説明

電子部品の実装装置及び実装方法

【課題】シートの送り長さを精度よく制御することができるようにした実装装置を提供することにある。
【解決手段】上面に基板8が載置されるステージ10と、ステージに載置された基板の電子部品が実装される側辺部の下面を支持するバックアップツール3と、基板のバックアップツールによって支持された部分の上面にTCP7を加圧して実装する加圧ツール4と、供給リール22から繰り出されて基板と加圧ツールとの間を通されて巻き取りリール33に巻き取られるシート21と、下部ローラ27及び下部ローラに転接する上部ローラ28を有し、実装ツールの前側と後側に配置されシートの実装ツールの前側と後側に位置する部分を挟持するとともに下部ローラが回転駆動されてシートの実装ツールに対応する部分を下部ローラの回転方向に応じて送る一対のシート送り機構26A,26Bを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板側辺部の上面に電子部品を加圧ツールによってシートを介して加圧しながら加熱して実装する電子部品の実装装置及び実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、基板としての液晶セルには接着材料としての熱硬化性の異方性導電部材からなる粘着テープを介して電子部品であるTCP(Tape Carrier Package)が圧着される。上記液晶セルは、シール剤を介して2枚のガラス板を所定の間隔で接着し、これらガラス板間に液晶を封入するとともに、各ガラス板の外面にそれぞれ偏光板を貼着して構成される。そして、上記構成の液晶セルには、その側部上面に両面粘着性の上記粘着テープを介して複数の上記TCPが所定間隔で仮圧着されてから、本圧着されるようになっている。
【0003】
基板にTCPを仮圧着したり、本圧着する場合には実装装置が用いられる。実装装置は装置本体を有し、この装置本体にはバックアップツール及びこのバックアップツールの上方に上下方向に駆動される加圧ツールが設けられている。
【0004】
そして、粘着テープによって上面に上記TCPが仮圧着された基板の側部下面を、バックアップツールの上端面で支持した後、上記加圧ツールを下降させることで、上記TCPを上記基板に本圧着、つまり実装するようにしている。
【0005】
基板にTCPを実装する場合、上記加圧ツールによって上記粘着テープを加熱して溶融硬化させるようにしている。そのため、TCPが加圧ツールによって加圧加熱されることで溶融した粘着テープの一部が上記TCPからはみ出し、加圧ツールの加圧面に付着するということがある。
【0006】
加圧ツールに粘着テープが付着すると、加圧ツールによってTCPを均一に加圧することができなくなる加圧不良を招いたり、加圧ツールに付着していた粘着テープの溶融物がTCPに転移して汚れの原因になるなどのことがあり、好ましくない。
【0007】
そこで、TCPを本圧着する場合、TCPと加圧ツールとの間にシリコーン樹脂製やフッ素樹脂製などの耐熱性を有するシートを介在させ、TCPを加圧加熱した際、溶融した粘着テープが加圧ツールに付着するのを防止するようにしている。
【0008】
実装時にTCPと加圧ツールとの間に上記シートを介在させる手段としては、装置本体にカセットを装着し、このカセットに設けられたシートを介して上記加圧ツールによってTCPを基板に加熱しながら加圧する、つまり実装するということが行なわれている。
【0009】
上記カセットは上記シートが巻装された供給リールと、この供給リールから繰り出されたシートを巻き取る巻き取りリールを有し、上記TCPを基板に実装したならば、上記シートを上記巻き取りリールによって所定長さ巻き取ってシートの汚れが付着していない新しい部分を上記バックアップツールと上記加圧ツールとの間に位置させる。
【0010】
それによって、溶融した粘着テープが加圧ツールの加圧面に付着するのを防止すると同時に、粘着テープに付着した汚れがつぎの基板やその基板に実装されるTCPに付着するのを防止したり、粘着テープに付着した汚れによってつぎのTCPが加圧ツールによって均一に加圧できなくなるのを防止するようにしている。
【0011】
上記シートを上記巻き取りリールによって所定長さ巻き取る際、その巻き取り長さを検出し、上記シートが余分に巻き取られて無駄が生じたり、巻き取り長さが不十分であるために加圧ツールや基板の汚れを確実に防止することができなくなるなどのことが生じないようにしなければならない。
【0012】
そこで、従来は装置本体にカセットを装着したならば、供給リールに巻装されたシートの外面に回転体を接触させ、この回転体を供給リールから繰り出されるシートによって回転させることで、この回転体の回転角度でシートの供給長さを制御するということが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−73897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、供給リールから繰り出されるシートによって回転体を回転させ、この回転体の回転角度でシートの供給長さを制御するようにすると、上記シートが供給リールと巻き取りリールとの間の経路で伸縮することがあり、とくにシートには伸びが生じるということが多いため、供給リールから繰り出されたシートの長さと、巻き取りリールに巻き取られるシートの長さが同じにならないということがある。
【0015】
その結果、上記加圧ツールに対応する部分では、上記シートの送り長さが長くなったり、短くなるなどして一定しないため、上記シートの送り長さが長すぎる場合にはシートを余分に使用してしまうことになり、短い場合にはシートに付着した汚れが基板に再付着したり、次のTCPの加圧時に加圧ツールとTCPとの間にシートに付着した溶融物が介在し、TCPを均一かつ確実に加圧できないなどのことが生じるということがある。
【0016】
また、加圧ツールによって基板にTCPを実装する際、従来は基板に対してカセットを下降させることで、上記供給リールと巻き取りリールとの間に位置する上記シートの、上記加圧ツールに対向する部分を基板上のTCPに接触或いは接近させるようにする。それによって、TCPを加圧するとき、加圧ツールによってシートが破断されたり、シートが加圧ツールの加圧力で繰り出されたりするのを防止するようにしていた。
【0017】
しかしながら、電子部品の実装時にカセットを下降させるようにすると、そのための機構が複雑化することになるということがあった。
【0018】
この発明は、実装ツールの近くでシートの送り長さを制御できるようにすることで、上記シートを精度よく確実に送ることができ、しかも電子部品の実装時に加圧ツールの下降に応じてシートを容易に弛ませることができるようにした電子部品の実装装置及び実装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明は、基板に電子部品を実装する実装装置であって、
装置本体と、
この装置本体に設けられ上面に上記基板が載置されるステージと、
このステージに載置された上記基板の上記電子部品が実装される側辺部の下面を支持するバックアップツールと、
上記ステージの上方に上下方向に駆動可能に設けられ上記基板の上記バックアップツールによって側辺部の下面が支持された部分の上面に上記電子部品を加圧して実装する加圧ツールと、
供給リールから繰り出され上記基板と上記圧着ツールとの間を通されて巻き取りリールに巻き取られるようになっていて、上記基板に上記電子部品を加圧して実装するときに上記加圧ツールが汚れるのを防止するシートと、
下部ローラ及びこの下部ローラに転接する上部ローラを有し、上記実装ツールの上記基板の上記電子部品が実装される側辺部の長手方向と交差する前後方向の一端側と他端側にそれぞれ軸線を上記基板の側辺部の長手方向に沿わせて配置され上記シートの上記実装ツールの上記前後方向の一端側と他端側に位置する部分を挟持するとともに、少なくともどちらか一方の下部ローラが回転駆動されるようになっていて、その下部ローラが回転駆動されることで上記シートの上記実装ツールに対応する部分を上記下部ローラの回転方向に応じて送る一対のシート送り機構と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装装置にある。
【0020】
上記バックアップツールと加圧ツールとで実装機構を構成し、長手方向に並設された複数の実装機構を有し、
各実装機構には電子部品が実装される基板がそれぞれ上記ステージによって位置決めされるようになっていて、各実装機構には上記シートの上記実装ツールに対応する部分を送る上記シート送り機構が設けられていて、
隣り合う実装機構に設けられたそれぞれのシート送り機構の下部ローラを回転駆動するための駆動機構は、並設された複数のシート送り機構の並設方向の一端側に設けられていることが好ましい。
【0021】
上記バックアップツールと加圧ツールとで実装機構を構成し、長手方向に並設された複数の実装機構を有し、
各実装機構には電子部品が実装される基板がそれぞれ上記ステージによって位置決めされるようになっていて、各実装機構には上記シートを送る上記シート送り機構が設けられていて、
2つで対をなす2組の実装機構が横方向に並設されていて、各組の実装機構に設けられたそれぞれのシート送り機構の下部ローラを回転駆動するための駆動機構は、各組のシート送り機構の並設方向の一端側と他端側に設けられていることが好ましい。
【0022】
上記加圧ツールが下降して上記シートを介して上記電子部品を基板に圧着して実装するとき、上記一対のシート走行手段の少なくとも一方は、上記シートの上記加圧ツールに対応する部分を弛ませる方向に駆動されることが好ましい。
【0023】
上記シート送り機構の上記下部ローラに転接する上部ローラは、上記下部ローラに対して接離する方向に駆動可能に設けられていることが好ましい。
【0024】
上記供給リールと上記巻き取りリールは、上記装置本体の背面側に配置されることが好ましい。
【0025】
この発明は、基板に電子部品を実装する実装方法であって、
ステージに載置された上記基板の上記電子部品が実装される側辺部の下面をバックアップツールに支持させる工程と、
上記ステージの上方に上下方向に駆動可能に設けられた加圧ツールを下降させて上記基板の上記バックアップツールによって側辺部の下面が支持された部分の上面に上記電子部品を加圧して実装する工程と、
上記圧着ツールとの間を通されたシートを供給リールから繰り出して巻き取りリールに巻き取る工程と、
上記実装ツールの上記基板の上記電子部品が実装される側辺部の長手方向と交差する前後方向の一端側と他端側にそれぞれ軸線を上記基板の側辺部の長手方向に沿わせて配置された下部ローラ及びこの下部ローラに転接する上部ローラとで上記シートの上記実装ツールの上記前後方向の一端側と他端側に位置する部分を挟持し、少なくともどちらか一方の下部ローラが回転駆動されることで上記供給リールから繰り出されて上記巻き取りリールに巻き取られる上記シートの送り長さを設定する工程と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装方法にある。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、基板の電子部品が実装される側辺部の長手方向と交差する実装ツールの前後方向の一端側と他端側にそれぞれシートを送るための一対のシート送り機構を設けるようにした。
【0027】
それによって、上記シート送り機構を上記実装ツールの近くに配置することが可能となるから、シート送り機構の駆動に応じて上記シートの送り長さを上記実装ツールに対して精度よく設定することができる。
【0028】
しかも、シート送り機構によるシートの送り方向を変えることで、上記シートの上記実装ツールに対応する部分を弛ませることができるから、シート送り機構を電子部品の実装時に従来のカセットのように下方へ駆動させるということをせずにすむ。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施の形態を示す実装装置の側面図。
【図2】図1に示す実装装置の正面図。
【図3】送り機構の下部ローラの配置状態を示す平面図。
【図4】送り機構の上部ローラの支持状態を示す一部断面した正面図。
【図5】実装装置の駆動を制御する制御系統を示す図。
【図6】(a)はシートが弛まされる前の状態を示す図、(b)はシートが第1の送り機構によって弛まされた状態を示す図。
【図7】この発明の第2の実施の形態を示す送り機構の下部ローラの配置状態の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1乃至図6はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1は実装装置の概略的構成を示している。この実装装置は側面形状がコ字状の装置本体1を備えている。図2に示すように、この装置本体1の前面には複数、この実施の形態では2つ、つまり第1の実装機構2Aと第2の実装機構2Bが設けられている。この各実装機構2A,2Bは、上記装置本体1の前面下部に設けられたバックアップツール3と、このバックアップツール3の上方に設けられた加圧ツール4によって構成されている。
【0032】
上記加圧ツール4は、上記装置本体1の前面に上下方向に沿って設けられた各一対のガイド6によって上下方向に移動可能に支持されているとともに、上記装置本体1の上部に設けられた、たとえばリニアモータなどの加圧用駆動源5によって上記装置本体1の前面の上下方向、つまり図1に矢印で示すZ方向に沿って駆動されるようになっている。
【0033】
図1に示すように、上記装置本体1の前面側には、各実装機構2A,2Bに対して電子部品としてのTCP7が仮圧着された基板8を供給するステージ10(1つのみ図示)が配置されている。つまり、このステージ10の上面には上記TCP7が仮圧着された上記基板8が保持されている。この基板8は、上記装置本体1の前面側に対向する上記TCP7が仮圧着された側辺部を、上記ステージ10の上面から外方に突出させている。
【0034】
なお、上記TCP7は上記基板8の側辺部の上面に、熱硬化性の粘着性を有する樹脂によって形成された粘着テープ(図示せず)によって貼着、つまり仮圧着されている。
上記ステージ10はθ・Zテーブル11を介してYテーブル12上に設けられている。θ・Zテーブル11には上記ステージ10を回転方向及び上下方向に駆動するθ・Z駆動源13が設けられている。
【0035】
上記ステージ10は上記Yテーブル12に設けられたY駆動源14によって図1の紙面に直交するY方向に沿って駆動可能に設けられている。上記Yテーブル12はXテーブル15上にX駆動源16によってX方向に駆動可能に設けられている。したがって、上記ステージ10はθ、Z、X及びY方向に駆動位置決め可能な構成となっている。なお、X方向は図1に矢印で示す。
【0036】
それによって、上記ステージ10は、上面に保持された基板8のTCP7が仮圧着された側辺部の下面が上記バックアップツール3の上端面に支持されるよう、上記基板8を位置決めして上記第1、第2の実装機構2A,2Bに供給できるようになっている。
【0037】
なお、図示しない他のステージ10は上記Xテーブル15上にYテーブル12及びθ・Zテーブル11を介して設けられている。つまり、Xテーブル15は複数のステージ10に対して兼用されるようになっている。
【0038】
上記基板8の側辺部がバックアップツール3の上端面に位置決めされて支持されると、上記加圧用駆動源5が作動して上記加圧ツール4が下降方向に駆動され、上記基板8の側辺部の上面に仮圧着されたTCP7が加圧される。
【0039】
上記バックアップツール3の上端部及び上記加圧ツール4の下端部にはそれぞれヒータ3a,4aが設けられている。それによって、上記TCP7を上記基板8に仮圧着した粘着テープが溶融して硬化するから、上記TCP7が上記基板8の側辺部に本圧着、つまり実装されることになる。
【0040】
基板8にTCP7を本圧着するとき、上記基板8上のTCP7の上面と加圧ルーツの下端面との間には耐熱性を有する樹脂によって基板8の幅寸法、つまりY方向に沿う長さ寸法とほぼ同じに幅寸法を有するシート21を介在させるようになっている。
【0041】
上記シート21は上記装置本体1の背面側に設けられた供給リール22に巻装されている。この供給リール22はトルクリミッタを備えた供給用駆動源23によって回転駆動される。それによって、上記シート21は上記供給リール22から繰り出される。
【0042】
上記供給リール22から繰り出されたシート21はばね24によって弾性的に保持された第1のテンションローラ25に係合されて装置本体1の前面側に導かれ、ここでガイドローラ26に係合して装置本体1の前面の下方に向かって方向変換される。
【0043】
装置本体1の前面の下方に向かったシート21は、上記加圧ツール4が上昇した状態において、この加圧ツール4の下端よりもわずかに下方の位置に配置された一対、つまり同じ高さに配置された第1のシート送り機構26Aと第2のシート送り機構26Bによって水平方向に方向変化される。
【0044】
一対のシート送り機構26A,26Bは、上記シート21の幅寸法と同等以上の長さ寸法を有する下部ローラ27及びこの下部ローラ27に全長に渡って転接する上部ローラ28によって構成されている。
【0045】
つまり、一対のシート送り機構26A,26Bは、各ローラ27,28の軸線を上記基板8の一側部の長手方向(幅方向)に沿わせているとともに、上記長手方向と交差する方向である、上記加圧ツール4の前後方向の一端側と他端側とにそれぞれ配置されている。
【0046】
上記シート21は、水平に走行するよう一対のシート送り機構26A,26Bの下部ローラ27と上部ローラ28とによって挟持されていて、第2のシート送り機構26Bから上記装置本体1の中途部の凹部1aに対応する箇所に形成されたスリット状の挿通路29に通されて上記装置本体1の背面側に導出されている。
【0047】
装置本体1の背面側に導出されたシート21はばね31によって弾性的に保持された第2のテンションローラ32に係合して巻き取りリール33に巻き取られるようになっている。この巻き取りリール33は巻き取り用駆動源34によって回転駆動されるようになっている。
【0048】
図3は、上記第1、第2の実装機構2A,2Bに対応して配置された、一対の上記第1のシート送り機構26Aと、第2のシート送り機構26Bの下部ローラ27の配置状態を示している。
【0049】
すなわち、第1の実装機構2Aの第1のシート送り機構26Aの下部ローラ27と、第2の実装機構2Bの第1のシート送り機構26Aの下部ローラ27は図3に矢印で示すY方向に位置をずらして配置されている。このずれ量をY1で示す。
【0050】
各下部ローラ27には駆動軸36が取付けられている。各駆動軸36の一端部は上記第1、第2のシート送り機構26A,26Bを構成するフレーム37Aの一方の側辺部に軸受37aによって回転可能に支持されていて、各駆動軸36の他端部は上記フレーム37Aの他方の側辺部に設けられたローラ駆動源38に連結されている。
【0051】
同様に、第1の実装機構2Aの第2のシート送り機構26Bの下部ローラ27と、第2の実装機構2Bの第2のシート送り機構26Bの下部ローラ27はY方向にずれ量をY1で位置をずらして配置されている。
【0052】
各下部ローラ27には駆動軸36が取付けられている。各駆動軸36の一端部は上記第1、第2のシート送り機構26A,26Bを構成する上記フレーム37Aの一方の側辺部に軸受37aによって回転可能に支持されていて、各駆動軸36の他端部は上記フレーム37Aの他方の側辺部に設けられたローラ駆動源38に連結されている。
【0053】
上記4つの下部ローラ27に転接する上部ローラ28は、詳細は図示しないが、上記各下部ローラ27に転接するよう、Y方向に位置をずらして配置されている。図4に示すように、上部ローラ28には従動軸41が設けられ、従動軸41の両端部はコマ42に軸受42aによって回転可能に支持されている。各コマ42は上記フレーム37Aと別のフレーム37Bの側辺部に上下方向に沿って形成されたスライド溝43にスライド可能に支持されている。
【0054】
上記コマ42は上記スライド溝43に設けられたばね44によって下方に弾性的に付勢されている。それによって、上記上部ローラ28は上記下部ローラ27に弾性的に圧接するようになっている。
【0055】
上記従動軸41の上記コマ42から突出した両端部はアーム45の下端部に形成された係合孔45aに回転可能に係合支持されている。各アーム45はシリンダやリニアモータなどの上下駆動源46によって上昇方向に駆動されるようになっている。
【0056】
上記アーム45が上記上下駆動源46によって上昇方向に駆動されると、その上昇に上記従動軸41とともに上記上部ローラ28がばね44の付勢力に抗して上昇する。それによって、上記下部ローラ27から上記上部ローラ28が離反するから、これらローラ27,27による上記シート21の挟持状態が開放される。
【0057】
つまり、上記下部ローラ27と上部ローラ28とによって挟持されて搬送される上記シート21が幅方向に対してずれたり、しわや弛みが生じたとき、上記上部ローラ28を上昇させることで、上記シート21のずれやしわ或いは弛みを除去される。つまり、シート21の送り状態が正規の状態に修正されるようになっている。
【0058】
上記第1、第2の実装機構2A,2B及び各実装機構2A,2Bに対応して設けられたステージ10は図5に示す制御装置48によって駆動が制御されるようになっている。すなわち、上記制御装置48は上記加圧用駆動源5、θ・Z駆動源13、Y駆動源14、X駆動源16、供給用駆動源23、上記巻き取り用駆動源34、上記ローラ駆動源38及び上記上下駆動源46の駆動を後述するように制御するようになっている。
【0059】
つぎに、上記構成の実装装置によって基板8の側辺部に仮圧着されたTCP7を実装するときの動作を図6(a),(b)を参照しながら説明する。
【0060】
ステージ10の上面に、側辺部にTCP7が仮圧着された基板8が供給されると、このステージ10は上記基板8の側辺部がバックアップツール3の上端面に支持されるよう、θ・Z駆動源13、Y駆動源14及びX駆動源16によって駆動されて上記基板8が位置決めされる。この状態を図6(a)に示す。
【0061】
基板8が位置決めされると、加圧用駆動源5によって加圧ツール4が下降方向に駆動される。それによって、加圧ツール4はシート21を介してTCP7を基板8の側辺部の上面に加圧加熱するから、上記TCP7が基板8に実装されることになる。
【0062】
加圧ツール4によってTCP7を加圧実装する前に、加圧ツール4の前後方向に設けられた第1のシート送り機構26Aと第2のシート送り機構26Bの少なくとも一方、たとえば加圧ツール4の前方に配置された第1のシート送り機構26Aの下部ローラ27がローラ駆動源38によってシート21を送る方向に駆動される。それによって、図6(b)シート21が下方へ弛むことになる。シート21に形成された弛みを図6(b)に弛み部21aとして示す。
【0063】
上記下部ローラ27によるシート21の送り長さ、つまり弛み量は、下方へ弛んだシート21の弛み部21aが基板8の上面に仮圧着されたTCP7に接触するように設定されている。
【0064】
上記下部ローラ27をローラ駆動源38によって駆動して上記シート21に弛み部21aを形成するとき、上記ローラ駆動源38による下部ローラ27の回転駆動に同期してシート21が巻装された供給リール22を供給用駆動源23によって駆動し、シート21を上記弛み量に応じた長さで繰り出させる。
【0065】
上記供給リール22から繰り出されるシート21の長さと、上記ローラ駆動源38によって弛まされるシート21の弛み量が同じに設定されれば、シート21に余計な張力を加えることなく、上記弛み部21aを形成することができる。つまり、シート21に張力を加えすぎて伸びが生じたり、破断させるのを防止することができる。
【0066】
このようにして、シート21に弛み部21aが形成されたならば、図6(b)に示すように加圧ツールを下降させ、シート21を介してTCP7を加圧実装する。その際、上記シート21は予め弛んでいるから、そのシート21に無理な張力を加えることなく実装を行うことができる。したがって、実装時にもシート21に伸びが生じたり、破断が生じるのを防止することができる。
【0067】
上記加圧ツール4によるTCP7の加圧が終了し、この加圧ツール4が上昇したならば、上記第2のシート送り機構26Bの下部ローラ27がローラ駆動源38によってシート21を送る方向に駆動されるとともに、上記下部ローラ27の駆動に同期して巻き取りリール33が巻き取り用駆動源34によって回転駆動される。
【0068】
それによって、上記第1のシート送り機構26Aと第2のシート送り機構26Bとの間で弛んだシート21の弛みがなくなるよう送られるとともに、その送り分だけ巻き取りリール33に巻き取られる。つまり、TCP7の実装時に使用された部分が上記第1のシート送り機構26Aと第2のシート送り機構26Bとの間からシート21の走行方向下流側に送り出されることになる。このときにも、シート21に大きな張力が加わるのが防止されることになる。
【0069】
このようにして、シート21の使用された部分が送り出されて未使用の部分が上記第1のシート送り機構26Aと第2のシート送り機構26Bとの間に繰り出されると同時に、TCP7の実装が終えた基板8は次工程に搬出され、ステージ10には新たな基板8が供給される。
【0070】
そして、新たな基板8が実装位置に位置決めされたならば、その基板8に仮圧着されたTCP7が上述したようにシート21の未使用の部分を介して加圧ツール4により、加圧されて実装される、ということが繰り返して行われることになる。
【0071】
つまり、上記構成の実装装置によれば、加圧ツール4の前後方向の一端側と他端側、つまり前側と後側にそれぞれシート21の送り長さを制御するため、回転駆動される下部ローラ27、この下部ローラ27に弾性的に転接した上部ローラ28からなる、第1のシート送り機構26Aと第2のシート送り機構26Bを設けるようにした。
【0072】
そのため、加圧ツール4によって基板8にTCP7を実装するとき、シート21の弛み長さを第1のシート送り機構26Aの下部ローラ27によって精度よく制御することが可能となる。つまり、加圧ツール4の近くでシート21の送り長さを制御するため、シート21の伸びの影響による送り長さの誤差をなくすことができる。
【0073】
その結果、シート21の送り過ぎによる無駄をなくすことができるばかりか、シート21の使用済みの部分を確実に下流側に送り出すことができるから、基板8に対するTCP7の実装を、実装時に生じる溶融物の影響を受けずに行うことができる。
【0074】
装置本体1の前面側の第1、第2の実装機構2A,2Bに対応して設けられる第1、第2のシート送り機構26A,26Bを、図2に示すように装置本体1の幅方向に並べて配置するようにしている。
【0075】
そして、それぞれ2組の第1シート送り機構26Aと第2のシート送り機構26Bの各一対の下部ローラ27を、フレーム37Aの幅方向に対して位置をずらして回転可能に支持するとともに、各下部ローラ27を回転駆動する4つのローラ駆動源38を上記フレーム37Aの幅方向の一側外面に設けるようにした。
【0076】
そのため、2組の第1シート送り機構26Aと第2のシート送り機構26Bを、幅方向に対してコンパクトに配置することができるから、実装装置の幅方向の寸法を小さくすることが可能となる。
【0077】
上記下部ローラ27に弾性的に転接する上部ローラ28を、上下駆動源46によって上記下部ローラ27から離反する上昇方向に駆動できるようにした。
【0078】
そのため、シート21が第1のシート送り機構26Aと第2のシート送り機構26Bによって送られることで、幅方向にしわが生じたり、しわが生じることで送り方向に狂いが生じるなどしたとき、上記上部ローラ28を上昇方向に駆動して下部ローラ27から離反させる。
【0079】
それによって、下部ローラ27と上部ローラ28とによるシート21の挟持状態が開放され、シート21に生じたしわを除去したり、送り方向のずれを修正することができるから、シート21が円滑に送られなくなったり、シート21の送り方向が変化して基板8と加圧ツール4との間に確実に介在しなくなるなどの送り不良が生じるのを防止することができる。
【0080】
上記シートの供給リール22と巻き取りリール33を装置本体1の背面側に配置するようにした。そのため、装置本体1の前面側でのステージ10のX、Y方向の動きが制限を受けないから、上記ステージ10に対する基板8の受け渡しをこのステージ10を最短距離で移動させて行うことが可能となる。それによって、タクトタイムの短縮を図ることができる。
【0081】
上記一実施の形態ではTCP7の実装時、シート21を弛ませるために加圧ツール4の前側の第1のシート送り機構26Aの下部ローラ27を送り方向に回転駆動するようにしたが、後側の第2のシート送り機構26Bの下部ローラ27をシート21の送り方向と逆方向に回転駆動してもよく、さらには前側の第1のシート送り機構26Aの下部ローラ27を送り方向に回転駆動すると同時に、後側の第2のシート送り機構26Bの下部ローラ27をシート21の送り方向と逆方向に回転駆動してシート21を弛ませるようにしてもよい。
【0082】
前側の第1のシート送り機構26Aの下部ローラ27だけを回転駆動する場合には、後側の下部ローラ27は回転駆動しなくてよいから、その分のローラ駆動源38は不要であり、同様に後側の第2のシート送り機構26Bの下部ローラ27だけを回転駆動する場合には、前側の下部ローラ27は回転駆動しなくてよいから、その分のローラ駆動源38は不要である。つまり、前側と後側の少なくともどちらか一方の下部ローラ27が回転駆動されるようになっていればよいことになる。
【0083】
また、装置本体1の前面側に2つの実装機構2A,2Bが設けられる場合を例に挙げて説明したが、2つ以上、たとえば4つの実装機構を設けるようにしてもよい。その場合、2つで対をなす第1、第2のシート送り機構26A,26Bを4組設けることになるから、図7に示す第2の実施の形態のように、それぞれ2組の第1、第2のシート送り機構26A,26Bが設けられた2つのフレーム37Aを、ローラ駆動源38が設けられた側辺部が逆向きになるよう、装置本体1の前面側に配置すればよい。
【符号の説明】
【0084】
1…装置本体、2A,2B…第1、第2の実装機構、3…バックアップツール、4…加圧ツール、7…TCP(電子部品)、8…基板、10…ステージ、22…供給リール、26A,26B…第1、第2のシート送り機構、27…下部ローラ、28…上部ローラ、33…巻き取りリール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に電子部品を実装する実装装置であって、
装置本体と、
この装置本体に設けられ上面に上記基板が載置されるステージと、
このステージに載置された上記基板の上記電子部品が実装される側辺部の下面を支持するバックアップツールと、
上記ステージの上方に上下方向に駆動可能に設けられ上記基板の上記バックアップツールによって側辺部の下面が支持された部分の上面に上記電子部品を加圧して実装する加圧ツールと、
供給リールから繰り出され上記基板と上記加圧ツールとの間を通されて巻き取りリールに巻き取られるようになっていて、上記基板に上記電子部品を加圧して実装するときに上記加圧ツールが汚れるのを防止するシートと、
下部ローラ及びこの下部ローラに転接する上部ローラを有し、上記加圧ツールの上記基板の上記電子部品が実装される側辺部の長手方向と交差する前後方向の一端側と他端側にそれぞれ軸線を上記基板の側辺部の長手方向に沿わせて配置され上記シートの上記加圧ツールの上記前後方向の一端側と他端側に位置する部分を挟持するとともに、少なくともどちらか一方の下部ローラが回転駆動されるようになっていて、その下部ローラが回転駆動されることで上記シートの上記実装ツールに対応する部分を上記下部ローラの回転方向に応じて送る一対のシート送り機構と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装装置。
【請求項2】
上記バックアップツールと加圧ツールとで実装機構を構成し、長手方向に並設された複数の実装機構を有し、
各実装機構には電子部品が実装される基板がそれぞれ上記ステージによって位置決めされるようになっていて、各実装機構には上記シートの上記加圧ツールに対応する部分を送る上記シート送り機構が設けられていて、
隣り合う実装機構に設けられたそれぞれのシート送り機構の下部ローラを回転駆動するための駆動機構は、並設された複数のシート送り機構の並設方向の一端側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装装置。
【請求項3】
上記バックアップツールと加圧ツールとで実装機構を構成し、長手方向に並設された複数の実装機構を有し、
各実装機構には電子部品が実装される基板がそれぞれ上記ステージによって位置決めされるようになっていて、各実装機構には上記シートを送る上記シート送り機構が設けられていて、
2つで対をなす2組の実装機構が横方向に並設されていて、各組の実装機構に設けられたそれぞれのシート送り機構の下部ローラを回転駆動するための駆動機構は、各組のシート走行手段の並設方向の一端側と他端側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装装置。
【請求項4】
上記加圧ツールが下降して上記シートを介して上記電子部品を基板に圧着して実装するとき、上記一対のシート送り機構の少なくとも一方は、上記シートの上記加圧ツールに対応する部分を弛ませる方向に駆動されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子部品の実装装置。
【請求項5】
上記シート送り機構の上記下部ローラに転接する上部ローラは、上記下部ローラに対して接離する方向に駆動可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子部品の実装装置。
【請求項6】
上記供給リールと上記巻き取りリールは、上記装置本体の背面側に配置されることを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装装置。
【請求項7】
基板に電子部品を実装する実装方法であって、
ステージに載置された上記基板の上記電子部品が実装される側辺部の下面をバックアップツールに支持させる工程と、
上記ステージの上方に上下方向に駆動可能に設けられた加圧ツールを下降させて上記基板の上記バックアップツールによって側辺部の下面が支持された部分の上面に上記電子部品を加圧して実装する工程と、
上記圧着ツールとの間を通されたシートを供給リールから繰り出して巻き取りリールに巻き取る工程と、
上記実装ツールの上記基板の上記電子部品が実装される側辺部の長手方向と交差する前後方向の一端側と他端側にそれぞれ軸線を上記基板の側辺部の長手方向に沿わせて配置された下部ローラ及びこの下部ローラに転接する上部ローラとで上記シートの上記実装ツールの上記前後方向の一端側と他端側に位置する部分を挟持し、少なくともどちらか一方の下部ローラが回転駆動されることで上記供給リールから繰り出されて上記巻き取りリールに巻き取られる上記シートの送り長さを設定する工程と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−174905(P2012−174905A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35892(P2011−35892)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】