説明

電動機およびそれを搭載した電気機器

【課題】圧力損失など静圧が変化しても風量の変化量が極めて少ない高精度な風量−静圧特性を実現した上で、湿度の変化に応じて、湿度が高い場合は送風量を多くできる送風装置を実現できる電動機の提供を目的としている。
【解決手段】磁石回転子3の磁極部3aをポリアミド6樹脂にて形成することで、同一分子長においてアミド基が多いために、アミド基と水素結合する水分子が、さらに湿度が高い領域では周囲の水分子を引きつけ、水分子−水分子の水素結合を形成して膨潤するため、磁石回転子3の磁極部3aの外径は大きくなり、エアーギャップ18は小さくなることとなり、駆動コイル2に誘起される誘起電圧は高くなり、駆動コイル2に供給する電流が同一であれば、誘起電圧が高くなった分、軸トルクは高くなる電動機とすることができるので、常湿時に対して高湿時には換気風量が増加する風量−静圧特性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にレンジフードや天井埋め込み型等の排気用および給気用の換気装置や、加湿機、除湿機、冷凍機器、空気調和機、給湯機、ファンフィルタユニットなどに搭載する電動機およびその電動機を搭載した電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、換気装置等の電気機器に搭載する電動機においては、低価格化、高効率化、静音化をした上で、ダクト配管形態による圧力損失や外風圧、フィルタ等の目詰まりによる圧力損失の変化の影響を受けることなく、居室の状況に応じて最適な風量で換気ができるような制御性の良い電動機が求められている。
【0003】
従来、この種の電動機は、特許文献1に開示された構成のものが知られている。
【0004】
以下、その送風装置について図8を参照しながら説明する。
【0005】
図に示すように、電動機130は駆動ロジック制御手段134とインバータ回路106にて駆動制御され、駆動ロジック制御手段134にはインバータ回路106の下段側スイッチング素子をPWM制御するPWM制御手段132を内蔵し、インバータ回路106には低圧直流電圧変換手段135から出力される定電圧が印加され、デューティ指示電圧生成手段131は低圧直流電圧変換手段135から出力される定電圧を減圧してPWM制御手段132のON/OFFデューティを制御し、デューティ指示電圧生成手段131の生成電圧とインバータ回路106に流れる電流の相関が、デューティ指示電圧生成手段131の生成電圧が高くなるにしたがい、インバータ回路106に流れる電流が線形的に増加するよう制御する指示電流値変更手段117、電流値指示手段119、供給電流値制御手段122、電流検出手段121を備えた構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−149048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の電動機によれば、快適な室内空気質の実現の観点から、室内の湿度に応じて、湿度が低い場合に対して湿度が高い場合は一定風量であっても送風量を増やすことが要望される換気装置等に搭載した場合、湿度が低い場合の送風量と、湿度が高い場合の送風量を変更できないという課題があり、必要とする回路スペースを大きくすることなく、特別なセンサや、マイクロコンピュータを用いることなく、風量−静圧特性や、複数の風量設定などの仕様調整を容易にでき、湿度の変化に応じて送風量を制御できることが要求されている。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、仕様調整の簡素化、回路の小型化、高品質化、圧力損失など静圧が変化しても風量の変化量が極めて少ない高精度な風量−静圧特性を実現した上で、湿度の変化に応じて、湿度が高い場合は送風量を多くできる電動機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために、本発明は、駆動コイルを巻装した固定子にエアーギャップを介して回転自在に配置された磁石回転子にて構成され、この磁石回転子の磁極部を水素結合により膨潤するプラスチックマグネットにて形成させ、インバータ回路は上段と下段からなり、それぞれ複数のスイッチング素子でブリッジ接続され、このインバータ回路に印加される直流電圧を前記スイッチング素子の上段または下段をPWM制御するとともに、前記駆動コイルに所定の方向と順序で順次全波通電するための駆動ロジック制御手段と、前記スイッチング素子をPWM制御する時のON/OFFデューティを指示する指示電圧とするデューティ指示電圧生成手段と、このデューティ指示電圧生成手段の出力を変更することにより前記スイッチング素子のPWM制御のON/OFFデューティを可変して前記インバータ回路に供給する平均電流を略一定に制御する供給電流値制御手段と、この供給電流値制御手段によって略一定に制御する平均電流値を指示する電流値指示手段と、この電流値指示手段には前記デューティ指示電圧生成手段にて生成した直流電圧の電圧値に応じて、前記電流値指示手段によって指示する平均電流値との相関関係を指示する相関関係指示手段を配し、この相関関係指示手段は前記基準電流値指示手段にて指示された基準電流値に対して線形あるいは非線形的に変化させて前記電流値指示手段によって指示する平均電流値を決定し、前記磁石回転子の前記磁石は基準湿度よりも高湿になることで、吸湿によって膨潤することにより、前記エアーギャップが小さくなることを特徴とする電動機としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動コイルを巻装した固定子にエアーギャップを介して回転自在に配置された磁石回転子にて構成され、この磁石回転子の磁極部を水素結合により膨潤するプラスチックマグネットにて形成させ、インバータ回路は上段と下段からなり、それぞれ複数のスイッチング素子でブリッジ接続され、このインバータ回路に印加される直流電圧を前記スイッチング素子の上段または下段をPWM制御するとともに、前記駆動コイルに所定の方向と順序で順次全波通電するための駆動ロジック制御手段と、前記スイッチング素子をPWM制御する時のON/OFFデューティを指示する指示電圧とするデューティ指示電圧生成手段と、このデューティ指示電圧生成手段の出力を変更することにより前記スイッチング素子のPWM制御のON/OFFデューティを可変して前記インバータ回路に供給する平均電流を前記略一定に制御する供給電流値制御手段と、この供給電流値制御手段によって略一定に制御する平均電流値を指示する電流値指示手段と、この電流値指示手段には前記デューティ指示電圧生成手段にて生成した直流電圧の電圧値に応じて、前記電流値指示手段によって指示する平均電流値との相関関係を指示する相関関係指示手段を配し、この相関関係指示手段は前記基準電流値指示手段にて指示された基準電流値に対して線形あるいは非線形的に変化させて前記電流値指示手段によって指示する平均電流値を決定し、前記磁石回転子の前記磁石は基準湿度よりも高湿になることで、吸湿によって膨潤することにより、前記エアーギャップが小さくなることを特徴とする電動機の構成にしたことにより、回転数が上昇するにしたがって軸トルクが一段と大きくなる電動機の回転数−トルク特性は、基準湿度よりも高湿になることで、吸湿によって膨潤することにより、エアーギャップが小さくなり、駆動コイルに誘起される誘起電圧が高くなるため、同一回転数での軸トルクは高くなるので、マイクロコンピュータや湿度センサなどの特別なセンサを使用することなく、風量一定制御における風量の増加を実現できる電動機および電気機器が提供できるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における電動機を示すブロック図
【図2】同電動機を示す断面図
【図3】同電動機のデューティ指示電圧−電流特性の一例を示すグラフ
【図4】同電動機の回転数−トルク特性の一例を示すグラフ
【図5】同電動機を搭載した換気装置の風量−静圧特性の一例を示すグラフ
【図6】同電動機を搭載した換気装置の一例を示す三面図
【図7】本発明の実施の形態2における電動機を示すブロック図
【図8】従来の電動機を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の請求項1記載の電動機は、駆動コイルを巻装した固定子にエアーギャップを介して回転自在に配置された磁石回転子にて構成され、この磁石回転子の磁極部を水素結合により膨潤するプラスチックマグネットにて形成させ、インバータ回路は上段と下段からなり、それぞれ複数のスイッチング素子でブリッジ接続され、このインバータ回路に印加される直流電圧を前記スイッチング素子の上段または下段をPWM制御するとともに、前記駆動コイルに所定の方向と順序で順次全波通電するための駆動ロジック制御手段と、前記スイッチング素子をPWM制御する時のON/OFFデューティを指示する指示電圧とするデューティ指示電圧生成手段と、このデューティ指示電圧生成手段の出力を変更することにより前記スイッチング素子のPWM制御のON/OFFデューティを可変して前記インバータ回路に供給する平均電流を略一定に制御する供給電流値制御手段と、この供給電流値制御手段によって略一定に制御する平均電流値を指示する電流値指示手段と、この電流値指示手段には前記デューティ指示電圧生成手段にて生成した直流電圧の電圧値に応じて、前記電流値指示手段によって指示する平均電流値との相関関係を指示する相関関係指示手段を配し、この相関関係指示手段は前記基準電流値指示手段にて指示された基準電流値に対して線形あるいは非線形的に変化させて前記電流値指示手段によって指示する平均電流値を決定し、前記磁石回転子の前記磁石は基準湿度よりも高湿になることで、吸湿によって膨潤することにより、前記エアーギャップが小さくなることを特徴とする電動機の構成を有する。これにより、回転数が上昇するにしたがって軸トルクが一段と大きくなる電動機の回転数−トルク特性は、基準湿度よりも高湿になることで、吸湿によって磁石回転子の磁極部が膨潤することにより、エアーギャップが小さくなり、駆動コイルに誘起される誘起電圧が高くなるため、同一回転数での軸トルクは高くなるので、マイクロコンピュータや、湿度センサなどの特別なセンサを使用することなく、風量一定制御における風量の増加を実現できるという効果を奏する。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1〜図6に示すように、10は電動機11を搭載した遠心型送風機10aを内蔵した送風装置で、外部電源に接続されている。1は送風装置10を内蔵した換気装置である。送風装置10によって吸い込まれた、煙草の煙や調理等で発生し、汚れた室内空気は換気装置1の吐出口、ダクト23を介して建物の壁を貫通して屋外に排出される。電動機11の磁石回転子3の磁極部3aはアミド基1個当たりのメチレン基数の少ないポリアミド6樹脂を主バインダとし、ブチルベンゼンスルホンアミドなどのエラストマ成分を補助バインダとするプラスチックマグネットを射出成形時に極配向させて形成している。そして、磁石回転子3と駆動コイル2を巻装した固定子19との間にエアーギャップ18を形成している。電動機11の外被は、炭酸カルシウムや水酸化アルミニウムやワラストナイトなどの充填材とガラス繊維を含有する不飽和ポリエステル等の樹脂でモールドされている。このモールド樹脂体には、磁石回転子3の磁極位置と磁束密度分布を検知する磁極位置検出手段となるホール素子4と、インバータ回路6と、駆動ロジック制御手段5と、PWM制御手段12と、電流波形制御手段7を内蔵している。インバータ回路6は、上段側スイッチング素子Q1、Q3、Q5と下段側スイッチング素子Q2、Q4、Q6をブリッジ接続したものである。駆動ロジック制御手段5は、ホール素子4の出力に基づいて供給される外部電源である直流電圧を駆動コイル2に印加し、所定の方向と順序で順次全波通電となるようスイッチング素子Q1〜Q6のON/OFFを制御する。PWM制御手段12は、下段側スイッチング素子Q2、Q4、Q6をPWM制御する。電流波形制御手段7は、駆動コイル2の各相電流波形がホール素子4の出力波形に略相似形になるように、下段側スイッチング素子Q2、Q4、Q6のON/OFFデューティを調整する。ここで、磁石回転子3の磁極部3aは極異方性磁石となっているため、駆動コイル2に誘起される誘起電圧は略正弦波状の波形となり、ホール素子4の検出波形も略正弦波状の波形となる。そして、電流波形制御手段7は駆動コイル2の各相電流波形が略正弦波状になるよう制御するので、インバータ回路6に供給される電流には非通電区間がなく、電流波形には急峻な変化が無くなるとともにリプルの発生が抑制されることとなる。そして、電動機11の外部には、インバータ回路6に供給される電流を検知する電流検出手段15と、PWM制御手段12のON/OFFデューティを指示するデューティ指示電圧生成手段14と、インバータ回路6に供給される基準電流値を設定する基準電流値指示手段16と、供給電流値制御手段17と、送風装置10の複数の運転風量を指示する風量指示手段20と、基準電流値指示変更手段21と、相関関係変更手段22とを設けている。デューティ指示電圧生成手段14は、外部電源より供給される直流電圧を減圧してPWM制御手段12のON/OFFデューティを指示する。基準電流値指示手段16は、デューティ指示電圧生成手段14にて生成した直流電圧の所定電圧時にインバータ回路6に供給される基準電流値を設定する。供給電流値制御手段17は、電流検出手段15にて検出するインバータ回路6に供給される平均電流値が電流値指示手段9にて指示された電流値と同等になるように、デューティ指示電圧生成手段14を制御することにより、PWM制御手段12のON/OFFデューティを可変しながらフィードバック制御する。相関関係指示手段13は、デューティ指示電圧生成手段14の出力電圧−電流特性が図3に示すような特性になるように、出力電圧の変化をフィードバックして、デューティ指示電圧生成手段14の出力する電圧値の大きさに応じて、インバータ回路6に供給する電流を基準電流値に対して線形変化(比例)させて電流値指示手段9に指示する。この時、インバータ回路6の耐圧とキックバック電圧を考慮した上でON/OFFデューティに上限を設け、電流を制御することなくON/OFFデューティ一定で運転する区間を設けている。相関関係指示手段13は接続する抵抗R1の抵抗値の大きさにより、基準電流値指示手段16にて指示された基準電流値に対して変化させる変化量を決定する。基準電流値指示手段16は接続する抵抗R2の抵抗値の大きさによって、デューティ指示電圧生成手段14にて生成した直流電圧の所定電圧時にインバータ回路6に供給される基準電流値を決定する。風量指示手段20はトルク特性変更手段24を制御することによって、基準電流値指示変更手段21により、基準電流値指示手段16に接続する抵抗R2の抵抗値を変更するとともに、相関関係変更手段22により、相関関係指示手段13に接続する抵抗R1の抵抗値を変更する構成である。
【0015】
このような本発明の送風装置10によれば、相関関係指示手段13がデューティ指示電圧生成手段14の出力する電圧値の大きさに応じて、インバータ回路6に供給する電流を基準電流値に対して線形変化させて電流値指示手段9に指示するので、回転数が高くなれば供給電流も大きくなり、逆に回転数が低くなれば供給電流も小さくなる。そのため、図4に示すように、電動機11の回転数−トルク特性は回転数が上昇するにしたがって軸トルクが大きくなる特性が得られることとなり、この特性によって、送風装置10を搭載する換気装置1では、図5に示すような外風圧やダクト長さなどの圧力損失が変化しても風量が大きく変化しない風量−静圧特性が得られる。そして、磁石回転子3の磁極部3aを形成するポリアミド6樹脂は、同一分子長においてアミド基が多く、アミド基と水素結合する水分子が、さらに湿度が高い領域では周囲の水分子を引きつけ、水分子−水分子の水素結合を形成して膨潤する。そのため、磁石回転子3の磁極部3aの外径は大きくなり、エアーギャップ18は小さくなることとなり、駆動コイル2に誘起される誘起電圧は高くなる。駆動コイル2に供給する電流が同一であれば、誘起電圧が高くなった分、軸トルクは高くなるので、図5に示す風量−静圧特性は、基準湿度時(常湿時)に対して高湿時には換気風量が増加する風量−静圧特性が得られる。
【0016】
また、相関関係指示手段13に接続する抵抗R1の抵抗値の大きさにより、基準電流値指示手段16にて指示された基準電流値に対して変化させる変化量を決定するため、電動機11の回転数−トルク特性における、回転数が上昇するにしたがって軸トルクが大きくなる度合いを変更することができる。そのため、換気装置1の機内抵抗の変更への対応のための仕様調整や、遠心型送風機10aの羽根径変更・ブレード枚数変更・ブレード仕様変更などによる負荷変更への対応のための仕様調整や、送風装置10の風量−静圧特性の調整ができることから、仕様調整に要する工数の大幅な削減ができるとともに、電動機11や主要制御回路の標準化を可能にできることとなる。
【0017】
また、基準電流値指示手段16に接続する抵抗R2の抵抗値の大きさにより、デューティ指示電圧生成手段14にて生成した直流電圧の所定電圧時にインバータ回路6に供給される基準電流値を決定する。そのため、換気装置1の機内抵抗の変更への対応のための仕様調整や、換気装置1の風量−静圧特性における風量の調整ができることから、仕様調整に要する工数の大幅な削減ができるとともに、電動機や主要制御回路の標準化を可能にできることとなる。
【0018】
また、風量指示手段20の指示状態によって、基準電流値指示手段16に接続する抵抗R2の抵抗値を変更するため、風量指示手段20の風量指示に応じた風量調整が容易にできる。従って、換気装置1を設置する居室などの要求される必要風量に応じて抵抗R2のみの調整で可能となるので、仕様調整に要する工数の大幅な削減ができるとともに、電動機や主要制御回路の標準化を可能にできることとなる。
【0019】
また、風量指示手段20の指示状態によって、相関関係変更手段22は、相関関係指示手段13に接続する抵抗R1の抵抗値を変更するため、送風装置10が要求される風量−静圧特性に応じた風量特性が容易にできる。従って、換気装置1を設置する居室などの要求される必要風量に応じて抵抗R1のみの調整で可能となるので、仕様調整に要する工数の大幅な削減ができるとともに、電動機や主要制御回路の標準化を可能にできることとなる。
【0020】
また、駆動ロジック制御手段5は駆動コイル2に非通電区間がない電流を供給するため、インバータ回路に供給される電流のリプルが大幅に減少し、電流検出手段15による電流検出精度の高精度化による風量精度の高精度化と、モータのトルクリプル低減による低振動化を実現した送風装置10および換気装置1を可能にできることとなる。
【0021】
また、ホール素子4の検知する波形が極異方性磁石によって駆動コイル2に誘起される誘起電圧波形と略相似となるようにホール素子4と磁石の空隙を設定して配置し、電流波形制御手段7はホール素子4が検知した磁束密度分布波形に略相似形の電流を駆動コイル2に流すことにより、誘起電圧波形と電流波形が略相似となる。従って、トルクリプルおよびトルク変化率を一層低く抑えることができるとともに、モータ効率が大幅に向上するため、低騒音化、高効率化を実現した送風装置10および換気装置1が得られる。
【0022】
また、磁石回転子3の磁極部を極異方性磁石とすることにより、誘起電圧波形も電流波形もともに正弦波となることから、トルクリプルおよびトルク変化率をより一層低く抑えることができるとともに、モータ効率も大幅に向上するので、静音化、高効率化を実現した送風装置10および換気装置1が得られる。
【0023】
なお、本実施の形態1では相関関係指示手段13がデューティ指示電圧生成手段14の出力する電圧値の大きさに応じて、インバータ回路6に供給する電流を基準設定値に対して線形変化させて指示する構成としたが、非線形変化(高次式比例)させる構成でも良く、ファン負荷などの負荷量から、回転数−トルク特性の特性カーブの最適な傾きとなるように適宜設定することによって同様の作用効果を得ることができる。
【0024】
また、本実施の形態1では駆動コイル2に供給される電流波形を、誘起電圧波形に略相似形となるように構成したが、用途、商品の要求される風量精度や騒音レベルに応じて、120度矩形波通電や、140度、150度通電のように広角通電方式や、二相変調による正弦波駆動方式としても良く、モータの回転数−トルク特性は回転数が上昇するにしたがって軸トルクが大きくなる特性が得られることに差異は生じない。
【0025】
また、本実施の形態1では磁束密度分布検知手段としてホール素子4を用いた構成としたが、非通電相に誘起される誘起電圧や、電流を検知して磁石回転子に対する通電位相を決めるセンサレス方式や、ホールICなどの磁石のN極、S極を判断して磁石回転子の磁極位置を検知する磁極位置検出手段を用いる方式としても良く、その作用効果に差異を生じない。
【0026】
また、本実施の形態1では、換気装置1には外部電源より直流電圧を入力する構成としたが、商用の交流電圧を入力し、整流平滑してから所定の直流電圧を生成してから駆動コイル2に供給する構成としても良く、その作用効果に差異を生じない。
【0027】
また、本実施の形態1では、換気装置1に供給される外部電源からの直流電圧を駆動コイル2に印加する構成としたが、昇降圧コンバータを介して駆動コイル2に印加する構成としても良く、その作用効果に差異を生じない。
【0028】
また、本実施の形態1では、風量指示手段20の指示状態によって、トルク特性変更手段24が基準電流値指示変更手段21により、基準電流値指示手段16に接続する抵抗R2の抵抗値を変更するとともに、相関関係変更手段22により、相関関係指示手段13に接続する抵抗R1の抵抗値を変更制御する構成としたが、基準電流値指示変更手段21もしくは相関関係変更手段22のどちらかのみを制御する構成としてもよく、その作用効果に差異を生じない。
【0029】
(実施の形態2)
図7に示すように、25は商用交流電源を接続する交流電源接続手段で、強出力接続端子25a、弱出力接続端子25b、共通接続端子25cより成り、実施の形態1と同一部分には同一番号を付して詳細な説明は省略する。26は外部スイッチで、強出力接続端子25aまたは弱出力接続端子25bのどちらかに接続する構成で、入力された商用交流電源は整流手段27および平滑手段28にて整流平滑され、降圧型のチョッパ回路にて形成した直流電圧変換手段8にて生成された所定の直流電圧はインバータ回路6に印加される。29は風量指示手段であって、外部スイッチ26が強出力接続端子25aまたは弱出力接続端子25bのどちらに接続されているのかを検知し、トルク特性変更手段24が風量指示手段29の出力信号を受けて、基準電流値指示変更手段21と、相関関係変更手段22へ信号を送る。その他の送風装置10を構成する電動機11、インバータ回路6、駆動ロジック制御手段5、電流検出手段15、基準電流値指示手段16、相関関係指示手段13などの構成は実施の形態1と同じである。
【0030】
このような本発明の送風装置10によれば、交流電源接続手段25において、強出力接続端子25aと弱出力接続端子25bのように2箇所設け、風量指示手段29が強出力接続端子25aに接続されているのか、弱出力接続端子25bに接続されているのかを検知し、その結果に基づいて風量指示手段29がトルク特性変更手段24に基準電流値指示変更手段21を制御して基準電流値指示手段16に接続する抵抗R2の抵抗値を変更する指示をするため、インバータ回路6に供給する電流の基準設定値が変更されることにより、2段階の風量が得られるので、交流電源ラインの接続切り替えによる速度調節が可能な送風装置が得られる。ここで、交流電源接続手段25において、その接続端子の数量に応じて、風量指示手段29の指示により、トルク特性変更手段24が基準設定値を変更すれば、接続端子の数だけ常湿時に対して高湿時には換気風量が増加する風量−静圧特性が得られることとなる。
【0031】
また、風量指示手段29が相関関係変更手段22を制御して相関関係指示手段13に接続する抵抗R1の抵抗値を変更するため、交流電源ラインの接続切り替えによる風量−静圧特性の変更が容易にできる送風装置10が得られる。ここで、交流電源接続手段25において、その接続端子の数量に応じて、風量指示手段29の指示により、トルク特性変更手段24が相関関係を変更すれば、接続端子の数だけ常湿時に対して高湿時には換気風量が増加する風量−静圧特性が得られることとなる。
【0032】
また、実施の形態1および実施の形態2に示した構成と同様の構成における作用効果に差異は生じない。
【0033】
なお、風量指示手段29の指示により、トルク特性変更手段24が基準電流値指示変更手段21により、基準電流値指示手段16に接続する抵抗R2の抵抗値を変更するとともに、相関関係変更手段22により、相関関係指示手段13に接続する抵抗R1の抵抗値を変更制御する構成としたが、基準電流値指示変更手段21もしくは相関関係変更手段22のどちらかのみを制御する構成としてもよく、その作用効果に差異を生じない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明にかかる電動機は、回転数が上昇するにしたがい、トルクが上昇するとともに、高湿度になることによって、トルクが増加するので、圧力損失の影響を受けることなく、風量−静圧特性において、静圧に関係なく風量一定の特性が得られ、高湿度時は風量が増加することが要求される電気機器である換気装置、給湯機、エアコンなどの空気調和機、空気清浄機、除湿機、乾燥機、ファンフィルタユニット、冷却ユニットなどへの搭載が有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 換気装置
2 駆動コイル
3 磁石回転子
3a 磁極部
4 ホール素子
5 駆動ロジック制御手段
6 インバータ回路
7 電流波形制御手段
8 直流電圧変換手段
9 電流値指示手段
10 送風装置
10a 遠心型送風機
11 電動機
12 PWM制御手段
13 相関関係指示手段
14 デューティ指示電圧生成手段
15 電流検出手段
16 基準電流値指示手段
17 供給電流値制御手段
18 エアーギャップ
19 固定子
20 風量指示手段
21 基準電流値指示変更手段
22 相関関係変更手段
23 ダクト
24 トルク特性変更手段
25 交流電源接続手段
25a 強出力接続端子
25b 弱出力接続端子
25c 共通接続端子
26 外部スイッチ
27 整流手段
28 平滑手段
29 風量指示手段
Q1 上段側スイッチング素子
Q2 下段側スイッチング素子
Q3 上段側スイッチング素子
Q4 下段側スイッチング素子
Q5 上段側スイッチング素子
Q6 下段側スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動コイルを巻装した固定子にエアーギャップを介して回転自在に配置された磁石回転子にて構成され、この磁石回転子の磁極部を水素結合により膨潤するプラスチックマグネットにて形成させ、インバータ回路は上段と下段からなり、それぞれ複数のスイッチング素子でブリッジ接続され、このインバータ回路に印加される直流電圧を前記スイッチング素子の上段または下段をPWM制御するとともに、前記駆動コイルに所定の方向と順序で順次全波通電するための駆動ロジック制御手段と、前記スイッチング素子をPWM制御する時のON/OFFデューティを指示する指示電圧とするデューティ指示電圧生成手段と、このデューティ指示電圧生成手段の出力を変更することにより前記スイッチング素子のPWM制御のON/OFFデューティを可変して前記インバータ回路に供給する平均電流を前記略一定に制御する供給電流値制御手段と、この供給電流値制御手段によって略一定に制御する平均電流値を指示する電流値指示手段と、この電流値指示手段には前記デューティ指示電圧生成手段にて生成した直流電圧の電圧値に応じて、前記電流値指示手段によって指示する平均電流値との相関関係を指示する相関関係指示手段を配し、この相関関係指示手段は前記基準電流値指示手段にて指示された基準電流値に対して線形あるいは非線形的に変化させて前記電流値指示手段によって指示する平均電流値を決定し、前記磁石回転子の前記磁石は基準湿度よりも高湿になることで、吸湿によって膨潤することにより、前記エアーギャップが小さくなることを特徴とする電動機。
【請求項2】
複数のトルク特性を指示するとともに、前記基準電流値指示変更手段を制御するトルク特性変更手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の電動機。
【請求項3】
前記トルク特性変更手段は、前記相関関係変更手段を制御することを特徴とする請求項2記載の電動機。
【請求項4】
交流電源を接続する交流電源接続手段を複数設け、この交流電源接続手段への接続箇所に応じて、前記トルク特性変更手段によってトルク特性を変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電動機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電動機を搭載した電気機器。
【請求項6】
請求項5記載の電気機器は換気装置、除湿機、加湿機、空気調和機、給湯機、ファンフィルタユニット、冷却ユニットのいずれかであることを特徴とする電気機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−200115(P2012−200115A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63828(P2011−63828)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】