説明

電子弦楽器

【課題】 電子弦楽器の発光機能を音楽演奏用としてのみならず多様な用途の楽しみに利用する。
【解決手段】 電子弦楽器は、ボディ1においてトリガ入力手段(擬似弦)10を有し、ネック2において列状に配列されたフレット間操作子20にはLEDが内蔵され、各フレット間操作子20自体が個別に発光しうる。電子弦楽器は、所定のゲームモードを選択する手段を有し、ゲームモードでは、トリガ入力手段10の操作に応じて、フレット間操作子20が所定の発光開始位置から配列方向に沿って順次発光し、該操作の強さに応じた移動量だけ光が往復移動するよう発光制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばギターやウクレレ等のような構造のアコースティック弦楽器を模擬して構成された弦楽器型の電子楽器(電子弦楽器)であって、ゲーム機としての機能を兼ね備えた電子弦楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られる電子楽器、殊に電子鍵盤楽器においては、通常の音楽演奏機能に加えて、音感学習機能を備えたものが知られている。従来の電子鍵盤楽器における音感学習機能の一例には、次のようなものがあった。先ず、予め任意の音高を「的(まと)」として設定しておき、ユーザが任意の鍵を押鍵すると、低音から高音に向けて音高が遷移する楽音が発生され、不定の時間中、該音高の遷移が繰り返された後に、ランダムに選択された音高の楽音が、停止音として発音される。次いで、予め「的」として設定した任意の音高の楽音が鳴り、停止音と該「的」の音の音高が一致しているかをユーザ自身が聴覚によって確認しつつ、音高の一致/不一致を報知する動作(例えば、一致/不一致を知らせるメロディ音の発音等)が行われる。前記音高の遷移が繰り返される時間長や、音高の高低遷移の際の高低差幅は、打鍵強度の強弱に応じて決定される。これにより、ある種の「的当てゲーム」を楽しみながら、音感及びタッチ感の学習を図ることが可能とされる。更に、各鍵に対応したLEDを備え、「的(まと)」として設定された音高に対応する鍵を発光表示し、且つ、音高の遷移に応じて、発音中の音高に対応する鍵を順次発光表示することで、更にゲーム機能として興趣性を増すことができた(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
また、従来から知られる電子楽器には、自然楽器のギターを模擬して構成された電子弦楽器があった。この種の電子弦楽器では、自然楽器のギターと同様に、ボディとネックを有し、ボディ側に設けられた弦状の複数のトリガ発生手段と、ネック上のフレット位置に対応して設けられた複数の音高指定スイッチとの操作状態の組み合わせに応じて、所定の音高の楽音を発生させる。音高指定スイッチは、ネック部の長手方向に沿う列を一組として、各トリガ発生手段に対応する列を形成しており、各音高指定スイッチ毎に設けられたLEDを、演奏の手本となる自動演奏データに基づき点灯制御することで、実行すべき演奏操作(撥弦操作やフレット間操作子の押下操作)を提示する演奏ガイド機能を実現できた(例えば、下記特許文献2参照)。
【特許文献1】特公平3−10352号公報
【特許文献2】特開2002−258866号公報
【0004】
しかし、上記のような電子弦楽器におけるLEDの点灯制御は、演奏ガイド機能において手本となる自動演奏データに基づき、実行すべき演奏操作(撥弦操作やフレット間操作子の押下操作)を提示するのみであったため、面白みがなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、電子弦楽器に備わる発光機能を、音楽演奏用としてのみならず、多様な用途の楽しみに利用することができるような電子弦楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ボディ部とネック部を有する電子弦楽器であって、前記ボディ部及び/又はネック部に設けられた少なくとも1つの操作手段と、前記ネック部及び/又はボディ部において、前記操作手段に対応して整列して配設された複数の発光部を含む発光手段と、前記操作手段の操作に応じて楽音を発生する楽音発生手段と、少なくとも楽器演奏モード及びゲームモードの何れかが選択可能なモード設定手段と、前記ゲームモードにおいて、前記操作手段の操作に応じて、前記発光手段に含まれる複数の発光部を所定の発光開始位置から所定の折り返し位置に向かって順次発光させる往路発光制御と、該所定の折り返し位置から該所定の発光開始位置に向かって順次発光させる復路発光制御とを行う発光制御手段とを有することを特徴とする電子弦楽器である。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、ネック部及とボディ部のいずれか一方又はその両方に配設された複数の発光部は操作手段に対応して整列され、発光制御手段は、ゲームモードにおいて、前記操作手段の操作に応じて、複数の発光部を所定の発光開始位置から所定の折り返し位置に向かって順次発光させる往路発光制御と、該所定の折り返し位置から該所定の発光開始位置に向かって順次発光させる復路発光制御とを行う。当該電子弦楽器においてゲームモードを選択され、ユーザが操作手段の操作を行うことで、発光状態にある発光部が、その配列に沿って順次移り変わってゆく。発光状態にある発光部の移り変わりは、所定の発光開始位置から所定の折り返し位置の間で往復移動するよう行われる。前記所定の折り返し位置は、操作手段の操作の強さに応じて設定されてよい。ユーザは、発光の位置が再び発光開始位置に戻ってきたときに再操作することで、発光の移動を持続させることができる。これにより、発光部の発光の移動を利用して、ある種の羽根突きゲームをおこなうことができ、このゲームを楽しみながら、操作手段の操作タイミングや強さ(タッチ感)等の演奏感覚を体得できるようになる。更に、発光の移動に楽音の発生制御を組み合わせることで、音感や楽器の特徴等の学習を図ることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照してこの発明の一実施例について説明する。当該実施例において、この発明に係る電子弦楽器の一例として、ウクレレ型の電子弦楽器を示す。
【0009】
図1(a)は、この実施例に係るウクレレ型電子弦楽器の外観を上面から見た平面図であり、(b)は、(a)のウクレレを裏面から見た図である。図示の通り当該ウクレレ型電子弦楽器の全体的な外観形状は、通常のアコースティックのウクレレを模擬したもので、大別して、ボディ1と、該ボディ1の一端から突き出したネック2とを有する筐体から構成され、両部材の形状及び寸法はアコースティックのウクレレと概ね同様となっている。ボディ1の略中央には、アコースティックのウクレレの第1弦〜第4弦に対応して、各弦を模擬した金属ワイヤ製の擬似弦10a,10b,10c及び10dを含むトリガ入力手段10が配設されている。演奏者は自然楽器において右手でウクレレの弦を撥弦する(ストロークする又は爪弾く)ようにして擬似弦10a〜10dを操作することで発生させる楽音の発音タイミングを指示できる。一般に、ウクレレ等の弦楽器においては、担当する音域の高いものから低いものに向かって順に1弦、2弦、3弦…という弦番号が与えられており、この実施例においても、その弦番号を採用する。図1(a)においては、擬似弦10aが1弦、擬似弦10bが2弦、擬似弦10cが3弦、擬似弦10dが4弦に、それぞれ相当する。
【0010】
ネック2の表面(アコースティックのウクレレでいう指盤部)には、ネック2の先端部(ヘッド3)側から順に第1〜第12フレット4となる12個の部材がネック2の長手方向に沿って配列されている。各フレット4の長手方向相互間隔は、アコースティックのウクレレに倣い、高音域であるほど、つまり、ボディ1側に近いハイポジションほど、狭くなっている。当該電子弦楽器においては、各フレット4の部材は振動する弦の長さを規定するという自然楽器におけるウクレレのフレットとしての機能を果たすものではなく、次に述べる音高指定手段の操作位置の目安となるものである。ヘッド3とそれに隣接する第1のフレット4の間、並びに、他の互いに隣接する各フレット4の間には、複数のフレット間操作子20(音高指定手段)が配置されている。以下において、各フレット間操作子20が配置された部分を指してフレット4という。フレット間操作子20は、ネック2の長手に沿う並び方向(図1の矢印A方向)に、第1〜第12フレット4に対応する12段、ネック2の幅方向(図1の矢印B方向)に、擬似弦10a,10b,10c及び10dに対応して4段の計48個が、マトリックス状に配設されている。すなわち、矢印A方向に沿って1列に配列された12個のフレット間操作子20が1つの擬似弦(10a〜10d)に対応する1組の列を成し、このフレット間操作子20の列が矢印B方向に沿って4列に並列される。以下、この明細書中において、単に「列」といった場合は、このフレット間操作子20の配列を指す。なお、周知の通り、ウクレレ等の弦楽器では、演奏者が押さえたフレット4の位置がヘッド側からボディに向かうに従って、同一の弦において発音される楽音の音高が低音域から高音域に移行する。この実施例においても、それを模擬して、各擬似弦10a〜10dに対応するフレット間操作子20の各列において、ヘッド3側の第1フレット4からボディ1側の第12フレット4に向かうに随って、各フレット間操作子20に割り当てられた音高が順次高くなる。また、同一列において、矢印A方向に隣接するフレット間操作子20同士での音高差は、1フレットで半音分に相当する音高差がある。
【0011】
図1(c)は、(a)におけるC−C矢視の断面を拡大して示した図である。(c)を参照して、フレット間操作子20の構成説明をする。フレット間操作子20は、自身が配設されたフレット間(図において4a及び4b)の間隔にほぼ相当する長さを有すると共に、上面から見た矢印B方向の幅(図1(a)を参照)が擬似弦(10a〜10d)の径と概ね同等の幅を持つ部材であって、例えば透光性を有する樹脂等によって形成される。各フレット間操作子20はそれを挟設したフレット4a,4bの相互間隔に略対応する長さを有することから、図のようにハイポジションフレット間操作子20ほど、その長さが短くなっている。
【0012】
フレット間操作子20の下側には、プリント回路基板21が配設され、該基板21上には、LED(発光部)22及び固定接点とそれに対応する可動接点とからなるスイッチ23が配設されている。スイッチ23は該フレット間操作子20の押下に応じて、固定接点と可動接点が接触してスイッチオン状態が検出され、押下圧力が解かれると、非押下位置に復帰してオフ状態となる。これにより当該フレット間操作子20の操作のオン/オフ状態が検出される。48個の各フレット間操作子20は同様な構成要素からなる。すなわち、48個の各フレット間操作子20には、夫々個別にLED22が具備されており、各フレット間操作子20毎に個別に発光制御されうる。
【0013】
図1(b)において、ヘッド3の裏面には、ウクレレの糸巻き(ペグ)を模擬した4つのダイヤル式設定器5a,5b,5c及び5dが配設されており、これらダイヤル式設定器5a〜5dは、各種動作モードの切り替えや、音色設定(楽器種類選択)、音量設定、音調設定(チューニング)、テンポクロックの設定等を行うものである。
ここで、4つのダイヤル式設定器5a〜5dのうち、動作モードの切り替えを指示する設定器を「ダイヤルM」と称する。「ダイヤルM」によって設定可能なモードには、大別して、(1)通常の楽器演奏モード:すなわち、操作子の操作に応じて楽音を発音するモードと、(2)トリガ入力手段10の操作に応じてこの実施例に係るゲームが実行されるゲームモード(モードG)とがある。
【0014】
図2は、この発明に係るゲームモードの概要を説明するための概念図であって、図1の電子弦楽器を上から見た概略図を示す。ゲームモードにおいては、擬似弦10a〜10dのうちの何れかを撥弦(トリガ入力)に応じて、LED22が配列(第1弦〜第4弦毎の列)方向に沿って順次発光制御されることで、所定の発光開始位置から折り返し位置の間でLED22の発光がネック2の長手方向に沿って往復移動する。前記発光開始位置は、例えば第12フレットのLEDであり、これは、予め決定されている。また、前記折り返し位置はトリガ入力の強さ(タッチの強さ)に応じて可変的に決定されるもので、トリガ入力が強い程、発光開始位置(例えば第12フレットのLED)から、往路方向に遠く離れた位置のLEDに設定される。一例として、図2において、トリガ入力の強さに応じたLED22の発光移動の軌跡を4通り例示する。ゲームは、ユーザによって任意の擬似弦10a〜10dが撥弦(トリガ入力)されると開始する。図に例示する通り、ユーザによって入力されたトリガの強さに応じた移動量でLEDの発光が、発光開始位置(例えば第12フレット)から折り返し位置の間を往復移動する。LEDの発光の移動の復路の列は、往路の列とは異なりうる。ユーザは、LEDの発光が再び発光開始位置に戻って来た時のタイミングに合わせて、対応する疑似弦のトリガ入力を再び行うことで、LEDの発光の往復移動を持続させる。すなわち、いったん発光開始位置から往路方向に移動した光が、折り返し位置に達し、復路方向に移動方向を転換して、再び発光開始位置へ戻ってきたら、トリガ再入力により、それを打ち返す、という要領で、ある種の「羽根突き」のようなゲームを行うことができる。図に示すように、トリガ入力の強さの最大値に対応する折り返し位置をネック2の端(第1フレット)から外れた位置に想定することで、LEDの発光の移動軌跡中に非発光区間を含ませる等、より一層ゲーム性を増すことが可能である。このような、擬似弦10a〜10dの撥弦操作(トリガ入力)に応じた「羽根突き」ゲームにより、トリガ入力のタイミングや強さ(タッチ感)等の演奏感覚を自然と体得できるようになる。なお、図においては、移動軌跡は「弱いタッチ」、「中くらいのタッチ」、「強いタッチ」、「最大のタッチ」として、4つの軌跡が描かれているが、折り返し位置の設定は図示の4点に限らず、もっと細かい分解能で設定されていてよい。また、ゲームモードにおいて、発光中のLEDに対応する音高の楽音が発音される等、適宜の発音制御を行うことで、LEDの発光の移動に伴い、移動音を発音させてもよい。
【0015】
また、図1(b)において、4つのダイヤル式設定器5a〜5dのうち、音色設定(楽器種類選択及び/又はチューニング設定)を行うための設定器を「ダイヤルK」と称する。これによれば、任意に選択した楽器種類及び/又はチューニング設定に対応する設定で、いずれの操作子20も押さない状態における各擬似弦10a〜10dの開放弦(発音音高)のピッチをセットすることができる。標準的なウクレレの設定では、1弦(擬似弦10a)から4弦の順に、音名「A」,音名「E」,音名「C」,音名「G」と設定される。この実施例において、「開放弦のピッチ」のデフォルト設定では、標準的なウクレレの設定でチューニングがなされる。
【0016】
また、ボディ1の裏面に示す符号6は、電池ボックスの蓋部であり、該電池ボックス内に電池を収納しうる。この実施例に示すウクレレ型電子弦楽器は、電池を電源にして作動可能である。また、ボディ1裏面の端部に形成された凹部1aには、図示しない電源スイッチ、音量つまみ、ヘッドフォン/外部出力端子、外部入力端子、USB規格端子等、各種信号入出力用のインターフェースなどが設けられている。また、図1(a)において、ボディ1上面の略中央部であって、トリガ入力手段10の下側の、アコースティック・ウクレレのサウンドホールに対応する位置には、スピーカを内蔵した放音口7が配設される。
【0017】
また、各擬似弦10a〜10dの両端部にはそれぞれ脚部11a〜11dが形成されており、各擬似弦10a〜10dは、該脚部11a〜11dを介して、演奏者による撥弦操作に応じて振動可能にボディ1上に支持される。各擬似弦10a〜10dの一方の脚部11a〜11dは弦支持部8に支持されている。弦支持部8内には各擬似弦10a〜10dに対応してピエゾセンサ等適宜の振動検出センサが設けられており、各擬似弦10a〜10dの振動は各々が対応するセンサによって個別に検出される。
各擬似弦の振動検出構造について簡単に説明すると、弦支持部8内には、各擬似弦10a〜10dの脚部11a〜11dに夫々対応して一対の弾性板が設けられており、複数の弾性板の対は、各々、対応する各擬似弦10a〜10dの振動に連動するように構成されている。該一対の弾性板において、個々の板面には、それぞれ、適宜の振動検出センサ(例えばピエゾセンサ等)が配設される。擬似弦10a〜10dがダウンストローク(上から下向きに撥弦)又はアップストローク(下から上向きに撥弦)されると、操作された擬似弦に対応する一対の弾性板の何れか一方が変形/振動し、該変形/振動した弾性板上に配設された振動検出センサが検出信号を発生する。これにより、各擬似弦10a〜10dの撥弦方向(ダウンストローク又はアップストローク)を検出することができる。すなわち、一対の弾性板の夫々に設けられた各振動検出センサは、各々、ダウンストローク検出用のセンサ及びアップストローク検出用のセンサとして機能する。なお、上記の振動検出構造の構成については、上記特許文献2に詳しく記載されている。また、以下の説明では、振動検出センサとしてピエゾセンサを適用した例について説明する。
なお、各擬似弦10a〜10dを構成する金属ワイヤは導電性であり、各擬似弦10a〜10dは、ハムノイズ検出センサに電気的に接続されている。そして、このハムノイズ検出センサで検出するハムノイズにより、各擬似弦10a〜10dへの演奏者の手指の接触を検出することができる。この擬似弦に対する指の接触を、この明細書中では「指接弦」という。また、各擬似弦10a〜10dの金属ワイヤはアコースティックのウクレレに倣い各ワイヤ毎に径の幅が異なっていてよい。
【0018】
図3は、図1に示すウクレレ型電子弦楽器の電気的ハードウェア構成を機能的に示すブロック図である。図3に示すとおり、ウクレレ型電子弦楽器は、CPU60(発光制御手段の一部)、RAM61、ROM62、音源63(楽音発生手段)、表示制御回路(発光制御手段)64、自動演奏メモリ65、フレットスイッチ群66(音高指定手段)、各擬似弦10a〜10dの各々に対応したトリガ検出ブロック67、ダイヤル式設定器5a〜5dを含むその他スイッチ群68、通信インターフェース(I/F)76及びオフレベル検出77を含み、各装置間がバス75を介して互いに接続される。音源63にはD/A変換器78及びアンプ79を介してサウンドシステムSSが接続され、オフレベル検出77は音源63にも接続されている。表示制御回路64には発光部(LEDに相当)220が接続されている。
【0019】
フレットスイッチ群66は、上述した48組のフレット間操作子20で構成される。各フレット間操作子20の検出信号はピッチデータの元となるものであり、CPU60に供給される。各トリガ検出ブロック67は、各擬似弦10a〜10dに対応して設けられている。前述の通り、各擬似弦10a〜10dの振動検出構造は、一対の弾性板に夫々設けられたダウンストローク検出用のピエゾセンサ及びアップストローク検出用のピエゾ振動検出センサからなる。このため、トリガ検出ブロック67は、各擬似弦毎にダウンストローク検出用及びアップストローク検出用の2つがそれぞれ設けられることになり、実質的には全部で8つ存在することになる。同図では、図示の便宜上、ダウンストローク検出用のピエゾセンサ15xを具える1つのトリガ検出ブロック67のみを代表的に示している。なお、1つのセンサで、ダウンストローク及びアップストロークの区別なしにトリガを検出する構成にすれば、振動検出センサは各弦につき1つでよいので、トリガ検出ブロック67は全部で4つであってよい。
【0020】
ピエゾセンサ15xからの検出信号は、整流部69で整流され、エンベロープ検出部70でエンベロープ曲線が形成され、P・H(ピークホールド)検出部71で波形のピークが検出され、スレッショルド比較部72による比較の結果、ピークが所定の閾値を超えた場合は、撥弦有りと看做し、A/D変換器73によって検出信号がディジタル変換される。この変換されたデジタルデータは、撥弦の強さを示す例えば8ビットのデータであり、そのうちの1ビットのデータからトリガ検出部74によって撥弦があったことが検出されると共に、デジタルデータはA/D変換器73からCPU60に撥弦強さ信号(発音強さデータ)として供給される。
【0021】
同じ弦に対するアップストローク検出用のトリガ検出ブロック67並びに図示を省略した他の全てのトリガ検出ブロック67においても、検出信号を処理する構成は上記と同様である。
【0022】
CPU60は、当該電子弦楽器の全体的な動作の制御を行う。RAM61は、各種データを記憶し、CPU60がプログラムを実行する際のワークエリアとしても機能する。ROM62は、CPU60が実行する制御プログラム等を格納しており、該制御プログラムには、当該電子弦楽器における各種機能(通常の楽器演奏モードや、前述したゲームモード等)を実行するための制御プログラムが含まれる。音源63は、CPU60によって発音タイミング及びタッチ等がコントロールされ、このコントロール下において、楽音形成のためにプリセットされたパラメータを時変動させながら楽音を発生するセクションである。音源ソースが波形メモリである場合は、波形ROM及びその読み出し手段も含んで構成される。サウンドシステムSSは、アンプ79及びスピーカ80からなり、A/D変換器73からの楽音信号を音響信号に変換する。また、オフレベル検出手段77は、音源63から出力される楽音信号からオフレベル信号を検出してそれをCPU60に供給する。なお、音源63は擬似弦10a〜10dに夫々対応する4つの発音チャンネルch1〜ch4にて各擬似弦10a〜10d毎に発音させることが可能である。
【0023】
表示制御回路64はCPU60による制御に基づき発光部220の表示を制御する。前述の通り発光部220は複数のフレット間操作子20の各々に設けられた複数のLED22で構成される。
【0024】
自動演奏メモリ65は、例えばボディ1に具わるメモリスロット(図示省略)に挿入されたメモリカード等であり、この自動演奏メモリ65には自動演奏用のデータが記憶されうる。通信I/F部76は、複数種類のインターフェースを有し、他のMIDI機器等の外部装置からMIDI信号を入力することや、MIDI信号を外部装置に出力することの他、パーソナルコンピュータ等との間でデータの送受信を行うことや、インターネット等の通信回線に接続すること等もできるように構成されている。
【0025】
その他スイッチ群68は、ヘッド部3に設けられた4つのダイヤル式設定器5a〜5d(図1(b)参照)を含み、前述したような動作モードの切り替えや、音色設定(楽器種類選択)、音量設定等の各種パラメータ設定指示がCPU60へ供給される。
また、図3において、テンポクロック発生部TCLにおいて発生するテンポクロックパルスは、後述するT−I処理の割り込みタイミングの時間間間隔を指示するT−I命令としてCPU60に供給される。前記テンポクロックパルスの周期は、その他スイッチ群68に含まれるダイヤル式設定器5a〜5dの何れかによって設定変更しうる。すなわち、前記ダイヤル式設定器の回転操作によって、図3に示す可変抵抗器VRの抵抗値を可変して、該テンポクロックパルスの周期を変更できる。これにより、ゲームモードにおけるLEDの発光の移動タイミングを任意に可変することができる。
【0026】
図4は、当該電子弦楽器のメインルーチンの処理手順を示すフローチャートである。以下の処理では時分割処理により各擬似弦10a〜10dに対応する4つの発音チャンネルについて処理するものとし、図中の「ch」は「チャンネル」の略である。なお、各擬似弦10a〜10dの夫々に対応するチャンネル番号「1」〜「4」の4つのチャンネルchが使用される。「(ch)」のようにchを変数として使用する場合は、1〜4の何れかのチャンネル番号を示す。PIT(n)は、発音する楽音のピッチデータ(キーコード)を格納するレジスタである。ここで変数nは、ピッチをMIDI値で表した数値(音高数値)をとる。例えば、音名「C3」(中央のC)であれば、MIDI値は「60」である。PI(n)は開放弦用のピッチデータを格納する開放弦用プリセットレジスタであり、変数nは前記と同様にMIDI値で表した数値である。TC(ch)はトリガ検出部74の検出信号に基づく撥弦センサ値(撥弦強さ信号)をタッチデータとして格納するレジスタである。撥弦センサ値は、トリガ検出部74の検出信号に応じて第1のタッチデータ出力テーブルから出力される値であり、第1のタッチデータ出力テーブルは、該検出信号に応じた撥弦センサ値を0〜127の数値に割り当てたテーブルである。このTC(ch)の値が、楽音の発音音量に対応する。また、「m」は、スイッチオンされたフレット間操作子20の番号を格納するレジスタである。
【0027】
図4に示すように、先ず、ステップS1において所定の初期化処理が行われた後、ステップS2において、各種パラメータ設定処理を行う。各種パラメータ設定処理の手順の一例は図5に示すように行われる。各種パラメータ設定処理は、ヘッド部3に設けられた4つのダイヤル式設定器5a〜5dの操作に応じた各種パラメータ設定を行う処理である。図示のフローチャートは、図示及び説明の便宜上、「ダイヤルK」と「ダイヤルM」の設定処理が抽出されている。ステップS30では「ダイヤルK」の設定に変化があったかどうかを判断する。「ダイヤルK」によるチューニング設定値Kは、「0」〜「7」の8つの値の何れかをとる。ダイヤルKの操作によりセットされたK値に応じて、後述する開放弦ピッチ設定テーブルから各弦毎の開放弦ピッチデータを出力し、各弦毎の開放弦用プリセットレジスタPI(n)に前記テーブルから出力したデータをセットする(ステップS30〜S32)。
【0028】
図6(a)は各弦毎の開放弦のピッチをチューニング設定するための開放弦ピッチ設定テーブルの一例を示す図である。図6(a)において、開放弦ピッチ設定テーブルは、ダイヤルKの設定値K(K0〜K7)と、該設定値Kに応じて各弦(第1〜第4弦)の開放弦用プリセットレジスタPI(n)に設定されるべき音高値(ノートデータ)からなる。ダイルKの設定値K(K0〜K7)に応じて楽器種類(又はチューニングの種類)が選択され、該選択された楽器種類又はチューニングに応じて、各擬似弦10a〜10dの開放弦のピッチがセットされる。図において、第1弦の開放弦用プリセットレジスタPI(n)をPI−1(n)、第2弦の開放弦用プリセットレジスタPI(n)をPI−2(n)、第3弦の開放弦用プリセットレジスタPI(n)をPI−3(n)、及び、第4弦の開放弦用プリセットレジスタPI(n)をPI−4(n)として示している。また、図6において、各楽器種類(設定値K)に応じて各弦に設定されるべき各音名(A3,E3…など)に対応するノートデータはMIDI値で表現されている。図において各音名の脇の括弧内に記入された数値がMIDI値に相当する。なお、図6(a)に示す楽器種類(又はチューニングの種類)やテーブル構成は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0029】
図5のパラメータ設定処理に戻ると、ステップS33において、「ダイヤルM」の設定に変化があったかどうかを判定し、ステップS34では「ダイヤルM」の操作によりセットされた値にM値をセットする。設定される動作モードには、前述の通り、大別して、(1)通常の楽器演奏モード:すなわち、操作子の操作に応じて楽音を発音するモードと、(2)この実施例に係るゲームモード(モードG)がある。ステップS34の処理により、動作モードの設定が行われる。
【0030】
更に、その他パラメータ設定操作子の設定が変更されていれば(ステップS35のyes)、ステップS36では、前記変更されたその他のパラメータ設定に応じて、新規に設定された値で各種パラメータをセットする。その他のパラメータとしては、例えばテンポクロックの設定がある。この実施例では、テンポクロックの周期は、一例として、1分間に40拍〜140拍の間で設定しうるものとする。
なお、この実施例において、上記各種パラメータの設定を行う操作子は、ヘッド3に設けられたダイヤル式設定器5a〜5dである。これらダイヤル式設定器5a〜5dは、多機能設定器として利用でき、該各種パラメータ設定の他に、例えば各擬似弦10a〜10d毎の開放弦ピッチのチューニングにも利用できる。すなわち、4つのダイヤル式設定器5a〜5dは各擬似弦10a〜10dに個別に割り当てられ、アコースティック弦楽器のペグを巻くのと同じ要領で、各々対応する擬似弦毎にチューニングを行うことができる。ダイヤル式設定器5a〜5dの機能の切り替えは、例えば、専用の切り替えスイッチや、或いは、所定の複数のフレット間操作子の同時押さえ操作等、適宜の方法で指示できてよい。
【0031】
以上に説明した各種パラメータ設定処理が終わると、図4のステップS3に処理がリターンし、ステップS3以降の処理で楽音発生及びフレット間操作子の発光制御を行う。ステップS3〜S5のループでは、音源63における擬似弦10a〜10dに夫々対応する4つの発音チャンネルchについて楽音発生の終了に対応するオフ(オフレベル信号)受信時の処理を行う。すなわち、ステップS4において、現時点で発音中の発音チャンネルにおいて楽音信号レベル(エンベロープ信号のレベル)が減衰して極めてゼロに近くなると、オフレベル検出手段77(図3参照)がオフレベル信号を出力する。CPU60がオフレベル信号を受信すると(ステップS4のyes)、ステップS5では、当該発音チャンネルchの全データをリセットする。
【0032】
ステップS6では、動作モードのパラメータMの値によって、現在の動作モードがゲームモード(モードG)に設定されているか、通常の演奏モードに設定されているどうかを判断する。
【0033】
先ず、通常の演奏モードにおける処理について説明する。
通常の演奏モードに設定されていれば(ステップS6のno)、ステップS7〜S14において、フレット間操作子Fsw(図1の符号20)のオン・オフ操作に応じて指示されたピッチデータを取り込むための処理を行う。ステップS7において全てのフレット間操作子Fswを走査し、ステップS8ではフレット間操作子Fswのオン又はオフイベントの有無を判定する。オフイベント時を説明をすると、当該発音チャンネルの操作子の列において、他に何もイベントがなければ、ステップS11において開放弦の扱いとなり(yes)、ステップS14において、当該チャネンルchの開放弦用プリセットレジスタPI(n)のデータが、ピッチレジスタPIT(n)に入る。この状態で、後述のステップS9のnoにより、前回状態の開放弦データがピッチレジスタPIT(n)に入る。すなわち、フィンガリングオフイベント時に対応して、当該発音チャンネルchの操作子の全てオフのイベントのときに、開放弦と判断される。
また、上記ステップS8において検出されたオフイベントが当該チャンネルchのフレット間操作子列における最後のオフイベントでなければ、つまり、当該チャンネルchのフレット間操作子列に属する他のフレット間操作子Fswがオン状態にあり、当該チャンネルchが開放弦の状態になっていなければ、当該チャンネルchのフレット間操作子の列において、現在オン中のフレット間操作子Fswのうちの最高音に相当するものを優先する処理を行い(ステップS12)、該現在オン中の操作子のうちの最高音に相当するフレット間操作子Fswのフレット番号mを用いて、ステップS13のピッチデータ設定処理を行う。
【0034】
また、ステップS8において、フレット間操作子Fswのオンイベントが検出された場合は、処理をステップS9に分岐する。ステップS9では、オンイベントがあったフレット間操作子Fswに対応する擬似弦の発音チャネンルchが現在使用中かどうか、つまり、楽音発音中かどうかを判定し、未使用(no)であれば、ステップS13に進める。ステップS13では、当該イベントに対応するピッチデータを発音用のピッチレジスタPIT(n)に格納する。イベントに対応するピッチデータは、当該発音チャネンルchの開放弦用プリセットレジスタPI(n)に格納された開放弦用の音高データにフレット間操作子Fswのフレット番号mを足したもの(つまり、開放弦からm番目のピッチ)である。また、当該チャンネルchが使用中であって、現在オンイベントされたフレット間操作子Fswのフレット番号mが、当該チャネンルchで押圧操作されたフレット間操作子Fswのフレット番号mよりも高音側であれば、ステップS10をyesに分岐し、ステップS13にて当該イベントに対応するピッチデータを発音用のピッチレジスタPIT(n)に格納する。一方、ステップS10において、現在オンイベント有りのフレット間操作子Fswのフレット番号mが、当該チャネンルchで既に押圧操作中の他のフレット間操作子Fswの番号mよりも高音側でなければ、当該チャンネルchのピッチレジスタPIT(n)に現在格納されている(つまり前回設定した)ピッチデータを維持する。
以上の処理で、各発音チャンネルchのフレット間操作子Fswのオン又はオフ操作によって指示されたピッチデータを取得できる。
【0035】
ステップS15〜S18は、トリガ入力手段10(擬似弦)への撥弦操作に対する処理に相当する。先ずステップS15において撥弦操作を走査する。ステップS16では指接弦の有無を判定し、指接弦があれば(ステップS16のyes)、ステップS17において、当該発音チャンネルchにて発音中の楽音を急速に減衰させて、そのチャンネンルchについてオフ処理を行う。ここでのオフ処理は上記ステップS4及びS5での処理と概ね同様である。そして、ステップS18において、フレット間操作子Fswのオン/オフ状態に関りなく、擬似弦10a〜10dに対する撥弦操作の有無を判定する。撥弦操作がなければ処理はステップS2までリターンされる。
【0036】
ステップS18において、前記トリガ検出ブロック67(図3参照)におけるトリガ検出の結果として、撥弦有りが検出されると、処理をステップS19に進める。ステップS19では、動作モードのM値によって、現在の動作モードがゲームモードに設定されているか、通常の演奏モードに設定されているどうかを判断する。
【0037】
演奏モードが通常の演奏モードであれば(ステップS19のno)、ステップS20において、トリガ検出部74(図3参照)で検出した撥弦強さ信号(撥弦センサ値)をタッチデータレジスタTC(ch)に当該発音チャンネルのタッチデータとして取り込む。タッチデータレジスタTC(ch)は、トリガ検出部74の検出信号に基づく撥弦センサ値(発音音量)を表すデータを格納するレジスタである。図6(b)は、発音音量を表す撥弦センサ値を出力するための第1のタッチデータ出力テーブルの一例を示す図である。図6(b)に示すように、第1のタッチデータ出力テーブルは、検出信号を「0〜127」の範囲の数値に割り当てるもので、検出信号に応じた「0〜127」の数値の何れかの値が発音音量のデータとしてTC(ch)にセットされる。なお、図に示すテーブルでは、図示及び説明の便宜上、撥弦センサ値の値は、「a1,a2…」によって示した。そして、ステップS21において、上述の処理を経て取得したピッチデータ及びタッチデータ(音量)やキーオンデータ等を含む当該発音チャネンルの全データを音源63に送出して、当該発音チャネンルの全データに対応する楽音を発生させる。
以上の処理(ステップS3〜ステップS20)は、すべての発音チャンネルch(1〜4ch)について時分割で実行される。
【0038】
次に、ゲームモードに設定されている場合の処理手順について説明する。その概要としては、図4のメイン処理においてトリガ入力手段10(擬似弦)への撥弦操作(トリガ)に応じた撥弦センサ値(撥弦タッチの強弱)を取得する処理(図4のステップS3〜ステップS20)を行うと共に、テンポクロックのタイミングに応じて図7に示すT−I処理(以下、「T−I処理」と言う)が実行され、ゲーム動作(LED発光制御、効果音の発生等)が実行される。
【0039】
ゲームモードの処理手順の説明に先立って、以下のゲームモードの説明において使用される各種パラメータについて簡単に紹介しておく。「TCL」は、テンポクロックパルスを表し、後述するT−I処理はテンポクロックパルスの到来に応じて起動する。この実施例では、テンポクロックパルスの分解能は、一例として、1小節(全音符)あたり192パルスとする。「T」はテンポクロックに同期するLED発光制御用のカウンタ値(アップ・ダウンカウンタの値/以下、T値と言う)であって、T−I処理の1回の起動毎にT値が1ずつ歩進(インクリメント又はデクリメント)する。T値は、LED発光の移動方向が往路方向(第12フレットから第1フレットに向かう向き)のときインクリメントされ、LED発光の移動方向が復路方向のときデクリメントされる。
【0040】
タッチデータレジスタTCb(ch)は、トリガ検出部74の検出信号に基づく撥弦センサ値(撥弦強さ信号)に応じた第2のタッチデータ出力テーブルの出力を格納するレジスタである。図6(c)は、第2のタッチデータ出力テーブルの一例を示す図である。図6(c)に示すように、第2のタッチデータ出力テーブルは、撥弦センサ値(センサ出力値)を「0〜15」の数値に割り当てたテーブルであって、この第2のタッチデータ出力テーブルの出力が、発光移動の往路復路の折り返し位置(LED発光の移動量)を設定するためのデータとなる。図に例示する第2のタッチデータ出力テーブルでは、撥弦センサ値(センサ出力値)を「0〜15」の16段階の数値に割り当てている。このことから、折り返し位置をネック2の端(第1フレット)から外れた位置に設定することが可能となり、LEDの発光の移動軌跡中に非発光区間を含ませることができる(図2参照)。なお、図に示す第2のタッチデータ出力テーブルでは、図示及び説明の便宜上、撥弦センサ値の値は、「b1,b2…」によって示した。
【0041】
また、変数aは、テンポクロックパルス4発分を最小単位とする時間長の要素であって、LEDの発光時間を規定する値である。また、「b」は、「+1」又は「−1」のいずれかの値をとる2値のレジスタである。この「b」のレジスタ値によりLED発光の移動方向を規定している。この実施例では、「b=+1」がセットされている場合に、LED発光の移動方向が往路方向(第12フレットから第1フレットに向かう向き)となり、レジスタ値bが「−1」に反転されると、LED発光の移動方向が復路方向に切り替わる。「LD(n)」は、発光すべきLEDを特定するレジスタであり、ここでの数値nは、第1弦〜第4弦に対応する各列の各フレット間操作子に対応する値をとる。「LD(n)」の値が時間経過に従い変更されることで、発光状態にあるLEDが、その配列方向に沿って遷移する。「ch」は前述の通り各弦番号に対応する値1〜4をとり、第1弦〜第4弦に対応する各列に相当する。「ch´」は、前記「ch」を前回の値としてストックするためのレジスタである。また、「RND」はランダム関数であり、「―3」〜「+3」の7つの値の何れかをランダムに発生する。
【0042】
図4のメイン処理において、ゲームモードに設定されている場合、ステップS6をyesに分岐して、ステップS7〜S14のフレット間操作子Fsw(図1の符号20)のオン・オフ走査処理を回避する。これは、ゲームモード中において、フレット間操作子Fswの音高指示手段としての機能を無効にするためである。
【0043】
ステップS15〜S18の処理により、トリガ入力手段10(擬似弦)への撥弦操作(トリガ入力)を検出する。そして、ステップS19のモード判定をyesに分岐して、ステップS22に以降のタッチデータ設定処理に進む。ステップS22において現在のT値が0以上であれば(ステップS22のnoの場合)、処理をリターンする。すなわち、T値が0以上の場合は、ゲーム進行中であり、且つ、トリガ入力(撥弦操作)の受け付け機会が到来していない状態であるため、ステップS23、S24を行わない。
【0044】
ステップS22において、現在のT値が0以下、−4以上の場合(ステップS22のyes)、ステップS23では、T値及び変数aをリセットし、テンポクロックTCLを停止すると共に、レジスタ値bを「+1」にセットする。そして、ステップS24において、トリガ検出部74の検出信号に基づく撥弦センサ値(撥弦強さ信号)に応じた第1のタッチデータ出力テーブルの出力値を、TC(n)にセットすると共に、該撥弦センサ値に応じた第2のタッチデータ出力テーブルの出力値をTCb(ch)にセットする。この処理により、T値が0〜−4の間に、各パラメータをリセットし、トリガ入力を受け付けてゲームを開始できるようになっている。
【0045】
そもそも、図示のフローチャートでは、前記ステップS15〜S18において、撥弦操作(トリガ入力)を検出しなければ(ステップS18のno)、ステップS22以下のステップに進まないように処理されている。すなわち、言い換えれば、ゲームモードにおいて、トリガ入力があれば、T値、変数a、テンポクロックTCL及びレジスタ値bがそれぞれ所定の初期値にリセットされた後に、ゲームの開始が指示されることになる。また、ステップS22〜S24の処理により、ゲーム実行中において、所定の発光開始位置まで発光順序が戻ってきた際に、トリガの再入力を受け付けることを可能にしている。なお、上記ステップS22において、T値の閾値の一方が「−4」とされているが、これは、詳しくは後述するようにゲーム実行中において、T値が0〜−4の間に再トリガ入力されなければ、ゲームが終了(ゲーム失敗)となる、すなわち、T値「−4」がゲーム終了(ゲーム失敗)時点を規定する値として設定されているためである。
【0046】
図7は、ゲームモードにおけるLED22の移動発光制御を行うT−I処理の一例を示すフローチャートであり、この処理はテンポクロックTCLの周期毎に実行される。すなわち、この処理は、図2に示すテンポクロック発生部TCLから発生するT−I命令をCPU60に取り込むことで、実行される。このT−I命令に基づく割り込み時間間隔は、図2に示す可変抵抗器VR(又は図5のステップS36の処理)によって変更可能である。
現在の動作モードがゲームモード(モードG)に設定されていない場合は(ステップS40のno)、当該T−I処理はリターンされる。また、ステップS41において、T値にエンドマーク(END)がセットされている場合(yesの場合)もまた、当該T−I処理はリターンされる。エンドマーク(END)は、後述するゲーム終了(ゲーム失敗)処理が行われたときにS60にてT値にセットされるもので、ゲーム再開時には0にリセットされる。すなわち、ゲームモードが設定された状態でトリガ入力が行われると、ステップS41をnoに分岐し、ステップS42以降の処理が実行される。
図8は、或る強さでのトリガ入力(例えば、TCb(ch)=3)が行われた場合に、図7の処理によって実行されるゲーム動作の内容(パラメータ設定値の変遷など)の一例を図表化したものである。図8において、縦欄にT−I処理の起動回数をとり、横欄には各パラメータ(T値、変数a、レジスタ値b及び発光すべきLED番号を指定する値「LD(n)」)を示す。
以下、図8に例示したゲーム動作を実行する手順について、図7のフローを参照しながら説明する。
【0047】
ステップS42では、レジスタ値bの設定状態(+1か−1か/往路か復路か)を判定する。前述の通り、ゲームの開始時点ではレジスタ値bは「+1」にセットされているので、1巡目のT−I処理においては、ステップS42をnoに分岐し、ステップS43に進む。ステップS43において、T値が4aに等しいか判定する。前述の通り、ゲームの開始時点ではT値及び変数aはそれぞれ「0」にセットされているので、1巡目のT−I処理においては、ステップS43をyesに分岐し、ステップS44に進み、変数aに値1がセットされる(a+bすなわち「0+1」による)。ステップS45では、変数aがTCb(ch)以上になったかどうか判定する。この例では一例としてTCb(ch)=3としている。現時点(1巡目)では、判定条件a=1なのでa≧TCb(ch)は不成立であるから、処理はステップS46に進む。ステップS46では、ある弦(トリガ入力有りの弦)に対応する列(チャンネルch)のLEDを対象に、発光すべきLEDの番号LD(n)を設定する。このレジスト値LD(n)番号は、「13−a」によって決定される。前記ステップS44において変数aに値1がセットされているので、発光すべきLEDの番号はLD(n)=12となる。これは、現在処理対象となっている列(チャンネルch)の第12フレットのLEDを発光せよ、ということを指示している。これにより、1巡目のT−I処理では、第12フレットのLEDが発光され、それ以外のLEDは消灯されるよう制御する。ステップS47では、ゲームのエンド処理を行うか否かの判定がTの数値を見て行われ、この実施例ではT=−4かどうかが判定対象となっている。現時点ではT=0であるので、これをnoに分岐する。ステップS48では、前記LD(n)に対応するキーコードKC(n)を音源63に送出し、音源63において第12フレットのフレット間操作子に対応する音高の楽音が発音される。
そして、ステップS49において、現在のT値にレジスタ値b=+1の値を加算したものを、新規のカウント値として設定する。これのより、1回のT−I処理の起動毎に、T値が1ずつ歩進することになる。但し、場合によっては後退することもある。
【0048】
2巡目のT−I処理では、ステップS43において、T=1であり、a=1であるから、T=4aが成立しない(ステップS43のno)ので、処理はステップS49に進み、T値を1つ歩進させる。すなわち、T=2がセットされる。また、3巡目のT−I処理では、ステップS43において、T=2であり、a=1であるから、T=4aが成立しない(ステップS43のno)ので、処理はステップS49に進み、T値を1つ歩進させて、T値=3がセットされる。更に、4巡目のT−I処理でも、ステップS43において、T=3であり、a=1であるから、T=4aが成立しない(ステップS43のno)ので、処理はステップS49に進み、T値を1つ歩進させる。すなわち、T値=4がセットされる。
上記の処理の間、1巡目のT−I処理により発光指示された第12フレットのLEDは発光状態を保つ。
【0049】
5巡目のT−I処理では、ステップS43において、T=4であり、a=1であるから、T=4aが成立する(ステップS43のyes)ので、処理はステップS44に進み、a+bにより、変数aの値が2にセットされる。ステップS45において、この実施例ではTCb(ch)=3であり、現時点(5巡目)の変数aは「2」なのでa≧TCb(ch)は不成立であるから、処理はステップS46に進む。ステップS46では、「13−a」によって、発光すべきLEDの番号をLD(n)=11に設定する。これにより、当該チャンネルch(つまりトリガ入力された弦に対応する列)の第11フレットのLEDが発光され、それ以外のLED(前回まで点灯していた第12フレットのLEDを含む)は消灯されるよう制御する。したがって、発光状態にあるLEDが第12フレットのLEDから第11フレットのLEDに往路移動することになる。
【0050】
更に、ステップS48において、前記LD(n)に対応するキーコードを音源63に送出し、音源63において前記LD(n)、つまり、第11フレットに対応する音高の楽音が発音される。そして、ステップS49において、現在のT値が1つ歩進され、T=5がセットされる。
【0051】
すなわち、上記ステップS43における「T=4a」という判定条件により、あるLED発光指示時点から数えて4回目のT−I処理の起動機会が訪れる毎に、発光すべきLEDがフレットの並び方向に沿って1つ隣に移ることになる。前述の通り、本実施例では、一例としてテンポクロックパルスの周期は1小節当たり192パルスとしている。したがって、4分音符の時間長は48パルスに相当する。LEDの発光が隣のLEDに移行するのが、4パルスの機会であるから、この実施例では、LEDの発光が12フレット分移動する時間は4分音符の時間長に設定されていることになる。1分間に60拍のテンポであれば、LEDの発光が12フレット分移動するのにかかる時間は1秒となる。
【0052】
さて、6巡目のT−I処理では、ステップS43において、T=5であり、a=2であるから、T=4aが成立しない(ステップS43のno)ので、処理はステップS49に進み、T値が1つ歩進され、T値=6がセットされる。7巡目及び8巡目のT−I処理においても、同様にステップS43のT=4aが成立しない(ステップS43のno)ので、処理はステップS49に進み、T値が1ずつ歩進され、T値は、7、8と順次インクリメントされる。更に、この間、5巡目のT−I処理により発光指示された第11フレットのLEDは発光状態を保つ。
【0053】
9巡目のT−I処理では、ステップS43において、T=8であり、a=2であるから、T=4aが成立する(ステップS43のyes)ので、処理はステップS44に進み、a+bにより、変数aの値が3にセットされる。ステップS45において、この実施例ではTCb(ch)=3であり、現時点(5巡目)の変数aは「3」なので、判定条件「a≧TCb(ch)」が成立する(ステップS45のyes)。このことは、LED移動のピーク位置(折り返し位置)に達したことを、意味する。すなわち、現在の処理タイミングを境にして、発光状態のLEDの遷移が往路方向(第12フレットから第1フレットに向かう方向)から復路方向(第1フレットから第12フレットに向かう方向)に切り替わるよう制御される。
【0054】
ステップS50では、現在処理対象となっている発音チャンネルの番号ch(トリガ入力された疑似弦に対応する列であり、現在LEDの発光制御が行われている列)を、前回チャンネル番号用レジスタch´に格納する。そして、ステップS51において、ランダム関数RNDをランダムに発生し、現在のチャンネル番号chに発生した値RNDを加えた値を、現在のチャンネル番号chのレジスタに新規にセットする。ステップS52において前記現在のチャンネル番号chのレジスタにセットされた値chが、1以上4以下であるかどうかチェックし、この条件に適合しない場合(ステップS52のnoの場合)、チャンネル番号chの値は、前記ステップS50において格納された前回チャンネル番号ch´の値に戻す。上記ステップS50〜S53の処理は、発光されるLEDの列を、往路と復路とで変更させるための処理である。前述したようにランダム関数RNDは―3〜+3の7値をとりうるので、現在のチャンネル番号chが1〜4の何れであっても、ステップS51において新規のチャンネル番号chとしてセットされる値は、ch1〜ch4の何れにもなりうる。すなわち、発光されるLEDの列が切り替わる際に、どの列へでもジャンプする可能性がある。ところで、発生されたランダム関数RNDと現在のチャンネル番号chの組み合わせによっては、ステップS51において新規のチャンネル番号chとしてセットされる値として、ch1〜ch4のいずれにも該当しない値(すなわち、1未満又は4より大の値)が設定されうる。その対策としてステップS52のチェック条件がある。この実施例では、条件(1以上4以下)に適合しない場合は、前回の値ch´を使用する。つまり、発光されるLEDの列が切り替わらないように処理している。
【0055】
ステップS54においては、レジスタ値bを−1に設定する。前記ステップS44において変数aに値3がセットされているので、ステップS46では、「13−a」によって、発光すべきLEDの番号がLD(n)=10に設定される。これにより、9巡目のT−I処理において、前記ステップS51〜S54の処理において設定されたチャンネルchの列の第10フレットのLEDが発光され、それ以外のLED(前回まで点灯していた第11フレットのLEDを含む)は消灯されるよう制御する。したがって、発光状態にあるLEDが第11フレットのLEDから第10フレットのLEDに往路移動することになる。
また、音源63において、第10フレットに対応する音高の楽音が発音される(ステップS48)。そして、ステップS49において、現時点ではレジスタ値bには「−1」がセットされているので、現在のT値から1インクリメントされ、T=7がセットされる。
【0056】
10巡目のT−I処理では、レジスタ値bには−1がセットされているので、ステップS42をyesに分岐して、ステップS55において、変数aを−2にして補正する処理を行う。この時点では、a=3であるから、aには値「1」がセットされる。そして、ステップS43では、前回インタラプトのS49での処理値1をT=4aに代入した値が成立しない(ステップS43のno)。そして、ステップS56及びS57の処理により、変数aを+2にすることで、ステップS55での補正を相殺する。すなわち、変数aには値「3」がセットされる。前記ステップS55〜S57の処理は、復路方向の発光制御を正しく動作させるための処理設計上の補正事項として設けられている。
その後、処理はステップS49にて、Tは前回値7から−1して、T=6にセットされる。
【0057】
11巡目T−I処理でも、ステップS55において変数aの補正を行う。前回値a=3であるから、変数aの補正値として今一度「1」がセットされる。そして、ステップS43において、T=6であり、a=1となるから、T=4aは不成立である。そして、ステップS56及びS57の処理により、変数aを+2にすることで、ステップS55での補正(a−2)を相殺する。ステップS49では、S56のb値で現在値Tをデクリメントし、T値が「5」にセットされる。12巡目T−I処理でも、上記11巡目と同様に、ステップS55で変数aの値を「1」にセットする。この時点では、T=5であり、a=1となるから、T=4aは不成立であるので、ステップS56及びS57により、変数aを+2にしてステップS55での補正を相殺し、ステップS49にて、T値が「4」にセットされる。この間、10巡目のT−I処理により発光指示された第10フレットのLEDは発光状態を保つ。
【0058】
13巡目のT−I処理では、ステップS55において変数aの補正を行い、変数aとして今一度「1」がセットされる。現時点では、T=4であり、a=1であるから、ステップS43におけるT=4aが成立する(ステップS43のyes)。すなわち、ステップS55〜S57の変数aの補正処理は、復路方向の発光制御(b=−1)において、ステップS43における「T=4a」という判定条件の成立機会を調整する、すなわち、ステップS43のyes以降のLED発光指示のタイミングを調整するためにある。
13巡目のT−I処理では、ステップS43がyesとなり、処理はステップS44に進み、a+b(すなわち「1―1」)により、変数aの値が0にセットされる。この実施例ではTCb(ch)=3であり、現時点(13巡目)の変数aは「0」にセットされているので、判定条件「a≧TCb(ch)」は不成立である(ステップS45のno)。ステップS58、S59の意味は、前述のステップS56、S57と同様である。すなわち、ステップS55における変数aの補正を「a+2」により相殺する。これにより、変数aの値が「2」にセットされる。そして、ステップS46では、「13−a」=「13−2」によって、発光すべきLEDの番号をLD(n)=11に設定する。これにより、発光状態にあるLEDが第10フレットのLEDから、第11フレットのLEDに復路移動する。
【0059】
また、音源63において第11フレットに対応する音高の楽音が発音される(ステップS48)。そして、ステップS49において、現在のT値が1つインクリメントされ、T=3がセットされる。
【0060】
14巡目のT−I処理では、a=2であるから、ステップS55において変数aとして値「0」がセットされる。そして、ステップS43において、T=3であり、a=0となるから、T=4aが成立しないので、ステップS56及びS57により、変数aを+2にしてステップS55での補正を相殺し、a=2にセットする。そして、ステップS49において、T値が1つデクリメントされ、T値が「2」にセットされる。また、15巡目T−I処理においても、ステップS55においてa−2することで、変数aの値が「0」にセットされるので、ステップS43ではT=2及びa=0となりT=4aは不成立である。よって、ステップS56及びS57により、変数aを+2にしてステップS55での補正を相殺し、a=2にセットすると共に、ステップS49においてT値を1つデクリメントし、T値を「1」にセットする。16巡目T−I処理でも同様に、ステップS55においてa−2することで、変数aの値が「0」にセットされ、T=1及びa=0となるから、T=4aは不成立である(ステップS43のno)。よって、ステップS56及びS57により、変数aを+2にしてステップS55での補正を相殺し、a=2にセットすると共に、ステップS49においてT値を1つデクリメントし、Tを「0」にセットする。
【0061】
17巡目のT−I処理において、ステップS55の処理によりa−2することで、変数aの値が「0」にセットされると、ステップS43では、T=0及びa=0となるから、T=4aが成立する。続いて、ステップS44において、「a+b」にて「0−1」を実行し、変数aの値を「―1」にセットする。a=−1であるから、ステップS45の判定条件「a≧TCb(ch)」は成立しない。ステップS58、S59において、ステップS55における変数aの補正を「a+2」により相殺し、変数aの値を「1」にセットしてから、ステップS46において、「13−a」=「13−1」によって、発光すべきLEDの番号をLD(n)=12に設定する。これにより、発光状態にあるLEDが第11フレットのLEDから、第12フレットのLEDに移動すると共に、それに対応する音高の楽音を発音(ステップS48)し、ステップS49においてT値を1つデクリメントし、Tを「−1」にセットする。
【0062】
18巡目から20巡目の処理では、上述した14巡目〜16巡目のT−I処理と概ね同様な動作により、T値を−2、−3、−4と順次デクリメントしてゆく。そして、21巡目のT−I処理においては、ステップS55の処理によりa−2することで、変数aの値が「−1」にセットされると、ステップS43では、T=−4及びa=−1であるから、T=4aが成立するので、ステップS44において変数aの値が「―2」にセットされる。ステップS45では判定条件「a≧TCb(ch)」が不成立なので、ステップS58、S59において変数aの値を「0」にセットし直してから、ステップS46において、「13−a」=「13−0」によって、発光すべきLEDの番号としてLD(n)=13が設定される。LD(n)=13に相当するLEDは存在しないので、これにより、全てのLEDが消光となる。
そして、現時点では、T値は「−4」となっているのでS47をyesに分岐して、ステップS60のエンド処理を行う。エンド処理では、T値にエンドマークを設定すると共に、テンポクロックTCLを停止する。また、その他にも、ゲームの終了を報知する適宜の効果音(残念音)を発音する処理等を行ってもよい。
【0063】
上記ステップS60のエンド処理により、T値にエンドマークがセットされることで、以後、T−I処理が起動された場合には、ステップS41をyesに分岐し、何も行わないまま処理をリターンすることになる。
【0064】
上記17〜21巡目のT−I処理が起動する間に、ユーザがトリガ入力を行えば、ステップS25にて「TはENDマークか否か」を判断し、ENDマークでないことを条件に、すなわち、S47のyes判断が出る前の所定時間間隔内(0≧T≧4)での再撥弦操作ありを条件に、前述したものとほぼ同様の発光及び発音動作が繰り返される。その再設定は、図4のメイン処理のステップS22をyesに分岐(0≧T≧−5)して、ステップS23の処理により、T値、変数aを0に設定し、テンポクロックTCLを発生すると共に、レジスタ値bを「+1」にセットして、ステップS24において、新規に入力されたトリガ(撥弦センサ値)に応じた第1のタッチデータ出力テーブルの出力値を、TC(n)に、また、該撥弦センサ値に応じた第2のタッチデータ出力テーブルの出力値をTCb(ch)にセットすることでゲームを継続できるようになっている。このように、再トリガ入力を受け付ける時間的幅としては、第12フレットの戻り発光時から消光時の時間内となっている。それ以外の再トリガはS22,S25にていずれも「no」の判定にて無視されるからである。
【0065】
上記図7及び図8を参照して説明したゲームの動作によれば、トリガ入力に応じて、LEDの配列に沿って光が移動すると共に、発光中のLEDに対応する音高で楽音が発生する。各LEDの発光は、第12フレットのLEDから開始して、時間経過に従ってローポジション側(第1フレット側)に向かって順次移動し、トリガ入力の強さに応じた折り返し位置(上述の例では第10フレット)のLEDにて光の移動方向を反転させて、発光開始位置に戻るよう、制御される。このような、ゲームによって、ユーザは、擬似弦10a〜10dの撥弦操作(トリガ入力)のタイミングや強さ(タッチ感)等の演奏感覚等を自然と体得できるようになる。
【0066】
上記の変更例として、LEDの発光の移動は、放物線形状の特性でなされてもよく、時間経過に対して物体落下曲線に従う軌跡を描くようにするとよい。すなわち、ある時点において、発光すべきLED位置は、時間要素(T値)Tの2乗に比例し、更に、加速度データKに比例する関数「位置=KT2」)によって求めることが可能である。これにより、LEDの発光の移動は放物線の特性に従う時間経過に応じた位置変化をリアルに表現しうる。上記関数式がそのまま有効なのは、全てのフレット間操作子20の長さが等しい場合である。この実施例では、上述の通りフレット間操作子20の長さは、ハイポジションのものほど短くなっているので、リアルな位置変化を表現するには、上記式に適宜の補正をかける等するとよい。
【0067】
上述の実施例では、発光開始位置を第12フレットのLEDとしたが、これに限らず、第1フレットを発光開始位置としてする構成であってもよい。この場合、上記図7及び図8を参照して説明したゲーム動作を、第12フレットを第1フレット、第11フレットを第2フレット、第10フレットを第3フレット…という具合に読み替えればよい。また、第1フレット〜第12フレットのフレット間操作子20における長さの違いは、指数関数的に変化するため、第1フレットから発光開始する構成であれば、LEDの発光の移動特性は、格別の演算、補正等を加えることなしに、図7のフローの処理そのままであっても、十分に放物線的(物体落下運動的)特性を発揮しうる。
【0068】
また、上述の実施例では、図7のステップS48において、発光させたLEDに対応する音高の楽音が発音されるようにしたが、これによれば、LEDの発光の移動に伴い、第12フレットの音高の音から順次半音ずつ下降する音階を辿って楽音が発音されることとなる。この変更例としては、トリガ入力に応じて、まず、対応する開放弦の音高で楽音が発音され、続いて、第12フレットの音高(つまり、開放弦の音の1オクターブ上の音高)の音から半音ずつ下降する音階を辿って楽音が発音されるようにしてもよい。また、トリガ入力に応じて、対応する開放弦の音高の音のみ(移動中の音はなし)の構成であってもよい。また、トリガ入力に応じて発音される音は、通常の演奏音とは異なる音、例えば、ハーモニクス奏法で発音される演奏音等を発音させるようにしてもよい。実施例では、12フレットから発光するので、トリガ入力に応じて発音される音を12フレットのハーモニクス音とするイメージと良く適合する。なお、発音される音もちろんその他のハーモニクス音であってもよい。また、発光させたLEDに対応する楽音ではなく、トリガ入力された列に対応する開放弦の音から半音ずつ上昇する音階で楽音を発音させるようにしてもよい。また、ゲームモードにおいては、発音制御を全く行わない構成であってもよい。
【0069】
また、図7のステップS46において、新規に設定されたLD(n)に対応するLEDを発光させ、他のLEDを消光するように処理することで、LEDが1つずつ発光するように構成したが、その変更例としては、発光させたLEDの消光を行わずに、発光するLEDが移動方向に沿って次々に増加してゆくような態様であってもよい。
【0070】
また、上述の通り、各擬似弦10a〜10dの開放弦のピッチを多様な種類の楽器の設定に変更可能なことから、この発明に係るゲームモードにおいて、少なくとも、トリガ入力に応じて開放弦に対応する音高の楽音を発生させるようにすることで、色々な種類の楽器の開放弦のチューニング(つまり多種多様な弦楽器の特徴)や、種々のオープンチューニングの音感を、ゲームを楽しみながら自然と体得できるようになるという効果がある。
【0071】
また、別の変更例としては、トリガ入力のタッチが強過ぎた場合には、例えばゲームを成立させないように制御する等、ゲーム動作の態様を多様化させ、意外性、興趣性を増すようにしてもよい。また、ゲームモードにおいて、ゲーム動作のデモンストレーションを行いうるようにすることで、LEDの点灯をある種のイルミネーションとして視覚的に楽しむことができるようにしてもよい。
【0072】
なお、上述の例では、4本の擬似弦を有するウクレレ型の電子弦楽器を例示して説明したが、これに限らず、疑似弦を有して構成され得る他の電子弦楽器(例えば擬似弦6本のギター型など)にも適用可能である。また、上述の例では、電子弦楽器の本体の構成として、自然楽器のウクレレやギターを模擬して、ボディ1とネック2を有する筐体構成の楽器を示し、ネック2上にフレット間操作子、ボディ1に疑似弦(トリガ入力手段10)が配設される例を示した。図1(d)はこの発明を適用可能な電子弦楽器の別の構成例を示す概略斜視図である。図1(d)において、既述の構成要素と同様な構成要素については、同じ符号を付与してその説明を適宜省略する。図1(d)に示す電子弦楽器は、全体として長手な棹状の楽器本体12によって筐体が構成されており、該楽器本体12において、複数列に配列されたフレット間操作子20(音高指定手段)を有し、且つ、該フレット間操作子20の各配列からの延長線上に各列に対応して複数のトリガ入力手段(弦)10が配置される。本体12はネック部のように把持することが可能であり、トリガ入力手段(弦)10は、弓等による擦弦操作を受け付けるよう構成しうる。なお、トリガ入力は、指での撥弦操作であってもよい。演奏者は、例えば、本体12の一端部から延びた支棒14を床面に接地させ、チェロやコントラバス等のような演奏形態で、当該楽器を演奏することができる。このように、ボディとネック部の区別が格別に無い筐体構成であっても、複数列の音高指定手段と、それに対応するトリガ入力手段とを有する構成であれば、本発明を適用可能である。また、上記各実施の形態において、発音指示トリガ手段は弦を模擬したものとしたが、ネック部に複数の発光体が配列されたものでさえあれば、擬似弦に代わって押しボタン型等の発音指示トリガ手段を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の一実施例に係るウクレレ型電子弦楽器の外観構成を示し、(a)は、上面からみた平面図、(b)は裏面から見た平面図、(c)はフレット間操作子の部分を抽出して示す矢印A方向に沿う断面図、(d)はこの発明を適用可能な電子弦楽器の別の構成例を示す概略斜視図。
【図2】この発明に係るゲームモードの概要を説明するための概念図であって、図1の電子弦楽器を上から見た概略図。
【図3】同実施例に係る電子弦楽器における電気的ハードウェア構成を示すブロック図。
【図4】同実施例に係る電子弦楽器のメインルーチンの一例を示すフロー。
【図5】図3のメインルーチンにおいて実行されるパラメータ設定処理の一例を示すフロー。
【図6】(a)開放弦ピッチ設定テーブルの一例を示す図であり、(b)は第1のタッチデータ出力テーブルの一例を示す図であり、(c)は第2のタッチデータ出力テーブルの一例を示す図。
【図7】同実施例においてゲーム動作を実行するためのタイマインタラプト処理の一例を示すフロー。
【図8】図7のタイマインタラプト処理によって実行されるゲーム動作の内容(パラメータ設定値の変遷など)の一例を示す表。
【符号の説明】
【0074】
1 ボディ、2 ネック、3 ヘッド部、4 フレット、5a〜5d ダイヤル式設定器(モード設定手段を含む)、6 電池ボックス蓋部、7 放音口、10 トリガ入力手段(操作手段)、10a〜10d 擬似弦(操作手段)、20 フレット間操作子、22,220 LED(発光部)、60 CPU(発光制御手段の一部)、63 音源(楽音発生手段)、64 表示制御回路(発光制御手段の一部)、65 自動演奏メモリ、66 フレットスイッチ群(発光手段)、67 トリガ検出ブロック(検出手段)、TCL テンポクロック発生部(調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ部とネック部を有する電子弦楽器であって、
前記ボディ部及び/又はネック部に設けられた少なくとも1つの操作手段と、
前記ネック部及び/又はボディ部において、前記操作手段に対応して整列して配設された複数の発光部を含む発光手段と、
前記操作手段の操作に応じて楽音を発生する楽音発生手段と、
少なくとも楽器演奏モード及びゲームモードの何れかが選択可能なモード設定手段と、
前記ゲームモードにおいて、前記操作手段の操作に応じて、前記発光手段に含まれる複数の発光部を所定の発光開始位置から所定の折り返し位置に向かって順次発光させる往路発光制御と、該所定の折り返し位置から該所定の発光開始位置に向かって順次発光させる復路発光制御とを行う発光制御手段と
を有することを特徴とする電子弦楽器。
【請求項2】
前記操作手段は操作の強さを検出する検出手段を更に有し、
前記発光制御手段は、前記検出された操作の強さに基づき前記所定の折り返し位置を決定する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子弦楽器。
【請求項3】
前記発光制御手段は、前記操作手段の再操作を許容し、該再操作によって、前記復路発光制御から往路発光制御に再び制御を切り替える手段を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子弦楽器。
【請求項4】
前記発光制御手段は、前記再操作のタイミングを、前記所定の発光開始位置に発光順序が戻ってから所定の時間範囲で許容する手段を更に含む請求項3に記載の電子弦楽器。
【請求項5】
複数の前記操作手段を有し、前記発光手段に含まれる複数の発光部は、該複数の操作手段の各々に対応する複数の列を形成することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電子弦楽器。
【請求項6】
前記楽音発生手段は、前記ゲームモードにおいて、前記発光手段の各発光部に対応した所定の音高を有する音高列を、前記発光制御手段によって前記各発光部を順次発光させる制御に同期して発生させる手段を更に含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子弦楽器。
【請求項7】
前記発光制御手段が前記各発光部を順次発光させる時間的周期を可変設定するための調整手段を更に含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子弦楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−3443(P2006−3443A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177313(P2004−177313)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】