説明

電子機器

【課題】電源制御用マイコンをメインデバイスに内蔵し本体のコストダウンを図るとともに、装置本体での消費電力の増加を抑え、さらに、電源回路における電源異常に対して適正な制御が行える電子機器を提供する。
【解決手段】電源回路3に商用電源が接続されると、常時出力端子3aに接続されている電源制御用マイコン11、および保持回路4に対する電源供給が開始される。保持回路4では、コンデンサCの充電が開始され、このコンデンサCの両端の電圧があるレベルに達するまで、p型トランジスタTrがオン状態になる。このため、このコンデンサCの両端の電圧があるレベルに達するまで、電源回路3に与えている電源出力制御信号がハイレベルになる。電源回路3は、この期間、メインデバイス2、メモリ2a、負荷回路5等に対して動作電源を供給する。また、コンデンサCの充電が進み、トランジスタTrがオフする前に、電源制御用マイコン11が立ち上がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、商用電源を入力とし、負荷回路に対して動作電源を供給する電源回路を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ受像機や、録画装置等の電子機器は、リモコン装置から送信されてきた電源オン信号等に応じて本体の動作が開始できるように、主電源をオフしているときにも、一部の機能については動作電源を供給して動作させている。主電源をオフしている状態を待機状態と言う。この種の電子機器では、負荷回路の動作を制御するメインデバイスとは別に、メインデバイスを含む本体各部に対する動作電源の供給/停止を制御する電源制御用マイコンを備えている(特許文献1〜3等参照)。また、電源制御用マイコンは、主電源のオン/オフに関係なく動作している。言い換えれば、電源回路は、主電源のオン/オフに関係なく、電源制御用マイコンに動作電源を供給している。また、電源制御用マイコンは、リモコン装置から送信されてきた制御信号を処理する機能を有している。さらに、電源制御用マイコンは、電源回路における異常(電源異常)の発生を監視し、電源異常が発生したときに、この電源回路に対して負荷回路への動作電源の出力停止(商用電源の切断)を指示する機能等も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−318624号公報
【特許文献2】特開2000−125372号公報
【特許文献3】特開2000− 47764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子機器本体のコストダウンを図るために、電源制御用マイコンをメインデバイスに内蔵することが考えられている。メインデバイスとは別に、電源制御用マイコンを設けている従来の装置は、商用電源の入力時(接続時)に、常に電源制御用マイコンに動作電源を供給する構成であれば問題なかった。すなわち、商用電源が接続されたときに、電源制御用マイコンに対して動作電源の供給を開始し、この電源制御用マイコンが立ち上がった後に、この電源制御用マイコンが電源回路に対してメインデバイスや負荷回路への動作電源の供給を制御する構成で問題なかった。
【0005】
一方、電源制御用マイコンをメインデバイスに内蔵した構成では、商用電源の入力時に、メインデバイスにも動作電源を供給しないと、電源制御用マイコンがメモリからプログラムをロードすることができない。すなわち、電源制御用マイコンをメインデバイスに内蔵した構成では、商用電源の入力時には、電源制御用マイコンだけでなく、メインデバイスにも動作電源を供給する必要がある。商用電源の入力時(接続時)に、常にメインデバイスにも動作電源を供給する構成では、電子機器本体が待機状態であるときに、メインデバイスに対して動作電源を供給することになり、電子機器本体の消費電力を無駄に増大させることになる。また、電源回路における電源異常の発生を検知しても、メインデバイスに対して動作電源の供給を停止することができない。
【0006】
この発明の目的は、電源制御用マイコンをメインデバイスに内蔵し本体のコストダウンを図るとともに、装置本体での消費電力の増加を抑え、さらに、電源回路における電源異常に対して適正な制御が行える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の電子機器は、上記目的を達するために、以下の構成を備えている。
【0008】
電源回路は、AC100V等の商用電源を入力とし、常時電源電圧を出力する常時出力端子と、入力されている電源出力制御信号に応じて電源電圧の出力/停止を切り替える制御出力端子と、を有している。負荷回路、およびメインデバイスが、この電源回路の制御出力端子において出力されている電源電圧を動作電源として動作する。
【0009】
電子機器本体がテレビ受像機である場合、負荷回路は、選局されている番組のチャンネルで放送されているテレビ放送信号を受信するチューナ回路、表示部における画面表示を行う表示回路、スピーカから音声を出力する音声出力回路等である。また、電子機器本体が録画装置である場合、負荷回路は、選局されているチャンネルで放送されている番組のテレビ放送信号を受信するチューナ回路や、この番組のデータをハードディスクやDVD等の記録媒体に録画したり、記録媒体に録画されている番組のデータを読み出し再生する録画/再生回路等である。メインデバイスは、負荷回路の動作を制御する。
【0010】
また、メインデバイスには、常時出力端子において出力されている電源電圧を、動作電源として動作する電源制御用マイコンが内蔵されている。この電源制御用マイコンは、電源回路における異常の発生を検知する検知機能、および、この検知機能が電源回路における異常の発生を検知したときに、電源出力制御信号をローレベルに切り替え、電源回路に対して制御出力端子における電源電圧の出力停止を指示する電源出力停止機能を有している。
【0011】
さらに、商用電源が電源回路に接続されると、電源制御用マイコンがメモリからプログラムをロードして立ち上がるまで、保持回路が電源出力制御信号を一時的にハイレベルに保持し、電源回路に対して制御出力端子における電源電圧の出力を指示する。したがって、商用電源の接続時に、メインデバイスに内蔵されている電源制御用マイコンを立ち上げることができる。また、電源制御用マイコンが立ち上がるまで、一時的にメインデバイスに動作電源を供給するだけであり、電源制御用マイコンが立ち上がると、この電源制御用マイコンによって、メインデバイス等に対する動作電源の供給が制御される。したがって、本体のコストダウンが図れるとともに、装置本体での消費電力の増加を抑え、さらに、電源回路における電源異常に対して適正な制御が行える。
【0012】
また、保持回路は、抵抗とコンデンサとを直列に接続し、この抵抗の他端を電源回路の常時出力端子に接続し、コンデンサの他端を接地した時定数回路と、この時定数回路の抵抗とコンデンサとの接続点をベースに接続し、電源出力制御信号をプルアップするトランジスタと、を有する回路にすればよい。これにより、コンデンサの充電時間に応じて時間だけ、電源出力制御信号を強制的にハイレベルにできる。
【0013】
より具体的には、保持回路は、トランジスタをp型トランジスタとし、そのエミッタを電源回路の常時出力端子に接続し、コレクタをプルアップ抵抗を介して電源出力制御信号に接続した回路と、すればよい。
【0014】
また、保持回路は、時定数回路の抵抗と並列に、コンデンサに蓄えられている電荷を放出する向きに接続したダイオードを有する回路とすれば、商用電源の切断時に、コンデンサに蓄えられている電荷を放出させることができる。
【0015】
また、電源制御用マイコンが電源回路に対して制御出力端子における電源電圧の出力停止を指示する論理を上記と逆にしてもよい。具体的には、通常時における電源出力制御信号をローレベルとし、電源回路における異常の発生を検知したときにハイレベルに切り替える構成としてもよい。
【0016】
この場合には、保持回路は、商用電源が電源回路に接続されると、電源制御用マイコンがメモリからプログラムをロードして立ち上がるまで、電源出力制御信号を一時的にローレベルに保持する構成とすればよい。
【0017】
具体的には、保持回路は、抵抗とコンデンサとを直列に接続し、このコンデンサの他端を電源回路の常時出力端子に接続し、抵抗の他端を接地した時定数回路と、この時定数回路の抵抗とコンデンサとの接続点をベースに接続し、電源出力制御信号をプルダウンするトランジスタと、を有する回路にすればよい。
【0018】
より具体的には、保持回路は、トランジスタをn型トランジスタとし、そのエミッタを接地し、コレクタをプルダウン抵抗を介して電源出力制御信号に接続した回路と、すればよい。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、本体のコストダウンが図れるとともに、装置本体での消費電力の増加を抑え、さらに、電源回路における電源異常に対して適正な制御が行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電子機器の概略の構成を示す図である。
【図2】商用電源接続時のタイミングチャートである。
【図3】商用電源切断時のタイミングチャートである。
【図4】別の電子機器の概略の構成を示す図である。
【図5】商用電源接続時のタイミングチャートである。
【図6】商用電源切断時のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0022】
この発明にかかる電子機器は、リモコンで主電源のオン/オフを含む操作が行えるテレビ受像機や、録画装置等である。図1は、この実施形態にかかる電子機器の概略の構成を示す図である。この電子機器1は、メインデバイス2と、電源回路3と、保持回路4と、負荷回路5と、を備えている。電子機器1がテレビ受像機である場合、負荷回路5は、選局されている番組のチャンネルで放送されているテレビ放送信号を受信するチューナ回路、表示部における画面表示を行う表示回路、スピーカから音声を出力する音声出力回路等である。また、電子機器1が録画装置であれば、負荷回路5は、選局されているチャンネルで放送されている番組のテレビ放送信号を受信するチューナ回路や、この番組のデータをハードディスクやDVD等の記録媒体に録画したり、記録媒体に録画されている番組のデータを読み出し再生する録画/再生回路等である。
【0023】
電源回路3は、商用電源(例えば、AC100V)を入力とし、本体各部に対して動作電源を供給する。この電源回路3は、商用電源が接続されているとき、常時電源電圧を出力する常時出力端子3aと、後述する電源制御用マイコン11から入力される電源出力制御信号に応じて電源電圧の出力/停止を切り替える制御出力端子3bと、を有している。メインデバイス2や、負荷回路5には、制御出力端子3bから出力される電源電圧が動作電源として供給される。また、メインデバイス2に内蔵されている電源制御用マイコン11、および保持回路4には、常時出力端子3aから出力される電源電圧が動作電源として供給される。
【0024】
なお、電源回路3は、メインデバイス2や、負荷回路5等に対して動作電源として供給する電源電圧毎に制御出力端子3bを備えている。例えば、電源電圧が、1.1V、1.8V、2.5V、3.3Vである、4つの制御出力端子3bを備えている。
【0025】
メインデバイス2、およびこのメインデバイス2に内蔵されている電源制御用マイコン11は、メモリ2aが記憶しているプログラムをロードし、そのプログラムに基づく処理を実行する。メモリ2aは、フラッシュメモリやDDR SDRAM(Double Data Rate SDRAM)等である。また、メモリ2aは、図1二示すように、メインデバイス2と別に設けた構成であってもよいし、このメインデバイス2に内蔵されている構成であってもよい。
【0026】
電源制御用マイコン11は、電源回路3の制御出力端子3b毎に、出力電圧を監視し、異常が発生しているかどうかを検知する電源異常検知回路(不図示)を有している。具体的には、制御出力端子3b毎に、この制御出力端子3bからメインデバイス2入力されている電圧が、予め定められている適正な電圧範囲内であるかどうかを検知することにより、電源回路の異常を検知する。また、電源制御用マイコン11は、電源回路3に対して、制御出力端子3bにおける電源電圧の出力/停止を指示する電源出力制御信号を入力する。電源回路3は、この電源出力制御信号がローレベルであるとき制御出力端子3bにおける電源電圧の出力を停止する。言い換えれば、電源回路3は、この電源出力制御信号がハイレベルであるとき制御出力端子3bにおいて電源電圧を出力する。
【0027】
また、電源制御用マイコン11には、リモコン装置(不図示)から送信されてきた装置本体に対する制御信号(主電源のオン/オフ信号や、チャンネル切替信号等)を受信するリモコン受信部12が接続されている。電源制御用マイコン11は、リモコン受信部12で受信した制御信号を処理し、装置本体に対して指示された動作を判定する機能も有している。
【0028】
保持回路4は、電源回路3に商用電源が接続されると、一定時間だけ、電源出力制御信号を強制的にハイレベルに保持する回路である。保持回路4が電源出力制御信号を強制的にハイレベルに保持する一定時間は、電源制御用マイコン11が電源供給の開始から、メモリ2aに記憶しているプログラムをロードし、立ち上がるまでに要する時間よりも、少し長い時間である。
【0029】
ここで、保持回路4について説明する。保持回路4は、トランジスタTrのエミッタを電源回路3の常時出力端子3aに接続している。このトランジスタTrは、p型トランジスタである。また、このトランジスタTrのコレクタは、抵抗R1を介して、電源制御用マイコン11が電源回路3に入力している電源出力制御信号のラインに接続している。抵抗R1は、プルアップ抵抗として機能する。また、保持回路4は、抵抗R2と、コンデンサCとを直列に接続した時定数回路を有し、トランジスタTrのベースを、この時定数回路の抵抗R2と、コンデンサCとの接続点に接続している。時定数回路の抵抗R2の他端(コンデンサCに接続していない側の端子)は、電源回路3の常時出力端子3aに接続している。また、時定数回路のコンデンサCの他端(抵抗R2に接続していない側の端子)は、グランドラインに接続し、接地している。さらに、時定数回路の抵抗R2と並列に、ダイオードDを接続している。このダイオードDの向きは、抵抗R2の他端に印加されている電圧が、コンデンサCの充電電圧よりも低くなったときに、このコンデンサCに蓄えられている電荷を放出する向きである。
【0030】
なお、抵抗R3は、トランジスタTrのベースに流れる電流を制限する電流制限抵抗である。
【0031】
次に、この電子機器1の動作について説明する。
【0032】
まず、商用電源を電子機器1(電源回路3)に接続したときの動作について説明する。商用電源が接続されていないとき、時定数回路のコンデンサCには電荷が蓄えられていない。また、商用電源が接続されていないので、メインデバイス2に内蔵されている電源制御用マイコン11も動作していない。
【0033】
商用電源が電源回路3に接続されると、常時出力端子3aに接続されている電源制御用マイコン11、および保持回路4に対して動作電源の供給が開始される。この時点では、電源制御用マイコン11は、メモリ2aに記憶しているプログラムをロードしておらず、立ち上がっていないので、電源回路3に与えている電源出力制御信号がハイレベルになるか、ローレベルになるか不定である。
【0034】
しかし、保持回路4では、時定数回路のコンデンサCの充電が開始され、コンデンサCの両端の電圧(充電電圧)が、図2(A)に示すように変化する。図2(A)は、コンデンサCに蓄積される電荷の変化を示す図である。図2(A)において、t0は商用電源を電源回路3に接続したタイミングであり、t1は電源回路3の常時出力端子3aにおいて電源電圧の出力が開始されるタイミングである。すなわち、t0〜t1の時間は、電源回路3の応答遅れ時間である。
【0035】
また、保持回路4は、コンデンサCの充電電圧があるレベル(略ベース−エミッタ間電圧)に達するまで(図2に示す時刻t2に達するまで)、トランジスタTrがオン状態になる(図2(B)参照)。図2(B)は、トランジスタTrのON/OFFを示す図である。すなわち、t1〜t2の期間は、保持回路4によって、電源回路3に与えている電源出力制御信号がハイレベルになる。したがって、電源回路3は、t1〜t2の期間、制御出力端子3bに電源電圧を出力し、メインデバイス2、メモリ2a、負荷回路5等に対して動作電源を供給する。
【0036】
ここでt1〜t2の期間は、電源制御用マイコン11がメモリ2aからプログラムをロードし、そのプログラムに基づく処理を開始するまでに要する時間(立上時間)よりも少し長い時間(数秒(1〜2秒)程度)になるように、時定数回路の回路定数を定めている。図2(B)に示すt1〜t3の時間が、電源制御用マイコン11の立上時間である。このため、商用電源の接続から、電源制御用マイコン11が立ち上がるまでの期間は、強制的にメインデバイス2や、メモリ2aに対して動作電源を供給することができる。したがって、電源制御用マイコン11が立ち上がらない(メモリ2aからプログラムがロードできない。)という事態を招くことはない。
【0037】
また、時刻t2に達した時点でトランジスタTrがオフするので、保持回路4は電源出力制御信号を強制的にハイレベルにする動作を終了する。ただし、この時点では、電源制御用マイコン11がすでに立ち上がっているので、これ以降、この電源制御用マイコン11が電源回路3に与えている電源出力制御信号を制御する。
【0038】
また、電源制御用マイコン11は、立ち上がった後、リモコン受信部12でメイン電源オンにかかる制御信号を受信すると、電源回路3に与えている電源出力制御信号をハイレベルに切り替え、メインデバイス2、メモリ2a、負荷回路5等に対する動作電源の供給(制御出力端子3bにおける電源電圧の出力)を指示する。電源回路3は、この指示にしたがって、制御出力端子3bにおける電源電圧の出力を開始する。
【0039】
また、電源制御用マイコン11は、チャンネルの切替等にかかる制御信号を受信すると、これをメインデバイス2に通知する。メインデバイス2は、電源制御用マイコン11からの通知に応じて、負荷回路5を制御し、チャネル切替等を行う。
【0040】
また、電源制御用マイコン11は、リモコン受信部12でメイン電源オフにかかる制御信号を受信すると、電源回路3に与えている電源出力制御信号をローレベルに切り替え、メインデバイス2、メモリ2a、負荷回路5等に対する動作電源の供給停止(制御出力端子3bにおける電源電圧の出力停止)を指示する。電源回路3は、この指示にしたがって、制御出力端子3bにおける電源電圧の出力を停止する。
【0041】
これにより、待機時における装置本体での無駄な消費電力が抑えられる。
【0042】
さらに、電源制御用マイコン11は、制御出力端子3bにおける出力電圧の異常を検知すると、電源回路3に与えている電源出力制御信号をローレベルに切り替え、メインデバイス2、メモリ2a、負荷回路5等に対する動作電源の供給停止を指示する。したがって、電源異常が発生したときに、制御出力端子3bにおける電源電圧の出力を速やかに停止することができる。
【0043】
次に、商用電源を電子機器1(電源回路3)から切断したときの動作について説明する。電子機器1は、商用電源が切断されると、電源回路3が停止し、各部への動作電源の供給が停止する。これにより、電源制御用マイコン11も停止する。
【0044】
このとき、保持回路4では、コンデンサCに蓄えられている電荷が、ダイオードDを介して放出される(図3参照)。図3は、コンデンサCに蓄積されている電荷の変化を示す図である。図3において、t10は商用電源が切断されたタイミングであり、t11は電源回路3の常時出力端子3aにおける電源電圧の出力が停止したタイミングである。すなわち、t10〜t11の時間は、電源回路3の応答遅れ時間である。このため、商用電源を電子機器1(電源回路3)から切断したときに、時定数回路のコンデンサCに蓄えられている電荷をほとんど全て放出させることができる。
【0045】
したがって、再度、商用電源を電子機器1(電源回路3)に接続したときには、上述したように、電源制御用マイコン11が立ち上がるまでの期間は、保持回路4によって、強制的にメインデバイス2や、メモリ2aに対して動作電源を供給することができる。
【0046】
また、この電子機器1は、電源制御用マイコン11をメインデバイス2に内蔵しているので、本体のコストダウンも図れる。
【0047】
次に、別の例にかかる電子機器1について説明する。この電子機機器1は、電源制御用マイコン11が電源回路3に対して制御出力端子3bにおける電源電圧の出力停止を指示する論理を上記と逆にしたものである。具体的には、通常時における電源出力制御信号をローレベルとし、電源回路3における異常の発生を検知したときにハイレベルに切り替える構成としたものである。
【0048】
図4は、この電子機器の概略の構成を示す図である。この例の電子機器1は、上記のものと保持回路4の構成が異なる。また、電源制御マイコン11が、通常時に電源出力制御信号をローレベルとし、電源回路3における異常の発生を検知したときにハイレベルに切り替える点で異なる。ここでは、上記のものと同一の構成については、その説明を省略する。
【0049】
この電子機器1における保持回路4は、電源回路3に商用電源が接続されると、一定時間だけ、電源出力制御信号を強制的にローレベルに保持する回路である。保持回路4が電源出力制御信号を強制的にローレベルに保持する一定時間は、電源制御用マイコン11が電源供給の開始から、メモリ2aに記憶しているプログラムをロードし、立ち上がるまでに要する時間よりも、少し長い時間である。
【0050】
この保持回路4は、トランジスタTrのエミッタを接地している。このトランジスタTrは、n型トランジスタである。また、このトランジスタTrのコレクタは、抵抗R1を介して、電源制御用マイコン11が電源回路3に入力している電源出力制御信号のラインに接続している。この抵抗R1は、プルダウン抵抗として機能する。また、保持回路4は、抵抗R2と、コンデンサCとを直列に接続した時定数回路を有し、トランジスタTrのベースを、この時定数回路の抵抗R2と、コンデンサCとの接続点に接続している。時定数回路の抵抗R2の他端(コンデンサCに接続していない側の端子)は、グランドラインに接続し、接地している。また、時定数回路のコンデンサCの他端(抵抗R2に接続していない側の端子)は、電源回路3の常時出力端子3aに接続している。さらに、時定数回路の抵抗R2と並列に、ダイオードDを接続している。このダイオードDの向きは、コンデンサCの他端に印加されている電圧が、コンデンサCの充電電圧よりも低くなったときに、このコンデンサCに蓄えられている電荷を放出する向きである。
【0051】
なお、抵抗R3は、トランジスタTrのベースに流れる電流を制限する電流制限抵抗である。
【0052】
次に、この電子機器1の動作について説明する。
【0053】
まず、商用電源を電子機器1(電源回路3)に接続したときの動作について説明する。商用電源が接続されていないとき、時定数回路のコンデンサCには電荷が蓄えられていない。また、商用電源が接続されていないので、メインデバイス2に内蔵されている電源制御用マイコン11も動作していない。
【0054】
商用電源が電源回路3に接続されると、常時出力端子3aに接続されている電源制御用マイコン11、および保持回路4に対して動作電源の供給が開始される。この時点では、電源制御用マイコン11は、メモリ2aに記憶しているプログラムをロードしておらず、立ち上がっていないので、電源回路3に与えている電源出力制御信号がハイレベルになるか、ローレベルになるか不定である。
【0055】
しかし、保持回路4では、時定数回路のコンデンサCの充電が開始され、コンデンサCの両端の電圧(充電電圧)が、図5(A)に示すように変化する。図5(A)は、コンデンサCに蓄積される電荷の変化を示す図である。図5(A)において、t0は商用電源を電源回路3に接続したタイミングであり、t1は電源回路3の常時出力端子3aにおいて電源電圧の出力が開始されるタイミングである。すなわち、t0〜t1の時間は、電源回路3の応答遅れ時間である。この保持回路4におけるコンデンサCに蓄積される電荷の変化は、上述した例の保持回路と同様である。
【0056】
また、保持回路4は、コンデンサCの充電電圧があるレベル(略ベース−エミッタ間電圧)に達するまで(図5に示す時刻t2に達するまで)、トランジスタTrがオン状態になる(図5(B)参照)。図5(B)は、トランジスタTrのON/OFFを示す図である。すなわち、t1〜t2の期間は、保持回路4によって、電源回路3に与えている電源出力制御信号がローレベルになる。したがって、電源回路3は、t1〜t2の期間、制御出力端子3bに電源電圧を出力し、メインデバイス2、メモリ2a、負荷回路5等に対して動作電源を供給する。
【0057】
ここでt1〜t2の期間は、上述したものと同様に、電源制御用マイコン11がメモリ2aからプログラムをロードし、そのプログラムに基づく処理を開始するまでに要する時間(立上時間)よりも少し長い時間になるように、時定数回路の回路定数を定めている。図5(B)に示すt1〜t3の時間が、電源制御用マイコン11の立上時間である。このため、商用電源の接続から、電源制御用マイコン11が立ち上がるまでの期間は、強制的にメインデバイス2や、メモリ2aに対して動作電源を供給することができる。したがって、電源制御用マイコン11が立ち上がらない(メモリ2aからプログラムがロードできない。)という事態を招くことはない。
【0058】
また、時刻t2に達した時点でトランジスタTrがオフするので、保持回路4は電源出力制御信号を強制的にローレベルにする動作を終了する。ただし、この時点では、電源制御用マイコン11がすでに立ち上がっているので、これ以降、この電源制御用マイコン11が電源回路3に与えている電源出力制御信号を制御する。
【0059】
また、電源制御用マイコン11は、立ち上がった後、リモコン受信部12でメイン電源オンにかかる制御信号を受信すると、電源回路3に与えている電源出力制御信号をローレベルに切り替え、メインデバイス2、メモリ2a、負荷回路5等に対する動作電源の供給(制御出力端子3bにおける電源電圧の出力)を指示する。電源回路3は、この指示にしたがって、制御出力端子3bにおける電源電圧の出力を開始する。
【0060】
また、電源制御用マイコン11は、チャンネルの切替等にかかる制御信号を受信すると、これをメインデバイス2に通知する。メインデバイス2は、電源制御用マイコン11からの通知に応じて、負荷回路5を制御し、チャネル切替等を行う。
【0061】
また、電源制御用マイコン11は、リモコン受信部12でメイン電源オフにかかる制御信号を受信すると、電源回路3に与えている電源出力制御信号をハイレベルに切り替え、メインデバイス2、メモリ2a、負荷回路5等に対する動作電源の供給停止(制御出力端子3bにおける電源電圧の出力停止)を指示する。電源回路3は、この指示にしたがって、制御出力端子3bにおける電源電圧の出力を停止する。
【0062】
これにより、待機時における装置本体での無駄な消費電力が抑えられる。
【0063】
さらに、電源制御用マイコン11は、制御出力端子3bにおける出力電圧の異常を検知すると、電源回路3に与えている電源出力制御信号をハイレベルに切り替え、メインデバイス2、メモリ2a、負荷回路5等に対する動作電源の供給停止を指示する。したがって、電源異常が発生したときに、制御出力端子3bにおける電源電圧の出力を速やかに停止することができる。
【0064】
次に、商用電源を電子機器1(電源回路3)から切断したときの動作について説明する。電子機器1は、商用電源が切断されると、電源回路3が停止し、各部への動作電源の供給が停止する。これにより、電源制御用マイコン11も停止する。
【0065】
このとき、保持回路4では、コンデンサCに蓄えられている電荷が、ダイオードDを介して放出される(図6参照)。図6は、コンデンサCに蓄積されている電荷の変化を示す図である。この保持回路4におけるコンデンサCに蓄積されている電荷の変化も、上述した例の保持回路と同様である。図6において、t10は商用電源が切断されたタイミングであり、t11は電源回路3の常時出力端子3aにおける電源電圧の出力が停止したタイミングである。すなわち、t10〜t11の時間は、電源回路3の応答遅れ時間である。このため、商用電源を電子機器1(電源回路3)から切断したときに、時定数回路のコンデンサCに蓄えられている電荷をほとんど全て放出させることができる。
【0066】
したがって、再度、商用電源を電子機器1(電源回路3)に接続したときには、上述したように、電源制御用マイコン11が立ち上がるまでの期間は、保持回路4によって、強制的にメインデバイス2や、メモリ2aに対して動作電源を供給することができる。
【0067】
このように、この図4に示した電子機器1も、上述した電子機器1と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0068】
1−電子機器
2−メインデバイス
3−電源回路
4−保持回路
5−負荷回路
11−電源制御用マイコン
12−リモコン受信部
Tr−トランジスタ
R1、R2−抵抗
C−コンデンサ
D−ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源が接続されているとき、常時電源電圧を出力する常時出力端子と、入力されている電源出力制御信号に応じて電源電圧の出力/停止を切り替える制御出力端子と、を有する電源回路と、
前記電源回路の前記制御出力端子において出力されている電源電圧を、動作電源として動作する負荷回路、およびこの負荷回路を制御するメインデバイスと、を備えた電子機器において、
前記メインデバイスは、前記常時出力端子において出力されている電源電圧を、動作電源として動作する電源制御用マイコンを内蔵しており、
前記電源制御用マイコンは、
前記電源回路における異常の発生を検知する検知機能、および、この検知機能が前記電源回路における異常の発生を検知したときに、前記電源出力制御信号をローレベルに切り替え、前記電源回路に対して前記制御出力端子における電源電圧の出力停止を指示する電源出力停止機能を有し、
さらに、商用電源が前記電源回路に接続されると、前記電源制御用マイコンがメモリからプログラムをロードして立ち上がるまで、前記電源出力制御信号を一時的にハイレベルに保持し、前記電源回路に対して前記制御出力端子における電源電圧の出力を指示する保持回路を、備えている電子機器。
【請求項2】
前記保持回路は、
抵抗とコンデンサとを直列に接続し、この抵抗の他端を前記電源回路の前記常時出力端子に接続し、コンデンサの他端を接地した時定数回路と、
前記時定数回路の前記抵抗と前記コンデンサとの接続点をベースに接続し、前記電源出力制御信号をプルアップするトランジスタと、
を有する回路である、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記保持回路は、前記トランジスタがp型トランジスタであり、エミッタを前記電源回路の前記常時出力端子に接続し、コレクタをプルアップ抵抗を介して前記電源出力制御信号に接続した回路である、請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
商用電源が接続されているとき、常時電源電圧を出力する常時出力端子と、入力されている電源出力制御信号に応じて電源電圧の出力/停止を切り替える制御出力端子と、を有する電源回路と、
前記電源回路の前記制御出力端子において出力されている電源電圧を、動作電源として動作する負荷回路、およびこの負荷回路を制御するメインデバイスと、を備えた電子機器において、
前記メインデバイスは、前記常時出力端子において出力されている電源電圧を、動作電源として動作する電源制御用マイコンを内蔵しており、
前記電源制御用マイコンは、
前記電源回路における異常の発生を検知する検知機能、および、この検知機能が前記電源回路における異常の発生を検知したときに、前記電源出力制御信号をハイレベルに切り替え、前記電源回路に対して前記制御出力端子における電源電圧の出力停止を指示する電源出力停止機能を有し、
さらに、商用電源が前記電源回路に接続されると、前記電源制御用マイコンがメモリからプログラムをロードして立ち上がるまで、前記電源出力制御信号を一時的にローレベルに保持し、前記電源回路に対して前記制御出力端子における電源電圧の出力を指示する保持回路を、備えている電子機器。
【請求項5】
前記保持回路は、
抵抗とコンデンサとを直列に接続し、このコンデンサの他端を前記電源回路の前記常時出力端子に接続し、抵抗の他端を接地した時定数回路と、
前記時定数回路の前記抵抗と前記コンデンサとの接続点をベースに接続し、前記電源出力制御信号をプルダウンするトランジスタと、
を有する回路である、請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記保持回路は、前記トランジスタがn型トランジスタであり、エミッタを接地し、コレクタをプルダウン抵抗を介して前記電源出力制御信号に接続した回路である、請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記保持回路は、前記時定数回路の抵抗と並列に、前記コンデンサに蓄えられている電荷を放出する向きに接続したダイオードを有する回路である、請求項2、3、5、または6のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記電源制御用マイコンは、リモコン装置から送信されてきた制御信号に応じて、前記電源出力制御信号を切り替える機能を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−176356(P2010−176356A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17845(P2009−17845)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】