説明

電力変換装置

【課題】複数の冷却器を用いずに、簡素な構造で冷却性能を確保出来る電力変換装置を提供することである。
【解決手段】冷却器101と、冷却器101の主面103に並べられる半導体104と、半導体104が冷却器101と接する面と対向する面に接し、半導体104を覆うように設けられる断面がコの字型の放熱体105と、冷却器101の主面側103を覆うように設けられる冷却器101のカバー部材108と、カバー部材108と放熱体105との間に介在し、放熱体105と半導体104とを接触させる方向に付勢力Faを付与するバネ部材109とを備え、少なくとも一部が冷却器101と放熱体105との端部とに接する弾性部材110とを更に備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に係り、複数の冷却器を用いずに高い冷却性能を確保するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車や電気自動車には車両の駆動用に高出力の交流モータが搭載されている。高出力の交流モータを駆動するには、大電力が必要となるため、車載電源より供給される直流電力を交流電力に変換して交流モータに供給する電力変換装置にも大電力が流れる。電力変換装置に大電力が流れると、電力変換装置に設けられた半導体の発熱量が大きくなり、半導体が高温になってしまうという課題があった。
【0003】
そこで、電力変換装置に設けられた半導体を効率良く冷却するために、半導体と、半導体を冷却するための冷却器とを交互に積層するように配置した電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この電力変換装置は、半導体を複数の冷却器を用いて冷却するので、半導体を効率良く冷却することを可能としている。
【0005】
また、電力変換装置に設けられた半導体を簡素な構造で冷却するために、半導体を冷却するための冷却器の平面上に半導体を配置し、さらに半導体を覆うように放熱体を設けて冷却器に固定する電力変換装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
この電力変換装置は、半導体を冷却器と放熱体とをそれぞれ用いて冷却するため、上記電力変換装置と比較的簡素な構造で半導体を冷却することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−157042号公報
【特許文献2】特開2009−152505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1に開示された電力変換装置のように半導体と冷却器とを交互に積層し、複数の冷却器を用いて半導体を冷却するようにすれば優れた冷却性能を確保出来る。しかしながら、半導体を冷却するために複数の冷却器が必要となるため、簡素な構造とするのは困難であった。
【0009】
また、上記の特許文献2に開示された電力変換装置のように冷却器の平面上に半導体を配置し、さらに半導体を覆うように放熱体を配置すれば簡素な構造で半導体を冷却することが出来る。しかし、設計誤差や振動等が原因で放熱体と冷却器の間に隙間が生じると、半導体の熱を効率良く冷却器へ伝達することが出来ないため、高い冷却性能を確保することは困難であった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであって、その目的は、複数の冷却器を用いずに、簡素な構造で高い冷却性能を確保出来る電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る電力変換装置は、冷却器と、冷却器の主面に並べられる半導体と、半導体が冷却器と接する面と対向する面に接し、半導体を覆うように設けられる断面がコの字型の放熱体と、冷却器の主面側を覆うように設けられる冷却器のカバー部材と、カバー部材と放熱体との間に介在し、放熱体と半導体とを接触させる方向に付勢力を付与するバネ部材とを備える電力変換装置であって、少なくとも一部が冷却器と放熱体の端部とに接する弾性部材とを更に備えることを特徴とする。
【0012】
第2の発明に係る電力変換装置は、第1の発明の構成に加え、弾性部材は放熱体の端部と接し、バネ部材の付勢力を放熱体の端部を介して受けることを特徴とする。
【0013】
第3の発明に係る電力変換装置は、第2の発明の構成に加え、弾性部材は半導体を覆うようなコの字型の形状を有し、半導体と放熱体との間に介在するよう放熱体に設けられた凹部に挟合されることを特徴とする。
【0014】
第4の発明に係る電力変換装置は、第3の発明の構成に加え、半導体と、弾性部材を有する放熱体とは、冷却器の主面に複数並べられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の冷却器を用いずに、簡素な構造で冷却性能を確保できる電力変換装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施例に係る電力変換装置の構造を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る電力変換装置に実装される弾性部材の斜視図、及び電力変換装置に実装された弾性部材の拡大図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る電力変換装置の冷却経路を示した図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る電力変換装置に複数の半導体を並列に並べた構造を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係る電力変換装置の構造を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係る電力変換装置に実装される弾性部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
(第1の実施例)
図1は、本発明の第1の実施例に係る電力変換装置100の構造を示す図である。電力変換装置100は、冷却器101と、半導体104と、放熱体105と、カバー部材108と、バネ部材109と、弾性部材110から成る。
【0019】
冷却器101は、内部に列状に配置された図示しない冷却フィンを有し、隣り合う冷却フィン間に冷媒流路102を形成する。冷却器101を構成する部材としては高熱伝導性を有したアルミ等を適用することが望ましい。また、冷媒としては液体及び気体のいずれを用いても良い。
【0020】
半導体104は電力変換回路を構成する電子部品であって、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が用いられる。半導体104は高熱伝導性を有した図示しないグリス等を介して冷却器101の主面103に実装され、半田付けによって接続される。尚、車載用の電力変換装置には多くの半導体が搭載されているが、本明細書では説明を簡略化するために一部のみを図示している。
【0021】
放熱体105は、図1に表されているように断面がコの字の形状をしており、半導体104が冷却器101と接している面と対向する面と接する平面部106と、放熱体105の平面部106の両端より冷却器101の方向へ向け略垂直に伸びる脚部107から成り、高熱伝導性を有した図示しないグリス等を介して半導体104に実装される。上記の通り、半導体104に大電力が流れると半導体104は発熱するので、半導体104の熱は放熱体105へと伝導し下記する弾性部材110を介して冷却器101へ放熱される。尚、放熱体105を構成する部材としては、高熱伝導性を有したアルミ等を適用することが望ましい。
【0022】
カバー部材108は、半導体104や放熱体105等の冷却器101に実装される部品を保護するために、冷却器101の主面103を覆うように設けられ、ボルト111等によって冷却器101に固定される。尚、カバー部材108を構成する部材としては、高熱伝導性と高い剛性とを有したアルミ等を適用することが望ましい。
【0023】
バネ部材109は、カバー部材108と、放熱体105の間に介在して設けられる。バネ部材109は、冷却器101の主面103に実装される半導体104や放熱体105を冷却器101の主面103に固定するために、図1に表されているように放熱体105が半導体104に接する面と対向する面に付勢力Faを付与する。尚、この付勢力Faは、バネ部材109のバネ定数を変更することで調整することが出来る。また、バネ部材109は一体的にカバー108に形成されても良い。
【0024】
弾性部材110は図2(a)に表されているように、外部からの応力により弾性変形すると共に高熱伝導性を有する部材、例えば高吸収性ポリマーをラミネートフィルム等で略三角柱状に包装ものであり、図示しない接着部材を用いて冷却器101の主面103に配置される。そして、放熱体105を所定位置に配置することにより弾性部材110は図2(b)に表されているようにバネ部材109の付勢力Faを放熱体105の脚部107を介して受け、弾性変形しつつ放熱体105の脚部107と密着固定される。
【0025】
このような構成により、放熱体105を所定位置に配置することで、弾性部材110はバネ部材109より付勢力Faを受け冷却器101の主面103に固定される。その間、弾性部材110は放熱体105の脚部107に対して弾性力を発生させる。この弾性部材110の弾性力によって、弾性部材110が放熱体105の脚部107に押圧される。従って、弾性部材110と、放熱体105の脚部107との接圧を確保出来るため、放熱体105の脚部107から弾性部材110への熱伝導性を高く保つことが出来る。また、冷却器101と放熱体105との間に弾性部材110が介在しているので、設計誤差や振動によって生じる隙間を最小限に抑えることが出来、高い冷却性能を確保することが出来る。
【0026】
次に、図3を用いて、半導体104の熱がどのような経路で冷却器101まで伝導されるかを説明する。図3(a)は第1の経路を、図3(b)は第2の経路を表している。
【0027】
第1の経路は、半導体104の熱が直接冷却器101に伝導する経路である。冷却器101は、高伝導性を有するアルミ等によって形成されるため、半導体104からの熱が効率よく冷却器101へと伝導し、半導体104を冷却することが可能である。
【0028】
第2の経路は、半導体104の熱が放熱体105と弾性部材110とを介して冷却器101へと伝導する経路である。まず、半導体104の熱は、半導体104が冷却器101と接する面と対向する面に設けられた放熱体105の平面部106に伝導する。そして、放熱体105の平面部106より脚部107へ、そして弾性部材110へと伝導し、弾性部材110より冷却器101へと放熱される。上記したように、放熱体105の脚部107と弾性部材110とは、バネ部材109の付勢力Faと、弾性部材110の弾性力とによって接圧されているので、高い熱伝導性を確保することが出来る。
【0029】
尚、図4のように冷却器101の上に平面状に複数の半導体104を実装する場合は、半導体104それぞれに放熱体105とバネ部材109とを設け、それぞれの放熱体105の間に弾性部材110を設けることが望ましい。1つの弾性部材110に2つの放熱体105が接するように配置することで冷却器101に実装される弾性部材110の数を減らすことが出来る。また、1つの弾性部材110に2つの放熱体105が接することで、バネ部材109より弾性部材に付与される付勢力Faが増加するので、弾性部材110のと、放熱体105の脚部107との接圧をより大きくすることが出来、高い熱伝導性を確保することが出来る。
(第2の実施例)
次に、図5及び図6を用いて、本発明の第2の実施例に係る電力変換装置100の構造を説明する。第2の実施例に係る電力変換装置100は、弾性部材112の形状及び配置方法が第1の実施例に係る電力変換装置100と異なる。
【0030】
図5は第2の実施例に係る電力変換装置100の構造を示しており、また図6は第2の実施例に係る電力変換装置100に実装された続部材112の斜視図である。図5及び図6に表されているように、第2の実施例に係る弾性部材112は放熱体105と同じように断面がコの字の形状に変形しており、半導体104と放熱体105との間に半導体104を覆うように介在するよう配置され、半導体104と接する放熱体105の平面部106に設けられる凹部113に挟合されることによって放熱体105に保持される点が第1の実施例で開示された弾性部材110とは異なる。しかしながら、図5に示すように放熱体105を所定位置に配置することで、バネ部材109の付勢力Faを放熱体105を介して受け、弾性変形し冷却器101と放熱体105とを密着固定する点では共通する。このような構成により、冷却器101と放熱体105との間の密着性を向上することが可能であり、半導体104の冷却性能を向上させることが可能となる。
【0031】
また、図は省略するが弾性部材112を有する放熱体105と半導体104とを図4に表されているように冷却器101に平面状に複数個実装することも可能である。この場合であっても、やはりバネ部材109はそれぞれの放熱体105に設けられることが望ましい。
【0032】
以上のように、本発明に係る電力変換装置100は、冷却器101と、冷却器101の主面103に並べられる半導体104と、半導体104が冷却器101と接する面と対向する面に接し、半導体104を覆うように設けられる断面がコの字型の放熱体105と、冷却器101の主面側103を覆うように設けられる冷却器101のカバー部材108と、カバー部材108と放熱体105との間に介在し、放熱体105と半導体104とを接触させる方向に付勢力Faを付与するバネ部材109とを備え、少なくとも一部が冷却器101と放熱体105の端部に接する弾性部材110とを更に備えるので、電力変換装置において複数の冷却器を用いずに、簡素な構造で高い冷却性能を確保することが出来る。
【0033】
また、本発明に係る電力変換装置100によれば、弾性部材110は、バネ部材109の付勢力Faを放熱体105の脚部107を介して受けるので、弾性部材110の弾性力によって弾性部材110と放熱体105の脚部との接圧を確保することが出来、放熱体105の脚部107から弾性部材110への熱伝導性を高く保つことが出来る。
【0034】
また、本発明に係る電力変換装置100によれば、弾性部材112は半導体104を覆うようなコの字型の形状に変形し、半導体104と放熱体105との間に介在するよう放熱体105に設けられた凹部113に挟合されるので、冷却器101と放熱体105との間の密着性を更に向上させることが出来る。
【0035】
また、本発明に係る電力変換装置100によれば、半導体104と、弾性部材112を有する放熱体105とは、冷却器101の主面103に複数並べることが出来るので、半導体104が増え電力変換装置100の発熱量が増えても、簡素な構造で高い冷却性能を確保することが出来る。
【符号の説明】
【0036】
100:電力変換装置、101:冷却器、104:半導体、105:放熱体、107:脚部、109:バネ部材、110、112:弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器と、
前記冷却器の主面に並べられる半導体と、
前記半導体が前記冷却器と接する面と対向する面に接し、前記半導体を覆うように設けられるコの字型の放熱体と、
前記冷却器を覆うように設けられる前記冷却器のカバー部材と、
前記カバー部材と前記放熱体との間に介在するバネ部材とを備える電力変換装置であって、
少なくとも一部が前記冷却器と前記放熱体の端部とに接する弾性部材とを更に備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記弾性部材は、前記バネ部材の付勢力を前記放熱体の端部を介して受けることを特徴とする。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記弾性部材は前記半導体を覆うようなコの字型の形状を有し、前記半導体と前記放熱体との間に介在するよう前記放熱体に設けられた凹部に挟合されることを特徴とする。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置であって、
前記半導体と、前記弾性部材を有する前記放熱体とは、前記冷却器の主面に複数並べられることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−227344(P2012−227344A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93255(P2011−93255)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】