説明

電子レンジ調理用容器

【課題】圧力をかけ調理のできる容器で、噴き零れにも対応できる電子レンジ調理用容器。
【解決手段】容器本体1aと上蓋2aからなる容器10aにて、容器本体1aは上部外周の内側に本体嵌合部15aと嵌合当て付け面12a、本体嵌合部15aは抜け止め用凸部16a、上蓋2aは外周内側に凹溝28a、凹溝28aは上蓋嵌合部25aと嵌合当て付け面22a、上蓋嵌合部25aは容器本体1aの抜け止め用凸部16aの下方に位置する抜け止め用凸部26a、上蓋2aの嵌合当て付け面22aは通気孔21aを具え、上蓋2aの嵌合当て付け面22aが通気孔21aのある側から反対側にかけ上向きに傾斜している。加熱調理時に、上蓋の通気孔側が反対側より低い位置に来るよう傾斜するため、噴き零れの煮汁等が、上蓋当て付け面を伝わり通気孔側へ集まり、加熱調理後の容器内減圧状態にて、通気孔から外気ともに容器内に吸い込まれ容器の汚れや火傷を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジによる調理用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子レンジで、惣菜等の調理済み食材や冷凍食品を加熱することができる容器が数多く開発されている。例えば、加熱する際、発生した蒸気を容器外部へ排出し、容器が変形しないようにする特許文献1及び2のような容器がある。
【特許文献1】特開平9−323743号公報
【特許文献2】特開平10−316177号公報
【0003】
また、電子レンジでただ加熱するだけではなく、生の食材を調理することのできる特許文献3の容器もある。
【特許文献3】特許第3962377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の容器は、蒸気孔から煮汁等が噴き零れた場合には、上蓋の上面を伝って嵌合部分の凹部に溜まることになり、見かけも悪く、火傷の危険があり、取り外しの際にはテーブルを汚すという問題がある。
特許文献2の容器では、特許文献1に比べ、或る程度の圧力は逃がすことができるが、蒸気を逃がすために設けられた凹陥部が上蓋の外周内側にあるため、噴き零れ分は外に溜ってしまうという問題がある。
そして、特許文献3の容器は、生の食材等を調理することができる特徴があるが、噴き零れに対する対応は、同様に、十分ではない。
【0005】
そこで、圧力をかけた調理のできる容器で、噴き零れにも対応できる電子レンジ調理用容器が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1に、容器本体と上蓋とからなる電子レンジ調理用容器において、
前記容器本体は、上部外周の内側に本体嵌合部と嵌合当て付け面を具え、前記本体嵌合部は抜け止め用凸部を具え、
前記上蓋は、外周内側に凹溝を具え、該凹溝は上蓋嵌合部と嵌合当て付け面を具え、前記上蓋嵌合部は前記容器本体の抜け止め用凸部の下方に位置する抜け止め用凸部を具え、
前記上蓋の嵌合当て付け面は通気孔を具え、
前記上蓋の嵌合当て付け面が、前記通気孔のある側から180°反対側にかけて上向きに傾斜していることを特徴とする電子レンジ調理用容器により、
第2に、容器本体と上蓋とからなる電子レンジ調理用容器において、
前記容器本体は、上部外周の内側に本体嵌合部と嵌合当て付け面を具え、前記本体嵌合部は抜け止め用凸部を具え、
前記上蓋は、外周内側に凹溝を具え、該凹溝は上蓋嵌合部と嵌合当て付け面を具え、前記上蓋嵌合部は前記容器本体の抜け止め用凸部の下方に位置する抜け止め用凸部を具え、
前記上蓋の嵌合当て付け面は通気孔を具え、
前記上蓋と容器本体の嵌合当て付け面は、非調理時は、全面において密着させられるが、前記上蓋が容器内部の蒸気圧で押し上げられたときは、前記上蓋が前記通気孔側では該通気孔側と180°反対側より低くなるように傾斜させられることを特徴とする電子レンジ調理用容器によって、前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電子レンジ調理用容器によれば、加熱調理時に、上蓋の通気孔側が180°反対側よりも低い位置に来るように傾斜ができるため、その傾斜により、噴き零れようとする煮汁等が、重力により、上蓋の当て付け面を伝わって通気孔側へ集まる。従って、加熱調理後に、容器内が減圧状態になると、通気孔から外気が容器内に吸い込まれる現象が起きるに伴って、煮汁等が、容器内に自動的に吸い込まれる。その結果、容器の汚れや火傷の危険を防止することができる。
また、通気孔、及び上蓋と容器本体の抜け止め用凸部を利用して、容器内の蒸気圧力の調整ができることから、生の食材でも調理することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の第1実施形態について、図1乃至3に基づいて説明する。
【0009】
図1(A)は、本発明の第1実施形態の容器の上面図、(B)は、本発明の第1実施形態の上蓋の側面図、(C)は、本発明の第1実施形態の容器の縦断面図、図2は、本発明の第1実施形態の容器の通気孔付近の拡大縦断面図、図3は、本発明の第1実施形態の容器の変形例の上面図である。
【0010】
図1に示すように、この容器10aは、容器本体1a、上蓋2aからなり、容器本体1aは、上部に、垂直方向に延びる本体嵌合部15aを具え、上蓋2aは下部に、同様に垂直方向に延びる上蓋嵌合部25aを具え、本体嵌合部15aと上蓋嵌合部25aが嵌合されて両者は一体化される。
【0011】
容器本体、上蓋は、例えば、延伸ポリスチレン(OPS)、耐熱延伸ポリスチレン(耐熱OPS)、又はポリプロピレン(PP)等の耐熱性の良好なプラスチックシートを用い、圧空成形や真空成形等のサーモフォーミング法により成形することができる。
【0012】
上蓋2aは、外周内側に、周方向の凹溝28aを具えている。通気孔21aは、上蓋2aの当て付け面22aに設けられており、凹溝28aの底から上向きに蒸気を排出する。また、図1(C)に示すように、上蓋2aの外周部のフランジ2a’が水平であるとき、通気孔21aの設けられている側から180°反対側へと当て付け面22aが上昇する傾斜を有するようにするため、上蓋の抜け止め用凸部26aの上下方向の幅と、この抜け止め用凸部からさらに上方に延びる部分27aの上下方向の幅の和からなる嵌合部25aの幅Hが、通気孔側から通気孔と180°反対側へ向かって徐々に小さくされている。抜け止め用凸部26aの上下方向の幅は一様である。
【0013】
本体嵌合部15aと上蓋嵌合部25aが嵌合状態にあるときは、通気孔21aは、容器本体の嵌合当て付け面12aと当て付けられているが、180°反対側の上蓋の嵌合当て付け面22aは本体の嵌合当て付け面12aと当て付けられておらず、上蓋2aの外周部のフランジ2a’が、容器本体1aの上部外周縁部1a’に当て付けられている。
上蓋の当て付け面22aに、このような傾斜を設けることで、加熱調理中に噴き零れようとする煮汁等は、容器内の蒸気の圧力と、重力により、傾斜した上蓋2aの当て付け面22aを伝わって、通気孔21aの周辺に集まるので、加熱調理後に容器10a内が減圧するにつれて、通気孔21aから吸い込まれる外気と一緒に、容器10a内に吸い込まれる。その結果、煮汁等による汚れや火傷の危険性を防止することができ、見栄えも良くなる。
【0014】
また、図2の左側に示すように、通気孔側がぴったりと嵌合した状態では、通気孔21aは容器本体の嵌合当て付け面12aに当て付けられているので、容器10a内はほぼ密閉状態を保っているが、電子レンジによる加熱調理時に、容器10a内の蒸気圧が一定の圧力以上に高まると、上蓋2aが押し上げられる。その結果、図2の右側に示すように、通気孔21aが本体の嵌合当て付け面12aと当て付かなくなり、隙間ができることにより、蒸気が通気孔21aを通って、容器10a外に排出される。しかし、加熱調理中、容器10a内は、内部で発生する水蒸気により、常に圧力がかかる状態が保たれている。
従って、容器内の圧力を大気圧以上に維持しながら、各種の食材を加熱調理することができる。
なお、図2から分かるように、容器本体1a及び上蓋2aは、嵌合部に、それぞれ、高い位置に抜け止め用凸部16aを、低い位置に26aを有しているため、上蓋2aには抜け止めが施され、完全に外れてしまうことはない。
【0015】
本発明の容器は、以上のような圧力調整機能を有しているので、容器内に食材を入れて電子レンジで加熱すると、圧力調整された密閉容器内で、食材等から発生した水蒸気により一定の水蒸気雰囲気が形成され、食材が過度に乾燥するのを防止しながら、生の食材を比較的短時間で調理することができる。
【0016】
なお、容器の形状や通気孔の数及び形状は図示したものに限られない。例えば、容器10a’の形状を図3のようなほぼ角型形状にすることも、円形・多角形状にすることもできる。また、容器本体内に、仕切り用のリブ等を設けることも可能である。また、本発明の第1実施形態の容器10aでは、容器本体の抜け止め用凸部16aの上下方向の幅が一様であると、加熱調理時に、蒸気によって上蓋2aが押し上げられたとき、上蓋2aの当て付け面22aの傾斜は必ずしも確保されないことがあり得るので、それを防ぐには、容器本体の抜け止め用凸部16aの上下方向の幅を、通気孔側で大きく、その反対側で小さくなるようにしておけばよい。
【実施形態2】
【0017】
次に、本発明の第2実施形態の容器を、第1実施形態と異なる部分について図4及び図5を参照して説明する。
図4(A)は、本発明の第2実施形態の上蓋の側面図、(B)は、本発明の第2実施形態の容器の断面図、図5は本発明の第2実施形態の容器の嵌合部の拡大断面図である。
【0018】
図4に示すように、本発明の第2実施形態の容器は、上蓋2bの通気孔21b側嵌合部分25bに設けられている上蓋の抜け止め用凸部26bの上下方向の幅が、通気孔側から通気孔と180°反対側へ向かって徐々に小さくなるように、抜け止め用凸部26bからさらに上方に延びる部分27bの上下方向の幅は一様であるように設けられている。
抜け止め用凸部26bの大きさが、このように変化している一方、抜け止め用凸部26bを受け入れる容器本体1bの嵌合部15bの形状は、全周にわたって一様であるから、図4(B)のぴったりと嵌合された状態において、通気孔21bと180°反対側の上蓋の嵌合当て付け面22bと容器本体の嵌合当て付け面12bの隙間の上下方向の幅をh、通気孔側上蓋の抜け止め用凸部26bが容器本体1bの抜け止め用凸部16bに当たるまでの可動距離をs(これは、全周にわたって一様である。)とすると、上蓋2bが容器内の蒸気圧によって、最大限押し上げられたとき、通気孔21b側では、距離sだけしか上がらないのに対し、その180°反対側では、s+hの距離だけ上がるから、上蓋2bの傾斜状態は維持されることになる。また、sとhの大きさの関係をs<hとしておけば、上蓋2bのどのような上昇状態でも、上蓋2bの傾斜を確保することができる(図5参照。)
【0019】
上記のような構造により、本実施形態の容器10bでは、当初の嵌合状態でも、加熱調理時でも、常に、通気孔側を低い位置にすることができる。
【実施形態3】
【0020】
最後に、本発明の第3実施形態を、第1実施形態と異なる部分について図6を参照して説明する。
図6(A)は、本発明の第3実施形態の容器の縦断面図、(B)は、加熱調理時における本発明の第3実施形態の容器の縦断面図である。
【0021】
第1実施形態と異なり、ぴったりと嵌合した、非調理時の状態での上蓋2cは、通気孔側の当て付け面22cは、180°反対側でも同一の高さにあり、容器本体1cの当て付け面12cと当て付けられている。
しかし、通気孔21cと反対側の抜け止め用凸部26cの上下方向の幅は、通気孔側の抜け止め用凸部26cの幅よりも少し小さくしてある。しかし、この抜け止め用凸部26cを受け入れる容器本体の嵌合部15cの形状は全周にわたって一様である。
【0022】
そのため、電子レンジによる加熱調理時には、上蓋2cの当て付け面22Cは、図6(B)のような傾斜状態になり、通気孔側を反対側よりも低くすることができる。
【0023】
この第3実施形態の作用・効果は他の実施形態の場合と同様である。
【0024】
以上に説明した本発明の電子レンジ調理用容器によれば、加熱調理時に、上蓋の通気孔側が180°反対側よりも低い位置を保つように傾斜ができるため、その傾斜により、噴き零れようとする煮汁等が、重力により、当て付け面を伝わって通気孔側へ集められる。従って、加熱調理後に、容器内が減圧状態になると、通気孔から外気が容器内に吸い込まれる現象が起きるに伴って、煮汁等が、容器内に自動的に吸い込まれる。その結果、容器の汚れや火傷の危険を防止することができ、見栄えも良くなる。
また、通気孔と上蓋と容器本体の抜け止め用凸部を利用した圧力の調整ができることから、生の食材を調理することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(A)は、本発明の第1実施形態の容器の上面図、(B)は、本発明の第1実施形態の上蓋の側面図、(C)は、本発明の第1実施形態の容器の縦断面図。
【図2】本発明の第1実施形態の容器の通気孔付近の拡大縦断面図。
【図3】本発明の第1実施形態の容器の変形例の上面図。
【図4】(A)は、本発明の第2実施形態の上蓋の側面図、(B)は、本発明の第2実施形態の容器の縦断面図。
【図5】本発明の第2実施形態の容器の嵌合部の拡大縦断面図。
【図6】(A)は、本発明の第3実施形態の容器の断面図、(B)は、加熱調理時における本発明の第3実施形態の容器の縦断面図。
【符号の説明】
【0026】
1(a,b,c):容器本体
12(a,b,c):嵌合当て付け面
15(a,b,c):本体嵌合部
16(a,b,c):抜け止め用凸部
2(a,b,c):上蓋
21(a,b,c):通気孔
22(a,b,c):嵌合当て付け面
23(a,b,c):上蓋側面
25(a,b,c):上蓋嵌合部
26(a,b,c):抜け止め用凸部
28(a,b,c):凹溝
10(a,a’,b,c):電子レンジ調理用容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と上蓋とからなる電子レンジ調理用容器において、
前記容器本体は、上部外周の内側に本体嵌合部と嵌合当て付け面を具え、前記本体嵌合部は抜け止め用凸部を具え、
前記上蓋は、外周内側に凹溝を具え、該凹溝は上蓋嵌合部と嵌合当て付け面を具え、前記上蓋嵌合部は前記容器本体の抜け止め用凸部の下方に位置する抜け止め用凸部を具え、
前記上蓋の嵌合当て付け面は通気孔を具え、
前記上蓋の嵌合当て付け面が、前記通気孔のある側から180°反対側にかけて上向きに傾斜していることを特徴とする、
電子レンジ調理用容器。
【請求項2】
前記上蓋の嵌合部の上下方向の幅が、前記通気孔側から前記通気孔と180°反対側へ向かって小さくされている、請求項1の電子レンジ調理用容器。
【請求項3】
前記上蓋の抜け止め用凸部の上下方向の幅が、前記通気孔側から前記通気孔と180°反対側へ向かって小さくされている、請求項1の電子レンジ調理用容器。
【請求項4】
容器本体と上蓋とからなる電子レンジ調理用容器において、
前記容器本体は、上部外周の内側に本体嵌合部と嵌合当て付け面を具え、前記本体嵌合部は抜け止め用凸部を具え、
前記上蓋は、外周内側に凹溝を具え、該凹溝は上蓋嵌合部と嵌合当て付け面を具え、前記上蓋嵌合部は前記容器本体の抜け止め用凸部の下方に位置する抜け止め用凸部を具え、
前記上蓋の嵌合当て付け面は通気孔を具え、
前記上蓋と容器本体の嵌合当て付け面は、非調理時は、全面において密着させられるが、前記上蓋が容器内部の蒸気圧で押し上げられたときは、前記上蓋が前記通気孔側では該通気孔側と180°反対側より低くなるように傾斜させられることを特徴とする、
電子レンジ調理用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−76779(P2010−76779A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245180(P2008−245180)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(306012846)NEWS CHEF株式会社 (30)
【Fターム(参考)】