説明

電動工具のためのトルク制御装置

【課題】 初期設定トルクを正確に設定できる電動工具のためのトルク制御装置を提供する。
【解決手段】 電動工具のためのトルク制御装置は、スイッチング回路、電圧検出回路、トルク検出回路およびプロセッサを備える。スイッチング回路は、電動工具のモータと直流電源との間に接続されている。電圧検出回路は、前記モータの電圧または電流の変動を検出する。トルク検出回路は、検出された電圧または電流の変動情報に基づいてモータの現実のトルク値を出力する。プロセッサは、現実のトルク値を初期設定値と比較し、現実のトルク値が初期設定値を超えるか否かを決定する。超えていれば、モータが損傷を受けることを防止すべくプロセッサによりスイッチング回路はオフ動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク制御装置に関し、特に、検出された現実のトルクが初期設定トルク値を超えるとき電動工具への電力供給を自動的に中断できるトルク制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具は、一般に、ツールヘッドを駆動するための電気モータを備え、これにより、操作者がねじ締めあるいは穿孔のような動作を容易に行えるように援助する。各種のツールヘッドは、駆動されるべき対象物に対応した特定のトルクに耐えることができる。したがって、電動工具で発生するトルクは、異なる対象物に適するように調整する必要がある。ツールヘッドが耐え得る許容量をそのトルクが超えると、このツールヘッドは、該ツールヘッドおよびモータへの損傷の危険を回避するために、該モータから一時的に結合が解除される。
【0003】
初期設定トルクは、電動工具に取り付けられたスプリングの圧縮程度を機械的に変えることにより、変更することができる。ツールヘッドは、そのトルクが初期設定値以下である限り、モータによって駆動される。しかしながら、スプリングを用いてトルクを機械的に設定することおよび正確な初期設定値を得ることは、共に極めて困難である。 さらに、ツールヘッドがモータから一時的に解除されたときでさえ、アイドリング状態のモータは絶え間なく電力を消費し続ける。
【0004】
したがって、本発明は、前記した問題を緩和あるいは除去すべく、電動工具のためのトルク制御装置を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、初期設定トルクを正確に設定できる電動工具のためのトルク制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成すべく、本発明のトルク制御装置は、前記モータと前記直流電源との間に接続されたスイッチング回路と、該スイッチング回路を開閉すべく前記スイッチング回路に接続された出力端子を有するプロセッサと、前記モータの電圧変動情報を検知するために該モータと前記直流電源との間に接続された入力端子を有する電圧検出回路と、該電圧検出回路と前記プロセッサとの間に接続され、前記電圧変動情報に基づいてモータトルク値を生成し該モータトルク値を前記プロセッサへ出力するトルク検出回路と、前記プロセッサに接続され、該プロセッサにトルク初期値を設定するトルク設定ユニットとを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動工具のモータの現実のトルク値が初期設定トルク値を超えると、モータへの電力供給は中断され、その結果、モータが保護される。
【0008】
本発明の他の目的、利点および新規な特徴は、添付の図面に関連した以下の詳細な説明により、さらに明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1を参照するに、電動工具のためのトルク制御装置は、スイッチング回路(10)と、プロセッサ(20)と、電圧検出回路(30)と、トルク検出回路(40)と、高電圧保護回路(50)と、低電圧保護回路(60)と、トルク設定ユニット(70)と、表示器(80)とを含む。
【0010】
スイッチング回路(10)はモータと直流電源との間に接続されており、この直流電源はバッテリで構成することができる。
【0011】
プロセッサ(20)は、スイッチング回路(10)の開閉状態を制御すべく、該スイッチング回路に接続された第1の出力端子を有する。
【0012】
電圧検出回路(30)は、前記直流電源と前記モータとの間に接続される入力端子を有し、これにより前記モータの電圧または電流の変動を検出可能である。
【0013】
トルク検出回路(40)は、電圧検出回路(30)とプロセッサ(20)との間に接続されている。前記モータの電圧および/または電流の変動に基づいて、または単位時間でのそれらの周波数変動に基づいて、すなわちこれら検出情報に基づいて、トルク検出回路(40)は、前記モータのトルク値を生成可能であり、該トルク値をプロセッサ(20)に供給する。
【0014】
高電圧保護回路(50)は、電圧検出回路(30)とプロセッサ(20)との間に接続されている。高電圧保護回路(50)は、電圧検出回路(30)からの検出電圧値を高参照電圧と比較する。検出電圧が前記高参照電圧より高いと、スイッチング回路(10)が前記プロセッサのコマンドを受けてオフ動作するように、高電圧保護回路(50)はプロセッサ(20)に信号を出力する。
【0015】
低電圧保護回路(60)は、電圧検出回路(30)とプロセッサ(20)との間に接続されている。低電圧保護回路(60)は、電圧検出回路(30)からの検出電圧を低参照電圧と比較する。検出電圧が前記低参照電圧よりも低いと、スイッチング回路(10)がプロセッサ(20)からのコマンド出力を受けてオフ動作するように、低電圧保護回路(60)はプロセッサ(20)に信号を出力する。
【0016】
トルク設定ユニット(70)は、プロセッサ(20)に接続されている。操作者は、トルク設定ユニット(70)により、プロセッサ(20)に初期設定トルクを設定することができる。
【0017】
表示器(80)は、操作者によって設定された初期設定トルクレベルを表示するために、プロセッサ(20)の出力端子に接続されている。
【0018】
図2を参照するに、スイッチング回路(10)は、駆動トランジスタ(11)と、スイッチングトランジスタ(12)とを含む。駆動トランジスタ(11)は、ベース、コレクタおよびエミッタを備えるバイポーラ接合トランジスタ(BJT)から成る。スイッチングトランジスタ(12)は、ゲートと、ソースと、ドレインとを備えるMOSFET(MOS電界効果トランジスタ)である。駆動トランジスタ(11)の前記ベースは、抵抗Rを経てプロセッサ(20)に接続され、その前記コレクタはスイッチングトランジスタ(12)の前記ゲートに接続されている。スイッチングトランジスタ(12)の前記ドレインおよびソースは、前記直流電源および前記モータにそれぞれ接続されている。プロセッサ(20)が駆動トランジスタ(11)を駆動させるための高い電圧レベルの信号を出力すると、スイッチングトランジスタ(12)は続いてオン動作し、これにより前記直流電源電力の前記モータへの供給が許される。これとは異なり、駆動トランジスタ(11)が非作動状態におかれると、スイッチングトランジスタ(12)はしたがってオフ動作し、これにより前記電力の前記モータへの供給が停止する。
【0019】
電圧検出回路(30)は、直列に接続された2つの抵抗R1、R2を備える分圧回路から成る。抵抗R1の一端は、前記直流電源およびスイッチング回路(10)に接続されている。抵抗R2が接続された抵抗R1の他端は、高電圧保護回路(50)に結合されている。
【0020】
トルク検出回路(40)は、演算増幅器U2Bと、抵抗R3およびコンデンサC1で形成されたRC回路とを含む。前記演算増幅器はバッファとして構成されており、該演算増幅器の反転入力端子および出力端子は、負の帰還回路を構成すべく相互に接続されている。
【0021】
高電圧保護回路(50)は比較器として機能する演算増幅器U1Bにより形成されている。前記比較器は、高参照電圧および電圧検出回路(30)にそれぞれが結合された非反転入力端子および反転入力端子を備える。電圧検出回路(30)の出力電圧が前記高参照電圧を超えると、前記比較器は、プロセッサ(20)に通知するために低レベルの信号を出力する。プロセッサ(20)は、続いて、損傷の危険を回避するためにスイッチング回路(10)をオフ動作させる。
【0022】
低電圧保護回路(60)は、また、比較器として機能する演算増幅器U3Bにより形成されている。前記比較器は、電圧検出回路(30)および低参照電圧にそれぞれが結合された非反転入力端子および反転入力端子を備える。電圧検出回路(30)の出力電圧が前記低参照電圧より低いと、前記比較器は、プロセッサ(20)に通知するために低レベル信号を出力する。プロセッサ(20)は、続いて、スイッチング回路(10)をオフ動作させる。
【0023】
トルク設定ユニット(70)は、複数のノードを有するスイッチ(71)と、トルク設定回路(72)とを含む。トルク設定回路(72)は複数の抵抗体で形成されている。スイッチ(71)の一つのノードが選択されると、該ノードに対応するプロセッサ(20)のそれぞれの入力端子には、電圧が表われる。プロセッサ(20)は表われた電圧に照らしてトルク値を決定する。
【0024】
表示器(80)は、好ましくは、プロセッサ(20)に接続された多数の入力端子を有する7−セグメント表示要素である。
【0025】
図3を参照するに、第2の実施例は、図2の第1の実施例と実質的に同様である。この実施例の変更はトルク設定ユニット(70′)に向けられている。トルク設定ユニット(70′)は、加減抵抗器(73)およびトルク設定回路(72′)を含み、トルク設定回路(72′)は抵抗R6、コンデンサC2および演算増幅器U4Bから成る。演算増幅器U4Bはバッファを形成するように構成されている。
【0026】
前記トルク検出回路を伴う前記電圧検出回路は、前記モータおよび前記直流電源間の電圧および/または電流変動情報あるいは単位時間での前記電圧および/または電流の周波数変動によって、前記モータの瞬時のトルク値を得ることができる。前記プロセッサは、前記モータを停止させるべきか否かを決定するために、さらに、前記トルク値を初期設定トルクと比較する。前記モータのトルク値が前記初期設定値を超えていると、前記モータへの電力の供給を中断する。前記したように、前記初期設定値は、トルク設定ユニットにより、正確に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るトルク制御装置のブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る前記トルク制御装置の回路図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係るトルク制御装置の回路図である。
【符号の説明】
【0028】
10、10′ スイッチング回路
11、11′ 駆動トランジスタ
12、12′ スイッチングトランジスタ
20、20′ プロセッサ
30、30′ 電圧検出回路
40、40′ トルク検出回路
50、50′ 高電圧保護回路
60、60′ 低電圧保護回路
70、70′ トルク設定ユニット
80、80′ 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源で作動するモータを有する電動工具のためのトルク制御装置であって、
前記モータと前記直流電源との間に接続されたスイッチング回路と、
該スイッチング回路を開閉すべく前記スイッチング回路に接続された出力端子を有するプロセッサと、
前記モータの電圧変動情報を検知するために該モータと前記直流電源との間に接続された入力端子を有する電圧検出回路と、
該電圧検出回路と前記プロセッサとの間に接続され、前記電圧変動情報に基づいてモータトルク値を生成し該モータトルク値を前記プロセッサへ出力するトルク検出回路と、
前記プロセッサに接続され、該プロセッサにトルク初期値を設定するトルク設定ユニットとを含む、トルク制御装置。
【請求項2】
前記スイッチング回路は、駆動トランジスタと、スイッチングトランジスタとを備え、前記駆動トランジスタはベース、コレクタおよびエミッタを有し、前記スイッチングトランジスタは、ゲート、ソースおよびドレインを有し、前記ベースは抵抗を経て前記プロセッサに接続され、前記コレクタは前記スイッチングトランジスタの前記ゲートに接続され、前記スイッチングトランジスタの前記ドレインおよびソースは前記直流電源および前記モータにそれぞれ接続され、
前記電圧検出回路は、直列接続された2つの抵抗R1、R2を備える分圧回路を含み、前記抵抗R1の第1の端子は前記直流電源および前記スイッチング回路に接続され、前記抵抗R2が接続された前記抵抗R1の第2の端子は高電圧保護回路に接続され、
前記トルク検出ユニットは、第1の演算増幅器と第1のRC回路とを含み、前記第1の演算増幅器はバッファとして機能する、請求項1に記載のトルク制御装置。
【請求項3】
さらに、2つの入力端子と1つの出力端子を有する第2の演算増幅器であってその一方の前記入力端子が前記電圧検出回路に接続され、その他方の前記入力端子に高参照電圧を受け、その前記出力端子が前記プロセッサに接続された第2の演算増幅器を備え、前記電圧検出回路と前記プロセッサとの間に接続された高電圧保護回路と、
2つの入力端子と1つの出力端子を有する第3の演算増幅器であってその一方の前記入力端子が前記電圧検出回路に接続され、その他方の前記入力端子に低参照電圧を受け、その前記出力端子が前記プロセッサに接続された第3の演算増幅器を備え、前記電圧検出回路と前記プロセッサとの間に接続された低電圧保護回路と、
前記プロセッサに接続された初期設定トルクを示すための表示器とを含む、請求項1または2に記載のトルク制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−49820(P2007−49820A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231622(P2005−231622)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(500268742)朝程工業股▲ふん▼有限公司 (5)
【Fターム(参考)】