説明

電子モジュール

【課題】放熱性が向上するとともに、小型化の可能な電子モジュールを提供することにある。
【解決手段】金属基板3は、金属より成るベース31の上面に樹脂による絶縁層32を介して形成された導体配線33を有する。モールドケース4は、金属基板3と電子部品を収容し、外部との電気的接続を行う為のバスバーやターミナル端子がインサートモールドされている。金属基板3は、導電性部材で構成された金属より成るベースが、車両の周囲にある接地されている導電性部材に対して非接触とし、絶縁部材で構成された接着部材によって、絶縁部材で構成された前記モールドケースに接着固定されており、前記金属基板のベースは電気的に非接地とした構造である。金属基板3は、モールドケース4の端面と接着固定されており、金属基板のベースの面は、モールドケース外側の大気中に露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子モジュールに係り、特に、車載用電子モジュールとして好適な電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車では、環境対応や小型軽量化の為、多くの車載用部品の電子電動化が進んでいる。その中で、車載部品を制御する為の電子モジュールの需要も増加している。
【0003】
電子モジュールの中で、例えば、モータを制御する為のモータ制御装置では、一般的にMOSFET,IGBT,トランジスタなどのスイッチング素子を車載制御ユニットなどからの指令によりスイッチング制御し、モータを駆動している。その際、通電される電流による発熱により、温度に弱い半導体素子や基板が耐熱温度を超えることが懸念される。
【0004】
特にエンジンルーム内で使用されるモータ制御装置では、エンジンルーム内の狭小化や高密度化に伴い、周囲環境温度も上昇してきている。また、アクチュエータとして駆動するモータの負荷も増加しており、通流される電流も大きくなってきている。
【0005】
その様な製品では、大電流を放熱する為に、銅のリードフレームに直接チップを実装したものや、セラミック基板、金属基板等の高放熱基板が使用されてきている。その中でも、近年では、非常に安価である金属基板が注目され多く使用されている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【0006】
金属基板は、金属からなるベースの上に、樹脂の絶縁層を介して導体配線を積層した構造であり、シンプルな構造であることから安価に製造できる基板ではあるが、その反面、外的な負荷要因や温度上昇の影響などにより、絶縁層へダメージが加わることで、導体配線がショートすることが懸念される。
【0007】
これらに関しては、製品の信頼性を向上させると供に、万が一、基板内でショートしてしまっても、電流が流れない様なフェールセーフの対策が求められる。
【0008】
また、車両のエンジンルーム内は、高密度化が進んでおり、製品の搭載スペースの制限により、製品のさらなる小型化が求められてきている。
【0009】
モータ制御装置としては、スイッチング素子等の発熱部品の温度が、基板内に実装されている周囲の部品へ与える影響は大きく、単に、基板を高密度実装することで小型化を行うということが困難な現状がある。
【0010】
その為、基板サイズは変えずに、モータ制御装置外形の製品サイズを小さくする構造が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−267233号公報
【特許文献2】特開2010−18145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
電子モジュールの一例としては、アイドリングストップスタータ用のモータ制御装置が挙げられる。
【0013】
スタータでは、エンジンの始動を行う為、数百アンペアの大電流がスタータモータに通電される。スタータを駆動させるモータ制御装置では、内部に実装されているMOSFETによってスタータモータへの通電をスイッチング制御している為、MOSFETのチップが発熱源となり、チップのジャンクション温度が保証温度150〜175℃を超え不具合が生じる恐れがある。
【0014】
MOSFETの温度を抑える為、放熱性に優れた金属基板を用いているが、金属基板を用いる場合、上記特許文献にある様に、金属基板の保護や放熱の為、金属製のケースの中に基板を収納し、金属基板のベース面を金属の筐体に接触させ使用する場合が一般的である。この様な使用法とすると、金属基板のベース面は電気的に接地されている為、金属基板の絶縁層に欠陥や劣化、外的な損傷等のダメージが加わると、電位を持っている配線層と金属基板のベース面が導通し、ショート電流が流れることが懸念される。
【0015】
その様な懸念に対しては、金属基板の絶縁層を厚く設定する等の対策を行うことで安全性を高めることが可能だが、絶縁層を厚くすると、基板の熱抵抗が増加する為、放熱性が悪化するという問題がある。
【0016】
また、近年エンジンルーム内に搭載されている部品に関しては、エンジンルーム内の高密度化や狭小化に伴い、更なる小型化が求められてきている。
【0017】
金属基板を収容するケースは、一般的に、特許文献1,2にある様に、金属基板全体をケースの中に収容している構造であり、この様な構造の場合、ケースの内径サイズを基板外径サイズより大きくする必要がある為、製品サイズが大きくなる。
【0018】
さらに、金属基板の搭載方法としては、金属基板をケースに放熱グリス等を解して張り付けるが、金属基板とケース間の接触熱抵抗は大きく、放熱性も悪化するという問題がある。
【0019】
本発明の目的は、放熱性が向上するとともに、小型化の可能な電子モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、金属より成るベースの上面に樹脂による絶縁層を介して形成された導体配線を有する金属基板と、該金属基板上に導電性接続部材を介して接続され、電気回路を形成している複数の電子部品と、前記金属基板と前記電子部品を収容し、外部との電気的接続を行う為のバスバーやターミナル端子がインサートモールドされているモールドケースを有する電子モジュールであって、前記金属基板は、導電性部材で構成された金属より成るベースが、車両の周囲にある接地されている導電性部材に対して非接触とし、絶縁部材で構成された接着部材によって、絶縁部材で構成された前記モールドケースに接着固定されており、前記金属基板のベースは電気的に非接地とした構造であって、前記モールドケースは、上下の開放された枠状の形状をしており、前記金属基板は、前記モールドケース端面と接着固定されており、前記金属基板のベースの面は、前記モールドケース外側の大気中に露出しているものである。
かかる構成により、放熱性が向上するとともに、小型化が可能となる。
【0021】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記電子モジュールは、アイドルストップスタータの制御に用いられるものであり、前記アイドルストップスタータは、スタータモータと、該スタータモータの出力軸に接続されたピニオンギヤを押し出すマグネットスイッチとを備え、前記電子モジュールは、前記スタータモータと前記マグネットスイッチを制御するものであり、前記金属基板のベースは、前記スタータモータに1回通電される際に発生する熱を蓄積可能な熱容量を有するものである。
【0022】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記金属基板は、スタータモータ、マグネットスイッチ、エンジンとは反対側の位置になる様に前記ギヤケースに取付けられているものである。
【0023】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記モールドケースは、前記モールドケースと前記金属基板との接着部に設けられ、接着剤が充填される溝を備え、該溝のモールドケースの内側の壁は、その外側の壁より低いものである。
【0024】
(5)上記(4)において、好ましくは、前記外側の壁の端部が、前記金属基板の外周の配線禁止帯の箇所に突き当てられるものである。
【0025】
(6)上記(4)において、好ましくは、前記外側の壁の最外周の箇所に設けられた突起部を備え、該突起部により、前記金属基板の端面を保持するようにしたものである。
【0026】
(7)上記(4)において、好ましくは、前記内周の壁の端部が、前記金属基板の外周の配線禁止帯の箇所に突き当てられ、前記金属基板の側端面と前記外側の壁とが前記接着剤により接着されるようにしたものである。
【0027】
(8)上記(1)において、好ましくは、前記モールドケースは、前記モールドケースと前記金属基板との接触部に設けられ、パッキンが挿入される溝を備え、該溝のモールドケースの内側の壁は、その外側の壁より低く、さらに、前記モールドケースの外周端部に設けられ、前記金属基板を保持するスナップフィット部を備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電子モジュールの放熱性が向上するとともに、小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態による電子モジュールの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による電子モジュールの構成を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による電子モジュールの構成を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態による電子モジュールにおける金属基板とモールドケースとの接着部の構成を示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による電子モジュールに用いる金属基板の平面図である。
【図6】本発明の一実施形態による電子モジュールにおける金属基板とモールドケースとの接着部の構成の第1の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による電子モジュールにおける金属基板とモールドケースとの接着部の構成の第2の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図8】本発明の一実施形態による電子モジュールにおける金属基板とモールドケースとの接着部の構成の第3の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図9】本発明の一実施形態による電子モジュールを組み付けたスタータの要部断面構成を示す正面図である。
【図10】本発明の一実施形態による電子モジュールを組み付けたスタータの要部断面構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図1〜図10を用いて、本発明の一実施形態による電子モジュールの構成について説明する。
最初に、図1〜図3を用いて、本実施形態による電子モジュールの全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による電子モジュールの構成を示す断面図である。図2は、本発明の一実施形態による電子モジュールの構成を示す分解斜視図である。図3は、本発明の一実施形態による電子モジュールの構成を示す平面図である。
【0031】
ここでは、本発明を、特にアイドリングストップスタータを駆動する電子モジュールに適用した場合について、以下説明する。
【0032】
図2に示すように、本実施形態の電子モジュール2は、金属基板3と、金属基板3の上に固定された電子部品6と、モールドケース4と、カバー5とから構成されている。金属基板3は、金属製のベース31を備え、ベースの上に絶縁層が形成され、その上に配線層が形成されている。電子部品6は、配線層に固定されている。
【0033】
図1に示すように、金属基板3は、ベース31と、絶縁層32と、導体配線33と、レジスト34とから構成される。ベース31は、アルミニウム、銅、鉄、或いは前記材料を含む合金で構成されている。絶縁層32は、エポキシ系やエラストマ系ポリマーなどの絶縁機能を持つ樹脂で構成されており、ベース31に積層されている。導体配線33は、銅で構成されており、絶縁層32の上に積層されている。また、導体配線33の上には、導体配線の絶縁や保護やはんだ塗布部分のエリアを規定する為のレジスト34が被覆されている。
【0034】
また、金属基板3の上には、はんだや銀ペースト等の導電性接続部材14により電子部品6が複数搭載されている。ここで、電子部品6とは、MOSFET、ドライバIC、抵抗、コンデンサ、ダイオード、サーミスタ等である。
【0035】
モールドケース4は、ケースの壁面を構成する枠形の形状となっている。モールドケース4は、上下の面が開放されている角柱状の枠形である。モールドケース4には、出力端子として銅からなる電極44と、締結部として金属からなるカラー43(図3)がインサート成型されている。電極44は、スタータ等に接続される。また、モールドケース4は、外部の車載制御ユニット(図示せず)と通信を行う為のコネクタ41を備えている。
【0036】
モールドケース4は、PPS(ポニフェニレンサルファイド)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)などの絶縁性を持つ樹脂で構成されている。
【0037】
金属基板3は、モールドケース4の外側端面に、金属基板3の部品搭載面側の基板面とシリコン接着剤13により接着固定されている。このとき、金属基板3のベース31が、外部方向の大気中に露出される様に取り付けられる。電子部品6等は、モールドケース4の枠の内部に収納される。
【0038】
金属基板3とモールドルケース4は、金属基板上に搭載されているボンディングパッド20とモールドケース4にインサートされている電極44とをアルミワイヤ16でボンディングすることで電気的に接続されている。
【0039】
また、モールドケース4の内部には、アルミワイヤボンディングエリアと電子部品実装エリアを仕分ける仕切板45が、モールドケース4と一体成型で構成されている。この様な構造とすることで、第一注型樹脂15と第二注型樹脂21を充填するエリアを規定している。
【0040】
電子部品を実装している部分に関しては、金属基板と電子部品の抵抗やコンデンサのセラミックとの線膨張係数がマッチングせず、電子部品を搭載しているはんだの熱疲労寿命が低下することが懸念される。そこで、熱疲労寿命を改善させる為、線膨張係数を金属基板にマッチングさせたエポキシ樹脂である第一注型樹脂15で封止することで、はんだに生じる応力を緩和している。
【0041】
アルミワイヤボンディングエリアでは、アルミワイヤ16へ注型樹脂の線膨張係数差による影響が生じない様に、拘束力の弱いシリコーンゲル等の第二注型樹脂21で絶縁のみを行っている。
【0042】
また、モールドケース4の内部に異物が進入するの防止し、電子部品の保護する為、モールドケース4の上部の開口は、PBTやPPSで構成された樹脂カバー5で蓋をしている。樹脂カバー5は、シリコン接着剤やエポキシ樹脂などで接着固定されている。
【0043】
本実施形態では、金属基板3が、モールドケース4の外側端面に位置する様に接着固定されている。すなわち、金属基板3のベース31が筐体(ケース)の一部となっている。そのため、従来、基板より大きく設定しなくてはならないケース内側のスペースを、基板サイズ外形より小さくすることが可能となる為、製品外形も小さくすることが可能となる。
【0044】
また、モールドケース4と接着固定されている金属基板3を構成するベース31は、モールドケース4とのみ接触しており、製品を構成するネジや周囲の車両のエンジン、ボディ、モータ、ハウジング等の導電性を持ち車体のGNDへと接地されている部材と接触することなく取付けられている(この点については、図9及び図10を用いて後述する)。また、それらの導電性部材との間に水滴等が入ってもショートしない様に一定以上の絶縁距離を設定している。
【0045】
その為、金属基板のベース面は電気的にも接地していない為、金属基板に過大な負荷が加わった際に絶縁層が損傷した場合においても、導体配線33とベース31との間へショート電流が流れることを防止することが可能となる。
【0046】
また、従来、外的な損傷や絶縁層の欠陥等を防止する対策として、絶縁層の厚みを厚く設定していた構造においても、本実施形態を適用することで、ショート電流の発生を抑制することができる為、絶縁層の厚みを薄くすることが可能となる。絶縁層を薄くすることで、従来、金属基板の構成部材で最も熱伝導率が悪く、放熱性能の大部分を規定している絶縁層部の熱抵抗を大幅に下げることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態の構造とすることで、金属基板3のベース31が異種金属と触れることで生じる電気的な腐食を防止することもできる。
【0048】
本実施形態の構造では、金属基板の裏面と側面が大気中に露出している構造となっている。その為、基板裏面からだけではなく、基板と側面を足し合わせた分の放熱面積を確保することができる為、放熱性能を向上することができる。金属基板は厚みが1mm〜5mmと非常に厚い基板である為、側面の放熱面積も広く、放熱効果は大きい。
【0049】
次に、図4及び図5を用いて、本実施形態による電子モジュールにおける金属基板3とモールドケース4との接着部の構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による電子モジュールにおける金属基板とモールドケースとの接着部の構成を示す要部拡大断面図である。図5は、本発明の一実施形態による電子モジュールに用いる金属基板の平面図である。
【0050】
図4に示すように、モールドケース4の金属基板3との接着面には、接着剤受け溝42が形成されており、その溝にシリコン接着剤13が充填され接着されている。
【0051】
金属基板上の接着面側は、導体配線が這いまわしてある為、基板の上面には、配線の凹凸が存在する。しかし、金属基板3は通常、一枚の大きな基材からプレスで複数個同時に製造する為、プレス時の配線層へのダメージを回避する為に、図5に示すように、中央の配線エリアWAに対して、その外周に、基板外形から導体配線までの距離を2mm以上とする配線禁止帯N−WAを設けている。
【0052】
この配線禁止帯N−WAは、導体配線が無く平坦部となるので、モールドケース4との接着面としては最適である。その為、接着面を確保する為に、配線禁止帯を広くすることが考えられるが、配線禁止帯は、金属基板の配線設計上は無駄なスペースであり、製品サイズも大きくなることから、このスペースは必要最小限としたい。
【0053】
しかし、モールドケースに基板を接着する構成とした場合、モールドケースと基板の接着面は接着力を確保する為にも3mm以上必要である為、配線層の凹凸部にモールドケース接着部が被ってしまい、接着面に隙間が生じることで接着剤が外部に漏れ出す恐れがある。
【0054】
それらを回避する為、図4に示す様な構成としている。すなわち、モールドケース4の底面,すなわち、金属基板3と対向する面の中央に、接着剤受け溝42を形成する。接着剤受け溝42の幅は、3mm程度として、この溝に接着剤13を入れた場合の接着面積を確保し、接着力を確保する。また、接着剤受け溝42のケース内側の壁を、外側の壁に比べて低くしている。そのため、接着剤受け溝42の外側の壁が、金属基板3の平坦な外周部(図5の配線禁止帯N−WAの箇所)に接触する。接着剤受け溝42の接着剤13は、図5の配線禁止帯N−WAの箇所、及びその内側の多少凹凸のある配線エリアWAと接触するが、その接触面の凹凸は問題とならず、金属基板3とモールドケース4を接着することができる。接着剤受け溝42から溢れた接着剤13は、接着剤受け溝42の内周側の壁の先端と金属基板3の間の隙間から、図5の配線エリアWAの方に漏れ出るため、外部へシリコン接着剤が漏れ出さないようにできる。また、モールドケース4の外側の壁で金属基板3と突き当たっていることで高さ方向の寸法精度も出すことができる構造となる。
【0055】
次に、図6を用いて、本実施形態による電子モジュールにおける金属基板とモールドケースとの接着部の構成の第1の変形例について説明する。
図6は、本発明の一実施形態による電子モジュールにおける金属基板とモールドケースとの接着部の構成の第1の変形例を示す要部拡大断面図である。
【0056】
図6に示す構造では、モールドケースの樹脂受け溝42の最外周に基板保持用の最外壁17を設けた構造である。なお、最外壁17は、壁であり、紙面の手前から奥まで連続している構造であるが、壁構造に代えて、複数の突起部を設ける構造とすることもできる。
【0057】
この様な構造とすることで、金属基板3にモールドケース4と並行方向の力が加わった場合でも、最外壁17で金属基板側面を保持することができる為、基板の保持力が増し、製品の信頼性を向上させることができる。
【0058】
次に、図7を用いて、本実施形態による電子モジュールにおける金属基板とモールドケースとの接着部の構成の第2の変形例について説明する。
図7は、本発明の一実施形態による電子モジュールにおける金属基板とモールドケースとの接着部の構成の第2の変形例を示す要部拡大断面図である。
【0059】
図7に示す構造では、モールドケース4の接着剤受け溝42のケース内側の壁を金属基板3に突き当て位置決めし、外側の壁を金属基板3のベース31の側面途中まで延ばした構造である。シリコン接着剤13は、側面の露出している積層部材の接着界面を保護する様に金属基板3の角部に接着されている。
【0060】
この様な構造とすることで、金属基板3の積層構造の界面からの水の浸入等を防止し、且つ、接着剤13は、金属基板3の表面のレジスト膜34と接着するだけでなく、金属基板3の側面との接着されるため、接着面積を増して、基板保持力も向上することができる。
【0061】
次に、図8を用いて、本実施形態による電子モジュールにおける金属基板とモールドケースとの接着部の構成の第3の変形例について説明する。
図8は、本発明の一実施形態による電子モジュールにおける金属基板とモールドケースとの接着部の構成の第3の変形例を示す要部拡大断面図である。
【0062】
図8に示す構造では、モールドケース4の固定に接着剤を使用せず、モールドケース4の溝にゴム製のパッキン19を挟み、モールドケース4と金属基板3をスナップフィット18で固定した構造となる。この様に、モールドケース4と金属基板3の固定方法は接着剤による接着固定でなくても良い。
【0063】
次に、図9及び図10を用いて、本実施形態による電子モジュールをアイドルストップ用のスタータに組付けた際の構成について説明する。
図9は、本発明の一実施形態による電子モジュールを組み付けたスタータの要部断面構成を示す正面図である。図10は、本発明の一実施形態による電子モジュールを組み付けたスタータの要部断面構成を示す平面図である。
【0064】
図9及び図10に示すように、アイドリングストップスタータ1は、電子モジュール2、バスバー7、マグネットスイッチ8、ギヤケース9、スタータモータ10、回転センサ11、ピニオンギヤ12とから構成されている。
【0065】
電子モジュール2は、ECU(Engine Control Unit)からのアイドリングストップ指令信号により、搭載している電子部品のMOSFETをスイッチング制御することで、マグネットスイッチ8やスタータモータ10への電流を制御し駆動する。
【0066】
マグネットスイッチ8は、アイドリングストップスタータ1のピニオンギヤ12を押し出して、エンジンのリングギヤ(図示せず)と噛み合わせる。スタータモータ10は、ピニオンギヤ12を回転させることでエンジンを始動したり、エンジンのリングギヤとピニオンギヤの回転数を同期させる為の予回転を行う。
【0067】
回転センサ11は、リングギヤとピニオンギヤ12の回転数を同期させる為、ピニオンギヤ12の回転数をモニタリングするものである。
【0068】
マグネットスイッチ8とスタータモータ10は、ギヤケース9により外周部を挟持され固定されている。電子モジュール2は、ギヤケース9にネジ止め固定されると同時に、電子モジュール2を構成する回路のGND配線も行っている。また、電子モジュール2は、マグネットスイッチ8のバッテリ端子81、モータ端子82、スイッチ端子83と、接続バスバー7によりそれぞれ接続されていることで、電流の授受を行っている。
【0069】
バッテリ端子81は、車両のバッテリ(図示せず)と、モータ端子82は、スタータモータ10と、スイッチ端子83はマグネットスイッチ8と接続され、電流の授受を行っている。
【0070】
アイドリングストップスタータ1は、ギヤケース9によりエンジン(図示せず)へ取付けられている。
【0071】
電子モジュール2は、マグネットスイッチ8とスタータモータ10の側面のスペースを利用し取付けられている。
【0072】
通常のスタータには、電子モジュール2は無い為、搭載スペースは限られており、新たに追加される電子モジュール2に対しては、小型化が求められる。
【0073】
その為、本実施形態の構造である、枠状の形状をしたモールドケース4の端面に、金属基板を配置することで、製品を小型化することが可能であり、搭載スペース内での製品サイズでレイアウトすることができる。
【0074】
また、金属基板3のベース31は、アイドルストップスタータ1を構成するマグネットスイッチ8、ギヤケース9、スタータモータ10、エンジン(図示せず)、取付けネジ(図示せず)などの導電性部材と接触することなく取付けられていることで、絶縁層32が損傷した場合においても、ショート電流が流れ続けることを防止できるフェールセーフ対策となる。
また、モータ制御装置2の金属基板3は、発熱体であるマグネットスイッチ8、スタータモータ10、エンジン(図示せず)とは反対側の外部方向へ、ベース31を露出させて取付けてある。そうすることで、発熱体からの熱輻射の影響を受け難くし、金属基板3に実装している電子部品6を保護している。
【0075】
また、外側に向けてベースを取付けることで、ラジエータファン(図示せず)などにより発生する冷却風や走行風を直接基板で受けることができるので、放熱効果を得ることができる。
【0076】
次に、アイドルストップスタータ1の電子モジュールとして用いる場合の固有の構成について説明する。
【0077】
アイドルストップスタータ1は、エンジンの停止後の再始動時に起動される。そのとき、スタータ1には200A程度の大電流が流れる。一方では、この大電流が流れる時間は、例えば、0.5秒程度と短時間である。そのため、スタータ1への通電時に大電流を流すことによって発生する熱は大きいものの短期間である。そこで、金属基板3のベース31は、この熱を一時的に蓄えられるような熱容量とする。一方で、ベース31に蓄えられた熱は、図9や図10に示すように、ベース31から大気中に放熱される。
【0078】
そのため、例えば、ベース31としてアルミニュウムを用いた場合、ベースの寸法を、50mm×60mmで厚さ2mmとすると、例えば、200Aの電流を0.5秒間流した場合でも、その熱をベース31に蓄積でき、電子モジュールの回路部に対する影響を無くすることができる。
【0079】
ここで、再度エンジンが停止し、スタータ1を用いたエンジンの再始動までの時間は、予め5秒以上というように設計値として決まっている。従って、この時間内に蓄積された熱が放熱されれば、再度エンジンの再始動要求があっても問題が生じないものである。
【0080】
以上説明したように、本実施形態では、金属基板のベースが電気的に接地されていないことで、絶縁層に欠陥が生じた場合のショート電流を防止できると共に、絶縁層を薄くし、放熱性を向上することができる。また、モールドケースの外側端面に金属基板を取付けることで、製品サイズの小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1…アイドリングストップスタータ
2…電子モジュール
3…金属基板
31…ベース
32…絶縁層
33…導体配線
34…レジスト
4…モールドケース
41…コネクタ
42…接着剤受け溝
43…カラー
44…電極
45…仕切板
5…樹脂カバー
6…電子部品
7…接続バスバー
8…マグネットスイッチ
81…バッテリ端子
82…モータ端子
83…スイッチ端子
9…ギヤケース
10…スタータモータ
11…回転センサ
12…ピニオンギヤ
13…接着剤
14…導電性接続部材
15…第一注型樹脂
16…アルミワイヤ
17…最外壁
18…スナップフィット
19…パッキン
20…ボンディングパッド
21…第二注型樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属より成るベースの上面に樹脂による絶縁層を介して形成された導体配線を有する金属基板と、
該金属基板上に導電性接続部材を介して接続され、電気回路を形成している複数の電子部品と、
前記金属基板と前記電子部品を収容し、外部との電気的接続を行う為のバスバーやターミナル端子がインサートモールドされているモールドケースを有する電子モジュールであって、
前記金属基板は、導電性部材で構成された金属より成るベースが、車両の周囲にある接地されている導電性部材に対して非接触とし、絶縁部材で構成された接着部材によって、絶縁部材で構成された前記モールドケースに接着固定されており、前記金属基板のベースは電気的に非接地とした構造であって、
前記モールドケースは、上下の開放された枠状の形状をしており、
前記金属基板は、前記モールドケース端面と接着固定されており、
前記金属基板のベースの面は、前記モールドケース外側の大気中に露出していることを特徴とする電子モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の電子モジュールにおいて、
前記電子モジュールは、アイドルストップスタータの制御に用いられるものであり、
前記アイドルストップスタータは、スタータモータと、該スタータモータの出力軸に接続されたピニオンギヤを押し出すマグネットスイッチとを備え、
前記電子モジュールは、前記スタータモータと前記マグネットスイッチを制御するものであり、
前記金属基板のベースは、前記スタータモータに1回通電される際に発生する熱を蓄積可能な熱容量を有することを特徴とする電子モジュール。
【請求項3】
請求項2記載の電子モジュールにおいて、
前記金属基板は、スタータモータ、マグネットスイッチ、エンジンとは反対側の位置になる様に前記ギヤケースに取付けられていることを特徴とする電子モジュール。
【請求項4】
請求項1記載の電子モジュールにおいて、
前記モールドケースは、前記モールドケースと前記金属基板との接着部に設けられ、接着剤が充填される溝を備え、
該溝のモールドケースの内側の壁は、その外側の壁より低いことを特徴とする電子モジュール。
【請求項5】
請求項4記載の電子モジュールにおいて、
前記外側の壁の端部が、前記金属基板の外周の配線禁止帯の箇所に突き当てられることを特徴とする電子モジュール。
【請求項6】
請求項4記載の電子モジュールにおいて、
前記外側の壁の最外周の箇所に設けられた突起部を備え、
該突起部により、前記金属基板の端面を保持することを特徴とする電子モジュール。
【請求項7】
請求項4記載の電子モジュールにおいて、
前記内周の壁の端部が、前記金属基板の外周の配線禁止帯の箇所に突き当てられ、
前記金属基板の側端面と前記外側の壁とが前記接着剤により接着されることを特徴とする電子モジュール。
【請求項8】
請求項1記載の電子モジュールにおいて、
前記モールドケースは、前記モールドケースと前記金属基板との接触部に設けられ、パッキンが挿入される溝を備え、
該溝のモールドケースの内側の壁は、その外側の壁より低く、
さらに、前記モールドケースの外周端部に設けられ、前記金属基板を保持するスナップフィット部を備えることを特徴とする電子モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115276(P2013−115276A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260940(P2011−260940)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】