった。一方、ポンプ駆動時に載置台にかかる荷重を基に防振ゴムを設計すると、ポンプ駆動直後では載置台にかかる荷重が設計値よりもまだ小さいため、十分な防振効果が得られないといった問題が生じていた。
【0008】
このように、載置台に載置される質量体の質量が変化するような場合、質量変化の前後の期間を通じていずれの状態においても十分な防振効果を発揮しつつ防振ゴムの耐久性を維持するのは困難とされていた。
【0009】
そこで、本発明においては、上記問題に鑑み、質量体の質量が変化しても、質量変化の前後の期間を通じて十分な防振効果を発揮しつつ、防振ゴムの耐久性を維持可能な防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る防振装置は、設置面上に設置され、質量体を載置する載置台と、前記載置台と設置面との間に介装される防振ゴムと、前記防振ゴムの上端面と下端面とを水平方向に相対的に変位させる変位機構とを備えたことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、防振ゴムの上端面と下端面とを水平方向に相対的に変位させることにより、載置台の荷重を受ける防振ゴムの断面積(受圧面積)が変化することになる。具体的に、防振ゴムの断面形状が一定の筒状あるいは角柱状の場合、防振ゴムの上端面と下端面とを相対的に変位させると、受圧面積は、防振ゴムを平面視したときに上端面と下端面とが重複した部分の面積となる。
【0012】
このように防振ゴムの受圧面積を変化させることにより、防振ゴムのバネ定数を変化させることができる。したがって、載置台に載置される質量体の質量が変化する場合、防振ゴムの上下方向の撓み量(以下、単に「撓み量」という)が所定の範囲に収まるように変位機構の駆動を制御することで、十分な防振効果を発揮しつつ、防振ゴムの耐久性を維持することが可能となる。
【0013】
変位機構としては、具体的に、スライド部材と、前記スライド部材を移動させる駆動部とを備え、前記載置台の下面及び設置面の一方の面に前記防振ゴムが固定され、他方の面と防振ゴムとの間に前記スライド部材が介装され、前記スライド部材は、防振ゴムに固定された状態で前記他方の面をスライドするように設けたものを使用することができる。
【0014】
本発明の防振装置は、変位機構を手動で駆動させてもよいが、自動で駆動させるようにすることでより利便性を高めることができる。具体的には、質量体の質量を検出するセンサと、前記センサの出力信号に基づいて前記駆動部の駆動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記載置台にかかる荷重が小さくなるほど、相対的変位量が大きくなるように前記駆動部の駆動を制御し、前記載置台にかかる荷重が大きくなるほど、前記相対的変位量が小さくなるように前記駆動部の駆動を制御すればよい。
【0015】
制御部は、質量体の質量変動範囲を複数の領域に分割し、領域ごとに相対的変位量をそれぞれ設定しておき、相対的変位量を段階的に変化させるようにすることが可能である。また、制御部は、防振ゴムの撓み量が一定になるように、載置台にかかる荷重の変化にしたがって相対的変位量が連続的に変化するように、駆動部の駆動を制御するようにしてもよい。この場合には、安定した防振効果を得ることができる。
【0016】
なお、この場合には、載置台にかかる荷重が変化した場合に、防振ゴムの撓み量が所定の値で一定になるように維持するのに必要な相対的変位量を予め求めておき、これを制御部に記憶させておけばよい。そして、制御部がセンサの出力信号に基づいて上記関係から相対的変位量を算出するようにすればよい。
【0017】
本発明に係る防振装置は、載置台に載置される質量体の質量が変化するような場合に好適に使用することができる。具体的には、防振装置の載置台に揚水ポンプを質量体として載置し、その振動を防振する場合が挙げられる。また、防振装置の載置台が建設機械や車両等のフレームに取り付けられるキャブ(運転席)であり、質量体が運転者であって、フレーム側の振動から運転者を保護するものであってもよい。さらに、載置台がコンテナ等の荷台であり、質量体が貨物であって、貨物を振動から保護するものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、防振装置において、防振ゴムの上端面と下端面とを水平方向に相対的に変位させる変位機構を設け、変位機構の駆動を制御することにより、防振ゴムのバネ定数を変化させ、防振ゴムの撓み量が所定の範囲に収まるように調整することで、十分な防振効果を発揮しつつ、防振ゴムの耐久性を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る防振装置の第一実施形態を示す概略図であって、防振ゴムが直立姿勢の状態を示す図
【図2】図1で揚水ポンプを除いた状態での載置台の平面図
【図3】図1において防振ゴムが傾斜姿勢の状態を示す図
【図4】図1における防振ゴムの側面図
【図5】図3における防振ゴムの側面図
【図6】防振装置の制御ブロック図
【図7】本発明に係る防振装置の第二実施形態を示す概略図
【図8】本発明に係る防振装置の第三実施形態を示す概略図
【図9】防振効果及び撓み量を算出する式を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態について図面を基に説明する。図1は、本発明に係る防振装置を示す概略図であり、図2は図1における載置台の平面図である。
【0021】
本発明の防振装置は、質量体として揚水ポンプPを使用し、この揚水ポンプPの振動が設置面側に伝わるのを防止するためのものである。防振装置は、揚水ポンプPを載置する載置台1と、載置台1と設置面2との間に介装される防振ゴム3と、防振ゴムの上端面と下端面とを水平方向に相対的に変位させる変位機構4とを備えており、基台B上に設置される。すなわち、基台Bの上面が設置面2となる。
【0022】
なお、揚水ポンプPには、通水管Wが接続されている。通水管Wは、水平方向から揚水ポンプPに水を供給する給水管W1と、揚水ポンプPから垂直方向に水を送り出す送水管W2とから構成される。給水管W1及び送水管W2には、途中にフレキシブル配管Fが介装されており、これにより揚水ポンプPの振動が通水管Wに伝わりにくいような構成とされている。
【0023】
防振ゴム3は円柱状に形成されており、平面視矩形に形成された載置台1の下面の四隅にそれぞれ配される。防振ゴム3は、天然ゴム、合成ゴム、樹脂、エラストマー等のゴム状弾性体から構成される。なお、防振ゴム3の形状としては、高さ方向の任意の場所において断面形状がすべて同じとなる形状とするのが好ましく、断面形状が円形以外にも楕円形や多角形とすることも可能である。
【0024】
防振ゴム3は、図1に示すように、直立姿勢、すなわち、防振ゴム3の上端面の中心を通る垂線L1と、下端面の中心を通る垂線L2とが一致した姿勢(図4参照)で、受圧面積が防振ゴム3の断面積に一致する。そして、防振ゴム3は、直立姿勢で揚水ポンプPを駆動させることによって、配管内に揚水された水の質量が載置台1にかかった状態で、適度な撓み量になるように設計される。
【0025】
したがって、防振ゴム3は、直立姿勢で揚水ポンプPが停止した状態では、撓み量が小さくなるため、防振効果が低下する。そこで、本発明においては、変位機構4によって防振ゴム3を傾斜姿勢、すなわち、防振ゴムの上端面の中心を通る垂線L1と、下端面の中心を通る垂線L2とがずれるように相対的に変位させた傾斜姿勢とすることにより(図5参照)、防振ゴム3のバネ定数を変化させ、適度な撓み量になるように調整している。なお、図5におけるDが、相対的変位量となる。
【0026】
変位機構4は、スライド部材5とスライド部材5を移動させる駆動部とを備えている。スライド部材5は、防振ゴム3と、設置面2との間に介装される。防振ゴム3は、上端面が載置台1に固定され、下端面がスライド部材5に固定されており、スライド部材5は、設置面2をスライド自在とされる。具体的に、設置面2には図示しないレールが敷設されており、スライド部材5は、レールに沿ってスライド移動する。
【0027】
図2に示すように、載置台1の下方に設置された4つの防振ゴム3のうち、載置台1の長さ方向に沿って並んだ2つの防振ゴム3,3を一組とし、各組の防振ゴム3,3の間にそれぞれ駆動部が設けられる。駆動部は、エアシリンダ6から構成されており、シリンダチューブ7の両端にはピストンロッド8,8が長さ方向(軸線方向)にスライド可能に取付けられている。そして、ピストンロッド8,8の先端が各組の防振ゴム3,3に固定されたスライド部材5,5に接続される。
【0028】
上記構成の変位機構4において、シリンダ7内に空気を供給/排出することによって、シリンダ7の両端からピストンロッド8,8が同じ長さだけ突出/後退する。従って、エアシリンダ7を各組の防振ゴム3,3の中間位置に設置することで各組の防振ゴム3,3の相対的変位量を同じにすることができる。なお、本実施形態では変位機構としてエアシリンダを用いたがこれに限らず、例えば、ラックとピニオンによってスライド部材5を移動させるようにしてもよい。
【0029】
図6に示すように、防振装置には、変位機構4の駆動を制御する制御部9が設けられている。具体的に説明すると、制御部9は、入力回路、CPU、メモリ、出力回路等を備えたマイコンによって構成される。また、防振装置には、変位機構4であるエアシリンダ6に空気を供給するコンプレッサ10が設けられており、コンプレッサ10とエアシリンダ6の間は配管で接続されている。配管にはエアシリンダ内の空気を排気するための排気口及び排気口を開閉する開閉弁11が設けられている。さらに、防振装置には、電源スイッチ13が設けられている。
【0030】
さらに、防振装置には、載置台にかかる荷重を検出するセンサ12が設けられる。センサ12は、載置台にかかる荷重を直接的に又は間接的に検出する。具体的に、センサ12として、載置台1にかかる質量を直接検出するロードセルを用いることができる。
【0031】
そのほかにも、防振ゴムによって支持される載置台1は、荷重に応じてその高さが変化することから、載置台1の高さを検出する位置センサを用いることによって間接的に載置台1にかかる荷重を検出するようにしてもよい。
【0032】
本実施形態では、揚水ポンプPの揚水量に応じて揚水ポンプPにかかる圧力が大きくなる。そこで、センサ12として、揚水ポンプPにかかる圧力を検出する圧力センサを使用して、センサ12で検出された圧力から載置台1にかかる荷重を間接的に検出している。そして、電源スイッチ13のON/OFF信号及びセンサ12で検出した信号は、制御部9に入力される。制御部9は、これらの信号に基づいてコンプレッサ10及び開閉弁11の駆動を制御する。
【0033】
上記構成の防振装置において、揚水ポンプPが駆動していないときには、振動が発生するおそれがないため、制御部9は、変位機構4を駆動させずに防振ゴム3が図1及び図4に示すように直立姿勢をとるようにする。これにより、防振ゴム3にかかる負担を少なくすることができる。
【0034】
次に、電源スイッチ13をONにすると、ON信号が制御部9に入力され、制御部9は開閉弁11を閉鎖した状態でコンプレッサ10を駆動させ、エアシリンダ6のピストンロッド8,8をシリンダチューブ7の両端から突出させる。これにより、スライド部材5がスライドする。設置面2には図示しないストッパーが設置されており、スライド部材5が所定距離移動したところでストッパーに接触してそれ以上の移動が規制される。これにより、防振ゴム3は、図3及び図5に示すように傾斜姿勢をとり、相対的変位量Dが一定に維持される。
【0035】
揚水ポンプPは、防振ゴム3が傾斜姿勢をとった後に駆動させる。載置台1にかかる荷重は、揚水開始から時間と共に増加し、それに伴って防振ゴム3の撓み量も大きくなる。制御部9は、センサ12によって揚水ポンプPの圧力を検出し、圧力が所定値に達したときに防振ゴム3の撓み量が大きくなったと判断して、コンプレッサ10を停止させ、開閉弁11を開放し、エアシリンダ6から空気を排気する。これによって、防振ゴム3はゴムの弾性力によって直立姿勢に戻る。
【0036】
防振ゴム3が直立姿勢に戻ったときには、すでに載置台1には揚水された水の質量分の荷重がかかった状態になっているため、防振ゴム3は直立状態で適度に撓むようになる。これにより、防振装置の防振効果を十分に発揮させつつ、防振ゴムの耐久性を維持することが可能となる。
【0037】
上述のごとく、本実施形態においては、載置台1の質量変動領域を所定の質量値(圧力センサ12における所定の圧力値で検出)で2分割し、載置台1の質量が所定値未満の場合は、図3に示すように、防振ゴム3が傾斜姿勢となるように、また、揚水ポンプPの質量が所定値以上となると、図1に示すように、防振ゴム3が直立姿勢となるように、制御部9で変位機構4の駆動を制御している。
【0038】
制御部9における変位機構4の駆動の制御方法はこれに限らず、以下のように相対的変位量が連続的に変化するように変位機構4の駆動を制御することができる。すなわち、載置台1にかかる荷重が変化した場合に、防振ゴム3の撓み量を所定の値で一定に維持するのに必要な相対的変位量を予め求めておき、これを制御部9に記憶させる。
【0039】
そして、制御部9がセンサ12の出力信号に基づいて上記関係から相対的変位量を算出し、その相対的変位量だけ変位機構4を駆動させるようにすればよい。なお、この場合、スライド部材を任意かつ正確に移動させるには、駆動部としてラックとピニオンを用いるのが好ましい。
【0040】
また、本実施形態においては、揚水ポンプP停止時には、防振ゴム3を直立姿勢としていたが、これに限らず、揚水ポンプPの停止時に、防振ゴム3を傾斜姿勢にしておいてもよい。さらに、防振ゴム3は、直立姿勢の形状に成形したものを使用したが、傾斜姿勢の形状で成形したものを使用してもよい。
【0041】
[第二実施形態]
図7は、本発明に係る防振装置の第二実施形態を示す概略図である。本実施形態では、防振装置を車両のコンテナCに設置しており、設置面2がコンテナCの底面とされ、質量体が貨物Gとされている。
【0042】
すなわち、本実施形態における防振装置は、コンテナC内の貨物Gを車両の振動から保護するためのものであり、特に貨物Gが電気機器や精密機器等、振動に弱い場合に、質量の異なる貨物Gに対してそれぞれ高い防振効果を発揮しつつ、防振装置の耐久性を維持することが可能となる。
【0043】
[第三実施形態]
図8は、本発明に係る防振装置の第三実施形態を示す概略図である。本実施形態では、防振装置を建設機械のフレームに取り付けられた基台B2に設置しており、設置面2が基台B2の上面とされ、運転席が載置台1とされ、質量体が運転者とされる。
【0044】
すなわち、体重が異なる運転者に対してそれぞれ高い防振効果を発揮しつつ、防振装置の耐久性を維持することが可能となる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明について更に詳しく説明する。本実施例においては、第一実施形態で説明した防振装置を用いた。
【0046】
揚水ポンプP停止時における載置台にかかる荷重は70kg、揚水ポンプPの振動数は1800cpm(30Hz)であった。また、揚水ポンプPに接続される送水管W2の径は50A、揚水ポンプP駆動時の水圧0.4MPaであった。このときに発生する推力は80kgであり、載置台にかかる最大荷重は70+80=150kgであった。
【0047】
防振ゴム3は、揚水ポンプPが駆動して載置台に推力がかかったときに適度に撓むように設計されたものを使用した。具体的には、直径30mm、高さ20mmの円柱状の防振ゴムを使用した。
【0048】
上記防振ゴム3を直立状態としたときに、載置台にかかる荷重が70kg〜150kgで変化したときの防振ゴムの撓み量δ及び防振効果τを、図9に記載した式に基づいて算出した。一例として載置台にかかる荷重が70kgの場合、式中の各値としては、
・直立状態での防振ゴムのバネ定数k=154N/mm
・質量m=(70/4)×9.81=171.6N
・上記荷重時の撓み量δ=171.6/154=1.87mm
・固有振動数fn=945/(1.87)1/2=691cpm
・強制外力(揚水ポンプ)の振動数f=1800cpm
を用いて、撓み量δ=1.1mm、防振効果τ=67%という結果を得た。以下、同様にして載置台にかかる荷重が変化した場合の撓み量δ及び防振効果τを求めた。結果を表1に示す。
【0049】
次に、上記防振ゴム3を傾斜状態としたときに、載置台にかかる荷重が70kg〜150kgで変化したときの防振ゴムの撓み量δ及び防振効果τについても上記と同様にして算出した。防振ゴムの相対的変位量は6mmとした。なお、相対的変位量は、防振ゴム3の座屈が生じないように1.5>{(防振ゴムの高さ)/(防振ゴム直径)}の範囲内で設定した。このときの防振ゴムの鉛直バネ定数k=92N/mmであった。結果を表1に示す。
【0050】
揚水ポンプの防振効果としては80%以上であることが望ましい。また、耐久性を考慮した場合の適切な防振ゴムの撓み量は、使用するゴムの組成、形状等によって適宜決定される。本実施例の場合、適切なゴムの撓み量は、防振ゴムの高さの15%以下であると判断された。すなわち、本実施例で用いた防振ゴムでは、撓み量が3mm以下であることが好ましい。
【0051】
【表1】

【0052】
上記評価基準を基に表1の結果をみると、荷重70kg〜110kgの範囲では防振ゴムを傾斜姿勢とすることにより、また、荷重110kg〜150kgの範囲では防振ゴムを直立姿勢とすることにより、防振効果が80%以上で、かつ防振ゴムの撓み量を3mm以下とすることが可能となる(表1における太線枠内部分)。
【0053】
すなわち、制御部9において、電源スイッチ13がONされたときに、防振ゴムの相対的変位量が6mmとなるように変位機構4を駆動させて防振ゴム3を傾斜姿勢とする。そして、センサ12で検出した圧力が載置台にかかる荷重110kg相当の値になったときに、防振ゴム3を直立姿勢とすればよい。
【0054】
比較として、荷重70kg〜100kgの範囲で防振ゴムを直立姿勢のままとした場合は、撓み量が小さすぎて十分な防振効果を得ることができなかった(防振効果が80%未満)。また、荷重70kg〜150kgの範囲で防振ゴムを傾斜状態とした場合では、撓み量が3mmを超え、耐久性が低下するおそれが生じる結果となった。
【符号の説明】
【0055】
1 載置台
2 設置面
3 防振ゴム
4 変位機構
5 スライド部材
6 エアシリンダ
7 シリンダチューブ
8 ピストンロッド
9 制御部
10 コンプレッサ
11 開閉弁
12 センサ
13 電源スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上に設置され、質量体を載置する載置台と、前記載置台と設置面との間に介装される防振ゴムと、前記防振ゴムの上端面と下端面とを水平方向に相対的に変位させる変位機構とを備えたことを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記変位機構は、スライド部材と、前記スライド部材を移動させる駆動部とを備え、前記載置台の下面及び設置面の一方の面に前記防振ゴムが固定され、他方の面と防振ゴムとの間に前記スライド部材が介装され、前記スライド部材は、防振ゴムに固定された状態で前記他方の面をスライドするように設けられたことを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項3】
前記載置台にかかる荷重を検出するセンサと、前記センサの出力信号に基づいて前記駆動部の駆動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記載置台にかかる荷重が小さくなるほど、前記防振ゴムの上端面と下端面との相対的変位量が大きくなるように前記駆動部の駆動を制御し、前記載置台にかかる荷重が大きくなるほど、前記相対的変位量が小さくなるように前記駆動部の駆動を制御するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の防振装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記防振ゴムの上下方向の撓み量が一定になるように、前記載置台にかかる荷重の変化にしたがって、前記駆動部の駆動を制御するようにしたことを特徴とする請求項3記載の防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−231815(P2011−231815A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100733(P2010−100733)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】