電力変換装置
【課題】停電動作時における伝導ノイズを低減する。
【解決手段】停電動作時に、整流部11としてのスイッチングアーム直列接続部SA1を構成する2つのスイッチング素子のうち、低電圧側のスイッチング素子Sxを導通状態、高電圧側のスイッチング素子Suを遮断状態に保持する。これにより、スイッチング素子Sx及びSuが遮断状態に保持されることに起因して形成される共振経路が形成されなくなるため、この共振経路が形成されることに起因する伝導ノイズの発生が抑制され、その分、停電動作時における伝導ノイズを低減することができる。
【解決手段】停電動作時に、整流部11としてのスイッチングアーム直列接続部SA1を構成する2つのスイッチング素子のうち、低電圧側のスイッチング素子Sxを導通状態、高電圧側のスイッチング素子Suを遮断状態に保持する。これにより、スイッチング素子Sx及びSuが遮断状態に保持されることに起因して形成される共振経路が形成されなくなるため、この共振経路が形成されることに起因する伝導ノイズの発生が抑制され、その分、停電動作時における伝導ノイズを低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源入力を整流部で整流して得た直流電力又は直流電力源の直流電力を、交流電力に変換して負荷に供給するようにした電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置が発生する伝導ノイズや、放射ノイズは、他機器に影響を及ぼす可能性があるため、これらノイズは、CISPR(国際無線障害特別委員会)や、VCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)によって規制の対象となっている。
図10は、ノイズ規制の対象となる無停電電源装置の雑音端子電圧測定システムの一例を示したものである。
【0003】
図10に示すように、この無停電電源装置の雑音端子電圧測定システムは、単相3線式で接続される単相の交流電源系統1と負荷2との間に、LISN(擬似電源回路網)3、無停電電源装置4を備えて構成され、無停電電源装置4は、ノイズフィルタとしての入力フィルタ4a、主変換装置4b、及びノイズフィルタとしての出力フィルタ4cを備えて構成される。
【0004】
主変換装置4bは、整流部11、直流中間電圧部12、及びインバータ部13を備えており、整流部11及び直流中間電圧部12間の接続端子BAT+、BAT−には、例えば図11に示すバックアップ回路14が接続される。
図10に示す無停電電源装置4の主変換装置4bは、例えば特許文献1や非特許文献1に記載されている一般的な回路構成である。
【0005】
すなわち、単相交流電力のR相がノーマルモードリアクトルL1を介して整流部11に接続され、単相交流電力のR相の電力ラインと単相交流電力のS相の電力ラインとの間の、ノーマルモードリアクトルL1よりも交流電源系統1側にフィルタコンデンサC1が接続され、このコンデンサC1とノーマルモードリアクトルL1とでスイッチングリプルを抑制するためのLCフィルタ回路が形成されている。また、これらノーマルモードリアクトルL1及びコンデンサC1により構成されるLCフィルタ回路と入力フィルタ4a(雑音端子電圧低減用)との間には、R相及びS相の電力ラインそれぞれを遮断するためのリレー回路Ryが介挿されている。
【0006】
整流部11は、IGBT等のスイッチング素子とこのスイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードとを1アームとし、スイッチング素子Su及びダイオードDuからなるアームと、スイッチング素子Sx及びダイオードDxからなるアームとを直列に接続した構成を有する、スイッチングアーム直列接続部SA1で構成される。
同様に、インバータ部13は、スイッチング素子Sw及びダイオードDwからなるアームと、スイッチング素子Sz及びダイオードDzとからなるアームとを直列に接続した構成を有する、スイッチングアーム直列接続部SA2で構成される。
【0007】
直流中間電圧部12は、コンデンサCdc1、Cdc2を直列に接続した構成を有するコンデンサ直列接続部CAで構成され、スイッチングアーム直列接続部SA1とコンデンサ直列接続部CAとスイッチングアーム直列接続部SA2とが、交流電源系統1側からこの順に並列に接続されている。
そして、ノーマルモードリアクトルL1の一端は、スイッチングアーム直列接続部SA1のスイッチング素子SuとSxとの接続点に接続される。また、コンデンサ直列接続部CAのコンデンサCdc1とCdc2との接続点に、S相の電力ラインが接続される。また、スイッチングアーム直列接続部SA2のスイッチング素子SwとSzとの接続点にリアクトルL2の一端が接続され、このリアクトルL2の他端がR相の電力ラインとして、出力フィルタ4cに接続される。
【0008】
そして、リアクトルL2の他端とS相の電力ラインとの間にコンデンサC2が接続され、リアクトルL2とコンデンサC2とでスイッチングリプルを抑制するLCフィルタ回路が形成されている。
また、図11に示したバックアップ回路14は、例えば、バッテリ14a、コンデンサ14b、変圧機能部14c、コンデンサ14dが並列に接続された構成を有する。変圧機能部14cとしては、例えば昇圧チョッパ、フライバックコンバータ等、様々な回路構成が想定されるが、所定の直流電圧を生成することができればどのような回路構成でもよい。
【0009】
このような構成において、交流電源系統1から負荷2へ電力供給する場合、交流電源系統1の出力電圧が正常である場合の無停電電源装置4の動作(以下、通常運転動作ともいう。)は次のような動作となる。
すなわち、LISN3を介して無停電電源装置4に供給される、交流電源系統1からの交流電源入力は、ノーマルモードリアクトルL1及びコンデンサC1からなるLCフィルタ回路を介して、整流部11に入力され、スイッチングアーム直列接続部SA1を構成する各スイッチング素子Su及びSxをPWM制御し整流動作させることにより、入力電流が正弦波状に制御されると共に、コンデンサ直列接続部CAを構成する各コンデンサCdc1、Cdc2にエネルギを蓄積し、コンデンサ直列接続部CAの両端電圧が規定電圧Vdcとなるように制御される。
【0010】
そして、スイッチングアーム直列接続部SA2を構成するスイッチング素子Sw、SzをPWM制御しインバータ動作させることにより、平滑されたコンデンサ直列接続部CAの両端の規定電圧Vdcから安定した任意の交流電圧を生成し、これを負荷2に供給する。
そして、各スイッチング素子のスイッチング動作によって発生する伝導ノイズ及び放射ノイズは、交流電源系統1側及び負荷2側に接続された、入力フィルタ4a及び出力フィルタ4cにより規制値以下に低減される。
【0011】
一方、交流電源系統1が停電した場合等、無停電電源装置4に規定の交流電力が供給されない場合、すなわち停電運転動作時には、無停電電源装置4は次のような動作を行なう。
すなわち、交流電源系統1が停電した場合には、リレー回路Ryにより主変換装置4bと入力フィルタ4aとの間を遮断し、主変換装置4bと交流電源系統1とを切り離すと共に、図11のバックアップ回路14のバッテリ14aをエネルギ源として負荷2へ電力を供給する。つまり、バッテリ14aのバッテリ電圧を変圧機能部14cにより変換し、これを主変換装置4bの端子BAT+、BAT−に印加することにより、コンデンサCdc1、Cdc2の充電電圧が規定電圧Vdcとなるように充電する。そして、スイッチング素子Sw、SzをPWM制御しインバータ動作させることにより、コンデンサCdc1及びCdc2に蓄積したエネルギから所定の負荷電圧を生成し、これを負荷2に供給する。
【0012】
このように、インバータ部13のスイッチング素子Sw、Szは、入力電源系統1が停電しているか否かに関係なく、同様の動作を行なうが、整流部11のスイッチング素子Su、Sxは、交流電源系統1の状態によって異なり、交流電源系統1が停電しておらず正常運転動作を行なう時には整流動作を行なうが、交流電源系統1が停電しており停電運転動作を行なうときにはスイッチング動作を行なわない。つまり、スイッチング素子Su、Sxは、遮断状態を維持する。
【0013】
以上説明したように、停電動作時には、バックアップ回路14のバッテリ14aをエネルギ源として負荷2への電力供給を行なうことによって、交流電源系統1に停電が生じた場合であっても負荷2への電力供給を継続して行なうようになっている。
【特許文献1】特開2005−278241号公報(図6)
【非特許文献1】パワーエレクトロニクス回路 電気学会・半導体電力変換システム調査専門委員会編 オーム社 P235 図6・27
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、スイッチング素子のスイッチング動作によって発生する伝導ノイズ及び放射ノイズは、通常運転時だけでなく、停電運転動作時であっても規制値以下に低減しなければならない。
特に、停電運転時の交流電源系統1への伝導ノイズ(雑音端子電圧)であっても規制の対象となっている。
しかしながら、停電時には主変換装置4bと交流電源系統1との間がリレー回路Ryによって切り離されており、理想的には交流電源系統1側へは伝導ノイズが伝播しない場合であっても、各部に形成される浮遊容量を介して伝導ノイズが流出することが多い。
【0015】
また、交流電源系統1側の伝導ノイズと負荷側の伝導ノイズとは相互干渉することから、停電時に負荷側の伝導ノイズが上昇する場合もある。したがって、交流電源系統1側、負荷2側のどちらの伝導ノイズであっても停電運転時には、通常運転時と主回路動作や伝導ノイズ経路が異なり、規制を超過する可能性がある。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題点に着目してなされたものであり、整流部の直流電力への変換動作を停止した状態で負荷への電力供給を行なう場合であっても、交流電源入力系統側及び負荷側への伝導ノイズを低減することの可能な電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電力変換装置によれば、交流電源入力を直流電力に変換する第1の状態と前記直流電力への変換動作を停止する第2の状態とのうちの何れかの状態を選択可能な整流部と、直流電力を交流電力に変換して負荷供給用の交流電力を生成し前記負荷供給用の交流電力を負荷に供給するインバータ部と、直流電力源と、を有し、前記インバータ部は、前記整流部で前記第1の状態が選択されているときには前記整流部で変換した直流電力から前記負荷供給用の交流電力を生成し、前記第2の状態が選択されているときには前記直流電力源の直流電力から前記負荷供給用の交流電力を生成するようになっている電力変換装置において、前記整流部及び前記インバータ部は、スイッチング素子とこのスイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードとを1アームとして2つのアームが直列に接続されたスイッチングアーム直列接続部を、それぞれ少なくとも1つ有し、前記整流部で前記第2の状態が選択されているときには、前記整流部の少なくとも1つのスイッチングアーム直列接続部において何れか一方のスイッチング素子のみを導通状態に保持することを特徴としている。
【0017】
また、請求項2に係る電力変換装置は、前記整流部の前記スイッチングアーム直列接続部を構成する2つのスイッチング素子のうち、低電圧側のスイッチング素子のみを導通状態に保持することを特徴としている。
さらに、請求項3に係る電力変換装置は、前記整流部は、前記交流電源入力が非停電状態であると判断されるときには前記第1の状態を選択し、前記交流電源入力が停電状態であると判断されるときには前記第2の状態を選択することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、整流部で、直流電力への変換動作を停止する第2の状態が選択されているときには、整流部を構成するスイッチングアーム直列接続部を構成する2つのスイッチング素子のうち何れか一方のみを導通状態に保持し、このスイッチングアーム直列接続部が変換動作を停止したことに起因する共振経路が形成されることを回避する構成としたため、この共振経路の発生に起因して生じる伝導ノイズを抑制することができ、非正常時における伝導ノイズを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した無停電電源装置の一例を示す概略構成図である。
この図1は、図10に示す無停電電源装置4と基本的な構成は同一であるので同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
図1において、無停電電源装置4は、単相の交流電源系統1と単相交流モータ等の負荷2との間に接続される。無停電電源装置4は、入力フィルタ4a、主変換装置4b、出力フィルタ4cを備え、入力フィルタ4aと主変換装置4bとの間には、R相の電力ライン及びS相の電力ラインを遮断するリレー回路Ryが介挿されている。
【0020】
主変換装置4bは、コンデンサC1及びノーマルモードリアクトルL1からなるLCフィルタ回路、整流動作を行なうスイッチングアーム直列接続部SA1、直流中間電圧を規定電圧に維持するコンデンサ直列接続部CA、インバータ動作を行なうスイッチングアーム直列接続部SA2、リアクトルL2及びコンデンサC2からなるLCフィルタ回路で構成される。
【0021】
また、スイッチングアーム直列接続部SA1とコンデンサ直列接続部CAとの間に、前記図11に示す、直流電力源としてのバックアップ回路14が接続される。
そして、入力フィルタ4aとリレー回路Ryとの間に、交流電源電圧を検出しこれに基づき交流電源系統1の停電を検出する停電検出器21と、この停電検出器21の検出結果に基づき各部を制御する制御部22と、を備えている。
【0022】
この制御部22は、停電検出器21により停電が検出されないときには、リレー回路Ryを導通状態に制御する。また、整流部11を整流動作させコンデンサ直列接続部CAの両端電圧が規定電圧Vdcとなるようにスイッチングアーム直列接続部SA1の各スイッチング素子Su及びSxをPWM制御すると共に、負荷2への供給電圧が所定の交流電圧となるようにインバータ部13を構成するスイッチングアーム直列接続部SA2の各スイッチング素子Sw及びSzをPWM制御する。一方、停電検出器21により停電が検出されたときには、リレー回路Ryを遮断状態に切り替え、主変換装置4bを交流電源系統1側から切り離すと共に、バックアップ回路14の変圧機能部14cを動作させ、バッテリ14aのエネルギを利用してコンデンサ直列接続部CAの両端電圧が規定電圧Vdcとなるように制御すると共に、負荷2への供給電圧が所定の交流電圧となるようにインバータを構成するスイッチングアーム直列接続部SA2の各スイッチング素子Sw及びSzをPWM制御する。また、停電が検出されたときには、整流回路を構成するスイッチングアーム直列接続部SA1のスイッチング素子Su及びSxのPWM制御を停止し、スイッチング素子Suを遮断状態、スイッチング素子Sxを導通状態に保持する。
【0023】
図2は、制御部22の演算処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
制御部22は、停電検出器21の検出結果を読み込み、停電が検出されていなければ、ステップS1からステップS2に移行し、リレー回路Ryを導通状態(ON)に維持する。そして、ステップS3に移行し、整流部11を構成する各スイッチング素子をPWM制御して整流動作させ、さらにインバータ部13を構成する各スイッチング素子をPWM制御してインバータ動作させる。
【0024】
一方、停電が検出されたときには、ステップS1からステップS5に移行し、リレー回路Ryを遮断状態(OFF)に切り替える。そして、ステップS6に移行し、整流部11を構成するスイッチング素子のうち、スイッチング素子Sxを導通(ON)状態に保持すると共に、スイッチング素子Suを遮断(OFF)状態に保持する。
次いで、ステップS7に移行し、インバータ部13を構成する各スイッチング素子をPWM制御してインバータ動作させると共に、バックアップ回路14の変圧機能部14cを動作させ、コンデンサ直列接続部CAの両端電圧を規定電圧Vdcに維持させる。
【0025】
次に、図1の無停電電源装置4において、停電運転動作時に発生する共振経路について説明する。
図3は、図1の無停電電源装置4の構成を簡略化して共振経路を表したものである。
図3に示すように、停電運転時には、リレー回路Ryは遮断状態を維持する。
仮に、停電運転時に整流動作を行なうスイッチングアーム直列接続部SA1のスイッチング素子Su及びSxを共に遮断状態に保持する構成とした場合(遮断状態を保持していることから、図3では、スイッチング素子Su及びSxは出力容量(コンデンサ)で記載)、コンデンサC1、ノーマルモードリアクトルL1、スイッチング素子Su、スイッチング素子Sw、リアクトルL2、コンデンサC2、そしてコンデンサC1に至る経路と、ノーマルモードリアクトルL1、スイッチング素子Sx、コンデンサCdc2、Cdc1、スイッチング素子Swに至る経路とからなる共振経路が形成され共振が発生する。
【0026】
また、この共振経路の中で、最も小さいコンデンサは、スイッチング素子Su、Sxの出力容量であるから、共振周波数は主にスイッチング素子Su、Sxの出力容量と、リアクトルL1及びL2のインダクタンスとで決定される。このようにして設定される共振周波数においては、大きな電流が流れることから伝導ノイズが増加する原因となる。
図4は、停電動作時に、図1のシステムにおいて生じる浮遊容量を表したものである。
【0027】
例えば、R相の電力ラインに介挿されたリレー回路Ryの2つの固定端子間及びS相の電力ラインに介挿されたリレー回路Ryの2つの固定端子間に、それぞれの固定端子間を横断するように浮遊容量cc1、cc2が形成される。また、リアクトルは巻線構造のため、周囲との浮遊容量が形成されやすい。このため、ノーマルモードリアクトルL1と筐体等のアースとの間に浮遊容量cc3が形成される。
【0028】
また、整流部11のスイッチングアーム直列接続部SA1を構成する下側のスイッチング素子Sxのコレクタ側と図示しない冷却フィン或いは筐体等のアースとの間に浮遊容量cc4が形成される。同様に、インバータ部13のスイッチングアーム直列接続部SA2を構成する下側のスイッチング素子Szのコレクタ側と図示しない冷却フィン或いは筐体側のアースとの間に浮遊容量cc5が形成される。
【0029】
このため、負荷2側だけでなく、図4の各所に形成される浮遊容量を介して交流電源系統1側の伝導ノイズも増加する可能性がある。
ここで、本願発明では、図1に示すように停電動作時には、整流部11のスイッチングアーム直列接続部SA1において、上側のスイッチング素子Suを遮断状態、下側のスイッチング素子Sxを導通状態に保持している。
このため、スイッチング素子Sxを導通する経路が支配的となり、スイッチング素子Su、Sxの出力容量を導通する経路が消滅する。
【0030】
逆に、停電動作時に、上側のスイッチング素子Suを導通状態、下側のスイッチング素子Sxを遮断状態に保持する構成とした場合には、スイッチング素子Suを導通する経路が支配的となり、スイッチング素子Su、Sxの出力容量を導通する経路が消滅する。
このように、スイッチング素子Su又はSxの何れかを導通状態とすることにより、スイッチング素子Su、Sxの出力容量を導通する経路が消滅する。このため、停電動作時に、スイッチング素子Su、Sxがスイッチング動作しないことに起因する伝導ノイズの増加を抑制することができる。
【0031】
また、スイッチングアーム直列接続部SA1のスイッチング素子の出力容量を導通する共振回路が消滅したとしても、主に、フィルタ回路を構成するリアクトルL1、L2、コンデンサC1、C2間では共振が発生することになるが、この場合の共振周波数は、図3に示す、スイッチングアーム直列接続部SA1のスイッチング素子Su、Sxの出力容量を導通する共振回路における共振周波数よりも周波数が低く、一般的にスイッチングリプル除去用のフィルタ共振に近いことから、大きな問題とはならない。
したがって、以上の構成とすることにより停電運転時における伝導ノイズ低減を図ることができ、停電運転時の伝導ノイズを規制値以下とすることの可能な無停電電源装置をより容易に実現することができる。
【0032】
また、図1に示すように停電動作時には、スイッチングアーム直列接続部SA1において、低圧側のスイッチング素子Sxを導通状態に維持し、高圧側のスイッチング素子Suは遮断状態としている。ここで、スイッチングアーム直列接続部SA1の場合、高圧側のスイッチング素子Suのエミッタ端子が高周波で電位変動するのに対し、低圧側のスイッチング素子Sxのエミッタ端子は安定電位となることから、低圧側のスイッチング素子Sxのエミッタ端子の電位を、制御部22の基準電位とする場合が多い。このような場合、高圧側のスイッチング素子Suを導通状態で保持し続けるよりも、低圧側のスイッチング素子Sxを導通状態で保持し続ける方が容易である。
【0033】
特に高圧側のスイッチング素子Suを駆動するための電源をブートストラップで構成している場合などには、高圧側のスイッチング素子Suを導通状態に長時間保持し続けることは困難である。
したがって、図1に示すように、停電動作時には、低圧側のスイッチング素子Sxを導通状態に保持し、高圧側のスイッチング素子Suを遮断状態に保持する構成とすることによって、停電動作時における伝導ノイズを容易に低減することができる。
【0034】
なお、上記実施の形態においては、図1に示すように、入力フィルタ4aとノーマルモードリアクトルL1及びコンデンサC1からなるLCフィルタ回路との間にリレー回路Ryが介挿された場合について説明したが、これに限るものではない。
例えば、入力フィルタ4aに適用される一般的なノイズフィルタは、図5に示すように、コモンモードチョークコイル31や、線間コンデンサ32、接地コンデンサ33、34を含む構成をとる。
【0035】
この場合、停電動作時の交流電源系統1側遮断用のリレー回路Ryを、入力フィルタ4aを構成する素子の中間に挿入することになり、例えば、線間コンデンサ32とコモンモードチョークコイル31との間、或いはコモンモードチョークコイル31と接地コンデンサとの間に挿入することになるが、この場合も上記と同様に、入力フィルタ4aの構成素子を介する共振経路が発生することになる。
しかしながら、図5に示すような一般的なノイズフィルタの中間にリレー回路Ryを挿入する構成とした場合であっても、図1に示すように、停電動作時には、スイッチングアーム直列接続部SA1の低圧側のスイッチング素子Sxを導通状態、高圧側のスイッチング素子Suを遮断状態とすることにより、停電動作時における伝導ノイズの低減を図ることができる。
【0036】
言い換えれば、図1に示すように、停電動作時に、共振経路を形成する要因となる整流部のスイッチングアーム直列接続部を構成するスイッチング素子の一方のみを導通状態に保持し、スイッチングアーム直列接続部を構成するスイッチング素子を経由して形成される共振経路が形成されないようにしたため、仮に、スイッチングアーム直列接続部と共に共振経路を形成し得るLCフィルタ回路やノイズフィルタ等が接続されている場合であっても、共振経路の形成を回避することができ、すなわちこの共振経路の発生に伴う伝導ノイズの発生を回避することができる。
【0037】
また、上記実施の形態においては、図1に示すように、主変換装置4bが、ノーマルモードリアクトルL1及びコンデンサC1からなるLCフィルタ回路、整流用のスイッチングアーム直列接続部SA1、直流中間電圧生成用のコンデンサ直列接続部CA、インバータ用のスイッチングアーム直列接続部SA2、リアクトルL2及びコンデンサC2からなるフィルタ回路で構成される場合について説明したが、これに限るものではない。
【0038】
例えば、図6から図8に示すように、入力側及び出力側のLCフィルタ回路、単相の整流回路及び単相のインバータの機能を併せ持ち、整流回路及びインバータはそれぞれスイッチングアーム直列接続部を有する構成の主変換装置4bを備えた無停電電源装置であれば、同様に停電動作時に伝導ノイズが増加する問題が生じることから、これら構成の無停電電源装置であっても、共振経路を形成するスイッチングアーム直列接続部のスイッチング素子の何れか一方のみを上記と同様に導通状態に保持することによって、停電動作時における伝導ノイズの低減を図ることができる。
【0039】
図6の無停電電源装置は、直列に接続されたスイッチング素子S1、S2と各スイッチング素子S1、S2のそれぞれに逆並列に接続されたダイオードD1、D2とからなるスイッチングアーム直列接続部SA11と、スイッチングアーム直列接続部SA11の両端に並列に接続された平滑コンデンサCdcと、直列に接続されたスイッチング素子S5、S6と各スイッチング素子S5、S6のそれぞれに逆並列に接続されたダイオードD5、D6とからなるスイッチングアーム直列接続部SA12とからなる、整流動作を行なう整流部41と、直列に接続されたスイッチング素子S7、S8と各スイッチング素子S7、S8のそれぞれに逆並列に接続されたダイオードD7、D8とからなるスイッチングアーム直列接続部SA13と、整流部41を構成するスイッチングアーム直列接続部SA12とから構成されるPWMインバータ部42とを備えている。
【0040】
そして、R相の電力ラインが、ノーマルモードリアクトルL1を介してスイッチングアーム直列接続部SA11のスイッチング素子どうしの接続点に接続され、R相の電力ラインとS相の電力ラインとの間にノーマルモードリアクトルL1と共に、雑音端子電圧の増加を抑制するLCフィルタ回路を構成するコンデンサC1が接続されている。また、インバータ部42を構成するスイッチングアーム直列接続部SA13のスイッチング素子どうしの接続点にリアクトルL2が接続され、他端がR相の電力ラインとして負荷2に接続される。また、R相の電力ラインとS相の電力ラインとの間にコンデンサC2が接続されリアクトルL2とコンデンサC2とでLCフィルタ回路を形成する。
【0041】
そして、スイッチングアーム直列接続部SA11と平滑コンデンサCdcとの間にこれらと並列に、図11に示す図示しないバックアップ回路14が接続され、停電動作時には、整流部41を構成する一方のスイッチングアーム直列接続部SA11はスイッチング動作を停止し、高圧側のスイッチング素子S1は遮断状態、低圧側のスイッチング素子S2は導通状態に制御される。
【0042】
したがって、図6の構成の場合も、仮に停電動作時にスイッチングアーム直列接続部SA11の各スイッチング素子S1、S2を共に遮断状態に保持する構成とした場合には、LCフィルタ回路を構成するコンデンサC1及びノーマルモードリアクトルL1と、整流部41を構成するスイッチングアーム直列接続部SA11の各スイッチング素子S1、S2と、平滑コンデンサCdcと、インバータ部42を構成するスイッチング素子S7、リアクトルL2、コンデンサC2を通る経路からなる共振経路が形成されることになるが、停電動作時には、図1と同様にスイッチングアーム直列接続部SA11の低圧側のスイッチング素子S2を導通状態、高圧側のスイッチング素子S1を遮断状態とすることによって、スイッチング素子S1、S2を通る共振経路が消滅する。したがって、この場合も、整流部41のスイッチング素子がスイッチング動作せず遮断状態に保持されることに起因する停電動作時の伝導ノイズの増加を抑制することができる。
【0043】
また、図7は、図6において、コンデンサC1と整流部41を構成するスイッチングアーム直列接続部SA11との間に接続されていたノーマルモードリアクトルL1を、スイッチングアーム直列接続部SA13のスイッチング素子どうしの接続点とS相の電力ラインとの間にノーマルモードリアクトルL1′として接続したものである。
また、図8は、図7において、インバータ部42を構成するスイッチングアーム直列接続部SA13とコンデンサC2との間に接続されていたリアクトルL2を、スイッチングアーム直列接続部SA11のスイッチング素子どうしの接続点とR相の電力ラインとの間にリアクトルL2′として接続したものである。
【0044】
これら図7及び図8は、リアクトルL1′、L2′の接続位置が異なるものの、各部は図6と同様に動作し、仮に停電動作時に整流部41のスイッチングアーム直列接続部SA11のスイッチング素子を遮断状態のまま保持した場合には、これらスイッチング素子を経由する共振経路が形成され、これに伴って伝導ノイズが生じることになるが、図1の場合と同様に、低圧側のスイッチング素子S2は導通状態、高圧側のスイッチング素子S1は遮断状態に保持することによって、スイッチング素子を経由する共振経路が消滅するため、停電動作時における伝導ノイズの増加を抑制することができる。
【0045】
次に、図9は、三相3線式の無停電電源装置の一例を示したものである。
三相3線式の場合、無停電電源装置は、図9に示すように、3相の相間それぞれに接続された相間コンデンサC31〜C33及び各相の電力ラインに介挿されたリアクトルL31〜L33とで構成されスイッチングリプルを抑制するLCフィルタ回路と、整流部51と、整流部51と並列に接続された平滑コンデンサを備えた直流中間電圧部52と、インバータ部53と、各相の電力ラインに介挿されたリアクトルL34〜L36及び各相間に接続される相間コンデンサC34〜C36とで構成されスイッチングリプルを抑制するLCフィルタ回路と、から構成される。前記整流部51及びインバータ部53は、それぞれ例えばスイッチング素子とこれに逆並列に接続されたダイオードとからなるアームが直列に2つ接続されたスイッチングアーム直列接続部が3つ並列に接続された構成を有する。
【0046】
このような三相3線式の無停電電源装置において、仮に停電動作時に整流部51のスイッチングアーム直列接続部を遮断状態に保持する構成とした場合、この場合も上記と同様に、遮断状態に保持したスイッチングアーム直列接続部を経由する共振経路が形成されることになる。しかしながら、この場合も整流回路を構成するスイッチングアーム直列接続部の、直列に接続されたスイッチング素子のうちの低圧側のスイッチング素子のみを導通状態に保持することにより、上記と同様に、停電動作時における伝導ノイズの増加を抑制することができる。
【0047】
ここで、三相3線式の無停電電源装置の場合には、リレー回路Ryの接続位置やリレー回路の接続相などにより整流部51を構成する3つのスイッチングアーム直列接続部のうち全てについて一方のスイッチング素子を導通状態に保持しなければならない場合と、1つ、もしくは2つのスイッチングアーム直列接続部において何れか一方のスイッチング素子のみを導通状態に保持すればよい場合とがある。
【0048】
例えば、図11のバックアップ回路14の変圧機能部14cがスイッチングアームを含んで構成され、この変圧機能部14cのスイッチングアームと、整流部51のスイッチングアームとを共用する構成である場合には、1つ、もしくは2つのスイッチングアーム直列接続部において何れか一方のスイッチング素子のみを導通状態に保持することになる。この整流部51のスイッチングアームと変圧機能部14cのスイッチングアームの共用数は装置構成によって異なるものの、停電時にスイッチングして電力変換を行う機能を付加されたスイッチングアームを除き、その他すべてのスイッチングアームについて、何れか一方のスイッチング素子を導通状態に保持すれば良い。
【0049】
また、上記実施の形態においては、無停電電源装置に適用した場合について説明したが、整流部は、必ずしも、非停電状態と停電状態とで整流部の動作が交流電源入力を交流電力に変換する状態(第1の状態)と、直流電力への変換動作を停止する状態(第2の状態)との何れかを選択する構成である必要はなく、整流部が、前記第1の状態と前記第2の状態との何れかを選択して動作する構成であれば適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明を適用した無停電電源装置の一例を示す構成図である。
【図2】図1の制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】共振経路の一例を示す説明図である。
【図4】浮遊容量の形成位置の一例を示す説明図である。
【図5】ノイズフィルタの一例である。
【図6】無停電電源装置のその他の例である。
【図7】無停電電源装置のその他の例である。
【図8】無停電電源装置のその他の例である。
【図9】無停電電源装置のその他の例である。
【図10】無停電電源装置を被検査対象とする雑音端子電圧測定システムの一例である。
【図11】バックアップ回路の一例である。
【符号の説明】
【0051】
1 交流電源系統
2 負荷
4 無停電電源装置
4a 入力フィルタ
4b 主変換装置
4c 出力フィルタ
11 整流部
12 直流中間電圧部
13 インバータ部
14 バックアップ回路
21 停電検出器
22 制御部
SA1、SA2 スイッチングアーム直列接続部
Ry リレー回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源入力を整流部で整流して得た直流電力又は直流電力源の直流電力を、交流電力に変換して負荷に供給するようにした電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置が発生する伝導ノイズや、放射ノイズは、他機器に影響を及ぼす可能性があるため、これらノイズは、CISPR(国際無線障害特別委員会)や、VCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)によって規制の対象となっている。
図10は、ノイズ規制の対象となる無停電電源装置の雑音端子電圧測定システムの一例を示したものである。
【0003】
図10に示すように、この無停電電源装置の雑音端子電圧測定システムは、単相3線式で接続される単相の交流電源系統1と負荷2との間に、LISN(擬似電源回路網)3、無停電電源装置4を備えて構成され、無停電電源装置4は、ノイズフィルタとしての入力フィルタ4a、主変換装置4b、及びノイズフィルタとしての出力フィルタ4cを備えて構成される。
【0004】
主変換装置4bは、整流部11、直流中間電圧部12、及びインバータ部13を備えており、整流部11及び直流中間電圧部12間の接続端子BAT+、BAT−には、例えば図11に示すバックアップ回路14が接続される。
図10に示す無停電電源装置4の主変換装置4bは、例えば特許文献1や非特許文献1に記載されている一般的な回路構成である。
【0005】
すなわち、単相交流電力のR相がノーマルモードリアクトルL1を介して整流部11に接続され、単相交流電力のR相の電力ラインと単相交流電力のS相の電力ラインとの間の、ノーマルモードリアクトルL1よりも交流電源系統1側にフィルタコンデンサC1が接続され、このコンデンサC1とノーマルモードリアクトルL1とでスイッチングリプルを抑制するためのLCフィルタ回路が形成されている。また、これらノーマルモードリアクトルL1及びコンデンサC1により構成されるLCフィルタ回路と入力フィルタ4a(雑音端子電圧低減用)との間には、R相及びS相の電力ラインそれぞれを遮断するためのリレー回路Ryが介挿されている。
【0006】
整流部11は、IGBT等のスイッチング素子とこのスイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードとを1アームとし、スイッチング素子Su及びダイオードDuからなるアームと、スイッチング素子Sx及びダイオードDxからなるアームとを直列に接続した構成を有する、スイッチングアーム直列接続部SA1で構成される。
同様に、インバータ部13は、スイッチング素子Sw及びダイオードDwからなるアームと、スイッチング素子Sz及びダイオードDzとからなるアームとを直列に接続した構成を有する、スイッチングアーム直列接続部SA2で構成される。
【0007】
直流中間電圧部12は、コンデンサCdc1、Cdc2を直列に接続した構成を有するコンデンサ直列接続部CAで構成され、スイッチングアーム直列接続部SA1とコンデンサ直列接続部CAとスイッチングアーム直列接続部SA2とが、交流電源系統1側からこの順に並列に接続されている。
そして、ノーマルモードリアクトルL1の一端は、スイッチングアーム直列接続部SA1のスイッチング素子SuとSxとの接続点に接続される。また、コンデンサ直列接続部CAのコンデンサCdc1とCdc2との接続点に、S相の電力ラインが接続される。また、スイッチングアーム直列接続部SA2のスイッチング素子SwとSzとの接続点にリアクトルL2の一端が接続され、このリアクトルL2の他端がR相の電力ラインとして、出力フィルタ4cに接続される。
【0008】
そして、リアクトルL2の他端とS相の電力ラインとの間にコンデンサC2が接続され、リアクトルL2とコンデンサC2とでスイッチングリプルを抑制するLCフィルタ回路が形成されている。
また、図11に示したバックアップ回路14は、例えば、バッテリ14a、コンデンサ14b、変圧機能部14c、コンデンサ14dが並列に接続された構成を有する。変圧機能部14cとしては、例えば昇圧チョッパ、フライバックコンバータ等、様々な回路構成が想定されるが、所定の直流電圧を生成することができればどのような回路構成でもよい。
【0009】
このような構成において、交流電源系統1から負荷2へ電力供給する場合、交流電源系統1の出力電圧が正常である場合の無停電電源装置4の動作(以下、通常運転動作ともいう。)は次のような動作となる。
すなわち、LISN3を介して無停電電源装置4に供給される、交流電源系統1からの交流電源入力は、ノーマルモードリアクトルL1及びコンデンサC1からなるLCフィルタ回路を介して、整流部11に入力され、スイッチングアーム直列接続部SA1を構成する各スイッチング素子Su及びSxをPWM制御し整流動作させることにより、入力電流が正弦波状に制御されると共に、コンデンサ直列接続部CAを構成する各コンデンサCdc1、Cdc2にエネルギを蓄積し、コンデンサ直列接続部CAの両端電圧が規定電圧Vdcとなるように制御される。
【0010】
そして、スイッチングアーム直列接続部SA2を構成するスイッチング素子Sw、SzをPWM制御しインバータ動作させることにより、平滑されたコンデンサ直列接続部CAの両端の規定電圧Vdcから安定した任意の交流電圧を生成し、これを負荷2に供給する。
そして、各スイッチング素子のスイッチング動作によって発生する伝導ノイズ及び放射ノイズは、交流電源系統1側及び負荷2側に接続された、入力フィルタ4a及び出力フィルタ4cにより規制値以下に低減される。
【0011】
一方、交流電源系統1が停電した場合等、無停電電源装置4に規定の交流電力が供給されない場合、すなわち停電運転動作時には、無停電電源装置4は次のような動作を行なう。
すなわち、交流電源系統1が停電した場合には、リレー回路Ryにより主変換装置4bと入力フィルタ4aとの間を遮断し、主変換装置4bと交流電源系統1とを切り離すと共に、図11のバックアップ回路14のバッテリ14aをエネルギ源として負荷2へ電力を供給する。つまり、バッテリ14aのバッテリ電圧を変圧機能部14cにより変換し、これを主変換装置4bの端子BAT+、BAT−に印加することにより、コンデンサCdc1、Cdc2の充電電圧が規定電圧Vdcとなるように充電する。そして、スイッチング素子Sw、SzをPWM制御しインバータ動作させることにより、コンデンサCdc1及びCdc2に蓄積したエネルギから所定の負荷電圧を生成し、これを負荷2に供給する。
【0012】
このように、インバータ部13のスイッチング素子Sw、Szは、入力電源系統1が停電しているか否かに関係なく、同様の動作を行なうが、整流部11のスイッチング素子Su、Sxは、交流電源系統1の状態によって異なり、交流電源系統1が停電しておらず正常運転動作を行なう時には整流動作を行なうが、交流電源系統1が停電しており停電運転動作を行なうときにはスイッチング動作を行なわない。つまり、スイッチング素子Su、Sxは、遮断状態を維持する。
【0013】
以上説明したように、停電動作時には、バックアップ回路14のバッテリ14aをエネルギ源として負荷2への電力供給を行なうことによって、交流電源系統1に停電が生じた場合であっても負荷2への電力供給を継続して行なうようになっている。
【特許文献1】特開2005−278241号公報(図6)
【非特許文献1】パワーエレクトロニクス回路 電気学会・半導体電力変換システム調査専門委員会編 オーム社 P235 図6・27
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、スイッチング素子のスイッチング動作によって発生する伝導ノイズ及び放射ノイズは、通常運転時だけでなく、停電運転動作時であっても規制値以下に低減しなければならない。
特に、停電運転時の交流電源系統1への伝導ノイズ(雑音端子電圧)であっても規制の対象となっている。
しかしながら、停電時には主変換装置4bと交流電源系統1との間がリレー回路Ryによって切り離されており、理想的には交流電源系統1側へは伝導ノイズが伝播しない場合であっても、各部に形成される浮遊容量を介して伝導ノイズが流出することが多い。
【0015】
また、交流電源系統1側の伝導ノイズと負荷側の伝導ノイズとは相互干渉することから、停電時に負荷側の伝導ノイズが上昇する場合もある。したがって、交流電源系統1側、負荷2側のどちらの伝導ノイズであっても停電運転時には、通常運転時と主回路動作や伝導ノイズ経路が異なり、規制を超過する可能性がある。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題点に着目してなされたものであり、整流部の直流電力への変換動作を停止した状態で負荷への電力供給を行なう場合であっても、交流電源入力系統側及び負荷側への伝導ノイズを低減することの可能な電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電力変換装置によれば、交流電源入力を直流電力に変換する第1の状態と前記直流電力への変換動作を停止する第2の状態とのうちの何れかの状態を選択可能な整流部と、直流電力を交流電力に変換して負荷供給用の交流電力を生成し前記負荷供給用の交流電力を負荷に供給するインバータ部と、直流電力源と、を有し、前記インバータ部は、前記整流部で前記第1の状態が選択されているときには前記整流部で変換した直流電力から前記負荷供給用の交流電力を生成し、前記第2の状態が選択されているときには前記直流電力源の直流電力から前記負荷供給用の交流電力を生成するようになっている電力変換装置において、前記整流部及び前記インバータ部は、スイッチング素子とこのスイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードとを1アームとして2つのアームが直列に接続されたスイッチングアーム直列接続部を、それぞれ少なくとも1つ有し、前記整流部で前記第2の状態が選択されているときには、前記整流部の少なくとも1つのスイッチングアーム直列接続部において何れか一方のスイッチング素子のみを導通状態に保持することを特徴としている。
【0017】
また、請求項2に係る電力変換装置は、前記整流部の前記スイッチングアーム直列接続部を構成する2つのスイッチング素子のうち、低電圧側のスイッチング素子のみを導通状態に保持することを特徴としている。
さらに、請求項3に係る電力変換装置は、前記整流部は、前記交流電源入力が非停電状態であると判断されるときには前記第1の状態を選択し、前記交流電源入力が停電状態であると判断されるときには前記第2の状態を選択することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、整流部で、直流電力への変換動作を停止する第2の状態が選択されているときには、整流部を構成するスイッチングアーム直列接続部を構成する2つのスイッチング素子のうち何れか一方のみを導通状態に保持し、このスイッチングアーム直列接続部が変換動作を停止したことに起因する共振経路が形成されることを回避する構成としたため、この共振経路の発生に起因して生じる伝導ノイズを抑制することができ、非正常時における伝導ノイズを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した無停電電源装置の一例を示す概略構成図である。
この図1は、図10に示す無停電電源装置4と基本的な構成は同一であるので同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
図1において、無停電電源装置4は、単相の交流電源系統1と単相交流モータ等の負荷2との間に接続される。無停電電源装置4は、入力フィルタ4a、主変換装置4b、出力フィルタ4cを備え、入力フィルタ4aと主変換装置4bとの間には、R相の電力ライン及びS相の電力ラインを遮断するリレー回路Ryが介挿されている。
【0020】
主変換装置4bは、コンデンサC1及びノーマルモードリアクトルL1からなるLCフィルタ回路、整流動作を行なうスイッチングアーム直列接続部SA1、直流中間電圧を規定電圧に維持するコンデンサ直列接続部CA、インバータ動作を行なうスイッチングアーム直列接続部SA2、リアクトルL2及びコンデンサC2からなるLCフィルタ回路で構成される。
【0021】
また、スイッチングアーム直列接続部SA1とコンデンサ直列接続部CAとの間に、前記図11に示す、直流電力源としてのバックアップ回路14が接続される。
そして、入力フィルタ4aとリレー回路Ryとの間に、交流電源電圧を検出しこれに基づき交流電源系統1の停電を検出する停電検出器21と、この停電検出器21の検出結果に基づき各部を制御する制御部22と、を備えている。
【0022】
この制御部22は、停電検出器21により停電が検出されないときには、リレー回路Ryを導通状態に制御する。また、整流部11を整流動作させコンデンサ直列接続部CAの両端電圧が規定電圧Vdcとなるようにスイッチングアーム直列接続部SA1の各スイッチング素子Su及びSxをPWM制御すると共に、負荷2への供給電圧が所定の交流電圧となるようにインバータ部13を構成するスイッチングアーム直列接続部SA2の各スイッチング素子Sw及びSzをPWM制御する。一方、停電検出器21により停電が検出されたときには、リレー回路Ryを遮断状態に切り替え、主変換装置4bを交流電源系統1側から切り離すと共に、バックアップ回路14の変圧機能部14cを動作させ、バッテリ14aのエネルギを利用してコンデンサ直列接続部CAの両端電圧が規定電圧Vdcとなるように制御すると共に、負荷2への供給電圧が所定の交流電圧となるようにインバータを構成するスイッチングアーム直列接続部SA2の各スイッチング素子Sw及びSzをPWM制御する。また、停電が検出されたときには、整流回路を構成するスイッチングアーム直列接続部SA1のスイッチング素子Su及びSxのPWM制御を停止し、スイッチング素子Suを遮断状態、スイッチング素子Sxを導通状態に保持する。
【0023】
図2は、制御部22の演算処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
制御部22は、停電検出器21の検出結果を読み込み、停電が検出されていなければ、ステップS1からステップS2に移行し、リレー回路Ryを導通状態(ON)に維持する。そして、ステップS3に移行し、整流部11を構成する各スイッチング素子をPWM制御して整流動作させ、さらにインバータ部13を構成する各スイッチング素子をPWM制御してインバータ動作させる。
【0024】
一方、停電が検出されたときには、ステップS1からステップS5に移行し、リレー回路Ryを遮断状態(OFF)に切り替える。そして、ステップS6に移行し、整流部11を構成するスイッチング素子のうち、スイッチング素子Sxを導通(ON)状態に保持すると共に、スイッチング素子Suを遮断(OFF)状態に保持する。
次いで、ステップS7に移行し、インバータ部13を構成する各スイッチング素子をPWM制御してインバータ動作させると共に、バックアップ回路14の変圧機能部14cを動作させ、コンデンサ直列接続部CAの両端電圧を規定電圧Vdcに維持させる。
【0025】
次に、図1の無停電電源装置4において、停電運転動作時に発生する共振経路について説明する。
図3は、図1の無停電電源装置4の構成を簡略化して共振経路を表したものである。
図3に示すように、停電運転時には、リレー回路Ryは遮断状態を維持する。
仮に、停電運転時に整流動作を行なうスイッチングアーム直列接続部SA1のスイッチング素子Su及びSxを共に遮断状態に保持する構成とした場合(遮断状態を保持していることから、図3では、スイッチング素子Su及びSxは出力容量(コンデンサ)で記載)、コンデンサC1、ノーマルモードリアクトルL1、スイッチング素子Su、スイッチング素子Sw、リアクトルL2、コンデンサC2、そしてコンデンサC1に至る経路と、ノーマルモードリアクトルL1、スイッチング素子Sx、コンデンサCdc2、Cdc1、スイッチング素子Swに至る経路とからなる共振経路が形成され共振が発生する。
【0026】
また、この共振経路の中で、最も小さいコンデンサは、スイッチング素子Su、Sxの出力容量であるから、共振周波数は主にスイッチング素子Su、Sxの出力容量と、リアクトルL1及びL2のインダクタンスとで決定される。このようにして設定される共振周波数においては、大きな電流が流れることから伝導ノイズが増加する原因となる。
図4は、停電動作時に、図1のシステムにおいて生じる浮遊容量を表したものである。
【0027】
例えば、R相の電力ラインに介挿されたリレー回路Ryの2つの固定端子間及びS相の電力ラインに介挿されたリレー回路Ryの2つの固定端子間に、それぞれの固定端子間を横断するように浮遊容量cc1、cc2が形成される。また、リアクトルは巻線構造のため、周囲との浮遊容量が形成されやすい。このため、ノーマルモードリアクトルL1と筐体等のアースとの間に浮遊容量cc3が形成される。
【0028】
また、整流部11のスイッチングアーム直列接続部SA1を構成する下側のスイッチング素子Sxのコレクタ側と図示しない冷却フィン或いは筐体等のアースとの間に浮遊容量cc4が形成される。同様に、インバータ部13のスイッチングアーム直列接続部SA2を構成する下側のスイッチング素子Szのコレクタ側と図示しない冷却フィン或いは筐体側のアースとの間に浮遊容量cc5が形成される。
【0029】
このため、負荷2側だけでなく、図4の各所に形成される浮遊容量を介して交流電源系統1側の伝導ノイズも増加する可能性がある。
ここで、本願発明では、図1に示すように停電動作時には、整流部11のスイッチングアーム直列接続部SA1において、上側のスイッチング素子Suを遮断状態、下側のスイッチング素子Sxを導通状態に保持している。
このため、スイッチング素子Sxを導通する経路が支配的となり、スイッチング素子Su、Sxの出力容量を導通する経路が消滅する。
【0030】
逆に、停電動作時に、上側のスイッチング素子Suを導通状態、下側のスイッチング素子Sxを遮断状態に保持する構成とした場合には、スイッチング素子Suを導通する経路が支配的となり、スイッチング素子Su、Sxの出力容量を導通する経路が消滅する。
このように、スイッチング素子Su又はSxの何れかを導通状態とすることにより、スイッチング素子Su、Sxの出力容量を導通する経路が消滅する。このため、停電動作時に、スイッチング素子Su、Sxがスイッチング動作しないことに起因する伝導ノイズの増加を抑制することができる。
【0031】
また、スイッチングアーム直列接続部SA1のスイッチング素子の出力容量を導通する共振回路が消滅したとしても、主に、フィルタ回路を構成するリアクトルL1、L2、コンデンサC1、C2間では共振が発生することになるが、この場合の共振周波数は、図3に示す、スイッチングアーム直列接続部SA1のスイッチング素子Su、Sxの出力容量を導通する共振回路における共振周波数よりも周波数が低く、一般的にスイッチングリプル除去用のフィルタ共振に近いことから、大きな問題とはならない。
したがって、以上の構成とすることにより停電運転時における伝導ノイズ低減を図ることができ、停電運転時の伝導ノイズを規制値以下とすることの可能な無停電電源装置をより容易に実現することができる。
【0032】
また、図1に示すように停電動作時には、スイッチングアーム直列接続部SA1において、低圧側のスイッチング素子Sxを導通状態に維持し、高圧側のスイッチング素子Suは遮断状態としている。ここで、スイッチングアーム直列接続部SA1の場合、高圧側のスイッチング素子Suのエミッタ端子が高周波で電位変動するのに対し、低圧側のスイッチング素子Sxのエミッタ端子は安定電位となることから、低圧側のスイッチング素子Sxのエミッタ端子の電位を、制御部22の基準電位とする場合が多い。このような場合、高圧側のスイッチング素子Suを導通状態で保持し続けるよりも、低圧側のスイッチング素子Sxを導通状態で保持し続ける方が容易である。
【0033】
特に高圧側のスイッチング素子Suを駆動するための電源をブートストラップで構成している場合などには、高圧側のスイッチング素子Suを導通状態に長時間保持し続けることは困難である。
したがって、図1に示すように、停電動作時には、低圧側のスイッチング素子Sxを導通状態に保持し、高圧側のスイッチング素子Suを遮断状態に保持する構成とすることによって、停電動作時における伝導ノイズを容易に低減することができる。
【0034】
なお、上記実施の形態においては、図1に示すように、入力フィルタ4aとノーマルモードリアクトルL1及びコンデンサC1からなるLCフィルタ回路との間にリレー回路Ryが介挿された場合について説明したが、これに限るものではない。
例えば、入力フィルタ4aに適用される一般的なノイズフィルタは、図5に示すように、コモンモードチョークコイル31や、線間コンデンサ32、接地コンデンサ33、34を含む構成をとる。
【0035】
この場合、停電動作時の交流電源系統1側遮断用のリレー回路Ryを、入力フィルタ4aを構成する素子の中間に挿入することになり、例えば、線間コンデンサ32とコモンモードチョークコイル31との間、或いはコモンモードチョークコイル31と接地コンデンサとの間に挿入することになるが、この場合も上記と同様に、入力フィルタ4aの構成素子を介する共振経路が発生することになる。
しかしながら、図5に示すような一般的なノイズフィルタの中間にリレー回路Ryを挿入する構成とした場合であっても、図1に示すように、停電動作時には、スイッチングアーム直列接続部SA1の低圧側のスイッチング素子Sxを導通状態、高圧側のスイッチング素子Suを遮断状態とすることにより、停電動作時における伝導ノイズの低減を図ることができる。
【0036】
言い換えれば、図1に示すように、停電動作時に、共振経路を形成する要因となる整流部のスイッチングアーム直列接続部を構成するスイッチング素子の一方のみを導通状態に保持し、スイッチングアーム直列接続部を構成するスイッチング素子を経由して形成される共振経路が形成されないようにしたため、仮に、スイッチングアーム直列接続部と共に共振経路を形成し得るLCフィルタ回路やノイズフィルタ等が接続されている場合であっても、共振経路の形成を回避することができ、すなわちこの共振経路の発生に伴う伝導ノイズの発生を回避することができる。
【0037】
また、上記実施の形態においては、図1に示すように、主変換装置4bが、ノーマルモードリアクトルL1及びコンデンサC1からなるLCフィルタ回路、整流用のスイッチングアーム直列接続部SA1、直流中間電圧生成用のコンデンサ直列接続部CA、インバータ用のスイッチングアーム直列接続部SA2、リアクトルL2及びコンデンサC2からなるフィルタ回路で構成される場合について説明したが、これに限るものではない。
【0038】
例えば、図6から図8に示すように、入力側及び出力側のLCフィルタ回路、単相の整流回路及び単相のインバータの機能を併せ持ち、整流回路及びインバータはそれぞれスイッチングアーム直列接続部を有する構成の主変換装置4bを備えた無停電電源装置であれば、同様に停電動作時に伝導ノイズが増加する問題が生じることから、これら構成の無停電電源装置であっても、共振経路を形成するスイッチングアーム直列接続部のスイッチング素子の何れか一方のみを上記と同様に導通状態に保持することによって、停電動作時における伝導ノイズの低減を図ることができる。
【0039】
図6の無停電電源装置は、直列に接続されたスイッチング素子S1、S2と各スイッチング素子S1、S2のそれぞれに逆並列に接続されたダイオードD1、D2とからなるスイッチングアーム直列接続部SA11と、スイッチングアーム直列接続部SA11の両端に並列に接続された平滑コンデンサCdcと、直列に接続されたスイッチング素子S5、S6と各スイッチング素子S5、S6のそれぞれに逆並列に接続されたダイオードD5、D6とからなるスイッチングアーム直列接続部SA12とからなる、整流動作を行なう整流部41と、直列に接続されたスイッチング素子S7、S8と各スイッチング素子S7、S8のそれぞれに逆並列に接続されたダイオードD7、D8とからなるスイッチングアーム直列接続部SA13と、整流部41を構成するスイッチングアーム直列接続部SA12とから構成されるPWMインバータ部42とを備えている。
【0040】
そして、R相の電力ラインが、ノーマルモードリアクトルL1を介してスイッチングアーム直列接続部SA11のスイッチング素子どうしの接続点に接続され、R相の電力ラインとS相の電力ラインとの間にノーマルモードリアクトルL1と共に、雑音端子電圧の増加を抑制するLCフィルタ回路を構成するコンデンサC1が接続されている。また、インバータ部42を構成するスイッチングアーム直列接続部SA13のスイッチング素子どうしの接続点にリアクトルL2が接続され、他端がR相の電力ラインとして負荷2に接続される。また、R相の電力ラインとS相の電力ラインとの間にコンデンサC2が接続されリアクトルL2とコンデンサC2とでLCフィルタ回路を形成する。
【0041】
そして、スイッチングアーム直列接続部SA11と平滑コンデンサCdcとの間にこれらと並列に、図11に示す図示しないバックアップ回路14が接続され、停電動作時には、整流部41を構成する一方のスイッチングアーム直列接続部SA11はスイッチング動作を停止し、高圧側のスイッチング素子S1は遮断状態、低圧側のスイッチング素子S2は導通状態に制御される。
【0042】
したがって、図6の構成の場合も、仮に停電動作時にスイッチングアーム直列接続部SA11の各スイッチング素子S1、S2を共に遮断状態に保持する構成とした場合には、LCフィルタ回路を構成するコンデンサC1及びノーマルモードリアクトルL1と、整流部41を構成するスイッチングアーム直列接続部SA11の各スイッチング素子S1、S2と、平滑コンデンサCdcと、インバータ部42を構成するスイッチング素子S7、リアクトルL2、コンデンサC2を通る経路からなる共振経路が形成されることになるが、停電動作時には、図1と同様にスイッチングアーム直列接続部SA11の低圧側のスイッチング素子S2を導通状態、高圧側のスイッチング素子S1を遮断状態とすることによって、スイッチング素子S1、S2を通る共振経路が消滅する。したがって、この場合も、整流部41のスイッチング素子がスイッチング動作せず遮断状態に保持されることに起因する停電動作時の伝導ノイズの増加を抑制することができる。
【0043】
また、図7は、図6において、コンデンサC1と整流部41を構成するスイッチングアーム直列接続部SA11との間に接続されていたノーマルモードリアクトルL1を、スイッチングアーム直列接続部SA13のスイッチング素子どうしの接続点とS相の電力ラインとの間にノーマルモードリアクトルL1′として接続したものである。
また、図8は、図7において、インバータ部42を構成するスイッチングアーム直列接続部SA13とコンデンサC2との間に接続されていたリアクトルL2を、スイッチングアーム直列接続部SA11のスイッチング素子どうしの接続点とR相の電力ラインとの間にリアクトルL2′として接続したものである。
【0044】
これら図7及び図8は、リアクトルL1′、L2′の接続位置が異なるものの、各部は図6と同様に動作し、仮に停電動作時に整流部41のスイッチングアーム直列接続部SA11のスイッチング素子を遮断状態のまま保持した場合には、これらスイッチング素子を経由する共振経路が形成され、これに伴って伝導ノイズが生じることになるが、図1の場合と同様に、低圧側のスイッチング素子S2は導通状態、高圧側のスイッチング素子S1は遮断状態に保持することによって、スイッチング素子を経由する共振経路が消滅するため、停電動作時における伝導ノイズの増加を抑制することができる。
【0045】
次に、図9は、三相3線式の無停電電源装置の一例を示したものである。
三相3線式の場合、無停電電源装置は、図9に示すように、3相の相間それぞれに接続された相間コンデンサC31〜C33及び各相の電力ラインに介挿されたリアクトルL31〜L33とで構成されスイッチングリプルを抑制するLCフィルタ回路と、整流部51と、整流部51と並列に接続された平滑コンデンサを備えた直流中間電圧部52と、インバータ部53と、各相の電力ラインに介挿されたリアクトルL34〜L36及び各相間に接続される相間コンデンサC34〜C36とで構成されスイッチングリプルを抑制するLCフィルタ回路と、から構成される。前記整流部51及びインバータ部53は、それぞれ例えばスイッチング素子とこれに逆並列に接続されたダイオードとからなるアームが直列に2つ接続されたスイッチングアーム直列接続部が3つ並列に接続された構成を有する。
【0046】
このような三相3線式の無停電電源装置において、仮に停電動作時に整流部51のスイッチングアーム直列接続部を遮断状態に保持する構成とした場合、この場合も上記と同様に、遮断状態に保持したスイッチングアーム直列接続部を経由する共振経路が形成されることになる。しかしながら、この場合も整流回路を構成するスイッチングアーム直列接続部の、直列に接続されたスイッチング素子のうちの低圧側のスイッチング素子のみを導通状態に保持することにより、上記と同様に、停電動作時における伝導ノイズの増加を抑制することができる。
【0047】
ここで、三相3線式の無停電電源装置の場合には、リレー回路Ryの接続位置やリレー回路の接続相などにより整流部51を構成する3つのスイッチングアーム直列接続部のうち全てについて一方のスイッチング素子を導通状態に保持しなければならない場合と、1つ、もしくは2つのスイッチングアーム直列接続部において何れか一方のスイッチング素子のみを導通状態に保持すればよい場合とがある。
【0048】
例えば、図11のバックアップ回路14の変圧機能部14cがスイッチングアームを含んで構成され、この変圧機能部14cのスイッチングアームと、整流部51のスイッチングアームとを共用する構成である場合には、1つ、もしくは2つのスイッチングアーム直列接続部において何れか一方のスイッチング素子のみを導通状態に保持することになる。この整流部51のスイッチングアームと変圧機能部14cのスイッチングアームの共用数は装置構成によって異なるものの、停電時にスイッチングして電力変換を行う機能を付加されたスイッチングアームを除き、その他すべてのスイッチングアームについて、何れか一方のスイッチング素子を導通状態に保持すれば良い。
【0049】
また、上記実施の形態においては、無停電電源装置に適用した場合について説明したが、整流部は、必ずしも、非停電状態と停電状態とで整流部の動作が交流電源入力を交流電力に変換する状態(第1の状態)と、直流電力への変換動作を停止する状態(第2の状態)との何れかを選択する構成である必要はなく、整流部が、前記第1の状態と前記第2の状態との何れかを選択して動作する構成であれば適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明を適用した無停電電源装置の一例を示す構成図である。
【図2】図1の制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】共振経路の一例を示す説明図である。
【図4】浮遊容量の形成位置の一例を示す説明図である。
【図5】ノイズフィルタの一例である。
【図6】無停電電源装置のその他の例である。
【図7】無停電電源装置のその他の例である。
【図8】無停電電源装置のその他の例である。
【図9】無停電電源装置のその他の例である。
【図10】無停電電源装置を被検査対象とする雑音端子電圧測定システムの一例である。
【図11】バックアップ回路の一例である。
【符号の説明】
【0051】
1 交流電源系統
2 負荷
4 無停電電源装置
4a 入力フィルタ
4b 主変換装置
4c 出力フィルタ
11 整流部
12 直流中間電圧部
13 インバータ部
14 バックアップ回路
21 停電検出器
22 制御部
SA1、SA2 スイッチングアーム直列接続部
Ry リレー回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源入力を直流電力に変換する第1の状態と前記直流電力への変換動作を停止する第2の状態とのうちの何れかの状態を選択可能な整流部と、
直流電力を交流電力に変換して負荷供給用の交流電力を生成し前記負荷供給用の交流電力を負荷に供給するインバータ部と、
直流電力源と、を有し、
前記インバータ部は、前記整流部で前記第1の状態が選択されているときには前記整流部で変換した直流電力から前記負荷供給用の交流電力を生成し、前記第2の状態が選択されているときには前記直流電力源の直流電力から前記負荷供給用の交流電力を生成するようになっている電力変換装置において、
前記整流部及び前記インバータ部は、スイッチング素子とこのスイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードとを1アームとして2つのアームが直列に接続されたスイッチングアーム直列接続部を、それぞれ少なくとも1つ有し、
前記整流部で前記第2の状態が選択されているときには、前記整流部の少なくとも1つのスイッチングアーム直列接続部において何れか一方のスイッチング素子のみを導通状態に保持することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記整流部の前記スイッチングアーム直列接続部を構成する2つのスイッチング素子のうち、低電圧側のスイッチング素子のみを導通状態に保持することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記整流部は、前記交流電源入力が非停電状態であると判断されるときには前記第1の状態を選択し、前記交流電源入力が停電状態であると判断されるときには前記第2の状態を選択することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電力変換装置。
【請求項1】
交流電源入力を直流電力に変換する第1の状態と前記直流電力への変換動作を停止する第2の状態とのうちの何れかの状態を選択可能な整流部と、
直流電力を交流電力に変換して負荷供給用の交流電力を生成し前記負荷供給用の交流電力を負荷に供給するインバータ部と、
直流電力源と、を有し、
前記インバータ部は、前記整流部で前記第1の状態が選択されているときには前記整流部で変換した直流電力から前記負荷供給用の交流電力を生成し、前記第2の状態が選択されているときには前記直流電力源の直流電力から前記負荷供給用の交流電力を生成するようになっている電力変換装置において、
前記整流部及び前記インバータ部は、スイッチング素子とこのスイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードとを1アームとして2つのアームが直列に接続されたスイッチングアーム直列接続部を、それぞれ少なくとも1つ有し、
前記整流部で前記第2の状態が選択されているときには、前記整流部の少なくとも1つのスイッチングアーム直列接続部において何れか一方のスイッチング素子のみを導通状態に保持することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記整流部の前記スイッチングアーム直列接続部を構成する2つのスイッチング素子のうち、低電圧側のスイッチング素子のみを導通状態に保持することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記整流部は、前記交流電源入力が非停電状態であると判断されるときには前記第1の状態を選択し、前記交流電源入力が停電状態であると判断されるときには前記第2の状態を選択することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−148204(P2010−148204A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320930(P2008−320930)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
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