説明

電動車両

【課題】車載の高圧系部品が車両外部の電源または電気負荷と電気的に接続されているとき、漏洩電流およびノイズを低減し、かつ、高圧系部品が車両外部の電源または電気負荷と電気的に接続されていないときも、ノイズの増大を抑制可能な電動車両を提供する。
【解決手段】浮遊容量C11は、インバータ20,30やモータジェネレータMG1,MG2を含む高圧系部品と車両アース70との間の固有の浮遊容量を示す。容量C12は、高圧系部品と車両アースとの間に介挿される。接続スイッチSWは、信号IGが活性化されているとき、ECU60によってオンされ、信号IGが非活性化されているとき、ECU60によってオフされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動車両に関し、特に、車両に搭載された蓄電装置と車両外部の電源または電気負荷との間で電力を授受可能な電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平4−295202号公報は、車両外部の交流電源と車載直流電源との間で電力を授受可能な電動機駆動および動力処理装置を開示する。この装置は、直流電源と、2つのインバータと、2つの誘導電動機と、制御ユニットと、入力/出力ポートと、EMIフィルタとを備える。各誘導電動機は、Y結線された巻線を含み、各巻線の中性点に入力/出力ポートが接続される。
【0003】
この装置においては、再充電モード時、入力/出力ポートに接続される単相電源から各巻線の中性点に与えられる交流電力を直流電力に変換して直流電源を充電することができる。また、各巻線の中性点間に正弦波の調整された交流電力を発生し、その発生した交流電力を入力/出力ポートに接続される外部装置へ出力することができる。
【0004】
EMIフィルタは、各巻線の中性点と入力/出力ポートとの間に設けられ、入力/出力ポートに現れる高周波のノイズを低減させる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−295202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に開示される装置において、再充電モード時、直流電源、インバータおよび誘導電動機を含む高圧系部品と車両アースとの間の浮遊容量が大きいと、車両アースと車両外部のアースとの間に大きな漏洩電流が流れ得る。また、EMIフィルタがYコンデンサから成る場合、上記浮遊容量とYコンデンサの静電容量とは、車両アースに対して電気的に並列接続される関係になる。ここで、安全性の観点から、対地容量については規格により上限値が定められているので、高圧系部品と車両アースとの間の浮遊容量が大きいと、Yコンデンサの静電容量を大きくすることができなくなる。その結果、EMIフィルタによるノイズ低減効果を十分に得られない可能性がある。
【0006】
一方、入力/出力ポートに単相電源が接続されていないとき、すなわち駆動モード時は、高圧系部品と車両アースとの間の浮遊容量が小さいと、いわゆるラジオノイズが増大し、車両の電子制御装置を含む種々の車載電子機器に悪影響を与え得る。
【0007】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、車載の高圧系部品が車両外部の電源または電気負荷と電気的に接続されているとき、漏洩電流およびノイズを低減し、かつ、高圧系部品が車両外部の電源または電気負荷と電気的に接続されていないときも、ノイズの増大を抑制可能な電動車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によれば、電動車両は、蓄電装置と、インバータと、車両走行用の電動機と、接続部と、電力変換装置と、ノイズフィルタと、浮遊容量切替手段とを備える。インバータは、蓄電装置の電力を受けて動作する。電動機は、インバータによって駆動される。接続部は、車両外部の電源または電気負荷に接続可能である。電力変換装置は、接続部を介して車両外部の電源から蓄電装置の充電および蓄電装置から車両外部の電気負荷への給電の少なくとも一方を実行可能に構成される。ノイズフィルタは、接続部を電力変換装置と接続する電力線と車両アースとの間に配設される。浮遊容量切替手段は、車両外部の電源または電気負荷に接続部が接続されているとき、蓄電装置、インバータ、電動機および電力変換装置を含む高圧系部品と車両アースとの間に静電容量を介挿することによって、車両外部の電源または電気負荷に接続部が接続されていないときよりも高圧系部品と車両アースとの間の浮遊容量を低減させる。
【0009】
好ましくは、浮遊容量切替手段は、絶縁材と、接続スイッチとを含む。絶縁材は、高圧系部品と車両アースとの間に介挿可能な静電容量に対応し、車両アースに高圧系部品を固定する。接続スイッチは、車両アースと高圧系部品との間に絶縁材に電気的に並列接続される。そして、接続スイッチは、車両外部の電源または電気負荷に接続部が接続されているときオフされ、車両外部の電源または電気負荷に接続部が接続されていないときオンされる。
【0010】
さらに好ましくは、絶縁材の静電容量は、高圧系部品と車両アースとの間の固有の浮遊容量よりも小さい。なお、固有の浮遊容量とは、高圧系部品と車両アースとの間に静電容量が介挿されていないときの高圧系部品と車両アースとの間の浮遊容量を意味する。
【0011】
好ましくは、接続スイッチは、車両外部の電源または電気負荷に接続部が接続されているか否かに応じてオン/オフされる。
【0012】
好ましくは、ノイズフィルタは、ラインバイパスコンデンサを含む。
【発明の効果】
【0013】
この発明においては、車両外部の電源または電気負荷に接続部を接続することによって、車両外部の電源から蓄電装置の充電および蓄電装置から車両外部の電気負荷への給電の少なくとも一方が可能である。そして、車両外部の電源または電気負荷に接続部が接続されているとき、浮遊容量切替手段により高圧系部品と車両アースとの間に静電容量が介挿されることによって高圧系部品と車両アースとの間の浮遊容量が低減するので、漏洩電流が抑制されるとともにノイズフィルタの容量を大きくすることが可能となる。一方、車両外部の電源または電気負荷に接続部が接続されていないときは、高圧系部品と車両アースとの間の浮遊容量は低減しないので、ラジオノイズが増大することはない。
【0014】
したがって、この発明によれば、車両外部の電源または電気負荷と電気的に接続されているとき、漏洩電流およびノイズを低減し、かつ、車両外部の電源または電気負荷と電気的に接続されていないときも、ノイズの増大を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0016】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による電動車両のパワートレーン構成を示す全体ブロック図である。図1を参照して、電動車両100は、蓄電装置Bと、昇圧コンバータ10と、インバータ20,30と、モータジェネレータMG1,MG2と、電子制御装置(Electronic Control Unit:以下「ECU」と称する。)60と、平滑コンデンサC1,C2と、正極線PL1,PL2と、負極線NL1,NL2とを備える。また、電動車両100は、電力線ACL1,ACL2と、ノイズフィルタ40と、プラグ50とをさらに備える。
【0017】
この電動車両100では、モータジェネレータMG1,MG2は、図示されない動力伝達機構と連結され、動力伝達機構にさらに連結される駆動軸を介して回転駆動力が車輪へ伝達される。なお、電動車両100がハイブリッド車両から成る場合、図示されないエンジンをモータジェネレータMG1に連結し、エンジンの発生する運動エネルギーを用いてモータジェネレータMG1により発電が行なわれる。
【0018】
また、この電動車両100は、後ほど説明するように、車両外部の電源または電気負荷を総括的に示す外部負荷80にプラグ50を接続することによって、蓄電装置Bと外部負荷80との間で電力を授受することができる。
【0019】
蓄電装置Bは、正極線PL1および負極線NL1を介して昇圧コンバータ10に接続される。蓄電装置Bは、充放電可能な直流電源であり、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池から成る。なお、蓄電装置Bとして、大容量のキャパシタも採用可能であり、モータジェネレータMG1,MG2による発電電力やプラグ50に接続される外部負荷80からの電力を一時的に蓄え、その蓄えた電力をモータジェネレータMG2へ供給可能な電力バッファであれば如何なるものでもよい。
【0020】
平滑コンデンサC1は、正極線PL1と負極線NL1との間に接続される。平滑コンデンサC1は、正極線PL1と負極線NL1との間の電圧変動を平滑化する。
【0021】
昇圧コンバータ10は、正極線PL1および負極線NL1と、正極線PL2および負極線NL2との間に接続される。昇圧コンバータ10は、ECU60からの信号PWMCに基づいて、蓄電装置Bから出力される直流電力を昇圧して正極線PL2へ出力する。また、昇圧コンバータ10は、信号PWMCに基づいて、インバータ20,30から供給される電力を蓄電装置Bの電圧レベルに降圧して蓄電装置Bを充電する。昇圧コンバータ10は、たとえば、昇降圧型のチョッパ回路によって構成される。
【0022】
平滑コンデンサC2は、正極線PL2と負極線NL2との間に接続される。平滑コンデンサC2は、正極線PL2と負極線NL2との間の電圧変動を平滑化する。
【0023】
インバータ20,30は、互いに並列して正極線PL2および負極線NL2に接続される。そして、インバータ20,30は、正極線PL2および負極線NL2から供給される直流電力を交流電力に変換してそれぞれモータジェネレータMG1,MG2へ出力する。また、インバータ20,30は、それぞれモータジェネレータMG1,MG2により発電された電力を直流電力に変換して正極線PL2および負極線NL2へ出力する。
【0024】
なお、各インバータ20,30は、たとえば、三相分のスイッチング素子を含むブリッジ回路から成る。そして、インバータ20,30は、それぞれECU60からの信号PWMI1,PWMI2に応じてスイッチング動作を行なうことにより、対応のモータジェネレータを駆動する。
【0025】
また、インバータ20,30は、車両外部の電源(たとえば系統電源)としての外部負荷80から蓄電装置Bへの充電時、プラグ50および電力線ACL1,ACL2を介してモータジェネレータMG1,MG2の中性点N1,N2に与えられる交流電力を直流電力に変換して正極線PL2および負極線NL2へ出力し、蓄電装置Bを充電する。また、インバータ20,30は、交流電気負荷(たとえば家電)としての外部負荷80への給電時、所定の周波数(たとえば商用電源周波数)を有する交流電圧を中性点N1,N2間に発生させ、プラグ50から外部負荷80へ交流電力が出力される。
【0026】
モータジェネレータMG1,MG2の各々は、三相交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石を有する三相永久磁石同期モータから成る。モータジェネレータMG1,MG2の各々は、Y結線された三相コイルを含み、モータジェネレータMG1の三相コイルはインバータ20に接続され、モータジェネレータMG2の三相コイルはインバータ30に接続される。そして、モータジェネレータMG1,MG2は、それぞれインバータ20,30によって駆動される。
【0027】
電力線ACL1は、モータジェネレータMG1の三相コイルの中性点N1とプラグ50との間に配線される。電力線ACL2は、モータジェネレータMG2の三相コイルの中性点N2とプラグ50との間に配線される。
【0028】
ノイズフィルタ40は、電力線ACL1,ACL2と車両アース70との間に配設される。ノイズフィルタ40は、コンデンサC9,C10を含むラインバイパスコンデンサ(Yコンデンサとも称される。)から成る。すなわち、コンデンサC9は、電力線ACL1と車両アース70との間に接続され、コンデンサC10は、電力線ACL2と車両アース70との間に接続される。このノイズフィルタ40は、プラグ50が外部負荷80に接続されているとき、インバータ20,30の高周波スイッチングに起因して発生するコモンモードノイズを抑制する。
【0029】
プラグ50は、電力線ACL1,ACL2に接続される。プラグ50は、電動車両100と外部負荷80との間で電力を授受するための電力インターフェースである。この電力インターフェースは、電力授受が可能な構成であれば、無線式や有線式など如何なる方式でもよい。
【0030】
ECU60は、昇圧コンバータ10を駆動するための信号PWMCを生成し、その生成した信号PWMCを昇圧コンバータ10へ出力する。また、ECU60は、モータジェネレータMG1,MG2をそれぞれ駆動するための信号PWMI1,PWMI2を生成し、その生成した信号PWMI1,PWMI2をそれぞれインバータ20,30へ出力する。
【0031】
ここで、外部電源としての外部負荷80から蓄電装置Bの充電が要求されると、ECU60は、中性点N1,N2に与えられる外部負荷80からの交流電力を直流電力に変換して蓄電装置Bを充電するようにインバータ20,30を制御する。また、交流電気負荷としての外部負荷80への給電が要求されると、ECU60は、中性点N1,N2間に交流電圧を発生して外部負荷80へ出力するようにインバータ20,30を制御する。
【0032】
容量C3〜C8は、蓄電装置B、昇圧コンバータ10、インバータ20,30およびモータジェネレータMG1,MG2から成る高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量を示す。より具体的には、容量C3は、正極線PL1と車両アース70との間の浮遊容量を示し、容量C4は、負極線NL1と車両アース70との間の浮遊容量を示す。容量C5は、正極線PL2と車両アース70との間の浮遊容量を示し、容量C6は、負極線NL2と車両アース70との間の浮遊容量を示す。容量C7は、モータジェネレータMG1と車両アース70との間の浮遊容量を示し、容量C8は、モータジェネレータMG2と車両アース70との間の浮遊容量を示す。なお、車両アース70としては、たとえば車両ボディや車両フレームなどが用いられる。
【0033】
ここで、プラグ50が外部負荷80に接続されているとき、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量が大きいと、車両アース70と外部負荷80のアース90との間に大きな漏洩電流が流れ得る。また、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量が大きいと、ノイズフィルタ40の容量を大きくすることができないという問題が発生する。
【0034】
図2は、図1に示した電動車両100の対地容量と漏洩電流との関係を示した図である。図2を参照して、横軸は、対地容量(車両アース70に対する容量)を示し、縦軸は、車両アース70と外部負荷80のアース90との間に流れ得る漏洩電流を示す。図示されるように、対地容量と漏洩電流とは比例関係にある。漏洩電流には、安全性の観点から規格値IR(上限値)が定められている。Cmaxは、漏洩電流の規格値IRに対応する対地容量の最大値を示す。すなわち、電動車両100の対地容量は、最大値Cmax以下に抑える必要がある。
【0035】
Chは、高圧系部品の浮遊容量を示す(点P1)。ここで、図1に示されるように、高圧系部品の浮遊容量とノイズフィルタ40とは、車両アース70に対して電気的に並列に接続される関係にあるので、ノイズフィルタ40の静電容量をCfとすると、ノイズフィルタ40が設けられることによって対地容量はCfだけ増加する(点P2)。
【0036】
そして、上述のように、トータルの対地容量(Ch+Cf)は最大値Cmax以下に抑える必要があるので、高圧系部品の浮遊容量Chが大きいと、ノイズフィルタ40の静電容量Cfを大きくすることができなくなる。そうすると、ノイズフィルタ40によるノイズ低減効果が十分に得られなくなる。
【0037】
そこで、この実施の形態1では、プラグ50が外部負荷80に接続されているとき、高圧系部品と車両アース70との間に静電容量を介挿することによって、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量を低減させる。具体的には、たとえば、高絶縁性の絶縁材を介して高圧系部品を車両アース70に固定する。
【0038】
図3は、高圧系部品と車両アース70との間に静電容量が介挿された様子を概念的に示した図である。図3を参照して、容量C11は、高圧系部品の固有の浮遊容量を総括的に示す。ここで、固有の浮遊容量とは、高圧系部品と車両アース70との間に静電容量が介挿されていないときの高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量を意味する。容量C12は、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量を低減させるために高圧系部品と車両アース70との間に介挿される静電容量を示す。より具体的には、容量C12は、高圧系部品を車両アース70に固定する絶縁材の静電容量を示す。
【0039】
容量C12を有する静電容量が高圧系部品と車両アース70との間に介挿されることにより、高圧系部品の対地容量(車両アース70に対する容量)は、Ct=C11×C12/(C11+C12)となる。したがって、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量Ctは、高圧系部品の固有の浮遊容量C11よりも小さくなり、静電容量の小さい高絶縁性の絶縁材を容量C12として採用することによって浮遊容量Ctを十分に小さくすることができる。
【0040】
高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量が低減すると、漏洩電流が低減し、また、プラグ50に接続された外部負荷80へのノイズも低減するが、一方でいわゆるラジオノイズが増大し、ECU60(図1)を含む車載電子機器に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0041】
そこで、この実施の形態1では、プラグ50が外部負荷80に接続されていないときは、高圧系部品のケースを車両アース70と電気的に短絡させることによって絶縁材(容量C12)の効果を無くし、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量を増加させる。すなわち、この実施の形態1では、プラグ50が外部負荷80に接続されているときと、プラグ50が外部負荷80に接続されていないときとで、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量が切替えられる。
【0042】
図4は、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量の切替手段の構成を具体的に示した図である。図4を参照して、電動車両100は、接続スイッチSWをさらに備える。接続スイッチSWは、容量C12に並列接続される。より具体的には、接続スイッチSWは、容量C12を有する絶縁材によって固定される高圧系部品のケースと車両アース70との間に接続される。接続スイッチSWは、常開リレーであってもよいし、常閉リレーであってもよい。
【0043】
接続スイッチSWは、ECU60によってオン/オフされる。たとえば、信号IGは、車両が走行可能状態にシステム起動されているときに活性化され、かつ、プラグ50が外部負荷80に接続されているときなど車両が走行可能状態でないときは非活性化される信号であるとして、接続スイッチSWは、信号IGが活性化されているとき、ECU60によってオンされ、信号IGが非活性化されているとき、ECU60によってオフされる。
【0044】
この図4では、接続スイッチSWがECU60によってオフされている場合が示されている。これにより、静電容量C12を有する絶縁材が高圧系部品と車両アース70との間に介挿された状態が形成され、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量は、高圧系部品固有の浮遊容量C11よりも小さくなる。
【0045】
図5は、図4に示した接続スイッチSWがオンされた状態を示した図である。図5を参照して、接続スイッチSWがオンされているとき、静電容量C12を有する絶縁材は電気的に機能せず、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量はC11となる。したがって、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量は、プラグ50が外部負荷80に接続されているときよりも大きくなる。
【0046】
このようにして、車両が走行可能状態にシステム起動されているか否かを示す信号IGに応じて、静電容量C12を有する絶縁材および接続スイッチSWを用いて、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量が切替えられる。
【0047】
次に、外部負荷80から蓄電装置Bの充電時および蓄電装置Bから外部負荷80への給電時におけるインバータ20,30の動作について説明する。
【0048】
図6は、図1に示したインバータ20,30およびモータジェネレータMG1,MG2の零相等価回路を示した図である。図6を参照して、インバータ20,30の各々は、上述のように三相ブリッジ回路から成り、各インバータにおける6個のスイッチング素子のオン/オフの組合わせは8パターン存在する。その8つのスイッチングパターンのうち2つは相間電圧が零となり、そのような電圧状態は零電圧ベクトルと称される。零電圧ベクトルについては、上アームの3つのスイッチング素子は互いに同じスイッチング状態(全てオンまたはオフ)とみなすことができ、また、下アームの3つのスイッチング素子も互いに同じスイッチング状態とみなすことができる。
【0049】
外部負荷80から蓄電装置Bの充電時または蓄電装置Bから外部負荷80への給電時、インバータ20,30においては、ECU60によって零電圧ベクトルが制御される。したがって、外部負荷80から蓄電装置Bの充電時または蓄電装置Bから外部負荷80への給電時、各インバータの上アームの3つのスイッチング素子は互いに同じスイッチング状態とみなすことができ、下アームの3つのスイッチング素子も互いに同じスイッチング状態とみなすことができるので、この図6では、インバータ20の上アームの3つのスイッチング素子は上アーム20Aとしてまとめて示され、インバータ20の下アームの3つのスイッチング素子は下アーム20Bとしてまとめて示されている。同様に、インバータ30の上アームの3つのスイッチング素子は上アーム30Aとしてまとめて示され、インバータ30の下アームの3つのスイッチング素子は下アーム30Bとしてまとめて示されている。
【0050】
そして、図6に示されるように、この零相等価回路は、電力線ACL1,ACL2を介して中性点N1,N2に与えられる単相交流電力を入力とする単相PWMコンバータとみることができる。そこで、インバータ20,30の各々において零電圧ベクトルを変化させ、インバータ20,30を単相PWMコンバータのアームとして動作するようにスイッチング制御することによって、電力線ACL1,ACL2から入力される交流電力を直流電力に変換して正極線PL2および負極線NL2へ出力することができる。
【0051】
また、この零相等価回路は、正極線PL2および負極線NL2から供給される直流電圧を用いて中性点N1,N2間に単相交流電圧を生じさせる単相PWMインバータとみることもできる。そこで、インバータ20,30の各々において零電圧ベクトルを変化させ、インバータ20,30を単相PWMインバータのアームとして動作するようにスイッチング制御することによって、正極線PL2および負極線NL2から供給される直流電力を交流電力に変換してプラグ50から外部負荷80へ給電することができる。
【0052】
このようにして、外部負荷80から蓄電装置Bの充電および蓄電装置Bから外部負荷80への給電が行なわれる。
【0053】
以上のように、この実施の形態1においては、外部負荷80にプラグ50を接続することによって、外部負荷80から蓄電装置Bの充電および蓄電装置Bから外部負荷80への給電の少なくとも一方が可能である。そして、外部負荷80にプラグ50が接続されているとき、高圧系部品と車両アース70との間に絶縁材(容量C12)が介挿されることによって高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量が低減するので、漏洩電流が抑制されるとともにノイズフィルタ40の容量を大きくすることが可能となる。一方、外部負荷80にプラグ50が接続されていないときは、接続スイッチSWがオンされることにより絶縁材は容量として機能せず、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量は低減しないので、ラジオノイズが増大することはない。
【0054】
したがって、この実施の形態1によれば、電動車両100が外部負荷80と電気的に接続されているとき、漏洩電流およびノイズを低減し、かつ、電動車両100が外部負荷80と電気的に接続されていないときも、ノイズの増大を抑制することができる。
【0055】
[実施の形態2]
実施の形態1では、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量を切替えるための接続スイッチSWは、信号IGに応答してECU60によりオン/オフされるものとしたが、この実施の形態2では、プラグ50が外部負荷80に接続されているか否かに応じて接続スイッチSWのオン/オフが切替えられる。
【0056】
図7は、実施の形態2における、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量の切替手段の構成を具体的に示した図である。図7を参照して、実施の形態2による電動車両は、接続スイッチSWを備えるとともに信号生成部120をさらに備える。信号生成部120は、プラグ50が外部負荷80に接続されているか否かを検知する。そして、信号生成部120は、プラグ50が外部負荷80に接続されているとき、接続スイッチSWをオフするための信号を生成して接続スイッチSWへ出力し、プラグ50が外部負荷80に接続されていないときは、接続スイッチSWをオンするための信号を生成して接続スイッチSWへ出力する。
【0057】
なお、この図7では、プラグ50が外部負荷80に接続されており、接続スイッチSWが信号生成部120によってオフされている場合が示されている。これにより、静電容量C12を有する絶縁材が高圧系部品と車両アース70との間に介挿された状態が形成され、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量は、高圧系部品固有の浮遊容量C11よりも小さくなる。
【0058】
図8は、プラグ50が外部負荷80に接続されていないときの状態を示した図である。図8を参照して、プラグ50が外部負荷80に接続されていないとき、信号生成部120は、接続スイッチSWをオンさせる。したがって、上述のように、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量は、プラグ50が外部負荷80に接続されているときよりも大きくなる。
【0059】
以上のように、この実施の形態2においては、プラグ50が外部負荷80に接続されているか否かに応じて、高圧系部品と車両アース70との間の浮遊容量が切替えられる。したがって、この実施の形態2によれば、接続スイッチSWの切替信号を生成するための制御ロジックをECU60に設ける必要がなく、ECU60のコスト上昇を抑制できる。
【0060】
なお、上記の実施の形態1,2においては、外部負荷80から蓄電装置Bの充電時または蓄電装置Bから外部負荷80への給電時、インバータ20,30およびモータジェネレータMG1,MG2を用いて、モータジェネレータMG1,MG2の中性点N1,N2に接続されるプラグ50を介して外部負荷80と電力を授受するものとしたが、外部負荷80と電力を授受するための専用のインバータを別途設けてもよい。
【0061】
図9は、そのような専用のインバータを別途備えた電動車両の全体ブロック図である。図9を参照して、電動車両100Aは、図1に示した電動車両100の構成においてインバータ110をさらに備える。
【0062】
インバータ110は、正極線PL2および負極線NL2と、電力線ACL1,ACL2との間に接続される。電力線ACL1,ACL2には、図1に示した電動車両100と同様に、ノイズフィルタ40が設けられる。そして、インバータ110は、プラグ50に接続される外部負荷80から蓄電装置Bの充電時、ECU60Aからの信号PWMI3に基づいて、プラグ50から入力される交流電力を直流電力に変換して正極線PL2および負極線NL2へ出力する。そして、インバータ110から正極線PL2および負極線NL2に供給される直流電力を昇圧コンバータ10により蓄電装置Bの電圧レベルに変換して蓄電装置Bを充電することができる。
【0063】
また、インバータ110は、蓄電装置Bから外部負荷80への給電時、ECU60Aからの信号PWMI3に基づいて、商用電源周波数を有する交流電圧を生成し、その生成した交流電圧を電力線ACL1,ACL2およびプラグ50を介して外部負荷80へ出力する。なお、電動車両100Aのその他の構成は、図1に示した電動車両100と同じである。
【0064】
なお、この発明は、エンジンさらにを搭載したハイブリッド車両、エンジンを搭載しない電気自動車、燃料電池をさらに搭載した燃料電池車など、各種電動車両に適用可能である。なお、ハイブリッド車両においては、シリーズ型、パラレル型、シリーズ/パラレル型のいずれのハイブリッド車両にもこの発明は適用可能である。
【0065】
なお、上記において、インバータ20,30は、この発明における「インバータ」の一実施例に対応し、モータジェネレータMG1,MG2は、この発明における「電動機」の一実施例に対応する。また、プラグ50は、この発明における「接続部」の一実施例に対応し、インバータ20,30、モータジェネレータMG1,MG2および昇圧コンバータ10は、この発明における「電力変換装置」の一実施例を形成する。また、インバータ110も、この発明における「電力変換装置」の一実施例に対応する。
【0066】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の実施の形態1による電動車両のパワートレーン構成を示す全体ブロック図である。
【図2】図1に示す電動車両の対地容量と漏洩電流との関係を示した図である。
【図3】高圧系部品と車両アースとの間に静電容量が介挿された様子を概念的に示した図である。
【図4】高圧系部品と車両アースとの間の浮遊容量の切替手段の構成を具体的に示した図である。
【図5】図4に示す接続スイッチがオンされた状態を示した図である。
【図6】図1に示すインバータおよびモータジェネレータの零相等価回路を示した図である。
【図7】実施の形態2における、高圧系部品と車両アースとの間の浮遊容量の切替手段の構成を具体的に示した図である。
【図8】プラグが外部負荷に接続されていないときの状態を示した図である。
【図9】外部負荷と電力を授受するための専用のインバータを別途備えた電動車両の全体ブロック図である。
【符号の説明】
【0068】
10 昇圧コンバータ、20,30,110 インバータ、20A,30A 上アーム、20B,30B 下アーム、40 ノイズフィルタ、50 プラグ、60 ECU、70 車両アース、80 外部負荷、90 アース、100,100A 電動車両、120 信号生成部、B 蓄電装置、C1,C2 平滑コンデンサ、MG1,MG2 モータジェネレータ、PL1,PL2 正極線、NL1,NL2 負極線、ACL1,ACL2 電力線、N1,N2 中性点、C3〜C8 浮遊容量、C9,C10 コンデンサ、C11,C12 容量、SW 接続スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、
前記蓄電装置の電力を受けて動作するインバータと、
前記インバータによって駆動される車両走行用の電動機と、
車両外部の電源または電気負荷に接続可能な接続部と、
前記接続部を介して前記電源から前記蓄電装置の充電および前記蓄電装置から前記電気負荷への給電の少なくとも一方を実行可能に構成された電力変換装置と、
前記接続部を前記電力変換装置と接続する電力線と車両アースとの間に配設されるノイズフィルタと、
前記電源または前記電気負荷に前記接続部が接続されているとき、前記蓄電装置、前記インバータ、前記電動機および前記電力変換装置を含む高圧系部品と前記車両アースとの間に静電容量を介挿することによって、前記電源または前記電気負荷に前記接続部が接続されていないときよりも前記高圧系部品と前記車両アースとの間の浮遊容量を低減させる浮遊容量切替手段とを備える電動車両。
【請求項2】
前記浮遊容量切替手段は、
前記静電容量に対応し、前記車両アースに前記高圧系部品を固定する絶縁材と、
前記車両アースと前記高圧系部品との間に前記絶縁材に電気的に並列接続される接続スイッチとを含み、
前記接続スイッチは、前記電源または前記電気負荷に前記接続部が接続されているときオフされ、前記電源または前記電気負荷に前記接続部が接続されていないときオンされる、請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記絶縁材の静電容量は、前記高圧系部品と前記車両アースとの間の固有の浮遊容量よりも小さい、請求項2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記接続スイッチは、前記電源または前記電気負荷に前記接続部が接続されているか否かに応じてオン/オフされる、請求項2または請求項3に記載の電動車両。
【請求項5】
前記ノイズフィルタは、ラインバイパスコンデンサを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−33891(P2009−33891A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196296(P2007−196296)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】