説明

電子部品の実装方法、およびソルダーマスクの設計方法

【課題】下面に多数の端子を備えた電子部品をリフロー方式によって基板に実装する際、基板などの反りに起因する半田の接続不良や短絡を、信頼性を低下させたり、コストを増加させたりすることなく、確実に防止する。
【解決手段】多数の端子のそれぞれを対応するランドに対向配置させた状態で、各端子とランドとをリフロー方式によって半田付けする際、互いに対向する端子とランドとの間に供給する半田の量を、各端子とそれらに対応する各ランドのそれぞれの距離に応じて個別に増減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品の実装方法に関し、具体的には、下面に多数の端子を備えた電子部品を、多数のランドが形成された基板上にリフロー方式により実装するための方法に関する。また、当該実装方法において使用されるソルダーマスクの設計方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
周知のごとく、リフロー方式による実装方法では、電子部品の端子と接続するためにプリント基板上に形成された電極に半田を供給するとともに、電子部品を基板に載せた状態でその半田を加熱して溶かすことで、電子部品の端子と電極とを半田付けする。このリフロー方式によって、BGAやLGAなど、リードピンが無く下面に多数の端子を備えた電子部品を実装する場合、普通、プリント基板側に、電子部品の各端子に対応して点在する島状の電極(ランド)を形成し、印刷によって各ランドに半田を供給する。具体的には、図6(A)〜(E)に示したように、基板上20にランド12が形成されたプリント配線基板10上に半田の粉末に溶剤(フラックス)を加えたペースト(ソルダーペースト)21aを、そのランド12の形成箇所に対応して開口するソルダーマスク30を用いて印刷する(A)(B)。それによって、各ランド12上にソルダーペースト21aの層が形成される(C)。そして、対応するランド12と端子13とが対向するように電子部品40を基板上に載せ(D)、この状態で加熱すれば、ソルダーペースト21a中の半田粉が溶融し、冷却すると各端子13とランド12とが半田21によって接続された状態となる(E)。
【0003】
しかしながら、基板は、リフロー半田付けに際して加熱されるため、反りが発生する。また、大型のBGAやLGAなどでは、それ自体に反りが発生する可能性がある。そのため、下面に多数の端子を備えた電子部品を基板上に実装すると、上述したような反りにより、電子部品の端子と基板上のランド間との上下の距離にばらつきが生じる。
【0004】
例えば、図7(A)に示したように、端子13とランド12との距離Hが大きすぎると、半田21は、側面に括れ部22aがある円柱形状となり、その括れた部分22aでは断面積が小さくなるため信頼性が著しく低下してしまう。距離Hがさらに大きいと、図7(B)に示したように、括れた部分22aがさらに細くなり、この部分22aで断線する可能性もある。逆に、図7(C)に示したように、距離Hが短いと、半田21が上下につぶれて水平方向に押し広げられた部分22bを有する樽状となる。距離Hがさらに短いと、図7(D)に示したように、その樽状の半田21がさらに扁平となり、水平方向に押し広げられた部分22bが隣接するランド12と端子13間の半田21と接触し、短絡を起こしてしまう可能性がある。
【0005】
なお、以下の各特許文献1〜3には、リフロー方式によって電子部品を実装する際、基板の反りなどによって端子とランド間の距離が不均一となることに起因して発生する上記の問題を解決するための技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−085558号公報
【特許文献2】特開2002−164473号公報
【特許文献3】特開2008−071779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1と2に記載の発明は、ICのバンプの大きさや形状を基板の反りに合わせて形成する、というものである。しかしながら、ICは、常に同じ基板に実装されるわけではないので、自身が実装される基板に合わせてバンプの大きさや形状を調整する必要があり、製造コストが極めて高くなる。
【0008】
また、特許文献3の技術は、端子とランドとの距離が大きい場合には、そのランドの面積を大きくし、距離が小さい場合にはランドの面積を小さくしている。そして、各ランド上に一定量のソルダーペーストを印刷している。それによって、距離が大きい場合は、小さな面積に対して相対的にペーストの量が多くなり、端子とランドとを接続する半田の形状は、高く盛り上がった形状となる。距離が小さい場合は、相対的に半田の量が少なくなり、半田は、平たい形状となる。しかしながら、ICの一部の端子が、面積の小さなランドと半田で接続されることになり、その端子とランド間の接続強度が不足し、接触不良を起こす可能性がある。
【0009】
したがって本発明は、下面に多数の端子を備えた電子部品をリフロー方式によって基板に実装する際、基板などの反りに起因する半田の接続不良や短絡を、信頼性を低下させたり、コストを増加させたりすることなく、確実に防止することができる電子部品の実装方法を提供することにある。また、この実装方法において使用されるソルダーマスクの設計方法を提供することも本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、下面に多数の端子を備えた電子部品を、前記多数の端子のそれぞれに対応する多数のランドが形成されている基板上にリフロー方式により実装するための方法であって、
前記多数の端子のそれぞれを対応するランドに対向配置させた状態で、各端子とランドとをリフロー方式によって半田付けする際、
互いに対向する端子とランドとの間に供給する半田の量を、各端子とそれらに対応する各ランドのそれぞれの距離に応じて個別に増減する
ことを特徴としている。
【0011】
また、前記各ランドに対応する開口が形成されたソルダーマスクを用いてソルダーペーストを前記基板上に印刷することで、互いに対向する端子とランドとの間に半田を供給し、
前記ソルダーマスクにおけるある端子aに対応するランドbの開口を、当該端子aと当該ランドbとの距離に応じた面積となるように設定することで、当該端子aとランドbとの間に供給する半田を増減する電子部品の実装方法とすることもできる。
【0012】
あるいは、前記電子部品を第1の基板上に実装する仮実装ステップと、距離測定ステップと、半田供給量計算ステップと、前記第1の基板と同じ配置のランドが形成された第2の基板上に前記電子部品を実装する本実装ステップとを含み、
前記仮実装ステップは、互いに対向配置されている端子とランドとの間に所定量の半田を供給するとともに、当該半田により前記端子とランドとを半田付けし、
前記距離測定ステップは、当該仮実装ステップにより半田付けされた多数の端子とランドとの距離を実測値に基づいて個別に求め、
半田供給量計算ステップは、前記電子部品のある端子aと、当該端子aに対応するランドbとの間に供給すべき最適半田量を、前記距離測定ステップにより求めた前記端子aと前記ランドbとの距離に基づいて計算し、
前記本実装ステップは、前記半田供給量計算ステップによって計算した供給量の半田を、前記電子部品における端子aと前記第2の基板におけるランドbとの間に供給するとともに、リフロー方式により、当該端子aと当該ランドbとを半田付けする
電子部品の実装方法としてもよい。
【0013】
上記仮実装ステップを含む電子部品の実装方法において、前記半田供給量計算ステップは、前記仮実装ステップと前記距離測定ステップとにより、前記端子aとそれに対向する前記ランドbとが距離Hを介して半田付けされた場合、当該端子aあるいは当該ランドbの平面形状に内接する円が切断面となるように球の上下を水平に切り欠いた立体の体積V1を前記最適半田量として計算し、前記本実装ステップは、前記第2の基板におけるランドb上に、前記体積V1の半田を供給することとしてもよい。
【0014】
さらに、前記本実装ステップは、所定の厚さを有するソルダーマスクを用いて前記ランドb上にソルダーペーストを印刷することで前記最適半田量を供給するとともに、当該ソルダーマスクにおける当該ランドbに対応する開口の面積は、前記体積V1と、前記ソルダーペーストにおける半田の含有量と、前記ソルダーマスクの厚さMtとによって求められる半田の印刷体積に基づいて設定されていることを特徴とする電子部品の実装方法とすることもできる。
【0015】
当該実装方法において、前記電子部品の端子は、それぞれに半田で構成される突起を備え、前記ランドbに対応する前記ソルダーマスクの開口は、前記体積V1から当該電子部品におけるそれぞれの前記半田の突起を構成する半田の体積V0を減算した体積である電子部品の実装方法としてもよい。
【0016】
上記いずれかの実装方法において、前記距離測定ステップは、特定の複数のランドとそれらに半田付けされている端子との距離を実測するとともに、他のランドとそれらに半田付けされている端子との距離については、前記実測値に基づいて計算して求めることとしてもよい。
【0017】
さらに、前記ランドは、略矩形状の領域に形成され、前記距離測定ステップでは、当該矩形の中央と、四隅と各辺の中点の9箇所を実測点として、各実測点とそれらに半田付けされている端子との距離を実測するとともに、前記矩形の辺に平行となる3点の実測点に距離が同一の2次曲線上にあるものとして、各実測点間に含まれる他のランドとそれらに半田付けされている端子との距離を計算することとすれば、より短時間で各端子におけるランドとの距離を求めることができる。
【0018】
なお、本発明は、ソルダーマスクの設計方法にも及んでおり、当該設計方法に係る発明は、下面に多数の端子を備えた電子部品を、一律に同じ形状の多数のランドがそれぞれ前記多数の端子に個別に対向配置するように形成された基板上にリフロー方式により実装する際、ソルダーペーストを前記ランド上に印刷するために使用されるソルダーマスクの設計方法であって、
前記電子部品を第1の基板上に実装する仮実装ステップと、距離測定ステップと、半田供給量計算ステップと、前記ソルダーマスクにおける各ランドに対応する開口の面積を計算するための開口設定ステップとを含み、
前記仮実装ステップは、互いに対向配置されている端子とランドとの間に所定量の半田を供給するとともに、当該半田により前記端子とランドとを半田付けし、
前記距離測定ステップは、当該仮実装ステップにより半田付けされた多数の端子とランドとの距離を実測値に基づいて個別に求め、
前記半田供給量計算ステップは、前記仮実装ステップと前記距離測定ステップとにより、前記端子aとそれに対向する前記ランドbとが距離Hを介して半田付けされた場合、当該端子aあるいは当該ランドbの平面形状に内接する円が切断面となるように球の上下を水平に切り欠いた立体の体積V1を前記最適半田量として計算し、
前記ソルダーマスクにおける当該ランドbに対応する開口の面積を、前記体積V1と、前記ソルダーペーストにおける半田の含有量と、前記ソルダーマスクの厚さMtとによって求められる半田の印刷体積に基づいて設定する
ことを特徴としている。
【0019】
また、前記電子部品の端子は、それぞれに半田で構成される突起を備え、前記開口設定ステップは、前記ランドbに対応する前記ソルダーマスクの開口の面積として、前記体積V1から当該電子部品におけるそれぞれの前記半田の突起を構成する半田の体積V0を減算した体積を前記ソルダーマスクの厚さMtで除算した値を設定するソルダーマスクの設計方法とすることもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電子部品の実装方法によれば、下面に多数の端子を備えた電子部品をリフロー方式によって基板に実装する際、基板やIC自体の反りに起因する半田の接続不良や短絡を、信頼性を低下させたり、コストを増加させたりすることなく、確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の方法に基づいて電子部品が実装されるランドを備えた基板の一例を示す図である。
【図2】本発明の方法に基づいて、上記電子部品の端子と前記ランドとをリフロー方式で半田付けする手順の一例を示す図である。
【図3】上記半田の理想的な形状を示す図である。
【図4】上記基板における前記電子部品の実装領域を拡大した図である。
【図5】上記実装領域における端子とランド間の距離の分布を示す図である。
【図6】リフロー方式による従来の実装方法の一例を示す図である。
【図7】上記端子とランドとが従来の実装方法によってリフロー半田付けされたときの半田形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
===本発明における基本的な技術思想===
上述したように、ICのバンプの大きさや形状などを基板やIC自体の反り、すなわち電子部品の端子毎のランドとの距離に合わせて個別に調整すると製造コストが増加する。また、ランドの大きさを距離に応じて調整すると、小さなランドでは接続強度が不足する。そこで本発明者が従来のリフロー方式による実装方法について考察したところ、各端子とランドとの間隙に供給されるソルダーペーストの量に着目した。そして、その供給量を電子部品の端子とランド間の距離に応じて可変調整すれば、ランドの大きさを変えることなく、端子とランドとを確実に接続できると考えた。本発明における基本的な技術思想は、このような考えに基づいている。
【0023】
ここで、本発明の適用例として、LGA(Land Grid Array)タイプやBGA(Ball Grid Array)タイプのICを電子部品とし、その電子部品を基板上に実装する例を挙げる。図1は、電子部品が実装される基板10の一例であり、基板の平面図を示している。この基板10には、多数のランド12が縦横に形成された領域11があり、以下に、本発明の一実施形態として、上記電子部品をこの基板10に実装する形態を挙げ、本発明の詳細を説明する。
【0024】
===実施形態===
本発明における基本的な技術思想は、電子部品の端子とランドとの距離に応じて半田の供給量を各端子(ランド)ごとに個別に調整することにある。図2に、当該基本思想に基づく電子部品の実装方法の代表的な手順を示した。まず、端子とランドとの距離を測定する(s1)。次に、互いに半田付けされる端子とランドとの間に供給する半田の量を測定した距離に応じて決定する(s2)。そして、電子部品を基板上に配置し、その決定した量の半田を各端子とランドとの間に個別に供給する(s3,s4)。最後に、リフロー方式によって電子部品の端子とランドとを半田付けする(s5)。
【0025】
なお、距離の測定に際しては、基板上に電子部品を実際に実装する前に、双方の反りを計測すれば、その計測値から、相対的な距離の大小がわかる。しかし、電子部品を実際に実装した状態で各端子とランドとの距離を実測すれば、半田付けされた状態での距離を測定することになり、最適な半田の供給量を求めるための根拠を得ることができる。
【0026】
また、半田の供給方法については、ソルダーペーストをランド上に印刷するのが一般的であり、各ランドのそれぞれに印刷されるソルダーペーストの面積を可変調整することで半田の供給量を増減させることが可能とある。すなわち、ソルダーマスクは、ランドの形成位置に対応する開口を有しており、その開口面積を前記距離に応じて変えることで、半田の供給量をランド毎に調整することが可能となる。
【0027】
なお、この調整に際しては、例えば、距離H、開口面積Mとした場合に、H/M=c(cは一定)となるようにマスクを設計するなどして、距離が大きいほど半田の量を多くし、距離が小さいほど半田の量を少なくさせればよい。しかし、半田付けの信頼性をより向上させるためには、その供給量に根拠をもたせる必要がある。すなわち、理想的な半田供給量を規定する必要がある。次に、この理想的な半田の供給量の規定方法について説明する。
【0028】
===理想的な半田の形状===
図7に示したように、端子13とランド12との距離Hにかかわらず、半田21の供給量を一律にした場合、端子13とランド12とが接続されているときの半田21の形状が距離Hに応じて変化する。これは、平面上に溶解した半田が冷却すると、表面張力によって球状となるが、電子部品40を基板20上に実装する場合は、端子13とランド12との間隙に半田21が供給されるため、この間隙の距離Hが広ければ、その球が距離方向に引き延ばされて中心が括れた円筒状となり、狭ければ逆に球が押しつぶされた扁平な樽状となる、いうことで説明がつく。したがって、図3に示したように、それぞれ球3の上方と下方を水平に切断したような形(切断球:図中網点部分)が理想的な半田であると言える。ここで、上方を端子13、下方をランド12とすると、この切断球1の切断面2は、電子部品の端子13やランド12の表面である。端子13やランド12が円形であれば、一方がその断面形状となる。なお、端子13やランド12の平面形状が矩形であれば、その矩形に内接する円が切断球1の断面2となることが予想される。そして、端子13とランド12との距離Hに応じたこの切断球1の体積V1が適切な半田供給量となる。
【0029】
なお、半田は、ソルダーペーストなど、フラックス中に分散された状態で供給されることが多い。したがって、上記接続後の半田が上記切断球1の体積V1となるようにソルダーペーストを供給する際には、ソルダーペーストにおける半田粉の体積比から各ランド12に供給するソルダーペーストの体積を求めればよい。また、半田の供給量を重量で規定する場合には、半田の密度と上記切断球1の体積V1とから重量を求めればよい。
【0030】
===半田供給量の計算===
上述したように、半田付け後の半田の形状には、最適な形状がある。そして、最適形状が規定できたならば、その最適形状となるための半田供給量を計算し、実際にその量の半田を供給する必要がある。ここで、図3に基づいて、半田の最適供給量である体積Vを求める。なお、当該計算に当たっては、端子13とランド12は、当該切断球1の断面2に一致する形状であるものとし、その半径は固定値Aであるものとする。
【0031】
まず、電子部品におけるある端子13とこの端子13に対向配置されるランド12との距離をHとし、当該端子13、あるいはランド12が半径Rの球3を切断したとき、すなわち、半径Rの球3における上下の切断面2の半径がAであるとき、その球の半径Rは、
R={A+(H/2)1/2
となる。
【0032】
そして、球の中心を原点oとし、端子13とランド12との距離方向をz方向とするとともに、原点oからのz方向の距離(高さ)をhとすると、球3を高さhで水平に切り欠いたときの断面(円)4の半径rは、高さhの関数として表すことができ、当該水平断面4の半径rを表す関数をr(h)とすると、
r(h)=(R−h1/2
となる。また、切断球1の上半分の体積(V/2)は、高さhにおける水平断面4の面積を原点o(h=0)から端子による切断面2(h=H/2)まで積分した値である。すなわち、高さhにおける水平断面4の面積S(h)が
S(h)=πr(h)
であり、h=0→H/2として、切断球1の体積Vは、
=2∫π{r(h)}dh
となる。したがって、最終的に、下記の式
=2{πRH/2−π(H/2)/3}
が導き出される。そして、先に距離Hと切断面2の半径Aとから求めた球3の半径Rを上記式に代入すれば、半田の最適供給量である体積Vを求めることができる。
【0033】
===ソルダーマスクの開口面積について===
上記の最適な量の半田は、例えば、ディスペンサを用いて各ランド毎に個別に供給することができる。しかし、一般的には、ソルダーマスクを用いて印刷することで供給する。また、印刷の方が製造コストを抑えることができる。本発明では、印刷に用いるソルダーマスクの設計方法にも及んでおり、当該方法によれば、個々のランドに対応する開口の面積を個別に設定することで、各ランドに最適な量の半田が供給されるようになっている。それによって、個々のランドごとに最適な量の半田を低コストで確実に供給することができ、結果的に、信頼性の高い実装部品を安価に提供することが可能となる。なお、本発明のソルダーマスクの設計方法において、「開口面積」は、絶対値、すなわち面積の値自体であってもよいし、ランドに対する相対面積、すなわち開口率であってもよい。以下に、当該設計方法の一例として、上記で求めた理想的な量の半田を印刷により供給する例を挙げる。
【0034】
印刷によって供給される半田の体積は、ソルダーマスクの厚さ、開口面積、およびソルダーペーストに含まれる半田の体積によって求めることができる。LGAを実装する場合では、この印刷によって供給される半田の体積を上記切断球の体積V1に一致されればよい。また、BGAを実装する場合では、各端子に半田バンプが形成されているため、このバンプの体積Vを切断球の体積Vから差し引いた体積V(=V−V)が印刷によって供給される半田量となる。
【0035】
そして、この半田量Vを供給するための、ソルダーマスクにおける開口直径Ma、および開口率Mbは、ソルダーマスクの厚さMt、半田バンプの体積V、ソルダーペースト中の半田の含有率Ps(vol%)、ランドの半径Aの各固定値と、先に求めた切断球1の体積Vから半田バンプの体積Vを差し引いたVから求めることができ、当該MaとMbは、
Ma=2(V/πMtPs)1/2
Mb=(Ma/2)/A
となる。
【0036】
===実施例===
本発明の実施例として、BGAを基板に実装したときの端子とランド間の距離を測定し、その測定値に基づいて半田の供給量を計算するとともに、その供給量に基づいてソルダーマスクの面積や開口率を計算した。なお、上記計算に際して用いた固定値(V,A,Mt,Ps)を以下の表1に示した。
【表1】

【0037】
===距離測定方法について==
半田の供給量を端子とランドとの距離に応じて調整するためには、まず、その距離を測定する必要がある。この距離は、上述したように実際に従来の方法で電子部品を基板に実装し、その実装状態における距離を測定した。しかしながら、極めて多数の端子を備えたICでは、全ての端子についてランドとの距離を測定することは多大な時間と労力を要する。そこで、多数の端子の内、代表的な複数の端子について、ランドとの距離を実際に測定し、他の端子とランドとの距離をこの実測値に基づいて計算して求めてもよい。本実施例においても、実測値(以下、Hr)と計算値(Hc)とによって各端子13とランド12との距離を求めた。
【0038】
図4は、先に図1に示した基板10における電子部品実装領域11のランド12の配置を拡大して示したものである。当該ランド形成領域11における各ランド12の位置を行列nm(n=1〜19,m=A〜S)で示すと、ランド形成領域11の四隅(1A,19A,1S,19S)と中央10J、および矩形の各辺の中点(10A,10S,1J,19J)に対応する計9箇所のランド12を実測点(図中黒丸)とし、それらの対応する端子13との距離(以下、垂直距離Hr)を実際に測定する。なお、隣接する各ランド12間のピッチは500μmであり、四隅のランド12の中心間の間隔は9mmである。
【0039】
表2に各実測点における垂直距離H(μm)を示した。
【表2】

【0040】
基板10や電子部品の反りは、表裏面の熱膨張係数の違いが主な原因であることから、普通、表裏の一方の面が盛り上がる山型となる。すなわち、垂直距離の分布は、一方を基準とすると相対的に山型か谷型となる。事実、表2より、基板10における電子部品の実装領域11では中央が電子部品側(上側)に盛り上がった山型であることが分かる。そして、一つの頂点を有する曲線は、ほぼ二次曲線に一致すると見なせる。そこで、各実測点の内、ランド12が形成されている矩形領域11の各辺に平行となる行方向、および列方向に並んだ3つの実測点が二次曲線上にあるものとして端子13とランド12との垂直距離を計算した。表3に各実測点間を連絡する2次曲線の回帰係数、切片を示した。
【表3】

【0041】
当該表3では、網点の部分が各実測点における垂直距離Hr(μm)であり、行方向の実測点、および列方向の実測点を連絡する曲線を二次曲線とみなし、水平距離X(mm)と実測点における垂直距離Hrとから回帰係数とy切片を求めている。
【0042】
つぎに、各実測点の間にある他のランド12における垂直距離Hcを計算により求める。ここでは、列方向に並ぶ3つの実測点の組、(1A−1J−1S)、(10A−10J−10S)、(19A−19J−19S)のそれぞれに含まれる他のランドでの垂直距離Hcを先に求めた列方向の回帰係数とy切片とに基づいて求める。
【0043】
表4に、上記3列分の垂直距離H(Hr,Hc)、および行方向における回帰係数とy切片を示した。
【表4】

【0044】
最後に、表4の結果に基づいて行方向における実測点以外の垂直距離Hcを求める。
【0045】
表5に全ランドにおける垂直距離H(Hr,Hc)を示した。
【表5】

【0046】
また、図5に表5の結果を3次元グラフにして示した。
【0047】
===半田供給量、ソルダーマスクの開口面積の計算===
本発明は、ソルダーマスクの設計方法にも及んでいる。ここで、当該設計方法に係る発明の実施例として、先に求めた各ランド12における垂直距離Hと上記各数式とに基づいて、理想的な半田量を含んだソルダーペーストを印刷するためのソルダーマスクを設計する事例を挙げる。
【0048】
当該方法によって最終的に求められる設計事項は、各ランド12に対応する開口の面積あるいは開口率Mbであり、この例では、開口の形状を円として、その直径Maを求めている。そして、それらを求めるために、まず、各ランド12に対応する半田の体積V(μm)を計算する。
【0049】
表6にその体積Vの計算結果を示した。
【表6】

【0050】
なお、電子部品には、端子に半田による突起を備えたものがあり、BGAでは、端子に半田によるボール(半田バンプ)が形成されている。そこで、次に、半田パンプなど、端子に半田による突起を備えた電子部品を実装することを考慮して供給すべき半田の量を計算する。ここでは、BGAのバンプの半田体積をVとして、その半田体積をVを加味して各ランド12に印刷によって供給すべき半田量を計算し、その半田量に基づいて印刷面積(ここでは、印刷直径)、すなわちソルダーマスクの開口面積(ここでは、開口直径Ma)を決定する。なお、開口面積(開口直径Ma)は、絶対値、すなわち面積(開口直径Ma)の値自体であってもよいし、ランドに対する相対面積、すなわち開口率であってもよい。
【0051】
表7に、ソルダーマスクにおける各ランドに対応する開口直径(絶対値:μm)Maを示した。
【表7】

【0052】
表8に、ランド12の面積と、各ランド12に対応するソルダーマスクの開口の面積との相対値(開口率)Mbを示した。
【表8】

【0053】
表7、8より、各ランドに対応するソルダーマスクの各開口面積が異なっており、印刷されるソルダーペーストの量が各ランドに最適となるように調整される。例えば、同じ基板と電子部品を用いて実装基板を大量生産するような場合、最初に従来の方法で実装基板を作製し、その基板における各ランドと端子との距離を測定すればよく、以後は、上記の手順で開口面積や開口率を計算し、その計算値に従ってソルダーマスクを設計すればよい。そして、その設計に基づいて作製したソルダーマスクを用いて基板上に電子部品をリフロー方式によって実装すれば、各ランドと端子との間に、最適な量の半田を製造コストが安い印刷によって供給することが可能となる。したがって、信頼性の高い実装基板を安価に提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 理想的な半田形状
2 ランド面または端子面
10 プリント配線基板
11 電子部品実装領域
12 ランド
13 端子
20 基板
21 半田
21a ソルダーペースト
30 ソルダーマスク
40 電子部品
H 端子とランドとの距離
理想的な形状の半田の体積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に多数の端子を備えた電子部品を、前記多数の端子のそれぞれに対応する多数のランドが形成されている基板上にリフロー方式により実装するための方法であって、
前記多数の端子のそれぞれを対応するランドに対向配置させた状態で、各端子とランドとをリフロー方式によって半田付けする際、
互いに対向する端子とランドとの間に供給する半田の量を、各端子とそれらに対応する各ランドのそれぞれの距離に応じて個別に増減する
ことを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項2】
請求項1において、前記各ランドに対応する開口が形成されたソルダーマスクを用いてソルダーペーストを前記基板上に印刷することで、互いに対向する端子とランドとの間に半田を供給し、
前記ソルダーマスクにおけるある端子aに対応するランドbの開口を、当該端子aと当該ランドbとの距離に応じた面積となるように設定することで、当該端子aとランドbとの間に供給する半田を増減する
ことを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記電子部品を第1の基板上に実装する仮実装ステップと、距離測定ステップと、半田供給量計算ステップと、前記第1の基板と同じ配置のランドが形成された第2の基板上に前記電子部品を実装する本実装ステップとを含み、
前記仮実装ステップは、互いに対向配置されている端子とランドとの間に所定量の半田を供給するとともに、当該半田により前記端子とランドとを半田付けし、
前記距離測定ステップは、当該仮実装ステップにより半田付けされた多数の端子とランドとの距離を実測値に基づいて個別に求め、
半田供給量計算ステップは、前記電子部品のある端子aと、当該端子aに対応するランドbとの間に供給すべき最適半田量を、前記距離測定ステップにより求めた前記端子aと前記ランドbとの距離に基づいて計算し、
前記本実装ステップは、前記半田供給量計算ステップによって計算した供給量の半田を、前記電子部品における端子aと前記第2の基板におけるランドbとの間に供給するとともに、リフロー方式により、当該端子aと当該ランドbとを半田付けする
ことを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記半田供給量計算ステップは、前記仮実装ステップと前記距離測定ステップとにより、前記端子aとそれに対向する前記ランドbとが距離Hを介して半田付けされた場合、当該端子aあるいは当該ランドbの平面形状に内接する円が切断面となるように球の上下を水平に切り欠いた立体の体積V1を前記最適半田量として計算し、
前記本実装ステップは、前記第2の基板におけるランドb上に、前記体積V1の半田を供給する
ことを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項5】
請求項4において、前記本実装ステップは、所定の厚さを有するソルダーマスクを用いて前記ランドb上にソルダーペーストを印刷することで前記最適半田量を供給するとともに、当該ソルダーマスクにおける当該ランドbに対応する開口の面積は、前記体積V1と、前記ソルダーペーストにおける半田の含有量と、前記ソルダーマスクの厚さMtとによって求められる半田の印刷体積に基づいて設定されていることを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項6】
請求項5において、前記電子部品の端子は、それぞれに半田で構成される突起を備え、前記ランドbに対応する前記ソルダーマスクの開口は、前記体積V1から当該電子部品におけるそれぞれおの前記半田の突起を構成する半田の体積V0を減算した体積であることを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかにおいて、前記距離測定ステップは、特定の複数のランドとそれらに半田付けされている端子との距離を実測するとともに、他のランドとそれらに半田付けされている端子との距離については、前記実測値に基づいて計算して求めることを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項8】
請求項7において、前記ランドは、略矩形状の領域に形成され、前記距離測定ステップでは、当該矩形の中央と、四隅と 各辺の中点の9箇所を実測点として、各実測点とそれらに半田付けされている端子との距離を実測するとともに、前記矩形の辺に平行となる3点の実測点に距離が同一の2次曲線上にあるものとして、各実測点間に含まれる他のランドとそれらに半田付けされている端子との距離を計算することを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項9】
下面に多数の端子を備えた電子部品を、一律に同じ形状の多数のランドがそれぞれ前記多数の端子に個別に対向配置するように形成された基板上にリフロー方式により実装する際、ソルダーペーストを前記ランド上に印刷するために使用されるソルダーマスクの設計方法であって、
前記電子部品を第1の基板上に実装する仮実装ステップと、距離測定ステップと、半田供給量計算ステップと、前記ソルダーマスクにおける各ランドに対応する開口の面積を計算するための開口設定ステップとを含み、
前記仮実装ステップは、互いに対向配置されている端子とランドとの間に所定量の半田を供給するとともに、当該半田により前記端子とランドとを半田付けし、
前記距離測定ステップは、当該仮実装ステップにより半田付けされた多数の端子とランドとの距離を実測値に基づいて個別に求め、
前記半田供給量計算ステップは、前記仮実装ステップと前記距離測定ステップとにより、前記端子aとそれに対向する前記ランドbとが距離Hを介して半田付けされた場合、当該端子aあるいは当該ランドbの平面形状に内接する円が切断面となるように球の上下を水平に切り欠いた立体の体積V1を前記最適半田量として計算し、
前記ソルダーマスクにおける当該ランドbに対応する開口の面積を、前記体積V1と、前記ソルダーペーストにおける半田の含有量と、前記ソルダーマスクの厚さMtとによって求められる半田の印刷体積に基づいて設定する
ことを特徴とするソルダーマスクの設計方法。
【請求項10】
請求項9において、前記電子部品の端子は、それぞれに半田で構成される突起を備え、前記開口設定ステップは、前記ランドbに対応する前記ソルダーマスクの開口の面積として、前記体積V1から当該電子部品におけるそれぞれの前記半田の突起を構成する半田の体積V0を減算した体積を前記ソルダーマスクの厚さMtで除算した値を設定することを特徴とするソルダーマスクの設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−283080(P2010−283080A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134302(P2009−134302)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(508128244)FDKモジュールシステムテクノロジー株式会社 (8)
【Fターム(参考)】