説明

電子写真用弾性ローラ

【課題】電子写真用弾性ローラの表面粗さを調整するための明確な指標を定め、良好なトナー帯電性、トナー搬送性、離型性などを確実に得ることができ、良好な画像をより確実に得ることができる電子写真用弾性ローラを提供することを目的とする。
【解決手段】芯金の周囲に弾性層を形成し、この弾性層上に直接又は中間層を介して表面樹脂層を形成してなる電子写真用弾性ローラにおいて、JIS B 0601(2001)に規定された輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)が下記の通りの表面性状を有することを特徴とする電子写真用弾性ローラを提供する。
Ra=0〜2μm、Rz<20μm、Rsk>0、RΔq>0.05

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザービームプリンタなどの電子写真機器に現像ローラなどとして好適に用いられる電子写真用弾性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザービームプリンタなどの電子写真機器には、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、クリーニングローラなど、種々の弾性ローラが用いられている。
【0003】
これら弾性ローラは、弾性層の表面に1又は2以上の樹脂層を形成した構成とされる場合が多く、従来、この樹脂層を形成する際に該樹脂層に所定粒系の粒子を所定量分散するなどの手段によって用途等に応じた表面粗さを付与することが行われている(特許文献1等)。
【0004】
即ち、電子写真用弾性ローラ、特に現像ローラやトナー供給ローラでは、良好なトナー帯電性、トナー搬送性、離型性などを得るために表面粗さを調整することは重要であり、従来この表面粗さを調整する一方策として、上記表面樹脂層に粒子を分散する方法が知られている。
【0005】
しかしながら、例えばウレタンフォームからなる弾性層上に樹脂層を形成する際、樹脂層を形成する塗料の溶剤によって弾性層表面の性状が変質する所謂「ヤラレ」が生じ、表面粗さを均一に調整することが容易ではないなどの理由もあり、表面粗さと画像との間に明確な関連性を見出すことが困難であり、ローラの表面粗さをコントロールするための明確な指標を定めることができなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−330372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ローラの表面粗さを調整するための明確な指標を定め、良好なトナー帯電性、トナー搬送性、離型性などを確実に得ることができ、良好な画像をより確実に得ることができる電子写真用弾性ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、芯金の周囲に弾性層を形成し、この弾性層上に直接又は中間層を介して表面樹脂層を形成して、現像ローラやトナー搬送ローラなどの電子写真用弾性ローラを得る場合に、JIS B 0601(2001)に規定された輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)を指標としてローラの表面粗さを調整することにより、トナー帯電性、トナー搬送性、離型性などを良好にコントロールすることができ、画像の向上を図ることができることを見出した。
【0009】
そこで、これらの指標について好適な値を確定するため更に試行錯誤を重ねた結果、上記の輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)を下記の通り調整することにより、良好な画像が得られる電子写真用弾性ローラが確実に得られることを見出し、本発明を完成したものである。
Ra=0〜2μm
Rz<20μm
Rsk>0
RΔq>0.05
【0010】
従って、本発明は、芯金の周囲に弾性層を形成し、この弾性層上に直接又は中間層を介して表面樹脂層を形成してなる電子写真用弾性ローラにおいて、JIS B 0601(2001)に規定された輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)が上記の通りの表面性状を有することを特徴とする電子写真用弾性ローラを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子写真用弾性ローラによれば、JIS B 0601(2001)に規定された輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)の指標によって、ローラ表面の性状が適正にコントロールされ、良好なトナー帯電性、トナー搬送性、離型性などを確実に得ることができ、良好な画像をより確実に得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の、電子写真用弾性ローラは、上記のように、芯金の周囲に弾性層を形成し、この弾性層上に直接又は中間層を介して表面樹脂層を形成したものである。
【0013】
上記弾性層は、ローラの用途に応じてスチレン−ブタジエンゴム(SBR),ニトリルゴム(NBR),ブタジエンゴム(BR)等の汎用ゴム;ポリエステル系又はスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン;シリコーンゴム;フッ素ゴムなどのエラストマーや発泡体など、公知の弾性体を用いて形成することができるが、本発明では、特にポリウレタンが好ましく用いられ、更にはポリウレタンフォームが硬度と圧縮永久歪とのバランス、低コスト化などの観点から好ましく用いられる。
【0014】
ここで、ポリウレタンとしては、特に制限はなく、ポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる、樹脂中にウレタン結合を有するものであれば良い。
【0015】
この場合、ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカーボネートジオール、ひまし油系ポリオールなどが例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なお、これらの中でも、プロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)とからなるポリエーテルポリオール、ポリスチレン及び/又はポリアクリレートを含有するポリマーポリオールが特に好ましく用いられる。
【0016】
ここで、上記弾性層をポリウレタンフォームとする場合、特に制限されるものではないが、これらポリオールは平均官能基数が2.5〜3であることが好ましく、また水酸基価が20〜60mgKOHであることが好ましく、更にEO含有量が1〜20%であることが好ましい。このようにポリオール成分の平均官能基数、水酸基価、EO含有量を上記範囲とすることにより、後述する表面樹脂層を形成する際に有機溶剤を用いても、弾性層表面のヤラレを効果的に防止することができ、中間層を設けることなく直接表面樹脂層を形成して良好に表面粗さを調整することが可能となる。
【0017】
次に、イソシアネート成分についても、特に限定されず、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)や、これらの変性物などが例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、特に変性TDI、変性MDI、変性HDIが好ましく用いられ、より具体的には、ポリオール変性TDI、ポリオール変性MDI、ポリオール変性HDIがより好ましく用いられる。
【0018】
ここで、特に制限されるものではないが、これらイソシアネートのNCO含有率は、1〜25%であることが好ましく、NCO含有率が1%未満であると反応が遅く、キュアに時間がかかってしまう。また、架橋が不十分となりやすく、未反応成分が汚染物質として染み出しやすくなる。一方25%を超えると、反応が速くなりすぎて成形時に型への注入が難しくなる場合がある。
【0019】
この弾性層を形成するポリウレタン中には、必要に応じて、整泡剤、導電剤、架橋剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、界面活性剤、触媒等の公知の添加剤を適量添加することができる。
【0020】
上記整泡剤としては、シリコーン整泡剤(ジメチルポリシロキサンとポリエーテルのブロックコポリマー等)、ポリジメチルシロキサン−ポリエチレンオキサイド共重合体などが例示される。
【0021】
上記導電剤としては、公知のイオン導電剤又は電子導電剤を用いることができる。イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムなどの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩などが例示される。
【0022】
また、電子導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属などが例示される。
【0023】
上記触媒としては、例えば、有機金属触媒のジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、スタナスオクトエート、ジブチルチンマーカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンジマレニート、ジオクチルチンマーカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレート、フェニル水銀、プロピオン酸銀、オクテン酸錫、アミン触媒のトリエチルアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、ジメチルアミノエタノール、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7等が好ましく用いられる。これらの触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記ポリウレタンフォームで弾性層を形成する場合、その発泡方法は、機械的撹拌などにより発泡させるメカニカルフロス法でも、水等の発泡剤を用いて発泡させる方法のいずれでもよいが、本発明では、得られる製品硬度の観点から機械的に発泡させるメカニカルフロス法が好ましく採用される。
【0025】
次に、この弾性層上に形成される表面樹脂層は、ローラの用途等に応じて選択される公知の樹脂を用いて形成することができ、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、フッ素樹脂及びこれらの変性物などが例示される。
【0026】
この表面樹脂層には、ローラの用途等に応じて適宜な添加剤を配合することができ、例えば上記弾性層で例示したものと同様の導電剤や樹脂の硬化剤などを必要に応じて適量添加することができる。
【0027】
この表面樹脂層は、通常、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルシクロヘキサン(MCH)、酢酸イソプロピルなどの有機溶剤に、上記樹脂や添加剤を溶解、分散した塗料を塗布することにより形成される。この場合、有機溶剤により上記弾性層表面が荒らされる所謂ヤラレが生じる場合には、表面樹脂層と上記弾性層との間に中間層として下塗層を形成することができる。
【0028】
この下塗層としては、水系の塗料が好適に用いられ、具体的には、ウレタンエマルジョン、アクリルエマルジョン、ゴムラテックス(NB、CR、NBR等)、及びこれらの変性物やこれらの2種以上の混合物などが例示される。なお、この下塗層にも必要に応じて導電剤などの添加剤を適量配合することができる。
【0029】
本発明の電子写真用弾性ローラは、ローラ表面、即ち上記表面樹脂層表面の性状を、JIS B 0601(2001)に規定の輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)を指標として制御したものである。
【0030】
即ち、輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)は、Ra=0〜2μm、好ましくは0.5μm<Ra<1.5μm、輪郭曲線の最大高さ(Rz)は、Rz<20μm、好ましくはRz≦15μm、より好ましくはRz≦10μm、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)は、Rsk>0、輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)はRΔq>0.05、好ましくはRΔq>0.1に制御するものである。これらのパラメータが上記範囲を逸脱すると、電子写真装置用ローラとして、特に現像ローラやトナー搬送ローラなどとして良好なトナー帯電性、トナー搬送性、離型性が得られずに、得られる画像の画質が低下することとになって、本発明の目的を達成し得ない。
【0031】
ここで、ローラ表面の上記(Ra)、(Rz)、(Rsk)、(RΔq)を調整する方法に制限はなく、結果的にローラ表面の(Ra)、(Rz)、(Rsk)、(RΔq)が上記の範囲になればよい。具体的方法としては、例えば上記表面樹脂層に樹脂粒子を分散させて表面粗さを調整する方法や上記弾性層表面を研磨して該弾性層表面に所定の表面粗さを付与し、その上に上記表面樹脂層を形成することにより、上記(Ra)、(Rz)、(Rsk)、(RΔq)を調整する方法などが挙げられる。
【0032】
ここで、上記表面樹脂層に配合分散させる樹脂粒子は、表面樹脂層を形成する樹脂の種類や表面樹脂層の厚さなどに応じて適宜選定することができる。具体的には、例えばウレタン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリカ粒子、ガラスビーズ、酸化チタン粒子などが例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、粒子の形状や大きさ、粒度分布なども適宜選定され、特に制限されるものではないが、通常は球形、楕円球形の粒子が好ましく用いられ、また粒径はD50=1〜50μm、特にD50=2〜20であることが好ましい。このような樹脂粒子の適量を上記表面樹脂層に均一に分散することにより、ローラの表面粗さを上記(Ra)、(Rz)、(Rsk)、(RΔq)に調整することが可能である。
【0033】
また、弾性層表面を研磨する方法は、特に制限されるものではないが、弾性層がフォーム体ではなくソリッド状のエラストマーである場合に好適に採用され、この弾性層表面を研磨砥石(湿式,乾式)、研磨テープ、紙やすり、バフなどを用いて研磨すればよい。この場合研磨により調整する弾性層表面の表面粗さは、弾性層の材質やその上に形成される表面樹脂層の種類や厚さに応じて適宜設定され、特に制限させるものではないが、通常はRa=0〜3μm、Rz=0〜25μmの範囲で調整し、表面樹脂層の厚さを1〜10μm程度とすることにより、ローラの表面粗さを上記(Ra)、(Rz)、(Rsk)、(RΔq)に調整することが可能である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例,比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0035】
[実施例1〜6及び比較例1〜10]
下記表1〜6に示した配合組成のポリウレタンフォームを発泡成形し、芯金(8mmφ)の外周にポリウレタンフォームからなる弾性層(厚さ4mm)を形成した。この際
、ポリオール、整泡剤、イオン導電剤、触媒を混合したA液と、イソシアネート及びカーボンブラックを混合したB液とを予め調製し、これらA液とB液とを機械撹拌して混合すると共に発泡させ、芯金の外周に密度0.64g/cm3のポリウレタンフォーム弾性層を形成した。なお、表1〜6中の配合部数は、全て質量部である。
【0036】
次いで、この弾性層上に下記組成の塗料を塗布して、厚さ7μmの表面樹脂層を形成し、電子写真用弾性ローラを得た。
塗料組成
ウレタン樹脂(日本ポリウレタン社製「N5196」) 100質量部
カーボンブラック 35質量部
ウレタン粒子(大日本インキ社製「CFB−101」、球状、D50=10μm)
10質量部
メチルエチルケトン 350質量部
イソシアネート硬化剤(日本ポリウレタン社製「HX」) 20質量部
【0037】
得られた各ローラにつき、JIS B 0601(2001)に規定された輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)を測定した。測定は、表面粗さ計(接触式)によりローラの長手方向に測定した。また測定点は、周8点で長手方向に5箇所の40点とした。結果を表1〜6に示す。
【0038】
次いで、各ローラを現像ローラとしてプリンタカートリッジに装着し、このカートリッジをヒューレット・パッカード社製のレーザービームプリンタ「Laser Jet4050」にセットして下記評価1及び2の画像試験を行った。結果を表1〜6に併記する。
評価1
黒ベタを印刷し、初期画像について画像濃度ムラを評価した。
評価2
23℃,50%RHの環境下で白ベタ画像を5000枚印刷した後、初期画像と同じ黒ベタ画像を印刷して、画像を評価した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
【表5】

【0044】
【表6】

【0045】
[実施例7及び比較例11]
下記表7に示した配合組成のポリウレタンフォームを上記実施例1〜6と同様にして発泡成形し、芯金(8mmφ)の外周に密度0.64g/cm3のポリウレタンフォーム弾性層(厚さ4mm)を形成した。なお、表7中の配合部数は、全て質量部である。
【0046】
次いで、上記弾性層上に下記組成の水系塗料を塗布して表7に示した厚さの下塗層を形成し、更にこの下塗層上に上記実施例1〜6と同様にして表面樹脂層を形成して、電子写真用弾性ローラを得た。
水系塗料の組成
クロロプレン・メタクリル酸共重合物 100質量部
(昭和電工社製「ショウプレンSRX−1411」)
ケッチェンブラック 3.5質量部
【0047】
得られた各ローラにつき、実施例1〜6と同様に、JIS B 0601(2001)に規定された輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)を測定し、また同様に画像試験を行った。結果を表7に示す。
【0048】
[比較例12]
下塗層を形成せずに、弾性層上に直接表面樹脂層を形成したこと以外は、実施例7と同様にして、電子写真用弾性ローラを作製した。得られたローラにつき、同様にJIS B 0601(2001)に規定された輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)を測定し、また同様に画像試験を行った。結果を表7に併記する。
【0049】
【表7】

【0050】
[実施例8及び比較例13]
下記表8に示した配合組成のポリウレタンエラストマーを混練し、硬化させてソリッドタイプのポリウレタンエラストマーからなる弾性層(厚さ4mm)を芯金(8mmφ)の外周に形成した。なお、表7中の配合部数は、全て質量部である。
【0051】
次いで、上記弾性層表面を研磨して弾性層表面にRa=0.7〜1.1、Rz=7〜14の表面粗さを付与し、その上にウレタン粒子を除いたこと以外は実施例1〜6と同様の樹脂塗料を塗布して、表8に示した厚さの表面樹脂層を形成し、電子写真用弾性ローラを得た。
【0052】
得られた各ローラにつき、実施例1〜6と同様に、JIS B 0601(2001)に規定された輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)を測定し、また同様に画像試験を行った。結果を表8に示す。
【0053】
【表8】

【0054】
表1〜8の通り、輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)を適正化した本発明にかかる実施例1〜8のローラは、良好な画像が確実に得られ、しかもその耐久性にも優れることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の周囲に弾性層を形成し、この弾性層上に直接又は中間層を介して表面樹脂層を形成してなる電子写真用弾性ローラにおいて、
JIS B 0601(2001)に規定された輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)が下記の通りの表面性状を有することを特徴とする電子写真用弾性ローラ。
Ra=0〜2μm
Rz<20μm
Rsk>0
RΔq>0.05
【請求項2】
上記表面樹脂層が、有機溶剤系樹脂塗料を塗布することにより形成されたものである請求項1記載の電子写真用弾性ローラ。
【請求項3】
上記弾性層が、メカニカルフロス法により形成したポリウレタンフォーム層である請求項1又は2記載の電子写真用弾性ローラ。
【請求項4】
上記弾性層が、平均官能基数2.5〜3のポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて機械発泡させたポリウレタンフォームである請求項3記載の電子写真用弾性ローラ。
【請求項5】
上記弾性層が、水酸基価20〜60mgKOHのポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて機械発泡させたポリウレタンフォームである請求項3又は4記載の電子写真用弾性ローラ。
【請求項6】
上記弾性層が、EO含有量1〜20%のポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させて機械発泡させたポリウレタンフォームである請求項3〜5のいずれか1項に記載の電子写真用弾性ローラ。
【請求項7】
上記ポリオール成分として、プロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)とからなるポリエーテルポリオール、及びポリスチレン及び/又はポリアクリレートを含有するポリマーポリオールのいずれか一方又は両方を用いた請求項3〜6のいずれか1項に記載の電子写真用弾性ローラ。
【請求項8】
上記イソシアネート成分が、NCO含有率1〜25%の変性トリレンジイソシアネート(TDI)、変性ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び変性ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から選ばれる少なくとも1種を含む請求項3〜7のいずれか1項に記載の電子写真用弾性ローラ。
【請求項9】
上記イソシアネート成分が、ポリオール変性TDI、ポリオール変性MDI及びポリオール変性HDIのいずれか一種を含む請求項8記載の電子写真用弾性ローラ。
【請求項10】
上記弾性層上に、中間層を形成することなく、直接有機溶剤系樹脂塗料を塗布して表面樹脂層を形成した請求項3〜9のいずれか1項に記載の電子写真用弾性ローラ。
【請求項11】
上記表面樹脂層に表面性状調整用の粒子を配合分散して、上記輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)、輪郭曲線の最大高さ(Rz)、輪郭曲線のスキューネス(Rsk)及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)を調整したものである請求項1〜10のいずれか1項に記載の電子写真用弾性ローラ。
【請求項12】
弾性層表面又は中間層表面を研磨して表面粗さを調整し、その上に上記表面樹脂層を形成した請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子写真用弾性ローラ。

【公開番号】特開2009−122316(P2009−122316A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295264(P2007−295264)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】