説明

集合セラミック積層体、集合セラミック多層基板およびセラミック多層基板

【課題】圧着時の製品部と捨て代部の伸びの差による特性変動や段差の発生などのない集合セラミック積層体、該集合セラミック積層体から得られる、特性のばらつきの少ないセラミック多層基板、その前駆体である集合セラミック多層基板を提供する。
【解決手段】個々の製品の導体となる複数の製品用導体パターン11が配設された製品部10と、製品部の周囲の領域である捨て代部20とを有するセラミックグリーンシート11を積層した集合セラミック積層体において、捨て代部に、製品部に配設された製品用導体パターン11と同じ形状のダミー導体パターン21を、製品部と同じ態様で配設する。
また、製品部10の製品用導体パターン11が容量形成用電極パターン12を含むものである場合に、製品部の周囲の領域である捨て代部20にも、容量形成用電極パターンを含む製品用導体パターン11と同じ形状のダミー導体パターン21を、製品部と同じ態様で配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック多層基板などの積層セラミック電子部品の製造に用いられる集合セラミック積層体に関し、詳しくは、分割することにより、複数個の積層セラミック電子部品を効率よく得ることが可能な、いわゆる複数個取り(多数個取り)用の集合セラミック積層体、該集合セラミック積層体から得られるセラミック多層基板、その前駆体である集合セラミック多層基板に関し、さらには、焼結済みの集合セラミック積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化が進み、それに伴って、導体を3次元的に配置したセラミック多層基板が、小型化、高密度実装化に適した回路基板として、広く用いられるに至っている。
【0003】
ところで、このようなセラミック多層基板の製造方法として、例えば、個々の製品の導体となる製品用導体パターンが複数配設された製品部と、製品部の周囲の捨て代部とを備えたセラミックグリーンシートを積層、圧着して集合セラミック積層体を形成し、この集合セラミック積層体を焼成した後、表面にチップ型電子部品を搭載し、捨て代部を除去するとともに、集合セラミック積層体を個々のセラミック多層基板に分割する、いわゆる複数個取りの製造方法が知られている。
【0004】
しかしながら、上述のような製造方法の場合、製品部には導体パターンが配設されているのに対し、捨て代部には導体パターンが配設されていなかったり、製品部よりも著しく低い密度で導体パターンが配設されていたりするため、セラミックグリーンシートを積層した後、圧着する工程で製品部と捨て代部の伸びや変形の程度が異なるため、捨て代部の近傍に配設された製品用の導体パターンが変形して特性変動を生じるという問題点がある。
【0005】
特に、製品部に容量形成用の電極パターンが形成されている場合、その変形は特性に直接かつ大きく影響するため、製品部と捨て代部の境界部付近における製品用導体パターンの変形を抑制することが必要になる。
【0006】
また、製品部と捨て代部における導体パターンの配設態様の差により、集合セラミック積層体の、製品部と捨て代部の境界部に、段差が形成され、チップ型電子部品が搭載される表面の平坦性が損なわれたり、層間剥離の原因となったりするという問題点がある。
【0007】
このような問題点を解決するため、例えば、製品部に製品用導体パターンを配設し、捨て代部にもダミー導体パターンを配設することが示唆されている(特許文献1の段落0005参照)。
また、捨て代部にダミー導体パターンを配設することは、その他の特許文献にも示されている(例えば、特許文献2の図1など参照)。
しかしながら、セラミック多層基板を製造する場合に、集合セラミック積層体の捨て代部にも導体パターンを配設することが知られているとしても、従来の技術では、製品部と捨て代部における導体パターンの形状や配設態様、導体パターンの配設密度などの相違に基づき、製品部と捨て代部ではその伸びが異なり、上述のような特性の変動や不具合を十分に抑制することは困難であるのが実情である。
【特許文献1】特開2005−72416号公報
【特許文献2】特開2002−43705公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、圧着時の製品部と捨て代部の伸びの差による特性変動や段差の発生などのない集合セラミック積層体、該集合セラミック積層体から得られる、特性のばらつきの少ないセラミック多層基板、その前駆体である集合セラミック多層基板、さらには、焼結済みの集合セラミック積層体を高い寸法精度で製造することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の集合セラミック積層体は、
個々の製品の導体となる複数の製品用導体パターンが配設された製品部と、前記製品部の周囲の領域である捨て代部とを有するセラミックグリーンシートを積層した集合セラミック積層体であって、
前記捨て代部に、前記製品部に配設された前記製品用導体パターンと同じ形状を有するダミー導体パターンが、前記製品部と同じ態様で配設されていること
を特徴としている。
【0010】
また、請求項2の集合セラミック積層体は、前記製品部の前記製品用導体パターンが容量形成用電極パターンを含むものであり、前記製品部の周囲の領域である捨て代部にも、前記容量形成用電極パターンを含む前記製品用導体パターンと同じ形状を有するダミー導体パターンが、前記製品部と同じ態様で配設されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項3の集合セラミック積層体は、前記製品用導体パターンが配設された面が、集合セラミック積層体の表面となるような態様で前記セラミックグリーンシートが積層されており、かつ、前記集合セラミック積層体の表面の捨て代部には位置情報表示マークが付されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項4の集合セラミック積層体は、前記集合セラミック積層体の表面の、前記位置情報表示マークが付されている前記捨て代部にはダミー導体パターンが配設されていないことを特徴としている。
【0013】
また、本発明にかかる焼結集合セラミック積層体の製造方法は、
請求項1〜4のいずれかに記載の集合セラミック積層体の少なくとも一方の主面に、前記集合セラミック積層体の焼結温度では焼結しないセラミック粉末を主たる成分とする拘束層を密着させた状態で、前記集合セラミック積層体は焼結するが、前記拘束層は焼結しない条件下に焼成を行う焼成工程と、
前記焼成工程の終了後に前記拘束層を除去して前記集合セラミック積層体の焼結体を得る工程と
を具備することを特徴としている。
【0014】
また、請求項6の集合セラミック多層基板は、請求項1〜4のいずれかに記載の集合セラミック積層体が焼成されたものであることを特徴としている。
【0015】
また、請求項7のセラミック多層基板は、請求項1〜4のいずれかに記載の集合セラミック積層体が焼成されるとともに、個々の製品である子基板に分割されたものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の集合セラミック積層体は、製品用導体パターンが配設された製品部と、製品部の周囲の捨て代部とを有するセラミックグリーンシートを積層した集合セラミック積層体において、捨て代部に、製品部に配設された製品用導体パターンと同じ形状を有するダミー導体パターンを、製品部と同じ態様で配設しているので、セラミックグリーンシートを積層した後の圧着工程における、製品部と捨て代部の伸びの差を抑制することが可能になり、いわゆる複数個取りの方法で、特性の変動の少ない個々の製品を効率よく製造することが可能な集合セラミック積層体を提供することができる。
【0017】
なお、本発明においては、製品用導体パターンが配設されたセラミックグリーンシートのうち、所定のセラミックグリーンシートについて、その捨て代部にダミー導体パターンを形成し、他のセラミックグリーンシートについては、その捨て代部にダミー導体パターンを形成しないようにすることも可能であり、また、製品部に製品用導体パターンが配設されたすべてのセラミックグリーンシートについて、その捨て代部にダミー導体パターンを形成することも可能である。
【0018】
なお、所定のセラミックグリーンシートについて、その捨て代部にダミー導体パターンを形成し、その他のセラミックグリーンシートについては、その捨て代部にダミー導体パターンを形成しないようにした場合にも、セラミックグリーンシートを積層した後の圧着工程における、製品部と捨て代部の伸びの差を効果的に抑制できることが確認されている。
また、製品部に製品用導体パターンが配設されたすべてのセラミックグリーンシートについて、その捨て代部にダミー導体パターンを形成するようにした場合さらに確実に製品部と捨て代部の伸びの差を抑制することが可能になり、より特性のばらつきのない製品を得ることが可能になる。
なお、ダミー導体パターンは、製品部と同じ態様で配設されるが、同じ態様とは、製品部と同じ向き、同じ間隔、同じ密度で配設することをいう。
【0019】
また、集合セラミック積層体の製品用導体パターンが、容量形成用電極パターンを含むものである場合、積層体の伸びによる容量形成用電極パターンの伸びが、形成される容量の変動、ばらつきに大きな影響を及ぼすことになるが、請求項2のように、容量形成用電極パターンを含む製品用導体パターンが配設された製品部の周囲の捨て代部にも、容量形成用電極パターンを含む製品用導体パターンと同じ形状を有するダミー導体パターンを配設するようにした場合、容量特性のばらつきの少ない製品を得ることが可能になり特に望ましい。
【0020】
また、請求項3の集合セラミック積層体のように、製品用導体パターンが配設された面が、集合セラミック積層体の表面となるような態様でセラミックグリーンシートが積層され、かつ、集合セラミック積層体の表面の捨て代部に位置情報表示マークが付された構成とすることにより、例えば、集合セラミック積層体の表面にチップ型電子部品を実装する場合の実装位置に関する情報表示(実装マーク)や、個々の製品に分割する場合の分割位置に関する情報表示(分割位置マーク)などを、特別な表示領域を設けることなく行うことが可能になる。すなわち、製造上の必要などから、集合セラミック積層体の表面(主面)に実装マークを形成するなどのように位置情報表示を行うことが必要になる場合があるが、その場合に集合セラミック積層体の主面の捨て代部に実装マークの形成などの情報表示を行うことにより、集合セラミック積層体のサイズの増大を招くことなく情報表示を行うことができる。なお、情報表示用のマークは捨て代部のダミー導体パターンを避けて形成したり、ダミー導体パターンの上に形成されていても位置情報表示マークを確認することができるような材料を用いてマークを形成することにより、位置情報表示マークとしての機能を果たさせることができる。
【0021】
また、請求項4のように、集合セラミック積層体の表面の、位置情報表示マークが付されている捨て代部にはダミー導体パターンを配設しないように構成した場合、位置情報表示マークの高い視認性を確保して、該位置情報表示マークに基づくプロセス(例えば、位置情報表示マークが実装マークである場合の実装プロセス、あるいは位置情報表示マークが分割位置マークである場合の分割プロセス)を効率よく実施して、個々の製品を効率よく製造することが可能な集合セラミック積層体を得ることが可能になる。
【0022】
また、本発明にかかる焼結集合セラミック積層体の製造方法は、請求項1〜4のいずれかに記載の集合セラミック積層体の少なくとも一方の主面に、拘束層を密着させた状態で、集合セラミック積層体は焼結するが、拘束層は焼結しない条件下に焼成を行った後、拘束層を除去することにより、集合セラミック積層体の焼結体を得るようにしているので、製品部と捨て代部との収縮挙動に差が少なく、かつ、拘束層により、平面方向の収縮が抑制されるため、より寸法精度が高く、かつ、特性のばらつきの少ない個々の製品を効率よく製造することが可能な焼結済みの集合セラミック積層体を得ることが可能になる。
【0023】
また、請求項6の集合セラミック多層基板は、請求項1〜4のいずれかに記載の集合セラミック積層体が焼成されたものであるので、その主面にチップ型電子部品を搭載した後、あるいは、特にチップ型電子部品を搭載することなく、所定の位置で分割することにより、複数個取りの方法で効率よくセラミック多層基板を得ることが可能になる。
【0024】
また、請求項7のセラミック多層基板は、請求項1〜4のいずれかに記載の集合セラミック積層体が焼成され、個々の製品である子基板に分割されたものであり、効率よく製造することができることから、特性のばらつきが少なく経済性にも優れたセラミック多層基板を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の実施例を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0026】
この実施例1では、個々の製品の導体となる製品用導体パターンが複数配設された製品部と、製品部の周囲の捨て代部とを備えたセラミックグリーンシートを積層、圧着することにより形成される、集合セラミック積層体を例にとって説明する。なお、この集合セラミック積層体は、例えば、焼成後に、チップ型電子部品を搭載した後、捨て代部を除去するとともに、所定の位置で分割することにより、複数個のセラミック多層基板を得ることが可能な、いわゆる複数個取りの方法でセラミック多層基板を製造する場合に用いられる集合セラミック積層体である。
【0027】
まず、SiO2,Al23,B23,CaOを混合した結晶化ガラス粉末と、アルミナ粉末を等重量比率で混合して混合粉末を得た。
そして、この混合粉末100重量部に、ポリビニルブチラール15重量部、イソプロピルアルコール40重量部、およびトロール20重量部を加え、ボールミルで24時間混合してスラリーとした。
【0028】
このスラリーをドクターブレード法により延ばして厚さ120μmのグリーンシートを作製した。それからこのグリーンシートを100mm□にカットすることにより、セラミックグリーンシートを得た。
【0029】
次に、このセラミックグリーンシートに、層間接続用のビアホール(貫通孔)を形成し、該ビアホールを含む領域に、内層導体となる導体パターンを印刷により形成した。
なお、この実施例1では、内層導体として、容量形成用電極パターン(容量電極パターン)を含む導体パターンが配設されたセラミックグリーンシートと、容量形成用電極パターンを含まない導体パターンが配設されたセラミックグリーンシートを形成した。
【0030】
図1は、容量形成用電極パターン(容量電極パターン)を含む導体パターンが配設されたセラミックグリーンシートの一例を示す平面図である。図1に示すように、このセラミックグリーンシート1においては、個々の製品となる複数の製品部10に、各製品の導体となる製品用導体パターン11が配設されており、この製品用導体パターン11は、容量形成用電極パターン12、他の内層導体パターン13を含んでいる。
なお、容量形成用電極パターンを含まない導体パターンが配設されたセラミックグリーンシートについては図示を省略している。
【0031】
そして、この実施例1では、図1に示すように、容量形成用電極パターン12を含む製品用導体パターン11が形成されたセラミックグリーンシート1については、その捨て代部20に、製品部10に配設された製品用導体パターン11と同じ形状を有するダミー導体パターン21を、製品部10と同じ態様で配設した。ただし、捨て代部には、ビアホールは形成しないようにした。これは、通常、捨て代部にはビアホールを形成しないようにした方が、圧着時における、製品部と捨て代部の伸びや変形の差を小さくできて好ましいことによる。
【0032】
また、これらのセラミックグリーンシートを積層することにより形成される集合セラミック積層体の一方主面(上側表面)を構成することになるセラミックグリーンシートについては、図2に示すように、製品部10の製品用導体パターン11が容量形成用電極パターン12を含むものであるが、捨て代部20にはダミー導体パターンを配設せず、搭載すべきチップ型電子部品の位置合わせを行うための実装マーク22のみを印刷形成した。
【0033】
さらに、製品部に製品用導体パターンが配設されたセラミックグリーンシートであっても、該製品用導体パターンが容量形成用電極パターンを含まないものについては、捨て代部へのダミー導体パターンの形成は行わなかった。また、捨て代部へのビアホールの形成も行わなかった。
【0034】
それから、上述のようにして作製した各セラミックグリーンシートを所定の順序で積層し、圧力50Mpa、温度60℃で加圧して密着させることにより集合セラミック積層体を得た。
次に、得られた集合セラミック積層体を温度600℃で3時間加熱した後、温度900℃で1時間加熱することにより、焼結済みの集合セラミック積層体を得た。
【実施例2】
【0035】
実施例2では、上記実施例1の集合セラミック積層体とほぼ同様の方法で集合セラミック積層体を作製した。
ただし、この実施例2では、実施例1の場合と同様に、容量形成用電極パターンを含む製品用導体パターンが形成されたセラミックグリーンシートについて、その捨て代部に、製品部に配設された製品用導体パターンと同じ形状を有するダミー導体パターンを、製品部と同じ態様で配設するとともに、製品用導体パターンが容量形成用電極パターンを含まないセラミックグリーンシートについても、捨て代部に、製品部に配設された製品用導体パターンと同じ形状を有するダミー導体パターンを、製品部と同じ態様で配設した。
【0036】
これらのセラミックグリーンシートを積層することにより形成される集合セラミック積層体の一方主面(上側表面)を構成することになるセラミックグリーンシートについては、実施例1の場合と同じく、製品部10の製品用導体パターン11が容量形成用電極パターン12を含むものであるが、捨て代部20にはダミー導体パターンを配設せず、チップ型電子部品の位置合わせを行うための実装マーク22のみを印刷形成した(図2参照)。
また、いずれのセラミックグリーンシートについても捨て代部には、ビアホールは形成しないようにした。
【0037】
それから、上述のようにして作製した各セラミックグリーンシートを所定の順序で積層し、圧力50Mpa、温度60℃で加圧して密着させることにより集合セラミック積層体を得た。
次に、得られた集合セラミック積層体を温度600℃で3時間加熱した後、温度900℃で1時間加熱することにより、焼結済みの集合セラミック積層体を得た。
【実施例3】
【0038】
この実施例3では、複数個取りの方法でセラミック多層基板を製造する場合に用いられる焼結済みの集合セラミック積層体を、いわゆる無収縮工法により製造する場合について説明する。
【0039】
<集合セラミック積層体形成用のセラミックグリーンシートの作製>
まず、SiO2,Al23,B23,CaOを混合した結晶化ガラス粉末と、アルミナ粉末を等重量比率で混合して混合粉末を得た。
そして、この混合粉末100重量部に、ポリビニルブチラール15重量部、イソプロピルアルコール40重量部、およびトロール20重量部を加え、ボールミルで24時間混合してスラリーとした。
このスラリーをドクターブレード法により延ばして厚さ120μmのセラミックグリーンシートを作製し100mm□にカットを施し、集合セラミック積層体形成用のセラミックグリーンシートを得た。
【0040】
<拘束層用のアルミナグリーンシートの作製>
平均粒径が1.0μmのアルミナ粉末100重量部に、ポリビニルブチラール15重量部、イソプロピルアルコール40重量部、およびトロール20重量部を加え、ボールミルで24時間混合してスラリーとした。
そして、このスラリーをドクターブレード法により延ばして厚さ120μmのグリーンシートを作製し、100mm□にカットを施し、拘束層用のアルミナグリーンシートを得た。
【0041】
<集合セラミック積層体の作製>
次に、上述のようにして作製した集合セラミック積層体形成用のセラミックグリーンシートに、層間接続用のビアホール(貫通孔)を形成し、該ビアホールを含む領域に、内層導体となる導体パターンを印刷により形成した。
なお、この実施例3でも、内層導体として、容量形成用電極パターン(容量電極パターン)を含む導体パターンが配設されたセラミックグリーンシートと、容量形成用電極パターンを含まない導体パターンが配設されたセラミックグリーンシートを形成した。
【0042】
容量形成用電極パターン12を含む製品用導体パターン11が形成されたセラミックグリーンシート1については、その捨て代部20に、製品部10に配設された製品用導体パターン11と同じ形状を有するダミー導体パターン21を、製品部10と同じ態様で配設した(図1参照)。ただし、捨て代部には、ビアホールは形成しないようにした。
【0043】
また、製品部に製品用導体パターンが配設されたセラミックグリーンシートであっても、該製品用導体パターンが容量形成用電極パターンを含まないものについては、捨て代部へのダミー導体パターンの形成は行わなかった。また、捨て代部へのビアホールの形成も行わなかった。
【0044】
また、セラミックグリーンシートを積層することにより形成される集合セラミック積層体の一方主面(上側表面)を構成することになるセラミックグリーンシートについては、この実施例3においても、製品部10の製品用導体パターン11が容量形成用電極パターン12を含むものであるが、捨て代部20にはダミー導体パターンを配設せず、チップ型電子部品の位置合わせを行うための実装マーク22のみを印刷形成した(図2参照)。
【0045】
それから、拘束層用のアルミナグリーンシート、上述のようにして製品用導体パターンやダミー導体パターン、実装マークなどが形成された各セラミックグリーンシート、拘束層用のアルミナグリーンシートの順で積層し、圧力50Mpa、温度60℃で加圧して密着させ、上記セラミックグリーンシートの積層体である集合セラミック積層体と、その上下両面側に配設されたアルミナグリーンシート(拘束層)を備えた複合積層体を形成した。
【0046】
次に、上下両面側から拘束層により挟まれた構造を有する複合積層体を温度600℃で3時間加熱した後、温度900℃で1時間加熱することにより、セラミックグリーンシートの積層体である集合セラミック積層体を焼結させた。
それから、焼成後の集合セラミック積層体から拘束層を除去し、焼結済み集合セラミック積層体を得た。
【実施例4】
【0047】
実施例4では、上述の実施例1の方法に準じる方法で、集合セラミック積層体を作製した。
ただし、この実施例4では、捨て代部20のさらに外側に位置情報表示マーク(実装マーク)22(図3参照)を付すための位置情報表示エリア30を有するセラミックグリーンシート1を用いた。
【0048】
そして、セラミックグリーンシートを積層することにより形成される集合セラミック積層体の一方主面(上側表面)を構成することになるセラミックグリーンシートについても、図3に示すように、捨て代部20にダミー導体パターン21を配設し、捨て代部20の外側の位置情報表示エリア30に位置情報表示マーク(実装マーク)を付すようにした。
【0049】
その他は、上記実施例1の場合と同様の手順で、積層、焼成を行い、集合セラミック積層体を作製した。
なお、図3において、図1および2と同一符号を付した部分は、同一または相当する部分を示している。
【0050】
<評価>
上記実施例1〜4において上述のようにして作製した焼結済み集合セラミック積層体について、複数の製品に分割されることになる製品部のうち、最外周部に位置するエリアの製品部において形成される容量と、この最外周部から離れた中央に位置するエリアの製品部において形成される容量の比を調べ、特性の変動の状態を調べた。
また、比較のため、以下の比較例1,2,3および4の試料を作製してその特性を調べた。
【0051】
<比較例1>
集合セラミック積層体を構成する各セラミックグリーンシートのうち、製品用導体パターンが容量形成用導体パターンを含むか否かにかかわらず、いずれの捨て代部にもダミー導体パターンを形成していないセラミックグリーンシート1(図4参照)を用意し、このセラミックグリーンシートを用いて集合セラミック積層体を作製した。
【0052】
<比較例2>
集合セラミック積層体を構成する各セラミックグリーンシートのうち、製品用導体パターンが容量形成用導体パターンを含むセラミックグリーンシートとして、図5に示すように、ダミー導体パターンとして、捨て代部の全面に導体パターンを有するセラミックグリーンシートを用意した。
また、製品用導体パターンが容量形成用導体パターンを含まないセラミックグリーンシートとしては、その捨て代部に導体パターンを形成していないセラミックグリーンシートを用意した。
そして、これらのセラミックグリーンシートを用いて上記実施例1の場合と同様の方法で比較例2の集合セラミック積層体を作製した。
【0053】
<比較例3>
集合セラミック積層体を構成する各セラミックグリーンシートのうち、製品用導体パターンが容量形成用導体パターンを含むセラミックグリーンシートとして、図6に示すように、ダミー導体パターンとして、その捨て代部に、細い帯状の導体パターン(ダミー導体パターンの面積は製品用導体パターンと同じであるが形状が異なる導体パターン)を印刷したセラミックグリーンシートを用意した。
また、製品用導体パターンが容量形成用導体パターンを含まないセラミックグリーンシートとしては、その捨て代部に導体パターンを形成していないセラミックグリーンシートを用意した。
そして、これらのセラミックグリーンシートを用いて上記実施例1の場合と同様の方法で比較例3の集合セラミック積層体を作製した。
【0054】
<比較例4>
集合セラミック積層体を構成する各セラミックグリーンシートのうち、製品用導体パターンが容量形成用導体パターンを含むセラミックグリーンシートとして、図7に示すように、ダミー導体パターンとして、その捨て代部に、内側には導体パターンの印刷されてない四角形状の導体パターン(ダミー導体パターンの面積は製品用導体パターンと同じであるが形状が異なる導体パターン)を印刷したセラミックグリーンシートを用意した。
また、製品用導体パターンが容量形成用導体パターンを含まないセラミックグリーンシートとしては、その捨て代部に導体パターンを形成していないセラミックグリーンシートを用意した。
そして、これらのセラミックグリーンシートを用いて上記実施例1の場合と同様の方法で比較例4の集合セラミック積層体を作製した。
なお、比較例1〜4で用いたセラミックグリーンシートを示す図4〜7において、図1〜3と同じ符号を付した部分は同一または相当する部分を示している。
【0055】
上記実施例1〜4および比較例1〜4の試料についての特性の測定結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1より、最外周部に位置するエリアの製品部において形成される容量と、この最外周部から離れた中央に位置するエリアの製品部において形成される容量の比(表1では、容量の比(最外周部エリアの容量/中央エリアの容量)と略記)についてみると、実施例1〜4では、最外周部エリアの容量/中央エリアの容量の比が1.0となっており、集合セラミック積層体の最外周部に位置するエリアの製品部において形成される容量と、この最外周部から離れた中央に位置するエリアの製品部において形成される容量の大きさに差がなく、各製品部における容量のばらつきの少ない集合セラミック積層体が得られることが確認された。
【0058】
ただし、捨て代部のさらに外側に位置情報表示マークを配設するための位置情報表示エリアを設けるようにした実施例4の場合、集合セラミック積層体の寸法が大きくなるため、実施例1〜3のように、集合セラミック積層体の一方主面(上側表面)を構成することになるセラミックグリーンシートについては、捨て代部にダミー導体パターンを配設せず、ここに位置情報表示マークを配設する構成とすることが望ましい。
【0059】
これに対し、いずれの捨て代部にもダミー導体パターンを形成しないようにした比較例1の場合、容量の比(最外周部エリアの容量/中央エリアの容量)が1.08となっており、容量ばらつきが大きいことが確認された。
これは、セラミックグリーンシートを積層した後、圧着する工程において、捨て代部にダミー導体パターンが形成されていないため、捨て代部が製品部よりも伸びやすく、最外周部エリアの製品部がその影響を受けた結果であると考えられる。
【0060】
また、ダミー導体パターンとして、その捨て代部の全面に導体パターンを印刷した比較例2の場合も、容量の比(最外周部エリアの容量/中央エリアの容量)が1.04となっており、容量ばらつきが大きいことが確認された。
本比較例の形状のダミー導体パターンの形成された捨て代部は、製品部より伸びが少ない。この場合、セラミックグリーンシートを積層した後、圧着する工程において、伸びようとする製品部を捨て代部が内側に押し込むことになり、製品部に歪みが生じた結果、容量ばらつきが大きくなったと考えられる。
【0061】
また、ダミー導体パターンの面積は製品用導体パターンと同じであるが形状が異なる細い帯状の導体パターンをダミー導体パターンとした比較例3や、ダミー導体パターンの面積は製品用導体パターンと同じであるが形状が異なる中抜きの四角形状の導体パターンをダミー導体パターンとした比較例4の場合にも、容量の比(最外周部エリアの容量/中央エリアの容量)が1.02(比較例3)、1.02(比較例4)と、容量ばらつきが生じることが確認された。
この結果から、比較例3および4のように、たとえダミー導体パターンの面積が製品用導体パターンと同じであっても、形状が異なるとそれぞれの伸びの状態が異なるため、比較例1、2ほどではないにしても、容量ばらつきが発生することが分かる。
【0062】
以上の結果より、本発明のように、少なくとも一部のセラミックグリーンシートとして、捨て代部に、製品部に配設された製品用導体パターンと同じ形状を有するダミー導体パターンを、製品部と同じ態様で配設したセラミックグリーンシートを用いることにより、セラミックグリーンシートを積層した後の圧着工程における、製品部と捨て代部の伸びの差を抑制して、いわゆる複数個取りの方法により、特性の変動の少ない個々の製品を効率よく製造することが可能な集合セラミック積層体が得られることが確認された。
【0063】
なお、上記の各実施例の集合セラミック積層体の表面にチップ型電子部品を搭載した後、捨て代部を除去するとともに所定の位置で分割することにより、特性のばらつきの少ない、信頼性の高いセラミック多層基板を、いわゆる複数個取りの方法により効率よく得ることができる。
【0064】
また、上記実施例では、複数個取りの方法でセラミック多層基板を製造するための集合セラミック積層体を例にとって説明したが、本発明は、セラミック多層基板を製造する工程で必要となる集合セラミック積層体に限らず、積層コンデンサ、積層LC複合部品、積層コイル部品などの種々の積層セラミック電子部品の製造工程で必要となる集合セラミック積層体にも適用することが可能である。
【0065】
さらに、上記実施例では、集合セラミック積層体を焼成した後に個々の製品に分割する場合に用いられる集合セラミック積層体を例にとって説明しているが、製品の種類などによっては、未焼成の集合セラミック積層体を分割した後に焼成する場合もあるが、本発明はそのような用途のものにも適用することが可能である。
【0066】
本発明はさらにその他の点においても上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
上述のように、本発明によれば、セラミックグリーンシートを積層した後の圧着工程における、製品部と捨て代部の伸びの差を抑制して、いわゆる複数個取りの方法により、特性の変動の少ない個々の製品を効率よく製造することが可能な集合セラミック積層体を得ることができる。また、本発明の集合セラミック積層体を用いることにより、セラミック多層基板の前駆体である集合セラミック多層基板およびそれを分割することにより得られるセラミック多層基板を効率よく製造することができる。
従って、本発明は、セラミック多層基板、積層コンデンサ、積層LC複合部品、積層コイル部品などの種々の積層セラミック電子部品に関する技術分野に広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例1にかかる集合セラミック積層体を作製するのに用いた、容量形成用電極パターンを含む導体パターンが配設されたセラミックグリーンシートを示す平面図である。
【図2】本発明の実施例1にかかる集合セラミック積層体を作製するのに用いた、集合セラミック積層体の一方主面を構成することになるセラミックグリーンシートであって、捨て代部にダミー導体パターンは形成せず、搭載すべきチップ型電子部品の位置合わせを行うための実装マークのみを形成したセラミックグリーンシートを示す平面図である。
【図3】本発明の実施例4において用いた、捨て代部のさらに外側に位置情報表示マーク(実装マーク)を付すためのエリアを有するセラミックグリーンシートを示す平面図である。
【図4】比較例1の集合セラミック積層体を作製するのに用いた、捨て代部に導体パターンの形成されていないセラミックグリーンシートを示す平面図である。
【図5】比較例2の集合セラミック積層体を作製するのに用いた、ダミー導体パターンとして、その捨て代部の全面に導体パターンを印刷したセラミックグリーンシートを示す平面図である。
【図6】比較例3の集合セラミック積層体を作製するのに用いた、ダミー導体パターンとして、その捨て代部に、細い帯状の導体パターンを印刷したセラミックグリーンシートを示す平面図である。
【図7】比較例4の集合セラミック積層体を作製するのに用いた、ダミー導体パターンとして、その捨て代部に、内側には導体パターンの印刷されてない四角形状の導体パターンを印刷したセラミックグリーンシートを示す平面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 セラミックグリーンシート
10 製品部
11 製品用導体パターン
12 容量形成用電極パターン
13 容量形成用電極パターン以外の内層導体パターン
20 捨て代部
21 ダミー導体パターン
22 位置情報表示マーク(実装マーク)
30 位置情報表示エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々の製品の導体となる複数の製品用導体パターンが配設された製品部と、前記製品部の周囲の領域である捨て代部とを有するセラミックグリーンシートを積層した集合セラミック積層体であって、
前記捨て代部に、前記製品部に配設された前記製品用導体パターンと同じ形状を有するダミー導体パターンが、前記製品部と同じ態様で配設されていること
を特徴とする集合セラミック積層体。
【請求項2】
前記製品部の前記製品用導体パターンが容量形成用電極パターンを含むものであり、前記製品部の周囲の領域である捨て代部にも、前記容量形成用電極パターンを含む前記製品用導体パターンと同じ形状を有するダミー導体パターンが、前記製品部と同じ態様で配設されていることを特徴とする請求項1記載の集合セラミック積層体。
【請求項3】
前記製品用導体パターンが配設された面が、集合セラミック積層体の表面となるような態様で前記セラミックグリーンシートが積層されており、かつ、前記集合セラミック積層体の表面の捨て代部には位置情報表示マークが付されていることを特徴とする請求項1または2記載の集合セラミック積層体。
【請求項4】
前記集合セラミック積層体の表面の、前記位置情報表示マークが付されている前記捨て代部にはダミー導体パターンが配設されていないことを特徴とする請求項3記載の集合セラミック積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の集合セラミック積層体の少なくとも一方の主面に、前記集合セラミック積層体の焼結温度では焼結しないセラミック粉末を主たる成分とする拘束層を密着させた状態で、前記集合セラミック積層体は焼結するが、前記拘束層は焼結しない条件下に焼成を行う焼成工程と、
前記焼成工程の終了後に前記拘束層を除去して前記集合セラミック積層体の焼結体を得る工程と
を具備することを特徴とする焼結集合セラミック積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の集合セラミック積層体が焼成されたものであることを特徴とする集合セラミック多層基板。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の集合セラミック積層体が焼成され、個々の製品である子基板に分割されたものであることを特徴とするセラミック多層基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−200073(P2009−200073A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36879(P2008−36879)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】