電子回路装置
【課題】本発明は、薄型化並びに小型化を実現しつつ、樹脂封止体の磁性体に加わる応力を緩和することができるとともに、磁性体からの放熱効率を高め、磁性体の透磁率を向上することができる電子回路装置を提供する。
【解決手段】電子回路装置1において、第1の表面11A及びそれに対向する第2の表面11Bを有する基板11と、基板11に第1の表面11Aから第2の表面11Bに渡って配設され、第1の表面11A側に第3の表面3Aを有し、第2の表面11B側に第4の表面3Bを有する磁性体(第1のトランス3)と、第5の表面91A及びそれに対向する第6の表面91Bを有し、磁性体の第4の表面3B上に第5の表面91Aを向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体91と、基板11、磁性体及び第1の応力緩衝体91の少なくとも第5の表面91Aを被覆する樹脂封止体17とを備える。
【解決手段】電子回路装置1において、第1の表面11A及びそれに対向する第2の表面11Bを有する基板11と、基板11に第1の表面11Aから第2の表面11Bに渡って配設され、第1の表面11A側に第3の表面3Aを有し、第2の表面11B側に第4の表面3Bを有する磁性体(第1のトランス3)と、第5の表面91A及びそれに対向する第6の表面91Bを有し、磁性体の第4の表面3B上に第5の表面91Aを向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体91と、基板11、磁性体及び第1の応力緩衝体91の少なくとも第5の表面91Aを被覆する樹脂封止体17とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路装置に関し、特に磁性体を樹脂封止体により封止した電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば汎用テレビジョンの電源ユニットには、直流−直流(DC−DC)コンバータが組み込まれている。DC−DCコンバータは、例えば一般家庭用100Vの交流電圧から変換された直流電圧を、更に制御回路ユニット、駆動回路ユニット等に使用される直流電圧に変換する。DC−DCコンバータは、最終的に12Vや24Vの直流電圧を生成する。
【0003】
薄型化並びに大画面化の傾向にある液晶テレビジョン、プラズマテレビジョン等の汎用テレビジョンの開発には電源ユニットの薄型化並びに小型化が重要な課題になっている。下記特許文献1乃至特許文献3には、電源ユニットの薄型化並びに小型化に最適な発明が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された発明は、電源回路におけるノイズ抑制、整流、平滑等に利用されるインダクタを回路基板の横に配置し、回路基板及びインダクタをモールドパッケージにより封止した半導体装置である。この半導体装置においては、回路基板、この回路基板に搭載された回路素子及びインダクタを1つのパッケージ内に組み込むことができるので、薄型化並びに小型化を実現することができる。
【0005】
また、特許文献2に開示された発明は、半導体集積回路(IC)及びインダクタをリードフレーム上に横に並べて実装し、これらを樹脂封止したDC−DCコンバータである。特許文献1に開示された半導体装置と同様に、特許文献2に開示されたDC−DCコンバータにおいては薄型化並びに小型化を実現することができる。
【0006】
また、特許文献3に開示された発明は、インダクタ基板上に入出力コンデンサ、電源ICチップを積層し、これらを樹脂を用いて封止した超小型DC−DCコンバータモジュールである。特許文献1に開示された半導体装置並びに特許文献2に開示されたDC−DCコンバータと同様に、特許文献3に開示された超小型DC−DCコンバータモジュールにおいては薄型化並びに小型化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−098256号公報
【特許文献2】特開2007−173712号公報
【特許文献3】特開2007−318954号公報
【特許文献4】特開2002−158115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許文献1に開示された半導体装置、特許文献2に開示されたDC−DCコンバータ並びに特許文献3に開示された超小型DC−DCコンバータモジュールはいずれも薄型化並びに小型化を実現可能である点において優れている。ところが、インダクタには、例えば酸化鉄を主成分としてマンガン等の金属化合物を混合し、高温焼結によって生成された強磁性体であるフェライトが使用されており、このフェライトに応力が加わると透磁率が次第に低下する現象が生じる。特許文献1乃至特許文献3のそれぞれに開示されたインダクタにおいては、製作過程中の樹脂封止後の樹脂の熱収縮の際に応力が加わる。また、インダクタにおいては、製品として動作の際に発生する熱サイクルに伴い、樹脂が熱収縮と膨張とを繰り返し、応力が加わる。インダクタの磁性体(強磁性体)に応力が加わると、上記の通り透磁率が低下するので、インダクタンスが低下し、インダクタの電気的特性が劣化する。
【0009】
上記特許文献4には、樹脂封止によって磁性体に発生する応力や衝撃を緩和し、磁気特性の劣化を防止することができ、又コア割れを防止することができる発明が開示されている。この特許文献4に開示された発明は、フェライトコアの表面部分全体を覆い、フェライトコアとコイルボビン間の隙間を覆う樹脂製のトランス保護カバーを備えたトランスである。
【0010】
しかしながら、上記特許文献4に開示されたトランスにおいては、樹脂製のトランス保護カバーを用いて樹脂の熱収縮や熱サイクルによって磁性体に及ぼす応力を緩和することができるが、この樹脂製のトランス保護カバーを含めて全体的に熱伝導性の良くない樹脂により磁性体が覆われているので、磁性体から発生する熱が樹脂の外部に放熱しにくい点について配慮がなされていなかった。トランスの放熱が十分に行われない場合には、トランスの電気的特性の劣化を生じるだけでなく、熱サイクルに伴う樹脂封止の応力が増大し、前述の通り磁性体の透磁率が低下する。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。従って、本発明は、薄型化並びに小型化を実現しつつ、樹脂封止体の磁性体に加わる応力を緩和することができるとともに磁性体からの放熱効率を高め、磁性体の透磁率を向上することができる電子回路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の実施例に係る第1の特徴は、電子回路装置において、第1の表面及びそれに対向する第2の表面を有する基板と、基板に第1の表面から第2の表面に渡って配設され、第1の表面側に第3の表面を有し、第2の表面側に第4の表面を有する磁性体と、第5の表面及びそれに対向する第6の表面を有し、磁性体の第4の表面上に第5の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体と、基板、磁性体及び第1の応力緩衝体の少なくとも第5の表面を被覆する樹脂封止体とを備える。
【0013】
第1の特徴に係る電子回路装置において、第1の応力緩衝体の第5の表面のサイズは、磁性体の第4の表面のサイズに比べて大きく、基板の第1又は第2の表面のサイズと同一かそれに比べて小さいことが好ましい。
【0014】
第1の特徴に係る電子回路装置において、第1の応力緩衝体と磁性体との間に、ガラス繊維クロスに熱硬化型接着剤を含浸又は塗布した接着層が配設されていることが好ましい。
【0015】
本発明の実施例に係る第2の特徴は、電子回路装置において、第1の表面及びそれに対向する第2の表面を有する基板と、基板に第1の表面から第2の表面に渡って配設され、第1の表面側に第3の表面を有し、第2の表面側に第4の表面を有する磁性体と、第7の表面及びそれに対向する第8の表面を有し、磁性体の第3の表面上に第8の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第2の応力緩衝体と、基板、磁性体及び第2の応力緩衝体の少なくとも第7の表面及び第8の表面を被覆する樹脂封止体とを備える。
【0016】
第2の特徴に係る電子回路装置において、第2の応力緩衝体の第8の表面のサイズは、磁性体の第3の表面のサイズに比べて大きく、基板の第1又は第2の表面のサイズに比べて小さいことが好ましい。
【0017】
第2の特徴に係る電子回路装置において、基板の第1の表面上において磁性体の周囲に配設された機能が異なる第1の電子部品及び第2の電子部品を更に備え、第2の応力緩衝体は、第2の電子部品上を除き、磁性体の第3の表面上及び第1の電子部品上に重複して配設されていることが好ましい。
【0018】
第2の特徴に係る電子回路装置において、第2の応力緩衝体は固定電位に接続されることが好ましい。
【0019】
本発明の実施例に係る第3の特徴は、電子回路装置において、第1の表面及びそれに対向する第2の表面を有する基板と、基板に第1の表面から第2の表面に渡って配設され、第1の表面側に第3の表面を有し、第2の表面側に第4の表面を有する磁性体と、第5の表面及びそれに対向する第6の表面を有し、磁性体の第4の表面上に第5の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体と、第7の表面及びそれに対向する第8の表面を有し、磁性体の第3の表面上に第8の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第2の応力緩衝体と、基板、磁性体、第1の応力緩衝体の少なくとも第5の表面、第2の応力緩衝体の少なくとも第7の表面及び第8の表面を被覆する樹脂封止体とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、薄型化並びに小型化を実現しつつ、樹脂封止体の磁性体に加わる応力を緩和することができるとともに、磁性体からの放熱効率を高め、磁性体の透磁率を向上することができる電子回路装置を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1に係る電子回路装置の要部を拡大した模式的断面図である。
【図2】実施例1に係る電子回路装置の回路システムブロック図である。
【図3】実施例1に係る電子回路装置の一部樹脂封止体を取り除いた平面図(上面図)である。
【図4】図3に示す電子回路装置の一部樹脂封止体を取り除いた底面図(下面図)である。
【図5】図3に示す電子回路装置の側面断面図である。
【図6】図3に示す電子回路装置の樹脂封止体を含む全体斜視図である。
【図7】図3乃至図5に示す電子回路装置の第1のトランスの分解斜視図である。
【図8】実施例1に係る電子回路装置の電気的特性を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例2に係る電子回路装置の要部を拡大した模式的断面図である。
【図10】実施例2に係る電子回路装置の一部樹脂封止体を取り除いた平面図(上面図)である。
【図11】図10に示す電子回路装置の一部樹脂封止体を取り除いた底面図(下面図)である。
【図12】図10に示す電子回路装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0023】
また、以下に示す実施例はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0024】
(実施例1)
本発明の実施例1は、汎用テレビジョンの電源ユニットに組み込まれる電源モジュールとしての電子回路装置に本発明を適用した例を説明するものである。ここでは、電子回路装置はDC−DCコンバータである。
【0025】
[電子回路装置の電子回路システムブロック構成]
図2に示すように、実施例1に係る電子回路装置1は、DC−DCコンバータを1つの電源モジュールとして構築している。この電子回路装置1は、トランジスタ部2、第1のトランス(メイントランス)3、コンデンサ41、42、43(電子部品)、ダイオード(第電子部品)5、制御部6、第2のトランス(ドライブ用トランス)7及び温度検出部8の複数の電子部品を少なくとも備えている。また、電子回路装置1においては、入力端子Vin+、Vin-、出力端子Vout+、Vout-、直流電圧端子DCIN、切換信号端子ON/OFF、出力電圧調整端子TRM、リモートセンシング端子Vs+、Vs-が配設されている。
【0026】
トランジスタ部2は、第1の絶縁ゲート型トランジスタ(以下、単にIGFET(insulated gate field effect transistor)という。)21と、第2のIGFET22と、ダイオード23及び24とを備えている。ここで、IGFETとは、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)、MISFET(metal insulated semiconductor field effect transistor)のいずれも含む意味において使用される。なお、トランジスタ部2においては、同等の機能を有していれば、IGFETに限定されるものではなく、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタ等を使用することができる。
【0027】
第1のIGFET21の主電極の一端は入力端子Vin+に接続され、主電極の他端は第2のIGFET22の主電極の一端に接続され、ゲート電極は第2のトランス7に接続されている。第1のIGFET21の主電極の一端と他端との間には逆バイアス方向にダイオード23が設けられている。第2のIGFET22の主電極の他端は入力端子Vin-に接続され、ゲート電極は第2のトランス7に接続されている。第2のIGFET22の主電極の一端と他端との間には逆バイアス方向にダイオード24が設けられている。また、入力端子Vin+とVin-との間にはコンデンサ42が挿入されている。
【0028】
第1のトランス3は、一次側巻線(コイル)31、二次側巻線(コイル)32及びコア33を備えている。一次側巻線31の一端はトランジスタ部2の出力つまり第1のIGFET21の主電極の他端及び第2のIGFET22の主電極の一端に接続され、他端はコンデンサ41を電気的に直列に介在させて入力端子Vin-に接続されている。二次側巻線32の一端はダイオード5を電気的に直列に介在させて出力端子Vout+に接続され、他端は出力端子Vout-に接続されている。
【0029】
出力端子Vout+とVout-との間には、コンデンサ43、温度検出部8のそれぞれが電気的に並列に挿入されている。温度検出部8は、電子回路装置1の温度を検出し、その検出結果を制御部6に出力する。制御部6においては、温度検出部8からの検出結果に基づき予め設定された温度上昇が検出された場合には、第2のトランス7を介してトランジスタ部2の動作を停止させる制御、すなわちこの電子回路システムの動作を停止させる制御を行うことができる。
【0030】
制御部6は、図示しないが、制御用ICとフォトカプラとを少なくとも備えている。この制御部6は、切換信号端子ON/OFFから入力される切換信号に基づき、この電子回路装置1のDC−DCコンバータの動作の制御を行う。
【0031】
[電子回路装置の動作]
図2に示す実施例1に係る電子回路装置1において、まず入力端子Vin+、Vin-間に変換前の直流電圧が与えられ、更に直流電圧端子DCINには直流電圧例えば12Vが供給され、切換信号端子ON/OFFには電子回路装置1の切換信号(起動信号)が与えられる。切換信号端子ON/OFFにON信号が与えられると、制御部6は、第2のトランス7を介してトランジスタ部2の第1のIGFET21をON動作させ、第2のIGFET22をOFF動作させる。第1のIGFET21のON動作によって、トランジスタ部2(第1のIGFET21の主電極の他端)から第1のトランス3の一次側巻線31に直流電流が流れる。この一次側巻線31に直流電流が流れると、電磁誘導作用によって二次側巻線32に直流電流が発生する。この直流電圧は出力端子Vout+、Vout-間に変換後の直流電圧として出力される。
【0032】
実施例1に係る電子回路装置1においては、変換前の直流電圧は例えば385Vであり、変換後の直流電圧は例えば12V又は24Vである。
【0033】
[電子回路装置の基本デバイス構造(基本断面構造)]
実施例1に係る電子回路装置1の基本的なデバイス断面構造は図1に示す通りである。すなわち、電子回路装置1は、第1の表面11A及びそれに対向する第2の表面11Bを有する基板11と、基板11に第1の表面11Aから第2の表面11Bに渡って配設され、第1の表面11A側に第3の表面3Aを有し、第2の表面11B側に第4の表面3Bを有する磁性体と、第5の表面91A及びそれに対向する第6の表面91Bを有し、磁性体の第4の表面3B上に第5の表面91Aを向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体91と、基板11、磁性体及び第1の応力緩衝体91の少なくとも第5の表面91Aを被覆する樹脂封止体17とを備えている。
【0034】
実施例1において、電子回路装置1の磁性体は、前述の第1のトランス3又は第2のトランス7を構築する強磁性体である。この第1のトランス3(及び第2のトランス7)の詳細な構造は後述する。また、実施例1において、磁性体は第1のトランス3及び第2のトランス7を構築するが、これに限定されるものではなく、磁性体はリアクタンス、インダクタ等を構築してもよい。
【0035】
実施例1において、第1の応力緩衝体91は、樹脂封止体17の熱収縮によって磁性体に及ぼす応力を減少することができる機能を有し、更に磁性体(第1のトランス3及び第2のトランス7)から発生する熱を樹脂封止体17の外部に放出する機能を有する。この第1の応力緩衝体91の詳細な構成は、同様に後述する。
【0036】
[基板の構成]
図1、図3、図4及び図5に示すように、電子回路装置1の基板11は、その構造を明確に図示していないが、絶縁基材とその絶縁基材の表面(第1の表面11A側)、裏面(第2の表面11B側)の少なくともいずれか一方に配設された導電体とを備えている。特に積層枚数を限定するものではないが、実施例1において、基板11は1枚の板状の絶縁基材を有する単層構造により構成され、第1の表面11A及び第2の表面11Bのそれぞれに導電体(端子、配線等)が配設されている。第1の表面11A及び第2の表面11Bに配設された導電体は基板11の第1の表面11Aから第2の表面11Bに渡って配設された接続孔配線(スルーホール配線又はビア配線)を通して電気的に接続されている。なお、基板11は2層以上の多層の絶縁基板を備えていてもよい。
【0037】
基板11の絶縁基材は、実施例1において、プリント配線板に多用されているガラスエポキシ樹脂基板により構成されている。必ずしもこの数値に限定されるものではないが、基板11は、長辺を例えば60mm−62mmに設定し、短辺を例えば42mm−44mmに設定した長方形の平面形状を有する。図1に示す基板11の厚さは例えば0.8mm−1.6mmに設定されている。
【0038】
基板11の導電体は、実施例1において、銅(Cu)、Cu合金、金(Au)等の導電性に優れた材料により構成されている。例えば、Cuが使用される場合、ラミネート法やプレス成形法により貼り付けられたCu箔か又はそのCu箔の表面にめっき法によりCuめっき層を積層した複合膜により形成される。単層のCu箔の場合、その膜厚は例えば30μm−40μmに設定されている。また、複合膜の場合、Cu箔の膜厚は例えば15μm−20μmに設定され、Cuめっき層は例えば15μm−25μmに設定されている。
【0039】
[電子部品の構成]
図1乃至図5に示すように、基板11の第1の表面11A上には、電子部品として、前述の図2において説明したトランジスタ部2、第1のトランス(磁性体)3、コンデンサ42、43、ダイオード5、制御部6、第2のトランス(磁性体)7及び温度検出部8が実装されている。基板11の第2の表面11Bには、電子部品として、例えばコンデンサ41等が実装されている。
【0040】
トランジスタ部2は、第1のIGFET21及びダイオード23を有する半導体チップを樹脂封止体により封止した半導体装置と、同様に第2のIGFET22及びダイオード24を有する半導体チップを樹脂封止体により封止した半導体装置とを備え、構築されている。トランジスタ部2は、第1の表面11Aにおいて、図3中、周辺領域の右下側に配設されている。
【0041】
コンデンサ42は例えばコンデンサ本体を樹脂封止体により封止して構成されている。樹脂封止体には実施例1においてガラスエポキシ樹脂を実用的に使用することができる。コンデンサ42は、目的とする容量値によりその搭載個数は限定されるものではないが、基板11の第1の表面11Aにおいて、図3中、周辺領域の右下側に4個配設されている。コンデンサ43は例えばコンデンサ本体を樹脂封止体により封止して構成されている。コンデンサ43は、同様に目的とする容量値によりその搭載個数は限定されるものではないが、基板11の第1の表面11Aにおいて、図3中、周辺領域の左下側に6個配設されている。
【0042】
また、コンデンサ41は、前述のコンデンサ42及び43と同様に、例えばコンデンサ本体を樹脂封止体により封止して構成されている。コンデンサ41は、目的とする容量値によりその搭載個数は限定されるものではないが、基板11の第2の表面11Bにおいて、図4中、周辺領域の左下側に4個配設されている。このコンデンサ41はコンデンサ42の配置位置に対向する位置に配置されている。
【0043】
ダイオード5は例えばダイオード本体具体的にはダイオードチップ(半導体素子)を樹脂封止体により封止して構成されている。ダイオード5は、目的とする整流特性によりその搭載個数は限定されるものではないが、基板11の第1の表面11Aにおいて、図3中、周辺領域の左上側に1個配設されている。
【0044】
制御部6は、トランジスタ、論理回路、抵抗、容量等、少なくともトランジスタ部2の制御を行う回路を有する半導体チップを樹脂封止体により封止した半導体装置(制御用IC)61と、フォトカプラ62及び63とを備え、構築されている。制御部6の半導体装置61は、基板11の第1の表面11Aにおいて、図3中、周辺領域の右上側に配設されている。フォトカプラ62及び63は、基板11の第1の表面11Aにおいて、図3中、左上側に配設されている。
【0045】
温度検出部8は、基板11の第1の表面11Aにおいて、図3中、周辺領域の左上側であって、ダイオード5とフォトカプラ62及び63との間に配設されている。この温度検出部8はダイオード5を配設した領域から離間した位置に配設され、温度検出部8自体の熱による破損や誤動作を防止するようになっている。
【0046】
[磁性体(第1のトランス及び第2のトランス)の構成]
実施例1に係る電子回路装置1において、第1のトランス3並びに第2のトランス7は磁性体詳細には強磁性体により構築されている。第1のトランス3は、図1、図3乃至図5に示すように、基板11の第1の表面11Aの中央領域において、開口15内に挿入されて配設されている。開口15は、実施例1において、基板11の第1の表面11Aからそれに対向する第2の表面11Bに貫通する貫通穴として構成されている。
【0047】
図7に示すように、実施例1において第1のトランス3にはシートトランス構造が採用されている。詳細な断面構造の説明は省略するが、第1のトランス3は、一次側巻線31及び二次側巻線32を有し、中央部分に貫通穴を有するトランス基板12と、トランス基板12の表面12A(第1のトランス3の第3の表面3A側)、それに対向する裏面12B(第4の表面3B側)及び側面12Cの一部に沿って配設され中央部分の貫通穴125にもトロイダルコアの磁心として配設されたコア33とを備えている。
【0048】
トランス基板12は、例えばガラスエポキシ樹脂により構成された絶縁基材121と、一次側巻線31及び二次側巻線32を構築する例えば導電体122とを備えている。この導電体122には例えばCu、Cu合金、Au等の導電性に優れた材料が使用されている。
【0049】
コア33は、例えば金属酸化物をセラミックとして燒結したフェライト磁性材により形成された強磁性体である。金属酸化物には、例えば酸化鉄(Fe2O2)を主成分とし、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)等の金属化合物を混合したものを実用的に使用することができる。また、コア33は他にアモルファス磁性材料により形成してもよい。コア33は、磁心331Cを一体に構成しかつ突出させ、この磁心331Cを中心としてトランス基板12の両方の側面12Cに沿って突出し、トランス基板12の裏面12B側に配設された第1のコア(下部コア材)331と、第1のコア331の磁心331C及び突出した両側に磁気的に接続され、トランス基板12の表面12A側に配設された第2のコア(上部コア材)332とを備えている。第1のコア331の断面形状はE型形状であり、第2のコア332の断面形状が板材であってI型形状であることから、コア33はE−I型コア形状を有する。図7中、第1のコア331の底面は磁性体の第4の表面3Bになり、第2のコア332の上面は磁性体の第3の表面3Aになる。なお、コア33はE−E型コア形状であってもよい。
【0050】
第2のトランス7は、第1のトランス3に対して誘導起電力並びに全体のサイズを小さく設定しているが、第1のトランス3の構造と同様にシートトランス構造により構成されている。また、第1のトランス3の基板11への実装方法と同様に、第2のトランス7は、基板11に配設された開口16に挿入された状態において実装されている。
【0051】
第2のトランス7のコア73の表面7Aは第1のトランス3のコア33の第3の表面3Aに対応する(双方の表面は同等の方向に存在する表面である)。また、コア73の表面7Aに対向する裏面7Bはコア33の第4の表面3Bに対応する(双方の表面は同等の方向に存在する表面である)。
【0052】
[硬化型応力緩和材の構造及び特性]
図3に示すように、実施例1に係る電子回路装置1においては、第1のトランス3のコア33の側面周囲、つまりトランス基板12の2つの長辺及び2つの短辺に沿う4つの側面12Cに対応しそれぞれに平行な4つの側面にのみその全域に少なくとも硬化型応力緩和材35が配設されている。ここでは、コア33の第3の表面(上面)3A並びに第4の表面(下面)3Bには硬化型応力緩和材35は配設されていない。硬化型応力緩和材35の膜厚はコア33の側面から離れるに従って薄く設定されている。つまり、コア33の側面における硬化型応力緩和材35の膜厚は、コア33の第3の表面3Aと第4の表面3Bとの間の厚さに相当し、最も厚い。コア33の側面から離れるに従って硬化型応力緩和材35の膜厚は徐々に薄くなり、コア33の側面から最も離れた位置(終端)の硬化型応力緩和材35の膜厚は実質的にゼロである。第1のトランス3のコア33の側面に配設された硬化型応力緩和材35は、第1のトランス3とそれを実装する基板11との接続領域まで引き延ばされ、この接続領域における応力の減少に寄与する。
【0053】
実施例1において、硬化型応力緩和材35には、例えば白色半流動性を有する加熱硬化型接着性液状シリコーンゴム(熱硬化型シリコーン樹脂)が使用されている。この加熱硬化型接着性液状シリコーンゴムは、硬化前、白色半流動性を有し、例えば23℃の温度において約3.5Pa・s−4.5Pa・sの粘度を有する。加熱硬化型接着性液状シリコーンゴムは、コーティング技術、ポッティング技術等を用いて塗布した後、例えば150℃、1時間の熱処理を行い硬化される。硬化後において、加熱硬化型接着性液状シリコーンゴムは、白色ゴム状に変化し、例えば20−22の硬さ(タイプA)を有し、例えば2.0×10-4/℃−2.2×10-4/Kの線膨張係数を有する。
【0054】
なお、硬化型応力緩和材35は熱硬化型シリコーン樹脂に限定されない。第1のトランス3のコア33に樹脂封止体17の収縮により発生する応力を減少する材料であれば、紫外線硬化型シリコーン樹脂(ゴム)若しくは室温硬化型シリコーン樹脂(ゴム)、又は熱硬化型、紫外線硬化型、室温硬化型のいずれかのエポキシ樹脂を、硬化型応力緩和材35として使用することができる。硬化型でない例えばゲル状の樹脂はトランスファモールド法を用いた樹脂封止体17の製造工程において流出してしまい、コア33の側面にゲル状の樹脂を確実に付着させることは難しい。
【0055】
[リードの構造]
図1、図3乃至図6に示すように、基板11の長辺に沿った一側面(図3中及び図4中下側側面、図6中左側側面)にはリード(外部端子)180−189が配列され、一側面に対向する他の一側面(図3中及び図4中上側側面、図6中右側側面)にはリード190−193が配列されている。これらのリード180−193において、樹脂封止体17内の部分はインナー部であり、樹脂封止体17外に突出した部分はアウター部である。
【0056】
リード180は直流電圧端子DCINとして使用される。リード181は切換信号端子ON/OFFとして使用される。リード182は入力端子Vin+として使用される。リード183は入力端子Vin-として使用される。リード184は出力端子Vout-として使用される。リード185は負極のリモートセンシング端子Vs-として使用される。リード186は空き端子NCである。リード187は出力電圧調整端子TRMとして使用される。リード188は正極のリモートセンシング端子Vs+として使用される。リード189は出力端子Vout-として使用される。空き端子NCとして使用されるリード186は実施例1において放熱経路としての機能を有する。
【0057】
また、リード190−193は空き端子NCである。この空き端子NCとして使用されるリード190−193は同様に放熱経路としての機能を有する。
【0058】
リード180−193は電気伝導性に優れた例えばCu又はCu合金により構成されている。この導電性材料は、熱抵抗も小さく、熱伝導性にも優れている。リード180−193の厚さは例えば0.3mm−0.5mmに設定されている。
【0059】
リード180−193は符号は付けないが基板11に配設された端子に接着層を介して電気的かつ機械的に接続されている。この接着層には、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れた例えば半田、ペースト等を使用することができる。半田としては例えばSn−Ag−Cu系半田を実用的に使用することができる。また、ペーストには例えば導電性ペーストとして用いられるAgペーストを実用的に使用することができる。
【0060】
[第1の応力緩衝体の構造]
図1、図4及び図5に示すように、第1の応力緩衝体91は、その第5の表面91A(図1中及び図5中、上側表面)に接着層4を介在して第1のトランス3のコア33の第1のコア331の第4の表面3B(図5中、下側底面)を接着し、第1のトランス3に取り付けられている。この第1の応力緩衝体91は、例えば製造過程においてトランスファモールド法を用いて電子回路装置1の樹脂封止体17を成形した直後の温度収縮に伴い第1のトランス3のコア(磁性体)33に与える応力を、第1の応力緩衝体91の剛性によって減少する機能を有する。すなわち、第1の応力緩衝体91は、樹脂封止体17の熱収縮に伴う圧縮応力に反発する機能を有し、実効的にコア33に加わる応力を減少する。また、第1の応力緩衝体91は、電子回路装置1の製品として完成した後の実稼働における温度上昇並びに温度下降の温度サイクルによって生じる樹脂封止体17の熱膨張並びに熱収縮に伴うコア33に与える応力を減少する機能を有する。
【0061】
このようなコア33に与える応力を極力減少し、かつ電子回路装置1の薄型化並びに小型化を図るために、第1の応力緩衝体91は、第5の表面91Aのサイズをそれに対向するコア33の第4の表面3Bのサイズに比べて出来る限り大きく設定している。第1の応力緩衝体91のサイズが大きい方が樹脂封止体17の割合に対する第1の応力緩衝体91の割合が多くなるので、第1の応力緩衝体91によってコア33に加わる応力を確実に減少することができる。また、換言すれば、樹脂封止体17の割合が少なくなるので、応力の発生要因そのものを減少することができる。
【0062】
実施例1に係る電子回路装置1においては、第1の応力緩衝体91を配設することによって、樹脂封止体17のコア33に与える応力を減少することができるとともに、特に薄型化される樹脂封止体17の機械的強度を向上することができる。樹脂封止体17の機械的強度を向上することによって、樹脂封止体17の反りや欠けを防止することができる。特に、樹脂封止体17の反りを防止することによって、電子回路装置1とそれを実装する図示しない実装基板との密着性を高めることができ、電子回路装置1の内部の電子部品の動作によって発生する熱を実装基板側に効率良く伝達することができるので、電子回路装置1の放熱効率をより一層向上することができる。
【0063】
また、第1の応力緩衝体91は、コア33に加わる応力を十分に減少するために、基板11の第1の表面2A又は第2の表面2Bのサイズと同一平面サイズに設定されている。コア33に加わる応力を十分に減少するためには、第1の応力緩衝体91の平面サイズを大きく設定する方が好ましい。実際には、図6に示す樹脂封止体17の取付部17Hとの緩衝を避ける逃げ領域91Hが第1の応力緩衝体91に配設され、取付部17Hと逃げ領域91Hとの間の離間寸法(安全マージン)には例えば6mm−10mmが必要であるために、基板11の第1の表面11A又は第2の表面11Bのサイズに対して、第1の応力緩衝体91の平面サイズを80%以上に設定している。
【0064】
更に、第1の応力緩衝体91には熱伝導性に優れた材料が使用されており、そして第1の応力緩衝体91のサイズが大きく設定されているので、第1の応力緩衝体91は第1のトランス3、第2のトランス7、その他の電子部品等(特に発熱電子部品)の動作によって発生する熱を樹脂封止体17の外部に放出する放熱板としての機能を有する。この第1のトランス3等の動作によって発生する熱は第1の応力緩衝体91を通して樹脂封止体17の外気(外部雰囲気)又は前述の実装基板に伝達される。
【0065】
実施例1において、第1の応力緩衝体91は、特に図4及び図5に示すように、基板11の平面形状と同様の長方形の平面形状を有する。樹脂封止体17の短辺中央部分には電子回路装置1を前述の実装基板に取り付けるための取付部(取付穴)17Hが配設されており、この取付部17Hに対応する第1の応力緩衝体91の短辺中央には取付部17Hとの緩衝を避ける逃げ領域91Hが配設されている。逃げ領域91Hはここでは半円形状の切欠部である。第1の応力緩衝体91は、例えば50mm−62mmの長辺と例えば35mm−44mmの短辺と、0.5mm−1.5mmの厚さとに設定された金属製板材により構成されている。金属製板材には、樹脂封止体17に比べて高い適度な剛性を有し、樹脂封止体17に比べて遙かに熱伝導性に優れ、更にコア33の線膨張係数に近い、例えばCu(線膨張係数:1.7×10-6)板又はCu合金板を使用することが好ましい。このCu板又はCu合金板は、そのまま(無垢状態)でも使用可能であるが、表面に例えばNi膜等のめっき膜を形成してもよい。
【0066】
[接着層の構成]
図1及び図5に示すように、接着層4は、実施例1において、第1のトランス3と第1の応力緩衝体91とを機械的に装着(接着)する機能に加えて、双方の間を電気的に絶縁する機能を備えている。この接着層4には、実施例1において、例えばガラス繊維クロスに熱硬化型接着剤を含浸させたプリプレグが使用される。このガラス繊維クロスには、例えばSiO2を主成分とし、Al2O3、CaO、MgO、R2O、B2O3等の少なくともいずれかが添加された3μm−10μm径を有する単糸を数十本から数百本程度束ね、これを平織りしたものである。ガラス繊維クロスの厚さは例えば0.2mm−0.4mmに設定されている。熱硬化型接着剤には例えば熱硬化型のガラスエポキシ樹脂接着剤が使用されている。
【0067】
接着層4は、実施例1において、第1のトランス3のコア33の第4の表面3Bの全域に配設され、その平面サイズに比べて若干大きい平面サイズにより配設されている。接着層4においては、上記の通り極めて薄い厚さに設定して第1のトランス3に第1の応力緩衝体91を機械的に装着することができるので、第1のトランス3の動作で発生する熱を効率良く第1の応力緩衝体91に伝達することができ、更に第1のトランス3と第1の応力緩衝体91との間を電気的に絶縁することができる。また、単に樹脂系接着剤を用いて第1のトランス3と第1の応力緩衝体91とを接着する場合に比べて、接着層4の膜厚を均一化することができるので、この接着層4は特に電気的な絶縁特性において優れている。
【0068】
なお、実施例1においては、ガラス繊維クロスに熱硬化型接着剤を含浸させたプリプレグが接着層4として使用されているが、接着層4には例えば熱硬化性接着剤を両面に塗布したガラス繊維クロスを使用することができる。
【0069】
[樹脂封止体の構造]
図1、図3乃至図6に示すように、実施例1に係る電子回路装置1は、前述のように複数の電子部品を実装した基板11を樹脂封止体17により気密封止している。樹脂封止体17はトランスファモールド法により成形されている。実施例1に係る電子回路装置1は、DC−DCコンバータを1つの部品としてフルモールド化したものであり、小型化並びに薄型化に適し、信頼性が高く、使い易さを高めている。
【0070】
樹脂封止体17は、実施例1において、基板11の絶縁基材、トランス基板12の絶縁基材のそれぞれと同一材料であるガラスエポキシ樹脂(線膨張係数:1.3×10-6)により構成されている。必ずしもこの数値に限定されるものではないが、実施例1において、樹脂封止体17の長辺の長さは例えば68mm−72mmに設定され、短辺の長さは例えば48mm−52mmに設定されている。
【0071】
前述の第1の応力緩衝体91の第1のトランス3側の第5の表面91A及び側面は樹脂封止体17により覆われ、第1の応力緩衝体91と樹脂封止体17との接合性が高められている。第1の応力緩衝体91の第5の表面91Aに対向する第6の表面91Bは樹脂封止体17から露出されており、電子回路装置1の放熱性が高められている。樹脂封止体17の厚さは、かなり薄く、例えば6.5mm−6.9mmに設定されている。
【0072】
[電子回路装置の電気的特性]
前述の実施例1に係る電子回路装置1においては、第1の応力緩衝体91を備えることによって、図8に示す電気的特性を得ることができる。図8において、横軸は電子回路装置1の入力端子Vin+に供給される入力電圧(V)、縦軸は直流変換効率(%)である。データAは実施例1に係る第1の応力緩衝体91を備えた電子回路装置1の入力電圧に対する直流変換効率である。データBは実施例1に係る第1の応力緩衝体91を備えていない電子回路装置(比較試料)の入力電圧に対する直流変換効率である。
【0073】
データBに示すように、第1の応力緩衝体91を備えていない電子回路装置においては、入力電圧が85Vに対して直流変換効率は90.2%、入力電圧が100Vに対して直流変換効率は91.9%、入力電圧が115Vに対して直流変換効率は92.9%という電気的特性であった。
【0074】
これに対して、データAに示すように、実施例1に係る第1の応力緩衝体91を備えた電子回路装置1においては、入力電圧が85Vに対して直流変換効率は90.6%、入力電圧が100Vに対して直流変換効率は92.2%、入力電圧が115Vに対して直流変換効率は93.2%という電気的特性が得られた。この実施例1に係る電子回路装置1においては、各入力電圧に対していずれも直流変換効率が上記比較試料に比べて上回る良好な結果である。つまり、電子回路装置1においては、樹脂封止体17の熱収縮に伴う第1のトランス3のコア(磁性体)33(及び第2のトランス7のコア(磁性体)73)に及ぼす応力が第1の応力緩衝体91によって軽減され、この結果、磁性体の透磁率の低下が抑制され、インダクタンスの低下が抑制されている。
【0075】
[電子回路装置の特徴]
このように構成される実施例1に係る電子回路装置1においては、樹脂封止体17に第1の応力緩衝体91を備えたので、樹脂封止体17の機械的強度を高め装置全体の薄型化並びに小型化を実現しつつ、樹脂封止体17の第1のトランス3及び第2のトランス7の磁性体に加わる応力を第1の応力緩衝体91の剛性を利用して緩和することができる。更に、電子回路装置1においては、第1のトランス3及び第2のトランス7の磁性体からの放熱効率を優れた熱伝導性を有する第1の応力緩衝体91を利用して高めることができる。結果的に、第1のトランス3及び第2のトランス7の磁性体の透磁率を向上して、電子回路装置1の電気的特性を向上することができる。
【0076】
(実施例2)
本発明の実施例2は、例えばDC−DCコンバータの前段に配設され、DC−DCコンバータとともに電源モジュールを構築する高周波対策用力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路としての電子回路装置に本発明を適用した例を説明するものである。
【0077】
[電子回路装置の基本デバイス構造(基本断面構造)]
実施例2に係る電子回路装置1の回路システムブロック構成は省略する。電子回路装置1の基本的なデバイス断面構造は図9に示す通りである。すなわち、電子回路装置1は、第1の表面11A及びそれに対向する第2の表面11Bを有する基板11と、基板11に第1の表面11Aから第2の表面11Bに渡って配設され、第1の表面11A側に第3の表面301A及び302Aを有し、第2の表面11B側に第4の表面301B及び302Bを有する磁性体と、第5の表面91A及びそれに対向する第6の表面91Bを有し、磁性体の第4の表面301B及び302B上に第5の表面91Aを向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体91と、第7の表面92A及びそれに対向する第8の表面92Bを有し、磁性体の第3の表面301A及び302A上に第8の表面92Bを向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第2の応力緩衝体92と、基板11、磁性体、第1の応力緩衝体91の少なくとも第5の表面91A、第2の応力緩衝体92の少なくとも第7の表面92A及び第8の表面92Bを被覆する樹脂封止体17とを備える。つまり、実施例2に係る電子回路装置1は、磁性体を中心として、図9中、磁性体下に第1の応力緩衝体91を配設し、磁性体上に第1の応力緩衝体91に対向し離間された第2の応力緩衝体92を配設し、上下の第1の応力緩衝体92と第2の応力緩衝体91との間に磁性体を挟み混んだ断面構造を有する。
【0078】
実施例2において、電子回路装置1の磁性体は、第1のチョークコイル(パワーインダクタ)301及び第2のチョークコイル(パワーインダクタ)302を構築する強磁性体である。第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302は、所定周波数を上回る高周波電流を阻止する機能を有する。実施例2において、第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302は、その詳細な構造の説明を省略するが、基本的には実施例1に係る電子回路装置1の第1のトランス3及び第2のトランス7と同様に構成され、トランス基板12に相当し絶縁基板にコイルを構築する導電体が配設されたチョークコイル基板(符号は付けない。)を有し、コイルの中心に磁心を持つコア33を有する。コア33には前述の実施例1に係る電子回路装置1の第1のトランス3のコア33と同様のものが使用されている。
【0079】
なお、実施例2において、電子回路装置1には2個の第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302が搭載されているが、電子回路装置1は、第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302の機能を併せ持つ1個のチョークコイル(1個の電子部品)を搭載してもよい。また、電子回路装置1は、2個の第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302に加えて、別途、磁性体を有する電子部品を搭載してもよい。
【0080】
実施例2において、第1の応力緩衝体91は、前述の実施例1に係る電子回路装置1の第1の応力緩衝体91と同様に、樹脂封止体17の熱収縮によって磁性体に及ぼす応力を減少することができる機能を有し、更に磁性体(第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302)から発生する熱を樹脂封止体17の外部に放出する機能を有する。また、第1の応力緩衝体91の材質、平面サイズ、厚さ等は前述の実施例1に係る電子回路装置1の第1の応力緩衝体91と同様に構成されている。
【0081】
第2の応力緩衝体92は、第1の応力緩衝体91と同様に、樹脂封止体17の熱収縮によって磁性体に及ぼす応力を減少することができる機能を有し、磁性体(第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302)から発生する熱を樹脂封止体17の外部に放出する機能を有する。更に、第2の応力緩衝体92は、固定電源例えば接地電位(グランド電位)に接続されるようになっており、シールド効果を有し、ノイズの発生を防止する機能を有する。この第2の応力緩衝体92の詳細な構造は後述する。
【0082】
[基板の構成]
図9乃至図12に示すように、電子回路装置1の基板11は、その構造を明確に図示していないが、前述の実施例1に係る電子回路装置1の基板11と同様に、絶縁基材とその絶縁基材の表面(第1の表面11A側)、裏面(第2の表面11B側)の少なくともいずれか一方に配設された導電体とを備えている。
【0083】
[電子部品の構成]
図10及び図12に示すように、基板11の第1の表面11A上には、第1のチョークコイル(磁性体)301、第2のチョークコイル(磁性体)302、電界効果トランジスタ(FET)201−204、ダイオード501、フェライトビーズ801、チップトランジスタ205、セラミックチップコンデンサ401、アキシャルダイオード502、ショットキーバリアダイオード(SBD)503及び504、チップダイオード505及び506、チップ抵抗411及び412、抵抗413等の電子部品が実装されている。
【0084】
ここで、電界効果トランジスタ201−204は電流の増幅機能を有する。また、フェライトビーズ801はノイズ除去機能を有する。ショットキーバリアダイオード503及び504は出力電圧の効率を高める機能や電源の整流機能を有する。セラミックチップコンデンサ401は信号波形を滑らかにする機能を有する。
【0085】
第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302は、前述のように、実施例1に係る電子回路装置1の第1のトランス3(第2のトランス7)と同様の構造により構成されている。第1のチョークコイル301は、基板11の第1の表面11Aにおいて、図10中、上側の中央右側に配設され、第2のチョークコイル302は上側の中央左側に配設されている。
【0086】
電界効果トランジスタ201−204は、詳細な構造の説明を省略するが、半導体チップを樹脂封止体により封止した構造により構成されている。電界効果トランジスタ201−204は、第1の表面11Aにおいて、図10中、下側の中央領域に配設されている。
【0087】
ダイオード501は同様に半導体チップを樹脂封止体により封止した構造により構成されている。ダイオード501は、第1の表面11Aにおいて、図10中、下側の中央領域、詳細には左右2個づつ配設された電界効果トランジスタ201及び202と電界効果トランジスタ203及び204との間に配設されている。
【0088】
フェライトビーズ801は、第1の表面11Aにおいて、図10中、中央領域、詳細には第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302と電界効果トランジスタ201−204との間に配設されている。
【0089】
チップトランジスタ205は、第1の表面11Aにおいて、図10中、周辺領域の右下側に配設されている。セラミックチップコンデンサ401は、第1の表面11Aにおいて、図10中、周辺領域の下側中央に配設されている。アキシャルダイオード502は、第1の表面11Aにおいて、図10中、周辺領域の右上側に配設されている。ショットキーバリアダイオード503及び504、チップダイオード505及び506は、いずれも、第1の表面11Aにおいて、図10中、周辺領域の右下側に配設されている。チップ抵抗411は、第1の表面11Aにおいて、図10中、周辺領域の右側中央に配設されている。チップ抵抗412、抵抗413は、いずれも、第1の表面11Aにおいて、図10中、周辺領域の右下側に配設されている。
【0090】
一方、図11及び図12に示すように、基板11の第2の表面11B上には、集積回路(IC)206、チップトランジスタ207、チップ抵抗414及び415、セラミックチップコンデンサ403及び404、フェライトビーズ802等の電子部品が実装されている。
【0091】
集積回路206は、詳細な構造の説明を省略するが、半導体チップを樹脂封止体により封止した構造により構成されている。集積回路206は、第2の表面11Bにおいて、図11中、周辺領域の左下側に配設されている。チップトランジスタ207は、第2の表面11Bにおいて、図11中、周辺領域の左下側に配設されている。
【0092】
チップ抵抗414は、第2の表面11Bにおいて、図11中、下側の中央領域に配設されている。チップ抵抗415は、第2の表面11Bにおいて、図11中、周辺領域の左下側に配設されている。
【0093】
セラミックチップコンデンサ403及び404は、図11中、周辺領域の左下側に配設されている。フェライトビーズ8012は、図11中、中央領域に配設されている。
【0094】
[リードの構造]
図10に示すように、基板11の長辺に沿った一側面(図10中、下側側面)にはリード(外部端子)1800−1808が配列され、一側面に対向する他の一側面(図10中、上側側面)にはリード1900−1903が配列されている。これらのリード1800−1808及び1900−1903において、樹脂封止体17内の部分はインナー部であり、樹脂封止体17外に突出した部分はアウター部である。
【0095】
リード1800は入力端子Vin+として使用される。リード1801は入力端子Vin-として使用される。リード1802は第1のドレイン電圧端子として使用される。リード1803は出力端子Vout-として使用される。リード1804は駆動電圧端子として使用される。リード1805は出力端子Vout-として使用される。リード1806は空き端子NCである。このリード1806は放熱経路として使用される。リード1807は第2のドレイン電圧端子として使用される。リード1808は直流電圧端子DCVinとして使用される。このリード1808には例えば12Vの直流電圧が供給される。
【0096】
また、リード1900−1903は空き端子NCである。この空き端子NCとして使用されるリード1900−1903は同様に放熱経路としての機能を有する。
【0097】
これらのリード1800−1808及び1900−1903は、前述の実施例1に係る電子回路装置1のリード180−194と同様の材料を用いて製作され、図示しない接着層を介して電気的かつ機械的に基板11に接続されている。この接着層には実施例1と同様に例えば半田、ペースト等を使用することができる。
【0098】
[第1の応力緩衝体の構造]
図9、図10乃至図12に示す第1の応力緩衝体91は、前述の実施例1に係る電子回路装置1の第1の応力緩衝体91と同様に構成されている。特に、第1の応力緩衝体91の平面サイズは、第1のチョークコイル301の第1の応力緩衝体91に対向するコア33の第4の表面301Bの平面サイズ及び第2のチョークコイル302のコア33の第4の表面301Bの平面サイズの合計のサイズに比べて大きく、基板11の第2の表面11Bの平面サイズと同等か、それに比べ小さく設定されている。
【0099】
[第2の応力緩衝体の構造]
図9、図10及び図12に示すように、第2の応力緩衝体92は、その第8の表面92B(図9中及び図12中、下側表面)に接着層400を介在して第1のチョークコイル301のコア33の第3の表面301A(図9中、上側上面)及び第2のチョークコイル302のコア33の第3の表面301A(図9中、上側上面)を接着し、第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302に取り付けられている。この第2の応力緩衝体92は、第1の応力緩衝体91と同様に、例えば製造過程においてトランスファモールド法を用いて電子回路装置1の樹脂封止体17を成形した直後の温度収縮に伴い第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302のコア(磁性体)33に与える応力を、第2の応力緩衝体92の剛性によって減少する機能を有する。すなわち、第2の応力緩衝体92は、樹脂封止体17の熱収縮に伴う圧縮応力に反発する機能を有し、実効的にコア33に加わる応力を減少する。また、第2の応力緩衝体92は、電子回路装置1の製品として完成した後の実稼働における温度サイクルによって生じる樹脂封止体17の熱膨張並びに熱収縮に伴うコア33に与える応力を減少する機能を有する。
【0100】
このようなコア33に与える応力を極力減少し、かつ電子回路装置1の薄型化並びに小型化を図るために、第2の応力緩衝体92は、第8の表面92Bのサイズをそれに対向するコア33の第3の表面301Aのサイズに比べて出来る限り大きく設定している。第2の応力緩衝体92のサイズが大きい方が樹脂封止体17の割合に対する第2の応力緩衝体91Bの割合が多くなるので、第2の応力緩衝体92によってコア33に加わる応力を確実に減少することができる。また、換言すれば、樹脂封止体17の割合が少なくなるので、応力の発生要因そのものを減少することができる。
【0101】
実施例2に係る電子回路装置1においては、第1の応力緩衝体91と併せて第2の応力緩衝体92を配設することによって、樹脂封止体17のコア33に与える応力をより一層減少することができるとともに、特に薄型化される樹脂封止体17の機械的強度をより一層向上することができる。機械的強度を高めれば、樹脂封止体17の反りや欠けを防止することができる。
【0102】
また、第2の応力緩衝体92においては、図10に示すように、特に平面形状を限定するものではないが、第1のチョークコイル301と第2のチョークコイル302との間の領域に長方形の平面形状を有する第1の開口部921が配設されている。更に、第2の応力緩衝体92においては、特に平面形状を限定するものではないが、第1のチョークコイル301と電界効果トランジスタ201との間及び第2のチョークコイル302と電界効果トランジスタ203との間に、円形の平面形状を有する第2の開口部922及び923が配設されている。第1の開口部921、第2の開口部922及び923は、いずれも、第2の応力緩衝体92の第7の表面92Aから第8の表面92Bに抜ける貫通穴により構成されている。
【0103】
この第1の開口部921、第2の開口部922及び923は、ノイズの影響を配慮しない電子部品上や電子部品間上に対応する領域において第2の応力緩衝体92の一部を取り除き、基板11の表面11Aと第2の応力緩衝体92の第8の表面92Bとの間に、樹脂封止体17の製作過程における第2の応力緩衝体92の第7の表面92A側からの樹脂の流入を促進する機能を有する。すなわち、基板11の第1の表面11Aとその大半の領域を覆う第2の応力緩衝体92との間の樹脂の流入が促進されるので、第1の表面11A上に搭載された電子部品を樹脂封止体17を用いて気密封止することができ、又製造過程における樹脂封止体17中の気泡の発生を防止することができる。また、基板11と第2の応力緩衝体92との樹脂封止体17を用いた機械的な接着力を向上することができる。
【0104】
更に、第2の応力緩衝体92においては、図10中、下側中央部であって、基板11の長辺に沿った一側面(リード1800−1808が配列された側)に対応する領域に切欠部924が配設されている。この切欠部924は、特に平面形状を限定するものではないが、凹型形の平面形状を有し、ノイズの影響を配慮しない電子部品上に対応する領域、詳細には第2の応力緩衝体92のセラミックチップコンデンサ401に対応する領域を切り欠いて製作されている。
【0105】
また、第2の応力緩衝体92においては、図10中、下側左側に切欠部925、下側右側に切欠部926が配設されている。この切欠部925及び926は、同様に平面形状を限定するものではないが、L型形の平面形状を有し、ノイズの影響を配慮しない基板11上や電子部品上に対応する領域において第2の応力緩衝体92を切り欠いて製作されている。実施例2においては、切欠部925は電子部品を搭載していない領域において第2の応力緩衝体92に配設され、切欠部926はショットキーバリアダイオード503、504、抵抗413等の電子部品を搭載した領域において第2の応力緩衝体92を切り欠いて製作されている。
【0106】
これらの切欠部924、925及び926は、前述の第1の開口部921、第2の開口部922及び923と同様に、樹脂封止体17の樹脂の流入を促進する機能を有する。従って、第2の応力緩衝体92の実効的な平面サイズは、第1の開口部921、第2の開口部922及び923並びに切欠部924、925及び926を備えているので、凸型形の平面形状を有し、基本的には第1の応力緩衝体91の平面サイズに比べて小さい。
【0107】
第2の応力緩衝体92は、図9及び図12に示すように、樹脂封止体17の薄型化を図るために、第1の応力緩衝体91の厚さに比べて薄い厚さに設定されている。第2の応力緩衝体92は基本的には第1の応力緩衝体91と同一材料の金属製板材を用いて製作され、第2の応力緩衝体92の厚さは第1の応力緩衝体91の厚さに比べて半分以下具体的には0.2mm−0.7mmに設定されている。
【0108】
更に、第2の応力緩衝体92は、基板11の第1の表面11A上のノイズの影響を配慮する電子部品上に重複して配設され、図10及び図12に示すように、第2の応力緩衝体92の一部を一定の幅寸法を持って突出させた基板接続リード92Cを通して基板11の固定電位が供給される端子に電気的に接続されている。すなわち、第2の応力緩衝体92は電子回路装置1の実稼働中において固定電位に維持され、ノイズに対してシールド効果を有する。実施例2において、基板接続リード92Cは、図10に示すように、第2の応力緩衝体92の左側短辺に沿った上側及び切欠部925に沿った下側、右側短辺に沿った上側及び切欠部926に沿った下側の合計4本が配設されている。この基板接続リード92Cは、ここでは第2の応力緩衝体92と一体に構成され、第2の応力緩衝体92の第8の表面92Bに対して基板11側に断面L型形状に折り曲げられて構成されている。固定電位は例えば回路の接地電位0Vである。
【0109】
また、基板接続リード92Cは、基板11の第1の表面11Aと第2の応力緩衝体92の第8の表面92Bとの間に電子部品等を実装するための一定の離間寸法を維持するスペーサとしても使用されている。
【0110】
第2の応力緩衝体92と第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302との間の接着層400には、前述の実施例1に係る電子回路装置1の第1の応力緩衝体91と第1のトランス3との間の接着層4と同様のものが使用される。つまり、接着層400には例えばガラス繊維クロスに熱硬化型接着剤を含浸させたプリプレグが使用される。
【0111】
[樹脂封止体の構造]
図9乃至図12に示すように、実施例2に係る電子回路装置1は、前述の実施例1に係る電子回路装置1と同様に、複数の電子部品を実装した基板11を樹脂封止体17により気密封止している。樹脂封止体17は実施例1に係る樹脂封止体17と同様に、トランスファモールド法により成形され、例えばガラスエポキシ樹脂により構成されている。
【0112】
実施例2に係る樹脂封止体17は、実施例1と同様に第1の応力緩衝体91の第5の表面91A及び側面を被覆し、更に第2の応力緩衝体92の第7の表面92A、第8の表面92B及びその側面を含む全面を被覆する。つまり、第2の応力緩衝体92は樹脂封止体17の内部に完全に埋設される。
【0113】
[電子回路装置の特徴]
このように構成される実施例2に係る電子回路装置1においては、前述の実施例1に係る電子回路装置1により得られる効果に加えて、樹脂封止体17に第2の応力緩衝体92を備えたので、樹脂封止体17の機械的強度を更に高め装置全体の薄型化並びに小型化を実現しつつ、樹脂封止体17の第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302の磁性体に加わる応力を第2の応力緩衝体92の剛性を利用して緩和することができる。更に、電子回路装置1においては、第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302の磁性体からの放熱効率を優れた熱伝導性を有する第2の応力緩衝体92を利用して高め、結果的に第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302の磁性体の透磁率を向上して電気的特性を向上することができる。
【0114】
更に、実施例2に係る電子回路装置1においては、第2の応力緩衝体92に第1の開口部921、第2の開口部922及び923並びに切欠部924−926を備え、基板11と第2の応力緩衝体92との間に樹脂封止体17の樹脂の流入を促進することができる。
【0115】
更に、実施例2に係る電子回路装置1においては、ノイズの影響を配慮した電子部品上に第2の応力緩衝体92を備え、この第2の応力緩衝体92を固定電位に維持するようにしたので、耐ノイズ性を向上することができ、電気的特性を向上することができる。
【0116】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明を実施例1及び実施例2によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものでない。本発明は様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術に適用することができる。
【0117】
例えば、前述の実施例1に係る電子回路装置1は第1のトランス3等を有するDC−DCコンバータに本発明を適用した例であり、実施例2に係る電子回路装置1は第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302を有するPFC回路に本発明を適用した例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、磁性体を用いて構築される電子部品を備え、この電子部品を樹脂封止体によって封止した電子回路装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、薄型化並びに小型化を実現しつつ、樹脂封止体の磁性体に加わる応力を緩和することができるとともに、磁性体からの放熱効率を高め、磁性体の透磁率を向上することができる電子回路装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1…電子回路装置
11…基板
12…トランス基板
17…樹脂封止体
180−193、1800−1808、1900−1903…リード
2…トランジスタ部
21…第1のIGFET
22…第2のIGFET
201−204…電界効果トランジスタ
205、207…チップトランジスタ
206…集積回路
3…第1のトランス
33…コア
301…第1のチョークコイル
302…第2のチョークコイル
4、400…接着層
41−43…コンデンサ
401−404、508…セラミックチップコンデンサ
411、412、414、415…チップ抵抗
413…抵抗
5、501…ダイオード
502…アキシャルダイオード
503、504…ショットキーバリアダイオード
6…制御部
7…第2のトランス
8…温度検出部
801、802…フェライトビーズ
91…第1の応力緩衝体
92…第2の応力緩衝体
921…第1の開口部
922、923…第2の開口部
924−926…切欠部
92C…基板接続リード
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路装置に関し、特に磁性体を樹脂封止体により封止した電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば汎用テレビジョンの電源ユニットには、直流−直流(DC−DC)コンバータが組み込まれている。DC−DCコンバータは、例えば一般家庭用100Vの交流電圧から変換された直流電圧を、更に制御回路ユニット、駆動回路ユニット等に使用される直流電圧に変換する。DC−DCコンバータは、最終的に12Vや24Vの直流電圧を生成する。
【0003】
薄型化並びに大画面化の傾向にある液晶テレビジョン、プラズマテレビジョン等の汎用テレビジョンの開発には電源ユニットの薄型化並びに小型化が重要な課題になっている。下記特許文献1乃至特許文献3には、電源ユニットの薄型化並びに小型化に最適な発明が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された発明は、電源回路におけるノイズ抑制、整流、平滑等に利用されるインダクタを回路基板の横に配置し、回路基板及びインダクタをモールドパッケージにより封止した半導体装置である。この半導体装置においては、回路基板、この回路基板に搭載された回路素子及びインダクタを1つのパッケージ内に組み込むことができるので、薄型化並びに小型化を実現することができる。
【0005】
また、特許文献2に開示された発明は、半導体集積回路(IC)及びインダクタをリードフレーム上に横に並べて実装し、これらを樹脂封止したDC−DCコンバータである。特許文献1に開示された半導体装置と同様に、特許文献2に開示されたDC−DCコンバータにおいては薄型化並びに小型化を実現することができる。
【0006】
また、特許文献3に開示された発明は、インダクタ基板上に入出力コンデンサ、電源ICチップを積層し、これらを樹脂を用いて封止した超小型DC−DCコンバータモジュールである。特許文献1に開示された半導体装置並びに特許文献2に開示されたDC−DCコンバータと同様に、特許文献3に開示された超小型DC−DCコンバータモジュールにおいては薄型化並びに小型化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−098256号公報
【特許文献2】特開2007−173712号公報
【特許文献3】特開2007−318954号公報
【特許文献4】特開2002−158115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許文献1に開示された半導体装置、特許文献2に開示されたDC−DCコンバータ並びに特許文献3に開示された超小型DC−DCコンバータモジュールはいずれも薄型化並びに小型化を実現可能である点において優れている。ところが、インダクタには、例えば酸化鉄を主成分としてマンガン等の金属化合物を混合し、高温焼結によって生成された強磁性体であるフェライトが使用されており、このフェライトに応力が加わると透磁率が次第に低下する現象が生じる。特許文献1乃至特許文献3のそれぞれに開示されたインダクタにおいては、製作過程中の樹脂封止後の樹脂の熱収縮の際に応力が加わる。また、インダクタにおいては、製品として動作の際に発生する熱サイクルに伴い、樹脂が熱収縮と膨張とを繰り返し、応力が加わる。インダクタの磁性体(強磁性体)に応力が加わると、上記の通り透磁率が低下するので、インダクタンスが低下し、インダクタの電気的特性が劣化する。
【0009】
上記特許文献4には、樹脂封止によって磁性体に発生する応力や衝撃を緩和し、磁気特性の劣化を防止することができ、又コア割れを防止することができる発明が開示されている。この特許文献4に開示された発明は、フェライトコアの表面部分全体を覆い、フェライトコアとコイルボビン間の隙間を覆う樹脂製のトランス保護カバーを備えたトランスである。
【0010】
しかしながら、上記特許文献4に開示されたトランスにおいては、樹脂製のトランス保護カバーを用いて樹脂の熱収縮や熱サイクルによって磁性体に及ぼす応力を緩和することができるが、この樹脂製のトランス保護カバーを含めて全体的に熱伝導性の良くない樹脂により磁性体が覆われているので、磁性体から発生する熱が樹脂の外部に放熱しにくい点について配慮がなされていなかった。トランスの放熱が十分に行われない場合には、トランスの電気的特性の劣化を生じるだけでなく、熱サイクルに伴う樹脂封止の応力が増大し、前述の通り磁性体の透磁率が低下する。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。従って、本発明は、薄型化並びに小型化を実現しつつ、樹脂封止体の磁性体に加わる応力を緩和することができるとともに磁性体からの放熱効率を高め、磁性体の透磁率を向上することができる電子回路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の実施例に係る第1の特徴は、電子回路装置において、第1の表面及びそれに対向する第2の表面を有する基板と、基板に第1の表面から第2の表面に渡って配設され、第1の表面側に第3の表面を有し、第2の表面側に第4の表面を有する磁性体と、第5の表面及びそれに対向する第6の表面を有し、磁性体の第4の表面上に第5の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体と、基板、磁性体及び第1の応力緩衝体の少なくとも第5の表面を被覆する樹脂封止体とを備える。
【0013】
第1の特徴に係る電子回路装置において、第1の応力緩衝体の第5の表面のサイズは、磁性体の第4の表面のサイズに比べて大きく、基板の第1又は第2の表面のサイズと同一かそれに比べて小さいことが好ましい。
【0014】
第1の特徴に係る電子回路装置において、第1の応力緩衝体と磁性体との間に、ガラス繊維クロスに熱硬化型接着剤を含浸又は塗布した接着層が配設されていることが好ましい。
【0015】
本発明の実施例に係る第2の特徴は、電子回路装置において、第1の表面及びそれに対向する第2の表面を有する基板と、基板に第1の表面から第2の表面に渡って配設され、第1の表面側に第3の表面を有し、第2の表面側に第4の表面を有する磁性体と、第7の表面及びそれに対向する第8の表面を有し、磁性体の第3の表面上に第8の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第2の応力緩衝体と、基板、磁性体及び第2の応力緩衝体の少なくとも第7の表面及び第8の表面を被覆する樹脂封止体とを備える。
【0016】
第2の特徴に係る電子回路装置において、第2の応力緩衝体の第8の表面のサイズは、磁性体の第3の表面のサイズに比べて大きく、基板の第1又は第2の表面のサイズに比べて小さいことが好ましい。
【0017】
第2の特徴に係る電子回路装置において、基板の第1の表面上において磁性体の周囲に配設された機能が異なる第1の電子部品及び第2の電子部品を更に備え、第2の応力緩衝体は、第2の電子部品上を除き、磁性体の第3の表面上及び第1の電子部品上に重複して配設されていることが好ましい。
【0018】
第2の特徴に係る電子回路装置において、第2の応力緩衝体は固定電位に接続されることが好ましい。
【0019】
本発明の実施例に係る第3の特徴は、電子回路装置において、第1の表面及びそれに対向する第2の表面を有する基板と、基板に第1の表面から第2の表面に渡って配設され、第1の表面側に第3の表面を有し、第2の表面側に第4の表面を有する磁性体と、第5の表面及びそれに対向する第6の表面を有し、磁性体の第4の表面上に第5の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体と、第7の表面及びそれに対向する第8の表面を有し、磁性体の第3の表面上に第8の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第2の応力緩衝体と、基板、磁性体、第1の応力緩衝体の少なくとも第5の表面、第2の応力緩衝体の少なくとも第7の表面及び第8の表面を被覆する樹脂封止体とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、薄型化並びに小型化を実現しつつ、樹脂封止体の磁性体に加わる応力を緩和することができるとともに、磁性体からの放熱効率を高め、磁性体の透磁率を向上することができる電子回路装置を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1に係る電子回路装置の要部を拡大した模式的断面図である。
【図2】実施例1に係る電子回路装置の回路システムブロック図である。
【図3】実施例1に係る電子回路装置の一部樹脂封止体を取り除いた平面図(上面図)である。
【図4】図3に示す電子回路装置の一部樹脂封止体を取り除いた底面図(下面図)である。
【図5】図3に示す電子回路装置の側面断面図である。
【図6】図3に示す電子回路装置の樹脂封止体を含む全体斜視図である。
【図7】図3乃至図5に示す電子回路装置の第1のトランスの分解斜視図である。
【図8】実施例1に係る電子回路装置の電気的特性を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例2に係る電子回路装置の要部を拡大した模式的断面図である。
【図10】実施例2に係る電子回路装置の一部樹脂封止体を取り除いた平面図(上面図)である。
【図11】図10に示す電子回路装置の一部樹脂封止体を取り除いた底面図(下面図)である。
【図12】図10に示す電子回路装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0023】
また、以下に示す実施例はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0024】
(実施例1)
本発明の実施例1は、汎用テレビジョンの電源ユニットに組み込まれる電源モジュールとしての電子回路装置に本発明を適用した例を説明するものである。ここでは、電子回路装置はDC−DCコンバータである。
【0025】
[電子回路装置の電子回路システムブロック構成]
図2に示すように、実施例1に係る電子回路装置1は、DC−DCコンバータを1つの電源モジュールとして構築している。この電子回路装置1は、トランジスタ部2、第1のトランス(メイントランス)3、コンデンサ41、42、43(電子部品)、ダイオード(第電子部品)5、制御部6、第2のトランス(ドライブ用トランス)7及び温度検出部8の複数の電子部品を少なくとも備えている。また、電子回路装置1においては、入力端子Vin+、Vin-、出力端子Vout+、Vout-、直流電圧端子DCIN、切換信号端子ON/OFF、出力電圧調整端子TRM、リモートセンシング端子Vs+、Vs-が配設されている。
【0026】
トランジスタ部2は、第1の絶縁ゲート型トランジスタ(以下、単にIGFET(insulated gate field effect transistor)という。)21と、第2のIGFET22と、ダイオード23及び24とを備えている。ここで、IGFETとは、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)、MISFET(metal insulated semiconductor field effect transistor)のいずれも含む意味において使用される。なお、トランジスタ部2においては、同等の機能を有していれば、IGFETに限定されるものではなく、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタ等を使用することができる。
【0027】
第1のIGFET21の主電極の一端は入力端子Vin+に接続され、主電極の他端は第2のIGFET22の主電極の一端に接続され、ゲート電極は第2のトランス7に接続されている。第1のIGFET21の主電極の一端と他端との間には逆バイアス方向にダイオード23が設けられている。第2のIGFET22の主電極の他端は入力端子Vin-に接続され、ゲート電極は第2のトランス7に接続されている。第2のIGFET22の主電極の一端と他端との間には逆バイアス方向にダイオード24が設けられている。また、入力端子Vin+とVin-との間にはコンデンサ42が挿入されている。
【0028】
第1のトランス3は、一次側巻線(コイル)31、二次側巻線(コイル)32及びコア33を備えている。一次側巻線31の一端はトランジスタ部2の出力つまり第1のIGFET21の主電極の他端及び第2のIGFET22の主電極の一端に接続され、他端はコンデンサ41を電気的に直列に介在させて入力端子Vin-に接続されている。二次側巻線32の一端はダイオード5を電気的に直列に介在させて出力端子Vout+に接続され、他端は出力端子Vout-に接続されている。
【0029】
出力端子Vout+とVout-との間には、コンデンサ43、温度検出部8のそれぞれが電気的に並列に挿入されている。温度検出部8は、電子回路装置1の温度を検出し、その検出結果を制御部6に出力する。制御部6においては、温度検出部8からの検出結果に基づき予め設定された温度上昇が検出された場合には、第2のトランス7を介してトランジスタ部2の動作を停止させる制御、すなわちこの電子回路システムの動作を停止させる制御を行うことができる。
【0030】
制御部6は、図示しないが、制御用ICとフォトカプラとを少なくとも備えている。この制御部6は、切換信号端子ON/OFFから入力される切換信号に基づき、この電子回路装置1のDC−DCコンバータの動作の制御を行う。
【0031】
[電子回路装置の動作]
図2に示す実施例1に係る電子回路装置1において、まず入力端子Vin+、Vin-間に変換前の直流電圧が与えられ、更に直流電圧端子DCINには直流電圧例えば12Vが供給され、切換信号端子ON/OFFには電子回路装置1の切換信号(起動信号)が与えられる。切換信号端子ON/OFFにON信号が与えられると、制御部6は、第2のトランス7を介してトランジスタ部2の第1のIGFET21をON動作させ、第2のIGFET22をOFF動作させる。第1のIGFET21のON動作によって、トランジスタ部2(第1のIGFET21の主電極の他端)から第1のトランス3の一次側巻線31に直流電流が流れる。この一次側巻線31に直流電流が流れると、電磁誘導作用によって二次側巻線32に直流電流が発生する。この直流電圧は出力端子Vout+、Vout-間に変換後の直流電圧として出力される。
【0032】
実施例1に係る電子回路装置1においては、変換前の直流電圧は例えば385Vであり、変換後の直流電圧は例えば12V又は24Vである。
【0033】
[電子回路装置の基本デバイス構造(基本断面構造)]
実施例1に係る電子回路装置1の基本的なデバイス断面構造は図1に示す通りである。すなわち、電子回路装置1は、第1の表面11A及びそれに対向する第2の表面11Bを有する基板11と、基板11に第1の表面11Aから第2の表面11Bに渡って配設され、第1の表面11A側に第3の表面3Aを有し、第2の表面11B側に第4の表面3Bを有する磁性体と、第5の表面91A及びそれに対向する第6の表面91Bを有し、磁性体の第4の表面3B上に第5の表面91Aを向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体91と、基板11、磁性体及び第1の応力緩衝体91の少なくとも第5の表面91Aを被覆する樹脂封止体17とを備えている。
【0034】
実施例1において、電子回路装置1の磁性体は、前述の第1のトランス3又は第2のトランス7を構築する強磁性体である。この第1のトランス3(及び第2のトランス7)の詳細な構造は後述する。また、実施例1において、磁性体は第1のトランス3及び第2のトランス7を構築するが、これに限定されるものではなく、磁性体はリアクタンス、インダクタ等を構築してもよい。
【0035】
実施例1において、第1の応力緩衝体91は、樹脂封止体17の熱収縮によって磁性体に及ぼす応力を減少することができる機能を有し、更に磁性体(第1のトランス3及び第2のトランス7)から発生する熱を樹脂封止体17の外部に放出する機能を有する。この第1の応力緩衝体91の詳細な構成は、同様に後述する。
【0036】
[基板の構成]
図1、図3、図4及び図5に示すように、電子回路装置1の基板11は、その構造を明確に図示していないが、絶縁基材とその絶縁基材の表面(第1の表面11A側)、裏面(第2の表面11B側)の少なくともいずれか一方に配設された導電体とを備えている。特に積層枚数を限定するものではないが、実施例1において、基板11は1枚の板状の絶縁基材を有する単層構造により構成され、第1の表面11A及び第2の表面11Bのそれぞれに導電体(端子、配線等)が配設されている。第1の表面11A及び第2の表面11Bに配設された導電体は基板11の第1の表面11Aから第2の表面11Bに渡って配設された接続孔配線(スルーホール配線又はビア配線)を通して電気的に接続されている。なお、基板11は2層以上の多層の絶縁基板を備えていてもよい。
【0037】
基板11の絶縁基材は、実施例1において、プリント配線板に多用されているガラスエポキシ樹脂基板により構成されている。必ずしもこの数値に限定されるものではないが、基板11は、長辺を例えば60mm−62mmに設定し、短辺を例えば42mm−44mmに設定した長方形の平面形状を有する。図1に示す基板11の厚さは例えば0.8mm−1.6mmに設定されている。
【0038】
基板11の導電体は、実施例1において、銅(Cu)、Cu合金、金(Au)等の導電性に優れた材料により構成されている。例えば、Cuが使用される場合、ラミネート法やプレス成形法により貼り付けられたCu箔か又はそのCu箔の表面にめっき法によりCuめっき層を積層した複合膜により形成される。単層のCu箔の場合、その膜厚は例えば30μm−40μmに設定されている。また、複合膜の場合、Cu箔の膜厚は例えば15μm−20μmに設定され、Cuめっき層は例えば15μm−25μmに設定されている。
【0039】
[電子部品の構成]
図1乃至図5に示すように、基板11の第1の表面11A上には、電子部品として、前述の図2において説明したトランジスタ部2、第1のトランス(磁性体)3、コンデンサ42、43、ダイオード5、制御部6、第2のトランス(磁性体)7及び温度検出部8が実装されている。基板11の第2の表面11Bには、電子部品として、例えばコンデンサ41等が実装されている。
【0040】
トランジスタ部2は、第1のIGFET21及びダイオード23を有する半導体チップを樹脂封止体により封止した半導体装置と、同様に第2のIGFET22及びダイオード24を有する半導体チップを樹脂封止体により封止した半導体装置とを備え、構築されている。トランジスタ部2は、第1の表面11Aにおいて、図3中、周辺領域の右下側に配設されている。
【0041】
コンデンサ42は例えばコンデンサ本体を樹脂封止体により封止して構成されている。樹脂封止体には実施例1においてガラスエポキシ樹脂を実用的に使用することができる。コンデンサ42は、目的とする容量値によりその搭載個数は限定されるものではないが、基板11の第1の表面11Aにおいて、図3中、周辺領域の右下側に4個配設されている。コンデンサ43は例えばコンデンサ本体を樹脂封止体により封止して構成されている。コンデンサ43は、同様に目的とする容量値によりその搭載個数は限定されるものではないが、基板11の第1の表面11Aにおいて、図3中、周辺領域の左下側に6個配設されている。
【0042】
また、コンデンサ41は、前述のコンデンサ42及び43と同様に、例えばコンデンサ本体を樹脂封止体により封止して構成されている。コンデンサ41は、目的とする容量値によりその搭載個数は限定されるものではないが、基板11の第2の表面11Bにおいて、図4中、周辺領域の左下側に4個配設されている。このコンデンサ41はコンデンサ42の配置位置に対向する位置に配置されている。
【0043】
ダイオード5は例えばダイオード本体具体的にはダイオードチップ(半導体素子)を樹脂封止体により封止して構成されている。ダイオード5は、目的とする整流特性によりその搭載個数は限定されるものではないが、基板11の第1の表面11Aにおいて、図3中、周辺領域の左上側に1個配設されている。
【0044】
制御部6は、トランジスタ、論理回路、抵抗、容量等、少なくともトランジスタ部2の制御を行う回路を有する半導体チップを樹脂封止体により封止した半導体装置(制御用IC)61と、フォトカプラ62及び63とを備え、構築されている。制御部6の半導体装置61は、基板11の第1の表面11Aにおいて、図3中、周辺領域の右上側に配設されている。フォトカプラ62及び63は、基板11の第1の表面11Aにおいて、図3中、左上側に配設されている。
【0045】
温度検出部8は、基板11の第1の表面11Aにおいて、図3中、周辺領域の左上側であって、ダイオード5とフォトカプラ62及び63との間に配設されている。この温度検出部8はダイオード5を配設した領域から離間した位置に配設され、温度検出部8自体の熱による破損や誤動作を防止するようになっている。
【0046】
[磁性体(第1のトランス及び第2のトランス)の構成]
実施例1に係る電子回路装置1において、第1のトランス3並びに第2のトランス7は磁性体詳細には強磁性体により構築されている。第1のトランス3は、図1、図3乃至図5に示すように、基板11の第1の表面11Aの中央領域において、開口15内に挿入されて配設されている。開口15は、実施例1において、基板11の第1の表面11Aからそれに対向する第2の表面11Bに貫通する貫通穴として構成されている。
【0047】
図7に示すように、実施例1において第1のトランス3にはシートトランス構造が採用されている。詳細な断面構造の説明は省略するが、第1のトランス3は、一次側巻線31及び二次側巻線32を有し、中央部分に貫通穴を有するトランス基板12と、トランス基板12の表面12A(第1のトランス3の第3の表面3A側)、それに対向する裏面12B(第4の表面3B側)及び側面12Cの一部に沿って配設され中央部分の貫通穴125にもトロイダルコアの磁心として配設されたコア33とを備えている。
【0048】
トランス基板12は、例えばガラスエポキシ樹脂により構成された絶縁基材121と、一次側巻線31及び二次側巻線32を構築する例えば導電体122とを備えている。この導電体122には例えばCu、Cu合金、Au等の導電性に優れた材料が使用されている。
【0049】
コア33は、例えば金属酸化物をセラミックとして燒結したフェライト磁性材により形成された強磁性体である。金属酸化物には、例えば酸化鉄(Fe2O2)を主成分とし、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)等の金属化合物を混合したものを実用的に使用することができる。また、コア33は他にアモルファス磁性材料により形成してもよい。コア33は、磁心331Cを一体に構成しかつ突出させ、この磁心331Cを中心としてトランス基板12の両方の側面12Cに沿って突出し、トランス基板12の裏面12B側に配設された第1のコア(下部コア材)331と、第1のコア331の磁心331C及び突出した両側に磁気的に接続され、トランス基板12の表面12A側に配設された第2のコア(上部コア材)332とを備えている。第1のコア331の断面形状はE型形状であり、第2のコア332の断面形状が板材であってI型形状であることから、コア33はE−I型コア形状を有する。図7中、第1のコア331の底面は磁性体の第4の表面3Bになり、第2のコア332の上面は磁性体の第3の表面3Aになる。なお、コア33はE−E型コア形状であってもよい。
【0050】
第2のトランス7は、第1のトランス3に対して誘導起電力並びに全体のサイズを小さく設定しているが、第1のトランス3の構造と同様にシートトランス構造により構成されている。また、第1のトランス3の基板11への実装方法と同様に、第2のトランス7は、基板11に配設された開口16に挿入された状態において実装されている。
【0051】
第2のトランス7のコア73の表面7Aは第1のトランス3のコア33の第3の表面3Aに対応する(双方の表面は同等の方向に存在する表面である)。また、コア73の表面7Aに対向する裏面7Bはコア33の第4の表面3Bに対応する(双方の表面は同等の方向に存在する表面である)。
【0052】
[硬化型応力緩和材の構造及び特性]
図3に示すように、実施例1に係る電子回路装置1においては、第1のトランス3のコア33の側面周囲、つまりトランス基板12の2つの長辺及び2つの短辺に沿う4つの側面12Cに対応しそれぞれに平行な4つの側面にのみその全域に少なくとも硬化型応力緩和材35が配設されている。ここでは、コア33の第3の表面(上面)3A並びに第4の表面(下面)3Bには硬化型応力緩和材35は配設されていない。硬化型応力緩和材35の膜厚はコア33の側面から離れるに従って薄く設定されている。つまり、コア33の側面における硬化型応力緩和材35の膜厚は、コア33の第3の表面3Aと第4の表面3Bとの間の厚さに相当し、最も厚い。コア33の側面から離れるに従って硬化型応力緩和材35の膜厚は徐々に薄くなり、コア33の側面から最も離れた位置(終端)の硬化型応力緩和材35の膜厚は実質的にゼロである。第1のトランス3のコア33の側面に配設された硬化型応力緩和材35は、第1のトランス3とそれを実装する基板11との接続領域まで引き延ばされ、この接続領域における応力の減少に寄与する。
【0053】
実施例1において、硬化型応力緩和材35には、例えば白色半流動性を有する加熱硬化型接着性液状シリコーンゴム(熱硬化型シリコーン樹脂)が使用されている。この加熱硬化型接着性液状シリコーンゴムは、硬化前、白色半流動性を有し、例えば23℃の温度において約3.5Pa・s−4.5Pa・sの粘度を有する。加熱硬化型接着性液状シリコーンゴムは、コーティング技術、ポッティング技術等を用いて塗布した後、例えば150℃、1時間の熱処理を行い硬化される。硬化後において、加熱硬化型接着性液状シリコーンゴムは、白色ゴム状に変化し、例えば20−22の硬さ(タイプA)を有し、例えば2.0×10-4/℃−2.2×10-4/Kの線膨張係数を有する。
【0054】
なお、硬化型応力緩和材35は熱硬化型シリコーン樹脂に限定されない。第1のトランス3のコア33に樹脂封止体17の収縮により発生する応力を減少する材料であれば、紫外線硬化型シリコーン樹脂(ゴム)若しくは室温硬化型シリコーン樹脂(ゴム)、又は熱硬化型、紫外線硬化型、室温硬化型のいずれかのエポキシ樹脂を、硬化型応力緩和材35として使用することができる。硬化型でない例えばゲル状の樹脂はトランスファモールド法を用いた樹脂封止体17の製造工程において流出してしまい、コア33の側面にゲル状の樹脂を確実に付着させることは難しい。
【0055】
[リードの構造]
図1、図3乃至図6に示すように、基板11の長辺に沿った一側面(図3中及び図4中下側側面、図6中左側側面)にはリード(外部端子)180−189が配列され、一側面に対向する他の一側面(図3中及び図4中上側側面、図6中右側側面)にはリード190−193が配列されている。これらのリード180−193において、樹脂封止体17内の部分はインナー部であり、樹脂封止体17外に突出した部分はアウター部である。
【0056】
リード180は直流電圧端子DCINとして使用される。リード181は切換信号端子ON/OFFとして使用される。リード182は入力端子Vin+として使用される。リード183は入力端子Vin-として使用される。リード184は出力端子Vout-として使用される。リード185は負極のリモートセンシング端子Vs-として使用される。リード186は空き端子NCである。リード187は出力電圧調整端子TRMとして使用される。リード188は正極のリモートセンシング端子Vs+として使用される。リード189は出力端子Vout-として使用される。空き端子NCとして使用されるリード186は実施例1において放熱経路としての機能を有する。
【0057】
また、リード190−193は空き端子NCである。この空き端子NCとして使用されるリード190−193は同様に放熱経路としての機能を有する。
【0058】
リード180−193は電気伝導性に優れた例えばCu又はCu合金により構成されている。この導電性材料は、熱抵抗も小さく、熱伝導性にも優れている。リード180−193の厚さは例えば0.3mm−0.5mmに設定されている。
【0059】
リード180−193は符号は付けないが基板11に配設された端子に接着層を介して電気的かつ機械的に接続されている。この接着層には、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れた例えば半田、ペースト等を使用することができる。半田としては例えばSn−Ag−Cu系半田を実用的に使用することができる。また、ペーストには例えば導電性ペーストとして用いられるAgペーストを実用的に使用することができる。
【0060】
[第1の応力緩衝体の構造]
図1、図4及び図5に示すように、第1の応力緩衝体91は、その第5の表面91A(図1中及び図5中、上側表面)に接着層4を介在して第1のトランス3のコア33の第1のコア331の第4の表面3B(図5中、下側底面)を接着し、第1のトランス3に取り付けられている。この第1の応力緩衝体91は、例えば製造過程においてトランスファモールド法を用いて電子回路装置1の樹脂封止体17を成形した直後の温度収縮に伴い第1のトランス3のコア(磁性体)33に与える応力を、第1の応力緩衝体91の剛性によって減少する機能を有する。すなわち、第1の応力緩衝体91は、樹脂封止体17の熱収縮に伴う圧縮応力に反発する機能を有し、実効的にコア33に加わる応力を減少する。また、第1の応力緩衝体91は、電子回路装置1の製品として完成した後の実稼働における温度上昇並びに温度下降の温度サイクルによって生じる樹脂封止体17の熱膨張並びに熱収縮に伴うコア33に与える応力を減少する機能を有する。
【0061】
このようなコア33に与える応力を極力減少し、かつ電子回路装置1の薄型化並びに小型化を図るために、第1の応力緩衝体91は、第5の表面91Aのサイズをそれに対向するコア33の第4の表面3Bのサイズに比べて出来る限り大きく設定している。第1の応力緩衝体91のサイズが大きい方が樹脂封止体17の割合に対する第1の応力緩衝体91の割合が多くなるので、第1の応力緩衝体91によってコア33に加わる応力を確実に減少することができる。また、換言すれば、樹脂封止体17の割合が少なくなるので、応力の発生要因そのものを減少することができる。
【0062】
実施例1に係る電子回路装置1においては、第1の応力緩衝体91を配設することによって、樹脂封止体17のコア33に与える応力を減少することができるとともに、特に薄型化される樹脂封止体17の機械的強度を向上することができる。樹脂封止体17の機械的強度を向上することによって、樹脂封止体17の反りや欠けを防止することができる。特に、樹脂封止体17の反りを防止することによって、電子回路装置1とそれを実装する図示しない実装基板との密着性を高めることができ、電子回路装置1の内部の電子部品の動作によって発生する熱を実装基板側に効率良く伝達することができるので、電子回路装置1の放熱効率をより一層向上することができる。
【0063】
また、第1の応力緩衝体91は、コア33に加わる応力を十分に減少するために、基板11の第1の表面2A又は第2の表面2Bのサイズと同一平面サイズに設定されている。コア33に加わる応力を十分に減少するためには、第1の応力緩衝体91の平面サイズを大きく設定する方が好ましい。実際には、図6に示す樹脂封止体17の取付部17Hとの緩衝を避ける逃げ領域91Hが第1の応力緩衝体91に配設され、取付部17Hと逃げ領域91Hとの間の離間寸法(安全マージン)には例えば6mm−10mmが必要であるために、基板11の第1の表面11A又は第2の表面11Bのサイズに対して、第1の応力緩衝体91の平面サイズを80%以上に設定している。
【0064】
更に、第1の応力緩衝体91には熱伝導性に優れた材料が使用されており、そして第1の応力緩衝体91のサイズが大きく設定されているので、第1の応力緩衝体91は第1のトランス3、第2のトランス7、その他の電子部品等(特に発熱電子部品)の動作によって発生する熱を樹脂封止体17の外部に放出する放熱板としての機能を有する。この第1のトランス3等の動作によって発生する熱は第1の応力緩衝体91を通して樹脂封止体17の外気(外部雰囲気)又は前述の実装基板に伝達される。
【0065】
実施例1において、第1の応力緩衝体91は、特に図4及び図5に示すように、基板11の平面形状と同様の長方形の平面形状を有する。樹脂封止体17の短辺中央部分には電子回路装置1を前述の実装基板に取り付けるための取付部(取付穴)17Hが配設されており、この取付部17Hに対応する第1の応力緩衝体91の短辺中央には取付部17Hとの緩衝を避ける逃げ領域91Hが配設されている。逃げ領域91Hはここでは半円形状の切欠部である。第1の応力緩衝体91は、例えば50mm−62mmの長辺と例えば35mm−44mmの短辺と、0.5mm−1.5mmの厚さとに設定された金属製板材により構成されている。金属製板材には、樹脂封止体17に比べて高い適度な剛性を有し、樹脂封止体17に比べて遙かに熱伝導性に優れ、更にコア33の線膨張係数に近い、例えばCu(線膨張係数:1.7×10-6)板又はCu合金板を使用することが好ましい。このCu板又はCu合金板は、そのまま(無垢状態)でも使用可能であるが、表面に例えばNi膜等のめっき膜を形成してもよい。
【0066】
[接着層の構成]
図1及び図5に示すように、接着層4は、実施例1において、第1のトランス3と第1の応力緩衝体91とを機械的に装着(接着)する機能に加えて、双方の間を電気的に絶縁する機能を備えている。この接着層4には、実施例1において、例えばガラス繊維クロスに熱硬化型接着剤を含浸させたプリプレグが使用される。このガラス繊維クロスには、例えばSiO2を主成分とし、Al2O3、CaO、MgO、R2O、B2O3等の少なくともいずれかが添加された3μm−10μm径を有する単糸を数十本から数百本程度束ね、これを平織りしたものである。ガラス繊維クロスの厚さは例えば0.2mm−0.4mmに設定されている。熱硬化型接着剤には例えば熱硬化型のガラスエポキシ樹脂接着剤が使用されている。
【0067】
接着層4は、実施例1において、第1のトランス3のコア33の第4の表面3Bの全域に配設され、その平面サイズに比べて若干大きい平面サイズにより配設されている。接着層4においては、上記の通り極めて薄い厚さに設定して第1のトランス3に第1の応力緩衝体91を機械的に装着することができるので、第1のトランス3の動作で発生する熱を効率良く第1の応力緩衝体91に伝達することができ、更に第1のトランス3と第1の応力緩衝体91との間を電気的に絶縁することができる。また、単に樹脂系接着剤を用いて第1のトランス3と第1の応力緩衝体91とを接着する場合に比べて、接着層4の膜厚を均一化することができるので、この接着層4は特に電気的な絶縁特性において優れている。
【0068】
なお、実施例1においては、ガラス繊維クロスに熱硬化型接着剤を含浸させたプリプレグが接着層4として使用されているが、接着層4には例えば熱硬化性接着剤を両面に塗布したガラス繊維クロスを使用することができる。
【0069】
[樹脂封止体の構造]
図1、図3乃至図6に示すように、実施例1に係る電子回路装置1は、前述のように複数の電子部品を実装した基板11を樹脂封止体17により気密封止している。樹脂封止体17はトランスファモールド法により成形されている。実施例1に係る電子回路装置1は、DC−DCコンバータを1つの部品としてフルモールド化したものであり、小型化並びに薄型化に適し、信頼性が高く、使い易さを高めている。
【0070】
樹脂封止体17は、実施例1において、基板11の絶縁基材、トランス基板12の絶縁基材のそれぞれと同一材料であるガラスエポキシ樹脂(線膨張係数:1.3×10-6)により構成されている。必ずしもこの数値に限定されるものではないが、実施例1において、樹脂封止体17の長辺の長さは例えば68mm−72mmに設定され、短辺の長さは例えば48mm−52mmに設定されている。
【0071】
前述の第1の応力緩衝体91の第1のトランス3側の第5の表面91A及び側面は樹脂封止体17により覆われ、第1の応力緩衝体91と樹脂封止体17との接合性が高められている。第1の応力緩衝体91の第5の表面91Aに対向する第6の表面91Bは樹脂封止体17から露出されており、電子回路装置1の放熱性が高められている。樹脂封止体17の厚さは、かなり薄く、例えば6.5mm−6.9mmに設定されている。
【0072】
[電子回路装置の電気的特性]
前述の実施例1に係る電子回路装置1においては、第1の応力緩衝体91を備えることによって、図8に示す電気的特性を得ることができる。図8において、横軸は電子回路装置1の入力端子Vin+に供給される入力電圧(V)、縦軸は直流変換効率(%)である。データAは実施例1に係る第1の応力緩衝体91を備えた電子回路装置1の入力電圧に対する直流変換効率である。データBは実施例1に係る第1の応力緩衝体91を備えていない電子回路装置(比較試料)の入力電圧に対する直流変換効率である。
【0073】
データBに示すように、第1の応力緩衝体91を備えていない電子回路装置においては、入力電圧が85Vに対して直流変換効率は90.2%、入力電圧が100Vに対して直流変換効率は91.9%、入力電圧が115Vに対して直流変換効率は92.9%という電気的特性であった。
【0074】
これに対して、データAに示すように、実施例1に係る第1の応力緩衝体91を備えた電子回路装置1においては、入力電圧が85Vに対して直流変換効率は90.6%、入力電圧が100Vに対して直流変換効率は92.2%、入力電圧が115Vに対して直流変換効率は93.2%という電気的特性が得られた。この実施例1に係る電子回路装置1においては、各入力電圧に対していずれも直流変換効率が上記比較試料に比べて上回る良好な結果である。つまり、電子回路装置1においては、樹脂封止体17の熱収縮に伴う第1のトランス3のコア(磁性体)33(及び第2のトランス7のコア(磁性体)73)に及ぼす応力が第1の応力緩衝体91によって軽減され、この結果、磁性体の透磁率の低下が抑制され、インダクタンスの低下が抑制されている。
【0075】
[電子回路装置の特徴]
このように構成される実施例1に係る電子回路装置1においては、樹脂封止体17に第1の応力緩衝体91を備えたので、樹脂封止体17の機械的強度を高め装置全体の薄型化並びに小型化を実現しつつ、樹脂封止体17の第1のトランス3及び第2のトランス7の磁性体に加わる応力を第1の応力緩衝体91の剛性を利用して緩和することができる。更に、電子回路装置1においては、第1のトランス3及び第2のトランス7の磁性体からの放熱効率を優れた熱伝導性を有する第1の応力緩衝体91を利用して高めることができる。結果的に、第1のトランス3及び第2のトランス7の磁性体の透磁率を向上して、電子回路装置1の電気的特性を向上することができる。
【0076】
(実施例2)
本発明の実施例2は、例えばDC−DCコンバータの前段に配設され、DC−DCコンバータとともに電源モジュールを構築する高周波対策用力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路としての電子回路装置に本発明を適用した例を説明するものである。
【0077】
[電子回路装置の基本デバイス構造(基本断面構造)]
実施例2に係る電子回路装置1の回路システムブロック構成は省略する。電子回路装置1の基本的なデバイス断面構造は図9に示す通りである。すなわち、電子回路装置1は、第1の表面11A及びそれに対向する第2の表面11Bを有する基板11と、基板11に第1の表面11Aから第2の表面11Bに渡って配設され、第1の表面11A側に第3の表面301A及び302Aを有し、第2の表面11B側に第4の表面301B及び302Bを有する磁性体と、第5の表面91A及びそれに対向する第6の表面91Bを有し、磁性体の第4の表面301B及び302B上に第5の表面91Aを向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体91と、第7の表面92A及びそれに対向する第8の表面92Bを有し、磁性体の第3の表面301A及び302A上に第8の表面92Bを向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第2の応力緩衝体92と、基板11、磁性体、第1の応力緩衝体91の少なくとも第5の表面91A、第2の応力緩衝体92の少なくとも第7の表面92A及び第8の表面92Bを被覆する樹脂封止体17とを備える。つまり、実施例2に係る電子回路装置1は、磁性体を中心として、図9中、磁性体下に第1の応力緩衝体91を配設し、磁性体上に第1の応力緩衝体91に対向し離間された第2の応力緩衝体92を配設し、上下の第1の応力緩衝体92と第2の応力緩衝体91との間に磁性体を挟み混んだ断面構造を有する。
【0078】
実施例2において、電子回路装置1の磁性体は、第1のチョークコイル(パワーインダクタ)301及び第2のチョークコイル(パワーインダクタ)302を構築する強磁性体である。第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302は、所定周波数を上回る高周波電流を阻止する機能を有する。実施例2において、第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302は、その詳細な構造の説明を省略するが、基本的には実施例1に係る電子回路装置1の第1のトランス3及び第2のトランス7と同様に構成され、トランス基板12に相当し絶縁基板にコイルを構築する導電体が配設されたチョークコイル基板(符号は付けない。)を有し、コイルの中心に磁心を持つコア33を有する。コア33には前述の実施例1に係る電子回路装置1の第1のトランス3のコア33と同様のものが使用されている。
【0079】
なお、実施例2において、電子回路装置1には2個の第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302が搭載されているが、電子回路装置1は、第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302の機能を併せ持つ1個のチョークコイル(1個の電子部品)を搭載してもよい。また、電子回路装置1は、2個の第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302に加えて、別途、磁性体を有する電子部品を搭載してもよい。
【0080】
実施例2において、第1の応力緩衝体91は、前述の実施例1に係る電子回路装置1の第1の応力緩衝体91と同様に、樹脂封止体17の熱収縮によって磁性体に及ぼす応力を減少することができる機能を有し、更に磁性体(第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302)から発生する熱を樹脂封止体17の外部に放出する機能を有する。また、第1の応力緩衝体91の材質、平面サイズ、厚さ等は前述の実施例1に係る電子回路装置1の第1の応力緩衝体91と同様に構成されている。
【0081】
第2の応力緩衝体92は、第1の応力緩衝体91と同様に、樹脂封止体17の熱収縮によって磁性体に及ぼす応力を減少することができる機能を有し、磁性体(第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302)から発生する熱を樹脂封止体17の外部に放出する機能を有する。更に、第2の応力緩衝体92は、固定電源例えば接地電位(グランド電位)に接続されるようになっており、シールド効果を有し、ノイズの発生を防止する機能を有する。この第2の応力緩衝体92の詳細な構造は後述する。
【0082】
[基板の構成]
図9乃至図12に示すように、電子回路装置1の基板11は、その構造を明確に図示していないが、前述の実施例1に係る電子回路装置1の基板11と同様に、絶縁基材とその絶縁基材の表面(第1の表面11A側)、裏面(第2の表面11B側)の少なくともいずれか一方に配設された導電体とを備えている。
【0083】
[電子部品の構成]
図10及び図12に示すように、基板11の第1の表面11A上には、第1のチョークコイル(磁性体)301、第2のチョークコイル(磁性体)302、電界効果トランジスタ(FET)201−204、ダイオード501、フェライトビーズ801、チップトランジスタ205、セラミックチップコンデンサ401、アキシャルダイオード502、ショットキーバリアダイオード(SBD)503及び504、チップダイオード505及び506、チップ抵抗411及び412、抵抗413等の電子部品が実装されている。
【0084】
ここで、電界効果トランジスタ201−204は電流の増幅機能を有する。また、フェライトビーズ801はノイズ除去機能を有する。ショットキーバリアダイオード503及び504は出力電圧の効率を高める機能や電源の整流機能を有する。セラミックチップコンデンサ401は信号波形を滑らかにする機能を有する。
【0085】
第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302は、前述のように、実施例1に係る電子回路装置1の第1のトランス3(第2のトランス7)と同様の構造により構成されている。第1のチョークコイル301は、基板11の第1の表面11Aにおいて、図10中、上側の中央右側に配設され、第2のチョークコイル302は上側の中央左側に配設されている。
【0086】
電界効果トランジスタ201−204は、詳細な構造の説明を省略するが、半導体チップを樹脂封止体により封止した構造により構成されている。電界効果トランジスタ201−204は、第1の表面11Aにおいて、図10中、下側の中央領域に配設されている。
【0087】
ダイオード501は同様に半導体チップを樹脂封止体により封止した構造により構成されている。ダイオード501は、第1の表面11Aにおいて、図10中、下側の中央領域、詳細には左右2個づつ配設された電界効果トランジスタ201及び202と電界効果トランジスタ203及び204との間に配設されている。
【0088】
フェライトビーズ801は、第1の表面11Aにおいて、図10中、中央領域、詳細には第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302と電界効果トランジスタ201−204との間に配設されている。
【0089】
チップトランジスタ205は、第1の表面11Aにおいて、図10中、周辺領域の右下側に配設されている。セラミックチップコンデンサ401は、第1の表面11Aにおいて、図10中、周辺領域の下側中央に配設されている。アキシャルダイオード502は、第1の表面11Aにおいて、図10中、周辺領域の右上側に配設されている。ショットキーバリアダイオード503及び504、チップダイオード505及び506は、いずれも、第1の表面11Aにおいて、図10中、周辺領域の右下側に配設されている。チップ抵抗411は、第1の表面11Aにおいて、図10中、周辺領域の右側中央に配設されている。チップ抵抗412、抵抗413は、いずれも、第1の表面11Aにおいて、図10中、周辺領域の右下側に配設されている。
【0090】
一方、図11及び図12に示すように、基板11の第2の表面11B上には、集積回路(IC)206、チップトランジスタ207、チップ抵抗414及び415、セラミックチップコンデンサ403及び404、フェライトビーズ802等の電子部品が実装されている。
【0091】
集積回路206は、詳細な構造の説明を省略するが、半導体チップを樹脂封止体により封止した構造により構成されている。集積回路206は、第2の表面11Bにおいて、図11中、周辺領域の左下側に配設されている。チップトランジスタ207は、第2の表面11Bにおいて、図11中、周辺領域の左下側に配設されている。
【0092】
チップ抵抗414は、第2の表面11Bにおいて、図11中、下側の中央領域に配設されている。チップ抵抗415は、第2の表面11Bにおいて、図11中、周辺領域の左下側に配設されている。
【0093】
セラミックチップコンデンサ403及び404は、図11中、周辺領域の左下側に配設されている。フェライトビーズ8012は、図11中、中央領域に配設されている。
【0094】
[リードの構造]
図10に示すように、基板11の長辺に沿った一側面(図10中、下側側面)にはリード(外部端子)1800−1808が配列され、一側面に対向する他の一側面(図10中、上側側面)にはリード1900−1903が配列されている。これらのリード1800−1808及び1900−1903において、樹脂封止体17内の部分はインナー部であり、樹脂封止体17外に突出した部分はアウター部である。
【0095】
リード1800は入力端子Vin+として使用される。リード1801は入力端子Vin-として使用される。リード1802は第1のドレイン電圧端子として使用される。リード1803は出力端子Vout-として使用される。リード1804は駆動電圧端子として使用される。リード1805は出力端子Vout-として使用される。リード1806は空き端子NCである。このリード1806は放熱経路として使用される。リード1807は第2のドレイン電圧端子として使用される。リード1808は直流電圧端子DCVinとして使用される。このリード1808には例えば12Vの直流電圧が供給される。
【0096】
また、リード1900−1903は空き端子NCである。この空き端子NCとして使用されるリード1900−1903は同様に放熱経路としての機能を有する。
【0097】
これらのリード1800−1808及び1900−1903は、前述の実施例1に係る電子回路装置1のリード180−194と同様の材料を用いて製作され、図示しない接着層を介して電気的かつ機械的に基板11に接続されている。この接着層には実施例1と同様に例えば半田、ペースト等を使用することができる。
【0098】
[第1の応力緩衝体の構造]
図9、図10乃至図12に示す第1の応力緩衝体91は、前述の実施例1に係る電子回路装置1の第1の応力緩衝体91と同様に構成されている。特に、第1の応力緩衝体91の平面サイズは、第1のチョークコイル301の第1の応力緩衝体91に対向するコア33の第4の表面301Bの平面サイズ及び第2のチョークコイル302のコア33の第4の表面301Bの平面サイズの合計のサイズに比べて大きく、基板11の第2の表面11Bの平面サイズと同等か、それに比べ小さく設定されている。
【0099】
[第2の応力緩衝体の構造]
図9、図10及び図12に示すように、第2の応力緩衝体92は、その第8の表面92B(図9中及び図12中、下側表面)に接着層400を介在して第1のチョークコイル301のコア33の第3の表面301A(図9中、上側上面)及び第2のチョークコイル302のコア33の第3の表面301A(図9中、上側上面)を接着し、第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302に取り付けられている。この第2の応力緩衝体92は、第1の応力緩衝体91と同様に、例えば製造過程においてトランスファモールド法を用いて電子回路装置1の樹脂封止体17を成形した直後の温度収縮に伴い第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302のコア(磁性体)33に与える応力を、第2の応力緩衝体92の剛性によって減少する機能を有する。すなわち、第2の応力緩衝体92は、樹脂封止体17の熱収縮に伴う圧縮応力に反発する機能を有し、実効的にコア33に加わる応力を減少する。また、第2の応力緩衝体92は、電子回路装置1の製品として完成した後の実稼働における温度サイクルによって生じる樹脂封止体17の熱膨張並びに熱収縮に伴うコア33に与える応力を減少する機能を有する。
【0100】
このようなコア33に与える応力を極力減少し、かつ電子回路装置1の薄型化並びに小型化を図るために、第2の応力緩衝体92は、第8の表面92Bのサイズをそれに対向するコア33の第3の表面301Aのサイズに比べて出来る限り大きく設定している。第2の応力緩衝体92のサイズが大きい方が樹脂封止体17の割合に対する第2の応力緩衝体91Bの割合が多くなるので、第2の応力緩衝体92によってコア33に加わる応力を確実に減少することができる。また、換言すれば、樹脂封止体17の割合が少なくなるので、応力の発生要因そのものを減少することができる。
【0101】
実施例2に係る電子回路装置1においては、第1の応力緩衝体91と併せて第2の応力緩衝体92を配設することによって、樹脂封止体17のコア33に与える応力をより一層減少することができるとともに、特に薄型化される樹脂封止体17の機械的強度をより一層向上することができる。機械的強度を高めれば、樹脂封止体17の反りや欠けを防止することができる。
【0102】
また、第2の応力緩衝体92においては、図10に示すように、特に平面形状を限定するものではないが、第1のチョークコイル301と第2のチョークコイル302との間の領域に長方形の平面形状を有する第1の開口部921が配設されている。更に、第2の応力緩衝体92においては、特に平面形状を限定するものではないが、第1のチョークコイル301と電界効果トランジスタ201との間及び第2のチョークコイル302と電界効果トランジスタ203との間に、円形の平面形状を有する第2の開口部922及び923が配設されている。第1の開口部921、第2の開口部922及び923は、いずれも、第2の応力緩衝体92の第7の表面92Aから第8の表面92Bに抜ける貫通穴により構成されている。
【0103】
この第1の開口部921、第2の開口部922及び923は、ノイズの影響を配慮しない電子部品上や電子部品間上に対応する領域において第2の応力緩衝体92の一部を取り除き、基板11の表面11Aと第2の応力緩衝体92の第8の表面92Bとの間に、樹脂封止体17の製作過程における第2の応力緩衝体92の第7の表面92A側からの樹脂の流入を促進する機能を有する。すなわち、基板11の第1の表面11Aとその大半の領域を覆う第2の応力緩衝体92との間の樹脂の流入が促進されるので、第1の表面11A上に搭載された電子部品を樹脂封止体17を用いて気密封止することができ、又製造過程における樹脂封止体17中の気泡の発生を防止することができる。また、基板11と第2の応力緩衝体92との樹脂封止体17を用いた機械的な接着力を向上することができる。
【0104】
更に、第2の応力緩衝体92においては、図10中、下側中央部であって、基板11の長辺に沿った一側面(リード1800−1808が配列された側)に対応する領域に切欠部924が配設されている。この切欠部924は、特に平面形状を限定するものではないが、凹型形の平面形状を有し、ノイズの影響を配慮しない電子部品上に対応する領域、詳細には第2の応力緩衝体92のセラミックチップコンデンサ401に対応する領域を切り欠いて製作されている。
【0105】
また、第2の応力緩衝体92においては、図10中、下側左側に切欠部925、下側右側に切欠部926が配設されている。この切欠部925及び926は、同様に平面形状を限定するものではないが、L型形の平面形状を有し、ノイズの影響を配慮しない基板11上や電子部品上に対応する領域において第2の応力緩衝体92を切り欠いて製作されている。実施例2においては、切欠部925は電子部品を搭載していない領域において第2の応力緩衝体92に配設され、切欠部926はショットキーバリアダイオード503、504、抵抗413等の電子部品を搭載した領域において第2の応力緩衝体92を切り欠いて製作されている。
【0106】
これらの切欠部924、925及び926は、前述の第1の開口部921、第2の開口部922及び923と同様に、樹脂封止体17の樹脂の流入を促進する機能を有する。従って、第2の応力緩衝体92の実効的な平面サイズは、第1の開口部921、第2の開口部922及び923並びに切欠部924、925及び926を備えているので、凸型形の平面形状を有し、基本的には第1の応力緩衝体91の平面サイズに比べて小さい。
【0107】
第2の応力緩衝体92は、図9及び図12に示すように、樹脂封止体17の薄型化を図るために、第1の応力緩衝体91の厚さに比べて薄い厚さに設定されている。第2の応力緩衝体92は基本的には第1の応力緩衝体91と同一材料の金属製板材を用いて製作され、第2の応力緩衝体92の厚さは第1の応力緩衝体91の厚さに比べて半分以下具体的には0.2mm−0.7mmに設定されている。
【0108】
更に、第2の応力緩衝体92は、基板11の第1の表面11A上のノイズの影響を配慮する電子部品上に重複して配設され、図10及び図12に示すように、第2の応力緩衝体92の一部を一定の幅寸法を持って突出させた基板接続リード92Cを通して基板11の固定電位が供給される端子に電気的に接続されている。すなわち、第2の応力緩衝体92は電子回路装置1の実稼働中において固定電位に維持され、ノイズに対してシールド効果を有する。実施例2において、基板接続リード92Cは、図10に示すように、第2の応力緩衝体92の左側短辺に沿った上側及び切欠部925に沿った下側、右側短辺に沿った上側及び切欠部926に沿った下側の合計4本が配設されている。この基板接続リード92Cは、ここでは第2の応力緩衝体92と一体に構成され、第2の応力緩衝体92の第8の表面92Bに対して基板11側に断面L型形状に折り曲げられて構成されている。固定電位は例えば回路の接地電位0Vである。
【0109】
また、基板接続リード92Cは、基板11の第1の表面11Aと第2の応力緩衝体92の第8の表面92Bとの間に電子部品等を実装するための一定の離間寸法を維持するスペーサとしても使用されている。
【0110】
第2の応力緩衝体92と第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302との間の接着層400には、前述の実施例1に係る電子回路装置1の第1の応力緩衝体91と第1のトランス3との間の接着層4と同様のものが使用される。つまり、接着層400には例えばガラス繊維クロスに熱硬化型接着剤を含浸させたプリプレグが使用される。
【0111】
[樹脂封止体の構造]
図9乃至図12に示すように、実施例2に係る電子回路装置1は、前述の実施例1に係る電子回路装置1と同様に、複数の電子部品を実装した基板11を樹脂封止体17により気密封止している。樹脂封止体17は実施例1に係る樹脂封止体17と同様に、トランスファモールド法により成形され、例えばガラスエポキシ樹脂により構成されている。
【0112】
実施例2に係る樹脂封止体17は、実施例1と同様に第1の応力緩衝体91の第5の表面91A及び側面を被覆し、更に第2の応力緩衝体92の第7の表面92A、第8の表面92B及びその側面を含む全面を被覆する。つまり、第2の応力緩衝体92は樹脂封止体17の内部に完全に埋設される。
【0113】
[電子回路装置の特徴]
このように構成される実施例2に係る電子回路装置1においては、前述の実施例1に係る電子回路装置1により得られる効果に加えて、樹脂封止体17に第2の応力緩衝体92を備えたので、樹脂封止体17の機械的強度を更に高め装置全体の薄型化並びに小型化を実現しつつ、樹脂封止体17の第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302の磁性体に加わる応力を第2の応力緩衝体92の剛性を利用して緩和することができる。更に、電子回路装置1においては、第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302の磁性体からの放熱効率を優れた熱伝導性を有する第2の応力緩衝体92を利用して高め、結果的に第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302の磁性体の透磁率を向上して電気的特性を向上することができる。
【0114】
更に、実施例2に係る電子回路装置1においては、第2の応力緩衝体92に第1の開口部921、第2の開口部922及び923並びに切欠部924−926を備え、基板11と第2の応力緩衝体92との間に樹脂封止体17の樹脂の流入を促進することができる。
【0115】
更に、実施例2に係る電子回路装置1においては、ノイズの影響を配慮した電子部品上に第2の応力緩衝体92を備え、この第2の応力緩衝体92を固定電位に維持するようにしたので、耐ノイズ性を向上することができ、電気的特性を向上することができる。
【0116】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明を実施例1及び実施例2によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものでない。本発明は様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術に適用することができる。
【0117】
例えば、前述の実施例1に係る電子回路装置1は第1のトランス3等を有するDC−DCコンバータに本発明を適用した例であり、実施例2に係る電子回路装置1は第1のチョークコイル301及び第2のチョークコイル302を有するPFC回路に本発明を適用した例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、磁性体を用いて構築される電子部品を備え、この電子部品を樹脂封止体によって封止した電子回路装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、薄型化並びに小型化を実現しつつ、樹脂封止体の磁性体に加わる応力を緩和することができるとともに、磁性体からの放熱効率を高め、磁性体の透磁率を向上することができる電子回路装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1…電子回路装置
11…基板
12…トランス基板
17…樹脂封止体
180−193、1800−1808、1900−1903…リード
2…トランジスタ部
21…第1のIGFET
22…第2のIGFET
201−204…電界効果トランジスタ
205、207…チップトランジスタ
206…集積回路
3…第1のトランス
33…コア
301…第1のチョークコイル
302…第2のチョークコイル
4、400…接着層
41−43…コンデンサ
401−404、508…セラミックチップコンデンサ
411、412、414、415…チップ抵抗
413…抵抗
5、501…ダイオード
502…アキシャルダイオード
503、504…ショットキーバリアダイオード
6…制御部
7…第2のトランス
8…温度検出部
801、802…フェライトビーズ
91…第1の応力緩衝体
92…第2の応力緩衝体
921…第1の開口部
922、923…第2の開口部
924−926…切欠部
92C…基板接続リード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面及びそれに対向する第2の表面を有する基板と、
前記基板に前記第1の表面から前記第2の表面に渡って配設され、前記第1の表面側に第3の表面を有し、前記第2の表面側に第4の表面を有する磁性体と、
第5の表面及びそれに対向する第6の表面を有し、前記磁性体の前記第4の表面上に前記第5の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体と、
前記基板、前記磁性体及び前記第1の応力緩衝体の前記第5の表面を被覆する樹脂封止体と、
を備えたことを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
前記第1の応力緩衝体の前記第5の表面のサイズは、前記磁性体の第4の表面のサイズに比べて大きく、前記基板の前記第1又は前記第2の表面のサイズと同一かそれに比べて小さいことを特徴とする請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項3】
前記第1の応力緩衝体と前記磁性体との間に、ガラス繊維クロスに熱硬化型接着剤を含浸又は塗布した接着層が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項4】
第1の表面及びそれに対向する第2の表面を有する基板と、
前記基板に前記第1の表面から前記第2の表面に渡って配設され、前記第1の表面側に第3の表面を有し、前記第2の表面側に第4の表面を有する磁性体と、
第7の表面及びそれに対向する第8の表面を有し、前記磁性体の前記第3の表面上に前記第8の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第2の応力緩衝体と、
前記基板、前記磁性体及び前記第2の応力緩衝体の前記第7の表面及び前記第8の表面を被覆する樹脂封止体と、
を備えたことを特徴とする電子回路装置。
【請求項5】
前記第2の応力緩衝体の前記第8の表面のサイズは、前記磁性体の第3の表面のサイズに比べて大きく、前記基板の前記第1の表面又は前記第2の表面のサイズに比べて小さいことを特徴とする請求項4に記載の電子回路装置。
【請求項6】
前記基板の前記第1の表面上において前記磁性体の周囲に配設された機能が異なる第1の電子部品及び第2の電子部品を更に備え、
前記第2の応力緩衝体は、前記第2の電子部品上を除き、前記磁性体の前記第3の表面上及び前記第1の電子部品上に重複して配設されていることを特徴とする請求項4に記載の電子回路装置。
【請求項7】
前記第2の応力緩衝体は固定電位に接続されることを特徴とする請求項6に記載の電子回路装置。
【請求項8】
第1の表面及びそれに対向する第2の表面を有する基板と、
前記基板に前記第1の表面から前記第2の表面に渡って配設され、前記第1の表面側に第3の表面を有し、前記第2の表面側に第4の表面を有する磁性体と、
第5の表面及びそれに対向する第6の表面を有し、前記磁性体の前記第4の表面上に前記第5の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体と、
第7の表面及びそれに対向する第8の表面を有し、前記磁性体の前記第3の表面上に前記第8の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第2の応力緩衝体と、
前記基板、前記磁性体、前記第1の応力緩衝体の前記第5の表面、前記第2の応力緩衝体の前記第7の表面及び前記第8の表面を被覆する樹脂封止体と、
を備えたことを特徴とする電子回路装置。
【請求項1】
第1の表面及びそれに対向する第2の表面を有する基板と、
前記基板に前記第1の表面から前記第2の表面に渡って配設され、前記第1の表面側に第3の表面を有し、前記第2の表面側に第4の表面を有する磁性体と、
第5の表面及びそれに対向する第6の表面を有し、前記磁性体の前記第4の表面上に前記第5の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体と、
前記基板、前記磁性体及び前記第1の応力緩衝体の前記第5の表面を被覆する樹脂封止体と、
を備えたことを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
前記第1の応力緩衝体の前記第5の表面のサイズは、前記磁性体の第4の表面のサイズに比べて大きく、前記基板の前記第1又は前記第2の表面のサイズと同一かそれに比べて小さいことを特徴とする請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項3】
前記第1の応力緩衝体と前記磁性体との間に、ガラス繊維クロスに熱硬化型接着剤を含浸又は塗布した接着層が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項4】
第1の表面及びそれに対向する第2の表面を有する基板と、
前記基板に前記第1の表面から前記第2の表面に渡って配設され、前記第1の表面側に第3の表面を有し、前記第2の表面側に第4の表面を有する磁性体と、
第7の表面及びそれに対向する第8の表面を有し、前記磁性体の前記第3の表面上に前記第8の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第2の応力緩衝体と、
前記基板、前記磁性体及び前記第2の応力緩衝体の前記第7の表面及び前記第8の表面を被覆する樹脂封止体と、
を備えたことを特徴とする電子回路装置。
【請求項5】
前記第2の応力緩衝体の前記第8の表面のサイズは、前記磁性体の第3の表面のサイズに比べて大きく、前記基板の前記第1の表面又は前記第2の表面のサイズに比べて小さいことを特徴とする請求項4に記載の電子回路装置。
【請求項6】
前記基板の前記第1の表面上において前記磁性体の周囲に配設された機能が異なる第1の電子部品及び第2の電子部品を更に備え、
前記第2の応力緩衝体は、前記第2の電子部品上を除き、前記磁性体の前記第3の表面上及び前記第1の電子部品上に重複して配設されていることを特徴とする請求項4に記載の電子回路装置。
【請求項7】
前記第2の応力緩衝体は固定電位に接続されることを特徴とする請求項6に記載の電子回路装置。
【請求項8】
第1の表面及びそれに対向する第2の表面を有する基板と、
前記基板に前記第1の表面から前記第2の表面に渡って配設され、前記第1の表面側に第3の表面を有し、前記第2の表面側に第4の表面を有する磁性体と、
第5の表面及びそれに対向する第6の表面を有し、前記磁性体の前記第4の表面上に前記第5の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第1の応力緩衝体と、
第7の表面及びそれに対向する第8の表面を有し、前記磁性体の前記第3の表面上に前記第8の表面を向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された第2の応力緩衝体と、
前記基板、前記磁性体、前記第1の応力緩衝体の前記第5の表面、前記第2の応力緩衝体の前記第7の表面及び前記第8の表面を被覆する樹脂封止体と、
を備えたことを特徴とする電子回路装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−19150(P2012−19150A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156950(P2010−156950)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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