説明

電子部品の製造方法

【課題】 外部電極の厚みの不均一を低減することができる電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 素子本体18を準備する本体準備工程と、樹脂シート30を準備するシート準備工程と、前記素子本体に導電ペースト34を塗布する塗布工程と、前記樹脂シートを前記導電ペーストに貼り付ける貼り付け工程と、前記導電ペーストに貼り付けられた前記樹脂シートの一部が、前記素子本体に沿うように変形する変形工程と、前記樹脂シートを除去する除去工程と、を有する電子部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電極を有する電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装等に用いられるチップコンデンサ、チップインダクタ、チップバリスタ等の電子部品は、その端部に外部電極が形成されているものが一般的である。また、電子部品における外部電極の形成方法としては、導電材料を含むペーストを素子本体の端部に塗布した後、塗布したペーストの乾燥および焼き付け等を行う方法が知られている。
【0003】
しかしながら、従来における外部電極の形成方法は、素子本体にペーストを塗布する際、ペーストが素子本体を均一に覆うように、ペーストを塗布することが難しいという課題を有している。したがって、従来における電子部品の製造方法には、電子部品の小型化と高容量化を両立することが難しく、また絶縁抵抗等の信頼性の確保が難しいという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するための方法としては、たとえば、ペーストを塗布する工程を二回に分け、一回目の塗布の後に、ペーストの一部を除去する工程および他の一部を乾燥させる工程を行う方法が提案されている(特許文献1等参照)。しかし、ペーストを塗布する工程を二回に分ける方法は、工程数が増えることによって製造方法が複雑になるため、生産性に課題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−351727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、外部電極の厚みの不均一を低減することができる電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子部品の製造方法は、
素子本体を準備する本体準備工程と、
樹脂シートを準備するシート準備工程と、
前記素子本体に導電ペーストを塗布する塗布工程と、
前記樹脂シートを前記導電ペーストに貼り付ける貼り付け工程と、
前記導電ペーストに貼り付けられた前記樹脂シートの一部が、前記素子本体に沿うように変形する変形工程と、
導電ペーストを乾燥させる乾燥工程と、
前記樹脂シートを除去する除去工程と、
を有する。
【0008】
本発明に係る電子部品の製造方法において、素子本体に塗布された導電ペーストは、樹脂シートと素子本体の間に保持される状態となるため、一方が自由表面である場合に比べて、素子本体の表面形状に沿った外形状を形成する。また、本発明に係る電子部品の製造方法は、導電ペーストに含まれる溶剤が樹脂シートに浸透し、導電ペーストに貼り付けられた樹脂シートの一部が素子本体に沿うように変形する変形工程を含む。このように、樹脂シートが適度に変形することによって、導電ペーストは、より素子本体の表面形状に沿った外形状を形成することが可能になる。したがって、本発明に係る電子部品の製造方法は、外部電極の厚みの不均一を低減することができる。
【0009】
また、本発明に係る電子部品の製造方法は、樹脂シートを導電ペーストに貼り付け、変形工程後に樹脂シートを除去するだけで、外部電極の厚みの不均一を低減することができるため、生産性に優れている。
【0010】
また、例えば、本発明に係る電子部品の製造方法において、前記樹脂シートの厚みは、5〜20μmであってもよく、
前記樹脂シートの幅であるシート幅と、当該シート幅に対応する前記素子本体の幅である素子本体幅との比は、0.5〜1.5であってもよい。
【0011】
樹脂シートの外形状を上述のような範囲とすることによって、外部電極をより均一な厚みに形成することができる。
【0012】
また、例えば、本発明に係る電子部品の製造方法は、前記導電ペーストを脱バインダ処理する脱バインダ工程と、前記導電ペーストを焼き付ける焼き付け工程と、をさらに有してもよく、
前記除去工程は、前記脱バインダ工程および前記焼き付け工程の少なくとも一方と、同時に行われてもよい。
【0013】
除去工程を前記脱バインダ工程および前記焼き付け工程の少なくとも一方と同時に行うことによって、樹脂シートの除去に要する手間および時間を減少させることが可能であり、このような製造方法によって、電子部品を効率良く生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造されるチップコンデンサの概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る製造方法を説明した概念図である。
【図3】図3は、図2に示す製造方法に含まれる工程で起きる樹脂シートへの浸透を説明した概念図である。
【図4】図4は、図2に示す製造方法に含まれる工程で起きる樹脂シートの変形を説明した拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る製造方法を説明したフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の実施例において測定された寸法を説明した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造されるコンデンサ10の概略断面図である。図1に示すように、実施形態に係る製造方法によって製造される電子部品の一例としてのコンデンサ10は、素子本体18と外部電極14とを有する。外部電極14は、素子本体18の両端部に形成されている。
【0016】
素子本体18は、誘電体層12と内部電極層13が交互に積層された積層構造を有している。また、素子本体18において、積層方向の両端部には、保護用誘電体層16が配置されている。内部電極層13は、素子本体18の両端部に形成されている2つの外部電極14のうち、いずれか一方と繋がっている。また、内部電極層13は、一方の外部電極14と他方の外部電極14のいずれか一方に対して、積層方向に沿って交互に接続されている。
【0017】
素子本体18における誘電体層12および保護用誘電体層16は、たとえばチタン酸バリウムなどの誘電体セラミック材料によって構成されるが、特に限定されない。また、内部電極層13は、例えばNiまたはNi合金等の導電材料によって構成されるが、特に限定されない。
【0018】
素子本体18の外形状は、略直方体状である。ここにいう略直方体状とは、図1に示すように、直方体の稜線部およびコーナー部にラウンドが形成されている形状を含む。なお、素子本体18の外形状は、略直方体に限定されず、例えば円柱状や、多角柱状であってもよい。
【0019】
素子本体18の寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、縦(0.2〜5.6mm)×横(0.1〜5.0mm)×高さ(0.1〜1.9mm)程度とすることができる。
【0020】
素子本体18において、積層方向と直交する方向の両端部には、一対の外部電極14が形成されている。外部電極14は、素子本体18における両方の本体端面18aの全体と、素子本体18の側面である本体側面18bの一部を覆うように形成されている。すなわち、コンデンサ10において、外部電極14は、素子本体18の両端部に、キャップ状に形成されている。
【0021】
図1における部分拡大図に示すように、外部電極14は、ペースト焼き付け膜である下地層20と、めっき層である上部層22とを有している。下地層20は、素子本体18と上部層22の間に形成されている。下地層20は、主にCu,Ag,Pd,Zn,Al,Ni,Au,Pt,Fe,Sn単体およびこれらを含む合金によって構成されるが、特に限定されない。
【0022】
上部層22は、下地層20の上に形成されている。上部層22は、Sn,Ni等およびこれらを含む合金によって構成されるが、特に限定されない。例えば、上部層22は、NiまたはNi合金膜で構成される下層と、SnまたはSn合金膜によって構成される上層の2層構造を有する。
【0023】
次に、図1に示すコンデンサ10の製造方法について説明する。図2は、コンデンサ10の製造方法を説明した概念図であり、図5は、コンデンサ10の製造方法を説明したフローチャートである。図5に示すステップS001〜ステップS003では、導電ペースト34に貼り付ける個片樹脂シート30(図2(e)参照)を準備する。
【0024】
ステップS001では、個片樹脂シート30の原材料となる樹脂シート用ペーストを、PETフィルム等の支持体の上に、コーター等を用いて塗り広げ、シートを成形する。樹脂シート用ペーストは、例えば、樹脂を1〜99重量部、溶剤を1〜99重量部、分散剤を0〜10重量部配合した配合物を、樹脂が溶剤に溶解するまで攪拌することによって作製される。樹脂シート用ペーストは、ロールミル等を用いて、加熱条件下において配合物を攪拌することによって得ることができるが、樹脂シート用ペーストの作製方法は特に限定されない。
【0025】
樹脂シート用ペーストに用いられる樹脂としては、セルロース樹脂、メタクリル樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂などの各種樹脂を単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。樹脂シート用ペーストに用いられる溶剤は、特に限定されないが、炭化水素系、アルコール系、エーテル系、エステル系、ケトン系またはグリコール系の溶剤、例えば、トルエン、ベンゼン、ターピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、オクタノール、デカノール、イソプロパノール、カルビトール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、酢酸エチル、アセトン、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテートなどが挙げられる。分散剤は、樹脂及び溶剤に合わせて適宜選択すればよく、例えばカルボン酸塩化合物、スルホン酸塩化合物等を分散剤として用いることができる。
【0026】
ステップS002では、形成されたシートを乾燥させ、図2(a)に示すような大判樹脂シート28を得る。さらに、ステップS003では、大判樹脂シート28を切断し、個片樹脂シート30を得る。個片樹脂シート30の厚みは、コンデンサ10の外形状等に合わせて調整されるが、5〜20μmとすることが好ましい。個片樹脂シート30の厚みを5μm以上とすることによって、個片樹脂シート30が破れにくくなり、個片樹脂シート30のハンドリング性を良好に保つことができる。また、個片樹脂シート30の厚みを5μm以上とすることによって、個片樹脂シート30が略平面形状を保持できるだけの硬さを有するため、このような個片樹脂シート30を導電ペースト34(図2(e))に貼り付けることによって、導電ペースト34を、素子本体18の表面に、より均一な厚みで付着させることができる。
【0027】
また、個片樹脂シート30の厚みを、20μm以下とすることによって、導電ペースト34中の溶剤36が個片樹脂シート30全体に短時間で浸透することが可能となる。したがって、個片樹脂シート30の厚みを20μm以下とすることによって、ステップS007において、個片樹脂シート30の変形が、短時間で確実に発生し、導電ペースト34を、素子本体18の表面に、より均一な厚みで付着させることができる。
【0028】
また、個片樹脂シート30の幅であるシート幅と、これに対応する素子本体18の幅である素子本体幅との比は、0.5〜1.5であることが好ましい。個片樹脂シート30のシート幅が、これに対応する素子本体18の素子本体幅に対して0.5倍未満であると、ステップS007において、導電ペースト34が個片樹脂シート30の外周部に乗り上げる現象が発生する場合があり、導電ペースト34の厚みの均一性が悪化する場合がある。また、個片樹脂シート30のシート幅が、これに対応する素子本体18の素子本体幅に対して1.5倍より大きいと、導電ペースト34中の溶剤36が個片樹脂シート30全体に短時間で浸透することが難しくなる。その結果、個片樹脂シート30の外周部が、変形に必要な可撓性を得ることができず、導電ペースト34の厚みの均一性が悪化する場合がある。
【0029】
なお、個片樹脂シート30の平面形状は、個片樹脂シート30に平行な素子本体18の断面形状と略相似であることが好ましい。本実施形態では、個片樹脂シート30の平面形状も、素子本体18の断面形状も、両方とも略矩形(略正方形)である。
【0030】
図5のステップS004では、図2(c)に示すように、素子本体18を準備する。素子本体18は、焼成後において図1に示すような保護用誘電体層16、内部電極層13および誘電体層12となる3種類の材料層を積層した積層体を作製し、当該積層体を焼成することにより得られる。焼成後に誘電体層12および保護用誘電体層16となる材料層は、誘電体粒子を含むグリーンシートの形で提供される。また、焼成後に内部電極層13となる材料層は、グリーンシート上に印刷等によって形成される電極ペースト膜の形で提供される。
【0031】
積層体は、例えば、焼成後に保護用誘電体層16となるグリーンシートの間に電極ペースト膜が形成されたグリーンシートを、多数積層することによって作製される。積層体は、積層体を所定のチップ形状に切断する工程、積層体に対して脱バインダ処理を行う工程、脱バインダ処理された積層体を焼成する工程、焼成された積層体を熱処理する工程等を経て、図2(c)に示す素子本体18となる。
【0032】
図5に示すステップS005では、図2(d)に示すように、素子本体18の端部に、導電ペースト34を塗布する。導電ペースト34は、図1に示す下地層20の原材料であり、焼き付け後に下地層20となる。導電ペースト34は、素子本体18の本体端面18aの全体と、本体端面18aに近接する本体側面18bの一部を覆うように塗布される。素子本体18に対する導電ペースト34の塗布は、ディップ法、印刷法等を用いて行うことができるが、特に限定されない。
【0033】
導電ペースト34は、導電粉を50〜95重量部、ガラスフリットを0〜20重量部、バインダを1〜20重量部、分散剤を0〜10重量部、溶剤36を0〜40重量部配合した配合物を、ロールミル等を用いて混合することによって得られる。
【0034】
図5に示すステップS006では、図2(e)に示すように、素子本体18に塗布された導電ペースト34に、個片樹脂シート30を貼り付ける。
【0035】
個片樹脂シート30は、導電ペースト34に貼り付く。個片樹脂シート30の貼り付けは、例えば、エアの吸引・吸引停止を制御可能な吸着ノズルを用いて、個片樹脂シート30を導電ペースト34の表面に搬送し、設置することによって行なわれるが、個片樹脂シート30の貼り付け方法は、特に限定されない。
【0036】
図2(e)に示すように、個片樹脂シート30を導電ペースト34に貼り付けると、導電ペースト34が素子本体18と個片樹脂シート30の間に保持されるため、導電ペースト34の形状は、貼り付け前に比べて素子本体19を均一に覆うように変化する。また、個片樹脂シート30によって、本体端面18aの中央部分にあった導電ペースト34が、素子本体18の本体稜線部18cに押しやられ、導電ペースト34の形状が均一になるように変化する。
【0037】
ステップS007では、個片樹脂シート30が、図2(e)に示す状態から、図2(f)に示す状態に変形する樹脂シート変形工程が実施される。図3は、図2(e)において点線IIIで囲まれた領域を拡大したものであり、ステップS007の初期の状態を表す概念図である。図3に示すように、個片樹脂シート30が導電ペースト34に貼り付けられた直後からステップS007の初期においては、個片樹脂シート30は、撓みが少なく、平面に近い形状を維持することができる。したがって、個片樹脂シート30の外周部であるシート外周部30cは、個片樹脂シート30の中央部であるシート中央部30aに対して、ほぼ同じ高さに位置する。
【0038】
図3に示す状態では、導電ペースト34の稜線部分であるペースト稜線部34cは、個片樹脂シート30により、素子本体18から引き離された状態で支持される。また、ステップS007の初期においては、図3に示すように、導電ペースト34の乾燥が進行すると同時に、溶剤36が個片樹脂シート30へ浸透する。
【0039】
個片樹脂シート30が導電ペースト34に貼り付けられた直後からステップS007の初期においては、溶剤36の個片樹脂シート30への浸透が進行することによって、個片樹脂シート30の可撓性が増大する。そうすると、ステップS007の後期においては、図2(f)に示すように、個片樹脂シート30の一部が、素子本体18に沿うように変形する。
【0040】
図4は、図2(e)において点線IVで囲まれた領域を拡大したものであり、ステップS007の後期の状態を表す拡大断面図である。溶剤36の浸透により可撓性が増大すると、個片樹脂シート30のシート外周部30cは、ペースト稜線部34cを支えきれなくなり、変形する。すなわち、溶剤36の浸透により樹脂シート30の可撓性が増大すると、ペースト稜線部34cは、素子本体18に沿って丸くなるように変形することが可能になり、これに伴い、シート外周部30cは、図4に示すように、素子本体18に沿うように(本体稜線部18cまたは本体側面18bに対して、シート外周部30cが近づくように)変形する。
【0041】
このように、個片樹脂シート30の一部が変形する工程によって、素子本体18の本体端面18aに接触する部分、素子本体18の本体稜線部18cに接触するペースト稜線部34c、素子本体18の本体側面18bに接触する部分によって構成される導電ペースト34の各部分の厚みが、より均一になる。また、個片樹脂シート30の一部が変形する工程によって、導電ペースト34のコーナーおよびペースト稜線部34cには、ラウンド形状が形成される。
【0042】
ステップS008では、個片樹脂シート30が貼り付けられた導電ペースト34を備える素子本体18に対して、導電ペースト34を乾燥させる乾燥工程が実施される。なお、個片樹脂シート30が変形する変形工程(ステップS007)と、導電ペースト34を乾燥させる乾燥工程(ステップS008)とは、同時に行われてもよい。
【0043】
図5に示すステップS009では、導電ペースト34を脱バインダ処理する脱バインダ工程が行われる。また、ステップS009では、個片樹脂シート30の材質によっては、個片樹脂シート30を除去する除去工程が、脱バインダ工程と同時に行われる。
【0044】
具体的には、ステップS009では、変形した個片樹脂シート30および導電ペースト34を備える素子本体18(図2(f))を加熱し、導電ペースト34の脱バインダ処理を実施する。ステップS009において実施される脱バインダ処理における加熱温度は、300〜600℃の範囲にあることが好ましい。300℃以上とすることにより脱バインダ不足を防止し、600℃以下とすることにより導電材料の酸化を防止できる。
【0045】
また、ステップS009において実施される脱バインダ処理における加熱時間は、0.2〜1.5時間の範囲とすることが好ましい。加熱時間を0.2時間以上とすることによって脱バインダ不足を防止し、加熱時間を1.5時間以下とすることによって、導電ペースト34またはこれを焼成した後の下地層20が、素子本体18から剥がれやすくなってしまうことを防止できる。
【0046】
また、個片樹脂シート30の焼失温度が、脱バインダ処理における加熱温度より低い場合は、ステップS009において、個片樹脂シート30を除去する除去工程が、脱バインダ工程と同時に行われる。すなわち、個片樹脂シート30の焼失温度が、脱バインダ処理における加熱温度より低い場合は、ステップS009において、個片樹脂シート30が焼失され、除去される。
【0047】
図5に示すステップS010では、導電ペースト34を焼き付ける焼き付け工程が行われる。また、ステップS010において、個片樹脂シート30が除去されていない場合は、ステップS010において、個片樹脂シート30を除去する除去工程が、焼き付け工程と同時に行われる。
【0048】
具体的には、ステップS010では、脱バインダ処理後の素子本体18および導電ペースト34を加熱し、導電ペースト34を焼き付ける。ステップS010において実施される焼き付けにおける加熱温度は、450〜850℃とすることが好ましい。450℃以上とすることにより焼結不足を防止し、850℃以下とすることにより過焼結を防止できる。
【0049】
また、ステップS010において実施される焼き付けにおける加熱時間は、0.2〜1.5時間の範囲とすることが好ましい。加熱時間を0.2時間以上とすることによって焼結不足を防止し、加熱時間を1.5時間以下とすることによって過焼結を防止できる。
【0050】
また、個片樹脂シート30の焼失温度が、脱バインダ処理における加熱温度より高く、焼き付けにおける加熱温度より低い場合には、ステップS010において、個片樹脂シート30を除去する除去工程が、焼き付け工程と同時に行われる。すなわち、個片樹脂シート30の焼失温度が、脱バインダ処理における加熱温度より高く、焼き付けにおける加熱温度より低い場合には、ステップS010において、個片樹脂シート30が焼失され、除去される。ステップS010に係る焼き付け工程によって、図2(f)に示す導電ペースト34が、図2(g)に示すように下地層20となり、下地層20が形成された素子本体18が得られる。
【0051】
ステップS011では、下地層20の上に、上部層22(図1参照)を形成する。上部層22は、下地層20の上に、下層と上層からなる2層のメッキを形成することによって、作製される。具体的には、下地層20の上に、NiまたはNi合金膜で構成される下層を、無電界めっきまたは電界めっきによって形成し、下層の上に、SnまたはSn合金膜で構成される上層を、無電界めっきまたは電界めっきによって形成する。
【0052】
以上のように、ステップS001〜ステップS011に係る一連の工程によって、図1に示すコンデンサ10を得る。なお、ステップS001〜ステップS011では、図2に示すように、素子本体18の一方の端部に外部電極14を形成する工程のみを説明したが、素子本体18の他方の端部にも、同様に外部電極14が形成される。
【0053】
なお、上述の実施形態では、個片樹脂シート30を除去する方法として、脱バインダ工程または焼き付け工程と同時に、個片樹脂シート30を焼失させる方法を例に挙げて説明したが、個片樹脂シート30を除去する方法としてはこれに限定されない。例えば、個片樹脂シート30を除去する他の方法としては、個片樹脂シート30を、吸着ノズル等によって素子本体18から剥離することによって除去する方法や、個片樹脂シート30を溶かす溶剤を用いて溶解させることによって除去する方法が挙げられる。
【0054】
このように、本実施形態に係るコンデンサ10の製造方法では、素子本体18に塗布された導電ペースト34は、個片樹脂シート30と素子本体18の間に保持される状態となるため、一方が自由表面である場合に比べて、素子本体18の表面形状に沿った外形状を形成する。また、本実施形態に係るコンデンサ10の製造方法は、導電ペースト34に含まれる溶剤36が個片樹脂シート30に浸透し、導電ペースト34に貼り付けられた個片樹脂シート30の一部が素子本体18に沿うように変形する変形工程を含む。このように、個片樹脂シート30が適度に変形することによって、導電ペースト34は、より素子本体18の表面形状に沿った外形状を形成することが可能になる。したがって、本実施形態に係るコンデンサ10の製造方法は、導電ペースト34を焼き付けて形成される下地層20や、当該下地層20を含む外部電極14における、厚みの部分による不均一を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るコンデンサ10の製造方法は、個片樹脂シート30を導電ペースト34に貼り付け、変形工程後に個片樹脂シート30を除去するだけで、外部電極14の厚みの部分による不均一を低減することができるため、生産性に優れている。
【0056】
また、本実施形態に係るコンデンサ10の製造方法は、除去工程を脱バインダ工程および焼き付け工程の少なくとも一方と同時に行うことによって、個片樹脂シート30の除去に要する手間および時間を減少させることが可能であり、このような製造方法によって、コンデンサ10を効率良く生産することができる。なお、上述の実施形態では、電子部品の一例としてのコンデンサ10を例に挙げて説明を行ったが、本発明の製造方法によって製造される電子部品はコンデンサに限定されない。本発明は、インダクタ、バリスタ、抵抗もしくはこれらの組み合わせの電子部品の製造方法にも適用することができる。
【0057】
実施例
以下にさらに詳細な実施例に基づき説明を行うが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
試料01〜試料05
試料01
試料01として、図5に示すステップS001〜ステップS011に係る製造工程を含む製造方法を用いて、図1に示すようなコンデンサ10を製造し、製造方法の適切性、下地層20の寸法、コンデンサ10の信頼性、外部電極14の外観等について評価をおこなった。
【0059】
試料01の製造に用いた個片樹脂シート30は、樹脂としてアクリル樹脂を30重量部、溶剤としてターピネオールを70重量部配合した樹脂シート用ペーストを用いて作製した。個片樹脂シート30の厚みは1μmとし、樹脂シート30の面積と、個片樹脂シート30に平行な断面による素子本体18の断面積との比は、1とした(ステップS001〜ステップS003)。
【0060】
試料01の製造においては、素子本体18として、1005形状(縦1.0mm×横0.5mm)で厚み0.5mmとなるコンデンサ10用の素子本体18を準備した(ステップS004)。素子本体18に塗布する導電ペースト34としては、導電粉としてCu粉を70重量部、バインダとしてアクリル樹脂を5.6重量部、分散剤としてカルボン酸塩化合物を0.7重量部、溶剤36としてターピネオールを26重量部配合したものを使用した。素子本体18に対する導電ペースト34の塗布は、ディップ法により行った(ステップS005)。
【0061】
導電ペースト34への個片樹脂シート30の貼り付けは、吸着ノズルを用いて行った(ステップS006)。個片樹脂シート30の一部が変形する工程は、個片樹脂シート30が変形し、個片樹脂シート30と導電ペースト34とが一体化するまで、素子本体18等を自然放置することによって実施した(ステップS007)。個片樹脂シート30の一部が変形した後、導電ペースト34を乾燥させる工程を実施した(ステップS008)。
【0062】
変形した個片樹脂シート30および導電ペースト34を備える素子本体18を加熱して、脱バインダ処理する条件は、450℃、0.9時間とした(ステップS009)。導電ペースト34を焼き付ける条件は、650℃、0.9時間とした(ステップS010)。個片樹脂シート30は、脱バインダ工程と同時に、焼失により除去された。
【0063】
下地層20の上にNiめっきと、Snめっきを施すことによって、上部層22を形成し(ステップS011)、図1に示すような外部電極14を備えるコンデンサ10を作製した。NiめっきおよびSnめっきは、バレルめっき法によって行った。
【0064】
試料01の製造方法および作製された試料01に関して、以下のような評価を行った。
(1)評価項目:樹脂シートのハンドリング
評価基準:吸着ノズルによる個片樹脂シート30の搬送および導電ペースト34への貼り付けが適正に行われるか否かを目視にて判断した。搬送時または貼り付け時に個片樹脂シート30に皺が発生したり、個片樹脂シート30が正確に設置されなかったものは不良(×)、皺の発生がなく、個片樹脂シート30が正確に設置されたものは良(○)とした。
(2)評価項目:一体化性
評価基準:個片樹脂シート30を導電ペースト34に貼り付けてから、個片樹脂シート30の4角が素子本体18に沿うように変形したことを目視により確認した時までに要した時間を計測して判断した。個片樹脂シート30を導電ペースト34に貼り付けてから5分以内に変形を確認できたものは良(○)、5分以内に変形を確認できなかったものを不良(×)とした。
【0065】
(3)評価項目:焼き付け後T寸
評価基準:導電ペースト34を焼き付けて下地層20を形成したのち、電子部品を樹脂埋め・研磨し、顕微鏡下で下地層20の寸法を測定した。ここで、T寸は、図6に示すように、下地層20の最大厚み(本体端面18aから下地層20の外側面までの距離の最大値)とした。
(4)評価項目:焼き付け後F寸
評価基準:導電ペースト34を焼き付けて下地層20を形成したのち、コンデンサ10を樹脂埋め・研磨し、顕微鏡下で下地層20の寸法を測定した。ここで、F寸は、図6に示すように、最も外側にある内部電極層13の延長上における下地層20の厚みとした。
(5)評価項目:T寸/F寸 < 3
評価基準:T寸とF寸の比(T寸/F寸)を算出し、3未満となるものを良(○)、3以上となるものを不良(×)とした。
【0066】
(6)評価項目:信頼性
評価基準:外部電極14を形成して完成したコンデンサ10に対して、バイアスを1000時間印加しながら、絶縁抵抗値を測定した。漏れ電流が0.1mA以下ならば良(○)とし、0.1mAを超える場合は不良(×)とした。
(7)評価項目:電極形状外観
評価基準:コンデンサ10の外部電極14の形状を目視で確認した。外部電極14の稜線部や角部の形状が丸みを帯びず尖っている場合や、個片樹脂シート30の貼り付けに起因する起伏や膨れが外部電極14に見られる場合は不良(×)とし、外部電極14が素子本体18の形状に沿って形成されており、外部電極14表面が平滑であるものは良(○)とした。
試料01の製造条件および評価結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
試料02
試料02に係る製造方法では、厚み5μmの個片樹脂シート30を用いて、コンデンサ10を作成した。試料02の製造方法は、導電ペースト34に貼り付けられる個片樹脂シート30の厚みが異なる以外は、試料01の製造方法と同様である。また、試料02についても、試料01と同様の評価を行った。試料02の製造条件および評価結果を表1に示す。
【0069】
試料03
試料03に係る製造方法では、厚み10μmの個片樹脂シート30を用いて、コンデンサ10を作成した。試料03の製造方法は、導電ペースト34に貼り付けられる個片樹脂シート30の厚みが異なる以外は、試料01の製造方法と同様である。また、試料03についても、試料01と同様の評価を行った。試料03の製造条件および評価結果を表1に示す。
【0070】
試料04
試料04に係る製造方法では、厚み20μmの個片樹脂シート30を用いて、コンデンサ10を作成した。試料04の製造方法は、導電ペースト34に貼り付けられる個片樹脂シート30の厚みが異なる以外は、試料01の製造方法と同様である。また、試料04についても、試料01と同様の評価を行った。試料04の製造条件および評価結果を表1に示す。
【0071】
試料05
試料05に係る製造方法では、厚み25μmの個片樹脂シート30を用いて、コンデンサ10を作成した。試料05の製造方法は、導電ペースト34に貼り付けられる個片樹脂シート30の厚みが異なる以外は、試料01の製造方法と同様である。また、試料05についても、試料01と同様の評価を行った。試料05の製造条件および評価結果を表1に示す。
【0072】
試料06
試料06に係る製造方法では、個片樹脂シート30を用いずに、コンデンサ10を作製した。すなわち、試料06では、個片樹脂シート30を準備する工程(図5におけるステップS001〜ステップS003)や、導電ペースト34に貼り付ける工程(図5におけるステップS006)を行わずに、コンデンサ10の製造を行った。したがって、試料06の製造方法には、個片樹脂シート30の一部が変形する工程および個片樹脂シート30を除去する工程も含まれない。しかし、試料06の製造方法は、個片樹脂シート30を用いない点を除き、試料01の製造方法と同様である。
【0073】
また、試料06についても、試料01と同様の評価を行った。ただし、試料06は、個片樹脂シート30を用いずに製造されているため、樹脂シートのハンドリングおよび一体化性については、評価項目から除外した。試料06の製造条件および評価結果を表1に示す。
【0074】
試料07
試料07に係る製造方法では、試料06と同様に、個片樹脂シート30を用いずに、コンデンサ10を作製した。また、試料07の製造方法では、導電ペースト34を塗布して乾燥させる工程を、3回繰り返したのち、導電ペースト34の脱バインダおよび焼き付けを行った。試料06の製造方法と同様に、試料07の製造方法には、個片樹脂シート30を準備する工程、個片樹脂シート30を貼り付ける工程、個片樹脂シート30の一部が変形する工程および個片樹脂シート30を除去する工程が含まれない。試料07の製造方法は、導電ペースト34を塗布しで乾燥させる工程を3回繰り返した点を除き、試料06の製造方法と同様である。
【0075】
試料07についても、試料01と同様の評価を行った。ただし、試料07は、個片樹脂シート30を用いず製造されているため、樹脂シートのハンドリングおよび一体化性については、評価項目から除外した。試料07の製造条件および評価結果を表1に示す。
【0076】
試料01〜試料07の評価結果
表1に示すように、樹脂シートを用いて作製された試料01〜試料05では、樹脂シートを用いないで作製された試料06に比べてF寸が大きくなっており、樹脂シートを用いた製造方法によって、下地層20の厚みの部分による不均一が抑制されることが解る。なお、導電ペースト34を3回塗布した試料07は、試料06よりF寸が大きくなり、信頼性も向上しているが、T寸が大きくなりすぎており、外部電極14の外観もドーム上になっており、小型化と高容量化を両立することは難しい。
【0077】
試料01〜試料05を比較すると、試料02〜試料04は、すべての評価項目で良(○)という結果であった。それに対して試料01は、個片樹脂シート30の厚みが1μmと薄すぎるため、個片樹脂シート30に皺が入る場合があり、樹脂シートのハンドリング性に問題がある。また、試料01は、個片樹脂シート30の厚みが1μmと薄すぎるため、個片樹脂シート30の腰が弱く、個片樹脂シート30がT寸を抑制し、F寸を増加させる効果が少ないことが解った。なお、試料01は、試料02〜試料04に比べて、下地層20の厚みの部分による不均一が大きく、信頼性が劣ることが解った。
【0078】
試料05は、個片樹脂シート30の厚みが25μmと厚すぎるため、個片樹脂シート30を導電ペースト34に貼り付けてから5分以内に、個片樹脂シート30の変形が起こらなかった(一体化性不良(×))。また、外部電極14の稜線部や角部の形状が、丸みを帯びず尖っているため、試料05に係るコンデンサ10は、実装されるまでに欠けや割れが発生しやすいという問題を有する(電極形状外観不良(×))。
【0079】
表1からは、個片樹脂シート30を用いてコンデンサ10を作製することによって、下地層20の厚みの部分による不均一が抑制されることが解る。また、製造に用いられる個片樹脂シート30の厚みは、5〜20μmとすることが好ましいことが解る。
【0080】
試料08
試料08に係る製造方法では、厚み10μmの個片樹脂シート30を用いて、コンデンサ10を作成した。また、試料08に係る製造方法では、個片樹脂シート30の幅であるシート幅と、これに対応する素子本体18の幅である素子本体幅との比が、0.3である個片樹脂シート30を用いて、コンデンサ10を作成した。試料08の製造方法は、導電ペースト34に貼り付けられる個片樹脂シート30の幅(大きさ)が異なる以外は、試料03の製造方法と同様である。また、試料08についても、試料03と同様の評価を行った。試料08の製造条件および評価結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
試料09
試料09に係る製造方法では、個片樹脂シート30の幅であるシート幅と、これに対応する素子本体18の幅である素子本体幅との比が、0.5である個片樹脂シート30を用いて、コンデンサ10を作成した。試料09の製造方法は、導電ペースト34に貼り付けられる個片樹脂シート30の幅(大きさ)が異なる以外は、試料03の製造方法と同様である。また、試料09についても、試料03と同様の評価を行った。試料09の製造条件および評価結果を表2に示す。
【0083】
試料10
試料10に係る製造方法では、個片樹脂シート30の幅であるシート幅と、これに対応する素子本体18の幅である素子本体幅との比が、1.5である個片樹脂シート30を用いて、コンデンサ10を作成した。試料10の製造方法は、導電ペースト34に貼り付けられる個片樹脂シート30の幅(大きさ)が異なる以外は、試料03の製造方法と同様である。また、試料10についても、試料03と同様の評価を行った。試料10の製造条件および評価結果を表2に示す。
【0084】
試料11
試料11に係る製造方法では、個片樹脂シート30の幅であるシート幅と、これに対応する素子本体18の幅である素子本体幅との比が、2である個片樹脂シート30を用いて、コンデンサ10を作成した。試料11の製造方法は、導電ペースト34に貼り付けられる個片樹脂シート30の幅(大きさ)が異なる以外は、試料03の製造方法と同様である。また、試料11についても、試料03と同様の評価を行った。試料11の製造条件および評価結果を表2に示す。
【0085】
試料08〜試料11および試料03の評価結果
試料08〜試料11および試料03を比較すると、試料09、試料10および試料03は、すべての評価項目で良(○)という結果であった。それに対して試料08は、個片樹脂シート30の幅であるシート幅が、これに対応する素子本体18の幅である素子本体幅に対して、0.3倍と小さすぎるため、個片樹脂シート30を導電ペースト34に貼り付けた際に、導電ペースト34の一部が個片樹脂シート30の外周部に乗り上げる現象が発生した。これにより、試料08では、導電ペースト34を焼成して形成される下地層20の表面に起伏ができ、下地層20を含む外部電極14の表面にも起伏が残った(電極形状外観不良(×))。また、試料08に係る製造方法は、個片樹脂シート30が小さすぎるため、吸着ノズルによる個片樹脂シート30の搬送・設置を正確に行うことが難しく、樹脂シートのハンドリングに問題があった。
【0086】
試料11は、個片樹脂シート30の幅であるシート幅が、これに対応する素子本体18の幅である素子本体幅に対して2倍と大きすぎるため、個片樹脂シート30を導電ペースト34に貼り付けてから5分以内に、個片樹脂シート30の変形が起こらなかった(一体化性不良(×))。また、外部電極14の稜線部や角部の形状が、丸みを帯びず尖っているため、試料05に係るコンデンサ10は、実装されるまでに欠けや割れが発生しやすいという問題を有する(電極形状外観不良(×))。
【0087】
表2からは、個片樹脂シート30の幅であるシート幅と、これに対応する素子本体18の幅である素子本体幅との比は、0.5〜1.5であることが好ましいことが解る。なお、各実施例で用いた個片樹脂シート30の形状および素子本体18において個片樹脂シート30に平行な断面の形状は、ともに略正方形である。したがって、個片樹脂シート30の辺の長さである第1長さと、当該個片樹脂シート30の辺と平行な素子本体18の辺の長さである第2長さとの比は、0.5〜1.5とすることが好ましいことが解る。
【0088】
【表3】

【0089】
試料12〜試料15
試料12〜試料15に係る製造方法では、導電ペースト34を焼き付ける際の加熱温度を、それぞれ350℃、450℃、850℃、950℃として、コンデンサ10を作成した。試料12〜試料15の製造方法は、ステップS009(図5)において導電ペースト34を焼き付ける際の加熱温度が異なる以外は、試料03の製造方法と同様である。また、試料12〜試料15についても、試料03と同様の評価を行った。試料12〜試料15の製造条件および評価結果を表3に示す。
【0090】
試料12〜試料15および試料03の評価結果
試料12〜試料15および試料03を比較すると、試料13、試料14および試料03は、すべての評価項目で良(○)という結果であった。それに対して試料12は、導電ペースト34を焼き付ける際の加熱温度が低すぎたために焼結不足となり、信頼性評価において不良(×)であった。また、試料15は、導電ペースト34を焼き付ける際の加熱温度が高すぎたために過焼結となり、信頼性評価において不良(×)であった。表3からは、導電ペースト34を焼き付ける際の加熱温度を、450〜850℃とすることが好ましいことが解る。
【0091】
【表4】

【0092】
試料16〜試料19
試料16〜試料19に係る製造方法では、導電ペースト34を焼き付ける際の加熱温度を650℃とした。また、試料16〜試料19に係る製造方法では、導電ペースト34を焼き付ける際の加熱時間を、それぞれ0.1時間、0.2時間、1.5時間、2.0時間として、コンデンサ10を作成した。試料16〜試料19の製造方法は、ステップS009(図5)において導電ペースト34を焼き付ける際の加熱時間が異なる以外は、試料03の製造方法と同様である。また、試料16〜試料19についても、試料03と同様の評価を行った。試料16〜試料19の製造条件および評価結果を表4に示す。
【0093】
試料16〜試料19および試料03の評価結果
試料16〜試料19および試料03を比較すると、試料17、試料18および試料03は、すべての評価項目で良(○)という結果であった。それに対して試料16は、導電ペースト34を焼き付ける際の加熱時間が短すぎたために焼結不足となり、信頼性評価において不良(×)であった。また、試料19は、導電ペースト34を焼き付ける際の加熱時間が長すぎたため、信頼性評価において不良(×)であった。表3からは、導電ペースト34を焼き付ける際の加熱時間を、0.2時間〜1.5時間とすることが好ましいことが解る。
【0094】
【表5】

【0095】
試料20〜試料24
試料20〜試料24に係る製造方法では、個片樹脂シート30の原材料となる樹脂シート用ペーストに含まれる樹脂として、それぞれセルロース樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂を用いた。試料16〜試料19の製造方法は、個片樹脂シート30の原材料となる樹脂シート用ペーストに含まれる樹脂の種類を変更した以外は、試料03の製造方法と同様である。また、試料20〜試料24についても、試料03と同様の評価を行った。試料20〜試料24の製造条件および評価結果を表5に示す。
【0096】
試料25〜試料29
試料25〜試料29に係る製造方法では、個片樹脂シート30の原材料となる樹脂シート用ペーストに配合される樹脂として、アクリル樹脂を用いた。また、試料25〜試料29に係る製造方法では、個片樹脂シート30の原材料となる樹脂シート用ペーストに配合される溶剤として、それぞれイソプロパノール、ブチルカルビトール、酢酸エチル、アセトン、セロソルブを用いた。試料25〜試料29の製造方法は、個片樹脂シート30の原材料となる樹脂シート用ペーストに配合される溶剤の種類を変更した以外は、試料03の製造方法と同様である。また、試料25〜試料29についても、試料03と同様の評価を行った。試料25〜試料29の製造条件および評価結果を表5に示す。
【0097】
試料20〜試料29の評価結果
表5に示すように、試料20〜試料29は、すべての評価項目で良(○)という結果であった。これにより、樹脂および溶剤を変更した試料20〜試料29に係る製造方法も、アクリル樹脂およびターピネオールを用いた試料03に係る製造方法と同様の効果が得られることが解った。
【符号の説明】
【0098】
10… コンデンサ
12… 誘電体層
13… 内部電極層
14… 外部電極
16… 保護用誘電体層
18… 素子本体
18a… 本体端面
18b… 本体側面
18c… 本体稜線部
20… 下地層
22… 上部層
28… 大判樹脂シート
30… 個片樹脂シート
30a… シート中央部
30c… シート外周部
34… 導電ペースト
34c… ペースト稜線部
36… 溶剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子本体を準備する本体準備工程と、
樹脂シートを準備するシート準備工程と、
前記素子本体に導電ペーストを塗布する塗布工程と、
前記樹脂シートを前記導電ペーストに貼り付ける貼り付け工程と、
前記導電ペーストに貼り付けられた前記樹脂シートの一部が、前記素子本体に沿うように変形する変形工程と、
前記樹脂シートを除去する除去工程と、を有する電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂シートの厚みは、5〜20μmであり、
前記樹脂シートの幅であるシート幅と、当該シート幅に対応する前記素子本体の幅である素子本体幅との比は、0.5〜1.5であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記導電ペーストを脱バインダ処理する脱バインダ工程と、
前記導電ペーストを焼き付ける焼き付け工程と、をさらに有し、
前記除去工程は、前記脱バインダ工程および前記焼き付け工程の少なくとも一方と、同時に行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−216539(P2011−216539A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80826(P2010−80826)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】