説明

電動機の制御装置

【課題】電動機の状態に係るパラメータの補正、又は、電動機若しくは電動機に係るパラメータを検出する手段の状態の判定を高精度に行うことができる電動機の制御装置を提供すること。
【解決手段】制御装置は、互いの回転子が動力伝達可能に接続される2つの電動機と、回転子の回転状態に伴い変化する、電動機の状態又は電動機に付属する補機の状態を検出する状態検出部と、2つの電動機の各動作を制御する制御部とを備える。制御部は、2つの電動機の一方の電動機である第1の電動機を駆動制御し、第1の電動機が駆動することで2つの電動機の他方の電動機である第2の電動機が回転動作しているときに状態検出部が検出した、第2の電動機の状態又は第2の電動機に付属する補機の状態に基づいて、第2の電動機の状態に係るパラメータの補正、又は、第2の電動機の状態若しくは第2の電動機に付属する補機の状態を検出する状態検出部の状態の判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の状態に係るパラメータを高精度に補正又は検出する電動機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図13は、特許文献1における車両の制御装置を搭載したハイブリッド車両を示すブロック図である。図13に示したハイブリッド車両は、発進時や低速走行時等であってエンジン120の効率が悪い場合には、モータジェネレータ140のモータ140Aのみにより走行を行ない、通常走行時には、たとえば動力分割機構200によりエンジン120の動力を2経路に分け、一方で駆動輪160の直接駆動を行ない、他方でジェネレータ140Bを駆動して発電を行なう。この時、発生する電力でモータ140Aを駆動して駆動輪160の駆動補助を行なう。また、高速走行時には、さらに走行用バッテリ220からの電力をモータ140Aに供給してモータ140Aの出力を増大させて駆動輪160に対して駆動力の追加を行なう。
【0003】
当該ハイブリッド車両に搭載された制御装置では、モータジェネレータ140のロータ位置を検出するレゾルバの出力値のオフセットを推定するために、HV_ECU320及びMG_ECU300がモータジェネレータ140を無負荷運転させる。但し、HV_ECU320及びMG_ECU300は、モータジェネレータ140に負荷をかけなくてもハイブリッド車両100の状態が変化しないという条件(所定の条件)が成立したときに、モータジェネレータ140を無負荷運転させる。これにより、車両挙動に影響を与えることなくレゾルバの出力値を補正することが可能になる。
【0004】
特許文献2に開示されている駆動装置は、左右2つの電動機で左右変速機の一要素同士が連結され、左右2つの電動機にそれぞれレゾルバが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−244071号公報
【特許文献2】特開2010−235051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記説明した特許文献1における制御装置において、レゾルバの出力値のオフセットを推定して補正するためには、当該レゾルバに対応するモータジェネレータが無負荷状態で動作していることが条件である。但し、レゾルバの出力値の補正を高精度に行うための条件は限られる。
【0007】
ハイブリッド車両100が停車時又はEV走行時には、駆動源として使用されていないモータジェネレータをエンジン120の出力によって無負荷運転させる。モータジェネレータの回転数が低いとレゾルバの出力値のオフセット推定値の誤差の割合が大きくなるため、無負荷運転時のモータジェネレータの回転数は高い方が望ましい。しかし、エンジン120が高回転数で安定するまでには時間を要する。また、エンジン120の回転数には揺らぎが発生する。
【0008】
また、ハイブリッド車両100が加速走行時には、自動変速機がNレンジ状態(アクセルペダルがオフになってからしばらくの間、車両が速度を落とさずに惰性走行を行うことができる状態)に設定されているときに限ってモータジェネレータを無負荷運転させる。このとき、モータジェネレータの回転数が高ければ、ゼロトルク制御を行ってインバータ240を制御する。また、モータジェネレータの回転数が低ければ、インバータ240からモータジェネレータへの電流供給を遮断する。このように、自動変速機がNレンジ状態に設定されているときに限ってモータジェネレータを無負荷運転できるといった制約があり、かつ、モータジェネレータの回転数に応じて複雑な制御が必要である。
【0009】
本発明の目的は、電動機の状態に係るパラメータの補正、又は、電動機若しくは当該電動機に係るパラメータを検出する手段の状態の判定を高精度に行うことができる電動機の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の発明の制御装置は、互いの回転子(例えば、実施の形態でのロータ15A、15B)が動力伝達可能に接続される2つの電動機(例えば、実施の形態での電動機2A、2B)と、前記回転子の回転状態に伴い変化する、前記電動機の状態又は前記電動機に付属する補機の状態を検出する状態検出部(例えば、実施の形態でのレゾルバ20A、20B)と、前記2つの電動機の各動作を制御する制御部(例えば、実施の形態でのマネジメントECU9及びモータECU9A、9B)と、を備えた前記電動機の制御装置であって、前記制御部は、前記2つの電動機の一方の電動機である第1の電動機を駆動制御し、前記第1の電動機が駆動することで前記2つの電動機の他方の電動機である第2の電動機が回転動作しているときに前記状態検出部が検出した、前記第2の電動機の状態又は前記第2の電動機に付属する補機の状態に基づいて、前記第2の電動機の状態に係るパラメータの補正(例えば、実施の形態での零点補正)、前記第2の電動機の状態の判定(例えば、実施の形態での故障検知の処理又は経時変化に基づく処理)、前記第2の電動機に付属する補機の状態の判定(例えば、実施の形態での故障検知の処理又は経時変化に基づく処理)、又は、前記第2の電動機の状態を検出する状態検出部の状態の判定(例えば、実施の形態での故障検知の処理又は経時変化に基づく処理)を行うことを特徴としている。
【0011】
さらに、請求項2に記載の発明の制御装置では、前記2つの電動機の各回転子が動力伝達可能にそれぞれ接続された車両の車輪と前記2つの電動機との間の動力伝達経路上に設けられ、前記電動機からの順方向の回転動力を前記車輪に伝達し、前記電動機からの前記順方向の回転動力とは逆方向の回転動力は前記車輪に伝達しない一方向動力伝達部(例えば、実施の形態での一方向クラッチ50)を備え、前記制御部は、前記順方向の回転動力とは逆方向の回転動力を出力するよう前記第1の電動機を駆動制御することを特徴としている。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明の制御装置では、前記車輪と前記2つの電動機との間の動力伝達経路上に動力伝達断接部(例えば、実施の形態での油圧ブレーキ60A、60B)を備え、前記制御部は、前記動力伝達断接部が解放状態のときに、前記第1の電動機を駆動制御することを特徴としている。
【0013】
さらに、請求項4に記載の発明の制御装置では、前記2つの電動機の各回転子を接続する動力伝達経路上に設けられた断接部を備え、前記制御部は、前記断接部が締結された状態で、前記第1の電動機を駆動制御することを特徴としている。
【0014】
さらに、請求項5に記載の発明の制御装置では、前記第1の電動機と動力伝達可能に連結される第1遊星歯車式変速機(例えば、実施の形態での遊星歯車式減速機12A)と、前記第2の電動機と動力伝達可能に連結される第2遊星歯車式変速機(例えば、実施の形態での遊星歯車式減速機12B)と、をさらに備え、前記第1の電動機の回転子及び前記第2の電動機の回転子は、前記第1遊星歯車式変速機及び前記第2遊星歯車式変速機のサンギヤ及びリングギヤの何れか一方に接続され、前記第1遊星歯車式変速機及び前記第2遊星歯車式変速機のサンギヤ及びリングギヤの前記回転子が接続されていない他方同士は、互いに連結され、前記第1遊星歯車式変速機及び前記第2遊星歯車式変速機のキャリアには、車両の車輪が接続されることを特徴としている。
【0015】
さらに、請求項6に記載の発明の制御装置では、前記第1の電動機及び前記第2の電動機の各回転子が動力伝達可能にそれぞれ接続された前記車両の車輪と前記第1の電動機及び前記第2の電動機との間の動力伝達経路上に設けられ、前記第1の電動機及び前記第2の電動機からの順方向の回転動力を前記車輪に伝達し、前記第1の電動機及び前記第2の電動機からの前記順方向の回転動力とは逆方向の回転動力は前記車輪に伝達しない一方向動力伝達部(例えば、実施の形態での一方向クラッチ50)を備え、前記制御部は、前記順方向の回転動力とは逆方向の回転動力を出力するよう前記第1の電動機を駆動制御することを特徴としている。
【0016】
さらに、請求項7に記載の発明の制御装置では、前記車輪と前記第1の電動機及び前記第2の電動機との間の動力伝達経路上に動力伝達断接部(例えば、実施の形態での油圧ブレーキ60A、60B)を備え、前記制御部は、前記動力伝達断接部が解放状態のときに、前記第1の電動機を駆動制御することを特徴としている。
【0017】
さらに、請求項8に記載の発明の制御装置では、前記第1変速機及び前記第2変速機の各キャリアの回転数を検出する回転数検出部(例えば、実施の形態での回転数センサ117a、117b)を備え、前記回転数検出部が検出した各キャリアの回転数が等しいとき、前記制御部は、前記第1の電動機を駆動制御することを特徴としている。
【0018】
さらに、請求項9に記載の発明の制御装置では、前記回転数検出部が検出した各キャリアの回転数が0のとき、前記制御部は、前記第1の電動機を駆動制御することを特徴としている。
【0019】
さらに、請求項10に記載の発明の制御装置では、前記状態検出部は、前記第2の電動機の回転状態を検出し、前記制御部は、前記状態検出部が検出した前記第2の電動機の回転状態に基づいて、前記第2の電動機の状態に係るパラメータを補正することを特徴としている。
【0020】
さらに、請求項11に記載の発明の制御装置では、前記状態検出部は、前記第2の電動機の回転状態を検出し、前記制御部は、前記状態検出部が検出した前記第2の電動機の回転状態に基づいて、前記第2の電動機、前記第2の電動機に付属する補機又は前記状態検出部の状態を判定することを特徴としている。
【0021】
さらに、請求項12に記載の発明の制御装置では、前記状態検出部は磁極位置検出器(例えば、実施の形態でのレゾルバ20A、20B)であることを特徴としている。
【0022】
さらに、請求項13に記載の発明の制御装置では、前記状態検出部は、前記第2の電動機を構成する永久磁石の減磁を検出することを特徴としている。
【0023】
さらに、請求項14に記載の発明の制御装置では、前記状態検出部は、前記第2の電動機を構成する巻線の配線間違いを検出することを特徴としている。
【0024】
さらに、請求項15に記載の発明の制御装置では、前記状態検出部は、前記第2の電動機を構成する巻線に対する補機の配置間違いを検出することを特徴としている。
【0025】
さらに、請求項16に記載の発明の制御装置では、前記制御部は、前記第1の電動機を駆動制御した際に逆起電力によって発生する電圧が、前記第2の電動機と電気的に接続される電力源の許容電圧を超えない範囲で前記第2の電動機を駆動制御することを特徴としている。
【0026】
さらに、請求項17に記載の発明の制御装置では、前記制御部は、前記第1の電動機を駆動制御して、前記第2の電動機の状態に係るパラメータの補正、又は、前記第2の電動機の状態若しくは前記第2の電動機に付属する補機の状態を検出する状態検出部の状態の判定を行った後、前記第2の電動機を駆動制御して、前記第2の電動機が駆動することで前記第1の電動機が回転動作しているときに前記状態検出部が検出した、前記第1の電動機の状態又は前記第1の電動機に付属する補機の状態に基づいて、前記第1の電動機の状態に係るパラメータの補正、前記第1の電動機の状態の判定、前記第1の電動機に付属する補機の状態の判定、又は、前記第1の電動機の状態を検出する状態検出部の状態の判定を行うことを特徴としている。
【0027】
さらに、請求項18に記載の発明の制御装置では、前記車両の車輪は左右の車輪であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
請求項1〜18に記載の発明の制御装置によれば、回転数が安定するよう一方の電動機を駆動制御すれば、他方の電動機の状態に係るパラメータの補正、又は、他方の電動機若しくは他方の電動機に係るパラメータを検出する手段の状態の判定を高精度に行うことができる。
【0029】
請求項2、3、6及び7に記載の発明の制御装置によれば、前記第1の電動機を駆動制御しても、車両の走行に関する挙動に影響を与えない。
【0030】
請求項4に記載の発明の制御装置によれば、2つの電動機を互いに独立に制御可能である。
【0031】
請求項5に記載の発明の制御装置によれば、電動機の駆動力を遊星歯車式変速機を介して車輪に伝達するもので、2つの遊星式変速機の2つの要素同士を連結したので、一方の電動機のみを駆動することで他方の電動機を回転状態とすることができる。
【0032】
請求項8に記載の発明の制御装置によれば、制御部が行う補正又は判定を簡単に行うことができる。
【0033】
請求項9に記載の発明の制御装置によれば、制御部が行う補正又は判定を簡単かつ高精度に行うことができる。
【0034】
請求項10に記載の発明の制御装置によれば、補正精度が向上する。
【0035】
請求項11に記載の発明の制御装置によれば、判定精度が向上する。
【0036】
請求項12に記載の発明の制御装置によれば、磁極位置検出器の補正精度又は判定精度が向上する。
【0037】
請求項13に記載の発明の制御装置によれば、第2の電動機を構成する永久磁石の減磁を検出可能である。
【0038】
請求項14に記載の発明の制御装置によれば、第2の電動機を構成する巻線の配線間違いを検出可能である。
【0039】
請求項15に記載の発明の制御装置によれば、第2の電動機を構成する巻線に対する補機の配置間違いを検出可能である。
【0040】
請求項16に記載の発明の制御装置によれば、第1の電動機及び第2の電動機の電力源の損傷を防止できる。
【0041】
請求項17に記載の発明の制御装置によれば、もう一方の電動機の状態に係るパラメータの補正、又は、もう一方の電動機の状態の判定、もう一方の電動機に付属する補機の状態の判定、又は、もう一方の電動機の状態を検出する手段の状態の判定を高精度に行うことができる。
【0042】
請求項18に記載の発明の制御装置によれば、車両の旋回性や走破性を向上可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】駆動装置を適用可能な車両の一実施形態であるハイブリッド車両の概略構成を示すブロック図
【図2】駆動装置の縦断面図
【図3】図2に示す駆動装置の部分拡大図
【図4】駆動装置がフレームに搭載された状態を示す斜視図
【図5】車両の停車中における駆動装置の共線図
【図6】駆動装置がドライブ側となって前進走行する場合の駆動装置の共線図
【図7】駆動装置がコースト側となって前進走行する場合であって電動機が停止する場合の駆動装置の共線図
【図8】駆動装置がコースト側となって前進走行する場合であって電動機が回生する場合の駆動装置の共線図
【図9】駆動装置がドライブ側となって後進走行する場合の駆動装置の共線図
【図10】駆動装置がコースト側となって後進走行する場合の駆動装置の共線図
【図11】(a)〜(d)は、電動機2A、2Bの各ロータ位置を零点補正する際の各段階における駆動装置1の状態を示す共線図
【図12】マネジメントECU9及びモータECU(MOT ECU)9A、9Bによる電動機2A、2Bの各ロータ位置を零点補正するための処理を示すタイミングチャート
【図13】特許文献1における車両の制御装置を搭載したハイブリッド車両を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、この発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
本発明にかかる駆動装置1は、電動機2A、2Bを車軸駆動用の駆動源とするものであり、例えば、図1に示すような駆動システムの車両3に用いられる。
図1に示す車両3は、内燃機関(ENG)4と電動機(MOT)5が直列に接続された駆動ユニット6を車両前部に有するハイブリッド車両であり、この駆動ユニット6の動力がトランスミッション7及び主駆動軸8を介して前輪Wfに伝達される一方で、この駆動ユニット6と別に車両後部に設けられた駆動装置1の動力が後輪Wr(RWr、LWr)に伝達されるようになっている。駆動ユニット6の電動機5と後輪Wr側の駆動装置1の電動機2A、2Bは、図示しないPDU(パワードライブユニット)を介してバッテリに接続され、バッテリからの電力供給と、バッテリへのエネルギー回生がPDUを介して行われるようになっている。
【0045】
図1に示されるマネジメントECU(MG ECU)9は、電動機2A、2Bを制御するためのモータECU(MOT ECU)9A、9Bに指示を送り、かつ、油圧ブレーキ60A、60Bの各動作を制御する。また、モータECU(MOT ECU)9Aは、マネジメントECU9からの指示に応じて電動機2Aの動作を制御する。同様に、モータECU(MOT ECU)9Bは、マネジメントECU9からの指示に応じて電動機2Bの動作を制御する。
【0046】
図2は、駆動装置1の全体の縦断面図を示すものであり、同図において、10A、10Bは、車両3の後輪Wr側の左右の車軸であり、車幅方向に同軸上に配置されている。駆動装置1の減速機ケース11は全体が略円筒状に形成され、その内部には、車軸駆動用の電動機2A、2Bと、この電動機2A、2Bの駆動回転を減速する遊星歯車式減速機12A、12Bとが、車軸10A、10Bと同軸上に配置されている。この電動機2A及び遊星歯車式減速機12Aは左後輪LWrを制御し、電動機2B及び遊星歯車式減速機12Bは右後輪RWrを制御し、電動機2A及び遊星歯車式減速機12Aと電動機2B及び遊星歯車式減速機12Bは、減速機ケース11内で車幅方向に左右対称に配置されている。そして、減速機ケース11は、図4に示すように、車両3の骨格となるフレームの一部であるフレーム部材13の支持部13a、13bと、不図示の駆動装置1のフレームで支持されている。支持部13a、13bは、車幅方向でフレーム部材13の中心に対し左右に設けられている。なお、図4中の矢印は、駆動装置1が車両3に搭載された状態における位置関係を示している。
【0047】
減速機ケース11の左右両端側内部には、それぞれ電動機2A、2Bのステータ14A、14Bが固定され、このステータ14A、14Bの内周側に環状のロータ15A、15Bが回転可能に配置されている。ロータ15A、15Bの内周部には車軸10A、10Bの外周を囲繞する円筒軸16A、16Bが結合され、この円筒軸16A、16Bが車軸10A、10Bと同軸で相対回転可能となるように減速機ケース11の端部壁17A、17Bと中間壁18A、18Bに軸受19A、19Bを介して支持されている。また、円筒軸16A、16Bの一端側の外周であって減速機ケース11の端部壁17A、17Bには、ロータ15A、15Bの回転位置情報をマネジメントECU9にフィードバックするためのレゾルバ20A、20Bが設けられている。なお、マネジメントECU9は、レゾルバ20A、20Bからの信号に基づいて、電動機2A、2Bの各ロータ位置を検出できる。
【0048】
また、遊星歯車式減速機12A、12Bは、サンギヤ21A、21Bと、このサンギヤ21に噛合される複数のプラネタリギヤ22A、22Bと、これらのプラネタリギヤ22A、22Bを支持するプラネタリキャリア23A、23Bと、プラネタリギヤ22A、22Bの外周側に噛合されるリングギヤ24A、24Bと、を備え、サンギヤ21A、21Bから電動機2A、2Bの駆動力が入力され、減速された駆動力がプラネタリキャリア23A、23Bを通して出力されるようになっている。
【0049】
サンギヤ21A、21Bは円筒軸16A、16Bに一体に形成されている。また、プラネタリギヤ22A、22Bは、例えば図3に示すように、サンギヤ21A、21Bに直接噛合される大径の第1ピニオン26A、26Bと、この第1ピニオン26A、26Bよりも小径の第2ピニオン27A、27Bを有する2連ピニオンであり、これらの第1ピニオン26A、26Bと第2ピニオン27A、27Bが同軸にかつ軸方向にオフセットした状態で一体に形成されている。このプラネタリギヤ22A、22Bはプラネタリキャリア23A、23Bに支持され、プラネタリキャリア23A、23Bは、軸方向内側端部が径方向内側に伸びて車軸10A、10Bにスプライン嵌合され一体回転可能に支持されるとともに、軸受33A、33Bを介して中間壁18A、18Bに支持されている。
【0050】
なお、中間壁18A、18Bは電動機2A、2Bを収容する電動機収容空間と遊星歯車式減速機12A、12Bを収容する減速機空間とを隔て、外径側から内径側に互いの軸方向間隔が広がるように屈曲して構成されている。そして、中間壁18A、18Bの内径側、且つ、遊星歯車式減速機12A、12B側にはプラネタリギヤ22A、22Bを支持する軸受33A、33Bが配置されるとともに中間壁18A、18Bの外径側、且つ、電動機2A、2B側にはステータ14A、14B用のバスリング41A、41Bが配置されている(図2参照)。
【0051】
リングギヤ24A、24Bは、その内周面が小径の第2ピニオン27A、27Bに噛合されるギヤ部28A、28Bと、ギヤ部28A、28Bより小径で減速機ケース11の中間位置で互いに対向配置される小径部29A、29Bと、ギヤ部28A、28Bの軸方向内側端部と小径部29A、29Bの軸方向外側端部を径方向に連結する連結部30A、30Bとを備えて構成されている。この実施形態の場合、リングギヤ24A、24Bの最大半径は、第1ピニオン26A、26Bの車軸10A、10Bの中心からの最大距離よりも小さくなるように設定されている。小径部29A、29Bは、それぞれ後述する一方向クラッチ(ワンウェイクラッチ:OWC)50のインナーレース51とスプライン嵌合し、リングギヤ24A、24Bは一方向クラッチ50のインナーレース51と一体回転するように構成されている。
【0052】
ところで、減速機ケース11とリングギヤ24A、24Bの間には円筒状の空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24A、24Bに対する制動手段を構成する油圧ブレーキ60A、60Bが第1ピニオン26A、26Bと径方向でオーバーラップし、第2ピニオン27A、27Bと軸方向でオーバーラップして配置されている。油圧ブレーキ60A、60Bは、減速機ケース11の内径側で軸方向に伸びる筒状の外径側支持部34の内周面にスプライン嵌合された複数の固定プレート35A、35Bと、リングギヤ24A、24Bの外周面にスプライン嵌合された複数の回転プレート36A、36Bが軸方向に交互に配置され、これらのプレート35A、35B,36A、36Bが環状のピストン37A、37Bによって締結及び解放操作されるようになっている。ピストン37A、37Bは、ハウジング11の中間位置から内径側に延設された左右分割壁39と、左右分割壁39によって連結された外径側支持部34と内径側支持部40間に形成された環状のシリンダ室38A、38Bに進退自在に収容されており、シリンダ室38A、38Bへの高圧オイルの導入によってピストン37A、37Bを前進させ、シリンダ室38A、38Bからオイルを排出することによってピストン37A、37Bを後退させる。なお、油圧ブレーキ60A、60Bは図4に示すように、前述したフレーム部材13の支持部13a、13b間に配置されたオイルポンプ70に接続されている。
【0053】
また、さらに詳細には、ピストン37A、37Bは、軸方向前後に第1ピストン壁63A、63Bと第2ピストン壁64A、64Bを有し、これらのピストン壁63A、63B,64A、64Bが円筒状の内周壁65A、65Bによって連結されている。したがって、第1ピストン壁63A、63Bと第2ピストン壁64A、64Bの間には径方向外側に開口する環状空間が形成されているが、この環状空間は、シリンダ室38A、38Bの外壁内周面に固定された仕切部材66A、66Bによって軸方向前後に仕切られている。減速機ケース11の左右分割壁39と第2ピストン壁64A、64Bの間は高圧オイルが直接導入される第1作動室とされ、仕切部材66A、66Bと第1ピストン壁63A、63Bの間は、内周壁65A、65Bに形成された貫通孔を通して第1作動室と導通する第2作動室とされている。第2ピストン壁64A、64Bと仕切部材66A、66Bの間は大気圧に導通している。
この油圧ブレーキ60A、60Bでは、第1作動室と第2作動室に高圧オイルが導入され、第1ピストン壁63A、63Bと第2ピストン壁64A、64Bに作用するオイルの圧力によって固定プレート35A、35Bと回転プレート36A、36Bを相互に押し付けが可能である。したがって、軸方向前後の第1,第2ピストン壁63A、63B,64A、64Bによって大きな受圧面積を稼ぐことができるため、ピストン37A、37Bの径方向の面積を抑えたまま固定プレート35A、35Bと回転プレート36A、36Bに対する大きな押し付け力を得ることができる。
【0054】
この油圧ブレーキ60A、60Bの場合、固定プレート35A、35Bが減速機ケース11から伸びる外径側支持部34に支持される一方で、回転プレート36A、36Bがリングギヤ24A、24Bに支持されているため、両プレート35A、35B,36A、36Bがピストン37A、37Bによって押し付けられると、両プレート35A、35B,36A、36B間の摩擦締結によってリングギヤ24A、24Bに制動力が作用し固定され、その状態からピストン37A、37Bによる締結が解放されると、リングギヤ24A、24Bの自由な回転が許容される。
【0055】
また、軸方向で対向するリングギヤ24A、24Bの連結部30A、30B間にも空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24A、24Bに対し一方向の動力のみを伝達し他方向の動力を遮断する一方向クラッチ50が配置されている。一方向クラッチ50は、インナーレース51とアウターレース52との間に多数のスプラグ53を介在させたものであって、そのインナーレース51がスプライン嵌合によりリングギヤ24A、24Bの小径部29A、29Bと一体回転するように構成されている。またアウターレース52は、内径側支持部40により位置決めされるとともに、回り止めされている。一方向クラッチ50は、車両3が前進する際に係合してリングギヤ24A、24Bの回転をロックするように構成されている。より具体的に、一方向クラッチ50は、リングギヤ24A、24Bに作用するトルクの作用方向によってリングギヤ24A、24Bをロック又は切り離すように構成されており、車両3が前進する際のサンギヤ21A、21Bの回転方向を正転方向とするとリングギヤ24A、24Bに逆転方向のトルクが作用する場合にリングギヤ24A、24Bの回転をロックする。
【0056】
次に、このように構成された駆動装置1の制御について説明する。なお、図5〜図10は各状態における共線図を表わし、左側のS、Cはそれぞれ電動機2Aに連結された遊星歯車式減速機12Aのサンギヤ21A、車軸10Aに連結されたプラネタリキャリア23Aを表し、右側のS、Cはそれぞれ電動機2Bに連結された遊星歯車式減速機12Bのサンギヤ21B、車軸10Bに連結されたプラネタリキャリア23Bを表し、Rはリングギヤ24A、24Bを表し、BRKは油圧ブレーキ60A、60Bを表し、OWCは一方向クラッチ50を表す。以下の説明において前進時のサンギヤ21A、21Bの回転方向を正転方向とする。また、図中、停車中の状態から上方が正転方向の回転、下方が逆転方向の回転であり、矢印は、上方が正転方向のトルクを表し、下方が逆転方向のトルクを表す。
【0057】
図5は、車両3の停車中における共線図である。このとき、電動機2A、2Bは停止するとともに車軸10A、10Bは停止しているため、いずれの要素にもトルクは作用していない。
【0058】
図6は、車両3が駆動装置1の電動機2A、2Bのモータトルクにより前進走行する場合、即ち駆動装置1がドライブ側となって車両3が前進する場合における共線図である。電動機2A、2Bを駆動すると、サンギヤ21A、21Bには正転方向のトルクが付加される。このとき、前述したように一方向クラッチ50が係合してリングギヤ24A、24Bはロックされて、逆転方向に回転しようとするリングギヤ24A、24Bに正転方向のロックトルクが付加される。これによりプラネタリキャリア23A、23Bは正転方向に回転し前進走行がなされる。なお、プラネタリキャリア23A、23Bには車軸10A、10Bからの走行抵抗が逆転方向に作用する。このように車両3の走行時には、イグニッションをONにして電動機2A、2Bのトルクをあげることで、一方向クラッチ50が機械的に係合してリングギヤ24A、24Bがロックされるので、油圧ブレーキ60A、60Bを締結するオイルポンプ70を作動させずに車両3を前進させることができる。これにより、車両前進時の応答性を向上させることができる。
【0059】
図7は、車両3が駆動ユニット6により前進走行している状態で電動機2A、2Bを停止する場合、即ち駆動装置1がコースト側で且つ電動機2A、2Bが停止する場合における共線図である。図6の状態から電動機2A、2Bを停止すると、プラネタリキャリア23A、23Bには車軸10A、10Bから前進走行を続けようとする正転方向のトルクが作用するので、リングギヤ24A、24Bは正転方向に回転し一方向クラッチ50が非係合となる。従って、リングギヤ24A、24Bはプラネタリキャリア23A、23Bより早い速度で空転する。これにより、電動機2A、2Bで回生する必要がない場合に、油圧ブレーキ60A、60Bによりリングギヤ24A、24Bを固定しなければ、電動機2A、2Bは停止し、電動機2A、2Bの連れ回りを防止することができる。
【0060】
図8は、車両3が駆動ユニット6により前進走行し、かつアクセルオフでの自然減速状態や、ブレーキにて制動減速している状態において、電動機2A、2Bにより回生する場合、即ち駆動装置1がコースト側で且つ電動機2A、2Bが回生する場合における共線図である。図6の状態から電動機2A、2Bを回生すると、プラネタリキャリア23A、23Bには車軸10A、10Bから前進走行を続けようとする正転方向のトルクが作用するので、リングギヤ24A、24Bは正転方向に回転し一方向クラッチ50が非係合状態になろうとする。このとき、一方向クラッチ50と並列に設けられた油圧ブレーキ60A、60Bを締結することによりリングギヤ24A、24Bを固定することで、リングギヤ24A、24Bの回転を防止できる。これにより、電動機2A、2Bに逆転方向の回生トルクを作用させて、回生充電することができる。
【0061】
図9は、車両3が駆動装置1の電動機2A、2Bのモータトルクにより後進走行する場合、即ち1がドライブ側となって後進する場合における共線図である。電動機2A、2Bを逆転方向に駆動すると、サンギヤ21A、21Bには逆転方向のトルクが付加される。このとき、リングギヤ24A、24Bには正転方向のトルクが作用し一方向クラッチ50が非係合となる。このとき、油圧ブレーキ60A、60Bを締結してリングギヤ24A、24Bを固定することにより、リングギヤ24A、24Bの回転を防止するとともにプラネタリキャリア23A、23Bは逆転方向に回転し後進走行がなされる。なお、プラネタリキャリア23A、23Bには車軸10A、10Bからの走行抵抗が正転方向に作用している。
【0062】
図10は、車両3が駆動ユニット6により後進走行している場合において駆動装置1がコースト側における共線図である。このとき、プラネタリキャリア23A、23Bには車軸10A、10Bから後進走行を続けようとする逆転方向のトルクが作用するので、一方向クラッチ50が係合してリングギヤ24A、24Bはロックされて逆転方向に回転しようとするリングギヤ24A、24Bに正転方向のロックトルクが付加されるとともに、電動機2A、2Bには正転方向の逆起電力が発生する。
【0063】
以下、電動機2A、2Bの各ロータ位置を零点補正するための処理について説明する。なお、零点補正とは、電動機における実際の磁極の回転角度からの誤差角が0となるよう、レゾルバによる電動機のステータに対するロータの磁極位置(磁極の回転角度位置)の検出値を補正することである。当該零点補正を行うことによって、レゾルバの取り付け誤差による位相ずれ等を補正できる。なお、零点補正の具体的な手法については、特開2004−129359号等で詳細に説明されている。
【0064】
マネジメントECU9及びモータECU(MOT ECU)9A、9Bは、車両3が停車中に、電動機2A、2Bの各ロータ位置を零点補正する処理を行う。なお、マネジメントECU9は、車軸10A、10Bの回転数を検出する回転数センサ117a、117bからの信号に基づいて、車両3が停車中か否かを判断する。
【0065】
図11(a)〜(d)は、電動機2A、2Bの各ロータ位置を零点補正する際の各段階における駆動装置1の状態を示す共線図である。また、図12は、マネジメントECU9及びモータECU(MOT ECU)9A、9Bによる電動機2A、2Bの各ロータ位置を零点補正するための処理を示すタイミングチャートである。なお、図12中の符号(a)〜(d)は、符号が一致する図11(a)〜(d)に示した状態となるタイミングを示す。
【0066】
図11(a)に示すように、車両3が停車中、電動機2A、2Bは停止するとともに車軸10A、10Bは停止しているため、いずれの要素にもトルクは作用していない。このとき、図12に示すように、マネジメントECU9は、電動機2Bを逆転方向に一定の回転数で回転させるようモータECU9Bに指示すると共に、電動機2Aのロータ位置の零点補正を行うようモータECU9Aに指示する。なお、零点補正を行う際の電動機の回転数は、当該電動機の逆起電力による電圧が電源電圧を超えない範囲での高い回転数に設定される。
【0067】
モータECU9Bは、マネジメントECU9からの指示に応じて、逆転方向に一定の回転数で回転するよう電動機2Bを制御する。電動機2Bは逆方向に回転されるため一方向クラッチ(OWC)50は係合せず、このとき、マネジメントECU9は、油圧ブレーキ60Bを締結しないため、図11(b)に示すように、車軸10Bに電動機2Bからの動力は伝わらない。駆動装置1ではリングギヤ24Aとリングギヤ24Bが互いに連結されており、油圧ブレーキ60Aは締結されないため、図11(b)に示すように、電動機2Aは、電動機2Bと同様の回転数で逆転方向に回転する。なお、電動機2Aは無負荷である必要はない。モータECU9Aは、電動機2Aの回転数が安定した後に、電動機2Aのロータ位置の零点補正を行う。なお、モータECU9Aは、レゾルバ20Aの出力値の変動が所定値以下になると、電動機2Aの回転数が安定したと判断する。
【0068】
モータECU9Aは 、電動機2Aのロータ位置の零点補正が完了すると、マネジメントECU9に補正完了報告を送る。マネジメントECU9は、補正完了報告を受け取ると、電動機2Bの回転を停止するようモータECU9Bに指示する。次に、図12に示すように、マネジメントECU9は、電動機2Aを逆転方向に一定の回転数で回転させるようモータECU9Aに指示すると共に、電動機2Bのロータ位置の零点補正を行うようモータECU9Bに指示する。
【0069】
モータECU9Aは、マネジメントECU9からの指示に応じて、逆転方向に一定の回転数で回転するよう電動機2Aを制御する。電動機2Aは逆方向に回転されるため一方向クラッチ(OWC)50は係合せず、このとき、マネジメントECU9は、油圧ブレーキ60Aを締結しないため、図11(c)に示すように、車軸10Aに電動機2Aからの動力は伝わらない。駆動装置1ではリングギヤ24Aとリングギヤ24Bが互いに連結されており、油圧ブレーキ60Bは締結されないため、図11(c)に示すように、電動機2Bは、電動機2Aと同様の回転数で逆転方向に回転する。なお、電動機2Bは無負荷である必要はない。モータECU9Bは、電動機2Bの回転数が安定した後に、電動機2Bのロータ位置の零点補正を行う。なお、モータECU9Bは、レゾルバ20Bの出力値の変動が所定値以下になると、電動機2Bの回転数が安定したと判断する。
【0070】
モータECU9Bは、電動機2Bのロータ位置の零点補正が完了すると、マネジメントECU9に補正完了報告を送る。マネジメントECU9は、補正完了報告を受け取ると、電動機2Aの回転を停止するようモータECU9Aに指示する。マネジメントECU9は、電動機2Aの回転数が0となるためのモータECU9Aによる終了制御が完了すると、一連の零点補正処理を終了する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、駆動装置1を構成する電動機2A、2Bを一組とし、一方の電動機のロータ位置の零点補正は、当該電動機が他方の電動機からの動力により安定して回転された状態で行われる。したがって、零点補正を高精度に行うことができる。また、車両3が停車中の状態であれば零点補正に要する時間を自由に設定可能である。また、電動機の逆起電力による電圧が電源電圧を超えない範囲であれば当該電動機の回転数を高い値に設定可能である。このように、零点補正を行う際のパラメータを高い自由度で設定することができる。
【0072】
なお、上記説明では、図11(b)、(c)に示した各段階のときに零点補正を行うと説明したが、当該段階ではレゾルバの出力値のみを取得して、後工程で零点補正を行っても良い。また、マネジメントECU9は、上記説明した零点補正を、車両が停車中に限らず、左右の回転数センサ117a、117bが検出した各回転数が等しいときに行っても良い。
【0073】
また、上記説明した実施形態の駆動装置1では、左右のサンギヤ21A、21Bにそれぞれ電動機2A、2Bが接続され、リングギヤ24A、24Bが互いに連結された構成である。駆動装置1の他の例として、左右のリングギヤにそれぞれ電動機が接続され、サンギヤが互いに連結された構成であっても良い。
【0074】
また、駆動装置1の他の例として、車輪LWrと電動機2Aとの間にクラッチを備え、同様に、車輪RWrと電動機2Bとの間にクラッチを備え、また、電動機2Aと電動機2Bの間に減速機等を備えず、電動機2A、2Bのロータ15A、15Bが互いに連結された構成であっても良い。この場合、レゾルバは1つ設けられていれば良い。また、駆動装置1の他の例として、電動機2Aと電動機2Bの間にクラッチが設けられても良い。但し、このクラッチは、上記説明した零点補正を行うときのみ係合される。さらに、車軸10A、10Bの各経路上にクラッチ又は一方向クラッチが設けられていても良い。このクラッチ又は一方向クラッチを滑らせることによって、左右輪の回転差を吸収する。
【0075】
また、駆動装置1が用いられる車両3の他の例として、駆動装置1を構成する電動機2A、2Bの一方が後輪駆動のため、他方が図1に示した駆動ユニット6への動力供給のために用いられても良い。この場合、各電動機の出力側にクラッチが設けられていても良い。
【0076】
また、上記零点補正は、レゾルバによる電動機のステータに対するロータの磁極位置の検出値の補正を例に説明したが、機械的にロータ位置の零点位置を規定できないセンサであればレゾルバに限らない。例えば、レゾルバの代わりにタイミングセンサに対して、上記と同様の方法で零点補正が行われても良い。
【0077】
また、本実施形態では零点補正を例に説明したが、零点補正以外の処理にも適用可能である。例えば、一方の電動機が他方の電動機からの動力により安定して回転された状態で、電動機2A、2B又はこれに付属する補機等の故障検知の処理、又は電動機2A、2B又はこれに付属する補機等の経時変化に基づく処理を行っても良い。故障検知の対象としては、例えば、電動機を構成する永久磁石の減磁や、電動機の巻線の配線間違い、巻線に対する電流センサの配置間違い、電動機に供給する電流を検出する電流センサ、ロータリーエンコーダ等の角度センサやレゾルバが挙げられる。さらに、一方の電動機が他方の電動機からの動力により安定して回転された状態で、前記一方の電動機の補機としての電流センサや角度センサ、レゾルバ等の零点補正を行っても良い。
【符号の説明】
【0078】
1 駆動装置
2A 電動機
2B 電動機
4 内燃機関(ENG)
5 電動機(MOT)
6 駆動ユニット
7 トランスミッション(T/M)
9 マネジメントECU(MG ECU)
9A、9B モータECU(MOT ECU)
117a、117b 回転数センサ
10A 車軸
10B 車軸
11 減速機ケース
12A 遊星歯車式減速機
12B 遊星歯車式減速機
13 フレーム部材
13a 支持部
13b 支持部
16A、16B 円筒軸
18A、18B 中間壁
20A、20B レゾルバ
21A、21B サンギヤ
23A、23B プラネタリキャリア
24A、24B リングギヤ
26A、26B 第1ピニオン
27A、27B 第2ピニオン
33A、33B 軸受
41A、41B バスリング
50 一方向クラッチ
60A 油圧ブレーキ
60B 油圧ブレーキ
70 オイルポンプ(OP)
Wf 前輪
LWr 左後輪
RWr 右後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの回転子が動力伝達可能に接続される2つの電動機と、
前記回転子の回転状態に伴い変化する、前記電動機の状態又は前記電動機に付属する補機の状態を検出する状態検出部と、
前記2つの電動機の各動作を制御する制御部と、を備えた前記電動機の制御装置であって、
前記制御部は、
前記2つの電動機の一方の電動機である第1の電動機を駆動制御し、
前記第1の電動機が駆動することで前記2つの電動機の他方の電動機である第2の電動機が回転動作しているときに前記状態検出部が検出した、前記第2の電動機の状態又は前記第2の電動機に付属する補機の状態に基づいて、前記第2の電動機の状態に係るパラメータの補正、前記第2の電動機の状態の判定、前記第2の電動機に付属する補機の状態の判定、又は、前記第2の電動機の状態を検出する状態検出部の状態の判定を行うことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記2つの電動機の各回転子が動力伝達可能にそれぞれ接続された車両の車輪と前記2つの電動機との間の動力伝達経路上に設けられ、前記電動機からの順方向の回転動力を前記車輪に伝達し、前記電動機からの前記順方向の回転動力とは逆方向の回転動力は前記車輪に伝達しない一方向動力伝達部を備え、
前記制御部は、前記順方向の回転動力とは逆方向の回転動力を出力するよう前記第1の電動機を駆動制御することを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記車輪と前記2つの電動機との間の動力伝達経路上に動力伝達断接部を備え、
前記制御部は、前記動力伝達断接部が解放状態のときに、前記第1の電動機を駆動制御することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記2つの電動機の各回転子を接続する動力伝達経路上に設けられた断接部を備え、
前記制御部は、前記断接部が締結された状態で、前記第1の電動機を駆動制御することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記第1の電動機と動力伝達可能に連結される第1遊星歯車式変速機と、
前記第2の電動機と動力伝達可能に連結される第2遊星歯車式変速機と、をさらに備え、
前記第1の電動機の回転子及び前記第2の電動機の回転子は、前記第1遊星歯車式変速機及び前記第2遊星歯車式変速機のサンギヤ及びリングギヤの何れか一方に接続され、
前記第1遊星歯車式変速機及び前記第2遊星歯車式変速機のサンギヤ及びリングギヤの前記回転子が接続されていない他方同士は、互いに連結され、
前記第1遊星歯車式変速機及び前記第2遊星歯車式変速機のキャリアには、車両の車輪が接続されることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の制御装置であって、
前記第1の電動機及び前記第2の電動機の各回転子が動力伝達可能にそれぞれ接続された前記車両の車輪と前記第1の電動機及び前記第2の電動機との間の動力伝達経路上に設けられ、前記第1の電動機及び前記第2の電動機からの順方向の回転動力を前記車輪に伝達し、前記第1の電動機及び前記第2の電動機からの前記順方向の回転動力とは逆方向の回転動力は前記車輪に伝達しない一方向動力伝達部を備え、
前記制御部は、前記順方向の回転動力とは逆方向の回転動力を出力するよう前記第1の電動機を駆動制御することを特徴とする制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の制御装置であって、
前記車輪と前記第1の電動機及び前記第2の電動機との間の動力伝達経路上に動力伝達断接部を備え、
前記制御部は、前記動力伝達断接部が解放状態のときに、前記第1の電動機を駆動制御することを特徴とする制御装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記第1遊星歯車式変速機及び前記第2遊星歯車式変速機の各キャリアの回転数を検出する回転数検出部を備え、
前記回転数検出部が検出した各キャリアの回転数が等しいとき、前記制御部は、前記第1の電動機を駆動制御することを特徴とする制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の制御装置であって、
前記回転数検出部が検出した各キャリアの回転数が0のとき、前記制御部は、前記第1の電動機を駆動制御することを特徴とする制御装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記状態検出部は、前記第2の電動機の回転状態を検出し、
前記制御部は、前記状態検出部が検出した前記第2の電動機の回転状態に基づいて、前記第2の電動機の状態に係るパラメータを補正することを特徴とする制御装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記状態検出部は、前記第2の電動機の回転状態を検出し、
前記制御部は、前記状態検出部が検出した前記第2の電動機の回転状態に基づいて、前記第2の電動機、前記第2の電動機に付属する補機又は前記状態検出部の状態を判定することを特徴とする制御装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の制御装置であって、
前記状態検出部は磁極位置検出器であることを特徴とする制御装置。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記状態検出部は、前記第2の電動機を構成する永久磁石の減磁を検出することを特徴とする制御装置。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記状態検出部は、前記第2の電動機を構成する巻線の配線間違いを検出することを特徴とする制御装置。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記状態検出部は、前記第2の電動機を構成する巻線に対する補機の配置間違いを検出することを特徴とする制御装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記第1の電動機を駆動制御した際に逆起電力によって発生する電圧が、前記第2の電動機と電気的に接続される電力源の許容電圧を超えない範囲で前記第2の電動機を駆動制御することを特徴とする制御装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記制御部は、
前記第1の電動機を駆動制御して、前記第2の電動機の状態に係るパラメータの補正、又は、前記第2の電動機の状態若しくは前記第2の電動機に付属する補機の状態を検出する状態検出部の状態の判定を行った後、
前記第2の電動機を駆動制御して、
前記第2の電動機が駆動することで前記第1の電動機が回転動作しているときに前記状態検出部が検出した、前記第1の電動機の状態又は前記第1の電動機に付属する補機の状態に基づいて、前記第1の電動機の状態に係るパラメータの補正、前記第1の電動機の状態の判定、前記第1の電動機に付属する補機の状態の判定、又は、前記第1の電動機の状態を検出する状態検出部の状態の判定を行うことを特徴とする制御装置。
【請求項18】
請求項2〜17のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記車両の車輪は左右の車輪であることを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−66260(P2013−66260A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202007(P2011−202007)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】