説明

電力用半導体装置

【課題】強度を低下させることなく金属端子を金属板と安定的に接合することが可能な電力用半導体装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の電力用半導体装置は、絶縁基板3と、絶縁基板3上に形成された金属板2と、板状の接合部を有し、当該接合部が金属板2上に配置されて金属板2にレーザスポット溶接される金属端子1とを備える。金属端子1の前記接合部は、長さ方向に沿った両端部分がレーザスポット溶接の溶接位置に規定され、当該両端部分の厚みが他の部分よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力用半導体装置に関し、特に、電力用半導体装置の金属端子を金属板にレーザスポット溶接する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力用半導体素子を実装するプリント配線基板と金属端子との接続は、レーザスポット溶接によって行っている。レーザスポット溶接とは、レーザのスポット照射により生じた熱で金属端子を溶融させ、プリント配線基板の電極パッドに接合させる方法である。
【0003】
レーザスポット溶接では、金属端子の板厚が厚い場合、金属端子が溶融した時点で電極パッドが溶融してしまい、電極パッド下のプリント配線基板にダメージを与えてしまうという問題があった。特に、金属端子の融点が高く、電極パッドの融点が低い場合、その影響は顕著になる。
【0004】
そこで、金属端子の接合部の肉厚を他の部分よりも薄くすることにより、接合部における熱の拡散が効率良く行う技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−94845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように金属端子の接合部分全面を薄くすると、金属端子の強度が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は上述の問題に鑑み、強度を低下させることなく金属端子を金属板と安定的に接合することが可能な電力用半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電力用半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板上に形成された金属板と、板状の接合部を有し、当該接合部が前記金属板上に配置されて前記金属板にレーザスポット溶接される金属端子とを備え、前記金属端子の前記接合部は、長さ方向に沿った両端部分が前記レーザスポット溶接の溶接位置に規定され、当該両端部分の厚みが他の部分よりも小さい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電力用半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板上に形成された金属板と、板状の接合部を有し、当該接合部が前記金属板上に配置されて前記金属板にレーザスポット溶接される金属端子とを備え、前記金属端子の前記接合部は、長さ方向に沿った両端部分が前記レーザスポット溶接の溶接位置に規定され、当該両端部分の厚みが他の部分よりも小さいので、絶縁基板にダメージを与えることなく、金属端子と金属板を接合できる。また、接合部の一部の厚みを薄くするため、金属端子の強度を保つことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1に係る金属端子の構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態2に係る金属端子の構成を示す斜視図である。
【図3】実施の形態3に係る金属端子の構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態3の変形例に係る金属端子の構成を示す斜視図である。
【図5】実施の形態3の変形例に係る金属端子の構成を示す斜視図である。
【図6】前提技術に係る金属端子、金属板、絶縁板を示す斜視図である。
【図7】図6の奥行き方向断面図である。
【図8】図6の奥行き方向断面においてレーザ照射により金属板が溶融した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(前提技術)
図6は、前提技術に係る電力用半導体装置の金属端子周辺の構造を示す斜視図、図7は図6の奥行き方向断面図である。絶縁基板3上に形成された電極パッドなどの金属板2に金属端子1が接合される。金属端子1は、金属板2に垂直な端子部と、金属板2に平行な接合部とを備えており、接合部が金属板2とレーザスポット溶接される。
【0012】
電力用半導体装置では、金属端子1は大電流を流すために厚く形成されるのに対し、金属板2は表面積が大きく、金属端子1に対して薄く形成される。その為、金属端子1の接合部に対してレーザ照射すると、金属端子1が溶融した時点で金属板2も溶融してしまい、図8に領域4で示すように、金属板2下の絶縁基板3にダメージを与えてしまうことがある。特に、金属板2の融点が金属端子1より低い場合にその影響は顕著となる。
【0013】
そこで、本発明は金属端子1のレーザ照射部分を他の部分よりも薄く形成することにより、金属板2の溶融を防ぐものである。
【0014】
(実施の形態1)
<構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る金属端子の構造を示す斜視図である。この金属端子1aでは、金属板2との接合部の両端が端子の長さ方向に沿って、他の部分よりも薄く形成されている。金属端子1aの薄く形成された部分にレーザ照射を行うことにより、少ない熱量で金属端子1aの照射箇所を溶融させて金属板2と接合することが可能になるので、レーザスポット溶接の過程で金属板2が溶融することを抑制する。
【0015】
<効果>
実施の形態1の電力用半導体装置は、絶縁基板3と、絶縁基板3上に形成された金属板2と、板状の接合部を有し、当該接合部が金属板2上に配置されて金属板2にレーザスポット溶接される金属端子1とを備え、金属端子1aの前記接合部は、長さ方向に沿った両端部分が前記レーザスポット溶接の溶接位置に規定され、当該両端部分の厚みが他の部分よりも小さいので、少ない熱量で金属端子1aの照射箇所を溶融させて金属板2と接合することが可能になり、レーザスポット溶接の過程で金属板2が溶融することを抑制する。また、接合部の一部の厚みを薄くするため、金属端子1aの強度を保つことが出来る。
【0016】
(実施の形態2)
<構成>
図2は、本発明の実施の形態2に係る金属端子の構造を示す斜視図である。この金属端子1bでは、金属板2との接合部の中央部が端子の長さ方向に沿って、他の部分よりも薄く形成されている。金属端子1bの薄く形成された部分にレーザ照射を行うことにより、少ない熱量で金属端子1bの照射箇所を溶融させて金属板2と接合することが可能になるので、レーザスポット溶接の過程で金属板2が溶融することを抑制する。
【0017】
<効果>
実施の形態2の電力用半導体装置は、絶縁基板3と、絶縁基板3上に形成された金属板2と、板状の接合部を有し、当該接合部が前記金属板2上に配置されて金属板2にレーザスポット溶接される金属端子1bとを備え、金属端子1bの接合部は、長さ方向に沿った中央部分がレーザスポット溶接の溶接位置に規定され、当該中央部分の厚みが他の部分よりも小さいので、少ない熱量で金属端子1bの照射箇所を溶融させて金属板2と接合することが可能になり、レーザスポット溶接の過程で金属板2が溶融することを抑制する。また、接合部の一部の厚みを薄くするため、金属端子1bの強度を保つことが出来る。
【0018】
(実施の形態3)
<構成>
図3は、本発明の実施の形態3に係る金属端子の構造を示す斜視図である。この金属端子1cでは、金属板2との接合部の中央部が端子の幅方向に沿って、他の部分よりも薄く形成されている。金属端子1cの薄く形成された部分にレーザ照射を行うことにより、少ない熱量で金属端子1cの照射箇所を溶融させて金属板2と接合することが可能になるので、レーザスポット溶接の過程で金属板2が溶融することを抑制する。
【0019】
<変形例1>
図4は、第1の変形例に係る金属端子の構造を示す斜視図である。この金属端子1dでは、金属板2との接合部の複数個所に丸穴状のプレス加工を施すことにより、プレス加工した部分の厚みを他の部分よりも薄くしている。当該プレス加工した箇所にレーザスポット照射を行うことにより、少ない熱量で金属端子1dの照射箇所を溶融させて金属板2と接合することが可能になるので、レーザスポット溶接の過程で金属板2が溶融することを抑制する。
【0020】
<変形例2>
図5は、第2の変形例に係る金属端子の構造を示す斜視図である。この金属端子1eは、金属板2との接合部の中央部に丸穴状のプレス加工を施すことにより、プレス加工した部分の厚みを他の部分よりも薄くしている。当該プレス加工した箇所にレーザスポット照射を行うことにより、少ない熱量で金属端子1eの照射箇所を溶融させて金属板2と接合することが可能になるので、レーザスポット溶接の過程で金属板2が溶融することを抑制する。
【0021】
<効果>
実施の形態3の電力用半導体装置は、絶縁基板3と、絶縁基板3上に形成された金属板2と、板状の接合部を有し、当該接合部が金属板2上に配置されて金属板2にレーザスポット溶接される金属端子1cとを備え、金属端子1cの接合部は、幅方向に沿った中央部分がレーザスポット溶接の溶接位置に規定され、当該中央部分の厚みが他の部分よりも小さいので、少ない熱量で金属端子1cの照射箇所を溶融させて金属板2と接合することが可能になり、レーザスポット溶接の過程で金属板2が溶融することを抑制する。また、接合部の一部の厚みを薄くするため、金属端子1cの強度を保つことが出来る。
【符号の説明】
【0022】
1,1a,1b,1c,1d,1e 金属端子、2 金属板、3 絶縁基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に形成された金属板と、
板状の接合部を有し、当該接合部が前記金属板上に配置されて前記金属板にレーザスポット溶接される金属端子とを備え、
前記金属端子の前記接合部は、長さ方向に沿った両端部分が前記レーザスポット溶接の溶接位置に規定され、当該両端部分の厚みが他の部分よりも小さい、
電力用半導体装置。
【請求項2】
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に形成された金属板と、
板状の接合部を有し、当該接合部が前記金属板上に配置されて前記金属板にレーザスポット溶接される金属端子とを備え、
前記金属端子の前記接合部は、長さ方向に沿った中央部分が前記レーザスポット溶接の溶接位置に規定され、当該中央部分の厚みが他の部分よりも小さい、
電力用半導体装置。
【請求項3】
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に形成された金属板と、
板状の接合部を有し、当該接合部が前記金属板上に配置されて前記金属板にレーザスポット溶接される金属端子とを備え、
前記金属端子の前記接合部は、幅方向に沿った中央部分が前記レーザスポット溶接の溶接位置に規定され、当該中央部分の厚みが他の部分よりも小さい、
電力用半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252935(P2012−252935A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126023(P2011−126023)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】