電子機器、および熱輸送部材
【課題】複数の発熱部品との間の熱伝導効率を向上させることができる熱輸送部材を備えた電子機器を得る。
【解決手段】電子機器1は、第1および第2の発熱部品11,12と、熱輸送部材22と、押さえ部材27とを具備する。熱輸送部材22は、ヒートパイプ34と、少なくとも第1の発熱部品11に対向したヒートパイプ34の外面41を覆った変形可能な外装部材35と、外装部材35とヒートパイプ34との間に封入された流動熱伝導材36とを有している。押さえ部材28は、熱輸送部材22を押さえて、ヒートパイプ34を第2の発熱部品12に対して押圧している。ヒートパイプ34は、流動熱伝導材36を介さずに第2の発熱部品12に熱接続された領域34baを有し、且つ、ヒートパイプ34は、流動熱伝導材36を間に挟んで第1の発熱部品11に熱接続されている。
【解決手段】電子機器1は、第1および第2の発熱部品11,12と、熱輸送部材22と、押さえ部材27とを具備する。熱輸送部材22は、ヒートパイプ34と、少なくとも第1の発熱部品11に対向したヒートパイプ34の外面41を覆った変形可能な外装部材35と、外装部材35とヒートパイプ34との間に封入された流動熱伝導材36とを有している。押さえ部材28は、熱輸送部材22を押さえて、ヒートパイプ34を第2の発熱部品12に対して押圧している。ヒートパイプ34は、流動熱伝導材36を介さずに第2の発熱部品12に熱接続された領域34baを有し、且つ、ヒートパイプ34は、流動熱伝導材36を間に挟んで第1の発熱部品11に熱接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に実装された発熱部品を冷却する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ポータブルコンピュータのような電子機器は、複数の発熱部品からの熱を1本のヒートパイプで受熱するマルチ受熱構造を備えることがある。このヒートパイプは、各発熱部品に対する熱接続性を高めるために、金具によって各発熱部品に向けて押圧されている。
【0003】
特許文献1は、ヒートパイプを備えた冷却構造が開示されている。この冷却構造は、柔軟性を有する袋の中にヒートパイプの受熱部を装填するとともに、この袋の中に伝熱用液体を封入している。この袋は、発熱部品に接触させられている。
【特許文献1】特開平3−3352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各発熱部品には必ず部品公差が存在する。複数の発熱部品に対して1本のヒートパイプを熱接続する場合、複数の発熱部品に含まれる部品公差を吸収する必要がある。そのため、主要な発熱部品とヒートパイプとの間に熱伝導グリスを介在させるとともに、残りの発熱部品とヒートパイプとの間に柔軟性のある熱伝導シートを介在させている。
【0005】
しかしながら熱伝導シートは、熱抵抗値が大きいため、熱接続性において熱伝導グリスに劣る。そのため、マルチ受熱構造において、いくつかの発熱部品とヒートパイプとの間の熱伝導効率は、相対的に低いものになっている。
【0006】
特許文献1に記載の冷却構造では、複数の発熱部品それぞれとヒートパイプとの間に、比較的大きな量の伝熱用液体が介在されている。このような構成では、発熱部品とヒートパイプとの間に高い熱伝導効率を確保することは難しい。
【0007】
本発明の目的は、複数の発熱部品との間の熱伝導効率を向上させることができる熱輸送部材、および熱輸送部材を備えた電子機器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの形態に係る電子機器は、筐体と、上記筐体に収容され、第1の発熱部品と第2の発熱部品とが実装された回路基板と、上記第1の発熱部品に対向した第1の受熱部と上記第2の発熱部品に対向した第2の受熱部とを有した熱輸送部材と、上記回路基板とは反対側から上記熱輸送部材に対向した押さえ部材とを具備している。上記熱輸送部材は、上記第1の受熱部と第2の受熱部とに亘って延びたヒートパイプと、少なくとも上記第1の発熱部品に対向した上記ヒートパイプの外面を覆った変形可能な外装部材と、上記外装部材と上記ヒートパイプとの間に封入された流動熱伝導材とを有している。上記押さえ部材は、上記熱輸送部材の第2の受熱部を押さえて、上記ヒートパイプを上記第2の発熱部品に対して押圧している。上記ヒートパイプは、上記押さえ部材に押されて上記第2の受熱部で上記流動熱伝導材を介さずに上記第2の発熱部品に熱接続された領域を有しており、且つ、上記ヒートパイプは、上記第1の受熱部で上記流動熱伝導材を間に挟んで上記第1の発熱部品に熱接続されている。
【0009】
本発明の一つの形態に係る熱輸送部材は、回路基板に実装された第1の発熱部品に対向する第1の受熱部と、上記回路基板に実装された第2の発熱部品に対向する第2の受熱部とを備えた熱輸送部材である。この熱輸送部材は、上記第1の受熱部と第2の受熱部とに亘って延びたヒートパイプと、少なくとも上記第1の発熱部品に対向する上記ヒートパイプの外面を覆った変形可能な外装部材と、上記外装部材と上記ヒートパイプとの間に封入された流動熱伝導材とを有している。上記ヒートパイプは、押さえ部材に押されて上記第2の受熱部で上記流動熱伝導材を介さずに上記第2の発熱部品に熱接続される領域を有し、且つ、上記ヒートパイプは、上記第1の受熱部で上記流動熱伝導材を間に挟んで上記第1の発熱部品に熱接続される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱輸送部材と複数の発熱部品との間の熱伝導効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を、ポータブルコンピュータに適用した図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1ないし図6は、本発明の第1の実施形態に係る電子機器としてのポータブルコンピュータ1を開示している。図1に示すように、ポータブルコンピュータ1は、電子機器本体である本体ユニット2と、表示ユニット3とを備えている。
【0012】
本体ユニット2は、扁平な箱状に形成された筐体4(本体筐体)を有する。筐体4は、上壁4a、周壁4b、および下壁4cを有する。上壁4aは、キーボード5を支持している。筐体4は、回路基板6(図2参照)を収容している。
【0013】
図1に示すように、表示ユニット3は、表示筐体7と、この表示筐体7に収容された表示パネル8とを備えている。表示パネル8は、表示画面8aを有する。表示画面8aは、表示筐体7の前面の開口部7aを通じて表示筐体7の外部に露出している。
【0014】
表示ユニット3は、例えば一対のヒンジ部9a,9bを介して、筐体4の後端部に支持されている。表示ユニット3は、筐体4の上壁4aを上方から覆うように倒される閉じ位置と、上壁4aに対して立て起こされる開き位置との間で回動可能である。
【0015】
図2および図5に示すように、回路基板6には、第1および第2の発熱部品11,12が実装されている。第1および第2の発熱部品11,12は、それぞれ使用時に熱を発する電子部品であり、例えばCPU、グラフィックチップ、ノース・ブリッジ(登録商標)、またはメモリなどが具体例として挙げられる。ただし本発明でいう発熱部品は、上記の例に限らず、放熱が望まれる種々の部品が該当する。本実施形態においては、第1および第2の発熱部品11,12は、例えば回路基板6の同じ面6aに実装されている。
【0016】
ここで、第2の発熱部品12は、いわゆる主要部品であり、第1の発熱部品11よりも冷却が必要である。第2の発熱部品12は、例えば第1の発熱部品11よりも消費電力(すなわち発熱量)が大きい。または、第2の発熱部品12は、第1の発熱部品11に比べて消費電力が小さいものの、第1の発熱部品11に比べて規格温度の上限も低いために、第1の発熱部品11よりも冷却が必要な部品である。なお「規格温度」とは、いわゆるスペック温度であり、その部品の動作が保障されている温度域である。第2の発熱部品12の一例は、CPU(Central Processing Unit)であり、第1の発熱部品11の一例は、CPU以外の発熱部品である。
【0017】
図2に示すように、筐体4内には、第1および第2の発熱部品11,12を冷却するマルチ受熱タイプの冷却構造20が設けられている。この冷却構造20は、例えば、冷却ファン21、熱輸送部材22、ヒートシンク23、第1および第2の受熱部材24,25、および第1および第2の押さえ部材26,27を備えている。
【0018】
冷却ファン21は、筐体4内に収容されているとともに、ファンケース31と、このファンケース31内で回転駆動されるファンブレード32とを備える。冷却ファン21は、筐体4内に開口する吸気口31aと、上記ヒートシンク23に対向する排気口(図示しない)とを有する。冷却ファン21は、ヒートシンク23に向けて空気を吐出し、ヒートシンク23を冷却する。
【0019】
図2に示すように、熱輸送部材22は、筐体4内を延びるとともに、第1および第2の受熱部22a,22bと、放熱部22cとを有する。第1の受熱部22aは、第1の発熱部品11に対向するとともに、第1の発熱部品11に熱接続されている。第2の受熱部22bは、第2の発熱部品12に対向するとともに、第2の発熱部品12に熱接続されている。放熱部22cは、冷却ファン21に対向するとともに、ヒートシンク23が取り付けられ、ヒートシンク23に熱接続されている。熱輸送部材22は、第1および第2の発熱部品11,12の発する熱をヒートシンク23まで運ぶ。
【0020】
図3に示すように、熱輸送部材22は、ヒートパイプ34、外装部材35、および流動熱伝導材36を有する。ヒートパイプ34は、熱輸送部材22の略全長に亘って延びている。すなわちヒートパイプ34は、第1および第2の受熱部22a,22b、並びに放熱部22cに亘って延びている。
【0021】
ヒートパイプ34は、第1の受熱部22aに位置する第1の部分34a、第2の受熱部22bに位置する第2の部分34b、および放熱部22cに位置する第3の部分34cを有する。ヒートパイプ34は、内部が中空に形成されたコンテナと、このコンテナ内に封入された作動液(冷媒)とを有する。ヒートパイプ34は、作動液の蒸発と凝縮を利用して第1および第2の部分34a,34bが受熱した熱を第3の部分34cまで移動させる。なおヒートパイプ34の断面形状は、丸管、扁平状、略矩形状のいずれでもよく、これら以外の形状であってもよい。ヒートパイプ34は、剛性を有する。
【0022】
図3に示すように、外装部材35は、少なくとも第1の発熱部品11に対向するヒートパイプ34の外面41を覆っている。本実施形態に係る外装部材35は、袋状に形成されてヒートパイプ34を内包している。すなわち外装部材35は、ヒートパイプ34の全周囲を取り囲み、ヒートパイプ34を完全に覆っている。これにより、熱輸送部材22は、ヒートパイプ34と外装部材35とから成る2層構造を有している。外装部材35とヒートパイプ34との間には、隙間Sが設けられている。この隙間Sは、第1および第2の発熱部品11,12に含まれる部品公差を吸収するための隙間であり、例えば0.5mm〜1.0mmの厚さを有する。
【0023】
外装部材35は、例えば可撓性(または柔軟性)を有し、変形可能である。外装部材35は、ヒートパイプ34との間の隙間Sの大きさを変えることができる。外装部材35は、例えば金属材料で形成されている。さらに具体的には、外装部材35は、例えばアルミニウムや銅のような熱伝導率が比較的高い材料で形成されている。なお、外装部材35の材料は、金属以外の材料であってもよく、特に限定されるものではない。
【0024】
図3に示すように、外装部材35とヒートパイプ34との間には、流動熱伝導材36が封入されている。流動熱伝導材36は、熱伝導性を有するとともに、流動性を有する。流動熱伝導材36は、外装部材35とヒートパイプ34との間の隙間Sの形状に合わせて熱輸送部材22内を移動可能である。
【0025】
流動熱伝導材36の一例は、例えば銅粉のような金属粉や、シリコン系熱伝導グリス、または金属系熱伝導グリスなどである。なお流動熱伝導材36の材料は、特に限定されるものではなく、例えば熱伝導性を有する液体でもよい。流動熱伝導材36は、例えば、外装部材35とヒートパイプ34との間の隙間Sに空隙率が略ゼロの状態で封入されている。なお上記空隙率は特に限定されるものではなく、例えば50%程度でもよい。
【0026】
図4に示すように、ヒートシンク23は、熱輸送部材22の放熱部22cに直接取り付けられている。ヒートシンク23は、複数のフィン43(すなわちフィン板)を有したフィンユニットである。各フィン43は、熱輸送部材22の放熱部22cで外装部材35の外面に直接取り付けられ、外装部材35に熱接続されている。例えば外装部材35が金属材料で形成されている場合、各フィン43は、外装部材35の外面に半田付けされる。
【0027】
図5および図6に示すように、第1の受熱部材24は、熱輸送部材22の第1の受熱部22aと第1の発熱部品11との間に介在するとともに、第1の発熱部品11に熱接続されている。第1の受熱部材24は、例えば金属製の受熱ブロックである。第1の受熱部材24と第1の発熱部品11との間には、熱接続部材44が設けられている。熱接続部材44は、例えばシリコン系の熱伝導グリスである。
【0028】
第2の受熱部材25は、熱輸送部材22の第2の受熱部22bと第2の発熱部品12との間に介在するとともに、第2の発熱部品12に熱接続されている。第2の受熱部材25は、例えば金属製の受熱ブロックである。第2の受熱部材25と第2の発熱部品12との間には、上記と同様の熱接続部材44が設けられている。なお、第1の発熱部品11に比べて第2の発熱部品12の方が背が低い場合(部品高さが低い場合)は、第2の受熱部材25の厚みを調整して対応する。
【0029】
なお、熱輸送部材22の第1および第2の受熱部22a,22bは、第1および第2の受熱部材24,25を介在させずに、第1および第2の発熱部品11,12に直接に熱接触してもよい。
【0030】
次に、第1および第2の押さえ部材26,27について説明する。なお説明の都合上、第2の押さえ部材27から説明する。第2の押さえ部材27は、本発明でいう「押さえ部材」の一例である。第1の押さえ部材26は、本発明でいう「他の押さえ部材」の一例である。
【0031】
図5および図6に示すように、第2の押さえ部材27(例えば第2の押さえ金具)は、押圧部27aと、脚部27bとを有する。押圧部27aは、例えば板状に形成されるとともに、回路基板6とは反対側から熱輸送部材22に対向している。脚部27bは、押圧部27aの周縁部から回路基板6に向いて延びており、回路基板6に固定されている。押圧部27aと脚部27bは、協働して板ばね構造を形成している。
【0032】
第2の押さえ部材27は、熱輸送部材22の第2の受熱部22bを押さえて、ヒートパイプ34の第2の部分34bを第2の発熱部品12に対して押圧している。第2の押さえ部材27は、第2の発熱部品12に向けてヒートパイプ34の第2の部分34bを押圧している。詳しく述べると、図5に示すように、外装部材35は、ヒートパイプ34よりも回路基板6とは反対側(図5中でヒートパイプ34よりも上側)となる第1の領域35aと、ヒートパイプ34よりも回路基板6側(図5中でヒートパイプ34よりも下側)となる第2の領域35bとを含む。
【0033】
第2の押さえ部材27は、比較的大きな力で熱輸送部材22の第2の受熱部22bを第2の発熱部品12に向けて押さえる。これにより、外装部材35の第1の領域35aがヒートパイプ34に向けて変形し、外装部材35の第1の領域35aとヒートパイプ34との間の隙間Sが潰されている。すなわち外装部材35の第1の領域35aとヒートパイプ34との間の隙間Sにあった流動熱伝導材36が他の領域へ追い出され、外装部材35の第1の領域35aがヒートパイプ34に当接している。
【0034】
これにより、外装部材35を押さえる第2の押さえ部材27の押圧力がヒートパイプ34に作用する。すなわち第2の押さえ部材27がヒートパイプ34を第2の発熱部品12に向けて押圧している。
【0035】
また、熱輸送部材22が第2の発熱部品12に向けて押圧されることで、外装部材35の第2の領域35bが第2の発熱部品12から反力を受けてヒートパイプ34に向いて変形し、外装部材35の第2の領域35bとヒートパイプ34との間の隙間Sが潰されている。すなわち、外装部材35の第2の領域35bとヒートパイプ34との間の隙間Sにあった流動熱伝導材36が他の領域へ追い出されている。そしてヒートパイプ34は、第2の受熱部22bで外装部材35に当接し、外装部材35を間に挟んで第2の発熱部品12に熱接続されている。
【0036】
図5および図6に示すように、ヒートパイプ34は、第2の押さえ部材27に押されて、第2の受熱部22bでその実装高さおよび姿勢が定まっている。すなわちヒートパイプ34は、第2の発熱部品12の部品公差に従って(応じて)、実装高さや姿勢が定まっている。ヒートパイプ34は、第2の押さえ部材27と第2の発熱部品12との間で固定されている。ヒートパイプ34の第2の部分34bは、第2の発熱部品12との間に流動熱伝導材36を実質的に挟まない。ヒートパイプ34の第2の部分34bは、流動熱伝導材36を介さずに第2の発熱部品12に熱接続された領域34baを有している。
【0037】
なお、「流動熱伝導材を介さずに第2の発熱部品に熱接続された領域を有している」とは、ヒートパイプの第2の部分の全部が流動熱伝導材を介さずに第2の発熱部品に熱接続されていてもよく、また、ヒートパイプの第2の部分の一部が流動熱伝導材を介さずに第2の発熱部品に熱接続されていてもよいことを意味する。
【0038】
図5および図7に示すように、第1の押さえ部材26(例えば第1の押さえ金具)は、押圧部26aと、脚部26bとを有する。押圧部26aは、例えば板状に形成されるとともに、回路基板6とは反対側から熱輸送部材22に対向している。脚部26bは、押圧部26aの周縁部から回路基板6に向いて延びており、回路基板6に固定されている。押圧部26aと脚部26bは、協働して板ばね構造を形成している。
【0039】
第1の押さえ部材26は、比較的小さな力で、熱輸送部材22の第1の受熱部22aを上記第1の発熱部品11に向けて押さえている。第1の受熱部22aでは、外装部材35の第1の領域35aとヒートパイプ34との間に隙間Sが存在し、この隙間Sに流動熱伝導材36が入り込んでいる。すなわち第1の押さえ部材26は、第1の受熱部22aで当該第1の押さえ部材26とヒートパイプ34との間に流動熱伝導材36を介在させて外装部材35を第1の発熱部品11に対して押圧している。第1の押さえ部材26は、第1の発熱部品11に向けて外装部材35を押圧している。このため、外装部材35を押さえる第1の押さえ部材26の押圧力は、ヒートパイプ34に作用しない。
【0040】
また第1の受熱部22aでは、外装部材35の第2の領域35bとヒートパイプ34との間に隙間Sが存在し、この隙間Sに流動熱伝導材36が入り込んでいる。すなわち第1の受熱部22aでは、ヒートパイプ34は、第1の発熱部品11との間に流動熱伝導材36を挟んで、流動熱伝導材36を介して第1の発熱部品11に熱接続されている。すなわち、第1の受熱部22aでは、ヒートパイプ34は、外装部材35の中で浮遊した状態にある。
【0041】
次に、冷却構造20の作用について説明する。
第2の押さえ部材27がヒートパイプ34を押さえることで、第2の受熱部22bでは、ヒートパイプ34、外装部材35、第2の受熱部材25、および第2の発熱部品12が互いに密に接触する。これにより、ヒートパイプ34の第2の部分34bは、第2の発熱部品12に比較的強固に熱接続されている。
【0042】
第1の押さえ部材26が外装部材35を押さえることで、第1の受熱部22aでは、外装部材35、第1の受熱部材24、および第1の発熱部品11が互いに密に接触する。これによりヒートパイプ34の第1の部分34aは、第1の発熱部品11にある程度強固に熱接続されている。
【0043】
また、第2の押さえ部材27が熱輸送部材22を押さえることで、第2の押さえ部材27とヒートパイプ34との間の隙間S、およびヒートパイプ34と第2の発熱部品12の間の隙間Sにあった流動熱伝導材36が他の領域へ追い出される。この追い出された流動熱伝導材36の一部は、ヒートパイプ34と第1の発熱部品11との間の隙間Sに入り込み、外装部材35を第1の発熱部品11に向けて押している。これにより、外装部材35と第1の発熱部品11との間の熱接続性が高まる。
【0044】
ポータブルコンピュータ1を使用すると、第1および第2の発熱部品11,12が発熱する。ヒートパイプ34の第2の部分34bの全部または一部は、流動熱伝導材36を介さずに、外装部材35、第2の受熱部材25、および熱接続部材44を介して、第2の発熱部品12の発する熱を受熱する。ヒートパイプ34の第1の部分34aは、流動熱伝導材36、外装部材35、第1の受熱部材24、および熱接続部材44を介して、第1の発熱部品11の発する熱を受熱する。
【0045】
ヒートパイプ34は、第1および第2の受熱部22a,22bで受け取った熱を第3の部分34cに移動させる。第3の部分34cに移動した熱は、ヒートシンク23に伝えられ、冷却ファン21によって冷却される。
【0046】
このような構成のポータブルコンピュータ1によれば、熱輸送部材22と複数の発熱部品11,12との間の熱伝導効率を向上させることができる。すなわち、本実施形態に係る熱輸送部材22は、第1および第2の受熱部22a,22bに亘って延びたヒートパイプ34と、変形可能な外装部材35と、外装部材35とヒートパイプ34との間に封入された流動熱伝導材36とを有している。そのため、ヒートパイプ34の実装高さや姿勢が第2の発熱部品12によって規定されても、第1および第2の発熱部品11,12の間にある部品公差t(図6参照)に応じて外装部材35が変形し(上下に動き)、第1および第2の発熱部品11,12が有する部品公差が吸収される。
【0047】
これにより熱輸送部材22は、熱抵抗が大きな熱伝導シートを使用することなく部品公差を吸収し、第1および第2の発熱部品11,12に比較的強固に熱接続することができる。これにより、ポータブルコンピュータ1が冷却可能な消費電力が増加する。
【0048】
ヒートパイプ34は、押さえ部材27に押されて流動熱伝導材36を介さずに第2の発熱部品12に熱接続されている。これにより、主要な発熱部品である第2の発熱部品12とヒートパイプ34との間の高い熱接続性が確保されている。
【0049】
また、ヒートパイプ34は、流動熱伝導材36を間に挟んで第1の発熱部品11に熱接続されている。これにより、押さえ部材27によってヒートパイプ34に加わる押圧力が第1の発熱部品11に作用しない。つまり、第1の発熱部品11とヒートパイプ34との間の熱接続性を確保しつつ、第1の発熱部品11の破損が防止される。
【0050】
流動熱伝導材36は、ヒートパイプ34と外装部材35との間に封入されるものであるため、材質選択の自由度が大きく、熱伝導シートよりも高い熱伝導率を有するものを採用しやすい。すなわち、流動熱伝導材36は筐体4内に直接露出されるものでないため、導電性を有するものも流動熱伝導材36として採用可能になる。
【0051】
例えば、流動熱伝導材36として金属系熱伝導グリス(金属系の添加物(基材)が入ったグリス)を採用することができる。金属系熱伝導グリスは、シリコン系熱伝導グリスよりも熱接続性に優れているが、回路基板に触れるとショートするおそれがあるので、一般的には使用できない。しかしながら、本実施形態の熱輸送部材22では、流動熱伝導材36は外装部材35内に封入されているので、ショートのおそれなく金属系熱伝導グリスを使用することができる。
【0052】
外装部材35が柔軟性を有すると、第1の受熱部材24が第1の発熱部品11に対して傾斜するおそれが小さく、第1の受熱部材24と第1の発熱部品11との間の熱接続部材44の流出(例えばグリスポンプアウト)が防がれる。
【0053】
外装部材35が金属材料で形成されていると、外装部材35の熱伝導率が高いため、ヒートパイプ34と第1および第2の発熱部品11,12の間の熱伝導効率がさらに向上する。
【0054】
本実施形態に係る外装部材35は、袋状に形成されてヒートパイプ34を内包している。このような外装部材35は、比較的形成しやすく、コストダウンを図りやすい。ここで、ヒートパイプ34が、第2の発熱部品12との間に外装部材35を挟み込み、外装部材35に当接していると、袋状に形成された外装部材35を使用する場合であっても、ヒートパイプ34と第2の発熱部品12との間の熱伝導効率を向上させやすい。
【0055】
熱輸送部材22の第1の受熱部22aを押さえる他の押さえ部材26を備えており、上記他の押さえ部材26が、当該他の押さえ部材26とヒートパイプ34との間に流動熱伝導材36を介在させて外装部材35を押圧していると、ヒートパイプ34に力をかけることなく、外装部材35と第1の発熱部品11との間の熱伝導効率を高めることができる。
【0056】
外装部材35にフィン43が取り付けられていると、別のヒートパイプを準備することなく、RHE(Remote Heat Exchanger)タイプの冷却構造を実現することができる。流動熱伝導材36が、金属粉または熱伝導グリスであると、例えば液体のものを使用するよりも、ヒートパイプ34と発熱部品11,12との間の高い熱伝導効率を実現することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る電子機器としてのポータブルコンピュータ1について、図7を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図7に示すように、本実施形態に係るポータブルコンピュータ1は、熱輸送部材22の第2の受熱部22bを押さえる押さえ部材26を備えていない。外装部材35は、第1の受熱部材24に半田固定されている。
【0059】
押さえ部材27が熱輸送部材22の第2の受熱部22bを押さえると、押さえ部材27とヒートパイプ34との間の隙間S、およびヒートパイプ34と第2の発熱部品12の間の隙間Sにあった流動熱伝導材36が他の領域へ追い出される。この追い出された流動熱伝導材36の一部が、ヒートパイプ34と第1の発熱部品11との間の隙間Sに入り込み、外装部材35を第1の発熱部品11に向けて押している。これにより、外装部材35と第1の発熱部品11との間の熱接続性が高まっている。上記説明した以外のポータブルコンピュータ1の構成は上記第1の実施形態と同じである。
【0060】
このような構成のポータブルコンピュータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、熱輸送部材22と複数の発熱部品11,12との間の熱伝導効率を向上させることができる。外装部材35が第1の受熱部材24に半田付けされていると、外装部材35と第1の受熱部材24との間の熱伝導効率が高まる。また外装部材35が第1の受熱部材24に半田付けされていると、押さえ部材26を省略することができる。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る電子機器としてのポータブルコンピュータ1について、図8を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図8に示すように、本実施形態に係る熱輸送部材22は、第1および第2の受熱部22a,22bを有する。ヒートパイプ34は、第1および第2の受熱部22a,22bに亘って延びている。熱輸送部材22と冷却ファン21との間には、別のヒートパイプ51が設けられている。この別のヒートパイプ51は、ヒートシンク23が取り付けられているとともに、熱輸送部材22に熱接続されている。ヒートパイプ51に熱接続された熱輸送部材22の第2の受熱部22bは、ヒートパイプ51によって熱が奪われるため、放熱部22cとしても機能する。上記説明した以外のポータブルコンピュータ1の構成は上記第1の実施形態と同じである。
【0063】
このような構成のポータブルコンピュータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、熱輸送部材22と複数の発熱部品11,12との間の熱伝導効率を向上させることができる。また別のヒートパイプ51と組み合わせることで、熱輸送部材22にフィン43を直接に取り付けなくて済み、熱輸送部材22の汎用性が高まる。
【0064】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る電子機器としてのポータブルコンピュータ1について、図9を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図9に示すように、本実施形態に係る熱輸送部材22は、第1の受熱部22aにおいて外装部材35が設けられているとともに、第2の受熱部22bおよび放熱部22cにおいて外装部材35が設けられていない。ヒートパイプ34は、第2の受熱部22bでは熱輸送部材22の外部に露出されている。ヒートパイプ34は、外装部材35を介さずに第2の発熱部品12に熱接続されている。上記説明した以外のポータブルコンピュータ1の構成は上記第1の実施形態と同じである。
【0066】
このような構成のポータブルコンピュータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、熱輸送部材22と複数の発熱部品11,12との間の熱伝導効率を向上させることができる。第2の受熱部22bでヒートパイプ34が露出され、外装部材35を介さずに第2の発熱部品12に熱接続されていると、主要部品である第2の発熱部品12とヒートパイプ34との間の熱伝導効率がさらに高まる。
【0067】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る電子機器としてのポータブルコンピュータ1について、図10を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
図10に示すように、本実施形態に係る外装部材35の第1の領域35aは、例えば熱輸送部材22の略全長においてヒートパイプ34に接触している。上記説明した以外のポータブルコンピュータ2の構成は上記第1の実施形態と同じである。
【0069】
このような構成のポータブルコンピュータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、熱輸送部材22と複数の発熱部品11,12との間の熱伝導性を向上させることができる。
【0070】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態に係る電子機器としてのポータブルコンピュータ1について、図11を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0071】
図11に示すように、本実施形態に係る外装部材35は、第1の受熱部22aのみに設けられている。外装部材35は、第1の発熱部品11に対向した上記ヒートパイプの外面の周方向の一部のみを覆っている。上記説明した以外のポータブルコンピュータ1の構成は上記第2の実施形態と同じである。
【0072】
このような構成のポータブルコンピュータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、熱輸送部材22と複数の発熱部品11,12との間の熱伝導性を向上させることができる。
【0073】
以上、本発明の第1ないし第6の実施形態に係るポータブルコンピュータ1および熱輸送部材22について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記第1ないし第6の実施形態に係る構造は、適宜組み合わせて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るポータブルコンピュータの斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る熱輸送部材を示す平面図。
【図3】図2中に示された熱輸送部材を示す断面図。
【図4】図2中に示された熱輸送部材を示す断面図。
【図5】図2中に示された熱輸送部材を示す断面図。
【図6】図2中に示された熱輸送部材を示す断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る熱輸送部材を示す断面図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る熱輸送部材を示す平面図。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る熱輸送部材を示す断面図。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る熱輸送部材を示す断面図。
【図11】本発明の第6の実施形態に係る熱輸送部材を示す断面図。
【符号の説明】
【0075】
1…ポータブルコンピュータ、4…筐体、6…回路基板、11…第1の発熱部品、12…第2の発熱部品、22…熱輸送部材、22a…第1の受熱部、22b…第2の受熱部、23…ヒートシンク、24,25…受熱部材、26,27…押さえ部材、34…ヒートパイプ、35…外装部材、36…流動熱伝導材、43…フィン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に実装された発熱部品を冷却する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ポータブルコンピュータのような電子機器は、複数の発熱部品からの熱を1本のヒートパイプで受熱するマルチ受熱構造を備えることがある。このヒートパイプは、各発熱部品に対する熱接続性を高めるために、金具によって各発熱部品に向けて押圧されている。
【0003】
特許文献1は、ヒートパイプを備えた冷却構造が開示されている。この冷却構造は、柔軟性を有する袋の中にヒートパイプの受熱部を装填するとともに、この袋の中に伝熱用液体を封入している。この袋は、発熱部品に接触させられている。
【特許文献1】特開平3−3352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各発熱部品には必ず部品公差が存在する。複数の発熱部品に対して1本のヒートパイプを熱接続する場合、複数の発熱部品に含まれる部品公差を吸収する必要がある。そのため、主要な発熱部品とヒートパイプとの間に熱伝導グリスを介在させるとともに、残りの発熱部品とヒートパイプとの間に柔軟性のある熱伝導シートを介在させている。
【0005】
しかしながら熱伝導シートは、熱抵抗値が大きいため、熱接続性において熱伝導グリスに劣る。そのため、マルチ受熱構造において、いくつかの発熱部品とヒートパイプとの間の熱伝導効率は、相対的に低いものになっている。
【0006】
特許文献1に記載の冷却構造では、複数の発熱部品それぞれとヒートパイプとの間に、比較的大きな量の伝熱用液体が介在されている。このような構成では、発熱部品とヒートパイプとの間に高い熱伝導効率を確保することは難しい。
【0007】
本発明の目的は、複数の発熱部品との間の熱伝導効率を向上させることができる熱輸送部材、および熱輸送部材を備えた電子機器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの形態に係る電子機器は、筐体と、上記筐体に収容され、第1の発熱部品と第2の発熱部品とが実装された回路基板と、上記第1の発熱部品に対向した第1の受熱部と上記第2の発熱部品に対向した第2の受熱部とを有した熱輸送部材と、上記回路基板とは反対側から上記熱輸送部材に対向した押さえ部材とを具備している。上記熱輸送部材は、上記第1の受熱部と第2の受熱部とに亘って延びたヒートパイプと、少なくとも上記第1の発熱部品に対向した上記ヒートパイプの外面を覆った変形可能な外装部材と、上記外装部材と上記ヒートパイプとの間に封入された流動熱伝導材とを有している。上記押さえ部材は、上記熱輸送部材の第2の受熱部を押さえて、上記ヒートパイプを上記第2の発熱部品に対して押圧している。上記ヒートパイプは、上記押さえ部材に押されて上記第2の受熱部で上記流動熱伝導材を介さずに上記第2の発熱部品に熱接続された領域を有しており、且つ、上記ヒートパイプは、上記第1の受熱部で上記流動熱伝導材を間に挟んで上記第1の発熱部品に熱接続されている。
【0009】
本発明の一つの形態に係る熱輸送部材は、回路基板に実装された第1の発熱部品に対向する第1の受熱部と、上記回路基板に実装された第2の発熱部品に対向する第2の受熱部とを備えた熱輸送部材である。この熱輸送部材は、上記第1の受熱部と第2の受熱部とに亘って延びたヒートパイプと、少なくとも上記第1の発熱部品に対向する上記ヒートパイプの外面を覆った変形可能な外装部材と、上記外装部材と上記ヒートパイプとの間に封入された流動熱伝導材とを有している。上記ヒートパイプは、押さえ部材に押されて上記第2の受熱部で上記流動熱伝導材を介さずに上記第2の発熱部品に熱接続される領域を有し、且つ、上記ヒートパイプは、上記第1の受熱部で上記流動熱伝導材を間に挟んで上記第1の発熱部品に熱接続される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱輸送部材と複数の発熱部品との間の熱伝導効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を、ポータブルコンピュータに適用した図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1ないし図6は、本発明の第1の実施形態に係る電子機器としてのポータブルコンピュータ1を開示している。図1に示すように、ポータブルコンピュータ1は、電子機器本体である本体ユニット2と、表示ユニット3とを備えている。
【0012】
本体ユニット2は、扁平な箱状に形成された筐体4(本体筐体)を有する。筐体4は、上壁4a、周壁4b、および下壁4cを有する。上壁4aは、キーボード5を支持している。筐体4は、回路基板6(図2参照)を収容している。
【0013】
図1に示すように、表示ユニット3は、表示筐体7と、この表示筐体7に収容された表示パネル8とを備えている。表示パネル8は、表示画面8aを有する。表示画面8aは、表示筐体7の前面の開口部7aを通じて表示筐体7の外部に露出している。
【0014】
表示ユニット3は、例えば一対のヒンジ部9a,9bを介して、筐体4の後端部に支持されている。表示ユニット3は、筐体4の上壁4aを上方から覆うように倒される閉じ位置と、上壁4aに対して立て起こされる開き位置との間で回動可能である。
【0015】
図2および図5に示すように、回路基板6には、第1および第2の発熱部品11,12が実装されている。第1および第2の発熱部品11,12は、それぞれ使用時に熱を発する電子部品であり、例えばCPU、グラフィックチップ、ノース・ブリッジ(登録商標)、またはメモリなどが具体例として挙げられる。ただし本発明でいう発熱部品は、上記の例に限らず、放熱が望まれる種々の部品が該当する。本実施形態においては、第1および第2の発熱部品11,12は、例えば回路基板6の同じ面6aに実装されている。
【0016】
ここで、第2の発熱部品12は、いわゆる主要部品であり、第1の発熱部品11よりも冷却が必要である。第2の発熱部品12は、例えば第1の発熱部品11よりも消費電力(すなわち発熱量)が大きい。または、第2の発熱部品12は、第1の発熱部品11に比べて消費電力が小さいものの、第1の発熱部品11に比べて規格温度の上限も低いために、第1の発熱部品11よりも冷却が必要な部品である。なお「規格温度」とは、いわゆるスペック温度であり、その部品の動作が保障されている温度域である。第2の発熱部品12の一例は、CPU(Central Processing Unit)であり、第1の発熱部品11の一例は、CPU以外の発熱部品である。
【0017】
図2に示すように、筐体4内には、第1および第2の発熱部品11,12を冷却するマルチ受熱タイプの冷却構造20が設けられている。この冷却構造20は、例えば、冷却ファン21、熱輸送部材22、ヒートシンク23、第1および第2の受熱部材24,25、および第1および第2の押さえ部材26,27を備えている。
【0018】
冷却ファン21は、筐体4内に収容されているとともに、ファンケース31と、このファンケース31内で回転駆動されるファンブレード32とを備える。冷却ファン21は、筐体4内に開口する吸気口31aと、上記ヒートシンク23に対向する排気口(図示しない)とを有する。冷却ファン21は、ヒートシンク23に向けて空気を吐出し、ヒートシンク23を冷却する。
【0019】
図2に示すように、熱輸送部材22は、筐体4内を延びるとともに、第1および第2の受熱部22a,22bと、放熱部22cとを有する。第1の受熱部22aは、第1の発熱部品11に対向するとともに、第1の発熱部品11に熱接続されている。第2の受熱部22bは、第2の発熱部品12に対向するとともに、第2の発熱部品12に熱接続されている。放熱部22cは、冷却ファン21に対向するとともに、ヒートシンク23が取り付けられ、ヒートシンク23に熱接続されている。熱輸送部材22は、第1および第2の発熱部品11,12の発する熱をヒートシンク23まで運ぶ。
【0020】
図3に示すように、熱輸送部材22は、ヒートパイプ34、外装部材35、および流動熱伝導材36を有する。ヒートパイプ34は、熱輸送部材22の略全長に亘って延びている。すなわちヒートパイプ34は、第1および第2の受熱部22a,22b、並びに放熱部22cに亘って延びている。
【0021】
ヒートパイプ34は、第1の受熱部22aに位置する第1の部分34a、第2の受熱部22bに位置する第2の部分34b、および放熱部22cに位置する第3の部分34cを有する。ヒートパイプ34は、内部が中空に形成されたコンテナと、このコンテナ内に封入された作動液(冷媒)とを有する。ヒートパイプ34は、作動液の蒸発と凝縮を利用して第1および第2の部分34a,34bが受熱した熱を第3の部分34cまで移動させる。なおヒートパイプ34の断面形状は、丸管、扁平状、略矩形状のいずれでもよく、これら以外の形状であってもよい。ヒートパイプ34は、剛性を有する。
【0022】
図3に示すように、外装部材35は、少なくとも第1の発熱部品11に対向するヒートパイプ34の外面41を覆っている。本実施形態に係る外装部材35は、袋状に形成されてヒートパイプ34を内包している。すなわち外装部材35は、ヒートパイプ34の全周囲を取り囲み、ヒートパイプ34を完全に覆っている。これにより、熱輸送部材22は、ヒートパイプ34と外装部材35とから成る2層構造を有している。外装部材35とヒートパイプ34との間には、隙間Sが設けられている。この隙間Sは、第1および第2の発熱部品11,12に含まれる部品公差を吸収するための隙間であり、例えば0.5mm〜1.0mmの厚さを有する。
【0023】
外装部材35は、例えば可撓性(または柔軟性)を有し、変形可能である。外装部材35は、ヒートパイプ34との間の隙間Sの大きさを変えることができる。外装部材35は、例えば金属材料で形成されている。さらに具体的には、外装部材35は、例えばアルミニウムや銅のような熱伝導率が比較的高い材料で形成されている。なお、外装部材35の材料は、金属以外の材料であってもよく、特に限定されるものではない。
【0024】
図3に示すように、外装部材35とヒートパイプ34との間には、流動熱伝導材36が封入されている。流動熱伝導材36は、熱伝導性を有するとともに、流動性を有する。流動熱伝導材36は、外装部材35とヒートパイプ34との間の隙間Sの形状に合わせて熱輸送部材22内を移動可能である。
【0025】
流動熱伝導材36の一例は、例えば銅粉のような金属粉や、シリコン系熱伝導グリス、または金属系熱伝導グリスなどである。なお流動熱伝導材36の材料は、特に限定されるものではなく、例えば熱伝導性を有する液体でもよい。流動熱伝導材36は、例えば、外装部材35とヒートパイプ34との間の隙間Sに空隙率が略ゼロの状態で封入されている。なお上記空隙率は特に限定されるものではなく、例えば50%程度でもよい。
【0026】
図4に示すように、ヒートシンク23は、熱輸送部材22の放熱部22cに直接取り付けられている。ヒートシンク23は、複数のフィン43(すなわちフィン板)を有したフィンユニットである。各フィン43は、熱輸送部材22の放熱部22cで外装部材35の外面に直接取り付けられ、外装部材35に熱接続されている。例えば外装部材35が金属材料で形成されている場合、各フィン43は、外装部材35の外面に半田付けされる。
【0027】
図5および図6に示すように、第1の受熱部材24は、熱輸送部材22の第1の受熱部22aと第1の発熱部品11との間に介在するとともに、第1の発熱部品11に熱接続されている。第1の受熱部材24は、例えば金属製の受熱ブロックである。第1の受熱部材24と第1の発熱部品11との間には、熱接続部材44が設けられている。熱接続部材44は、例えばシリコン系の熱伝導グリスである。
【0028】
第2の受熱部材25は、熱輸送部材22の第2の受熱部22bと第2の発熱部品12との間に介在するとともに、第2の発熱部品12に熱接続されている。第2の受熱部材25は、例えば金属製の受熱ブロックである。第2の受熱部材25と第2の発熱部品12との間には、上記と同様の熱接続部材44が設けられている。なお、第1の発熱部品11に比べて第2の発熱部品12の方が背が低い場合(部品高さが低い場合)は、第2の受熱部材25の厚みを調整して対応する。
【0029】
なお、熱輸送部材22の第1および第2の受熱部22a,22bは、第1および第2の受熱部材24,25を介在させずに、第1および第2の発熱部品11,12に直接に熱接触してもよい。
【0030】
次に、第1および第2の押さえ部材26,27について説明する。なお説明の都合上、第2の押さえ部材27から説明する。第2の押さえ部材27は、本発明でいう「押さえ部材」の一例である。第1の押さえ部材26は、本発明でいう「他の押さえ部材」の一例である。
【0031】
図5および図6に示すように、第2の押さえ部材27(例えば第2の押さえ金具)は、押圧部27aと、脚部27bとを有する。押圧部27aは、例えば板状に形成されるとともに、回路基板6とは反対側から熱輸送部材22に対向している。脚部27bは、押圧部27aの周縁部から回路基板6に向いて延びており、回路基板6に固定されている。押圧部27aと脚部27bは、協働して板ばね構造を形成している。
【0032】
第2の押さえ部材27は、熱輸送部材22の第2の受熱部22bを押さえて、ヒートパイプ34の第2の部分34bを第2の発熱部品12に対して押圧している。第2の押さえ部材27は、第2の発熱部品12に向けてヒートパイプ34の第2の部分34bを押圧している。詳しく述べると、図5に示すように、外装部材35は、ヒートパイプ34よりも回路基板6とは反対側(図5中でヒートパイプ34よりも上側)となる第1の領域35aと、ヒートパイプ34よりも回路基板6側(図5中でヒートパイプ34よりも下側)となる第2の領域35bとを含む。
【0033】
第2の押さえ部材27は、比較的大きな力で熱輸送部材22の第2の受熱部22bを第2の発熱部品12に向けて押さえる。これにより、外装部材35の第1の領域35aがヒートパイプ34に向けて変形し、外装部材35の第1の領域35aとヒートパイプ34との間の隙間Sが潰されている。すなわち外装部材35の第1の領域35aとヒートパイプ34との間の隙間Sにあった流動熱伝導材36が他の領域へ追い出され、外装部材35の第1の領域35aがヒートパイプ34に当接している。
【0034】
これにより、外装部材35を押さえる第2の押さえ部材27の押圧力がヒートパイプ34に作用する。すなわち第2の押さえ部材27がヒートパイプ34を第2の発熱部品12に向けて押圧している。
【0035】
また、熱輸送部材22が第2の発熱部品12に向けて押圧されることで、外装部材35の第2の領域35bが第2の発熱部品12から反力を受けてヒートパイプ34に向いて変形し、外装部材35の第2の領域35bとヒートパイプ34との間の隙間Sが潰されている。すなわち、外装部材35の第2の領域35bとヒートパイプ34との間の隙間Sにあった流動熱伝導材36が他の領域へ追い出されている。そしてヒートパイプ34は、第2の受熱部22bで外装部材35に当接し、外装部材35を間に挟んで第2の発熱部品12に熱接続されている。
【0036】
図5および図6に示すように、ヒートパイプ34は、第2の押さえ部材27に押されて、第2の受熱部22bでその実装高さおよび姿勢が定まっている。すなわちヒートパイプ34は、第2の発熱部品12の部品公差に従って(応じて)、実装高さや姿勢が定まっている。ヒートパイプ34は、第2の押さえ部材27と第2の発熱部品12との間で固定されている。ヒートパイプ34の第2の部分34bは、第2の発熱部品12との間に流動熱伝導材36を実質的に挟まない。ヒートパイプ34の第2の部分34bは、流動熱伝導材36を介さずに第2の発熱部品12に熱接続された領域34baを有している。
【0037】
なお、「流動熱伝導材を介さずに第2の発熱部品に熱接続された領域を有している」とは、ヒートパイプの第2の部分の全部が流動熱伝導材を介さずに第2の発熱部品に熱接続されていてもよく、また、ヒートパイプの第2の部分の一部が流動熱伝導材を介さずに第2の発熱部品に熱接続されていてもよいことを意味する。
【0038】
図5および図7に示すように、第1の押さえ部材26(例えば第1の押さえ金具)は、押圧部26aと、脚部26bとを有する。押圧部26aは、例えば板状に形成されるとともに、回路基板6とは反対側から熱輸送部材22に対向している。脚部26bは、押圧部26aの周縁部から回路基板6に向いて延びており、回路基板6に固定されている。押圧部26aと脚部26bは、協働して板ばね構造を形成している。
【0039】
第1の押さえ部材26は、比較的小さな力で、熱輸送部材22の第1の受熱部22aを上記第1の発熱部品11に向けて押さえている。第1の受熱部22aでは、外装部材35の第1の領域35aとヒートパイプ34との間に隙間Sが存在し、この隙間Sに流動熱伝導材36が入り込んでいる。すなわち第1の押さえ部材26は、第1の受熱部22aで当該第1の押さえ部材26とヒートパイプ34との間に流動熱伝導材36を介在させて外装部材35を第1の発熱部品11に対して押圧している。第1の押さえ部材26は、第1の発熱部品11に向けて外装部材35を押圧している。このため、外装部材35を押さえる第1の押さえ部材26の押圧力は、ヒートパイプ34に作用しない。
【0040】
また第1の受熱部22aでは、外装部材35の第2の領域35bとヒートパイプ34との間に隙間Sが存在し、この隙間Sに流動熱伝導材36が入り込んでいる。すなわち第1の受熱部22aでは、ヒートパイプ34は、第1の発熱部品11との間に流動熱伝導材36を挟んで、流動熱伝導材36を介して第1の発熱部品11に熱接続されている。すなわち、第1の受熱部22aでは、ヒートパイプ34は、外装部材35の中で浮遊した状態にある。
【0041】
次に、冷却構造20の作用について説明する。
第2の押さえ部材27がヒートパイプ34を押さえることで、第2の受熱部22bでは、ヒートパイプ34、外装部材35、第2の受熱部材25、および第2の発熱部品12が互いに密に接触する。これにより、ヒートパイプ34の第2の部分34bは、第2の発熱部品12に比較的強固に熱接続されている。
【0042】
第1の押さえ部材26が外装部材35を押さえることで、第1の受熱部22aでは、外装部材35、第1の受熱部材24、および第1の発熱部品11が互いに密に接触する。これによりヒートパイプ34の第1の部分34aは、第1の発熱部品11にある程度強固に熱接続されている。
【0043】
また、第2の押さえ部材27が熱輸送部材22を押さえることで、第2の押さえ部材27とヒートパイプ34との間の隙間S、およびヒートパイプ34と第2の発熱部品12の間の隙間Sにあった流動熱伝導材36が他の領域へ追い出される。この追い出された流動熱伝導材36の一部は、ヒートパイプ34と第1の発熱部品11との間の隙間Sに入り込み、外装部材35を第1の発熱部品11に向けて押している。これにより、外装部材35と第1の発熱部品11との間の熱接続性が高まる。
【0044】
ポータブルコンピュータ1を使用すると、第1および第2の発熱部品11,12が発熱する。ヒートパイプ34の第2の部分34bの全部または一部は、流動熱伝導材36を介さずに、外装部材35、第2の受熱部材25、および熱接続部材44を介して、第2の発熱部品12の発する熱を受熱する。ヒートパイプ34の第1の部分34aは、流動熱伝導材36、外装部材35、第1の受熱部材24、および熱接続部材44を介して、第1の発熱部品11の発する熱を受熱する。
【0045】
ヒートパイプ34は、第1および第2の受熱部22a,22bで受け取った熱を第3の部分34cに移動させる。第3の部分34cに移動した熱は、ヒートシンク23に伝えられ、冷却ファン21によって冷却される。
【0046】
このような構成のポータブルコンピュータ1によれば、熱輸送部材22と複数の発熱部品11,12との間の熱伝導効率を向上させることができる。すなわち、本実施形態に係る熱輸送部材22は、第1および第2の受熱部22a,22bに亘って延びたヒートパイプ34と、変形可能な外装部材35と、外装部材35とヒートパイプ34との間に封入された流動熱伝導材36とを有している。そのため、ヒートパイプ34の実装高さや姿勢が第2の発熱部品12によって規定されても、第1および第2の発熱部品11,12の間にある部品公差t(図6参照)に応じて外装部材35が変形し(上下に動き)、第1および第2の発熱部品11,12が有する部品公差が吸収される。
【0047】
これにより熱輸送部材22は、熱抵抗が大きな熱伝導シートを使用することなく部品公差を吸収し、第1および第2の発熱部品11,12に比較的強固に熱接続することができる。これにより、ポータブルコンピュータ1が冷却可能な消費電力が増加する。
【0048】
ヒートパイプ34は、押さえ部材27に押されて流動熱伝導材36を介さずに第2の発熱部品12に熱接続されている。これにより、主要な発熱部品である第2の発熱部品12とヒートパイプ34との間の高い熱接続性が確保されている。
【0049】
また、ヒートパイプ34は、流動熱伝導材36を間に挟んで第1の発熱部品11に熱接続されている。これにより、押さえ部材27によってヒートパイプ34に加わる押圧力が第1の発熱部品11に作用しない。つまり、第1の発熱部品11とヒートパイプ34との間の熱接続性を確保しつつ、第1の発熱部品11の破損が防止される。
【0050】
流動熱伝導材36は、ヒートパイプ34と外装部材35との間に封入されるものであるため、材質選択の自由度が大きく、熱伝導シートよりも高い熱伝導率を有するものを採用しやすい。すなわち、流動熱伝導材36は筐体4内に直接露出されるものでないため、導電性を有するものも流動熱伝導材36として採用可能になる。
【0051】
例えば、流動熱伝導材36として金属系熱伝導グリス(金属系の添加物(基材)が入ったグリス)を採用することができる。金属系熱伝導グリスは、シリコン系熱伝導グリスよりも熱接続性に優れているが、回路基板に触れるとショートするおそれがあるので、一般的には使用できない。しかしながら、本実施形態の熱輸送部材22では、流動熱伝導材36は外装部材35内に封入されているので、ショートのおそれなく金属系熱伝導グリスを使用することができる。
【0052】
外装部材35が柔軟性を有すると、第1の受熱部材24が第1の発熱部品11に対して傾斜するおそれが小さく、第1の受熱部材24と第1の発熱部品11との間の熱接続部材44の流出(例えばグリスポンプアウト)が防がれる。
【0053】
外装部材35が金属材料で形成されていると、外装部材35の熱伝導率が高いため、ヒートパイプ34と第1および第2の発熱部品11,12の間の熱伝導効率がさらに向上する。
【0054】
本実施形態に係る外装部材35は、袋状に形成されてヒートパイプ34を内包している。このような外装部材35は、比較的形成しやすく、コストダウンを図りやすい。ここで、ヒートパイプ34が、第2の発熱部品12との間に外装部材35を挟み込み、外装部材35に当接していると、袋状に形成された外装部材35を使用する場合であっても、ヒートパイプ34と第2の発熱部品12との間の熱伝導効率を向上させやすい。
【0055】
熱輸送部材22の第1の受熱部22aを押さえる他の押さえ部材26を備えており、上記他の押さえ部材26が、当該他の押さえ部材26とヒートパイプ34との間に流動熱伝導材36を介在させて外装部材35を押圧していると、ヒートパイプ34に力をかけることなく、外装部材35と第1の発熱部品11との間の熱伝導効率を高めることができる。
【0056】
外装部材35にフィン43が取り付けられていると、別のヒートパイプを準備することなく、RHE(Remote Heat Exchanger)タイプの冷却構造を実現することができる。流動熱伝導材36が、金属粉または熱伝導グリスであると、例えば液体のものを使用するよりも、ヒートパイプ34と発熱部品11,12との間の高い熱伝導効率を実現することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る電子機器としてのポータブルコンピュータ1について、図7を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図7に示すように、本実施形態に係るポータブルコンピュータ1は、熱輸送部材22の第2の受熱部22bを押さえる押さえ部材26を備えていない。外装部材35は、第1の受熱部材24に半田固定されている。
【0059】
押さえ部材27が熱輸送部材22の第2の受熱部22bを押さえると、押さえ部材27とヒートパイプ34との間の隙間S、およびヒートパイプ34と第2の発熱部品12の間の隙間Sにあった流動熱伝導材36が他の領域へ追い出される。この追い出された流動熱伝導材36の一部が、ヒートパイプ34と第1の発熱部品11との間の隙間Sに入り込み、外装部材35を第1の発熱部品11に向けて押している。これにより、外装部材35と第1の発熱部品11との間の熱接続性が高まっている。上記説明した以外のポータブルコンピュータ1の構成は上記第1の実施形態と同じである。
【0060】
このような構成のポータブルコンピュータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、熱輸送部材22と複数の発熱部品11,12との間の熱伝導効率を向上させることができる。外装部材35が第1の受熱部材24に半田付けされていると、外装部材35と第1の受熱部材24との間の熱伝導効率が高まる。また外装部材35が第1の受熱部材24に半田付けされていると、押さえ部材26を省略することができる。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る電子機器としてのポータブルコンピュータ1について、図8を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図8に示すように、本実施形態に係る熱輸送部材22は、第1および第2の受熱部22a,22bを有する。ヒートパイプ34は、第1および第2の受熱部22a,22bに亘って延びている。熱輸送部材22と冷却ファン21との間には、別のヒートパイプ51が設けられている。この別のヒートパイプ51は、ヒートシンク23が取り付けられているとともに、熱輸送部材22に熱接続されている。ヒートパイプ51に熱接続された熱輸送部材22の第2の受熱部22bは、ヒートパイプ51によって熱が奪われるため、放熱部22cとしても機能する。上記説明した以外のポータブルコンピュータ1の構成は上記第1の実施形態と同じである。
【0063】
このような構成のポータブルコンピュータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、熱輸送部材22と複数の発熱部品11,12との間の熱伝導効率を向上させることができる。また別のヒートパイプ51と組み合わせることで、熱輸送部材22にフィン43を直接に取り付けなくて済み、熱輸送部材22の汎用性が高まる。
【0064】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る電子機器としてのポータブルコンピュータ1について、図9を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図9に示すように、本実施形態に係る熱輸送部材22は、第1の受熱部22aにおいて外装部材35が設けられているとともに、第2の受熱部22bおよび放熱部22cにおいて外装部材35が設けられていない。ヒートパイプ34は、第2の受熱部22bでは熱輸送部材22の外部に露出されている。ヒートパイプ34は、外装部材35を介さずに第2の発熱部品12に熱接続されている。上記説明した以外のポータブルコンピュータ1の構成は上記第1の実施形態と同じである。
【0066】
このような構成のポータブルコンピュータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、熱輸送部材22と複数の発熱部品11,12との間の熱伝導効率を向上させることができる。第2の受熱部22bでヒートパイプ34が露出され、外装部材35を介さずに第2の発熱部品12に熱接続されていると、主要部品である第2の発熱部品12とヒートパイプ34との間の熱伝導効率がさらに高まる。
【0067】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る電子機器としてのポータブルコンピュータ1について、図10を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
図10に示すように、本実施形態に係る外装部材35の第1の領域35aは、例えば熱輸送部材22の略全長においてヒートパイプ34に接触している。上記説明した以外のポータブルコンピュータ2の構成は上記第1の実施形態と同じである。
【0069】
このような構成のポータブルコンピュータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、熱輸送部材22と複数の発熱部品11,12との間の熱伝導性を向上させることができる。
【0070】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態に係る電子機器としてのポータブルコンピュータ1について、図11を参照して説明する。なお上記第1の実施形態の構成と同一または類似の機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0071】
図11に示すように、本実施形態に係る外装部材35は、第1の受熱部22aのみに設けられている。外装部材35は、第1の発熱部品11に対向した上記ヒートパイプの外面の周方向の一部のみを覆っている。上記説明した以外のポータブルコンピュータ1の構成は上記第2の実施形態と同じである。
【0072】
このような構成のポータブルコンピュータ1によれば、上記第1の実施形態と同様に、熱輸送部材22と複数の発熱部品11,12との間の熱伝導性を向上させることができる。
【0073】
以上、本発明の第1ないし第6の実施形態に係るポータブルコンピュータ1および熱輸送部材22について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記第1ないし第6の実施形態に係る構造は、適宜組み合わせて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るポータブルコンピュータの斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る熱輸送部材を示す平面図。
【図3】図2中に示された熱輸送部材を示す断面図。
【図4】図2中に示された熱輸送部材を示す断面図。
【図5】図2中に示された熱輸送部材を示す断面図。
【図6】図2中に示された熱輸送部材を示す断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る熱輸送部材を示す断面図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る熱輸送部材を示す平面図。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る熱輸送部材を示す断面図。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る熱輸送部材を示す断面図。
【図11】本発明の第6の実施形態に係る熱輸送部材を示す断面図。
【符号の説明】
【0075】
1…ポータブルコンピュータ、4…筐体、6…回路基板、11…第1の発熱部品、12…第2の発熱部品、22…熱輸送部材、22a…第1の受熱部、22b…第2の受熱部、23…ヒートシンク、24,25…受熱部材、26,27…押さえ部材、34…ヒートパイプ、35…外装部材、36…流動熱伝導材、43…フィン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
上記筐体に収容され、第1の発熱部品と第2の発熱部品とが実装された回路基板と、
上記第1の発熱部品に対向した第1の受熱部と、上記第2の発熱部品に対向した第2の受熱部とを有した熱輸送部材と、
上記回路基板とは反対側から上記熱輸送部材に対向した押さえ部材と、を具備し、
上記熱輸送部材は、上記第1の受熱部と第2の受熱部とに亘って延びたヒートパイプと、少なくとも上記第1の発熱部品に対向した上記ヒートパイプの外面を覆った変形可能な外装部材と、上記外装部材と上記ヒートパイプとの間に封入された流動熱伝導材とを有しており、
上記押さえ部材は、上記熱輸送部材の第2の受熱部を押さえて、上記ヒートパイプを上記第2の発熱部品に対して押圧しており、
上記ヒートパイプは、上記第2の受熱部で上記流動熱伝導材を介さずに上記第2の発熱部品に熱接続された領域を有しており、且つ、上記ヒートパイプは、上記第1の受熱部で上記流動熱伝導材を間に挟んで上記第1の発熱部品に熱接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
上記外装部材は、金属材料で形成されたことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、
上記外装部材は、袋状に形成されて上記ヒートパイプを内包しており、
上記ヒートパイプは、上記第2の受熱部で上記外装部材に当接し、上記外装部材を間に挟んで上記第2の発熱部品と熱接続されたことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
上記熱輸送部材の第1の受熱部を押さえる他の押さえ部材を備えており、
上記他の押さえ部材は、上記第1の受熱部で当該他の押さえ部材と上記ヒートパイプとの間に上記流動熱伝導材を介在させて上記外装部材を上記第1の発熱部品に対して押圧していることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項3に記載の電子機器において、
上記外装部材と上記第1の発熱部品との間に介在するとともに、上記第1の発熱部品に熱接続された受熱部材を備えており、
上記外装部材は、上記受熱部材に半田固定されたことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項3に記載の電子機器において、
上記ヒートパイプは、上記第2の受熱部では上記熱輸送部材の外部に露出され、上記外装部材を介さずに上記第2の発熱部品に熱接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項3に記載の電子機器において、
上記熱輸送部材は、放熱部を有しており、
上記放熱部では、上記外装部材にフィンが取り付けられたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項3に記載の電子機器において、
上記流動熱伝導材は、金属粉または熱伝導グリスであることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
回路基板に実装された第1の発熱部品に対向する第1の受熱部と、上記回路基板に実装された第2の発熱部品に対向する第2の受熱部とを備えた熱輸送部材であって、
当該熱輸送部材は、
上記第1の受熱部と第2の受熱部とに亘って延びたヒートパイプと、
少なくとも上記第1の発熱部品に対向する上記ヒートパイプの外面を覆った変形可能な外装部材と、
上記外装部材と上記ヒートパイプとの間に封入された流動熱伝導材と、を有しており、
上記ヒートパイプは、上記第2の受熱部で上記流動熱伝導材を介さずに上記第2の発熱部品に熱接続される領域を有し、且つ、上記ヒートパイプは、上記第1の受熱部で上記流動熱伝導材を間に挟んで上記第1の発熱部品に熱接続されることを特徴とする熱輸送部材。
【請求項1】
筐体と、
上記筐体に収容され、第1の発熱部品と第2の発熱部品とが実装された回路基板と、
上記第1の発熱部品に対向した第1の受熱部と、上記第2の発熱部品に対向した第2の受熱部とを有した熱輸送部材と、
上記回路基板とは反対側から上記熱輸送部材に対向した押さえ部材と、を具備し、
上記熱輸送部材は、上記第1の受熱部と第2の受熱部とに亘って延びたヒートパイプと、少なくとも上記第1の発熱部品に対向した上記ヒートパイプの外面を覆った変形可能な外装部材と、上記外装部材と上記ヒートパイプとの間に封入された流動熱伝導材とを有しており、
上記押さえ部材は、上記熱輸送部材の第2の受熱部を押さえて、上記ヒートパイプを上記第2の発熱部品に対して押圧しており、
上記ヒートパイプは、上記第2の受熱部で上記流動熱伝導材を介さずに上記第2の発熱部品に熱接続された領域を有しており、且つ、上記ヒートパイプは、上記第1の受熱部で上記流動熱伝導材を間に挟んで上記第1の発熱部品に熱接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
上記外装部材は、金属材料で形成されたことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、
上記外装部材は、袋状に形成されて上記ヒートパイプを内包しており、
上記ヒートパイプは、上記第2の受熱部で上記外装部材に当接し、上記外装部材を間に挟んで上記第2の発熱部品と熱接続されたことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
上記熱輸送部材の第1の受熱部を押さえる他の押さえ部材を備えており、
上記他の押さえ部材は、上記第1の受熱部で当該他の押さえ部材と上記ヒートパイプとの間に上記流動熱伝導材を介在させて上記外装部材を上記第1の発熱部品に対して押圧していることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項3に記載の電子機器において、
上記外装部材と上記第1の発熱部品との間に介在するとともに、上記第1の発熱部品に熱接続された受熱部材を備えており、
上記外装部材は、上記受熱部材に半田固定されたことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項3に記載の電子機器において、
上記ヒートパイプは、上記第2の受熱部では上記熱輸送部材の外部に露出され、上記外装部材を介さずに上記第2の発熱部品に熱接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項3に記載の電子機器において、
上記熱輸送部材は、放熱部を有しており、
上記放熱部では、上記外装部材にフィンが取り付けられたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項3に記載の電子機器において、
上記流動熱伝導材は、金属粉または熱伝導グリスであることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
回路基板に実装された第1の発熱部品に対向する第1の受熱部と、上記回路基板に実装された第2の発熱部品に対向する第2の受熱部とを備えた熱輸送部材であって、
当該熱輸送部材は、
上記第1の受熱部と第2の受熱部とに亘って延びたヒートパイプと、
少なくとも上記第1の発熱部品に対向する上記ヒートパイプの外面を覆った変形可能な外装部材と、
上記外装部材と上記ヒートパイプとの間に封入された流動熱伝導材と、を有しており、
上記ヒートパイプは、上記第2の受熱部で上記流動熱伝導材を介さずに上記第2の発熱部品に熱接続される領域を有し、且つ、上記ヒートパイプは、上記第1の受熱部で上記流動熱伝導材を間に挟んで上記第1の発熱部品に熱接続されることを特徴とする熱輸送部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−72904(P2010−72904A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239105(P2008−239105)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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