説明

電動車両の電源システム

【課題】電動車両での要求出力に対する発電装置の出力と蓄電装置の出力との配分を適正に制御することが可能な蓄電装置の動作電圧範囲を拡大し、燃料電池の出力変動を抑制する制御の実行を可能とし、燃料電池の運転効率を向上させる。
【解決手段】DC−DCコンバータ13は、燃料電池スタック11の総電圧と蓄電装置12の総電圧との間の相対的な大小による2つの電圧状態と、蓄電装置12の放電および充電の2つの電流状態との組み合わせによる4つの状態で動作可能であって、電流の変化に応じた総電圧の変化を示す電流電圧特性に対し、燃料電池スタック11の電流電圧特性と蓄電装置12の電流電圧特性とは交差するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動車両の電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばDC−DCコンバータの2次側に燃料電池および走行用モータが接続され、かつ1次側に燃料電池の出力電圧よりも低電圧で動作する蓄電装置が接続され、このDC−DCコンバータの昇圧動作によって蓄電装置から走行用モータへと電力供給を行ない、またDC−DCコンバータの降圧動作によって燃料電池および走行用モータから蓄電装置へと電力供給を行なう燃料電池車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−286320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る燃料電池車両においては、DC−DCコンバータの昇圧動作および降圧動作は、燃料電池の出力電圧が蓄電装置の動作電圧よりも高い状態を前提として実行される。このため、例えば燃料電池の出力電流の増大に伴う出力電圧の低下によって燃料電池の出力電圧が蓄電装置の動作電圧と等しくなると、DC−DCコンバータの昇圧動作および降圧動作に係るスイッチング動作は停止され、DC−DCコンバータは常時導通の状態となる。この場合、燃料電池と蓄電装置とは、いわば短絡状態となり、燃料電池車両での要求出力に対する燃料電池の出力と蓄電装置の出力との配分を、DC−DCコンバータのスイッチング動作によって、適正に制御することができないという問題が生じる。しかも、燃料電池の出力変動を抑制することが困難となり、燃料電池の運転効率を向上させることができないという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、電動車両での要求出力に対する発電装置の出力と蓄電装置の出力との配分を適正に制御することが可能な蓄電装置の動作電圧範囲を拡大し、燃料電池の出力変動を抑制する制御の実行を可能とし、燃料電池の運転効率を向上させることが可能な電動車両の電源システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る電動車両の電源システムは、モータ駆動装置(実施の形態でのPDU16)と、燃料電池(実施の形態での燃料電池スタック11)と、蓄電装置と、DC−DCコンバータとを備え、前記モータ駆動装置および前記燃料電池は前記DC−DCコンバータの2次側入出力部に接続され、前記蓄電装置は前記DC−DCコンバータの1次側入出力部あるいは前記DC−DCコンバータの内部に接続され、前記DC−DCコンバータは、前記燃料電池の総電圧と前記蓄電装置の総電圧との間の相対的な大小による2つの電圧状態と、前記蓄電装置の放電および充電の2つの電流状態との組み合わせによる4つの状態で動作可能であって、電流の変化に応じた前記総電圧の変化を示す電流電圧特性に対し、前記燃料電池の前記電流電圧特性と前記蓄電装置の前記電流電圧特性とは交差するように設定されている。
【0007】
さらに、本発明の第2態様に係る電動車両の電源システムでは、総要求電力に対する前記燃料電池の出力電力と前記蓄電装置の出力電力との間の配分に対し、前記総要求電力が連続的に大きいときは前記総要求電力が連続的に小さいときに比べて、前記燃料電池の前記出力電力の前記配分は大きくされ、
前記DC−DCコンバータのスイッチング動作は、前記燃料電池の前記総電圧と前記蓄電装置の前記総電圧との間の相対的な大小に応じて制御される。
【0008】
さらに、本発明の第3態様に係る電動車両の電源システムでは、前記DC−DCコンバータのスイッチング素子のうち、少なくとも1つのスイッチング素子はスイッチング周期を跨いで連続的にオンとされ、
前記燃料電池の前記総電圧と前記蓄電装置の前記総電圧との間の相対的な大小による2つの前記電圧状態において、前記スイッチング周期を跨いで連続的にオンとされる前記スイッチング素子が異なる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1態様に係る電動車両の電源システムによれば、DC−DCコンバータは、燃料電池の総電圧と蓄電装置の総電圧との間の相対的な大小による2つの電圧状態と、蓄電装置の放電および充電の2つの電流状態との組み合わせによる4つの状態で動作可能となる。
これにより、電動車両での要求出力に対する燃料電池の出力と蓄電装置の出力との配分を、DC−DCコンバータのスイッチング動作によって、適正に制御することができる制御範囲(例えば、燃料電池および蓄電装置の制御電圧範囲、蓄電装置の制御残容量範囲など)を拡大することができる。そして、この制御範囲の拡大に伴い、燃料電池の運転効率を向上させることができる。
さらに、燃料電池の総電圧が蓄電装置の総電圧よりも大きい場合および小さい場合の両方の電圧状態において、蓄電装置の放電および充電を行なうことができ、蓄電装置の制御電圧範囲を拡大することができることに伴い、蓄電装置の制御残容量範囲を拡大することができる。そして、この制御残容量範囲の拡大に伴い、燃料電池の出力変動を抑制し、燃料電池の劣化を抑制することができる。
【0010】
本発明の第2態様に係る電動車両の電源システムによれば、電動車両での総要求電力の増大に伴い、燃料電池の出力電力を増大させることで、燃料電池の出力電流が増大し、燃料電池の出力電圧が低下する場合であっても、蓄電装置の放電および充電を適正に行なうことができる。
【0011】
本発明の第3態様に係る電動車両の電源システムによれば、燃料電池の総電圧が蓄電装置の総電圧よりも大きいときと、燃料電池の総電圧が蓄電装置の総電圧よりも小さいときとにおいて、異なるスイッチング素子がスイッチング周期を跨いで連続的にオンとされることにより、蓄電装置の放電および充電を適正に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る電動車両の電源システムの構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの総電圧VFCおよび蓄電装置の総電圧VBの変化と電流の変化との対応の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るDC−DCコンバータのスイッチング動作を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るDC−DCコンバータのスイッチング素子の状態と電圧および電流との対応の例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るDC−DCコンバータのスイッチング動作を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るDC−DCコンバータのスイッチング素子の状態と電圧および電流との対応の例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るDC−DCコンバータのスイッチング動作と燃料電池スタックおよび蓄電装置の総電圧および出力との対応の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの総電圧VFCおよび蓄電装置の総電圧VBの変化の例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る電動車両の電源システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る電動車両の電源システムについて添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による電動車両の電源システム10(以下、単に、電源システム10と呼ぶ)は、例えば燃料電池車両に搭載され、図1に示すように、燃料電池スタック11と、バッテリなどからなる蓄電装置12と、DC−DCコンバータ13と、平滑コンデンサ14と、制御装置15を備えて構成されている。そして、電源システム10は、車両の走行駆動用のモータMを駆動制御するパワードライブユニット(PDU)16に接続されている。
【0014】
燃料電池スタック11は、陽イオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜を、アノード触媒およびガス拡散層からなる燃料極(アノード)と、カソード触媒およびガス拡散層からなる酸素極(カソード)とで挟持してなる電解質電極構造体を、更に一対のセパレータで挟持してなる燃料電池セルを多数組積層して構成され、燃料電池セルの積層体は一対のエンドプレートによって積層方向の両側から挟み込まれている。
【0015】
燃料電池スタック11のカソードには酸素を含む酸化剤ガス(反応ガス)である空気がエアポンプ(図示略)から供給され、アノードには水素を含む燃料ガス(反応ガス)が、例えば高圧の水素タンク(図示略)から供給されている。
そして、アノードのアノード触媒上で触媒反応によりイオン化された水素は、適度に加湿された固体高分子電解質膜を介してカソードへと移動し、この移動に伴って発生する電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギーとして利用される。このときカソードにおいては、水素イオン、電子及び酸素が反応して水が生成される。
【0016】
蓄電装置12は、例えば、複数のバッテリセルからなるバッテリである。
なお、蓄電装置12はバッテリに限定されず、例えば電気二重層コンデンサや電解コンデンサなどからなるキャパシタであってもよい。
【0017】
DC−DCコンバータ13は、例えば、ブリッジ接続された第1および第2ハイサイドアーム21a,21cと第1および第2ローサイドアーム21b,21dと、リアクトル22を備えて構成されている。
各アーム21a,21b,21c,21dは、例えばスイッチング素子としてIGBT(Insulated Gate Bipolar mode Transistor)を備え、各トランジスタS1,S2,S3,S4と、各トランジスタS1,S2,S3,S4のコレクタ−エミッタ間にエミッタからコレクタに向けて順方向となるようにして接続された各ダイオードD2,D1,D4,D3とを備えている。
【0018】
各ハイサイドアーム21a,21cは各トランジスタS1,S3のコレクタが第1電力ラインL1に接続され、各ローサイドアーム21b,21dは各トランジスタS2,S4のエミッタが第2電力ラインL2に接続されている。
そして、各ハイサイドアーム21a,21cの各トランジスタS1,S3のエミッタは各ローサイドアーム21b,21dの各トランジスタS2,S4のコレクタに接続されている。つまり、直列に接続された第1ハイサイドアーム21aおよび第1ローサイドアーム21bと、直列に接続された第2ハイサイドアーム21cおよび第2ローサイドアーム21dとは、第1電力ラインL1と第2電力ラインL2との間に並列に接続されている。
そして、直列に接続された第1ハイサイドアーム21aおよび第1ローサイドアーム21bの接続点P12と直列に接続された第2ハイサイドアーム21cおよび第2ローサイドアーム21dの接続点P34との間には、直列に接続されたリアクトル22および蓄電装置12が接続されている。
さらに、DC−DCコンバータ13の2次側において、第1電力ラインL1と第2電力ラインL2との間には、平滑コンデンサ14と、第2電力ラインL2から第1電力ラインL1に向けて順方向となるようにして直列に接続されたダイオードDFCおよび燃料電池スタック11と、PDU16とが、並列に接続されている。
つまり、PDU16および燃料電池スタック11はDC−DCコンバータ13の2次側入出力部に接続され、蓄電装置12はDC−DCコンバータ13の内部に接続されている。
【0019】
このDC−DCコンバータ13は、制御装置15から出力されて各トランジスタS1,S2,S3,S4のゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動される。
そして、DC−DCコンバータ13は、燃料電池スタック11の総電圧VFC(つまり、各燃料電池セルの出力電圧の総和)と蓄電装置12の総電圧VB(つまり、各バッテリセルの出力電圧の総和)との間の相対的な大小による2つの電圧状態と、蓄電装置12の放電および充電の2つの電流状態との組み合わせによる4つの状態(動作モード)で動作可能とされている。
なお、DC−DCコンバータ13は、燃料電池スタック11の総電圧VFCと蓄電装置12の総電圧VBとが等しくなる状態では、スイッチング動作を停止し、燃料電池スタック11と蓄電装置12との間を導通状態とすることも可能である。
【0020】
例えば図2に示すように、燃料電池スタック11では、出力される電流IFCの増大に伴い総電圧VFCが低下傾向に変化する。これに対して、蓄電装置12では、放電および充電で流れる電流IBの変化に対して総電圧VBの変動は僅かである。このため、電流の変化に応じて、総電圧VFC(燃料電池)>総電圧VB(蓄電装置)の電圧状態と、総電圧VFC(燃料電池)<総電圧VB(蓄電装置)の電圧状態との、2つの電圧状態が生じ、これらの2つの電圧状態毎に対して、蓄電装置12の放電と充電との2つの電流状態が生じる。
【0021】
例えば図3(A)に示すように、総電圧VFC(燃料電池)>総電圧VB(蓄電装置)の電圧状態において燃料電池スタック11から充電を行なう蓄電装置12への降圧動作では、第2ハイサイドアーム21cのトランジスタS3は常時OFF(開放状態)、かつ、第2ローサイドアーム21dのトランジスタS4は常時ON(導通状態)とされる。
そして、第1ハイサイドアーム21aのトランジスタS1は、制御装置15から出力されるPWM信号のスイッチングデューティー(例えば、PWM信号の1周期におけるトランジスタS1のオン期間TONの比率)に応じてオン/オフが切り換えられる。
なお、第1ローサイドアーム21bのトランジスタS2は、常時OFF(開放状態)、または、第1ハイサイドアーム21aのトランジスタS1との同期スイッチング(つまり、トランジスタS1,S2が交互にオンとされる状態)とされる。
【0022】
この場合には、例えば図4(A)に示すように、先ず、トランジスタS1がオンとされることで燃料電池スタック11からトランジスタS1に流れる電流Irによってリアクトル22が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
次に、トランジスタS1がオフとされ、リアクトル22に流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてリアクトル22の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生し、リアクトル22に蓄積された磁気エネルギーによる電流Idが第1ローサイドアーム21bのダイオードD1から蓄電装置12へと流れて蓄電装置12が充電される。
【0023】
また、例えば図3(B)に示すように、総電圧VFC(燃料電池)>総電圧VB(蓄電装置)の電圧状態において放電を行なう蓄電装置12から燃料電池スタック11への昇圧動作では、第2ハイサイドアーム21cのトランジスタS3は常時OFF(開放状態)、かつ、第2ローサイドアーム21dのトランジスタS4は常時ON(導通状態)とされる。
そして、第1ローサイドアーム21bのトランジスタS2は、制御装置15から出力されるPWM信号のスイッチングデューティー(例えば、PWM信号の1周期におけるトランジスタS2のオン期間TONの比率)に応じてオン/オフが切り換えられる。
なお、第1ハイサイドアーム21aのトランジスタS1は、常時OFF(開放状態)、または、第1ローサイドアーム21bのトランジスタS2との同期スイッチング(つまり、トランジスタS1,S2が交互にオンとされる状態)とされる。
【0024】
この場合には、例えば図4(B)に示すように、先ず、トランジスタS2がオンとされることで蓄電装置12から放電されて、順次、トランジスタS2、トランジスタS4に流れる電流Irによってリアクトル22が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
次に、トランジスタS2がオフとされると、リアクトル22に蓄積された磁気エネルギーによる電流Idが第1ハイサイドアーム21aのダイオードD2を流れて放電される。
【0025】
また、例えば図5(A)に示すように、総電圧VFC(燃料電池)<総電圧VB(蓄電装置)の電圧状態において放電を行なう蓄電装置12から燃料電池スタック11への降圧動作では、第1ハイサイドアーム21aのトランジスタS1は常時OFF(開放状態)、かつ、第1ローサイドアーム21bのトランジスタS2は常時ON(導通状態)とされる。
そして、第2ハイサイドアーム21cのトランジスタS3は、制御装置15から出力されるPWM信号のスイッチングデューティー(例えば、PWM信号の1周期におけるトランジスタS3のオン期間TONの比率)に応じてオン/オフが切り換えられる。
なお、第2ローサイドアーム21dのトランジスタS4は、常時OFF(開放状態)、または、第2ハイサイドアーム21cのトランジスタS3との同期スイッチング(つまり、トランジスタS3,S4が交互にオンとされる状態)とされる。
【0026】
この場合には、例えば図6(A)に示すように、先ず、トランジスタS3がオンとされることで蓄電装置12から放電されて、順次、第1ハイサイドアーム21aのダイオードD2、トランジスタS3に流れる電流Irによってリアクトル22が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
次に、トランジスタS3がオフとされると、リアクトル22に蓄積された磁気エネルギーによる電流Idが、第2ローサイドアーム21dのダイオードD3を流れるようにして、放電される。
【0027】
また、例えば図5(B)に示すように、総電圧VFC(燃料電池)<総電圧VB(蓄電装置)の電圧状態において燃料電池スタック11から充電を行なう蓄電装置12への昇圧動作では、第1ハイサイドアーム21aのトランジスタS1は常時OFF(開放状態)、かつ、第1ローサイドアーム21bのトランジスタS2は常時ON(導通状態)とされる。
そして、第2ローサイドアーム21dのトランジスタS4は、制御装置15から出力されるPWM信号のスイッチングデューティー(例えば、PWM信号の1周期におけるトランジスタS4のオン期間TONの比率)に応じてオン/オフが切り換えられる。
なお、第2ハイサイドアーム21cのトランジスタS3は、常時OFF(開放状態)、または、第2ローサイドアーム21dのトランジスタS4との同期スイッチング(つまり、トランジスタS3,S4が交互にオンとされる状態)とされる。
【0028】
この場合には、例えば図6(B)に示すように、先ず、トランジスタS4がオンとされることで、順次、リアクトル22、蓄電装置12、トランジスタS4に流れる電流Irによってリアクトル22が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
次に、トランジスタS4がオフとされると、リアクトル22に蓄積された磁気エネルギーによる電流Idが、第2ハイサイドアーム21cのダイオードD4を流れるようにして、蓄電装置12が充電される。
【0029】
PDU16は、例えば3相のモータMの駆動回路としてパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータなどを備え、制御装置15から出力されるPWM信号に応じて、燃料電池スタック11および蓄電装置12の直流電力を3相交流電力に変換し、3相のステータ巻線への通電を順次転流させることで、各相のステータ巻線に交流の3相電流を通電する。一方、例えばモータMの回生時には、モータMから出力される3相交流電力を直流電力に変換してDC−DCコンバータ13に供給し、蓄電装置12の充電およびDC−DCコンバータ13に接続された負荷に対する給電などをおこなう。
なお、モータMは、例えば界磁として永久磁石を利用する永久磁石式の3相交流同期モータとされており、PDU16から供給される3相交流電力により駆動制御されると共に、車両の減速時において駆動輪側からモータMに駆動力が伝達されると、モータMは発電機として機能して、いわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0030】
制御装置15は、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御するデューティー制御をおこなうとともに、PDU16の電力変換動作を制御する。
そして、制御装置15には、例えば、燃料電池スタック11から出力される電流IFCを検出する出力電流センサ31と、燃料電池スタック11の総電圧VFCを検出する電圧センサ32と、蓄電装置12の放電および充電で流れる電流IBを検出する電流センサ33と、蓄電装置12の総電圧VBを検出する電圧センサ34との各センサから出力される検出信号が入力されている。
【0031】
制御装置15は、例えば図1に示すように、駆動モータ制御部41と、消費電力算出部42と、目標電力配分設定部43と、目標電圧設定部44と、デューティー制御部45とを備えて構成されている。
【0032】
駆動モータ制御部41は、例えばモータMの駆動時においては、回転直交座標をなすdq座標上で電流のフィードバック制御(ベクトル制御)をおこなうものであり、運転者のアクセル操作およびモータMの回転数などに基づくトルク指令に応じた目標d軸電流及び目標q軸電流を演算し、目標d軸電流及び目標q軸電流に基づいて3相の各相出力電圧を算出し、各相出力電圧に応じてPDU16へPWM信号を入力すると共に、実際にPDU16からモータMに供給される各相電流の検出値をdq座標上に変換して得たd軸電流及びq軸電流と、目標d軸電流及び目標q軸電流との各偏差がゼロとなるように制御をおこなう。
【0033】
また、駆動モータ制御部41は、例えばモータMの回生時においては、モータMの回転子の回転角θmの出力波形に基づいて同期がとられたパルス(ゲート信号)に応じてPDU16のPWMインバータを駆動し、モータMから出力される3相交流電力を直流電力に変換する。このとき、駆動モータ制御部41は、ゲート信号のデューティーに応じた回生電圧のフィードバック制御をおこない、所定の電圧値をDC−DCコンバータ13の第1電力ラインL1と第2電力ラインL2との間に出力する。
【0034】
消費電力算出部42は、電源システム10から電力が供給される負荷(例えば、モータM、空調機器、車両用補機、エアポンプインバータなど)において要求される総消費電力を算出する。
【0035】
目標電力配分設定部43は、例えばモータMの駆動時においては、燃料電池スタック11の状態(例えば、発電指令に応じた燃料電池スタック11の状態変化の変化率など)と、蓄電装置12の残容量SOCとなどに基づき、燃料電池スタック11と蓄電装置12との電力配分、つまり消費電力算出部42により算出された総消費電力を燃料電池スタック11から出力される電力と蓄電装置12から出力される電力とを加算して得た値とする際の配分を設定する。
【0036】
なお、例えばモータMの駆動時における電力配分は、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーに応じた値となり、さらに、スイッチングデューティーは燃料電池スタック11の総電圧VFCと蓄電装置12の総電圧VBに応じた値となる。
さらに、燃料電池スタック11の総電圧VFCと蓄電装置12の総電圧VBとは、それぞれ燃料電池スタック11の電流IFCおよび電力と蓄電装置12の電流IBおよび電力と所定の対応関係を有する。
これらにより、スイッチングデューティーに応じた電力配分によって、燃料電池スタック11の動作点(例えば、電圧または電流または電力)と蓄電装置12の動作点(例えば、電圧または電流または電力)との対応関係が記述される。
【0037】
目標電圧設定部44は、例えば、燃料電池スタック11の動作点と、蓄電装置12の動作点と、目標電力配分設定部43により設定された電力配分と、消費電力算出部42により算出された負荷の総消費電力との対応関係を示す所定マップを参照して、燃料電池スタック11の総電圧VFCに対する目標電圧を取得する。
つまり、燃料電池スタック11の動作点(例えば、電圧または電流または電力)と蓄電装置12の動作点(例えば、電圧または電流または電力)との所定の対応関係は、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーに応じた電力配分によって記述される。このため、電力配分および総消費電力に対応する燃料電池スタック11の動作点から総電圧VFCに対する目標電圧を取得することによって、これらの電力配分および総消費電力に蓄電装置12の動作点を対応させることができる。
【0038】
デューティー制御部45は、燃料電池スタック11と蓄電装置12との実際の電力配分(実電力配分)が目標電力配分設定部43により設定された電力配分(目標電力配分)に一致するようにして、例えば電圧センサ32から出力される燃料電池スタック11の総電圧VFCの検出値が目標電圧設定部44から出力される目標電圧に一致するようにして、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御する。
デューティー制御部45は、例えば、電圧偏差算出部51と、フィードバック処理部52と、PWM信号生成部53とを備えて構成されている。
【0039】
電圧偏差算出部51は、電圧センサ32から出力される燃料電池スタック11の総電圧VFCの検出値と、目標電圧設定部44から出力される目標電圧との電圧偏差を算出して出力する。
フィードバック処理部52は、例えばPID(比例積分微分)動作により、電圧偏差算出部51から出力される電圧偏差に応じて電圧指令値を算出する。
【0040】
PWM信号生成部53は、フィードバック処理部52から出力される電圧指令値に応じた総電圧VFCを燃料電池スタック11から出力するために、DC−DCコンバータ13を駆動させるゲート信号(つまり、PWM信号)を生成して出力する。
【0041】
例えば図7に示すように、目標電力配分設定部43は、燃料電池スタック11の出力をほぼ一定に維持しつつ、車両の加速および減速に伴う総消費電力の急激な増減には、蓄電装置12の充電および放電による出力の変化で対応するようにして、燃料電池スタック11と蓄電装置との電力配分を設定する。
このため、デューティー制御部45は、総電圧VFC(燃料電池)>総電圧VB(蓄電装置)の電圧状態と総電圧VFC(燃料電池)<総電圧VB(蓄電装置)の電圧状態との2つの電圧状態と、蓄電装置12の放電および充電の2つの電流状態との組み合わせによる4つの状態でDC−DCコンバータ13を動作させるようにして、各トランジスタS1,S2,S3,S4をオン/オフ駆動させるPWM信号を出力する。
これにより、例えば図2に示すように、電流の変化に応じた各総電圧VFC(燃料電池),VB(蓄電装置)の変化を示す電流電圧特性に対し、燃料電池スタック11の電流電圧特性と蓄電装置12の電流電圧特性とは交差するように設定される。そして、総電圧VFC(燃料電池)>総電圧VB(蓄電装置)となる領域Aと、総電圧VFC(燃料電池)<総電圧VB(蓄電装置)となる領域Bとの、両方においてDC−DCコンバータ13による電圧変換が行なわれる。
なお、目標電力配分設定部43は、負荷の総消費電力が連続的に大きいときは総消費電力が連続的に小さいときに比べて、燃料電池スタック11の電力配分を大きくする。
【0042】
例えば図7に示す時刻t0から時刻t2の期間での総電圧VFC(燃料電池)>総電圧VB(蓄電装置)の電圧状態において、蓄電装置12の充電時にはオン/オフ駆動されるトランジスタS1のオン期間TONがスイッチングデューティーにより制御されることで、総電圧VFC(燃料電池)と総電圧VB(蓄電装置)との電圧差に応じた電圧がDC−DCコンバータ13から出力される。また、蓄電装置12の放電時にはオン/オフ駆動されるトランジスタS2のオン期間TONがスイッチングデューティーにより制御されることで、総電圧VFC(燃料電池)と総電圧VB(蓄電装置)との電圧差に応じた電圧がDC−DCコンバータ13から出力される。
また、例えば図7に示す時刻t2以降の期間での総電圧VFC(燃料電池)<総電圧VB(蓄電装置)の電圧状態において、蓄電装置12の放電時にはオン/オフ駆動されるトランジスタS3のオン期間TONがスイッチングデューティーにより制御されることで、総電圧VFC(燃料電池)と総電圧VB(蓄電装置)との電圧差に応じた電圧がDC−DCコンバータ13から出力される。また、蓄電装置12の充電時にはオン/オフ駆動されるトランジスタS4のオン期間TONがスイッチングデューティーにより制御されることで、総電圧VFC(燃料電池)と総電圧VB(蓄電装置)との電圧差に応じた電圧がDC−DCコンバータ13から出力される。
【0043】
なお、DC−DCコンバータ13の4つの各動作モードにおいて、2つの対をなすトランジスタS1,S2およびトランジスタS3,S4の同期スイッチングが行なわれる場合には、対をなすトランジスタ間でのオン/オフの切り換え時に、同時にオンとなることが禁止され、同時にオフとなる適宜のデッドタイムTDが設けられている。
また、DC−DCコンバータ13の各トランジスタS1,S2,S3,S4のうち、少なくとも1つのトランジスタはスイッチング周期を跨いで連続的にオンとされ、総電圧VFC(燃料電池)と総電圧VB(蓄電装置)との間の相対的な大小による2つの電圧状態において、スイッチング周期を跨いで連続的にオンとされるトランジスタが異なる。
例えば総電圧VFC(燃料電池)>総電圧VB(蓄電装置)の電圧状態においては、トランジスタS4が、蓄電装置12の充電時のスイッチング周期と放電時のスイッチング周期とを跨いで連続的にオンとされる。一方、例えば総電圧VFC(燃料電池)<総電圧VB(蓄電装置)の電圧状態においては、トランジスタS2が、蓄電装置12の充電時のスイッチング周期と放電時のスイッチング周期とを跨いで連続的にオンとされる。
【0044】
また、目標電圧設定部44は、例えば図7に示す時刻t1から時刻t3の期間のように、2つの電圧状態間の遷移時に総電圧VFC(燃料電池)と総電圧VB(蓄電装置)とが等しくなることを禁止する。
例えば図8(A)に示すように、目標電圧設定部44は、総電圧VFC(燃料電池)>総電圧VB(蓄電装置)の状態で、燃料電池スタック11および蓄電装置12の各動作点と電力配分と負荷の総消費電力とに基づき所定マップから取得した目標電圧が、総電圧VB(蓄電装置)よりも所定値(例えば、5Vなど)だけ大きい閾値VHよりも小さくなるときに、目標電圧を総電圧VB(蓄電装置)よりも小さい電圧値(例えば、総電圧VB(蓄電装置)よりも所定値(例えば、5Vなど)だけ小さい閾値VLなど)とする。このとき、目標電圧を低下させたことに起因する燃料電池スタック11の出力電力の増大分は、蓄電装置12に充電されることになる。
なお、目標電圧設定部44は、総電圧VFC(燃料電池)>総電圧VB(蓄電装置)の状態で、所定マップから取得した目標電圧が閾値VHよりも小さくなるときに、蓄電装置12の残容量SOCが所定の上限値UTHよりも大きい場合には、蓄電装置12の充電を防止するために目標電圧を閾値VHとする。
【0045】
また、例えば図8(B)に示すように、目標電圧設定部44は、総電圧VFC(燃料電池)<総電圧VB(蓄電装置)の状態で、燃料電池スタック11および蓄電装置12の各動作点と電力配分と負荷の総消費電力とに基づき所定マップから取得した目標電圧が、総電圧VB(蓄電装置)よりも所定値(例えば、5Vなど)だけ小さい閾値VLよりも大きくなるときに、目標電圧を総電圧VB(蓄電装置)よりも大きい電圧値(例えば、総電圧VB(蓄電装置)よりも所定値(例えば、5Vなど)だけ大きい閾値VHなど)とする。このとき、目標電圧を増大させたことに起因する燃料電池スタック11の出力電力の低下分は、蓄電装置12から放電されることになる。
なお、目標電圧設定部44は、総電圧VFC(燃料電池)<総電圧VB(蓄電装置)の状態で、所定マップから取得した目標電圧が閾値VLよりも大きくなるときに、蓄電装置12の残容量SOCが所定の下限値LTHよりも小さい場合には、蓄電装置12の放電を防止するために目標電圧を閾値VLとする。
【0046】
なお、制御装置15は、例えば、燃料電池車両の運転状態や、燃料電池スタック11のアノードに供給される反応ガスに含まれる水素の濃度や、燃料電池スタック11のアノードから排出される排出ガスに含まれる水素の濃度や、燃料電池スタック11の発電状態、例えば各複数の燃料電池セルの端子間電圧や、燃料電池スタック11の総電圧VFCや、燃料電池スタック11から出力される電流IFCや、燃料電池スタック11の内部温度などに基づき、燃料電池スタック11に対する発電指令として、燃料電池スタック11へ供給される反応ガスの圧力および流量に対する指令値を出力し、燃料電池スタック11の発電状態を制御する。
【0047】
本実施の形態による電源システム10は上記構成を備えており、次に、この電源システム10の動作について説明する。
【0048】
先ず、例えば図9に示すステップS01においては、電源システム10から電力が供給される負荷において要求される総消費電力を取得する。
次に、ステップS02においては、例えば図2に示す燃料電池スタック11および蓄電装置12の電流電圧特性での各領域A,Bにおける電源システム10の運転可否を判定する。
次に、ステップS03においては、各領域A,Bにおける電源システム10の運転可否の判定結果を参照しつつ、燃料電池スタック11と蓄電装置12との電力配分を設定する。
次に、ステップS04においては、燃料電池スタック11および蓄電装置12の各動作点と電力配分と負荷の総消費電力とに基づき、所定マップに対するマップ検索により目標電圧を設定する。
【0049】
そして、ステップS05においては、総電圧VFC(燃料電池)>総電圧VB(蓄電装置)であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS19に進む。
そして、ステップS06においては、目標電圧が閾値VHよりも小さいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS07に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS11に進む。
【0050】
そして、ステップS07においては、総電圧VFC(燃料電池)の検出値と目標電圧との電圧偏差に応じたフィードバック演算により電圧指令値を算出する。
そして、ステップS08においては、電圧指令値に応じた総電圧VFCを燃料電池スタック11から出力するためにDC−DCコンバータ13を駆動させるゲート信号(PWM信号)を生成する。
【0051】
そして、ステップS09においては、PWM信号に応じて、トランジスタS3は常時OFF(開放状態)、かつ、トランジスタS4は常時ON(導通状態)とする。
そして、ステップS10においては、PWM信号のスイッチングデューティーに応じて、トランジスタS1とトランジスタS2との同期スイッチングを開始し、リターンに進む。
【0052】
また、ステップS11においては、蓄電装置12の残容量SOCが所定の上限値UTHよりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS12に進み、このステップS12においては、目標電圧として閾値VHを設定して、ステップS11の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS13に進む。
そして、ステップS13においては、この時点で実行されているトランジスタS1とトランジスタS2との同期スイッチングを停止する。
そして、ステップS14においては、目標電圧として閾値VLを設定する。
【0053】
そして、ステップS15においては、総電圧VFC(燃料電池)の検出値と目標電圧との電圧偏差に応じたフィードバック演算により電圧指令値を算出する。
そして、ステップS16においては、電圧指令値に応じた総電圧VFCを燃料電池スタック11から出力するためにDC−DCコンバータ13を駆動させるゲート信号(PWM信号)を生成する。
【0054】
そして、ステップS17においては、PWM信号に応じて、トランジスタS1は常時OFF(開放状態)、かつ、トランジスタS2は常時ON(導通状態)とする。
そして、ステップS18においては、PWM信号のスイッチングデューティーに応じて、トランジスタS3とトランジスタS4との同期スイッチングを開始し、リターンに進む。
【0055】
また、ステップS19においては、目標電圧が閾値VLよりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS20に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS24に進む。
【0056】
そして、ステップS20においては、総電圧VFC(燃料電池)の検出値と目標電圧との電圧偏差に応じたフィードバック演算により電圧指令値を算出する。
そして、ステップS21においては、電圧指令値に応じた総電圧VFCを燃料電池スタック11から出力するためにDC−DCコンバータ13を駆動させるゲート信号(PWM信号)を生成する。
【0057】
そして、ステップS22においては、PWM信号に応じて、トランジスタS1は常時OFF(開放状態)、かつ、トランジスタS2は常時ON(導通状態)とする。
そして、ステップS23においては、PWM信号のスイッチングデューティーに応じて、トランジスタS3とトランジスタS4との同期スイッチングを開始し、リターンに進む。
【0058】
また、ステップS24においては、蓄電装置12の残容量SOCが所定の下限値LTHよりも小さいか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS25に進み、このステップS25においては、目標電圧として閾値VLを設定して、ステップS24の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS26に進む。
そして、ステップS26においては、この時点で実行されているトランジスタS3とトランジスタS4との同期スイッチングを停止する。
そして、ステップS27においては、目標電圧として閾値VHを設定する。
【0059】
そして、ステップS28においては、総電圧VFC(燃料電池)の検出値と目標電圧との電圧偏差に応じたフィードバック演算により電圧指令値を算出する。
そして、ステップS29においては、電圧指令値に応じた総電圧VFCを燃料電池スタック11から出力するためにDC−DCコンバータ13を駆動させるゲート信号(PWM信号)を生成する。
【0060】
そして、ステップS30においては、PWM信号に応じて、トランジスタS3は常時OFF(開放状態)、かつ、トランジスタS4は常時ON(導通状態)とする。
そして、ステップS31においては、PWM信号のスイッチングデューティーに応じて、トランジスタS1とトランジスタS2との同期スイッチングを開始し、リターンに進む。
【0061】
上述したように、本発明の実施形態による電源システム10によれば、DC−DCコンバータ13を、総電圧VFC(燃料電池)と総電圧VB(蓄電装置)との間の相対的な大小による2つの電圧状態と、蓄電装置12の放電および充電の2つの電流状態との組み合わせによる4つの状態で動作可能とする。
これにより、電動車両での負荷において要求される総消費電力に対する燃料電池スタック11と蓄電装置12との電力配分を、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作によって、適正に制御することができる制御範囲(例えば、燃料電池スタック11と蓄電装置12との制御電圧範囲、蓄電装置12の制御残容量範囲など)を拡大することができる。そして、この制御範囲の拡大に伴い、燃料電池スタック11の運転効率を向上させることができる。
【0062】
さらに、総電圧VFC(燃料電池)が総電圧VB(蓄電装置)よりも大きい場合および小さい場合の両方の電圧状態において、蓄電装置12の放電および充電を行なうことができ、蓄電装置12の制御電圧範囲を拡大することができることに伴い、蓄電装置12の制御残容量範囲を拡大することができる。そして、この制御残容量範囲の拡大に伴い、燃料電池スタック11の出力変動を抑制し、燃料電池スタック11の劣化を抑制することができる。
【0063】
さらに、電動車両での負荷において要求される総消費電力の増大に伴い、燃料電池スタック11の出力電力を増大させることで、燃料電池スタック11から出力される電流IFCが増大し、燃料電池スタック11の総電圧VFC(燃料電池)が低下する場合であっても、蓄電装置12の放電および充電を適正に行なうことができる。
【0064】
さらに、総電圧VFC(燃料電池)>総電圧VB(蓄電装置)と、総電圧VFC(燃料電池)<総電圧VB(蓄電装置)とにおいて、蓄電装置12の充電時のスイッチング周期と放電時のスイッチング周期とを跨いで連続的にオンとされるトランジスタが異なることにより、蓄電装置12の放電および充電を適正に行なうことができる。
【0065】
なお、上述した実施の形態において、蓄電装置12はDC−DCコンバータ13の内部に接続されるとしたが、これに限定されず、例えば蓄電装置12は、DC−DCコンバータ13の1次側において、第1電力ラインL1と第2電力ラインL2との間に並列に接続されてもよい。
また、DC−DCコンバータ13は、単に、総電圧VFCと総電圧VBとの間の相対的な大小による2つの電圧状態と、蓄電装置12の放電および充電の2つの電流状態との組み合わせによる4つの状態(動作モード)で動作可能であればよく、例えば上述した実施の形態のDC−DCコンバータ13においてトランジスタS1とトランジスタS3との接続は省略されてもよい。
【0066】
なお、上述した実施の形態においては、燃料電池スタック11の代わりに他の発電装置を備えてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 電動車両の電源システム
11 燃料電池スタック
12 蓄電装置
13 DC−DCコンバータ
15 制御装置
22 リアクトル
41 駆動モータ制御部
42 消費電力算出部
43 目標電力配分設定部
44 目標電圧設定部
45 デューティー制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ駆動装置と、燃料電池と、蓄電装置と、DC−DCコンバータとを備え、
前記モータ駆動装置および前記燃料電池は前記DC−DCコンバータの2次側入出力部に接続され、
前記蓄電装置は前記DC−DCコンバータの1次側入出力部あるいは前記DC−DCコンバータの内部に接続され、
前記DC−DCコンバータは、前記燃料電池の総電圧と前記蓄電装置の総電圧との間の相対的な大小による2つの電圧状態と、前記蓄電装置の放電および充電の2つの電流状態との組み合わせによる4つの状態で動作可能であって、
電流の変化に応じた前記総電圧の変化を示す電流電圧特性に対し、前記燃料電池の前記電流電圧特性と前記蓄電装置の前記電流電圧特性とは交差するように設定されていることを特徴とする電動車両の電源システム。
【請求項2】
総要求電力に対する前記燃料電池の出力電力と前記蓄電装置の出力電力との間の配分に対し、前記総要求電力が連続的に大きいときは前記総要求電力が連続的に小さいときに比べて、前記燃料電池の前記出力電力の前記配分は大きくされ、
前記DC−DCコンバータのスイッチング動作は、前記燃料電池の前記総電圧と前記蓄電装置の前記総電圧との間の相対的な大小に応じて制御されることを特徴とする請求項1に記載の電動車両の電源システム。
【請求項3】
前記DC−DCコンバータのスイッチング素子のうち、少なくとも1つのスイッチング素子はスイッチング周期を跨いで連続的にオンとされ、
前記燃料電池の前記総電圧と前記蓄電装置の前記総電圧との間の相対的な大小による2つの前記電圧状態において、前記スイッチング周期を跨いで連続的にオンとされる前記スイッチング素子が異なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動車両の電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−187449(P2010−187449A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29097(P2009−29097)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】