説明

電子放出源、これを適用した電子装置及び電子放出源の製造方法

【課題】 電子放出源、それを適用した電子装置及び電子放出源の製造方法を提供する。
【解決手段】 基板と別途に製造されたカソードを備え、カソードには、接着層によって固定された針状電子放出物質、例えば、カーボンナノチューブ層が設けられる電子放出源である。カーボンナノチューブ層は、懸濁液フィルタリング法を利用して形成され、後続する電子放出物質層の表面処理によって電子放出密度が上昇する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出源、この電子放出源を適用する電子装置及び電子放出源の製造方法に係り、具体的に、CNT(Carbon Nano Tube)のような針状電子放出物質による電子放出源に関する。
【背景技術】
【0002】
微細構造物による電子放出源で、CNTまたはナノパーチクルが電子放出物質として選好される。CNTは、チューブ状に成長または合成された微細構造物であって、形態上多様な類型が知られている。このようなCNTは、非常に優秀な電気的、機械的、化学的、熱的特性を有し、このような長所によって多様な分野に応用されている。CNTは、低い仕事関数と高い縦横比とを有し、その先端が短い曲率半径を有するため、非常に大きい電界強化因子を有し、したがって、低いポテンシャルの電界下でも電子を放出しうる。
【0003】
従来のCNT電子放出源の製作方法としては、CNTを導電体、例えば、カソードまたは基板上に直接垂直成長させる方法と、別途工程で合成されたCNT粉末をカソードに付着させる方法とがある。
【0004】
CNTを成長する方法として、微細触媒金属が蒸着された多様なカソード基板上に高温で炭化水素ガスの分解によってCNTを基板上に垂直整列させる直接成長法が多数知られている(非特許文献1、2、3及び4、特許文献1及び2を参照)。
【0005】
合成されたCNT粉末をカソード基板上に付着させる方法には、懸濁液フィルタリング法、スクリーンプリンティング法、電気泳動法、自己組立法、スプレイ法、インクジェットプリンティング法がある。
【0006】
懸濁液フィルタリング法は、CNT懸濁液を微細孔を有するフィルタ紙に濾過してテフロンコーティングされたカソード基板にCNTを転写する(非特許文献5及び6参照)。
【0007】
スクリーンプリンティング法は、ポリマー及び有機溶媒を含有するビークル、無機バインダー及びその他の添加剤とCNT粉末とを混ぜたペーストをカソード基板に印刷、焼成してCNT薄膜を形成する。(非特許文献7、特許文献3参照)
【0008】
電気泳動法は、界面活性剤にCNT粉末が分散されている電解質溶液にカソード基板を浸漬した状態で電気的泳動によってCNTをカソード基板に付着させる(非特許文献8及び9、特許文献4及び5参照 )。
【0009】
自己組立法は、脱イオン水溶液に親水性に表面改質されたCNTをよく分散させた懸濁液に親水性基板を垂直に入れた後、漸進的な溶液の気化によるCNT薄膜を形成させる(非特許文献10、特許文献6参照)。
【0010】
スプレイ法は、よく分散されたCNT懸濁液を噴霧ノズルを通じて噴射させてカソード基板にCNT薄膜を形成する(非特許文献11、12及び13、特許文献7及び8参照)。
【0011】
インクジェットプリンティング法は、よく分散されたCNT懸濁液をインクジェットプリンタでカソード基板にプリントしてCNT薄膜を形成する(非特許文献14及び15、特許文献9参照)。
【0012】
前記のような方法において、直接成長法は、伝導性または非伝導性のカソード基板上にスパッタリング、熱蒸着または電子ビーム蒸着などの方法でナノサイズの触媒金属を蒸着した後、化学気相蒸着法で気状及び液状炭化ソースガスを高温で熱分解して垂直整列されたCNT電界電子放出源を製作する方法である。前記方法は、CNTの直径、長さ、密度、パターン化調節などの構造制御が容易であるが、触媒金属を大面積に蒸着するとき、全体的な均質性の確保と触媒金属粒子のサイズ制御とが難しいだけでなく、成長したCNTとカソード基板との間の接着力が弱く、大面積化が容易ではないという短所がある。
【0013】
前記のように、CNTとカソード基板との間の接着力問題と、CNT電界電子放出源の大面積化の難しさとを克服するために、色々な合成方法で製造されたCNT粉末を精製、分散、機能化させてペースト化するか、または溶媒及び界面活性剤に分散させた懸濁液をカソード基板に付着させる多様な方法が開発された。そのうち、CNT粉末、ポリマー、バインダー、高分子、有機溶媒、金属充填剤及びその他の添加剤を含むCNTペースト組成物をカソード基板に印刷して乾燥、露光、焼成及び表面突出処理などの過程を経てCNT電子放出源を製作するスクリーンプリンティング法は、カソード基板とCNT電子放出源との接着力が良く、大面積化に有利であるが、活性電子放出サイトの密度調節が難しく、各種の有・無機物バインダー及び高分子のために電界電子放出特性が容易に低下するだけでなく、工程手順がやかましい。電気泳動法は、電解液にCNT粉末と陽極分散剤とを混合してよく分散されたCNT懸濁液を作った後、前記CNT懸濁液に二つの電極基板を入れて電場をかけた後、電場内で(+)に帯電されたCNTを(−)電圧が印加されたカソード基板に蒸着させてCNT電界電子放出源を製作する方法であって、常温で選択的蒸着が可能であり、大面積化が容易であるが、厚さ及び密度の調節が難しく、均質性及び再現性が良くないだけではなく、カソード基板との接着力がよくなくて、電界電子放出時に信頼性及び安定性に問題がある。
【0014】
一方、脱イオン水に親水性に表面改質されたCNTをよく分散させた懸濁液に親水性基板を垂直に入れた後、漸進的な溶液の気化によってCNT電界電子放出源を形成させる自己組立法は、工程が簡単であり、常温で大面積化が容易であるが、電気泳動法と同様に形成されたCNT薄膜とカソード基板との接着力がよくなくて、長時間がかかるという短所を有している。
【0015】
前記スプレイ法も同様に、工程が簡単であり、常温で大面積化が容易であるが、ノズルからカソード基板まで噴射液の移動中に懸濁液の蒸発程度によって薄膜の表面状態が決定されるので、CNT薄膜の厚さ、密度調節及び均一なCNT薄膜蒸着が容易でないので、均質性及び再現性が劣り、カソード基板との弱い接着力によって電界電子放出の間に脱着が容易に発生するという短所を有している。
【0016】
そして、インクジェットプリンタによる電子放出源の製造方法は、親水性に表面改質されたCNT粉末を脱イオン水によく分散させて作った懸濁液をカソード基板に選択的にプリンティングしてCNT電界電子放出源を形成する。この方法は、CNT膜の厚さ及び密度調節が容易であり、選択的パターン化を実現でき、常温で大面積化に有利であるが、プリンティングされたCNT電界電子放出源とカソード基板との接着力が弱いという問題点がある。また、よく分散されたCNT懸濁液を微細孔を有するフィルタ紙に濾過してテフロンコーティングされた金属基板に単純に転写させてCNT電界電子放出源を形成させる懸濁液フィルタリング法は、CNT粉末の量や濃度を調節して薄膜の厚さ及び密度調節が容易であり、かつ工程が簡単で大面積化が有利であるが、同様にCNT薄膜とカソード基板との接着力が問題となってきた。
【0017】
CNT懸濁液をフィルタリングしてCNT薄膜を作った後、カソード基板上に転写させる方法とは異なり、特許文献10では、金属基板上に伝導性銀ペーストをパターン化させた所に直接成長法で垂直整列されたCNT薄膜を接合させて熱圧縮して転写するか、またはガラスシート上にパターン化された伝導性層を敷き、伝導性層上に伝導性炭素(銀、金など)ペーストを蒸着させた所に直接成長法で垂直整列されたCNT薄膜から接着シートに移されたCNTをこれらに転写させてCNT電界電子放出源を製作する方法が開示されている。しかし、この方法は、直接成長法で垂直整列されたCNT薄膜を大面積化し難いため、結局、大面積化に限界を感じ、また、転写させる時に接着がよくなるように乾燥、圧縮、加熱または熱圧縮を実施する複雑な工程を経るという短所もある。
【0018】
CNT電子放出源の製造において、信頼性と安定性及び経済性が兼ねられることが望ましい。良質のCNT電子放出源の製作のためには、電子放出に悪い影響を与える不純物の混入を抑制せねばならない。そして、均質で再現性のある電子放出のためには、CNT密度調節が容易でなければならない。また、CNT電子放出源の信頼性及び安定性の確保のためには、CNTとそれを支持するカソードとの接着力の向上も要求される。また、CNT電子放出源の製造において、経済性を確保するためには、製作工程手順が簡単であり、大面積化が容易でなければならない。
【0019】
【特許文献1】US006350488B1号明細書
【特許文献2】US006514113B1明細書
【特許文献3】特開10−2007−0011808号公報
【特許文献4】US006616497B1号明細書
【特許文献5】US20060055303A1号明細書
【特許文献6】US006969690B2号明細書
【特許文献7】US006277318B1号明細書
【特許文献8】特開10−2007−0001769号公報
【特許文献9】US20050202578A1号明細書
【特許文献10】US2004/0166235A1号明細書
【非特許文献1】Science vol.283、512、1999
【非特許文献2】Chemical Physics Letters.312、461、1999
【非特許文献3】Chemical Physics Letters.326、175、2000
【非特許文献4】Nano Letter vol.5、2153、2005
【非特許文献5】Science vol.268、845、1995
【非特許文献6】Applied Physics Letters vol.73、918、1998
【非特許文献7】AppliedPhysicsLetters vol.75、3129、1999
【非特許文献8】Advanced Materials vol.13、1770、2001
【非特許文献9】Nano Letter vol.6、1569、2006
【非特許文献10】Advanced Materials vol.14、8990、2002
【非特許文献11】Mat.Res.Soc.Symp.Proc.vol.593、215、2000
【非特許文献12】Carbon vol.44、2689、2006
【非特許文献13】The Journal of Physical Chemistry C.111、4175、2007
【非特許文献14】Small.vol.2、1021、2006、
【非特許文献15】Carbon vol.45、27129、2007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明が解決しようとする課題は、製作が容易であり、信頼性の高い電子放出源、電子放出ディスプレイ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記課題を達成するために、本発明の例示的な実施形態によれば、導電性板状カソードと、前記カソードの表面に形成された針状電子放出物質層と、前記カソードを支持するベースと、前記ベースに前記カソードを固定する固定要素と、を備える電子放出源が提供される。
【0022】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、前記電子放出物質と導電性テープとの間に前記電子放出物質を導電性テープに固定する接着層が介在される。
【0023】
本発明のさらに他の例示的な実施形態によれば、前記固定要素は、前記ベースに前記導電性テープを機械的に固定する固定部材、接着剤、溶接部位のうち何れか一つである。
【0024】
本発明のさらに他の例示的な実施形態によれば、前記カソードを支持するベースとカソードとを前記ベースに固定する固定部材は、相補的な結合構造を有する。本発明の例示的実施形態によれば、前記ベースには、前記電子放出物質層に対応する突出部が設けられ、前記固定部材は、前記突出部が挟まれるフレーム形状を有する。
【0025】
本発明の例示的な実施形態による電子放出源の製造方法は、板状テンプレートに電子放出物質層を形成する工程と、前記テンプレートの電子放出物質層を板状カソードに転写して固定する工程と、前記電子放出物質膜の電子放出物質を前記カソードに対して組立てる表面処理工程と、を含む。
【0026】
本発明の他の例示的実施形態による電子放出源の製造方法によれば、前記板状テンプレートは、多数の空孔部を有する濾過テンプレートであり、前記電子放出物質膜の形成は、電子放出物質が分散された懸濁液の塗布及び乾燥工程を含む。
【0027】
また、前記表面処理工程は、前記電子放出物質と接着力を有する部材で加圧した後、これを分離させることによって、前記電子放出物質がカソードに対して組立て、具体的な実施形態によれば、前記部材は、接着性テープまたはローラである。
【0028】
本発明のさらに他の例示的実施形態による電子放出源の製造方法は、前記カソードをカソードベースに固定するカソード固定工程をさらに含み、具体的な実施形態によれば、カソード固定工程は、前記固定工程と表面処理工程との間に実施される。
【0029】
本発明のさらに他の具体的で例示的な実施形態によれば、前記懸濁液は、CNTが分散された溶媒及び界面活性剤を含む。
【0030】
本発明の例示的実施形態によるディスプレイは、基板の上面に固定されるカソードと、前記カソードの上面に形成される針状電子放出物質層と、前記電子放出物質層を前記カソードに固定する接着層と、前記基板に離隔されている前面板と、前記電子放出物質層に対向する前記前面板の内面に形成されるアノードと、前記アノードの表面に形成される蛍光体層と、前記カソードと蛍光体層との間に位置して、電子放出物質層から電子を抽出するグリッドと、前記カソード上に前記電子放出物質層が位置する貫通孔を有する絶縁層と、を備える。
【0031】
本発明の他の例示的実施形態によれば、前記カソードは、前記基板に対してカソードの下部に設けられる接着層によって固定される。
【0032】
本発明のさらに他の例示的な実施形態によれば、前記電子放出物質層をカソードに固定する接着層が電子放出物質層の下部にのみ形成される。
【0033】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記カソードの両面に前記電子放出物質層を接着する接着層とカソードを基板に固定する接着層とが共に設けられる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、色々な種類の針状電子放出物質、すなわち、一定の長さを有するチューブまたはロッド状の電子放出物質、例えば、CNT粉末を懸濁液フィルタリング法を利用してよく分散されたCNTコロイド懸濁液を製造し、これらを微細孔を有する濾過テンプレート上に懸濁液を供給した後、これを濾過乾燥させて電界電子放出に最適化された密度のCNT層を形成する。懸濁液に分散されたCNTは、非常に均一に分散されており、したがって、これを利用してテンプレートに形成されるCNT層も均一な分布のCNTを有する。そして、CNT層を接着層が形成されたカソードに転写させることによって、カソードに安定的に固定されたCNT層を形成する。そして、後続のCNT層の表面処理を通じてCNTをカソードに対して組立てて垂直整列することによって、電子放出に寄与するCNTの数を画期的に増加させる。このような本発明は、高温でない低温または常温の状態でカソードに対するCNT層の形成が可能であるので、従来の高温処理によって体験した問題点を有さない。したがって、本発明による電子放出源は、構造的に非常に安定しつつも、高くて均一な分布の電子放出が可能である。
【0035】
このような本発明は、電界電子放出特性に悪い影響を与える伝導性有機/無機物、バインダー及び高分子ペーストを使用せず、複雑な工程なしに常温で簡単に製造できて大面積化が容易である。特に、大面積の電子放出面積が得易いため、例えば、ディスプレイ装置で一つの画素に一つのCNT層を有させることもできる。
【0036】
また、懸濁液を利用してCNT層を形成するので、懸濁液中のCNT濃度の調節によってCNT層の密度調節が容易であり、したがって、所望の最適の電界電子放出源の密度具現が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、添付された図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の例示的な実施形態による単一電子放出源の概略的な構造を示す斜視図であり、図2は、その断面図である。
【0039】
本発明は、針状電子放出物質を利用する。針状電子放出物質には、中空のナノチューブ、内部が充填されたナノロッドがあり、その代表的な材料は、炭素であり、それ以外に、金属物質によって製造されることもある。以下の実施形態の説明では、針状電子放出物質の代表的な物質であるCNTを中心に説明される。しかし、針状として電子放出が可能な全ての物質が適用され、したがって、針状電子放出物質の特定の例に本発明が制限されない。
【0040】
図1及び図2を参照すれば、電子放出源10は、CNT層13が接着層12によって固定される板状カソード11とこれを支持するカソードベース14とを備える。カソード11は、ベース14に対してリング状の固定部材15を備える。固定部材15は、ベース14の突出部14aに締まりばめ状態に結合してカソード11のスカート部分11aを圧着固定する。前記板状カソード11は、ベース14とは別個に製造された板状導電材料で製造され、その表面に接着層12が形成されてCNT層13の各CNTが接着層12に接触する下段部によって強く付着される。CNT層13は、実質的に純粋CNTからなり、これは、CNTペーストを利用して製造される従来のCNT構造に比べて安定的であり、信頼度が高い。また、構造的に、板状カソード11にCNT層13が形成された状態で電子放出源10の支持構造物であるベース14に固定されるので、製造が容易である。特に、このような構造は、高温工程を要求せず、したがって、高温工程による経済的な負担や不利益がない。特に、有機物を含みうる接着層がCNTと混在せず、その下部にのみ設けられるので、電子に衝突する可能性が非常に少なく、したがって、電子衝突による有機ガスの発生が起きない。
【0041】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、図3に示したように、前記板状カソード11は、その底面に別途の接着層12aが形成されていることによって、この接着層によってベース14に対して確かに固定される。カソード11とCNT層13との間の接着層12、すなわち、CNTを固定する接着層12は、やはり前記板状カソード11自体の表面に形成される接着物質によって提供される。したがって、前記板状カソード11は、両面に接着層12,12aが塗布された状態、両面接着テープの形態に製造された後、本発明の電子放出源10の素材として適用される。前記CNTをカソード11に固定する上部の接着層12は、CNT層13の下部にのみ形成されることもあり、他の実施形態によれば、カソード11の上面全体に形成されることもある。図1では、CNT層13の下部にのみ接着層12が形成された実施形態を示す。
【0042】
前記実施形態の説明で、前記カソード11をベース14に対して固定する固定部材15は、選択的なものであって、ベース14と固定部材15とは、相補的な結合構造、すなわち、両者が一つに結合して、その間のカソード11を確かに固定するいかなる構造も適用可能である。例えば、前記突出部14aは、図4に示したように、四角形、菱形、三角形、五角形などの多角形、楕円形、星、アルファベット、ハングル、数字形態など多様な文字、図形などの形態を有し、これに固定部材15は、突出部14aと歯合わせられる相応する形態を有しうる。
【0043】
一方、前記固定部材を利用せず、図5A及び図5Bに示したように、CNT層113が接着層112によってその表面に固定されたカソード111をカソードベース114に直接溶接しうる。図5A及び図5Bの実施形態の場合、カソード111がバンド形態を有し、そして、カソードベース114は、傾いた側面を有する突出部114aを含む。これは、カソード111にCNT層を先に形成した後、カソード111の両側端部を引っ張って適切な引張力を付加した状態でカソードベース114の突出部114aに溶接されたものである。図面で、111aは、溶接点を表すものであって、このように点状の溶接点または一定の長さを有する溶接部を有しうる。本実施形態は、図1及び2に示したような固定部材15なしに直接固定される形態を例示するものであって、本発明の技術的範囲を制限しない。
【0044】
図6A及び図7Aは、さらに他の実施形態による電子放出源を示す図面であって、図6B及び図7Bは、図6A及び6Bに示された電子放出源の断面構造を示す。
【0045】
図6A及び図6Bに示された電子放出源は、図5A及び図5Bに示された実施形態の電子放出源と類似した構造であって、カソードベース124の突出部124aは、上部が湾曲された曲面を有し、この部分をカソード121が湾曲されて覆い包んでいる。カソード121がバンド形態を有し、そして、カソードベース124は、湾曲された側面を有する突出部124aを備える。これは、カソード121にCNT層123を接着層122によって固定した後、カソード121の両側端部を引っ張って適切な引張力を付加した状態でカソードベース124の突出部124aの下部側に溶接部121aによって固定される。
【0046】
図7A及び図7Bに示された電子放出源は、カソードベース134の突出部134aが上端部に湾曲された面が形成されている円柱型になっている。突出部134aに対応する部分のカソード131上のCNT層133が位置する。CNT層133は、やはり接着層132によってカソード131に固定される。
【0047】
カソード131の下端の周りのスカート131aは、固定部材135によって突出部134aに強く押されている状態である。カソード131は、アルミニウムのように、延伸が良くなる材料で形成することが湾曲された上端部を有する突出部134aによく密着させることができ、変形量が最多であるスカート131aにしわになった部分131bを含みうる。
【0048】
図8は、本発明のさらに他の実施形態による電子放出源を示す図面であって、カソード141が平板上のカソードベース144に溶接された形態を有する。すなわち、カソード141は、円盤形態であり、その中央部分にCNT層143が形成されており、その周りのスカート部分141aがカソードベース144の上面に溶接される。図面で、141bは、溶接部分を表す。
【0049】
前述した実施形態において、前記カソード111,141は、たとえ溶接によってカソードベース114,144に固定されるとしても、その下部に接着層が設けられて、さらに確かで安定した固定を図りうる。
【0050】
このような単一電子放出源は、多様な分野の電子素子に応用される。例えば、これらの電子素子には、照明用として利用される可視光源、平板ディスプレイ用バックライト装置、X−RAY装置用電子ソース、高出力マイクロウェーブ用電子ソースがある。
【0051】
前記構造で、前記カソード11,111,121,131,141は、導電体として適切に調節された電気的抵抗を有することによって、カソード11,111,121,131,141の表面に固定されたCNT層13,113,123,133,143に全体的に均一な電流供給が可能になり、したがって、CNT層13,113,123,133,143が全体的に均一な電子放出が可能になる。
【0052】
以下、本発明の単一電子放出源の製造方法による例示的な実施形態を説明する。
【0053】
まず、CNTコロイド懸濁液(以下、懸濁液)と、テンプレートとしてテフロン、セラミック、AAO(Anodic Aluminum Oxide)、ポリカーボネートなどの材料からなる濾過紙(濾過テンプレート)とを準備する。懸濁液は、溶媒及び界面活性剤に粉末状態のCNTを分散させて作ったコロイド状態の液体である。さらに均一な分散のために、超音波処理を行うことが望ましい。濾過紙は、懸濁液を濾過してその表面にCNTのみを残すが、CNT懸濁液を乾燥させてCNTのみを所定パターンで残留させて板状カソードに転写するためのものである。CNTには、SWCNT(Single−Walled Carbon Nano Tube)、DWCNT(Double−Walled CNT)、薄いMWCNT(Multi−Walled CNT)、厚いMWCNTがある。前記溶媒としては、エタノール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロベンゼンのうち何れか一つである。
【0054】
そして、前記界面活性剤は、ナトリウムドデシルベンゼンスルホン酸塩(NaDDBSCl25SONa)、ナトリウムブチルベンゼンスルホン酸塩(NaBBSCSONa)、ナトリウム安息香酸塩(CCONa)、ナトリウムドデシル硫酸塩(SDS;CH(CH11OSONa)、Triton X−100(TX100;C17(OCHCH)n−OH;n10)、ドデシルトリメチルアンモニウム臭酸塩(DTAB;CH(CH11N(CHBr)、アラビアゴムのうち何れか一つである。
【0055】
図9Aに示したように、濾過紙からなる濾過テンプレート21に前記懸濁液を所定パターンに塗布した後、これを乾燥させてCNT膜13’を形成する。懸濁液の塗布領域は、電子放出源のカソードの形態、例えば、図4に示された多様な形態の突出部の形状に対応し、応用分野の要求されるカソードの形態によって、多様な変化が可能である。ここで、懸濁液の溶媒と界面活性剤及びCNTとの比率または濃度を制御することによって、CNT密度を自由に調節でき、周辺の電気的条件による最適の電子放出密度の具現が可能であり、このような最適の条件を反復再現及び均質な密度のCNT膜を形成しうきる。懸濁液を濾過テンプレート21に形成し、CNTのみが残留し、液状物質は、濾過テンプレートを通過する。この状態で乾燥過程を進めれば、テンプレート21の表面にCNT膜13’が形成されるが、このような過程は、常温または高温状態で自然乾燥または真空乾燥過程を含みうる。
【0056】
図9Bに示したように、両面に接着層12,12aが設けられたカソード11を準備する。実際工程中には、下側接着層12aは、異質物の付着を防止する離型紙によって保護されるものであり、図面には示されていない。カソード11は、導電性材料として導電性織物、金属板が適用される。前記接着層12,12aは、導電性を有するものであって、導電性粒子、例えば、改質されたニッケルと高分子樹脂とが混合された材料で形成される。具体的に、カソード11は、アルミニウムホイール(厚さ:0.01〜0.04mm)、銅やニッケル群で製造された伝導性シート(厚さ:0.01〜0.04mm)、伝導性ファブリック(厚さ:0.01〜0.20mm)で形成される。すなわち、前記カソード11は、アルミニウム、銅、ニッケルのうち何れか一つを含有する伝導性シート及び伝導性ファブリックのうち何れか一つで形成される。
【0057】
前記接着層12,12aは、ニッケル、カーボン顔料などの伝導性パウダーとアクリルエステルポリオール混成重合体の接着樹脂との混合物であって、望ましくは、全体接触抵抗が0.1Ω/25mm未満であり、許容温度範囲が−30℃〜105℃である伝導性テープである。
【0058】
図9Cに示したように、前記テンプレート21上のCNT膜13’を前記カソード11の一側接着層12に所定圧力で接触させた後、これを分離させてテンプレート21のCNT膜13’をカソード11側に電子放出のためのCNT膜13を形成する。
【0059】
図9Dの過程は、カソード11にランダムに配置されているCNT層のCNTを垂直に整列するCNT層の表面処理方法を示す。図9Dの(a)に示したように、粘着性を有するテープ22をカソード11上のCNT層13に接着させた後、これを持ち上げて取り離す。このようにすれば、CNT層13で表面に露出されたCNTがテープ22の粘着性によってカソード11に対して垂直方向に整列される。すなわち、テープ22を利用してCNTをカソード11に対して組立てる。このようなテープ22を利用する方法以外に、図9Dの(b)に示したように、表面に粘着性を有するローラ23を前記CNT層13の表面を所定圧力で転がすことによって、CNTをカソード11に対して組立てて垂直方向に整列させうる。このような垂直整列過程で、カソード11の表面の接着層12に弱く固定されたCNTは、これから分離されて除去されるが、CNTのほとんどは、強い接着性によってその下端部がカソード11に固定されているので、その上端部が上方に持ち上げられる形態に垂直整列される。
【0060】
図9Eは、前記カソード11をカソードベース14に結合させることを示す。突出部14aを有するカソードベース14を準備した後、この上に前記カソード11を載せて置く。このとき、カソード11上のCNT膜13は、突出部14aの上面に位置させる。そして、このような状態で前記突出部14aに対応する結合球15aを有する固定部材15を準備する。図9Cないし図9Eでは、カソード11及びこの両面の接着層12,12aが非常に厚く表現されたが、これは、理解を助けるために誇張したものである。
【0061】
図9Fに示したように、前記固定部材15を前記突出部14aに結合し、前記カソード11をカソードベース14に固定する。前記固定部材15は、CNT膜の周辺のスカート部分11aを突出部14aに対して固定する。このような過程を通じて所望の単一電子放出源10を得る。図9Fには、カソード11の両面の接着層12,12aが意図的に示されなかった。
【0062】
前述された電子放出源10の製造過程は、本発明の例示的な実施形態によるものであって、多様な形態への変形が可能である。例えば、前記CNTの垂直整列のためのCNT層13の表面処理過程は、カソード11がカソードベース14に固定された状態で進められることもある。すなわち、図9Cの過程以後に、図9E及び図9Fの過程を行った後、最終的に、図9Dの(a)、(b)に示したような粘着性テープ22やローラ23によって表面処理を進めてCNT垂直整列過程を行える。しかし、本発明は、前記のようなCNTの特定表面処理による垂直整列方法に制限されず、通常の技術範囲内で多様な方法で行われる。
【0063】
本発明の特徴は、カソードが別途の板状導電体であって、その表面にCNT膜が接着層によって固定された状態でカソードベースに固定される点である。すなわち、従来には、カソードが基板に既に固定された状態でCNTが成長または固定されるが、本発明は、基板やカソードを支持するカソードベースと結合する前の状態で板状カソードにCNT膜が形成される。前述した実施形態で、カソードベースは、一般的な電子放出源の基板に該当しうる。本発明による電子放出源は、CNTがその下部の接着層によってカソードに固定されている点に特徴があるが、これは、既存のペースによる電子放出源、すなわち、CNTとペーストとが混在する形態の電子放出源とは異なる構造的な特徴を有する。
【0064】
一方、図5A、図5B及び図6に示された形態の電子放出源の製造は、図9Aないし図9Fの過程を理解することによって容易になしうる。
【0065】
図10A及び図10Bは、表面処理される前/後のCNT層を示すSEMイメージ及び発光パターンイメージである。図10Aに示したように、CNT層を表面処理する前には、CNTのほとんどがネットワーク形態にからまって横になっている形状をしており、その一部が点々と垂直に配列されっている。これらの電界電子放出の均一性を調べるために、電界放出発光パターン実験を行った。電界電子放出発光パターン実験は、ITO(Indium Tin Oxide)がコーティングされた透明ガラスに蛍光体が塗布されたアノードと、表面処理されていないCNT層を利用したカソードとで構成された2電極構造がテストされた。このとき、アノードとカソードとの距離は、400μmであった。発光パターンイメージ(図10Aの右上端のイメージ)を参照すれば、全面発光ではない部分発光が観測された。このような部分発光は、SEMイメージで観測されたように、CNTのほとんどが横になっている状態であるので、電界電子放出に寄与するCNT数が少ないためである。しかし、図10Bに示したように、表面処理して垂直整列すれば、水平に横になっているCNTが均一な長さで垂直方向に整列されていることがSEM観測で確認できる。発光パターンイメージを参照すれば、部分発光ではない全面発光がなされているということが分かる。これは、SEM測定で見られるように、CNTがほとんど垂直整列されて電界を印加したとき、垂直整列されたCNTチップの端部に電界が集中されて電界電子放出が容易になるので、全体的に均一な発光パターンを示すことが確認できる。
【0066】
図11は、CNT層の表面処理前・後のCNT電子放出源の電流密度(J(A/cm))対電界(F(V/μm))比較データグラフである。電界電子放出実験は、ステンレススチール金属板のアノードと、表面処理前・後のCNT電界電子放出源であるカソードとで構成された2電極構造体で実施し、二つの電極間の距離は、400μmであり、電子放出面積は、0.19625cmである。真空レベルは、2*10−7torrであり、印加電圧は、0Vから3500Vである。CNT電界電子放出源として使われたCNT粉末は、Thin−MWCNTであって、平均直径が約7nmである。CNTコロイド懸濁液の濃度は、20mg/lで実施した。表面処理前・後の0.1μm/cmの電流密度を得るのに必要なターンオン電界は、それぞれ1.24V/μm及び0.88V/μmであり、10μm/cmの最大電流密度を得るのに必要な電界は、それぞれ2.70V/μm及び1.98V/μmである。表面処理前より表面突出処理後に低い電界で高い電界電子放出特性を示すことが確認できる。また、伝導性テープからなるカソードとCNT層との間に接着力が良いので、高い電界でも安定した電界電子放出を示す。図11に挿入されたグラフは、接着テープで表面処理前・後のCNT電界電子放出源の電流密度対電界曲線データに一致するファウラーノードハイムプロットである。電界放出は、ほとんどファウラーノードハイム理論によるが、J=a(Eloc/φ)exp(−bφ3/2/Eloc)で表す(a,bは、定数、φは、仕事関数(ev)、Elocは、CNT電界電子放出源チップの端部にかかる電界としてEloc=βF(β:電界強化因子)、F=V/d(V:アノードとカソードとの間にかかる電圧、d:アノードとカソードとの距離)で表現される。したがって、高い電流密度(J)を得るためには、CNT電界電子放出源のチップの端部に電界(Eloc)が最大となり、仕事関数が最小となれば、小さな印加電界で高い放出電流密度が得られる。しかしながら、CNT電界電子放出源のチップの端部に電界(Eloc)を大きくかければ、CNTチップの端部が劣化し、かつ変形されて電界放出特性が低下するので、効率的でない。CNT電子放出源の形状を変化させる方法が最も効果的であるが、これと関連されるものが電界強化因子βであり、これは、アノードとカソードとの間に印加される電界(F)とCNT電界電子放出源のチップの端部にかかる電界(Eloc)との比例定数である。βは、CNT電界電子放出源の形状に関連しているので、縦横比が大きければ、βが大きく、したがって、アノードとカソードとの間に印加電界(F)が同一であっても、CNT電界電子放出源のチップの端部に大きい電界(Eloc)がかかって電界放出特性が良くなる。ファウラーノードハイムプロットで、低電界領域で傾斜が垂直に現れるが、これは、電界放出による電界電子放出特性を表し、傾斜値を求めてβ値を求めうる。表面突出処理前・後のβ値は、それぞれ2338と3337とであり、表面突出処理前に水平に横になっているCNTが、表面突出処理後に垂直に整列されることによって、β値が向上したということが分かり、これにより、電界放出特性が良くなることが確認できる。
【0067】
図12は、CNT懸濁液の濃度別に形成されたCNT電界電子放出源の表面突出処理施行後の電流密度対電界比較データグラフである。低いCNT懸濁液の濃度(1.25mg/l)を有するサンプルから順次に濃度を高めて中間CNT懸濁液の濃度(20mg/l)を有するサンプルまでの測定結果は、低い電界でターンオン電界と最大電流密度とを得、CNT懸濁液の濃度(40、80mg/l)を次第に高めたサンプルの測定結果は、ターンオン電界と最大電流密度とを得るのに必要な電界の強度が中間CNTコロイド懸濁液の濃度(20mg/l)とほぼ同一になって飽和されるということが分かる。中間CNTコロイド懸濁液の濃度(20mg/l)で優れた電界電子放出特性を示し、これは、本発明で最適化されたCNT電界電子放出密度を容易に制御しうることを表す。図12に挿入されたグラフは、CNT懸濁液の濃度による表面突出処理後の電流密度対電界曲線データに一致するファウラーノードハイムプロットである。低いCNTコロイド懸濁液の濃度(1.25mg/l)を有するサンプルから順次に濃度を高めて中間CNT懸濁液の濃度(20mg/l)を有するサンプルまでβ値が次第に良くなり、CNTコロイド懸濁液の濃度(40、80mg/l)を次第に高めたサンプルのβ値は、中間CNTコロイド懸濁液の濃度(20mg/l)とほぼ同一になって飽和されるということが分かる。前記のように、CNT濃度調節を通じて最適化された電界電子放出源密度を具現でき、これにより、最大電界放出特性が得られる。
【0068】
図13は、図10に示した比較データをCNTコロイド懸濁液の濃度によるターンオン電界、しきい電界、最大電界と電界強化因子(β)との値を比較して示すグラフである。
【0069】
図14A、図14B、図14Cは、発光面積を異ならせる3個のサンプルの輝度差を示す光学写真である。
【0070】
図14Aは、CNT膜の直径が5mm(0.19625cm)、図14Bは、10mm(0.785cm2)、図14Cは、20mm(3.14cm)である。電子放出源の基本的な形態は、図1に示された構造のものであって、ITOがコーティングされた透明ガラスに蛍光体が塗布されたアノード、アノードとカソードとの間隔は、400μm、真空レベルは、2*10−7torr、そして、印加電圧は、0Vないし3500Vである。図14A、図14B、図14Cを通じて非常に満足した発光、すなわち、発光面が全体的に非常に均一な輝度を表しており、発光面積が大きくなっても、非常に強い発光が起きるということが分かる。
【0071】
図15は、CNTの種類別電子放出の安定性をテストした結果を示すが、DWCNTに比べてMWCNTがさらに安定的であるということが分かる。
【0072】
前記のような単一電子放出源を応用することによって、ディスプレイ装置に適用が可能である。ディスプレイ装置は、一般的に、X−Yマトリックス状態で電気的アドレッシングが可能な画素を有するが、カソードは、多数平行なストライプ状態に配置され、したがって、各カソードは、画面の何れか一方向を包括する長さを有し、その表面に各画素に対応するCNT層を備える。
【0073】
図16は、ディスプレイ装置の基板30上に配置された本発明によるカソード31の配列を示す平面図であり、図17は、図16のA−A線による断面図である。カソード31の表面には、ディスプレイ装置の画素間の間隔に対応する間隔をおいてCNT層32が形成されている。前記カソード31は、導電性または電気的抵抗性を有する物質で形成されるものとして別途に製作された後、溶接または接着層31bによって基板30に固定される。そして、前記CNT層32も、その下部の接着層31aによってカソード31の上面に固定されている。前記CNT層32を固定する接着層31aは、図16に示したように、カソード31の上面全体に形成されることもあるが、他の実施形態によれば、CNT層32の下部にのみ存在しうる。
【0074】
図18は、本発明の例示的な実施形態によるディスプレイ装置の構造を概略的に示す断面図である。
【0075】
図18を参照すれば、背面板の基板30の上面にカソード31が接着層31bによって付着されている。前記接着層31bは、基板30にカソード31を固定するための選択的要素であり、接着層31bを利用しない場合、前述した単一電子放出ソースの実施形態のように、カソード31が溶接やその他の接合法によって固定される。前記カソード31の上面には、CNT層32が形成されているので、これは、その下部の接着層31aによって固定される。前記カソード31は、基板30とは別途の過程で製造されるものであり、前記のような接着層やその他の手段によって基板30に固定される。前記カソード31に対するCNT層32の製造は、前述した製造方法を応用しうる。一方、前記カソード31上には、前記CNT層32が位置する貫通孔を有する絶縁層40が設けられ、絶縁層40の上には、電子の抽出のためのグリッド41が設けられる。一方、グリッド41上には、別途に製作された後に一つに結合された前面板構造体が設けられる。前面板構造体は、前面板50とその内面に形成されるアノード51とを備える。そして、アノード51の表面には、蛍光体層52が形成されている。
【0076】
前記カソード31上のCNT層32の製造は、CNT懸濁液を利用するが、バンド上のカソード31に多数のCNT層32が設けられるので、一つのカソード31に対応する形態の濾過テンプレートの多数の領域にCNT懸濁液を塗布する必要がある。このために、カソードに対して印刷方法またはマスクを利用して、所定の領域にのみCNT懸濁液を供給しうる。
【0077】
すなわち、図19Aに示したように、ノズルを利用してバンド形態の濾過テンプレート60にCNT懸濁液を供給しうる。このように、懸濁液を供給した後、前述した実施形態のように乾燥過程を経た後にカソードに転写することによって、図16、17、及び18に示したような形態のCNT層32を有するカソード31が得られる。そして、他の方法として、図19Bに示したように、一時に懸濁液を供給する方法として、CNT層に対応する貫通孔を有するマスク80を濾過テンプレート60上に載せた状態で懸濁液を供給することによって、速い時間内に濾過テンプレート60の与えられた領域にCNT懸濁液32”を供給しうる。この場合、マスク80に懸濁液が接触された状態であるので、乾燥前に分離すれば、懸濁液がマスク80に付けられるので、テンプレート60上に完全な形態のCNT層を形成できないので、適切にまたは完全乾燥されたCNT層32’が形成された後、マスク80を濾過テンプレート60から分離することが望ましい。このように、テンプレート60上に多数のCNT層が形成された後、前述したような方法によってカソードに転写する。
【0078】
前述したように、本発明によれば、懸濁液フィルタリング法を使用して形成されたCNT薄膜を、接着力の強い伝導性テープを利用して容易に転写でき、また、前記CNT薄膜と前記伝導性テープ相互間の接着強度が非常に優秀であるため、簡単な表面後処理工程を通じて前記CNT薄膜の電界電子放出特性を向上し、高い電界や電界電子放出の間にCNT薄膜の脱着なしに安定的で信頼性のある電界電子放出特性が得られる。また、均一に分散されたCNTコロイド懸濁液の濃度を調節することによって、前記CNT薄膜の活性電子放出サイト密度を容易にでき、それと共に前記方法を使用すれば、均一な特性を有するCNT薄膜を大面積に簡単に製作することができるので、大面積CNT電界電子放出源を製作しうる。
【0079】
本発明は、図面に示した実施形態を参照して説明されたが、それは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるということが分かるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、電子放出関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の例示的な実施形態による単一電子放出源の概略的な構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示された電子放出源の断面図である。
【図3】本発明による電子放出源で、カソードの積層構造を示す断面図である。
【図4】本発明による電子放出源で、カソードを支持するカソードベースの多様な変形例を示す図面である。
【図5A】本発明の他の例示的な実施形態による電子放出源の斜視図である。
【図5B】図5Aに示された本発明による電子放出源の側面図である。
【図6A】本発明のさらに他の例示的な実施形態による電子放出源の斜視図である。
【図6B】図6Aに示された本発明による電子放出源の側面図である。
【図7A】本発明の他の例示的な実施形態による電子放出源の斜視図である。
【図7B】図7Aに示された本発明による電子放出源の側面図である。
【図8】本発明のさらに他の例示的な実施形態による電子放出源の斜視図である。
【図9A】本発明の例示的な実施形態による電子放出源の製造方法を示す工程図である。
【図9B】本発明の例示的な実施形態による電子放出源の製造方法を示す工程図である。
【図9C】本発明の例示的な実施形態による電子放出源の製造方法を示す工程図である。
【図9D】本発明の例示的な実施形態による電子放出源の製造方法を示す工程図である。
【図9E】本発明の例示的な実施形態による電子放出源の製造方法を示す工程図である。
【図9F】本発明の例示的な実施形態による電子放出源の製造方法を示す工程図である。
【図10A】表面処理されていないCNT層を示すSEMイメージである。
【図10B】表面処理されたCNT層を示すSEMイメージである
【図11】CNT層の表面処理前及び後の電子放出源の電流密度(J(A/cm2))と電界(F(V/μmμm))とを比較したデータグラフである。
【図12】CNT懸濁液の濃度別に形成されたCNT電界電子放出源の表面突出処理施行後の電流密度と電界とを比較して示すグラフである。
【図13】図11に示された比較データをCNTコロイド懸濁液の濃度によるターンオン電界、しきい電界、最大電界と電界強化因子(β)値との比較解釈グラフである。
【図14A】本発明によって製造されたサンプルの輝度を示す光学写真である。
【図14B】本発明によって製造されたサンプルの輝度を示す光学写真である。
【図14C】本発明によって製造されたサンプルの輝度を示す光学写真である。
【図15】CNTの種類別電子放出安定性をテストした結果を示す図面である。
【図16】本発明の例示的な実施形態によるディスプレイ装置のカソード配列を示す平面図である。
【図17】図16のA−A’線による断面図である。
【図18】本発明の例示的な実施形態によるディスプレイ装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図19A】本発明の例示的な実施形態によるディスプレイのカソード製造方法を示す図面である。
【図19B】本発明の他の例示的な実施形態によるディスプレイのカソード製造方法を示す図面である。
【符号の説明】
【0082】
10 電子放出源
11 板状カソード
11a スカート部分
12,12a 接着層
13 CNT層
14 カソードベース
14a 突出部
15 固定部材


































【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性板状カソードと、
前記カソードの表面に形成された針状電子放出物質層と、
前記カソードを支持するベースと、
前記ベースに前記カソードを固定する固定要素と、を備える電子放出源。
【請求項2】
前記カソードは、電気的抵抗を有することを特徴とする請求項1に記載の電子放出源。
【請求項3】
前記カソードの一側面及び他側面のうち少なくとも何れか一側に接着層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子放出源。
【請求項4】
前記カソードは、前記ベースに対して溶接されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子放出源。
【請求項5】
前記ベースには、前記針状放出物質層に対応する突出部が形成されており、前記固定要素は、前記突出部に前記カソードのエッジ部分を圧着固定する固定部材であることを特徴とする請求項1に記載の電子放出源。
【請求項6】
前記固定要素は、前記ベースと共に相補的結合構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電子放出源。
【請求項7】
前記電子放出物質層は、SW(Single−Walled) CNT、DW(Double Walled) CNT、MW(Multi−Walled) CNT、ナノワイヤのうち少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする請求項1ないし6のうち何れか1項に記載の電子放出源。
【請求項8】
前記カソードは、アルミニウム、銅、ニッケルのうち何れか一つを含有する伝導性シート及び伝導性ファブリックのうち何れか一つで形成されたことを特徴とする請求項1に記載の電子放出源。
【請求項9】
テンプレートに電子放出物質層を形成する工程と、
前記CNT層を接着層が形成された板状カソードに転写する工程と、
前記カソードに転写された電子放出物質層を表面処理して、電子放出物質をカソードに対して組立てる整列工程と、を含む電子放出源の製造方法。
【請求項10】
前記テンプレートは、濾過性を有する濾過テンプレートであることを特徴とする請求項9に記載の電子放出源の製造方法。
【請求項11】
前記テンプレート上に電子放出物質層を形成する工程は、
テンプレート上に電子放出物質が分散された懸濁液を供給する工程と、
前記懸濁液を乾燥させる工程と、を含むことを特徴とする請求項9または10に記載の電子放出源の製造方法。
【請求項12】
前記表面処理工程は、接着性テープを利用した方法、ローララビング法、イオンビーム照射法、プラズマ処理法、レーザビーム照射法、中性子ビーム照射法、水素ガス露出法のうち何れか一つを利用することを特徴とする請求項9に記載の電子放出源の製造方法。
【請求項13】
前記懸濁液は、溶媒と界面活性剤とを含むことを特徴とする請求項11に記載の電子放出源の製造方法。
【請求項14】
基板の上面に固定されるカソードと、
前記カソードの上面に形成される一定間隔に形成される多数の電子放出物質層と、
前記電子放出物質層を前記カソードに固定する固定要素と、
前記基板に離隔されている前面板と、
前記電子放出物質層に対向する前記前面板の内面に形成されるアノードと、
前記アノードの表面に形成される蛍光体層と、
前記カソードと蛍光体層との間に位置して電子放出物質層から電子を抽出するグリッドと、を備えるディスプレイ。
【請求項15】
前記カソードは、電気的抵抗を有することを特徴とする請求項14に記載のディスプレイ。
【請求項16】
前記カソードの一側面及び他側面のうち少なくとも何れか一側に前記電子放出物質層を固定する接着層が形成されていることを特徴とする請求項14または15に記載のディスプレイ。
【請求項17】
前記カソードは前記ベースに対して溶接されていることを特徴とする請求項14または15に記載のディスPELEI。
【請求項18】
アノードが形成される前面板とカソードが形成される基板とを備えるディスプレイの製造方法において、
バンド状のテンプレートに多数の電子放出物質層を一定間隔に形成する工程と、
前記電子放出物質層を接着層が形成されたバンド状のカソードに転写する工程と、
前記カソードに転写された電子放出物質層を表面処理して電子放出物質をカソードに対して組立てる表面処理工程と、
前記カソードを背面板に固定する工程と、を含むディスプレイの製造方法。
【請求項19】
前記テンプレートは、濾過性を有する濾過テンプレートであることを特徴とする請求項18に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項20】
前記テンプレート上に多数の電子放出物質層を形成する工程は、
テンプレート上に電子放出物質が分散された懸濁液を供給する工程と、
前記懸濁液を乾燥させる工程と、を含むことを特徴とする請求項18または19に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項21】
前記カソードの一側面及び他側面のうち少なくとも何れか一側に接着層が形成されていることを特徴とする請求項18に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項22】
前記表面処理工程は、接着性テープを利用した方法、ローララビング法、イオンビーム照射法、プラズマ処理法、レーザビーム照射法、中性子ビーム照射法、水素ガス露出法のうち何れか一つを利用することを特徴とする請求項18に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項23】
前記懸濁液は、溶媒と界面活性剤とを含むことを特徴とする請求項20に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項24】
前記懸濁液を供給する工程は、ノズルを利用して前記懸濁液を供給することを特徴とする請求項20に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項25】
前記懸濁液を供給する工程は、前記テンプレートに電子放出物質層に対応する貫通孔を有するマスクを付着させた後、前記懸濁液を供給することを特徴とする請求項20に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項26】
請求項1ないし8のうち何れか1項に記載の電子放出源を含む電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【公開番号】特開2009−212075(P2009−212075A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183240(P2008−183240)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508212495)高麗大学校 産学協力団 (1)
【Fターム(参考)】