説明

防振部材

【課題】防振部材に関し、所定の部品を支持体に支持させるためのブラケットを第1防振体と第2防振体との2つのパーツ間に挟持する際に、ブラケットの板厚の選定の自由度を高めることができるようにする。
【解決手段】所定の部品を支持体に支持させるためのブラケット14を第1防振体1と第2防振体2との間に挟持して、所定の部品及び支持体の相互間で振動が伝達されることを防止する防振部材において、第1防振体1はその厚み方向に貫通する貫通穴1aを有し、一方、第2防振体2は、その厚み方向に突出するとともに、ブラケット14の板厚tに合わせて調整された嵌合量Mで貫通穴1aに嵌合する突起部2bを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マフラや配管等の車両の排気系部品の支持に好適に使用することができる、防振部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラック等の車両においては、図5に示すように、マフラや配管等の排気系部品11(図5では排気管を示している)は、クランプ材12やブラケット13,14を介してシャーシフレーム15に支持されている。このとき、排気系部品11及びシャーシフレーム15の相互間で振動が伝達されないように、排気系部品11側に固定されるブラケット13とシャーシフレーム15側に固定されるブラケット14との連結に一対のクッションゴム10を介在させて、各クッションゴム10が上記振動を吸収するようにしている。
【0003】
各クッションゴム10は互いに同一形状の円柱状に形成されるとともに、突起部10aが設けられている。そして、突起部10a同士を対面させて生じる一対のクッションゴム10間の隙間にブラケット14を挟持して防振機能を果たしている。
各クッションゴム10の軸部とブラケット13の適宜の位置とにはそれぞれボルト孔10b,13aが形成される一方、ブラケット14には開口14aが形成されており、開口14aに各クッションゴム10の突起部10aを差し込んだ状態で各クッションゴム10のボルト孔10bとブラケット13のボルト孔13aとにボルト16を挿通してナット17及びワッシャ18で固定し、ブラケット13,14同士が弾性的に連結されている。なお、図5中の符号19はカラーを示し、符号20はキャップを示している。
【0004】
このように排気系部品の支持にクッションゴムを使用する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−54930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図5に示す技術によれば、1種類の一定形状に形成されたクッションゴム10ではブラケット14の板厚が1つの厚みに限定されてしまう。そのため、ブラケット14の板厚を支持重量物である排気系部品11に合わせて設定すると、ブラケット14の板厚に合わせて様々な形状のクッションゴム10を製造する必要が生じたり、あるいは、図6に示すように、一定形状の一対のクッションゴム10間の隙間に合わせるために厚み調整用の調整板21が必要となったりして、部品点数の増加や重量の増大やコストの増大が生じるという課題がある。
【0007】
したがって、排気系部品の支持構造においては、ブラケットの板厚に影響されずに防振することができる部材(防振部材)が望まれている。また、排気系部品の支持構造に限らず、様々な構造においてブラケットの板厚に影響されない防振部材があれば望ましい。
本発明はこのような課題に鑑みて案出されたもので、所定の部品を支持体に支持させるためのブラケットを第1防振体と第2防振体との2つのパーツ間に挟持する際に、ブラケットの板厚の選定の自由度を高めることができるようにした、防振部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の防振部材は、所定の部品を支持体に支持させるためのブラケットを第1防振体と第2防振体との間に挟持して、前記所定の部品及び前記支持体の相互間で振動が伝達されることを防止する防振部材であって、前記第1防振体は、その厚み方向に貫通する貫通穴を有し、前記第2防振体は、その厚み方向に突出するとともに、前記ブラケットの板厚に合わせて調整された嵌合量で前記貫通穴に嵌合する突起部を有していることを特徴とする。なお、前記第1防振体及び前記第2防振体はそれぞれクッションゴムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防振部材によれば、第2防振体の突起部が第1防振体の貫通穴に嵌合する嵌合量を調整することでブラケットの様々な板厚に対応することができ、その結果、ブラケットの板厚が限定されず、ブラケットの板厚をブラケットが支持する部品の重量に合わせて設定することができて、ブラケットの板厚の選定の自由度が高まるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る防振部材を示す模式的な側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る防振部材を示す模式図であり、(a)は第1クッションゴムの上面図、(b)は第2クッションゴムの上面図である。
【図3】(a)〜(c)の何れも、本発明の一実施形態に係る防振部材と防振部材が挟持するブラケットとを示す模式的な断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る防振部材を用いて排気管がブラケットを介してシャーシフレームに支持された状態を示す模式的な断面図である。
【図5】従来技術に係る防振部材を用いて排気管がブラケットを介してシャーシフレームに支持された状態を示す模式的な断面図である。
【図6】従来技術に係る防振部材を用いる際に、ブラケットの板厚に合わせて調整用の板が使用されていることを説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面により本発明の防振部材の実施の形態について説明する。
<構成>
図4に示すように、本実施形態の防振部材5は、マフラや配管等の車両の排気系部品11(図4では排気管を示している)をシャーシフレーム(支持体)15に支持させる際に好適に使用することが可能なものであり、第1クッションゴム(第1防振体)1と第2クッションゴム(第2防振体)2とを有して構成されている。なお、図4において、図5に示す従来技術と同じ構成部材には同じ符号を付している。
【0012】
図1及び図2(a)に示すように、第1クッションゴム1は円柱状に形成されており、所定の厚み(高さ)tを有している。そして、径方向中央部には貫通穴1aが形成されている。貫通穴1aは、第1クッションゴム1の厚み方向(軸線方向)に貫通している。
第2クッションゴム2は、図1及び図2(b)に示すように、円柱状に形成された基部2aと、基部2aの一端面から突出し、基部2aの外径よりも小さい外径の円柱状に形成された突起部2bとを有している。基部2aの軸線と突起部2bの軸線とは一致している。また、第2クッションゴム2には、第2クッションゴム2の厚み方向(軸線方向)に貫通するボルト孔2cが形成されている。
【0013】
第1クッションゴム1の外径と第2クッションゴム2の外径とは同一の大きさに形成されている。また、第1クッションゴム1の厚みtと第2クッションゴム2の突起部2bの厚みtは同一に設定されている(t=t)か、もしくは、ブラケット14の板厚tを考慮して、第2クッションゴム2の突起部2bの厚みtが第1クッションゴム1の厚みtとブラケット14の最小板厚t3MINとを足した厚みよりも小さくなる(t+t3MIN≧t)ように設定されている。また、図2(a)及び図2(b)に示すように、第1クッションゴム1の貫通穴1aの穴径φ1は第2クッションゴム2の突起部2bの外径φ2よりもわずかに大きく設定されている(φ1>φ2)。これにより、突起部2bは貫通穴1a内に嵌合するようになっている。
【0014】
図4に示すように、シャーシフレーム15に固定されるブラケット14には、第2クッションゴム2の突起部2bの外径φ2よりもわずかに大きい外径の円形状の開口14aが形成されている。排気系部品11をこのブラケット14を用いてシャーシフレーム15に支持させる際には、ブラケット14の開口14aの軸線と第1クッションゴム1の軸線とが一致するように、第1クッションゴム1の一端面1bをブラケット14の一面14bに当接させる。また、ブラケット14の開口14aの軸線と第2クッションゴム2の軸線とが一致するように、第2クッションゴム2の基部2aの一端面2aをブラケット14の他面14cに当接させるとともに、第2クッションゴム2の突起部2bを開口14aに差し込む。このとき、ブラケット14の板厚tに合わせて、突起部2bが貫通穴1aに嵌合する嵌合量Mを調整する。
【0015】
また、排気系部品11を把持するクランプ材12に固定されるブラケット13の適宜の位置にもボルト孔13aを形成しておき、ブラケット13のボルト孔13aの軸線と第2クッションゴム2の軸線とが一致するように(ひいては、第1クッションゴム1の軸線とブラケット14の開口14aの軸線にも一致するように)ブラケット13を第2クッションゴム2の他端面2aに当接させる。次いで、カラー19を第2クッションゴム2のボルト孔2cに挿入し、キャップ20を第1クッションゴム1の貫通穴1aを覆うように第1クッションゴム1の他端面1cに被せる。
【0016】
そして、突起部2bが開口14aに差し込まれ且つ貫通穴1aに嵌合している状態で、ブラケット13のボルト孔13aと第2クッションゴム2のボルト孔2cとにボルト16を挿通して、カラー19及びキャップ20の存在によって締め付け力を規制しながらナット17及びワッシャ18で固定し、ブラケット13とブラケット14とを防振部材5を介在させて弾性的に連結するようになっている。
【0017】
第1クッションゴム1及び第2クッションゴム2の材質としては、例えば、エチレンアクリルゴムやエチレンプロピレンジエンゴムや天然ゴム等を使用することができる。
<作用・効果>
本発明の一実施形態に係る防振部材は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
【0018】
図3(a)〜図3(c)に示すように、第2クッションゴム2の突起部2bが第1クッションゴム1の貫通穴1aに嵌合する嵌合量Mを調整することで、ブラケット14の様々な板厚tに対応することができる。その結果、ブラケット14の板厚tが限定されず、ブラケット14の板厚tをブラケット14が支持する排気系部品11の重量に合わせて設定することができ、ブラケットの板厚tの選定の自由度が高まるという利点がある。
【0019】
したがって、1つの防振部材5でブラケット14の様々な板厚tに対応することができるので、ブラケット14の板厚tに合わせて様々な形状の防振部材を用意する必要がなく、製造コストを抑制することができる。また、従来技術で説明した調整用の板21は不要となるので、部品点数を抑え、この点でもコストを抑制することができる。また、ブラケット14の板厚tを排気系部品11の重量に合わせて選定することができるので、ブラケット14の板厚tを必要最小限に抑えることができ、また上述のように調整用の板21が不要であるので、排気系部品11の支持にかかる重量を低減することができる。
【0020】
また、貫通穴1aは第1クッションゴム1の厚み方向に貫通しているので、第1クッションゴム1の全厚に亘ってブラケット14の板厚tの違いを吸収することができる。
また、特許文献1記載の従来技術と比較して、第1クッションゴム1にボルト孔を設ける必要がなく、貫通穴1aがボルト孔を兼用することができるので、第1クッションゴム1の構造を簡素にすることができる。
【0021】
ところで、特許文献1の第2図には本発明に類似する構造が記載されている。詳しくは、一方のクッションゴム(特許文献1の第2図中、符号16が付されている。以下で括弧内に記した符号は特許文献1の第2図中に付された符号である。)に突起部(18)が形成されるとともに他方のクッションゴム(14)に凹部が形成され、突起部(18)が凹部に嵌合した状態で一方のクッションゴム(16)と他方のクッションゴム(14)とで排気管(30)用のブラケット(28)を挟持する構造が記載されている。しかしながら、特許文献1には突起部(18)が凹部に嵌合する嵌合量を調整するという技術思想は記載も示唆もされておらず、突起部(18)が凹部に嵌合する構造とした理由は不明である。
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0022】
例えば、上記実施形態では、防振部材5がシャーシフレーム15側に固定されるブラケット14を挟持する構造を説明したが、排気系部品11側に固定されるブラケット13を挟持するようにしてももちろん良い。
また、上記実施形態では、防振部材5を第1クッションゴム1と第2クッションゴム2とで構成したが、防振部材5を構成する2つのパーツの材質はゴムに限らず、防振性を発揮する弾性と支持に耐え得る剛性とを有する防振体であれば良い。そのような防振体の材質としては、ゴム以外に例えば樹脂で形成されたスポンジが考えられる。
【0023】
また、上記実施形態では、排気系部品11をシャーシフレーム15に支持させるのに防振部材5を好適に使用することについて説明したが、車両の他の部品の支持や、防振対策を必要とする車両以外の所定の部品を支持体に支持させる構造にも好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 第1クッションゴム(第1防振体)
1a 貫通穴
1b 一端面
1c 他端面
2 第2クッションゴム(第2防振体)
2a 基部
2a 一端面
2a 他端面
2b 突起部
2c ボルト孔
5 防振部材
10 クッションゴム
10a 突起部
10b ボルト孔
11 排気系部品(所定の部品)
12 クランプ材
13 ブラケット
13a ボルト孔
14 ブラケット
14a 開口
14b 一面
14c 他面
15 シャーシフレーム(支持体)
16 ボルト
17 ナット
18 ワッシャ
19 カラー
20 キャップ
21 厚み調整用の板
M 嵌合量
第1クッションゴムの厚み
第2クッションゴムの突起部の厚み
ブラケットの板厚
φ 第1クッションゴムの貫通穴の穴径
φ 第2クッションゴムの突起部の外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の部品を支持体に支持させるためのブラケットを第1防振体と第2防振体との間に挟持して、前記所定の部品及び前記支持体の相互間で振動が伝達されることを防止する防振部材であって、
前記第1防振体は、その厚み方向に貫通する貫通穴を有し、
前記第2防振体は、その厚み方向に突出するとともに、前記ブラケットの板厚に合わせて調整された嵌合量で前記貫通穴に嵌合する突起部を有している
ことを特徴とする、防振部材。
【請求項2】
前記第1防振体及び前記第2防振体はそれぞれクッションゴムである
ことを特徴とする、請求項1記載の防振部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−133034(P2011−133034A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293001(P2009−293001)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】