説明

電動機

【課題】ステータから引出された電気コードにコードクランプを予め保持させておくことにより組立作業工数の削減を図ることができるようにした電動機を提供すること。
【解決手段】コードクランプ30を、一面にコード押え面が形成された板状のクランプ本体31と、クランプ本体のコード押え面側でクランプ本体の幅方向の一端に幅方向の一端がヒンジ部33を介して結合されて、クランプ本体31のコード押え面に対向した状態になる閉位置とコード押え面から退避した状態になる開位置との間を回動し得るように設けられたコード押え板32と、クランプ本体及びコード押え板の幅方向の他端側に設けられて互いに噛み合う対の噛み合い部を有して、該対の噛み合い部の噛み合いによりコード押え板32を閉位置に位置させた状態にロックするロック機構34とを備えた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスDCモータ等の電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に電動機は、ステータとロータとを備え、ステータは、電動機のフレームに対して固定されている。またロータは、その回転軸がフレームに対して回転自在に支持される。電動機のフレームは、ケーシングや、エンドプレートなどにより構成される。
【0003】
電動機からは、電機子コイルやセンサ類につながる複数本の電気コード(心線を絶縁被覆した電線)が引き出される。例えば3相ブラシレスDCモータにおいては、電機子コイルにつながる3本の電気コードと、3相の電機子コイルに対してそれぞれ設けられた位置センサにつながる6本の電気コードとが引き出される。これらの電気コードは、電動機のフレームに対して固定されたコードクランプによりクランプされた状態で外部に引き出される。
【0004】
電動機に用いるコードクランプとしては、特許文献1に示されたものが知られている。このコードクランプは、図5(A)〜(C)に示したように、裏面側に電気コードを収容する凹部1aを有し、幅方向の両端に取り付け孔1b、1bを有する板状のクランプ本体1と、クランプ本体1にヒンジ部2を介して連結されたコード押え板3とを備えている。コード押え板3は、ヒンジ部2を中心にして、図5(C)に示すようにクランプ本体1の裏面の凹部1aから退避した状態になる開位置と、クランプ本体の凹部1a内でクランプ本体に対向した状態になる閉位置との間を回動することができるようになっている。
【0005】
このコードクランプを用いる場合には、クランプ本体1の凹部1a内に図示しない電気コードを並べて収容した後、コード押え板3をヒンジ部2を中心にして回動させることにより、コード押え板3で凹部1a内の電気コードを押さえた状態にする。この状態で、コード押え板3を図示しない電動機のフレーム側に向けて、取り付け孔1b、1bを貫通させたネジにより、クランプ本体1をフレームに締結することにより、電気コードをクランプ本体1とコード押え板3との間に挟み込んだ状態でクランプする。
【特許文献1】特開2000−323866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示された従来のコードクランプは、クランプ本体1の凹部1a内に電気コードを収容してコード押え板3により電気コードを押さえた状態で、クランプ本体を電動機のフレームに締結した段階で初めて電気コードに対して固定されるものであるため、ステータから引き出された電気コードに予め取り付けておくことはできなかった。そのため、ステータ及びロータをフレームに取りつけて電動機を組み立てる作業を行う際にコードクランプに電気コードを組み付ける作業を行う必要があり、電動機の組み立て作業の工数が多くなって、製造コストが高くなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、コードクランプを電気コードに予め保持させておくことができるようにして、組み立て作業の工数の削減を図り、製造コストの削減を図ることができるようにした電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フレームに対して固定されたステータと、フレームに回転自在に支持されたロータと、フレームに対して固定されたコードクランプとを備えて、外部に引き出される複数の電気コードがコードクランプによりクランプされている電動機を対象とする。
【0009】
本発明で用いるコードクランプは、一面にコード押え面が形成された板状のクランプ本体と、このクランプ本体のコード押え面側でクランプ本体の幅方向の一端に幅方向の一端がヒンジ部を介して結合されて、クランプ本体のコード押え面に対向した状態になる閉位置とコード押え面から退避した状態になる開位置との間を回動し得るように設けられたコード押え板と、クランプ本体及びコード押え板の幅方向の他端側に設けられて互いに噛み合う対の噛み合い部を有して、該対の噛み合い部の噛み合いによりコード押え板を閉位置に位置させた状態にロックするロック機構とを備えている。コードクランプは、複数の電気コードをクランプ本体の幅方向に並べてクランプ本体のコード押え面と閉位置にロックされたコード押え板との間に挟み込んで拘束した状態でフレームに対して固定されている。
【0010】
上記のように構成すると、クランプ本体のコード押え面とコード押え板との間に複数の電気コードを挟み込んでコード押え板をロック機構により閉位置にロックすることにより、予めコードクランプを電気コードに保持させることができるため、ステータ及びロータをフレームに取りつけて電動機を組み立てる組み立作業を行う際に、コードクランプを電気コードに組み付ける作業を省略して組み立て工数の削減を図り、回転電機の組み立て作業能率を向上させることができる。
【0011】
本発明の好ましい態様では、クランプ本体及びコード押え板の幅方向の両端に、コード押え板を閉位置に位置させた際に互いに整合する取り付け孔が設けられ、コードクランプは、閉位置にロックされたコード押え板をフレームのクランプ取付面に当接させた状態で配置されて取り付け孔を貫通させた締結具によりフレームに締結(締付けた状態で結合)される。
【0012】
本発明の他の態様では、上記コードクランプが、フレームのコードクランプ取付部(コードクランプを取付けるための部分としてフレーム側に設けられた部分)と該コードクランプ取付部に対向配置された部材との間に挟み込まれた状態で配置されて、該コードクランプ取付部に対向配置された部材がフレームのコードクランプ取付部に対して締付けられることにより、コードクランプがフレームに締結される。
【0013】
本発明の他の好ましい態様では、クランプ本体のコード押え面及びコード押さえ板のクランプ本体に対向する面の少なくとも一方に、クランプ本体をフレームに締結した際に電気コードの絶縁被覆に食い込んで該電気コードを拘束する突起が形成されている。
【0014】
上記のようにクランプ本体のコード押え面及びコード押さえ板のクランプ本体に対向する面の少なくとも一方に突起を形成しておくと、電気コードのクランプを確実に行わせることができる。
【0015】
本発明の他の好ましい態様では、コードクランプをフレームに締結する前の状態では、クランプ本体と閉位置にロックされたコード押え板との間に形成される隙間が、コードクランプと電気コードとの間に該電気コードの長手方向に沿った相対的な変位を許容する大きさを示し、クランプ本体と閉位置にロックされたコード押え板との間に電気コードを挟み込んでコードクランプをフレームに締結した際に隙間が電気コードをクランプ本体とコード押え板との間にクランプする大きさまで縮小されるようにヒンジ部及びロック機構が構成されている。
【0016】
即ち、クランプ本体とコード押え板との間に電気コードを挟んでコード押え板を閉位置にロックしただけでは電気コードがクランプされることがなく、クランプ本体を電動機のフレームに締結した際に初めてクランプ本体とコード押え板との間に電気コードがクランプされるように構成されている。
【0017】
上記のように構成しておくと、コードクランプをフレームに締結する直前に電気コードの引出寸法を調整することができ、コードクランプを電気コードに保持させる際には、コードクランプの位置を厳密に定める必要がないため、電動機の組み立て作業を容易にすることができる。また上記のように構成しておくと、組立の過程でコードクランプに外力が加わった際にコードクランプが電気コードに対して相対的に移動し得るため、組立の過程でコードクランプに外力が加わった際に電気コードが断線するおそれをなくすことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クランプ本体のコード押え面とコード押え板との間に複数の電気コードを挟み込んでコード押え板をロック機構により閉位置にロックするだけでコードクランプを電気コードに保持させることができるため、ステータから電気コードを引き出した時点でコードクランプを電気コードに保持させておくことができ、電動機の組み立てを行う際にコードクランプを電気コードに組み付ける作業を省略して、電動機の組み立て作業能率を向上させることができる。
【0019】
特に請求項5に記載された発明によれば、クランプ本体とコード押え板との間に電気コードを挟んでコード押え板を閉位置にロックしただけでは電気コードがクランプされることがなく、クランプ本体を電動機のフレームに締結した際に初めてクランプ本体とコード押え板との間に電気コードがクランプされるようにすることができる。従って、コードクランプをフレームに締結する直前に電気コードの引出寸法を調整することができ、コードクランプを電気コードに保持させる際には、コードクランプの位置を厳密に定める必要がないため、電動機の組み立て作業を容易にすることができる。また上記のように構成しておくと、組立の過程でコードクランプに外力が加わった際にコードクランプが電気コードに対して相対的に移動し得るため、組立の過程でコードクランプに外力が加わった際に電気コードが断線するおそれをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図1ないし図4を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明に係わる電動機の一構成例を一部切り欠いて示した正面図、図2(A)〜(C)はそれぞれ本発明に係わるコードクランプの正面図、底面図及びC−C線断面図である。また図3は本実施形態で用いるロック機構を説明するための断面図、図4(A)及び(B)はそれぞれ本発明に係わるコードクランプのコード押え板を開位置に位置させた状態での正面図及び底面図である。
【0021】
図1はアウタロータ型の3相ブラシレスDCモータ10に本発明を適用した例を示したもので、同図において11は軸線方向の一端が端部壁で閉じられた円筒状のケーシング、12はカップ状のカバー本体12aとカバー本体の開口端から外側に突出したフランジ部12bとを有して、フランジ部12bがケーシング11の軸線方向の他端側(開口端部側)に形成されたフランジ部(図示せず。)に締結されたエンドカバー,13はケーシング11の開口端部に固定されたコードクランプ取付板であり、この例では、ケーシング11と、エンドカバー12と、コードクランプ取付板13とにより、電動機のフレームが構成されている。
【0022】
15はステータで、図示のステータは、環状の多極星形電機子鉄心16と、電機子鉄心16の突極部に巻回されて3相結線された電機子コイル17とを備えている。ステータ15は、電機子鉄心16の環状の継鉄部16yが、該継鉄部16yに設けられた取り付け孔16aを貫通した図示しない通しボルトによってケーシング11の端部壁に締結されることにより、ケーシング11に固定されている。
【0023】
18はロータで、図示のロータは、カップ状のロータヨーク19と、ロータヨーク19の内周に等角度間隔で取り付けられた複数の永久磁石20と、ロータヨーク19の中心部に取りつけられた回転軸21とを備えている。回転軸21は、ケーシング11の端部壁及びエンドカバー12にそれぞれ設けられた軸受け保持部に保持された軸受け(図示せず。)により回転自在に支持されている。
【0024】
また22uないし22wはそれぞれ3相の電機子コイルにつながる電気コード、(23u1,23u2)ないし(23w1,23w2)はそれぞれ3相の電機子コイルに対して設けられた位置センサhuないしhw(図示せず。)から引き出された電気コードである。各位置センサは例えばロータの磁極の極性を検出するホールICからなっていて、検出している磁極の極性がS極であるかN極であるかによって、異なるレベルを示す信号を出力する。
【0025】
電気コード22uないし22w及び(23u1,23u2)ないし(23w1,23w2)は、コードクランプ取付板13に取り付けられた本発明に係わるコードクランプ30によりクランプされて、電動機のフレームに対して固定されている。
【0026】
図2ないし図4に示されているように、コードクランプ30は、クランプ本体31と、コード押え板32と、クランプ本体31とコード押え板32とを連結するヒンジ部33と、コード押え板32をロックするロック機構34とからなっている。コードクランプ30を構成する各部は、絶縁樹脂を射出成形することにより一体に形成されている。
【0027】
クランプ本体31は板状の部材からなっていて、その横断面の輪郭形状が、長方形の相対する長辺部a1及びa2の一方a1を外側に凸な円弧の形に湾曲させるとともに、円弧状の長辺部a1の両端側の角部を切り落として、角部が鈍角をなすL字形の切り欠き部a3,a3を形成したほぼ凸字形の形状を呈する(図2B参照)ように形成されている。
【0028】
本明細書では、コードクランプ30の各部において、クランプ本体31の横断面の輪郭のまっすぐな長辺部a2に沿う方向(図示のX方向)、短辺部に沿う方向(図示のY方向)及び両者に直角な方向(図示のZ方向)をそれぞれ各部の幅方向、奥行き方向及び厚み方向とする。またコードクランプの各部の側面のうち、クランプ本体の円弧状の長辺a1側の端面A1と同じ側に向いた面をコードクランプの各部の前面とし、他の長辺a2側の端面A2と同じ側に向いた面をコードクランプの各部の背面とする。
【0029】
クランプ本体31の厚み方向の一端側の端面をなすクランプ本体の一面31aの幅方向の両端付近には、同一平面上に位置する平坦なコード押え板当接面31a0,31a0′が形成され、これらの当接面の間の部分に、当接面31a0,31a0′よりも僅かに突出した第1のコード押え面31a1と、第1のコード押え面31a1よりも更に突出した第2のコード押え面31a2とが、クランプ本体の幅方向に並べて形成されている。第1のコード押え面31a1の幅寸法は、電機子コイルから引き出される3本の電気コード22u〜22wを並べて配置し得るように設定され、第2のコード押え面31a2の幅寸法は、位置センサから引き出される6本の電気コード(23u1,23u2)〜(23w1,23w2)を並べて配置し得るように設定されている。
【0030】
クランプ本体31の厚み方向の他端側の端面をなすクランプ本体の他面31b側には、円弧状に湾曲した長辺部a1に沿って伸びる起立壁31cが形成されている。図1に示されているように、起立壁31cの曲率は、コードクランプ30が取り付けられる電動機10のエンドカバー12のカバー本体12aの周壁部の曲率に等しく設定されている。
【0031】
コード押え板32は、横断面の輪郭形状がクランプ本体と同様の輪郭形状を呈する板からなっている。コード押え板32のクランプ本体31に対向させられる面の幅方向の両端にはクランプ本体31のコード押え板当接面31a0,31a0′にそれぞれ当接するクランプ本体当接面32a0,32a0′が形成され、これらの当接面の間にクランプ本体のコード押え面31a1及び31a2にそれぞれ対応する浅い凹部32a1及び32a2が形成されている。凹部32a1及び32a2の間はリブ状の仕切り壁32bにより仕切られている。
【0032】
図4に示されているように、コード押え板32の幅方向の一端が、クランプ本体31のコード押え面31a1,31a2側でクランプ本体31の幅方向の一端にヒンジ部33を介して結合されている。ヒンジ部33は、コードクランプ30の幅方向の中央部でクランプ本体31の幅方向の一端とコード押え板32の幅方向の一端とを連結する変形が可能な連結片からなっていて、コード押え板32が、ヒンジ部33を中心にして、図2に示したようにクランプ本体31のコード押え面に対向した状態になる閉位置と、図4に示したようにコード押え面から退避した状態になる開位置との間を回動し得るようになっている。
【0033】
ロック機構34は、クランプ本体31及びコード押え板32の幅方向の他端側に設けられて互いに噛み合う対の噛み合い部34a及び34bからなっていて、これら対の噛み合い部34a及び34bの噛み合いによりコード押え板32を閉位置に位置させた状態にロックすることができるようになっている。本実施形態では、図3に示したように、クランプ本体31の当接面31a0に設けられた凹部31dの開口部に形成された突出部によりクランプ本体側の噛み合い部34aが構成され、クランプ本体の凹部31dに対応させてコード押え板32の当接面32a0に設けられた突起32dの先端に形成された爪部によりコード押え板32側の噛み合い部34bが構成されている。
【0034】
本実施形態では、クランプ本体31及びコード押え板32の幅方向の両端に、コード押え板32を閉位置に位置させた際に互いに整合する取り付け孔31e,32eが設けられている。
【0035】
本実施形態ではまた、クランプ本体41を電動機のフレームに締結した際に、クランプ本体とコード押え板との間に挟み込まれた電気コードの絶縁被覆に食い込んで該電気コードを拘束するリブ状の突起31fがクランプ本体31のコード押え面に形成されている。
【0036】
図2に示されているように、上記のコードクランプ30を電気コードに取付ける際には、ステータ15から引き出された電気コードのうち、電機子コイルから引き出された電気コード22u〜22wをコードクランプ30の幅方向に並べた状態で、コード押え板32の凹部32a1の上に配置し、位置センサから引き出された電気コード(23u1,23u2)〜(23w1,23w2)を、同じくコードクランプ30の幅方向に並べた状態で、コード押え板32の凹部32a2の上に配置する。次いでコード押え板32を閉位置に位置させるように、クランプ本体31とコード押え板32とを相対的に回動させて、ロック機構34の噛み合い部34a及び34bを噛み合わせることにより、クランプ本体31のコード押え面とコード押え板32との間に複数の電気コードを挟み込んだ状態で、コード押え板32を閉位置にロックする。これにより、コードクランプ30をステータ15から引き出された電気コードに保持させる。
【0037】
電気コードに保持されたコードクランプ30は、クランプ本体31及びコード押え板32に設けられて互いに整合している取り付け孔31e及び32eを貫通させた締結具(通常はネジ)で電動機のフレームに締結する。
【0038】
図1に示した例では、コード押え板32をコードクランプ取付板13側に向け、コードクランプ30の前面をエンドカバー12の周壁部の一部に形成した窓部12dを通して外部に露呈させた状態で、コードクランプ30をコードクランプ取付板13の上に配置して、クランプ本体31及びコード押え板32をコードクランプ取付板13に締結することにより、コードクランプ30をコードクランプ取付板13に固定している。
【0039】
このように、本発明で用いるコードクランプ30は、クランプ本体31のコード押え面とコード押え板32との間に複数の電気コードを挟み込んでコード押え板をロック機構により閉位置にロックすることにより、予めコードクランプを電気コードに保持させておくことができるため、ステータ15及びロータ18をフレームに取りつけて電動機を組み立てる組み立作業を行う際に、コードクランプ30に電気コードを組み付ける作業を省略して組み立て工数の削減を図り、回転電機の組み立て作業能率を向上させることができる。
【0040】
本実施形態のコードクランプにおいては、クランプ本体31をコードクランプ取付け板(フレーム)13に締結する前の状態にあるときに、図2に示されているように、クランプ本体31と閉位置にロックされたコード押え板32との間(正確にはクランプ本体31のコード押え面と閉位置にロックされたコード押え板32の凹部の底面との間)に、電気コードの長手方向に沿ったコードクランプの変位を許容する大きさの間隙d1,d2が形成され、クランプ本体31と閉位置にロックされたコード押え板32との間に電気コードを挟み込んで、取り付け孔31e,32eを貫通させた図示しない締結具(通常はネジ)によりコードクランプ30を電動機のフレームに締結した際に、クランプ本体31とコード押え板32との間の電気コードをクランプする大きさまで隙間d1,d2が縮小されるのを許容するように、ヒンジ部33及びロック機構34が構成されている。コードクランプ30を電動機のフレームに締結した状態では、クランプ本体31のコード押え面31a1,31a2全体がそれぞれ電気コード22u〜22w及び(23u1,23u2)〜(23w1,23w2)に接触してこれらの電気コードをコード押さえ板32に対して押圧すると共に、リブ状の突起31fが電気コード22u〜22w及び(23u1,23u2)〜(23w1,23w2)の絶縁被覆に食込んで、これらの電気コードを強固にクランプする。
【0041】
上記隙間d1,d2の調整は、ヒンジ部を構成する連結片の長さと、ロック機構34を構成する噛み合い部34bとコード押え板32の当接面32a0との間の距離とを適宜に設定することにより行うことができる。隙間d1及びd2は、クランプする電気コードの径に応じて適宜に設定する。
【0042】
上記のように構成しておくと、クランプ本体31とコード押え板32との間に電気コード22u〜22w及び(23u1,23u2)〜(23w1,23w2)を挟んでコード押え板31を閉位置にロックしただけでは電気コードがクランプされることがなく、コードクランプを電動機のフレームに締結した際に初めてクランプ本体とコード押え板との間に電気コードがクランプされる。そのため、コードクランプをフレームに締結する直前に電気コードの引出寸法を調整することができ、コードクランプを電気コードに保持させる際には、コードクランプの位置を厳密に定める必要がないため、電動機の組み立て作業を容易にすることができる。また上記のように構成しておくと、組立の過程でコードクランプに外力が加わった際にコードクランプが電気コードに対して相対的に移動し得るため、組立の過程でコードクランプに外力が加わった際に電気コードが断線するおそれをなくすことができる。
【0043】
本実施形態では、電機子コイルから引出される電気コード22u〜22wの径が位置センサから引出される電気コード(23u1,23u2)〜(23w1,23w2)の径よりも大きいため、d1 >d2 に設定されている。クランプする複数の電気コードの径がすべて等しい場合には、第1のコード押え面31a1と第2のコード押え面31a2との二つのコード押え面を形成する必要はなく、クランプ本体の一面にすべての電気コードをカバーし得る広さの一つのコード押え面を形成しておけばよい。
【0044】
なお上記の例では、径が異なる2種類の電気コードをクランプするために、クランプ本体の一面に、コード押さえ板当接面31a0,31a0′からの突出高さが異なる2つのコード押え面31a1,31a2を設けているが、クランプ本体に設けるコード押え面全体を平坦に(一つの平面により)形成して、コード押え板32側に設ける凹部32a1,32a2の深さをそれぞれの内部に収容する電気コードの径に応じて異ならせるようにしてもよい。
【0045】
上記の説明では、コードクランプ30を取付け孔を貫通させたネジなどの締結具により電動機のフレーム(上記の例ではコードクランプ取付板)に締結する(締付けた状態で結合する)としたが、本発明で用いるコードクランプは、クランプ本体とコード押さえ板とが互いに接近する方向に締付けられた状態で電動機のフレームに対して締結されればよく、コードクランプをネジなどによりフレームに締結する場合に限定されない。
【0046】
例えば、コードクランプを、電動機のフレームのコードクランプ取付部と該コードクランプ取付部に対向配置された部材との間に挟み込んだ状態で配置して、コードクランプ取付部に対向配置された部材をフレームのコードクランプ取付部に対して締付けることにより、コードクランプをフレームに対して締結するようにしてもよい。例えば図1において、エンドカバー12の端部壁とコードクランプ取付板13との間にコードクランプ30を挟み込んで、エンドカバー12をケーシング11に対して締付けることにより、コードクランプ30をコードクランプ取付板13に対して(電動機のフレームに対して)締結するようにしてもよい。
【0047】
上記の例では、クランプ本体31の一面の大部分をコード押え面としているが、コード押え面は、クランプ本体の少なくとも一部に形成されていれば良く、クランプ本体31の一面の一部にのみコード押え面を形成するようにしてもよい。例えば、クランプ本体31の一面に凹部を形成するとともに、この凹部内に上記の実施形態で設けたリブ状の突起31fと同様の突起を設けて、この突起の端面をコード押え面とするようにしてもよい。
【0048】
上記の例では、電気コードのクランプを確実にするために、クランプ本体のコード押え面にリブ状の突起31fを設けているが、この突起は、クランプ本体のコード押え面及びコード押さえ板のクランプ本体に対向する面の少なくとも一方に設ければよく、上記の突起をコード押さえ板32のクランプ本体に対向する面(上記の例では凹部32a1,32a2の底面)に設けたり、クランプ本体のコード押え面及びコード押さえ板のクランプ本体に対向する面の双方に設けたりするようにしてもよい。
【0049】
またクランプ本体の一面に設けるコード押え面とコード押さえ板との間に電気コードを挟み込むだけで電気コードをクランプすることができる場合には、電気コードの絶縁被覆に食込ませる突起を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係わる電動機の一構成例を一部切り欠いて示した正面図である。
【図2】(A)〜(C)はそれぞれ本発明に係わるコードクランプの正面図、底面図及びC−C線断面図である。
【図3】本実施形態で用いるロック機構を説明するための断面図である。
【図4】(A)及び(B)はそれぞれ本発明に係わるコードクランプのコード押え板を開位置に位置させた状態での正面図及び底面図である。
【図5】(A)〜(C)は、従来のコードクランプのコード押え板を開位置に位置させた状態での平面図、正面図及び右側面図である。
【符号の説明】
【0051】
11 電動機のケーシング
12 エンドカバー
13 コードクランプ取付板
15 ステータ
18 ロータ
22u〜22w 電気コード
23u1〜23w1,23u2〜23w2 電気コード
30 コードクランプ
31 クランプ本体
31a1,31a2 コード押え面
31f 突起
32 コード押え板
33 ヒンジ部
34 ロック機構
34a,34b 噛合い部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに対して固定されたステータと、前記フレームに回転自在に支持されたロータと、前記フレームに対して固定されたコードクランプとを備え、外部に引き出される複数の電気コードが前記コードクランプによりクランプされている電動機において、
前記コードクランプは、
一面にコード押え面が形成された板状のクランプ本体と、
前記クランプ本体のコード押え面側で前記クランプ本体の幅方向の一端に幅方向の一端がヒンジ部を介して結合されて、前記クランプ本体のコード押え面に対向した状態になる閉位置と前記コード押え面から退避した状態になる開位置との間を回動し得るように設けられたコード押え板と、
前記クランプ本体及びコード押え板の幅方向の他端側に設けられて互いに噛み合う対の噛み合い部を有して、該対の噛み合い部の噛み合いにより前記コード押え板を前記閉位置に位置させた状態にロックするロック機構と、
を具備し、
前記コードクランプは、前記複数の電気コードを前記クランプ本体の幅方向に並べて前記クランプ本体と前記閉位置にロックされたコード押え板との間に挟み込んで拘束した状態で前記フレームに対して固定されていること、
を特徴とする電動機。
【請求項2】
前記クランプ本体及びコード押え板の幅方向の両端に、前記コード押え板を閉位置に位置させた際に互いに整合する取り付け孔が設けられ、
前記コードクランプは、前記閉位置にロックされたコード押え板を前記フレームのクランプ取付面に当接させた状態で配置されて前記取り付け孔を貫通させた締結具によりフレームに締結されていることを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記コードクランプは、前記フレームのコードクランプ取付部と該コードクランプ取付部に対向配置された部材との間に挟み込まれた状態で配置されて、前記コードクランプ取付部に対向配置された部材が前記フレームのコードクランプ取付部に対して締付けられることにより、前記コードクランプがフレームに対して締結されていること、
を特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項4】
前記クランプ本体のコード押え面及び前記コード押さえ板のクランプ本体に対向する面の少なくとも一方に、前記クランプ本体を前記フレームに締結した際に前記電気コードの絶縁被覆に食い込んで該電気コードを拘束する突起が形成されていること、
特徴とする請求項1,2または3に記載の電動機。
【請求項5】
前記コードクランプをフレームに締結する前の状態では、前記クランプ本体と閉位置にロックされたコード押え板との間に形成される隙間が、コードクランプと電気コードとの間に該電気コードの長手方向に沿った相対的な変位を許容する大きさを示し、前記クランプ本体と閉位置にロックされたコード押え板との間に電気コードを挟み込んで前記コードクランプを前記フレームに締結した際に前記隙間が前記電気コードを前記クランプ本体とコード押え板との間にクランプする大きさまで縮小されるように前記ヒンジ部及びロック機構が構成されていること、
を特徴とする請求項1,2,3または4に記載の電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−199702(P2008−199702A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29471(P2007−29471)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】