説明

電子部品、およびその封止方法

【課題】内部空間に封止材のガスが残留するのを抑える。
【解決手段】水晶振動子1では、ベース3と蓋4とが封止材5を介して接合されて本体筐体11が構成され、この本体筐体11の内部空間12に水晶振動片2が気密封止されている。ベース3と蓋4との予め設定した接合領域のうち一接合領域13において、ビーム溶接方式によってベース3と蓋4とが封止材5を介して線状に接合するライン接合されている。また、ライン接合後に、ベース3と蓋4との予め設定した接合領域のうち他接合領域14において、ビーム溶接方式によってベース3と蓋4とが点状に接合するドット接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、およびその封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品は、その内部空間に搭載した電子部品素子の特性が劣化するのを防ぐために内部空間を気密封止する。この気密封止を必要とする電子部品として、例えば、圧電振動素子を内部空間に搭載した圧電振動デバイスなどが挙げられる。
【0003】
ここでいう圧電振動デバイスに、例えば、水晶振動子、水晶フィルタ、水晶発振器等がある。この圧電振動デバイスは、水晶振動板や音叉型水晶振動片等の圧電振動素子をベースに収納(搭載)し、封止材(例えば、銀ろう等の金属ろう材)を用いて蓋をベースに封止材の溶融によって接合して圧電振動素子を気密封止し、圧電振動素子を外的環境から保護している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1では、封止材を加熱することにより溶融してベースに蓋を接合する構成が開示され、具体的に、電子ビーム等を照射することにより熱を発生させ、その照射部分が接合されるビーム溶接方式を用いた封止方法が開示されている。
【0005】
ところで、この特許文献1では、封止材の溶融時にガスが発生し、そのガスが内部空間に封じ込められることを防止するために、開口部周縁部の一部を除いて溶接(1次封止)を行った後に内部空間に滞留したガスの排気を行い、溶接によって封止材から発生するガスを内部空間外に排気し、その後に、未封止部分を溶接(2次封止)することで、内部空間の気密封止を行なっている。
【特許文献1】特開2000−223604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した特許文献1の従来技術では、2次封止時に発生する封止材のガスを内部空間から排気しきれずにガスを内部空間に残留させてしまう(閉じ込めてしまう)場合があり、このことが原因となり、圧電振動デバイスの良否にばらつきが生じる。
【0007】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、内部空間に封止材のガスが残留するのを抑える電子部品、およびその封止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる電子部品は、ベースと蓋とが封止材を介して接合されて本体筐体が構成され、この本体筐体の内部空間に電子部品素子が気密封止される電子部品において、前記ベースと前記蓋との予め設定した接合領域のうち一接合領域において、ビーム溶接方式によって前記ベースと前記蓋とが封止材を介して線状に接合するライン接合され、前記ライン接合後に、前記ベースと前記蓋との予め設定した接合領域のうち他接合領域において、ビーム溶接方式によって前記ベースと前記蓋とが点状に接合するドット接合されたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、前記内部空間に前記封止材のガスが残留するのを抑えることが可能となる。具体的に、前記ライン接合と前記ドット接合により前記ベースと前記蓋との接合を行っているので、前記ライン接合により前記蓋と前記ベースとの接合強度を良好なものとするとともに、前記ドット接合によって前記封止材のガスの発生を抑えることが可能となり、その結果、前記ベースと前記蓋との接合強度を高めた状態で前記内部空間のガスの残留を抑えることが可能となる。また、前記ライン接合後に前記ドット接合が行われるので、前記ライン接合時に発生した前記内部空間の前記封止材のガスを前記ドット接合前に排気することが可能となり、前記ライン接合と前記ドット接合との組合せにより、ライン接合だけによる前記ベースと前記蓋との接合と比較して、前記内部空間に前記封止材のガスが残留することはなく、さらにドット接合だけによる前記ベースと前記蓋との接合と比較して、前記蓋と前記ベースとの接合強度を高めることが可能となる。特に真空封止する電子部品において、前記封止材により前記ベースと前記蓋とを接合する際に発生するガス(溶融ガス)をどのようにして抑えるかが電子部品の特性向上のための重要なポイントとなり、上記した効果を有する本発明を電子部品に適用することで封止の信頼性を向上させることができる。
【0010】
前記構成において、前記封止材を介した前記ベースと前記蓋の接合には、連続発振出力またはパルス発振出力によるビーム溶接方式が用いられてもよい。
【0011】
この場合、前記ライン接合と前記ドット接合のいずれの接合にも連続発振出力またはパルス発振出力によるビーム溶接方式を適用することが可能となり、製造装置の簡略化を図ることが可能となる。
【0012】
前記構成において、前記一接合領域の領域に対して、前記他接合領域の領域は小さくてもよい。
【0013】
この場合、前記ライン接合によって前記蓋と前記ベースとの接合強度を高めるとともに、前記ドット接合によって前記封止材のガスの発生を抑えるのに好適である。
【0014】
前記構成において、前記他接合領域におけるドット接合の点状の照射痕の径は、100〜200μmであってもよい。
【0015】
この場合、当該電子部品における封止領域を縮小するのに有効であり、当該電子部品の小型化を図ることが可能となる。
【0016】
前記構成において、前記電子部品素子は、圧電振動素子であってもよい。
【0017】
この場合、前記電子部品素子は前記圧電振動素子であるので、その特性は熱影響を受け易いが、本発明では高温による前記ベースと前記蓋との接合を必要としないので、熱影響を受け難い。
【0018】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる電子部品の封止方法は、電子部品素子を保持したベースに封止材を介して蓋を接合し、電子部品素子を気密封止する電子部品の封止方法において、ベースへの蓋の接合に、ビーム溶接方式を用い、前記封止材を用いて前記ベースと前記蓋とを線状に接合するライン接合工程と、前記封止材を用いて前記ベースと前記蓋とを点状に接合するドット接合工程と、を有し、前記ライン接合工程の後に前記ドット接合工程を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、前記内部空間に前記封止材のガスが残留するのを抑えることが可能となる。具体的に、前記ライン接合工程と前記ドット接合工程により前記ベースと前記蓋との接合を行っているので、前記ライン接合工程により前記蓋と前記ベースとの接合強度を良好なものとするとともに、前記ドット接合工程によって前記封止材のガスの発生を抑えることが可能となり、その結果、前記ベースと前記蓋との接合強度を高めた状態で前記内部空間のガスの残留を抑えることが可能となる。また、前記ライン接合工程後に前記ドット接合工程を行うので、前記ライン接合工程時に発生した前記内部空間の前記封止材のガスを前記ドット接合工程前に排気することが可能となり、前記ライン接合工程と前記ドット接合工程との組合せにより、ライン接合工程だけによる前記ベースと前記蓋との接合と比較して、前記内部空間に前記封止材のガスが残留することはなく、さらにドット接合工程だけによる前記ベースと前記蓋との接合と比較して、前記蓋と前記ベースとの接合強度を高めることが可能となる。特に真空封止する電子部品において、前記封止材により前記ベースと前記蓋とを接合する際に発生する溶融ガスをどのようにして抑えるかが電子部品の特性向上のための重要なポイントとなり、上記した効果を有する本発明を電子部品に適用することで封止の信頼性を向上させることができる。
【0020】
前記方法において、前記ベースへの前記蓋の接合には、連続発振出力またはパルス発振出力によるビーム溶接方式が用いられてもよい。
【0021】
この場合、前記ライン接合工程と前記ドット接合工程のいずれの接合工程にも同一の封止方式を適用することが可能となり、製造装置の簡略化を図ることが可能となる。
【0022】
前記方法において、前記ビーム溶接方式は、連続発振出力またはパルス発振出力によるレーザビーム溶接方式であり、前記ライン接合工程は、不活性ガスによる雰囲気下において行い、前記ドット接合工程は、真空雰囲気下において行ってもよい。
【0023】
この場合、前記ライン接合では、不活性ガスによる雰囲気下において前記ベースと前記蓋との接合を行っているので、接合時に発生する溶融熱を逃がして本体筐体(例えば前記ベース)のクラックを防ぐことが可能となり、不活性ガスにより前記封止材から発生するガス(溶融ガス)が前記電子部品素子へ付着するのを抑制することが可能となる。さらに、前記ドット接合工程では、真空雰囲気下において前記ベースと前記蓋との接合を行っているので、前記内部空間のガスの排気および高真空化を好適に行うことが可能となる。また、前記ライン接合工程は、不活性ガスによる雰囲気下において行うので、レーザビームの直行性を犠牲にすることはなく、レーザビームによる前記封止材の溶融を安定して行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、内部空間に封止材のガスが残留するのを抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、電子部品として圧電振動デバイスである音叉型水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0026】
本実施例にかかる音叉型水晶振動子1(以下、水晶振動子という)では、図1〜3に示すように、フォトリソグラフィ法で成形された圧電振動素子である音叉型水晶振動片2(本発明でいう電子部品素子であり、以下、水晶振動片という)と、この水晶振動片2を保持するベース3と、ベース3に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋4と、が設けられている。
【0027】
この水晶振動子1では、ベース3と蓋4とが接合されて本体筐体11が構成されている。これらベース3と蓋4とが封止材5を介して接合され、この接合により本体筐体11の内部空間12が形成されている。そして、この本体筐体11の内部空間12のベース3上に導電性バンプ6を介して水晶振動片2が保持接合されているとともに、この水晶振動片2が搭載された本体筐体11の内部空間12が気密封止されている。この際、図1,2に示すように、ベース3と水晶振動片2とは導電性バンプ6を用いてFCB(Flip Chip Bonding)法により超音波接合されるとともに電気的に接続されている(電気機械的に接合されている)。なお、封止材5として、金属材料のろう材が用いられ、本実施例では銀ろう材が用いられている。
【0028】
また、本実施例では、本体筐体11の寸法が2.0×1.2×0.5mmに設定されている。なお、本実施例では本体筐体の寸法が2.0×1.2×0.5mmに設定されているが、本体筐体11の寸法が3.2×2.5×0.75mm以下に設定された際に本発明の作用効果は顕著に表れる。これは、ベース3の接合部33(下記参照)の幅(領域)が小さくなるにつれて、内部空間12の容量に対する封止材5の溶融ガスの量の割合が増加することを考慮しなければいけないことに関係する。例えば本実施例の本体筐体11の寸法と比較して大きい寸法からなる本体筐体(例えば、蓋の平面視寸法が5.0×3.2mm)では、内部空間12の容量に対する2次封止時(上記従来技術参照)に発生する封止材5のガスの残留割合は少ないが、本実施例に示すような大きさの本体筐体11(蓋4の平面視寸法が2.0×1.2mm程度)の場合、内部空間12の容量に対する2次封止時(上記従来技術参照)に発生する封止材5のガスの残留割合が無視できないぐらい大きくなり、内部空間12が特に真空状態となりこの真空雰囲気下で配された水晶振動片2の特性(例えばCI値)の劣化を招く原因となる。しかしながら、本実施例に示すような水晶振動子1およびその封止方法によれば(下記参照)、本体筐体11の寸法が小さくなった場合であっても、水晶振動片2の特性が劣化するのを抑制することができ、本体筐体11の小型化に好適である。
【0029】
次に、この水晶振動子1の各構成について説明する。
【0030】
ベース3は、図1,2に示すように、底部31と、この底部31から上方に延出した堤部32とから構成される箱状体に形成されている。
【0031】
このベース3は、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成されている。また、堤部32は、図1,2に示す底部31の表面外周に沿って成形されている。この堤部32の上面は蓋4との接合部33であり、この接合部33には、蓋4と接合するためのメタライズ層(図示省略)が設けられている。また、接合部33のメタライズ層は、例えば、タングステンメタライズ層、あるいはモリブデンメタライズ層上にニッケル層,金層の順でメッキした構成とからなる。なお、タングステンメタライズ層あるいはモリブデンメタライズ層を用いずにコバールリングを介在させ、このコバールリング上にニッケル層、金層の順でメッキ形成されてもよい。この場合、コバールリングがタングステンメタライズ層やモリブデンメタライズ層よりも延性に優れた特性のため、クラックを抑制するのに有効となる。また、本実施形態に示すように接合部33全面にメタライズ層を形成しなくてもよく、若干狭い領域となってもよい。
【0032】
接合部33(堤部32の上面)は、下記する封止工程(封止方法)により蓋4と接合する部分であり、接合部33の長辺34側のシールパス(幅)が0.03〜0.3mmに設定され、その短辺35側のシールパス(幅)が0.03〜0.3mmに設定されている。
【0033】
また、セラミック材料が積層して凹状に一体的に焼成されたベース3の内部空間12の底面には、図1,2に示すように、電極パッド36が形成され、これら電極パッド36上に水晶振動片2が片保持して設けられる。これら電極パッド36は、それぞれに対応した引回電極(図示省略)を介して、ベース3の裏面などの外周面に形成される端子電極(図示省略)に電気的に接続され、これら端子電極が外部部品や外部機器の外部電極に接続される。なお、これら電極パッド36、引回電極、端子電極は、タングステンやモリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース3と一体的に焼成して形成される。そして、これら電極パッド36、引回電極、端子電極のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0034】
蓋4は、図2,3に示すように、平面視矩形状の一枚板に成形されている。この蓋4の下面には、ベース3との接合前に封止材5が設けられる。この蓋4は、ビーム溶接方式(本実施例では連続発振出力を用いたファイバーレーザによるレーザビーム溶接方式)により封止材5を介してベース3に接合されて、蓋4とベース3とによる水晶振動子1の本体筐体11が構成される。なお、蓋4および封止材5は、例えば、4層の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されている。具体的に、ベース3との接合面となる蓋4の下面側から、低融点材料である銀ろう材(封止材5)、銅層(もしくは銅合金層)、コバール層及びニッケル層が順に積層されて蓋4および封止材5が形成される。なお、本実施例では、封止材5が蓋4の下面全面に形成されている。なお、封止材5が蓋4の下面の外周縁に沿った環状層に形成されてもよい。
【0035】
さらに、本体筐体11におけるベース3と蓋4とを接合する領域(接合領域)は、下記する封止工程(封止方法)を用いてビーム溶接方式によってベース3と蓋4とが封止材5を介して線状に接合する(ライン接合)領域と、下記する封止工程(封止方法)を用いてビーム溶接方式によってベース3と蓋4とが点状に接合する(ドット接合)領域とから構成される。つまり、封止材5を介してベース3と蓋4との接合が、密状態のライン接合(図3に示す線状の照射痕71参照)と、粗状態のドット接合(図3に示す点状の照射痕72参照)とから構成される。本実施例では、ライン接合を行う領域(ライン接合領域)を一接合領域13と予め設定し、一接合領域13以外のドット接合を行う領域(ドット接合領域)を他接合領域14と予め設定している。そして、一接合領域13に対して他接合領域14は小さく設定され、他接合領域14は図1,3に示すように一方の短辺35側の接合部33の半分以下の領域に設定されている。なお、他接合領域14は、短辺35の長さ方向に対して0.1〜0.4mmに設定され、本実施例では0.3mmに設定されている。また、他接合領域14におけるドット接合の点状の照射痕72の径は、100〜200μmに設定され、本実施例では150μm程度に設定されている。なお、このドット接合の点状の照射痕72は図3に示すように隣接する照射痕72と一部重なってもよいが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、隣接する照射痕72と接してもよい。
【0036】
次に、内部空間12に配された水晶振動片2の構成について説明する。
【0037】
水晶振動片2は、図1,2に示すように、異方性材料の水晶片である水晶素板(図示省略)から、ウェットエッチング形成された水晶Z板である。そのため、この水晶振動片2は量産に好適である。この水晶振動片2の基板21は、振動部である2本の脚部22と基部23とから構成された外形からなり、2本の脚部22が基部23の一端部(具体的に一端面)から突出して形成されている。
【0038】
基部23は一組の脚部22と略同様の幅寸法から設定されている。また、水晶振動片2の外形のうち側面24は両主面25に対して傾斜して成形されている。これは、水晶振動片2を湿式でエッチング成形する際に基板21材料の結晶方向(X,Y方向)へのエッチングスピードが異なることに起因している。
【0039】
また、2つの脚部22の両主面25には、水晶振動片2の小型化により劣化する直列共振抵抗値(本実施例ではCI値、以下同様)を改善させるために、凹部26が形成されている。
【0040】
この水晶振動片2の表面(両主面25および側面24)には、異電位で構成された2つの励振電極27と、これらの励振電極27を電極パッド36に電気的に接続させるために励振電極27から引き出された引出電極28とが設けられている。なお、本実施例でいう引出電極28は、2つの励振電極27から引き出された電極パターンのことをいう。
【0041】
また、2つの励振電極27の一部は、凹部26の内部に形成されている。このため、水晶振動片2を小型化しても脚部22の振動損失が抑制され、CI値を低く抑えることができる。励振電極27は、脚部22の両主面25と凹部26に形成された主面電極と、脚部22の両側面24に形成された側面電極とにより構成され、これら主面電極と側面電極とが引き回されて図1に示すように接続されて、励振電極27は引出電極28に引き出されている。
【0042】
上記した水晶振動片2の励振電極27および引出電極28は、例えば、クロムの下地電極層と、金の上部電極層とから構成された積層薄膜である。これらの薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状に形成される。また、本実施例では励振電極27の膜厚は0.1μm程度に設定されている。
【0043】
上記した水晶振動片2の基部23では、図1,2に示すように、導電性バンプ6を介した引出電極28とベース3の電極パッド36との電気機械的な接合が行われる。具体的に、水晶振動片2の引出電極28と、ベース3の電極パッド36とが、導電性バンプ6を介して接合されて、これら引出電極28と電極パッド36とが電気機械的に接続される。なお、本実施例で用いる導電性バンプ6は、金などの金属材料からなる接続バンプを用いている。
【0044】
次に、ベース3に封止材5を介して蓋4を接合する水晶振動子1の封止工程(封止方法)について説明する。なお、本実施例の封止工程では、ベース3への蓋4の接合に、レーザビーム溶接方式を用いている(図3〜6参照)。
【0045】
まず、ベース3に水晶振動片2を導電性バンプ6を介してFCB法により電気機械的に超音波接合して、ベース3に水晶振動片2を配する(搭載する)。また、蓋4に封止材5を設ける。
【0046】
次に、封止材5を設けた蓋4を、トレイ(図示省略)上にマトリックス状に複数個配し、チャンバー(図示省略)内に配する。
【0047】
そして、このチャンバー内に水晶振動片2を搭載した複数個のベース3を、トレイ上にマトリックス状に配された複数の蓋4それぞれに個別対向させて配する。この際、蓋4の封止材5にベース3の接合部33が接した状態となる。
【0048】
蓋4とベース3とをチャンバー内に配した後に、チャンバー内に不活性ガス(例えば窒素ガス)を注入してチャンバー内を不活性ガスの雰囲気下にする。
【0049】
チャンバー内を不活性ガスの雰囲気下にした後に、レーザビーム溶接方式により、一接合領域13においてベース3と蓋4とを封止材5を用いて線状に接合する(ライン接合工程)。
【0050】
ライン接合工程後に、チャンバー内を真空雰囲気にする。なお、この際、ライン接合工程において発生し内部空間12に滞留している封止材5のガスの排気を行う。
【0051】
チャンバー内を真空雰囲気下にして内部空間12に滞留している封止材5のガスの排気を行なった後に、他接合領域14においてベース3と蓋4とを封止材5を用いて点状に接合する(ドット接合工程)。そして、ライン接合工程とドット接合工程とからなるベース3と蓋4との接合封止を終えて、内部空間12を気密封止する。
【0052】
ところで、上記したレーザビーム溶接方式によるベース3と蓋4との接合には、以下に示す2つの接合方法がある。
【0053】
1つめの接合方法について、図3,4を参照して、レーザビームを発する発光部(図示省略)をベース3の平面視外周に沿って設けられた接合部33上を反時計回りに走査しながら(図3の矢印方向参照)、一接合領域13に対応する接合部33の箇所を連続してレーザビーム溶接を行い(ライン接合工程)、その後に他接合領域14に対応する接合部33の箇所のみを間欠発振させてレーザビーム溶接を行う(ドット接合工程)。
【0054】
この1つめの接合方法では、図3,4に示すように、レーザビームを発する発光部(図示省略)は、ベース3の平面視外周に沿って設けられた接合部33上を反時計回りに2周走査し、1周目においてライン接合工程を行い、2周目においてドット接合工程を行う。
【0055】
2つめの接合方法は、図5,6を参照して、レーザビームを発する発光部(図示省略)をベース3の平面視外周に沿って設けられた接合部33上の長辺34と短辺35の各辺を走査しながら(図5の矢印方向参照)、接合部33の各辺毎の一接合領域13に対応する箇所ごとに連続してレーザビーム溶接を行い(ライン接合工程)、その後に他接合領域14に対応する接合部33の箇所のみを間欠発振させてレーザビーム溶接を行う(ドット接合工程)。
【0056】
この2つめの接合方法では、図5,6に示すように、レーザビームを発する発光部(図示省略)は、ベース3の平面視外周に沿って設けられた接合部33上の長辺34、短辺35、長辺34、短辺35の順に各辺ごとに走査し、この一連の走査を2周行い、1周目においてライン接合工程を行い、2周目においてドット接合工程を行う。また、各辺の走査移行時では、図5に示すような走査を行なって次の走査方向への方向転換をおこなってもよく、または、その位置(本体筐体11の平面視角部)で発光部が停止して次の走査方向への方向転換を行なってもよい。
【0057】
上記した本実施例にかかる水晶振動子1によれば、一接合領域13においてビーム溶接方式によってベース3と蓋4とが封止材5を介して線状に接合するライン接合され、ライン接合後に、他接合領域14においてビーム溶接方式によってベース3と蓋4とが点状に接合するドット接合される。また、本実施例にかかる水晶振動子1の封止方法によれば、ベース3への蓋4の接合にビーム溶接方式を用い、ライン接合工程とドット接合工程とを有し、ライン接合工程の後にドット接合工程を行う。このような構成や方法からなる本実施例によれば、内部空間12に封止材5のガスが残留するのを抑えることができる。
【0058】
具体的に、本実施例によれば、ライン接合工程によるライン接合とドット接合工程によるドット接合によりベース3と蓋4との接合を行っているので、ライン接合工程によるライン接合により蓋4とベース3との接合強度を良好なものとするとともに、ドット接合工程によるドット接合によって封止材5のガスの発生を抑えることができる。その結果、ベース3と蓋4との接合強度を高めた状態で内部空間12のガスの残留を抑えることができる。また、ライン接合工程によるライン接合後にドット接合工程によるドット接合が行われるので、ライン接合時に発生した内部空間12の封止材5のガスをドット接合前に排気することができ、ライン接合工程によるライン接合とドット接合工程によるドット接合との組合せにより、ライン接合だけによるベース3と蓋4との接合と比較して、内部空間12に封止材5のガスが残留することはなく、さらにドット接合だけによるベース3と蓋4との接合と比較して、蓋4とベース3との接合強度を高めることができる。特に真空封止する水晶振動子1において、封止材5によりベース3と蓋4とを接合する際に発生するガス(溶融ガス)をどのようにして抑えるかが水晶振動子1の特性向上のための重要なポイントとなり、本実施例によれば封止の信頼性を向上させることができる。
【0059】
また、封止材5を介したベース3と蓋4の接合には、ビーム溶接方式を用いるので、ライン接合工程によるライン接合とドット接合工程によるドット接合のいずれの接合工程による接合にも同一の封止方式を適用することができ、製造装置の簡略化を図ることができる。
【0060】
また、一接合領域13の領域に対して他接合領域14の領域は小さいので、ライン接合によって蓋4とベース3との接合強度を高めるとともに、ドット接合によって封止材5のガスの発生を抑えるのに好適である。
【0061】
また、他接合領域14におけるドット接合の点状の照射痕72の径は、100〜200μm(本実施例では150μm程度)であるので、当該水晶振動子1における封止領域(一接合領域13と他接合領域14)を縮小するのに有効であり、当該水晶振動子1の小型化を図ることができる。
【0062】
また、電子部品素子は水晶振動片2であるので、その特性は熱影響を受け易いが、本実施例では高温によるベース3と蓋4との接合を必要としないので、熱影響を受け難い。
【0063】
また、レーザビーム溶接方式を用いて、ライン接合では、不活性ガスによる雰囲気下においてベース3と蓋4との接合を行っているので、接合時に発生する溶融熱を逃がして本体筐体11(例えばベース3)のクラックを防ぐことができ、不活性ガスにより封止材5から発生するガス(溶融ガス)が水晶振動片2へ付着するのを抑制することができる。さらに、ドット接合工程では、真空雰囲気下においてベース3と蓋4との接合を行っているので、内部空間12のガスの排気および高真空化を好適に行うことができる。また、ライン接合工程は、不活性ガスによる雰囲気下において行うので、レーザビームの直行性を犠牲にすることはなく、レーザビームによる封止材5の溶融を安定して行うことができる。
【0064】
なお、本実施例では、電子部品として音叉型水晶振動子1を適用した場合を示すが、これに限定されるものではなく、ベースと蓋とが封止材を介して接合され、内部空間に配された(搭載された)電子部品素子が気密封止されている電子部品であれば他の形態であってもよい。例えば、本実施例とは異なる他の圧電振動デバイスである、ATカット水晶振動子を搭載した水晶振動子や、ATカット水晶振動片およびICチップを搭載した発振器などであってもよい。
【0065】
また、本実施例では、水晶振動片2の脚部22を2つとしているが、これに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0066】
また、本実施例では、導電性バンプ6を2つとしているが、これに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。さらに導電性バンプ6としてメッキ状のものを用いてもよく、また導電性バンプに限らず導電性樹脂接着剤やはんだなどの導電性接合材を用いてもよい。
【0067】
また、本実施例では、図1に示すような形状の水晶振動片2を採用しているが、これに限定されるものではなく、他の形状の水晶振動片2であってもよい。
【0068】
また、本実施例でいう水晶振動片2の凹部26は、図1に示すような断面凹形状としているが、これに限定されるものではなく、貫通部であってもよく、窪み部であってもよい。
【0069】
また、本実施例では、水晶振動片2の脚部22に凹部26を形成しているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、脚部22に凹部が形成されていない水晶振動片2にも本発明を適用することができる。
【0070】
また、本実施例では、ビーム溶接方式にレーザビーム溶接方式を用いているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、任意のビーム溶接方式(例えば、電子ビームによる溶接方式)を用いてもよい。
【0071】
また、本実施例では、レーザビーム溶接方式にファイバーレーザを用いているが、これは好適な例であり、YAGレーザなどの固体レーザであってもよい。また、連続発振出力のものに限定されるものではなく、パルス発振出力のものであってもよい。
【0072】
また、本実施例では、ライン接合工程を不活性ガスによる雰囲気下で行ない、ドット接合工程を真空雰囲気下で行っているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、ライン接合工程およびドット接合工程を真空雰囲気下で行ってもよい。
【0073】
また、本実施例では、水晶振動片2の励振電極27、及び引出電極28がクロム,金の順に形成されているが、例えば、クロム,金,クロムの順や、クロム,銀の順や,クロム,銀,クロムの順等であってもよい。また、上記した下地電極層をニッケルに変えてもよく、例えば、ニッケル,金,クロムの順、ニッケル,銀,クロムの順であってもよい。
【0074】
また、本実施例では、堤部32の上面全てに封止材5が設けられているが、これに限定されるものではなく、ベース3と蓋4とを接合できれば、堤部32の上面の一部が露出してもよい。
【0075】
また、本実施例では、堤部32の上面全面にメタライズ層が設けられているが、これに限定されるものではなく、堤部32の上面の所望領域のみにメタライズ層が設けられてもよい。
【0076】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、電子部品素子を気密封止する電子部品に適用でき、特に、電子部品素子に圧電振動素子を用いた圧電振動デバイスに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、本実施例にかかる水晶振動子の概略構成図であり、図2に示すA−A線概略断面図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる水晶振動子の内部空間の構成を公開した概略側面図である。
【図3】図3は、本実施例にかかる水晶振動子の概略平面図であり、本実施例にかかる1つめの封止方法を示した図である。
【図4】図4は、本実施例にかかる1つめの封止方法のタイミングチャートを示した図である。
【図5】図5は、本実施例にかかる水晶振動子の概略平面図であり、本実施例にかかる2つめの封止方法を示した図である。
【図6】図6は、本実施例にかかる2つめの封止方法のタイミングチャートを示した図である。
【符号の説明】
【0079】
1 音叉型水晶振動子
11 本体筐体
12 内部空間
13 一接合領域
14 他接合領域
2 音叉型水晶振動片
3 ベース
4 蓋
5 封止材
71,72 照射痕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと蓋とが封止材を介して接合されて本体筐体が構成され、この本体筐体の内部空間に電子部品素子が気密封止される電子部品において、
前記ベースと前記蓋との予め設定した接合領域のうち一接合領域において、ビーム溶接方式によって前記ベースと前記蓋とが封止材を介して線状に接合するライン接合され、前記ライン接合後に、前記ベースと前記蓋との予め設定した接合領域のうち他接合領域において、ビーム溶接方式によって前記ベースと前記蓋とが点状に接合するドット接合されたことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品において、
前記封止材を介した前記ベースと前記蓋の接合には、連続発振出力またはパルス発振出力によるビーム溶接方式が用いられたことを特徴とする電子部品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子部品において、
前記一接合領域の領域に対して、前記他接合領域の領域は小さいことを特徴とする電子部品。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の電子部品において、
前記他接合領域におけるドット接合の点状の照射痕の径は、100〜200μmであることを特徴とする電子部品。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の電子部品において、
前記電子部品素子は、圧電振動素子であることを特徴とする電子部品。
【請求項6】
電子部品素子を保持したベースに封止材を介して蓋を接合し、電子部品素子を気密封止する電子部品の封止方法において、
ベースへの蓋の接合に、ビーム溶接方式を用い、
前記封止材を用いて前記ベースと前記蓋とを線状に接合するライン接合工程と、
前記封止材を用いて前記ベースと前記蓋とを点状に接合するドット接合工程と、を有し、
前記ライン接合工程の後に前記ドット接合工程を行うことを特徴とする電子部品の封止方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電子部品の封止方法において、
ビーム溶接方式は、連続発振出力またはパルス発振出力によるレーザビーム溶接方式であり、
前記ライン接合工程は、不活性ガスによる雰囲気下において行い、
前記ドット接合工程は、真空雰囲気下において行うことを特徴とする電子部品の封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−99806(P2009−99806A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270580(P2007−270580)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】