説明

防犯システム

【課題】監視対象領域に人物が侵入したことを精度良く検知する。
【解決手段】監視対象領域D1には複数の人体検知センサ11が配置されている。累積部211は、異常判定部213により所定時間を計時する処理が実行されているときに、人物を検知した人体検知センサ11に対して予め定められた異常値の累積値を算出する。異常判定部213は、センサ群10を構成するいずれか1つの人体検知センサ11が人物を検知してから、所定時間経過するまでに、累積部211により算出される累積値が閾値記憶部214に予め記憶されている閾値以上となった場合、監視対象領域D1に人物が侵入して異常が発生したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の人体検知センサによる人物の検知結果を基に異常を検知する防犯システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願に関連する従来技術として特許文献1が知られている。この技術は、複数の人体検知センサを複数の拠点に設置し、これら人体検知センサによる検知結果の時系列変化のパターンによって予め想定される人物の動作を識別して判別信号を出力する。具体的には、監視対象となる領域である監視ゾーンEの出入り口E´に第1の人体検知センサAを配置し、監視ゾーンE内の奥に第2の人体検知センサBを配置する。そして、人物が出入り口E´に侵入する時、第1の人体検知センサAのみがオンとなり、人物が監視ゾーンE内の少し奥に侵入したとき、第1,第2の人体検知センサA,Bが共にオンとなり、人物が監視ゾーンE内の更に奥に侵入したとき、第2の人体検知センサBのみがオンとなる。一方、人物が監視ゾーンE内から退出するときには、第1,第2の人体検知センサA,Bが共にオンとなった後、第1の人体検知センサAのみがオンとなり、最後に第1,第2の人体検知センサA,Bが共にオフとなる。そして、このような第1,第2の人体検知センサA,Bの検知結果の時系列変化のパターンから、人物が監視ゾーンE内に侵入後、所定時間滞留し、その後に退出するというような動作を検知する。
【特許文献1】特開平6−274768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の手法では、各人体検知センサからの出力信号はオン・オフの2値であり、2つの人体検知センサA,Bからの検知結果に対する判断論理も単純である。そのため、特許文献1に示す技術を本出願がターゲットとするような戸建住宅に適用すると、人体検知センサが誤検知した場合、直ぐに異常と判断される虞があり、戸建住宅に人物が侵入したことを精度良く検知することができないという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、監視対象領域に人物が侵入したことを精度良く検知することができる防犯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による防犯システムは、監視対象領域に侵入する人物を検知する防犯システムであって、前記監視対象領域は、前記監視対象領域の境界を含む領域である境界ゾーンを含み、前記監視対象領域内において、少なくとも前記境界ゾーンに設置され、人物を検知する複数の人体検知センサと、各人体検知センサの設置場所に基づいて各人体検知センサに予め付与された異常値を記憶する異常値記憶手段と、人物を検知した人体検知センサの異常値の累積値を算出する累積値算出手段と、前記複数の人体検知センサのうち、いずれか1の人体検知センサが人物を検知してから所定時間が経過するまでに、前記累積値算出手段により算出された累積値を予め定められた閾値と比較し、前記累積値が前記閾値を越えた場合に異常であると判定し、前記累積値が前記閾値を越えるまでは異常でないと判定する異常判定手段と、前記異常判定手段により異常と判定された場合、そのことを報知する報知手段とを備えることを特徴とする(請求項1)。
【0006】
この構成によれば、人体検知センサが人物を検知する毎に、人物を検知した人体検知センサに対して予め定められた異常値が加算され、異常値の累積値が算出され、いずれか1つの人体検知センサが人物を検知してから所定時間が経過するまでに、異常値の累積値が閾値を超えた場合、異常と判定される。ここで、異常値は、人体検知センサが人物を検知した場合の異常の度合い(重み)を表現したものである。そして、監視対象領域の住人等が頻繁に出入りし、監視対象領域への侵入者が通る可能性が低いような防犯の重要性が低い位置に設置された人体検知センサには低い異常値を設定し、侵入者が通る可能性が高いような防犯の重要性が高い位置に設置された人体検知センサに対しては高い異常値を設定する。そして、このように異常値が自由に重み付けされた各々の人体検知センサが人物を検知した場合に総合的に異常と判断する。すなわち、閾値を予め設定し、異常値の累積値が閾値を所定時間内に超えた場合に異常が発生したと判定する。
【0007】
これにより、人体検知センサが監視対象領域の住人等を検知したり、人体検知センサが人物を誤検知したりしたとしても、直ちに異常と判定されず、監視対象領域内に人物が侵入したことを精度良く検知することができる。
【0008】
また、前記異常判定手段は、前記所定時間が経過するまでに、前記累積値が前記閾値を超えなかった場合、前記累積値をリセット値に戻すことが好ましい(請求項2)。
【0009】
この構成によれば、監視対象領域に人物が侵入してから所定時間が経過するまでに累積値が閾値を超えた場合にのみ異常と判定されるため、監視対象領域内に人物が侵入したことをより精度よく検知することができる。
【0010】
また、任意の場所から任意の時刻における入力に従って前記監視対象領域の監視を解除させる監視解除手段を更に備えることが好ましい(請求項3)。
【0011】
この構成によれば、外出先から監視対象領域の監視を開始させることが可能となり、また帰宅前に監視対象領域の外から監視対象領域の監視を解除できるので、防犯システムの利便性を向上させることができる。
【0012】
また、前記異常判定手段は,各人体検知センサの異常値を変更する調整手段を備えることが好ましい(請求項4)。
【0013】
この構成によれば、監視対象領域の構造やユーザの監視対象領域内での行動経路によって、各種人体検知センサの異常値を設定することが可能となり、監視対象領域に人物が侵入したことをより精度よく検知することができる。
【0014】
また、前記報知手段は、前記異常判定手段により異常であると判定された場合、そのことを示す情報を、所定のネットワークを介して接続された外部装置に送信することが好ましい(請求項5)。
【0015】
この構成によれば、外部装置を防犯サービス業者のサーバやユーザが携帯する携帯電話とすることで、ユーザにより速やかに異常の発生を報知することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、監視対象領域内に人物が侵入したことを精度良く検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態による防犯システムについて図を用いて説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは同一の構成を示している。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による防犯システムの全体構成図を示している。なお、図1の点線で示すブロックは他の実施の形態にかかるものであるので、本実施の形態では説明を省略する。本防犯システムは、監視対象領域D1である戸建て住宅内に、無断で侵入する人物を検知し、防犯の監視を行うシステムである。本防犯システムは、センサ群10、及び中央装置20を備える。また、中央装置20には、ネットワークを介してサーバ30及び携帯端末40が接続されている。
【0019】
監視対象領域D1は、境界ゾーンZ1、敷地ゾーンZ2、及び室内境界ゾーンZ3といった3つの領域を含み、各ゾーンには、人体検知センサ11が配置されている。
【0020】
境界ゾーンZ1は、監視対象領域D1の敷地と外回りとの境界線L1を含む一定範囲の領域を指す。具体的には、境界ゾーンZ1は、境界線L1を中心とするある一定の幅、例えば幅50cm程度の領域を指し、塀W1、門扉W2、及び門周り等が含まれる。
【0021】
敷地ゾーンZ2は、監視対象領域D1において、境界ゾーンZ1と建築物W3が占める領域とを除いた領域を指し、玄関アプローチW4、駐車場W5、及び庭W6等が含まれる。室内境界ゾーンZ3は、建築物W3が占める領域と敷地ゾーンZ2との境界線L2を含む一定範囲の領域を指す。具体的には、室内境界ゾーンZ3は、境界線L2を中心とするある一定の幅、例えば50cm程度の領域を指し、建築物W3の外壁、外壁に取り付けられた複数の窓及び玄関扉、勝手口等が含まれる。
【0022】
センサ群10は、監視対象領域D1内の所定の位置に設置された複数の人体検知センサ11から構成される。なお、本明細書においては、熱線により人物を検知するいわゆる人体検知センサに加えて、人物が門を開けたりするような人物の行為(動き)を検知するセンサも「人体検知センサ」に含まれる。
【0023】
具体的には、センサ群10は、乗り越え検知センサ101、門扉センサ102、センサーライト103、玄関センサ104、庭センサ105、窓センサ106、及びガラス破壊センサ107等の人体検知センサ11を備える。
【0024】
乗り越え検知センサ101、門扉センサ102は、境界ゾーンZ1に配置されている。乗り越え検知センサ101は、塀W1等に設置され、赤外線ビームが2本、水平方向に上下平行に張り巡らされ、2本の赤外線ビームが共に人物と交差した場合に、人物が柵や塀等を乗り越えたと判断するセンサである。
【0025】
門扉センサ102は、門扉の開閉を検知するセンサであって、門扉W2に設置され、例えば開閉部にS極、N極の磁石を付け、門が閉められてS極とN極とが接触すれば扉が閉まったと判断するセンサである。
【0026】
センサーライト103、玄関センサ104、及び庭センサ105は、敷地ゾーンZ2に設置されている。センサーライト103、玄関センサ104、及び庭センサ105は、人物が発する熱線(赤外線)を検知する人感センサ(いわゆる熱線センサ)から構成される。なお、本実施の形態では、玄関センサ104は、玄関アプローチW4に設置され、玄関のある検知領域内に熱源である人が滞留していれば人物がいると判断するセンサである。
【0027】
センサーライト103は、建築物W3の玄関付近の外壁に設置され、上記の人感センサ付き照明器具から構成される。庭センサ105は、建築物W3の外壁の庭に面した面に配置される。
【0028】
窓センサ106及びガラス破壊センサ107は、室内境界ゾーンZ3に設置されている。窓センサ106は、建築物W3の壁面に取り付けられた窓に設置され、門扉センサ102と同様、窓の開閉を磁石で検知するセンサである。
【0029】
ガラス破壊センサ107は、窓に設置され、ガラスが割れるときに発生する超高周波音を検知するセンサである。更に、室内境界ゾーンZ3において、窓周辺には、窓周辺の人感センサ(図略)が設置され、勝手口及びベランダにセンサーライト(図略)が設置される。
【0030】
中央装置20は、例えば建築物W3内に設置され、制御部21、スピーカ22、及び通信部23を含む。制御部21は、CPU、ROM、RAM等から構成され、本防犯システムの全体の制御を司る。具体的には、累積部211、異常値記憶部212、異常判定部213、閾値記憶部214、及び報知制御部215の機能を備えている。これらの機能は、CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することで実現される。
【0031】
累積部211は、異常判定部213により所定時間を計時する処理が実行されている期間において、人物を検知した人体検知センサ11に対して予め定められた異常値を、異常値記憶部212から読み出し、読み出した異常値を加算して異常値の累積値を算出する。また、累積部211は、異常判定部213により所定時間を計時する処理が終了されたとき、累積値をリセット値(例えば0)に戻す。
【0032】
異常値記憶部212は、各人体検知センサ11に対して予め定められた異常値を記憶する異常値テーブルを記憶する。図2は、異常値テーブルの一例を示す図である。異常値テーブルは、ゾーン、場所、人体検知センサ、異常値、及びセンサIDの欄を含む。図2に示すように、境界ゾーンには、乗り越え検知センサ101及び門扉センサ102が含まれ、乗り越え検知センサ101は、塀W1及び門周りに設置され、「+3」の異常値が設定され、門扉センサ102は、門扉W2に設置され、「+1」の異常値が設定されている。
【0033】
また、敷地ゾーンZ2には、玄関センサ104、センサーライト103、駐車場に設置されたセンサーライト、庭センサ105が含まれ、玄関センサ104には「+2」の異常値が設定され、センサーライト103には「+2」の異常値が設定され、駐車場のセンサーライトには「+1」の異常値が設定され、庭センサ105には「+3」の異常値が設定されている。
【0034】
また、室内境界ゾーンZ3には、玄関扉の開閉センサ、窓センサ106、窓周辺の人感センサ、ガラス破壊センサ107、及びセンサーライトが含まれ、玄関扉の開閉センサには「+4」の異常値が設定され、窓センサ106には「+4」の異常値が設定され、窓周辺の人感センサには「+3」の異常値が設定され、ガラス破壊センサには「+5」の異常値が設定され、センサーライトには「+3」の異常値が設定されている。
【0035】
また、センサIDの欄には、監視対象領域D1内に設置された各人体検知センサ11を識別するために各人体検知センサ11に一意に付与された記号列からなるセンサIDが格納されている。図2の例では、乗り越え検知センサ〜センサーライトの各々に対して、「1」〜「11」のセンサIDが付与されている。
【0036】
各人体検知センサ11は、人物を検知すると、中央装置20に検知信号を出力するが、この検知信号には、センサIDが含まれているため、制御部21は、センサ群10のいずれの人体検知センサ11が発報したかを特定することができる。
【0037】
ここで、図1の門扉センサ102と乗り越え検知センサ101とのそれぞれが人物を検知(発報)したことの意味を考えてみる。門扉センサ102は、例えば宅配業者、牛乳配達業者などの外来者が物を玄関に運び入れるときに門扉を開ける等で頻繁に人物を検知すると考えられる。すなわち、門扉センサ102の検知確率は高いことからその重要度は低いと考えることができる。一方、乗り越え検知センサ101は、塀や壁が人に乗り越えられるといった滅多に起こりえない事象の発生を意味するものであり、検知確率は低いことからその重要度は高いと考えられる。従って、図2に示すように、ある人体検知センサ11が人物を検知した場合、その人体検知センサ11が設置されている位置や、その人体検知センサ11が属するゾーンから、人物を検知した場合の重要度の高低を考慮し、異常値を予め設定する。すなわち、誰もいない留守宅において、人物を検知することが滅多に起こり得ない人体検知センサ11には高い異常値を設定し、何らかの原因で時々誤検知が起こり得る人体検知センサ11には低い異常値を設定する。
【0038】
なお、これまで明記していなかったが、本システムは防犯システムであるので、戸建て住宅の家人であるユーザが家を長期間留守にするときや就寝するときに、防犯の監視を行い、帰宅したときや起床時には防犯の監視を解除することを前提としている。具体的には、中央装置20は、ユーザにより監視を解除する操作指令を受け付けると、人体検知センサ11が人物を検知したとしても、異常の発生を判定する処理を行わない。一方、中央装置20は、ユーザにより防犯監視を実行する操作指令を受け付けると、異常の発生を判定する処理を行う。
【0039】
したがって、本実施の形態では、家人自らが防犯監視の実行中に人体検知センサ11を連続検知させて本防犯システムが異常と判定してしまうことは別の課題として捉えており、本実施の形態の対象外とする。
【0040】
図1に戻り、異常判定部213は、センサ群10を構成するいずれか1つの人体検知センサ11が人物を検知してから、所定時間経過するまでに、累積部211により算出される累積値が閾値記憶部214に予め記憶されている閾値以上となった場合、監視対象領域D1に人物が侵入して異常が発生したと判定し、一方、所定時間経過するまでに、累積部211により算出された累積値が閾値以上となるまでは、異常が発生したと判定しない。
【0041】
具体的には異常判定部213は、所定時間を計時するためのカウンタ213bを備え、カウンタ213bのカウント値が0の状態において、いずれかの人体検知センサ11により人物が検知されると、カウンタ213bに計時を開始させ、カウント値が所定時間経過すると、カウント値を0にリセットし、カウンタ213bに計時を終了させる。
【0042】
閾値記憶部214は、異常判定部213が異常の発生を判定する際に使用する閾値を記憶する。ここで、閾値としては、空き巣狙いの人物が監視対象領域D1に一旦侵入した後、犯行をあきらめるまでの時間を採用することができる。具体的には、閾値として5分を採用することができる。これは、空き巣狙いの人物の70%強が、監視対象領域D1のような住戸に一旦侵入した後、犯行をあきらめるまでの時間とされているからである。
【0043】
報知制御部215は、異常判定部213により異常と判定された場合、異常が発生したことを示す予め定められた報知音、又は音声をスピーカ22から出力させ、異常が発生したことを報知する。また、報知制御部215は、異常判定部213により異常が発生したと判定された場合、通信部23を制御して、異常が発生したことを示すデータをネットワークを介してサーバ30及び携帯端末40に送信する。
【0044】
スピーカ22は、報知制御部215の制御の下、異常が発生したことを示す報知音又は音声を出力し、付近の住民、ユーザや侵入者と思われる人物等に異常が発生したことを報知する。通信部23は、モデム等から構成され、制御部21の制御の下、ネットワークに対して種々のデータを送受信する。
【0045】
ネットワークは、例えば携帯電話通信網やインターネット等が採用され、所定の通信プロトコルを用いて、種々のデータが送受信される。サーバ30は、コンピュータから構成され、例えば監視対象領域D1を監視する防犯サービス業者の建物内に設置され、監視対象領域D1に異常が発生したか否かを監視する。携帯端末40は、携帯電話やPDA等から構成され、監視対象領域D1の住人等のユーザに携帯される。
【0046】
図3は、本防犯システムの動作の一例を示すタイミングチャートであり、縦軸は異常値の累積値、横軸は時間を示している。監視対象領域D1に人物が侵入した場合、最初に検知するのは境界ゾーンZ1に設置された人体検知センサ11のはずである。したがって、境界ゾーンZ1に設置されたいずれかの人体検知センサ11による人物の検知(発報)をトリガ(きっかけ)とし、異常判定部213が所定時間の計時を開始し(時刻T1)、警戒がスタートする。続いて、他の人体検知センサ11が人物を検知すると異常値は合算されて段階的に上がり(時刻T2)、異常値の累積値が閾値以上となったときに異常と判定する(時刻T3)。図3ではこの閾値は例えば「5」と設定されている。閾値「5」は、図2に示すようにガラス破壊センサ107の異常値と同値である。これは、ガラス破壊センサ107によるガラスの破壊が検知される事象の発生は非常に稀であり、窓ガラスの破壊は、建築物W3(家屋)への人物の侵入を意味するため、まさに異常と判定するのが妥当なレベルと考えるからである。
【0047】
また、図3の直線α1に示すように、時刻T1において、門扉センサ102が人物を検知した後、所定時間である5分が経過するまでに、異常値の累積値が閾値である「5」以上とならなかった場合、異常判定部213は、異常が発生していないと判定する。
【0048】
図4は、本防犯システムの動作のより具体的な一例を示すタイミングチャートである。まず、門扉センサ102(異常値:1)が人物を検知し(時刻T1)、続いて駐車場に設置されたセンサーライト(異常値:1)が人物を検知し(時刻T2)、続いて庭センサ105(異常値:3)が人物を検知する(時刻T3)ことで異常値の累積値が“5”になり、閾値以上となったので、異常判定部213は異常が発生したと判定している。
【0049】
なお、図3及び図4において、時間軸と平行な閾値を示す直線β1以上であって、異常値の累積値の軸と平行な5分を示す直線γ1未満の領域、すなわち、異常値の累積値が閾値以上となる領域を異常判断・発報領域と呼ぶ。また、直線β1と、直線γ1と、時間軸と、異常値の累積値の軸とで囲まれる矩形状の領域、すなわち、異常値の累積値が閾値未満であって、時間が所定時間未満の領域を警戒領域と呼ぶ。また、直線γ1以上であって、直線β1未満の領域、すなわち、警戒を開始してから所定時間内に異常値の累積値が閾値を超えなかった場合の領域を警戒解除領域と呼ぶ。
【0050】
図5は、本防犯システムの動作を示すフローチャートである。まず、異常判定部213が所定時間の計時処理を実行していない状態において、境界ゾーンZ1を構成する人体検知センサ11のうち、いずれか1の人体検知センサ11が人物を検知すると(ステップS1でYES)、異常判定部213は、カウンタ213bに計時を開始させ、警戒を開始する(ステップS2)。一方、境界ゾーンZ1を構成する人体検知センサ11のうち、いずれの人体検知センサ11も人物を検知しなかった場合(ステップS1でNO)、処理がステップS1に戻される。
【0051】
次に、累積部211は、ステップS1で人物を検知した人体検知センサ11の異常値を異常値記憶部212から読み出し、異常値の累積値の初期値とする(ステップS3)。次に、センサ群10を構成する人体検知センサ11のうち、いずれかの人体検知センサ11が人物を検知すると(ステップS4でYES)、累積部211は、人物を検知した人体検知センサ11の異常値を異常値記憶部212から読み出し、異常値の累積値に加算し、異常値の累積値を更新する(ステップS6)。
【0052】
一方、センサ群10を構成する人体検知センサ11のうち、いずれかの人体検知センサ11が人物を検知しないとき(ステップS4でNO)、処理がステップS5に進められる。
【0053】
次に、異常判定部213は、カウンタ213bを1カウントアップし、(ステップS5)、カウンタ213bのカウント値(t)が所定時間未満の場合(ステップS7でYES)、異常値の累積値が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS8)。そして、異常判定部213により異常値の累積値が閾値以上と判定された場合(ステップS8でYES)、報知制御部215は、スピーカ22に異常が発生したことを示す報知音、又は音声を出力させると共に、異常が発生したことを示すデータを、ネットワークを介してサーバ30及び携帯端末40に送信する(ステップS9)。一方、異常判定部213は、異常値の累積値が閾値未満の場合(ステップS8でNO)、処理をステップS4に戻す。
【0054】
すなわち、本防犯システムは、ある人体検知センサ11が人物を検知してから、所定時間が経過するまでに、異常値の累積値が閾値以上となった場合、異常の発生を報知する。
【0055】
一方、ステップS7において、異常判定部213は、カウンタ213bのカウント値(t)が所定時間に到達した場合(ステップS7でNO)、警戒を解除する(ステップS10)。具体的には、異常判定部213は、カウンタ213bの計時を終了させ、カウンタ213bをリセットさせて警戒を解除する。そして、このとき、累積部211は、異常値の累積値をリセット値(例えば0)に戻す。
【0056】
すなわち、本防犯システムは、ある人体検知センサ11が人物を検知してから、所定時間が経過するまで、人物を検知した人体検知センサ11の異常値の累積値が閾値以上とならなかった場合、異常が発生していないと判定し、警戒を解除する。
【0057】
以上説明したように、実施の形態1による防犯システムによれば、人体検知センサ11により人物が検知される毎に、人物を検知した人体検知センサ11に対して予め定められた異常値が加算され、異常値の累積値が算出され、いずれか1つの人体検知センサ11が人物を検知してから所定時間が経過するまでに、異常値の累積値が閾値を超えた場合、異常が発生したと判定される。ここで、監視対象領域D1の住人等が頻繁に起こす”人の動き”を検知する可能性の高い人体検知センサ11には低い異常値を設定し、一方、侵入者が監視対象領域D1に入るためであってあまり起こることのない特殊な”人の動き”を検知する可能性のある人体検知センサ11には高い異常値を設定する。
【0058】
これにより、人体検知センサ11が監視対象領域D1の住人等を検知したり、人体検知センサ11が人物を誤検知したりしたとしても、直ちに異常と判断されず、監視対象領域D1内に人物が侵入したことを精度良く検知することができる。
【0059】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2による防犯システムは、監視対象領域D1の住人であるユーザが任意の時刻に任意の場所から監視対象領域D1の監視を開始させたり、監視を解除させたりすることを可能にしたことを特徴とする。実施の形態2による防犯システムは図1に示すように、実施の形態1による防犯システムにおいて、中央装置20が操作部24を備えている。操作部24は、中央装置20の筐体等に配置され、ユーザが本防犯システムに監視対象領域D1の監視を開始させるための操作指令を受け付ける「防犯セット」ボタンと、ユーザが本防犯システムによる監視対象領域D1の監視を解除させるための操作指令を受け付ける「解除」ボタンとを含む。
【0060】
また、実施の形態2による防犯システムは、実施の形態1の防犯システムにおいて、制御部21が、監視指令受付部216(監視解除手段)の機能を更に備えている。監視指令受付部216は、「防犯セット」ボタンが押されると、制御部21に監視対象領域D1の監視するための上述した種々の処理を実行させる。一方、監視指令受付部216は、「解除」ボタンが押されると、制御部21に監視対象領域D1を監視するための上述した種々の処理を実行させない。
【0061】
家人であるユーザが外出する際、「防犯セット」ボタンを押すと、その後に自らが玄関を通って門扉を開けるので、異常値の累積値を自らが向上させてしまう。さらに帰宅する際も、自らが門扉を開けて玄関を通るので、異常値の累積値を自ら向上させてしまうことになる。これでは、家人自らの監視対象領域D1内での行動経路によっては、人体検知センサ11に自らが検知され、本防犯システムに対して異常と判定させてしまうことも起こり得る。これは使い勝手が非常に良くない。したがって、本防犯システムでは、図1に示すように、携帯端末40などを利用して、任意の時刻に任意の場所から、中央装置20を遠隔操作することで、本防犯システムによる監視対象領域D1の監視を開始する、又は監視を解除することを可能とする。
【0062】
具体的には、監視指令受付部216は、携帯端末40から本防犯システムによる監視対象領域D1の監視を開始させるコマンドが送信され、そのコマンドがネットワークを介して通信部23により受信されると、制御部21に、監視対象領域D1を監視するための種々の処理を実行させる。一方、監視指令受付部216は、携帯端末40から本防犯システムによる監視対象領域D1の監視を解除するコマンドが送信され、そのコマンドがネットワークを介して通信部23に受信されると、制御部21に、監視対象領域D1を監視するための種々の処理を実行させない。
【0063】
これにより、ユーザが外出して自宅を留守にしてから本防犯システムに監視対象領域D1の監視を開始させたり、監視を解除させたりすることが可能となり、上述したような使い勝手が悪くなる問題を防止することができる。
【0064】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3による防犯システムは、上記閾値と各人体検知センサ11の異常値とを家人であるユーザが自由に設定できることを特徴とする。実施の形態3による防犯システムは、図1に示すように、実施の形態2の防犯システムにおいて、操作部24が、上記閾値及び各人体検知センサ11の異常値を設定するためのユーザからの操作指令を受け付ける操作ボタンを含んでいる。
【0065】
また、実施の形態3による防犯システムは、実施の形態2の防犯システムにおいて、制御部21が調整部217の機能を更に備えている。調整部217は、操作部24により閾値を変更するためのユーザからの操作指令が受け付けられたとき、当該操作指令により示される閾値で、閾値記憶部214に記憶されている閾値を更新する。例えば、操作部24が閾値を7分にする操作指令を受け付けた場合、調整部217は、閾値記憶部214に記憶されている閾値を7分に更新する。
【0066】
また、調整部217は、操作部24がある人体検知センサ11の異常値を変更するための操作指令を受け付けた場合、当該操作指令が示す人体検知センサ11の異常値で、異常値記憶部212に記憶されている異常値を更新する。例えば、操作部24がユーザにより門扉センサ102の異常値を「+2」に変更するための操作指令を受け付けた場合、調整部217は、門扉センサ102の異常値として異常値記憶部212に記憶されている異常値を「+1」から「+2」に更新する。
【0067】
これにより、監視対象領域D1の構造やユーザの監視対象領域D1内の行動経路に応じて、異なる各人体検知センサ11の重要度に対して柔軟に対応することが可能となり、より正確に異常の発生を判定することができる。
【0068】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4による防犯システムは、図3及び図4のタイミングチャートが示す各領域において、通報内容を変えることを特徴とする。なお、本実施の形態の全体構成図は図1と同様であるため、図1を用いて説明する。報知制御部215は、本防犯システムの状態が図3及び図4に示すどの領域に属するかに応じて通報内容を変更する。
【0069】
具体的には、報知制御部215は、図6に示す通報決定テーブルを用いて、防犯システムの状態に応じて通報内容を決定する。図6は通報決定テーブルを示した図である。報知制御部215は、防犯システムの状態が警戒領域である場合、家人であるユーザ及び防犯サービス業者に対して、「防犯システムが警戒に入ります」というような情報を通知すると共に、どの人体検知センサ11が人物を検知したかを示す情報を通知する。具体的には、報知制御部215は、境界ゾーンZ1のいずれかの人体検知センサ11により人物が検知され、防犯システムの状態が警戒領域になったとき、「防犯システムが警戒に入ります」という文言と、人物を検知した人体検知センサ11の名称とを含むデータを、ネットワークを介してサーバ30及び携帯端末40に送信する。当該データを受信したサーバ30及び携帯端末40は、表示部に「防犯システムが警戒に入ります」という文言と、人物を検知した人体検知センサ11の名称とを表示し、システムが警戒に入ったことをユーザ等に報知する。なお、報知制御部215は、防犯システムの状態が警戒領域にある場合、人体検知センサ11により人物が検知される毎に、人物を検知した人体検知センサ11の名称を含むデータをネットワークを介してサーバ30及び携帯端末40に送信し、サーバ30及び携帯端末40の表示部に人物を検知した人体検知センサ11の名称を表示させる。
【0070】
一方、報知制御部215は、防犯システムの状態が警戒領域にある場合、監視対象領域D1に侵入した人物(侵入者)に対しては警告を行わない。
【0071】
また、報知制御部215は、防犯システムの状態が異常判断・発報領域になったとき、「複数の人体検知センサが人物を検知して異常が発生」との文言を示すデータをネットワークを介して、サーバ30及び携帯端末40に送信し、サーバ30及び携帯端末40の表示部に「複数の人体検知センサが人物を検知して異常が発生」との文言を表示させ、ユーザ及び防犯サービス業者に防犯システムが異常を検知したことを報知する。
【0072】
また、報知制御部215は、防犯システムの状態が異常判断・発報領域にあるとき、スピーカ22に救急車、パトカー、又は消防車等のサイレン音を出力させたり、犬の鳴き声を出力させたりして、侵入者に警告を通報する。
【0073】
また、報知制御部215は、防犯システムの状態が警戒解除領域になったとき、「防犯システムの警戒を解除します」という文言を含むデータをネットワークを介してサーバ30及び携帯端末40に送信し、サーバ30及び携帯端末40の表示部に「防犯システムの警戒を解除します」との文言を表示させ、ユーザ及び防犯サービス業者に警戒が解除されたことを通知する。
【0074】
一方、報知制御部215は、防犯システムの状態が警戒解除領域になったとき、侵入者には特に警告を通知しない。
【0075】
このように、実施の形態4による防犯システムによれば、防犯システムの状態に応じて、通報内容が変更されるため、ユーザ及び防犯サービス業者は防犯システムのより詳細な状態を認識することができる。
【0076】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5による防犯システムは、中央装置20の処理をサーバ30に実行させることを特徴とする。図7は、実施の形態5による防犯システムの全体構成図を示している。本防犯システムは、センサ群10、通信装置50、及びサーバ30aを備えている。携帯端末40はネットワークを介してサーバ30aと接続されている。通信装置50は、スピーカ22と接続され、モデム等から構成され人体検知センサ11から出力される検知信号をネットワークを介してサーバ30aに送信する。
【0077】
サーバ30aは、累積部211、異常値記憶部212、異常判定部213、閾値記憶部214、報知制御部215a、監視指令受付部216、調整部217、操作部24、及び表示部32を備える。累積部211〜閾値記憶部214、監視指令受付部216,調整部217、及び操作部24の機能は、実施の形態1〜4のものと同一であるため、説明を省略する。
【0078】
報知制御部215aは、異常判定部213により異常が発生したと判定された場合、異常が発生したことを示す情報を表示部32に表示させると共に、ネットワークを介して携帯端末40に送信する。表示部32は、液晶ディスプレイや陰極線管ディスプレイ等の表示装置から構成されている。
【0079】
また、報知制御部215aは、異常判定部213により異常が発生したと判定された場合、異常が発生したことを示す情報をネットワークを介して通信装置50に送信する。
【0080】
通信装置50は、異常が発生したことを示す情報を受信すると、実施の形態1〜4に示すように、スピーカ22から異常が発生したことを示す音声等を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態1〜4による防犯システムの全体構成図を示している。
【図2】異常値テーブルの一例を示す図である。
【図3】本防犯システムの動作の一例を示すタイミングチャートであり、縦軸は異常値の累積値、横軸は時間を示している。
【図4】本防犯システムの動作のより具体的な一例を示すタイミングチャートである。
【図5】本防犯システムの動作を示すフローチャートである。
【図6】通報決定テーブルを示した図である。
【図7】実施の形態5による防犯システムの全体構成図を示している。
【符号の説明】
【0082】
10 センサ群
11 人体検知センサ
20 中央装置
21 制御部
22 スピーカ
23 通信部
24 操作部
30 ,30a サーバ
31 操作部
32 表示部
40 携帯端末
50 通信装置
101 乗り越え検知センサ
102 門扉センサ
103 センサーライト
104 玄関センサ
105 庭センサ
106 窓センサ
107 ガラス破壊センサ
211 累積部
212 異常値記憶部
213b カウンタ
213 異常判定部
214 閾値記憶部
215,215a 報知制御部
216 監視指令受付部
217 調整部
D1 監視対象領域
L1,L2 境界線
Z1 境界ゾーン
Z2 敷地ゾーン
Z3 室内境界ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象領域に侵入する人物を検知する防犯システムであって、
前記監視対象領域は、前記監視対象領域の境界を含む領域である境界ゾーンを含み、
前記監視対象領域内において、少なくとも前記境界ゾーンに設置され、人物を検知する複数の人体検知センサと、
各人体検知センサの設置場所に基づいて各人体検知センサに予め付与された異常値を記憶する異常値記憶手段と、
人物を検知した人体検知センサの異常値の累積値を算出する累積値算出手段と、
前記複数の人体検知センサのうち、いずれか1の人体検知センサが人物を検知してから所定時間が経過するまでに、前記累積値算出手段により算出された累積値を予め定められた閾値と比較し、前記累積値が前記閾値を越えた場合に異常であると判定し、前記累積値が前記閾値を越えるまでは異常でないと判定する異常判定手段と、
前記異常判定手段により異常と判定された場合、そのことを報知する報知手段とを備えることを特徴とする防犯システム。
【請求項2】
前記異常判定手段は、前記所定時間が経過するまでに、前記累積値が前記閾値を超えなかった場合、前記累積値をリセット値に戻すことを特徴とする請求項1に記載の防犯システム。
【請求項3】
任意の場所から任意の時刻における入力に従って前記監視対象領域の監視を解除させる監視解除手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の防犯システム。
【請求項4】
前記異常判定手段は,各人体検知センサの異常値を変更する調整手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の防犯システム。
【請求項5】
前記報知手段は、前記異常判定手段により異常であると判定された場合、そのことを示す情報を、所定のネットワークを介して接続された外部装置に送信することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の防犯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−77612(P2008−77612A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259462(P2006−259462)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】