説明

電子写真装置機能部品用樹脂

【課題】電子写真装置機能部品の最表面にアミノ基及びカルボキシル基が存在することができ、基材樹脂の硬度や弾性などの特性を損なわない範囲の少量の添加で、トナーに充分な負荷電性を付与し、その成形品の電子写真装置機能部品において良好な画像を形成することができる正荷電性樹脂を含有する電子写真装置機能部品用樹脂を提供する。
【解決手段】アミノ基及びカルボキシル基を含む正荷電制御樹脂を含有する電子写真装置機能部品用樹脂において、電子写真装置機能部品の表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、分子量1850までのトータルイオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率が0.005以上であり、分子量1850までのトータルイオン強度に対するカルボキシル基に由来する最大イオン強度の比率Aが5PPM以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式電子写真法の電子写真装置機能部品用樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式電子写真法においては、ブレード、ローラーなどの電子写真装置機能部品は、その表面においてトナーを加圧などによる摩擦によって荷電させて担持している。したがって、電子写真装置機能部品の表面層としては、トナーを正荷電させたい場合には負荷電性の材料を、また、トナーを負荷電させたい場合には正荷電性の材料を選定する必要があり、前者としては、フッ素系樹脂など、後者としてはナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂などが提案されている。
【0003】
一方で、電子写真装置機能部品には、ニップ幅の向上、トナーストレスなどを削減するために、ゴム状材料を主基材層とした柔軟なものを用いることが好ましい。しかしながら、柔軟な主基材層を用いた場合、トナーと電子写真装置機能部品表面との摩擦力が小さく、フッ素系樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂製部品を用いただけではトナーの荷電量が不足して良好な画像を得ることが困難となる場合もある。このために、積極的に電子写真装置機能部品表面層の荷電性の改質を行うことを考え、トナーと接触する電子写真装置機能部品表面に荷電制御剤を添加する手段がとられている。例えば、荷電制御剤として、有機溶剤に可溶で現像ローラーや現像スリーブに塗工可能な荷電制御樹脂を用いる方法が報告されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。これらはいずれも主として、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーとメタクリル酸メチルとの共重合体を荷電制御樹脂として使用している。このような荷電制御樹脂は電子写真装置機能部品に適用して表面層の荷電性をある程度改善できることが期待されているが、トナーの更なる荷電量を付与できる荷電制御剤が求められている。
【0004】
ここで、実際に正荷電制御剤が機能するためには、電子写真装置機能部品の最表面に存在する必要がある。このような荷電制御樹脂を添加した際、多量に添加すると電子写真装置機能部品の基材の樹脂本来が持つ諸特性が変化し、電子写真装置機能部品として使用する際に弊害を生じる場合がある。基材の樹脂本来の物理特性を変化させないよう、少量の添加で電子写真装置機能部品の最表面に存在できる荷電制御樹脂の要請がある。
【0005】
また、電子写真装置機能部品について、画像評価が可能な検出手段を確立することの要請がある。
【特許文献1】特開2000−242033号公報
【特許文献2】特開2002−244426号公報
【特許文献3】特開2003−005507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、トナーに充分な負荷電性を付与し、良好な画像を形成することができる電子写真装置機能部品に使用できる正荷電制御樹脂を含有する樹脂を提供することにある。更に、電子写真装置機能部品の最表面にアミノ基、及びカルボキシル基が存在できるようにすることができ、基材樹脂の硬度や弾性などの特性を損なわない範囲の少量の添加で、電子写真装置機能部品表面にトナーの負荷電を充分に達成できる正荷電性を付与することができる樹脂を提供することにある。更に、電子写真装置機能部品により形成される画像の評価を容易に行うことができる指標を明らかにした電子写真装置機能部品用樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、トナーに負荷電性を付与するための正荷電制御樹脂について研究を行った。本発明者らは、上記文献に記載のトナーの荷電制御樹脂のメタクリル酸メチルを炭素数4以上のアルキル基またはフッ素原子を3個以上有する炭素数1〜14のフルオロアルキル基有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに代えて、アミノ基含有モノマーと共重合した共重合体は、トナーにより大きな帯電量を与えることを既に開発している。(特願2005−31657号、特願2005−31658号)。樹脂に添加した際に、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに含まれる炭素数4以上のアルキル基またはフッ素原子を3個以上有する炭素数1〜14のフルオロアルキル基が、アミノ基含有モノマーに含まれるアミノ基の表面配向を促し、トナーの帯電量を上昇できると考えられる。
【0008】
上記荷電制御樹脂を電子写真装置機能部品の表面層に添加することで、トナーの帯電量の増加による画像特性の向上が認められる。しかしながらその一方で、画像評価の条件によっては上記荷電制御樹脂添加により、画像特性上の弊害が認められる場合があることがわかった。
【0009】
本発明者らは、アミノ基とカルボキシル基を含む正荷電制御樹脂は、これを含む樹脂の成形品において飛行時間型二次イオン質量分析装置の測定により、アミノ基とカルボキシル基に由来する最大イオン強度が特定の値を有する場合、電子写真装置機能部品の最表面にアミノ基とカルボキシル基が存在することの知見を得た。このような正荷電制御樹脂は少量の添加によりトナーに適切な負荷電を付与することができる正荷電性を有し、基材樹脂の特性を損ねることがないことの知見を得た。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、アミノ基及びカルボキシル基を含む正荷電制御樹脂を含有する電子写真装置機能部品用樹脂において、電子写真装置機能部品の表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、分子量1850までのトータルイオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率が0.005以上であり、分子量1850までのトータルイオン強度に対するカルボキシル基に由来する最大イオン強度の比率Aが5PPM以上であることを特徴とする電子写真装置機能部品用樹脂に関する。
【0011】
また、本発明は、アミノ基、及びカルボキシル基を含む正荷電制御樹脂と、ポリオール成分及びイソシアネート成分からなる組成物をウレタン化して得られるウレタン樹脂とを含む電子写真装置機能部品用樹脂において、電子写真装置機能部品の表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率Bが0.05以上、分子量1850までのトータルイオン強度に対するカルボキシル基に由来する最大イオン強度の比率Aが5PPM以上であることを特徴とする電子写真装置機能部品用樹脂に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子写真装置機能部品用樹脂は、トナーに充分な負荷電性を付与し、その成形品の電子写真装置機能部品により良好な画像を形成することができる。更に、本発明の電子写真装置機能部品用樹脂は、電子写真装置機能部品の最表面にアミノ基及びカルボキシル基が存在することができる正荷電制御樹脂を含有するため、基材樹脂の硬度や弾性などの特性を損なわない範囲の少量の添加で、電子写真装置機能部品表面にトナーの負荷電を充分に達成できる正荷電性を付与することができる。更に、本発明の電子写真装置機能部品用樹脂は、その成形品である電子写真装置機能部品により形成される画像評価を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の電子写真装置機能部品用樹脂は、アミノ基及びカルボキシル基を含む正荷電制御樹脂を含有する電子写真装置機能部品用樹脂において、電子写真装置機能部品の表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry:TOF−SIMS)で測定した際に、分子量1850までのトータルイオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率が0.005以上であり、分子量1850までのトータルイオン強度に対するカルボキシル基に由来する最大イオン強度の比率Aが5PPM(parts per million)以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明の電子写真装置機能部品用樹脂に含有されるアミノ基及びカルボキシル基を含む正電荷制御樹脂としては、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、式(2)および/または(3)で示されるアミノ基含有モノマーと、式(4)および/または(5)で示されるカルボキシル基含有モノマーとを重合した共重合体を含むことが好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
式中、R1は炭素数4以上のアルキル基またはフッ素原子を3個以上有する炭素数1〜14のフルオロアルキル基を表し、R2、R2a、R2b、R2c、R2dは独立して水素原子またはメチル基を表し、R3a、R3bは独立して炭素数1〜7の二価の有機基を表し、R4a、R4b、R5a、R5bは、独立して水素原子または炭素数1〜20の有機基を表し、またはR4aとR5a、R4bとR5bはそれぞれ化学的に結合して4〜20員複素環を構成し、R4aとR5a、R4bとR5bはそれぞれ化学的に結合して、酸素原子、窒素原子、イオウ原子の少なくとも一種を含む4〜19員複素環を構成し、R6は炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R7は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R8はエチレン基、ビニレン基、1,2−シクロヘキシレン基、または1,2−フェニレン基を表し、nは0〜10のいずれかの整数を表す。
【0017】
上記式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、iso−デシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等や、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ノナデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、3−トリフルオロメチル−4,4,4−トリフルオロブチル(メタ)アクリレート、1−メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。ここで、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートあるいはアクリレートを意味する(以下、同じ)。これらのモノマーは単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
上記式(2)で示されるアミノ基含有モノマーとしては、具体的には、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジプロピルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジブチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジメチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジエチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジプロピルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジブチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N−ラウリルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N−ステアリルアミノベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのモノマーは単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
上記式(3)で示されるアミノ基含有モノマーとしては、具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジプロピルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジブチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジエチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジプロピルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジブチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N−ラウリルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N−ステアリルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。これらのモノマーは単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。ここで「(メタ)アクリルアミド」は、メタクリルアミドあるいはアクリルアミドを意味する(以下、同じ)。
【0020】
上記式(2)または式(3)で示されるアミノ基含有モノマーとしては、式(2)で示されるアミノ基含有モノマーのみを用いることも、式(3)で示されるアミノ基含有モノマーのみを用いることも、式(2)で示されるアミノ基含有モノマー及び式(3)で示されるアミノ基含有モノマーを併用することもできる。
【0021】
上記式(4)で示されるカルボキシル基含有モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート(ただし、カプロラクトンユニットが10以下のもの)等を挙げることができる。これらのモノマーは単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
上記式(5)で示されるカルボキシル基含有モノマーとしては、具体的には、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフマル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等を挙げることができる。ここで、「(メタ)アクリロイロキシ」は、メタクリロイロキシあるいはアクリロイロキシを意味する(以下、同じ)。これらのモノマーは単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
上記式(4)または式(5)で示されるカルボキシル基含有モノマーとしては、式(4)で示されるカルボキシル基含有モノマーのみを用いることも、式(5)で示されるカルボキシル基含有モノマーのみを用いることも、式(4)で示されるカルボキシル基含有モノマー及び式(5)で示されるカルボキシル基含有モノマーを併用することもできる。
【0024】
本発明に用いられる正荷電制御樹脂においては アミノ価として5〜350mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは15〜345mgKOH/gであり、さらに好ましくは30〜340mgKOH/gである。正荷電性制御樹脂のアミノ価が5〜350mgKOH/gであれば、樹脂の帯電量として充分となる。
【0025】
本発明に用いられる正荷電制御樹脂において、酸価として0.1〜250mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは0.5〜225mgKOH/gの場合であり、さらに好ましくは1〜200mgKOH/gである。正荷電制御樹脂の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、添加による弊害を抑制することができ、250mgKOH/g以下であれば、樹脂の帯電量として充分となる。
【0026】
本発明に用いられる正荷電制御樹脂においては、上記式(1)〜(5)で示されるモノマーの他、その機能を低下させない範囲で、これらと共重合可能なモノマーを構成モノマーとして含んでいてもよい。かかる共重合可能なモノマーとしては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルなどのビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンなどのビニルケトン等を挙げることができる。これらのモノマーは1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
上記正荷電制御樹脂の本発明の電子写真装置機能部品用樹脂中の含有量としては、樹脂100質量部に対し、0.05〜30質量部を挙げることができる。上記正荷電性樹脂の含有量が0.05質量部以上であれば、トナーの帯電量を充分なものとすることができ、30質量部以下であれば、樹脂の硬度や弾性などの特性が損なわれることを抑制することができる。
【0028】
上記正荷電制御樹脂を得るための上記モノマーの重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の公知の方法を挙げることができる。反応を容易に制御できる点から溶液重合法が好ましい。溶液重合に用いる溶媒としては、具体的に、キシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、イソプロピルアルコール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。溶媒の使用量としては、モノマー30〜400質量部に対し、溶媒100質量部を挙げることができる。
【0029】
上記正荷電制御樹脂を得るためにモノマーの重合に使用する重合開始剤としては、具体的には、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等を挙げることができる。これらは単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量としては、モノマー100質量部に対し、0.05〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜15質量部である。
【0030】
上記正荷電制御樹脂を得るための重合反応温度としては、使用する溶媒、開始剤、モノマーに応じて適宜設定することができるが、40℃〜150℃を好ましい範囲として挙げることができる。
【0031】
本発明の電子写真装置機能部品用樹脂としては、ポリオール成分及びイソシアネート成分を加えた組成物をウレタン化して得られるウレタン樹脂を含むものが好ましい。
【0032】
上記ポリオール成分としては、ポリウレタンの材料としての一般的なポリオール成分を挙げることができる。具体的には、ポリエーテルポリオール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、THF−アルキレンオキサイド共重合体ポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物、フォスフェート系ポリオール、ハロゲン含有ポリオール、アジペート系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリカプローラークトン系ポリオール、ポリブタジエンポリオール等を挙げることができる。これらは単独あるいは組み合わせて使用することができる。
【0033】
上記イソシアネート成分としては、ポリウレタンの材料としての一般的なイソシアネート成分を挙げることができる。具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4´−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、粗製−MDI(ポリメリックMDI)、および変性MDI、その他、特殊なイソシアネートを用いることができる。特殊なイソシアネートしては、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添−XDI、水添−MDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニール)チオフェスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロへプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。また、イソシアネートをブロック剤でマスクした構造のブロック型イソシアネートを用いることもできる。ブロック型イソシアネートは、常温では反応せず、ブロック剤が解離する温度まで加熱すると、イソシアネート基が再生する。
【0034】
上記イソシアネート成分としては、さらにイソシアネート末端プレポリマーを用いることができる。イソシアネート末端プレポリマーの製造方法としては、通常の製造条件で前記イソシアネート成分と前記ポリオール成分との反応生成物として得られる。
【0035】
上記ポリオール成分、イソシアネート成分からなる組成物をウレタン化してウレタン樹脂を得る際、かかる組成物には必要に応じて触媒や溶媒を加えることができ、上記正荷電制御樹脂が存在することが好ましい。触媒としては、一般的にウレタン化に用いる触媒、例えばアミン化合物等を用いることができる。溶媒としては、公知の溶媒を必要に応じて使用することができる。ウレタン化する組成物中の正荷電制御樹脂と、ポリオール成分、イソシアネート成分の混合比としては、ポリオール成分、イソシアネート成分の合計100質量部に対し、正荷電制御樹脂の含有量0.05〜30質量部を挙げることができる。上記正荷電制御樹脂の含有量が0.05質量部以上であれば、トナーの帯電量を充分なものとすることができ、30質量部以下であれば、樹脂の硬度や弾性などの特性が損なわれるのを抑制することができる。
【0036】
また、上記ウレタン樹脂と正荷電制御樹脂の含有割合としては、ウレタン樹脂100質量部に対し、正荷電制御樹脂の含有量0.05〜30質量部を挙げることができる。正荷電制御樹脂の含有量が0.05質量部以上であれば、トナーの帯電量を充分なものとすることができ、30質量部以下であれば、樹脂の硬度や弾性などの特性が損なわれるのを抑制することができる。
【0037】
本発明の電子写真装置機能部品用樹脂は、前記正荷電制御樹脂や、ウレタン樹脂の外に、これらの機能を損なわない範囲で、他の成分を含有していてもよい。他の成分として、具体的には、例えば、スチレン又はスチレン誘導体のホモポリマー又はコーポリマーなどのスチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステルを含むホモポリマー又はコーポリマーなどのアクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フエノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は溶液に溶解、または分散して添加することができる。その他、機能性成分として、例えばカーボンブラックや金属酸化物等の導電剤や各種安定剤等を使用することができる。
【0038】
本発明の電子写真装置機能部品用樹脂において、その成形品の電子写真装置機能部品の表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定したとき、分子量1850までのトータルイオン強度に対し、アミノ基に由来する最大イオン強度が0.005以上であり、カルボキシル基に由来する最大イオン強度が5PPM以上である。
【0039】
本発明の電子写真装置機能部品用樹脂の成形品の電子写真装置機能部品の表面をTOF−SIMSで測定した際のアミノ基に由来する最大イオン種としては、正荷電制御樹脂に含まれるアミノ基に起因する。具体的には、例えば、正荷電制御樹脂に含まれるアミノ基がN(CH32であれば、[C24N]、[C38N]、[C410N]のいずれかであり、N(C252であれば[C24N]、[C25N]、[C36N]、[C410N]、[C512N]、[C614N]のいずれかが検出される。かかるアミノ基に由来するこれらの最大イオン強度が分子量1850までのトータルイオン強度に対し、0.005以上であると、電子写真装置機能部品表面のアミノ基の存在量を充分にすることができ、トナーの負帯電量を充分なものとし、良好な画像を得ることができる。アミノ基に由来する最大イオン強度をこの範囲にするためには、正荷電制御樹脂におけるアミノ価を上記範囲とすることにより調整することができる。
【0040】
また、本発明の電子写真装置機能部品用樹脂の成形品の電子写真装置機能部品の表面をTOF−SIMSで測定した際のカルボキシル基に由来する最大イオン種としては、正荷電制御樹脂に含まれるカルボキシル基含有モノマーに起因する。上記正荷電制御樹脂が式(4)で示されるカルボキシル基含有モノマーを含有する場合、最大イオンとして、例えば、[CH2C(R2C)COOH]、[CH2C(R2C)COO]、[CH2CH2C(R2C)COO]、[CH2CH2C(R2C)COOH]、[R6COOH]、[R6COO]、[(R6COO)2H]、または[(R6COO)2]を挙げることができる。また、上記正荷電制御樹脂が式(5)で示されるカルボキシル基含有モノマーを含有する場合、最大イオンとして、[OCOR8COO]、または[OCOR8COOH]を挙げることができる。
【0041】
かかるカルボキシル基に由来するこれらの最大イオン強度が分子量1850までのトータルイオン強度に対し、5PPM以上であると、電子写真装置機能部品表面のカルボキシル基の存在量を充分にすることができ、正荷電制御樹脂添加による弊害を抑制することができ、良好な画像を得ることができる。カルボキシル基に由来する最大イオン強度の比率をこの範囲にするためには、正荷電制御樹脂における酸価を上記範囲とすることにより調整することができる。
【0042】
また、本発明の電子写真装置機能部品用樹脂の成形品の電子写真装置機能部品の表面をTOF−SIMSで測定した際のウレタン樹脂に由来する最大イオンとしては、ウレタン樹脂の構造に起因する。具体的には、例えば、[C23]、[C35]、[C37]、[C23O]、[C25O]、[C37O]、[C47]、[C37O]、または[C49O]などを挙げることができる。かかるウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率Bが0.05以上であり、このときの分子量1850までのトータルイオン強度に対するカルボキシル基に由来する最大イオン強度の比率Aが5PPM以上であることが好ましい。ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度がアミノ基に由来する最大イオン強度に対して20倍以下であり、分子量1850までのトータルイオン強度に対するカルボキシル基に由来する最大イオン強度の比率Aが5PPM以上であると、樹脂の硬度や弾性などの特性を損なわず、電子写真装置機能部品表面にトナーの負荷電を充分に達成できる正荷電性を付与することができる。ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度の比率をこの範囲にするためには、正荷電制御樹脂におけるカルボキシル基含有モノマーの含有量とウレタン樹脂の含有量を上記範囲とすることにより調整することができる。
【0043】
更に、ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率Bが、ウレタン樹脂の質量に対する正荷電制御樹脂の質量の比率Cに対して、B/Cとして5以上を有することが好ましい。B/Cが5以上であるとアミノ基の含有量を電子写真装置機能部品の基材樹脂本来が持つ諸特性を損なうことがないような少量の範囲とすることができ、電子写真装置機能部品において良好な電子写真特性を保持することができる。
【0044】
本発明の電子写真装置機能部品用樹脂は、トナーと接触して負帯電化するブレード、ローラー等、電子写真装置機能部品に使用するものであり、特にその表面を高い正荷電量を有するものとすることができるため、表面層の素材として好適に使用することができる。本発明の電子写真装置機能部品用樹脂を用いてブレード、ローラー等の電子写真機能部品の表面層を形成する方法としては公知の方法を使用することができる。例えば、本発明の電子写真装置機能部品用樹脂を用いてフィルムを作成し、電子写真装置機能部品表面に貼着したり、電子写真装置機能部品用樹脂を含有する塗布液を作成し、部品表面に塗工する方法などを挙げることができる。
【実施例】
【0045】
本発明の電子写真装置機能部品用樹脂の実施の形態について以下に説明するが、本発明の電子写真装置機能部品用樹脂の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
[正荷電制御樹脂の構成モノマー]
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして式(6)、(7)にそれぞれ示すA1、A2を用いた。アミノ基含有モノマーとして式(8)、(9)、(10)にそれぞれ示すB1、B2、B3を用いた。カルボキシル基含有モノマーとして式(11)、(12)にそれぞれ示すC1、C2を用いた。式(12)に示すカルボキシル基含有モノマーC2は、式(4)におけるn=1、n=2の化合物の混合物であり、その平均値が1.4の化合物である。
【0046】
【化2】

【0047】
[正荷電制御樹脂の製造]
[製造例1]
CCR1の製造
撹拌機、冷却器、温度計および窒素導入管を付した4つ口セパラブルフラスコに、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして2−エチルヘキシルメタクリレート(A1)15g、アミノ基含有モノマーとしてN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(B1)30g、カルボキシル基含有モノマーとしてコハク酸モノエチルメタクリレート(C1)5g、溶媒としてトルエン37.5gおよびエタノール12.5g、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)を2.0g仕込み、撹拌し、窒素下80℃で8時間溶液重合した。その後、減圧乾燥し正荷電制御樹脂CCR1を得た。
【0048】
得られたCCR1のアミノ価、酸価、重量平均分子量(Mw)、Tgをそれぞれ全自動滴定装置(京都電子工業(株)製AT−510)、GPC測定(装置:東ソー(株)製HLC−8120GPC、カラム:昭和電工(株)製KF−805L×2本)、DSC測定(セイコーインスツルメンツ(株)製DSC6200)により測定した。結果を表1に示す。
[製造例2〜6]
(メタ)アクリル酸エステルモノマー、アミノ基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーとして表1に示す化合物を使用し、その他は、製造例1と同様にして正電荷制御樹脂CCR2〜6を作製した。得られた正電荷制御樹脂CCR2〜6のアミノ価、酸価、Mw、Tgをそれぞれ製造例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
(注)仕込み単位はgである。
[樹脂成形品]
[実施例1]
ポリオール成分(商品名:ニッポランN5033、日本ポリウレタン社製)を固形分濃度10%となるようにメチルエチルケトンで希釈し、製造例1で作製した正荷電制御樹脂CCR1を、ウレタン樹脂の質量(ポリオール成分の固形分とイソシアネート成分の固形分の合計)に対するCCR1の質量の比率Cが0.05以上となるよう添加した。さらに導電剤としてカーボンブラックをウレタン樹脂成分100質量部に対し(商品名:MA−100、三菱化学社製)を30質量部、表面粗し材として平均粒子径10μmのウレタン粒子(商品名:アートパールCF600T、根上工業製)をウレタン樹脂成分100質量部に対し2質量部添加した。各成分が十分に分散したものに、イソシアネート成分(変性TDI、商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製)をポリオール成分100質量部に対し10質量部添加、攪拌し、樹脂1液を作製した。その樹脂1液をアルミニウム板に均一に塗り、80℃のオーブンで15分乾燥後、140℃のオーブンで2時間硬化し、樹脂1の成形品として試料板を作製した。
[実施例2〜5、比較例1〜3]
正荷電制御樹脂として表2に示す正電荷制御剤を使用した樹脂2〜7、または正電荷制御樹脂を使用しない樹脂8を使用し、その他は、実施例1と同様にして樹脂液1〜8を作製し、樹脂液を基板に塗布して試料板を作製した。
[TOF−SIMS測定]
得られた試料板を一編約5mmに切り出し、TOF−SIMS測定を以下の条件で行った。
【0051】
測定機種:アルバックファイ社製TRIFT II
一次イオン種 69Ga+
一次イオン電流(DC) 600 [pA]
一次イオンエネルギー 15 [kV]
試料電位 +3.2 [kV]
二次イオン検出モード
ポジ測定:アミノ基、ウレタン樹脂の分析 Positive
ネガ測定:カルボキシル基の分析 Negative
測定真空度 1×10-7 [Pa]
測定領域 100μm×100μm
測定積算時間 300秒
検出質量範囲 1.5〜1850amu
[カルボキシル基に由来する最大イオン強度の比率A]
樹脂1の試料板(実施例1)をネガ測定して得られたチャートのマススペクトルを解析したところ、モノマーC1に含まれるカルボキシル基に由来する最大イオンとして[C454]がm/z=117に観測された。m/z=117付近の拡大図を図1に示す。分子量1850までのトータルイオン強度、[C454]のイオン強度、分子量1850までのトータルイオン強度に対する[C454]のイオン強度の比率Aを求めた。結果を表2に示す。
【0052】
樹脂2、3、5、7の試料板(実施例2、3、5、比較例2)では、モノマーC1に含まれるカルボキシル基に由来する最大イオンとして[C454]がm/z=117に観測された。分子量1850までのトータルイオン強度、[C454]のイオン強度、分子量1850までのトータルイオン強度に対する比率Aを求めた。結果を表2に示す。
【0053】
樹脂4の試料板(実施例4)では、モノマーC2に含まれるカルボキシル基に由来する最大イオンとして[C352]がm/z=73に観測された。m/z=73付近の拡大図を図2に示す。分子量1850までのトータルイオン強度、[C352]のイオン強度、分子量1850までのトータルイオン強度に対する[C352]のイオン強度の比率Aを求めた。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
[アミノ基に由来する最大イオン強度の百分率]
樹脂1の試料板(実施例1)をポジ測定して得られたマススペクトルを解析したところ、アミノ基含有モノマーB1に含まれるジメチルアミノ基に由来する最大イオンとして[C38N]がm/z=58に観測された。m/z=58付近の拡大図を図3に示す。分子量1850までのトータルイオン強度、[C38N]のイオン強度、分子量1850までのトータルイオン強度に対する[C38N]のイオン強度の百分率を求めた。結果を表3に示す。
【0056】
樹脂2、4、5、6の試料板(実施例2、4、5、比較例1)では、いずれもアミノ基としてジメチルアミノ基を含有し、アミノ基に由来する最大イオンとして[C38N]がm/z=58に観測された。分子量1850までのトータルイオン強度、[C38N]のイオン強度、分子量1850までのトータルイオン強度に対する[C38N]のイオン強度の百分率を求めた。結果を表3に示す。
【0057】
樹脂3の試料板(実施例3)では、アミノ基含有モノマーB2に含まれるジエチルアミノ基に由来する最大イオンとして[C512N]がm/z=86に観測された。m/z=86付近の拡大図を図4に示す。分子量1850までのトータルイオン強度、[C512N]のイオン強度、分子量1850までのトータルイオン強度に対する[C512N]のイオン強度百分率を求めた。結果を表3に示す。
[ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率B]
正荷電制御樹脂を含有しない樹脂8(比較例3)の試料板をポジ測定して得られたマススペクトルを解析したところ、最大イオンとして[C37O]がm/z=59に観測された。拡大図を図5に示す。総ての実施例、比較例においても同様に、[C37O]がm/z=59に観測され、これはウレタンに由来する最大イオンであることが明らかである。
【0058】
ウレタン樹脂に由来する最大イオン[C37O]のイオン強度に対する、アミノ基に由来する最大イオン強度、即ち[C38N]又は[C512N]のイオン強度の比率Bを求め、更に、ウレタン樹脂の質量に対する正荷電制御樹脂の質量の比率Cから、B/Cを求めた。結果を表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
[電子写真装置機能部品における評価]
[現像ローラーの製造]
下記の要領で、本発明の電子写真装置機能部品用樹脂を用いて、現像ローラーを作製した。図6(a)に現像ローラーの軸方向に垂直方向の断面図、(b)に現像ローラーの軸方向の断面図を示す。
【0061】
外径8mmの芯金(SUM製)114aを内径16mmの円筒状金型内に同心となるように設置し、液状導電性シリコーンゴム(東レダウシリコーン社製、AskerC硬度35度、体積固有抵抗1×1010Ωcm)を注型後、130℃のオーブンに入れ20分加熱成型し、脱型後、200℃のオーブンで4時間2次加硫を行い、厚さ4mmの弾性層114bを成形した。
【0062】
次いで、上記実施例、比較例において作製した樹脂液1〜8を塗布液として、ディッピングにより弾性層上に膜厚20μmの塗布膜を形成し、80℃のオーブンで15分乾燥後、140℃で4時間硬化を行い、表面層114cを成形し、現像ローラーを得た。
[HH環境下での現像ローラーの評価]
得られた現像ローラーを、負帯電性の非磁性トナーからなる一成分現像剤を使用する評価用レーザービームプリンターに取付け、HH(32.5℃×80%RH)の環境下で所定の画像(文字パターン画像)を16000枚、連続的に印刷した後、現像ローラー上に付着しているトナーの帯電量指数、カブリ量指数を以下の基準により評価した。
[トナーの帯電量指数の評価]
現像ローラーに担持されたトナーの帯電量を、図7に示すファラデー・ケージ(Faraday−Cage)を用いて、現像剤担持体に担持されているトナーを吸引によりフィルター中にとり入れ、電荷量をKEITHLEY 6514 DIGITAL ELECTROMETERで測定し、内筒中のトナー重量Mで電荷量Qを割ることによって求めた。樹脂8液(比較例3)を用いた現像ローラーにおけるトナー帯電量を100として、各現像ローラーにおけるトナーの帯電量の換算値を、各現像ローラーの帯電量指数として表示した。ここでは、数値が大きいほど帯電性能に優れ、画像濃度が得られやすく、かぶりが低減されやすいことを示す。総ての実施例においてトナーの帯電量が増加した。結果を表4に示す。
[かぶり量指数の評価]
白ベタ画像出力中にプリンターを停止し、感光体上に付着したトナーをテープではがし取り、反射濃度計(マクベス社製スペクトロアイ)にて基準に対する反射率の低下量(%)を測定し、かぶり量とした。樹脂液8(比較例3)の現像ローラーにおけるかぶり量を100として、各現像ローラーにおけるかぶり量の換算値を、各現像ローラーのかぶり指数として表示した。ここでは、数値が小さいほど、かぶりのない良好な画像を得られることを示す。総ての実施例において表面層の帯電量が増加し、かぶり量が低減した。結果を表4に示す。
[LL環境下での現像ローラーの評価]
現像ローラーを上記評価用レーザービームプリンターに取付け、LL(15℃×10%RH)の環境下で所定の画像(文字パターン画像)を印刷した際、印刷領域外のトナー飛散の有無を評価した。トナー飛散は荷電性樹脂を添加することにより生じ、出力画像の汚れの原因となり、荷電性樹脂による弊害である。総ての実施例ではトナー飛散は認められなかった。樹脂6液(比較例1)を用いた現像ローラーは、帯電量指数とかぶり指数は、良好な結果を示したが、トナー飛散が生じていた。結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の電子写真装置機能部品用樹脂の一例の成形品のTOF−SIMSマススペクトルチャートを示す図である。
【図2】本発明の電子写真装置機能部品用樹脂の一例の成形品のTOF−SIMSマススペクトルチャートを示す図である。
【図3】本発明の電子写真装置機能部品用樹脂の一例の成形品のTOF−SIMSマススペクトルチャートを示す図である。
【図4】本発明の電子写真装置機能部品用樹脂の一例の成形品のTOF−SIMSマススペクトルチャートを示す図である。
【図5】比較例の成形品のTOF−SIMSマススペクトルチャートを示す図である。
【図6】本発明の電子写真装置機能部品用樹脂の一例の成形品の現像ローラーの断面図を示す図である。
【図7】本発明の電子写真装置機能部品用樹脂の一例の成形品の現像ローラーによるトナー帯電量の測定に用いるファラデー・ケージを示す概略構成図を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
114a:芯金
114b:弾性層
114c:表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基及びカルボキシル基を含む正荷電制御樹脂を含有する電子写真装置機能部品用樹脂において、電子写真装置機能部品の表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、分子量1850までのトータルイオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率が0.005以上であり、分子量1850までのトータルイオン強度に対するカルボキシル基に由来する最大イオン強度の比率Aが5PPM以上であることを特徴とする電子写真装置機能部品用樹脂。
【請求項2】
アミノ基、及びカルボキシル基を含む正荷電制御樹脂と、ポリオール成分及びイソシアネート成分からなる組成物をウレタン化して得られるウレタン樹脂とを含む電子写真装置機能部品用樹脂において、電子写真装置機能部品の表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率Bが0.05以上、分子量1850までのトータルイオン強度に対するカルボキシル基に由来する最大イオン強度の比率Aが5PPM以上であることを特徴とする電子写真装置機能部品用樹脂。
【請求項3】
正荷電制御樹脂が、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、式(2)および/または(3)で示されるアミノ基含有モノマーと、式(4)および/または(5)で示されるカルボキシル基含有モノマーとを重合した共重合体を含むことを特徴とする請求項1または2記載の電子写真装置機能部品用樹脂。
【化1】

(式中、R1は炭素数4以上のアルキル基またはフッ素原子を3個以上有する炭素数1〜14のフルオロアルキル基を表し、R2、R2a、R2b、R2c、R2dは独立して水素原子またはメチル基を表し、R3a、R3bは独立して炭素数1〜7の二価の有機基を表し、R4a、R4b、R5a、R5bは、独立して水素原子または炭素数1〜20の有機基を表し、またはR4aとR5a、R4bとR5bはそれぞれ化学的に結合して4〜20員複素環を構成し、R4aとR5a、R4bとR5bはそれぞれ化学的に結合して、酸素原子、窒素原子、イオウ原子の少なくとも一種を含む4〜19員複素環を構成し、R6は炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R7は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R8はエチレン基、ビニレン基、1,2−シクロヘキシレン基、または1,2−フェニレン基を表し、nは0〜10のいずれかの整数を表す。)
【請求項4】
ウレタン樹脂の質量に対する正荷電制御樹脂の質量の比率Cと、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した、ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率Bとが、B/Cとして5以上の関係を有することを特徴とする請求項2または3記載の電子写真装置機能部品用樹脂。
【請求項5】
正荷電制御樹脂がアミノ基としてN(CH32を含み、電子写真装置機能部品の表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、アミノ基に由来する最大イオンが、[C24N]、[C38N]、[C410N]のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の電子写真装置機能部品用樹脂。
【請求項6】
正荷電制御樹脂がアミノ基としてN(C252を含み、電子写真装置機能部品の表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、アミノ基に由来する最大イオンが、[C24N]、[C25N]、[C36N]、[C410N]、[C512N]、または[C614N]のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の電子写真装置機能部品用樹脂。
【請求項7】
正荷電制御樹脂が、式(4)で示されるカルボキシル基含有モノマーを共重合して得られ、電子写真装置機能部品の表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、カルボキシル基に由来する最大イオンが、[CH2C(R2C)COOH]、[CH2C(R2C)COO]、[CH2CH2C(R2C)COO]、[CH2CH2C(R2C)COOH]、[R6COOH]、[R6COO]、[(R6COO)2H]、または[(R6COO)2]のいずれかであることを特徴とする請求項3〜6のいずれか記載の電子写真装置機能部品用樹脂。
【請求項8】
正荷電制御樹脂が、式(5)で示されるカルボキシル基含有モノマーを共重合して得られ、電子写真装置機能部品の表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、カルボキシル基に由来する最大イオンが、[OCOR8COO]、または[OCOR8COOH]であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか記載の電子写真装置機能部品用樹脂。
【請求項9】
電子写真装置機能部品の表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、ウレタン樹脂に由来する最大イオンが、[C23]、[C35]、[C37]、[C23O]、[C25O]、[C37O]、[C47]、[C37O]、または[C49O]のいずれかであることを特徴とする請求項2〜8のいずれか記載の電子写真装置機能部品用樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−156093(P2007−156093A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350869(P2005−350869)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】