説明

電子機器の機能制約装置

【課題】電子機器に適用され、当該電子機器の出力が特定の環境下においてその使用者以外の者に迷惑を及ぼす事態を効果的に回避るための、電子機器の機能を制約する制御あるいは設定を、それが必要とされるとき確実に行うものとする。
【解決手段】特定の環境下であることを識別させるための識別信号を送信する識別信号送出装置30からの識別信号を受信する受信部27と、受信部27により受信された識別信号に応じた動作制御信号を形成し、その動作制御信号により、特定の環境下に在る受信部27が設けられた電子機器の機能に制約を加える動作制御部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の特許請求の範囲に記載された発明は、音響機器等の電子機器に適用され、周囲に対する迷惑を軽減すべく、当該電子機器の機能に動作状況に応じた制約を課す電子機器の機能制約装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジオ受信機,コンパクト・ディスク(CD)プレーヤやミニ・ディスク(MD)プレーヤ等の音声信号再生装置,電話機等々の音声信号に応じた音声を発するスピーカが備えられた音響機器と総称される電子機器にあっては、その全体の小型・軽量化が図られた携帯型のものが種々提供されている。このような携帯型の音響機器は、その持ち運びの手軽さから、様々な場所に持ち込まれ、様々な環境下において使用に供されることが多いが、例えば、使用場所が、映画館内,電車等の乗物内,エレベータ内等々の人が集合する施設内というような環境下にあるときには、当該音響機器の使用者以外の者に、スピーカから発せられる音声による迷惑をかけてしまうという問題を生じる。
【0003】
それゆえ、例えば、ヘッドフォーンが付設され、上述のような環境下にあっては、ヘッドフォーンに内蔵された比較的小型なスピーカにより再生される音声を、比較的小なる音量をもって聴取できるようにされた音響機器も広く実用に供されている。しかしながら、ヘッドフォーンが付設された音響機器が使用される場合であっても、ヘッドフォーンに内蔵されたスピーカから発せられる音声の音量によっては、その音声がヘッドフォーンから外部に漏れ出し、それが当該音響機器の周囲の人々に耳障りな音として届き、音響機器の使用者以外の者に迷惑がかかるという問題を解消できないことがある。
【0004】
そこで、従来にあっては、例えば、カセットテープ等の記録媒体に記録された音声信号を再生し、再生音声信号に基づく音声をヘッドフォーンを用いて得るようにした音響機器であって、ヘッドフォーンが聴取者に装着された状態のもとでヘッドフォーンから外部に漏れる音の周波数帯域が予め測定され、その周波数帯域の音が発生されることになる再生音声信号成分のレベルを減衰させる減衰フィルタを備えるとともに、その減衰フィルタが作動する状態と作動しない状態とを選択的に設定するスイッチを備えたものが提案されている。このような音響機器の場合、例えば、電車等の乗物内において使用されるとき、必要に応じてスイッチが操作されて減衰フィルタが作動する状態とされることにより、当該音響機器の使用者以外の者に迷惑がかかる事態の発生を低減できることになる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、昨今、音響機器のの一つである携帯電話機の普及が著しいが、携帯電話機が、例えば、電車等の乗物内に持ち込まれた状態で、呼出信号の着信を知らせる呼出音を発すると、当該携帯電話機の使用者以外の者に迷惑が及ぼされることになる。それゆえ、通常、携帯電話機には、呼出信号の着信を呼出音をもって知らせる動作モードと、呼出信号の着信を、呼出音を発することなく、振動をもって知らせる動作モード(いわゆるマナーモード)とを、選択的にとることができる機能が備えられている。
【0006】
従って、携帯電話機が、例えば、電車等の乗物内に持ち込まれる際に、呼出信号の着信を振動をもって知らせる動作モードが選択された状態とされていれば、電車等の乗物内において呼出信号の着信があったときにも、呼出音の発生によって当該携帯電話機の使用者以外の者に迷惑を及ぼす事態を回避できる。
【特許文献1】特許第2745753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような、減衰フィルタ及びそれが作動する状態と作動しない状態とを選択的に設定するスイッチを備え、ヘッドフォーンを用いる音響機器の場合、減衰フィルタによって再生音声信号を特定の周波数帯域においてレベルが減衰したものとするという、当該音響機器が具える再生音声信号をその全体に亙って所定のレベルを有するものとするという機能に制約が加えられることにより、ヘッドフォーンから外部に漏れる音によって使用者以外の者に迷惑がかかる事態の発生を低減させることになる。そして、ヘッドフォーンから外部に漏れる音によって使用者以外の者に迷惑がかかる事態の発生を効果的に低減させるには、減衰フィルタが作動する状態とするための、音響機器が具える機能に制約を加えるスイッチの操作が、必要なときに確実に行われなくてはならない。
【0008】
また、前述のような、呼出信号の着信を呼出音をもって知らせる動作モードと、呼出信号の着信を振動をもって知らせる動作モードとを、選択的にとることができる機能を備えた携帯電話機の場合、その機能に、呼出信号の着信を呼出音をもって知らせる動作モードでなく、呼出信号の着信を振動をもって知らせる動作モードをとることになるという制約が加えられることにより、呼出音の発生によって携帯電話機の使用者以外の者に迷惑を及ぼす事態を回避することになる。そして、呼出音の発生によって携帯電話機の使用者以外の者に迷惑を及ぼす事態を効果的に回避するには、呼出信号の着信を振動をもって知らせる動作モードとするための、携帯電話機が具える機能に制約を加える設定が、必要なときに確実に行われなくてはならない。
【0009】
しかしながら、このような、音響機器が具える機能に制約を加えるスイッチの操作あるいは携帯電話機が具える機能に制約を加える設定は、基本的に、音響機器の使用者あるいは携帯電話機の使用者の自由意志に委ねられている。そして、音響機器の使用者あるいは携帯電話機の使用者が、必要に応じた音響機器が具える機能に制約を加えるスイッチの操作あるいは携帯電話機が具える機能に制約を加える設定を忘れてしまう、あるいは、斯かるスイッチの操作あるいは設定を行うべきことに気付かないという事態は、往々にして生じるところである。それゆえ、減衰フィルタが作動する状態とするための、音響機器が具える機能に制約を加えるスイッチの操作、あるいは、呼出信号の着信を振動をもって知らせる動作モードとするための、携帯電話機が具える機能に制約を加える設定は、必要なときに確実に行われるようにはされていない。
【0010】
斯かる点に鑑み、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、例えば、音響機器とされる電子機器に適用され、例えば、音声信号に基づく音声あるいは呼出信号に基づく呼出音等とされる電子機器の出力が、特定の環境下において当該電子機器の使用者以外の者に迷惑を及ぼす事態を効果的に回避るための、電子機器の機能を制約する制御あるいは設定を、それが必要とされるとき確実に行うものとなる電子機器の機能制約装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の特許請求の範囲における請求項1から請求項7までのいずれかに記載された発明に係る電子機器の機能制約装置は、特定の環境下であることを識別させるための識別信号を送信する識別信号送出装置からの識別信号を受信する受信部と、受信部により受信された識別信号に応じた動作制御信号を形成し、その動作制御信号により、特定の環境下に在る受信部が設けられた電子機器の機能に制約を加える動作制御部と、を備えて構成される。
【0012】
特に、本願の特許請求の範囲における請求項2に記載された発明に係る電子機器の機能制約装置は、動作制御部が、動作制御信号により、特定の環境下に在る電子機器の信号出力機能に制約を加えるものとされ、また、本願の特許請求の範囲における請求項5に記載された発明に係る電子機器の機能制約装置は、動作制御部が、動作制御信号により、特定の環境下に在る電子機器の状態報知機能に制約を加えるものとされる。
【発明の効果】
【0013】
本願の特許請求の範囲における請求項1から請求項7までのいずれかに記載された発明に係る電子機器の機能制約装置にあっては、当該電子機器の機能制約装置が適用された電子機器が、例えば、映画館内,電車等の乗物内,エレベータ内等とされる特定の環境下に在るとき、識別信号送出部からの識別信号に基づいて特定の環境下であることを認知し、その識別信号に応じて形成される動作制御信号により、特定の環境下に置かれた電子機器の機能に制約が加えられる動作状態が自動的にとられる。斯かる電子機器の機能に加えられる制約は、例えば、請求項2に記載された発明に係る電子機器の機能制約装置の場合のように、特定の環境下に在る電子機器の信号出力機能を制約するもの、あるいは、請求項5に記載された発明に係る電子機器の機能制約装置の場合のように、特定の環境下に在る電子機器の状態報知機能を制約するものとされる。そして、このように、特定の環境下に在る電子機器の機能に制約が加えられることにより、例えば、特定の環境下におかれる電子機器が音響機器とされるもとにおいて、それが発する音声信号に基づく音声あるいは呼出信号に基づく呼出音が、当該電子機器の使用者以外の者に迷惑を及ぼす事態が効果的に回避される。
【0014】
従って、本願の特許請求の範囲における請求項1から請求項7までのいずれかに記載された発明に係る電子機器の機能制約装置によれば、それが電子機器に適用されたもとで、例えば、音声信号に基づく音声あるいは呼出信号に基づく呼出音等とされる電子機器の出力が、当該電子機器の使用者以外の者に迷惑を及ぼす事態を効果的に回避するための、電子機器の機能を制約する制御あるいは設定が、それが必要とされるとき確実に行われることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本願の特許請求の範囲における請求項1から請求項7までのいずれかに記載された発明を実施するための最良の形態は、以下に述べられる実施例をもって説明される。
【実施例1】
【0016】
図1は、本願の特許請求の範囲における請求項1から請求項4までのいずれかに記載された発明に係る電子機器の機能制約装置の一例を、それが適用された電子機器の例と共に示す。
【0017】
図1に示される電子機器は、携帯型の音響機器を構成しており、例えば、CD(コンパクト・ディスク)あるいはミニ・ディスク(MD)等の記録媒体に記録された音声信号を、記録媒体から読み出して再生し、再生音声信号SAを得る再生音声信号発生部11を備えている。再生音声信号発生部11から得られる再生音声信号SAは、音声信号処理部12に供給される。音声信号処理部12は、信号減衰器10を内蔵しており、再生音声信号SAに各種の処理を施し、さらに、必要に応じて、信号減衰器10によるレベル減衰を施して、出力音声信号SAOを形成し、その出力音声信号SAOを出力増幅部13に供給する。
【0018】
出力増幅部13は、出力音声信号SAOに電力増幅を施し、電力増幅された出力音声信号SAOを、出力検出部14を通じて、接続端子15に接続されたヘッドフォーン16に供給する。それにより、ヘッドフォーン16に内蔵された比較的小型なスピーカから、再生音声信号SAに基づく音声が発せられる。
【0019】
また、図1に示される電子機器には、例えば、マイクロコンピュータが用いられて構成される動作制御部20が備えられている。動作制御部20には、入力操作部21から、それにおける操作に応じて、制御入力データDYが供給される。動作制御部20は、入力操作部21からの制御入力データDYに応じた種々の制御動作を行うが、斯かる制御動作の一つとして、再生音声信号発生部11に対する駆動制御を駆動制御信号SDをもって行う駆動制御部22に、その動作制御を行う制御信号CPを供給するものとされる。
【0020】
出力検出部14は、出力増幅部13からヘッドフォーン16に供給される出力音声信号SAOによる電流が流れる、比較的小なる抵抗値を有した抵抗素子23と、抵抗素子23の両端に夫々得られる一対の電圧が供給される演算増幅器24とを含んで構成されている。それにより、出力検出部14にあっては、演算増幅器24から、抵抗素子23を流れる出力音声信号SAOによる電流のレベルに応じた電圧値を有した検出出力信号VOが得られる。この検出出力信号VOの電圧値は、出力音声信号SAOのレベルに応じたものとなり、従って、出力検出部14は、出力音声信号SAOのレベルを検出して、検出出力信号VOを導出することになる。
【0021】
出力検出部14から得られる検出出力信号VOは、スイッチ25に供給され、スイッチ25がオン状態とされるとき、スイッチ25を通じて動作制御部20に供給される。
【0022】
このような図1に示される電子機器は、例えば、映画館内,電車等の乗物内,エレベータ内等とされる特定の環境下に置かれるとき、その特定の環境下であることを識別させるための識別信号を送出する識別信号送出装置30からの送信用識別信号STを、受信アンテナ26を通じて受信部27により受信する。識別信号送出装置30は、例えば、識別信号SIを発生する識別信号発生部31と、識別信号発生部31からの識別信号SIを、送信用識別信号STとして、送信アンテナ33を通じて送信する送信部32とを含んで構成される。
【0023】
送信用識別信号STを受信した受信部27は、送信用識別信号STに基づいて識別信号SIを再生し、再生された識別信号SIを動作制御部20に供給する。動作制御部20は、受信部27からの識別信号SIに応じて、図1に示される電子機器が、例えば、映画館内,電車等の乗物内,エレベータ内等とされる特定の環境下に在ることを認識し、スイッチ25にオン状態をとらせるための制御信号CSを供給する。それにより、スイッチ25は制御信号CSに応じてオン状態をとり、出力検出部14から得られる検出出力信号VOが、オン状態をとるスイッチ25を通じて動作制御部20に供給される。
【0024】
検出出力信号VOが供給された動作制御部20は、検出出力信号VOの電圧値を検出して、検出出力信号VOの電圧値が予め設定された所定値以上となるとき、動作制御信号CAを形成する。そして、動作制御信号CAを音声信号処理部12に内蔵された信号減衰器10に供給し、信号減衰器10に、音声信号処理部12から送出される音声出力信号SAOのレベルを減衰させる動作を行わせる。
【0025】
動作制御部20において予め設定される検出出力信号VOの電圧値についての所定値は、検出出力信号VOの電圧値が予め設定された所定値以上となるときには、出力増幅部13からヘッドフォーン16に供給される出力音声信号SAOが比較的大なるレベルを有するものとなって、ヘッドフォーン16から外部への音漏れが生じる虞が大である状況となるように選定される。従って、検出出力信号VOの電圧値が予め設定された所定値以上となるとき、動作制御部20は、出力増幅部13からヘッドフォーン16に供給される出力音声信号SAOが比較的大なるレベルを有するものとなっていて、ヘッドフォーン16から外部への音漏れが生じる虞が大であると判断する。そして、動作制御部20は、直ちに動作制御信号CAを音声信号処理部12に内蔵された信号減衰器10に供給し、信号減衰器10に音声信号処理部12から送出される出力音声信号SAOのレベルを減衰させる動作を行わせ、それにより、出力増幅部13からヘッドフォーン16に供給される出力音声信号SAOのレベルを低下させて、ヘッドフォーン16から外部への音漏れが生じないようにするのである。
【0026】
このように、再生された識別信号SIに応じて、図1に示される電子機器が特定の環境下に在ることを認識するもとで動作制御部20が行う、音声信号処理部12に内蔵された信号減衰器10に音声信号処理部12から送出される出力音声信号SAOのレベルを減衰させる動作を行わせ、それにより、出力増幅部13からヘッドフォーン16に供給される出力音声信号SAOのレベルを低下させる動作制御は、出力増幅部13からヘッドフォーン16に供給される出力音声信号SAOのレベルを、常時、例えば、再生音声信号発生部11から得られる再生音声信号SAのレベルに忠実に応じたものにしようとする、図1に示された電子機器の機能に制約を加えることになる。従って、動作制御部20は、出力増幅部13からヘッドフォーン16に供給される出力音声信号SAOが比較的大なるレベルを有するものとなっていて、ヘッドフォーン16から外部への音漏れが生じる虞が大であるとき、予め設定された所定値以上の電圧値を有した検出出力信号VOに応じて形成した動作制御信号CAによって、図1に示された電子機器の機能に制約を加え、それにより、ヘッドフォーン16から外部への音漏れが生じる事態を回避するようになす動作制御を行うのである。
【0027】
上述のような図1に示された電子機器において、受信アンテナ26を伴った受信部27,出力検出部14,スイッチ25,動作制御部20及び信号減衰器10を含む部分によって、本願の特許請求の範囲における請求項1から請求項4までのいずれかに記載された発明に係る電子機器の機能制約装置の一例が構成されている。そして、斯かる電子機器の機能制約装置の一例により、出力音声信号SAOに基づいてヘッドフォーン16から得られる音声とされる図1に示された電子機器の出力が、ヘッドフォーン16から外部への音漏れを生じて、図1に示された電子機器の使用者、即ち、ヘッドフォーン16の使用者以外の者に迷惑を及ぼすことになる事態を効果的に回避するための、図1に示される電子機器の機能を制約する制御が、それが必要とされるとき自動的かつ確実に行われることになる。
【実施例2】
【0028】
図2は、本願の特許請求の範囲における請求項5から請求項7までのいずれかに記載された発明に係る電子機器の機能制約装置の一例を、それが適用された電子機器の例と共に示す。
【0029】
図2に示される電子機器は、携帯電話機を構成するものとされており、通話用のマイクロフォン41とスピーカ42とを備えている。マイクロフォン41から送出される通話音声信号SSは、符号化・復号化処理部43に供給される。符号化・復号化処理部43においては、通話音声信号SSに、アナログ/ディジタル(A/D)変換処理が施され、さらに符号化処理が施されて、通話音声信号SSに基づく符号化データDSが得られて、それが時分割多重処理部44に供給される。
【0030】
時分割多重処理部44においては、符号化データDSに制御データ等を多重する処理が施されて、多重化データDXが形成され、それが変復調部45に供給される。変復調部45は、多重化データDXを変調信号とする変調処理を行って被変調信号SMを形成し、それを送受信部46に供給する。送受信部46は、被変調信号SMに基づく通話信号である送信用信号STを形成し、それを送受分波器47及び送受信アンテナ48を通じて送信する。
【0031】
また、外部から到来する通話信号である送信用信号SUが、送受信アンテナ48及び送受分波器47を通じて送受信部46により受信される。送受信部46は、外部からの送信用信号SUに基づいて得られる受信信号SRを変復調部45に供給する。変復調部45は、受信信号SRに復調処理を施して受信多重化データDXRを得、それを時分割多重処理部44に供給する。
【0032】
時分割多重処理部44においては、受信多重化データDXRから受信制御データ等と受信符号化データDSRとが分離されて取り出され、受信符号化データDSRが符号化・復号化処理部43に供給される。符号化・復号化処理部43においては、受信符号化データDSRに復号化処理が施され、さらに、ディジタル/アナログ(D/A)変換処理が施されて、受信符号化データDSRに基づく受信通話音声信号SSRが得られ、それが信号加算部49を通じて、スピーカ42に供給される。それにより、スピーカ42から、受信通話音声信号SSRに基づく通話音声が得られる。
【0033】
また、図2に示される携帯電話機を構成する電子機器には、例えば、マイクロコンピュータが用いられて構成される動作制御部50が備えられている。動作制御部50には、入力操作部51から、それにおける操作に応じて、制御入力データDZが供給される。動作制御部50は、入力操作部51からの制御入力データDZに応じた種々の制御動作を行うが、斯かる制御動作の一つとして、入力操作部51における呼出操作に応じた呼出信号である呼出データDCを時分割多重処理部44に供給する。呼出データDCが供給された時分割多重処理部44においては、呼出データDCを含んだ多重化データDXが形成され、それに基づく送信用信号STが、送受信部46から送受分波器47及び送受信アンテナ48を通じて送信される。
【0034】
なお、時分割多重処理部44からは、それにおけるデータ処理状態に応じた状況伝達データDDが動作制御部50に供給される。
【0035】
さらに、図2に示される携帯電話機を構成する電子機器にあっては、外部から呼出信号(呼出データ)を含んだ送信用信号SUが到来し、それが送受信アンテナ48及び送受分波器47を通じて送受信部46により受信されるとき、時分割多重処理部44から、受信呼出データDCRが送出されて、スイッチ52に供給される。スイッチ52は、時分割多重処理部44からの受信呼出データDCRを、呼出音信号形成部53及び振動信号形成部54のいずれか一方に供給する。
【0036】
スイッチ52によって受信呼出データDCRが呼出音信号形成部53に供給されるときには、呼出音信号形成部53から、受信呼出データDCRに基づく呼出音信号SBが得られて、それが信号加算部49を通じてスピーカ42に供給される。それにより、スピーカ42から呼出音信号SBに応じた呼出音が発せられて、呼出信号の着信を知らせる。
【0037】
一方、スイッチ52によって受信呼出データDCRが振動信号形成部54に供給されるときには、振動信号形成部54から、受信呼出データDCRに基づく振動信号SVが得られて、それが振動発生部55に供給される。それにより、振動発生部55が、振動信号SVに応じた振動を発生し、図2に示される携帯電話機を構成する電子機器の全体を振動させて、呼出信号の着信を知らせる。
【0038】
このような図2に示される携帯電話機を構成する電子機器は、例えば、映画館内,電車等の乗物内,エレベータ内等とされる特定の環境下に置かれるとき、その特定の環境下であることを識別させるための識別信号を送出する識別信号送出装置60からの送信用識別信号STを、受信アンテナ56を通じて受信部57により受信する。識別信号送出装置60は、例えば、識別信号SIを発生する識別信号発生部61と、識別信号発生部61からの識別信号SIを、送信用識別信号STとして、送信アンテナ63を通じて送信する送信部62とを含んで構成される。
【0039】
送信用識別信号STを受信した受信部57は、送信用識別信号STに基づいて識別信号SIを再生し、再生された識別信号SIを動作制御部50に供給する。動作制御部50は、受信部57からの識別信号SIに応じて、図2に示される電子機器が、例えば、映画館内,電車等の乗物内,エレベータ内等とされる特定の環境下に在ることを認識し、スイッチ52に、時分割多重処理部44からの受信呼出データDCRを振動信号形成部54に供給する状態をとらせるための制御信号CWを供給する。それにより、スイッチ52は制御信号CWに応じて、時分割多重処理部44からの受信呼出データDCRを振動信号形成部54に供給する。その結果、振動信号形成部54から受信呼出データDCRに基づく振動信号SVが得られ、それが振動発生部55に供給されて、振動発生部55が振動信号SVに応じた振動を発生して、呼出信号の着信を知らせる。このとき、勿論、スピーカ42からは呼出音が発せられず、従って、図2に示される電子機器の使用者以外の者にスピーカ42からの呼出音による迷惑が及ぶ事態が回避され、スピーカ42から呼出音が発せられることなく、呼出信号の着信が知らされることになる。
【0040】
このように、再生された識別信号SIに応じて、図2に示される電子機器が特定の環境下に在ることを認識するもとで動作制御部50が行う、スイッチ52に、時分割多重処理部44からの受信呼出データDCRを振動信号形成部54に供給する状態をとらせ、それにより、スピーカ42から呼出音が発せられることなく、呼出信号の着信が知らされるようにする動作制御は、呼出データの着信があったとき、スピーカ42から呼出音を発して呼出信号の着信を知らせる状態と、振動発生部55が振動を発生して呼出信号の着信を知らせる状態とのいずれをもとることができる、図2に示された電子機器の機能に制約を加えることになる。従って、動作制御部50は、図2に示された電子機器が、例えば、映画館内,電車等の乗物内,エレベータ内等とされる特定の環境下に置かれるとき、再生された識別信号SIに応じて形成した制御信号CWによって、図2に示された電子機器の機能に制約を加え、それにより、図2に示される電子機器の使用者以外の者にスピーカ42からの呼出音による迷惑が及ぶ事態を回避するようになす動作制御を行うのである。
【0041】
なお、図2に示される電子機器にあっては、その動作状態に応じた各種の表示を行う表示部58が備えられており、表示部58には、動作制御部50からの表示制御データDDが供給される。
【0042】
上述のような図2に示された電子機器において、受信アンテナ56を伴った受信部57,スイッチ52及び動作制御部50を含む部分によって、本願の特許請求の範囲における請求項5から請求項7までのいずれかに記載された発明に係る電子機器の機能制約装置の一例が構成されている。そして、斯かる電子機器の機能制約装置の一例により、図2に示される電子機器の使用者以外の者にスピーカ42からの呼出音による迷惑が及ぶ事態を効果的に回避するための、図2に示される電子機器の機能を制約する制御が、それが必要とされるとき自動的かつ確実に行われることになる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のような本願の特許請求の範囲における請求項1から請求項7までのいずれかに記載された発明に係る電子機器の機能制約装置は、それが適用された電子機器が、例えば、映画館内,電車等の乗物内,エレベータ内等とされる特定の環境下に置かれるとき、その機能に制約を加えることによって、当該電子機器がその使用者以外の者に迷惑をかけることになる事態を効果的に回避することができ、例えば、ラジオ受信機,CDプレーヤ,MDプレーヤ等の音声信号再生装置であって携帯型のもの、あるいは、携帯電話機等々の電子機器に広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本願の特許請求の範囲における請求項1から請求項4までのいずれかに記載された発明に係る電子機器の機能制約装置の一例が適用された、携帯型の音響機器を構成する電子機器の例を示すブロック構成図である。
【図2】本願の特許請求の範囲における請求項5から請求項7までのいずれかに記載された発明に係る電子機器の機能制約装置の一例が適用された、携帯電話機を構成する電子機器の例を示すブロック構成図である。
【0045】
10・・・信号減衰器, 11・・・再生音声信号発生部, 12・・・音声信号処理部, 13・・・出力増幅部, 14・・・出力検出部, 16・・・ヘッドフォーン, 20,50・・・動作制御部, 21,51・・・入力操作部, 22・・・駆動制御部, 25,52・・・スイッチ, 26,56・・・受信アンテナ, 27,57・・・受信部, 30,60・・・識別信号送出装置, 33,63・・・送信アンテナ, 41・・・マイクロフォン, 42・・・スピーカ, 43・・・符号化・復号化処理部, 44・・・時分割多重処理部, 45・・・変復調部, 46・・・送受信部, 47・・・送受分波器, 48・・・送受信アンテナ, 53・・・呼出音信号形成部, 54・・・振動信号形成部, 55・・・振動発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の環境下であることを識別させるための識別信号を送信する識別信号送出装置からの上記識別信号を受信する受信部と、
該受信部により受信された識別信号に応じた動作制御信号を形成し、該動作制御信号により、上記特定の環境下に在る上記受信部が設けられた電子機器の機能に制約を加える動作制御部と、
を備えて構成される電子機器の機能制約装置。
【請求項2】
上記動作制御部が、上記動作制御信号により、上記特定の環境下に在る上記電子機器の信号出力機能に制約を加えることを特徴とする請求項1記載の電子機器の機能制約装置。
【請求項3】
上記電子機器の出力信号のレベルを検出する出力検出部を備え、上記動作制御部が、上記動作制御信号を、上記出力検出部により検出された出力信号のレベルに応じて該出力信号のレベルを低減させるものとすることを特徴とする請求項2記載の電子機器の機能制約装置。
【請求項4】
上記電子機器が出力信号を音声信号とする音響機器であって、上記出力検出部が上記音声信号のレベルを検出し、上記動作制御部が、上記動作制御信号を、上記出力検出部により検出された音声信号のレベルに応じて、上記音響機器が備える音響変換装置に供給される音声信号のレベルを低減させることを特徴とする請求項3記載の電子機器の機能制約装置。
【請求項5】
上記動作制御部が、上記動作制御信号により、上記特定の環境下に在る上記電子機器の状態報知機能に制約を加えることを特徴とする請求項1記載の電子機器の機能制約装置。
【請求項6】
上記電子機器が、呼出信号を含む通話信号の送受信を行う送受信機能と、外部からの呼出信号を受信したとき、該呼出信号の着信を呼出音及び振動のいずれかによって知らせる報知機能とを備え、上記動作制御部が、上記動作制御信号により、上記報知機能を上記呼出信号の着信を振動によって知らせる機能に制限することを特徴とする請求項5記載の電子機器の機能制約装置。
【請求項7】
上記電子機器が、外部からの呼出信号を受信したとき、受信された呼出信号に応じて呼出音信号が形成される状態と上記受信された呼出信号に応じて振動信号が形成される状態とのうちのいずれかを選択する選択手段を備え、上記動作制御部が、上記動作制御信号により、上記選択手段に上記受信された呼出信号に応じて振動信号が形成される状態を選択させることを特徴とする請求項6記載の電子機器の機能制約装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−25192(P2006−25192A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201680(P2004−201680)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】