説明

電子部品及びその製造方法

【課題】端子間を容易に電気的伝導的接続することができる電子部品を提供する。
【解決手段】相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間をそれぞれ導電粒子及びバインダを含む導電組成物又は熱伝導組成物で接続する電子部品において、該導電組成物又は熱伝導組成物中の相対充填密度が6 8 〜 9 0 % であり、かつ主として導電粒子中に含まれる銀微粉を介して相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を接続させるようにした電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板とパッケージ間を電気的熱伝導的に接続するか又はパッケージとICチップ間などのように電気的には低抵抗で、熱的には高熱伝導の接続要求に対応する電気的熱伝導的接続に優れた電子部品及びその製造法に関する。勿論、電気的には導電性を要求しないが、絶縁性を要求せず、高い熱伝導性を要求する用途にも適するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配線板とパッケージ間のように導電性を要求する電気的接続は、特許文献1などに記載されているように、導電ペーストを所望の位置に塗布した後、接続を必要とする両者を接着し、次いで加熱硬化させるか又は導電ペースト中の溶剤を揮発させて導電ペーストを固化することで、接続していた。
また、熱的な接続も同様に、特許文献2、3等に記載されているように、接続させる材料の一方の面に導電ペーストを塗布し、次いで他方の材料をその上に載置した後、加熱硬化させるか又は導電ペースト中の溶剤を揮発させて導電ペーストを固化することで、接続していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−11842号公報
【特許文献2】特公平5−11364号公報
【特許文献3】特公平5−11365号公報
【0004】
このような電気的接続又は熱的接続、即ち電気的熱伝導的接続に優れた電子部品を得るには、ペースト中の導電粉又は熱伝導粉の含有量を多くし、粉体同士の接触を高くする必要があった。詳しくは、電気的かつ熱伝導的に接続させるためには、両者の特性に優れる銀粉や銅粉を充填材として高い割合でペースト中に含有させる必要があった。
【0005】
これまで実際に販売されている導電粉又は熱伝導粉の場合、例えば銀粉では、粒子は一部凝集しており、粒径が5〜20μmの銀粉では相対充填密度は高々60%前後であり、粒径が1μm前後の銀微粉では粒子同士の凝集が強いため、相対充填密度は高々40〜60%前後であり、これらを単純に組み合わせて混合しても、相対充填密度は60%前後にとどまる。このため、ペースト中の導電粉含有率を高くすることはできなかった。
【0006】
一般的に電気的熱伝導的接続に優れた電子部品を得るには、接続に用いる導電ペースト中の銀粉又は銅粉の含有率を多くすると同時に、これら導電粉同士の接触確率を高め、かつその結合を強くすることが望ましかった。銅は耐マイグレーション性が良好であるが表面が酸化し易く導電性が低下し易い。また銀粉より堅いため、粒子同士を強い力で押しつけないと良好な接続が得られない欠点があった。従って、パッケージと配線板を接続するような用途では、粒子同士を強く押しつけられないという欠点があった。
一方、銀粉は耐酸化性も良好で柔らかいため、薄片と粒子を使用することで、電気的接続は良好であるが、反面耐マイグレーション性が銅に比べて大きく劣るという欠点があった。
【0007】
また、電気的熱伝導的接続に優れた電子部品の特性を高めるには、導電粉を多く含むペーストを用いることが好ましいが、これらの導電粉は凝集し易いためペースト中に多く含有することができず、このため粉末同士の接触確率を高めることもできなかった。例えば、無溶剤のバインダ組成物を使用して、銀粉の概略単分散された略球状粒子及び銀微粉からなる高充填化( 相対充填密度75%)された混合粒子をペースト化する場合、バインダ組成物に94重量%になるような割合で混合粒子を添加しても均一混合できる。
【0008】
しかしながら、相対充填密度が63%の混合粒子の場合、バインダ組成物が不足してしまい、同じ割合でバインダ組成物に混合粒子を添加すると、ばさばさの状態になりペースト状にはならず、均一混合することができない。即ち、相対充填密度が68〜80%に高充填化された混合粒子を使用することで、初めて高充填化されたペーストを安定に生産することができる。混合粒子の相対充填密度を80%より高くできればより好ましいが、80%以上にすることは非常に困難である。
【0009】
このように、導電粉を高含有率で配合するとペースト化することができなくなり、導電粉が銀粉又は銀と銅との合金粉の場合、これまで含有率が92重量%を越える無溶剤のペーストはできなかった。また溶剤を添加したペーストでも、導電粉の相対充填密度が低い場合は、バインダの必要量が高くなり、電子部品の特性は悪くなる。
一方、バインダの量を減らすと、凝集粉のため接続部分の強度が低下するという欠点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
請求項1記載の発明は、端子間を容易に電気的熱伝導的接続することができる電子部品を提供するものである。
請求項2記載の発明は、請求項1 記載の発明に加えて、高充填化が可能な電子部品を提供するものである。
請求項3及び4記載の発明は、請求項1又は2記載の発明に加えて、粒子同士の接続を効率よく行うことができる電子部品を提供するものである。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4記載の発明に加えて、耐マイグレーション性に優れ、導電性と熱伝導性にも優れる
請求項6、7及び8記載の発明は、端子間又は接続を必要とする部品の電気的熱伝導的接続が良好な電子部品の製造法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を導電粒子及びバインダを含む導電組成物又は熱伝導組成物で接続する電子部品において、該導電組成物又は熱伝導組成物中の導電粒子の相対充填密度が68〜90%であり、かつ主として導電粒子中に含まれる銀微粉を介して相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品を接触させるようにした電子部品に関する。
また、本発明は、導電組成物又は熱伝導組成物中の導電粒子の割合が、導電組成物又は熱伝導組成物に対して90〜99重量%である電子部品に関する。
また、本発明は、導電組成物又は熱伝導組成物中の導電粒子が、略球状粒子及び銀微粉を含み、かつ略球状粒子の平均粒径が銀微粉の平均粒径の5〜25倍である電子部品に関する。
また、本発明は、銀微粉の平均粒径が、0.3〜2.5μmである電子部品に関する。
また、本発明は、略球状粒子が、略球状銀粉又は略球状銅粉に対して3〜30重量%の銀で略球状銅粉の一部及び銀との合金部分を露出させて表面を被覆した略球状銀被覆銅粉であって、かつ被覆された銀が平滑化処理された略球状銀被覆銅粉である電子部品に関する。
【0012】
また、本発明は、相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を導電粒子及びバインダを含む導電組成物又は熱伝導組成物で接続する電子部品の製造法において、導電組成物又は熱伝導組成物をペースト化した導電ペーストを接続する側の一方の端子に塗布した後、この端子に該導電ペーストを介して他の一方の端子を合わせて相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を接続させることを特徴とする電子部品の製造法に関する。
また、本発明は、相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を導電粒子及びバインダを含む導電組成物又は熱伝導組成物で接続する電子部品の製造法において、導電組成物又は熱伝導組成物をペースト化した導電ペーストを接続する側の一方の端子に塗布した後、この端子に該導電ペーストを介して他の一方の端子を合わせて相互に接続し、次いでこれを圧縮して導電ペースト中の金属粒子同士を圧接し、相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を接触させることを特徴とする電子部品の製造法に関する。
さらに、本発明は、導電組成物又は熱伝導組成物中の導電粒子の割合が、90〜99重量%である電子部品の製造法に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の電子部品は、端子間を容易に電気的熱伝導的接続することができる。
請求項2記載の電子部品は、請求項1 記載の発明に加えて、高充填化が可能である。
請求項3及び4記載の電子部品は、請求項1又は2記載の発明に加えて、粒子同士の接続を効率よく行うことができる。
請求項5記載の電子部品は、請求項1〜4記載の電子部品に加えて、耐マイグレーション性に優れ、導電性と熱伝導性にも優れる。
請求項6、7及び8記載の方法で得られる電子部品は、端子間又は接続を必要とする部品を容易に電気的熱伝導的接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電子部品の断面図である。
【図2】ポリイミトフィルム上にテストパターンを形成した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を接続するのに用いる導電組成物又は熱伝導組成物は、導電粒子とバインダ組成物を含む導電ペーストの固化物であり、電気的熱伝導的接続に適した物質である。このうち導電粒子としては、電導性がよく、熱伝導性も良好な銀、銅、金又はこれらの合金が適しており、その他の導電粒子としてはアルミニウム、白金、パラジウム又はこれらの合金が使用される。
【0016】
また、導電粒子同士を金属結合させる目的で銀微粉が使用される。この銀微粉は、導電粒子として均一に分散した後、バインダ組成物と一緒に混合され、導電ペーストとなり、相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を接続する際に、銀微粉より大きい導電粒子間で挟まれて押しつぶされ、導電粒子表面と接触する。接触が全ての粒子間で行われていれば理想であるが、実際には難しく、導電粒子間で挟まれ、変形して導電粒子に強く貼り付いている状態のものが含まれていたり、導電粒子間の隙間に銀微粉が存在するものが含まれていても差し支えない。
【0017】
バインダ組成物としては特に制限はないが、接着力を必要とする場合にはエポキシ樹脂が適しており、無溶剤又は溶剤含有率の低い導電ペーストを作製する場合には、常温で液状、かつ粘度の低い、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型等で低分子のエポキシ樹脂がその硬化剤と一緒に使用される。
【0018】
また、エポキシ基を分子中に1個しか持たず、架橋反応はできないが、粘度の低いモノエポキサイドもバインダ組成物の粘度を低下させるために併用できる。さらにエポキシ樹脂やフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂ばかりでなく、フェノキシ樹脂のような熱可塑型樹脂も溶剤に溶解してバインダ組成物として使用できる。バインダ組成物はこれらの他に、カップリング剤、消泡剤等の添加物や必要に応じて溶剤を含有していても差し支えない。
【0019】
導電粒子とバインダ組成物を混合し、導電ペーストを作製する方法は、予め導電粒子の相対充填密度を所望の高い状態にしておき、これを所定のバインダ組成物と混合する方法が、均一分散が容易であり、かつ高含有率で導電ペースト固化物粒子を含有する導電ペーストを製造するに適した方法である。このバインダ組成物と相対充填密度を高くした導電粒子を混合、分散する方法は特に制限するものではなく、例えば、らいかい機、自働乳鉢、さらにはプラネタリーミキサー、3本ロールミル等のような分散混合機を使用してもよい。
【0020】
本発明に用いられる導電組成物又は熱伝導組成物中の導電粒子は、概略単分散された鱗片状粒子及び略球状粒子を含み、その相対充填密度は68〜90%、好ましくは70〜90%の範囲とされ、相対充填密度が68%未満であると導電粒子の配合割合を多くすると導電ペーストの粘度が高くなり、充填や塗布などの作業性が悪くなる。一方、導電粒子の配合割合を少なくすると十分な導電性及び信頼性が得られなくなる場合がある。なお、相対充填密度が90%を超える導電粒子を作製することは極めて困難である。
本発明において、概略単分散されたとは、粒子の凝集の大部分が解粒されている状態を指し、全ての粒子が完全に解粒されていなくても差し支えない。
【0021】
本発明における相対充填密度(%)とは、充填密度をその粒子の真密度で除した値を%で表示したものである。なお、本発明で粒子の相対充填密度を求める方法は、25mmのストロークでタッピングを1,000回行い、その体積と質量から算出したタップ密度を充填密度とし、その粒子の真密度又は理論密度で除することで算出した。
【0022】
本発明において、略球状粒子とは、その形状が概略球状と見なせる粒子で塊状粒子を含み、その長径と短径の比は、1〜1.5の範囲が好ましく、1〜1.3の範囲がより好ましく、1〜1.1の範囲がさらに好ましい。
【0023】
本発明で用いられる略球状粒子の平均粒径は、銀微粉の平均粒径の5〜25倍が好ましく、10〜25倍であればさらに好ましい。この倍率が小さいと高充填化が困難になる傾向があり、またこの倍率が大きすぎると、鱗片状粒子の粒径が大きくなりすぎて、ペースト化した場合、粘度が高く、流動性を損ねたり、接着剤として使用する場合、作業性が悪くなる傾向がある。
【0024】
また、略球状粒子の平均粒径は、1.5〜45μmの範囲が上記の倍率から計算した下限値及び上限値であるが、コスト、取扱性等を考慮すると2.5〜20μmの範囲が好ましく、2.5〜15μmの範囲であればさらに好ましい。
なお、本発明における平均粒径は、レーザー散乱型粒度分布測定装置により測定することができる。本発明においては、測定装置としてマスターサイザー(マルバン社製)を使用した。
【0025】
一方、銀微粉の粒径は、0.3〜2.5μmの範囲が好ましく、0.5〜1.8μmの範囲がより好ましく、0.8〜1.5μmの範囲がさらに好ましい。銀微粉の粒径が0.3μm未満であると粒子同士の凝集が強く解粒不足を起こす場合があり、2.5μmを超えると高充填化することが難しくなる傾向があり、またビアホールへの充填性や、シリンジからの吐出性が悪くなる傾向がある。
【0026】
本発明で使用される導電組成物又は熱伝導組成物中の略球状粒子と銀微粉の配合割合は、体積比で略球状粒子:銀微粉が95:5〜55:45が好ましく、95:20〜60:40がさらに好ましい。この範囲以外では高充填化することが困難となる傾向があり、上記の範囲にすることにより、相対充填密度が68%以上のものを得ることができる。しかし、相対充填密度を90%以上にすることは極めて困難である。
【0027】
本発明において使用される導電組成物中の略球状粒子と銀微粉は、概略単分散されていればよい。特に、銀微粉の凝集が完全に解粒されるまで単分散を行うことは多大な労力を必要とするばかりでなく、極めて困難である。従って、本発明においては、概略単分散された鱗片状粒子及び略球状粒子を混合しながら、凝集した略球状粒子を解粒することが好ましい。
【0028】
本発明において、導電組成物又は熱伝導組成物中の導電粒子を接触させて相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を接続する方法は、相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間に導電ペーストを塗布し、両接続を必要とする部品を押しつぶすことにより達成できる。このとき、導電ペーストの粘度が低い場合で、導電ペーストが溶剤を含有している場合には、低粘度の状態で押しつぶしてもよく、溶剤を乾燥した後に押しつぶしてもよい。また溶剤を含まない導電ペーストの場合、必要に応じて加熱し、導電ペーストの粘度を低くしてから押しつぶせば効果的に接触させ接続することができる。これらのように導電ペーストを増粘させてから押しつぶし、略球状粒子と銀微粉とを一体化してかしめるように加工すれば、接触の割合が低くても電導性及び熱伝導性が良好になる。
【0029】
本発明において、概略単分散された略球状粒子が、鱗片状銅粉に対して3〜30重量%の銀で略球状銅粉の一部及び銀との合金部分を露出させて表面を被覆した略球状銀被覆銅粉であって、かつ被覆された銀が平滑化処理された略球状銀被覆銅粉を使用すると、銀微粉と混合した場合でも銀微粉との混合割合が、略球状銀被覆銅粉:銀微粉が100:0〜30:70の範囲であれば、耐銀マイグレーション性が良好であり、100:0〜55:45の範囲であればその耐銀マイグレーション性はさらに優れ、銅とほぼ同等の耐マイグレーション特性を示す。
【0030】
上記の略球状銀被覆銅粉を作製するには、例えばめっき法などで略球状銅粉の表面に銀を被覆させ、ついでこれをボールミル、ロッキングミル、振動ミル、アトライタ、プラネタリーミキサー等で、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、金属製ビーズ等の微小なビーズと共にゆるやかに撹拌し、凝集を解砕すると共に該球状の粒子を偏平化することなく微小なビーズで表面を弱くたたき、表面に被覆した銀層を平滑化させてやればよい。この平滑化処理で、表面に被覆された銀めっき層は平滑化されると同時にコア材の銅粉表面部分では一部が合金層を形成し、銅の一部が表面に露出する。色調は銀に近い金属色で、やや赤褐色を帯びるが、銅の露出は肉眼では判別できない、
【0031】
しかし、平滑化処理された略球状銀被覆銅粉は塩水に接触させると緑青色に変化するので、表面に銅が露出していることを確認できる。銀を被覆させる方法は特に制限ないが、例えば置換めっき、電気めっき、無電解めっき等の方法があり、略球状銅粉と銀の付着力が高いこと及びランニングコストが安価であることから、置換めっきで被覆することが好ましい。
【0032】
本発明においては、概略単分散された略球状粒子の表面は必要に応じて脂肪酸で被覆させてもよい。本発明で用いることのできる脂肪酸としては、ステアリン酸、ラウリン酸、カプリン酸、パルミチン酸等の飽和脂肪酸又はオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸などの不飽和脂肪酸等が挙げられる。
【0033】
これら粒子の表面への脂肪酸の被覆量は、粒子に対して0.02〜1.0重量%の範囲が好ましく、0.02〜0.5重量%の範囲がより好ましく、0.02〜0.3重量%の範囲がさらに好ましい。脂肪酸の被覆量が0.02重量%未満であると被覆した効果がなく、また1.0重量%を超えると、粒子同士が脂肪酸によって凝集し易くなる場合があり、あまり好ましくない。
【0034】
本発明では、相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を導電組成物又は熱伝導組成物で接続する構造のものであり、該導電組成物又は熱伝導組成物中の導電粒子の割合が、90〜99重量%の範囲が好ましいが、所望の端子間に導電ペーストを塗布し、これを加熱して硬化させる場合にバインダ組成物の一部が流れ落ちて導電粒子の含有率が高くなった場合も本発明に該当する。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により説明する。
実施例1
ビスフェノールAD型エポキシ樹脂(三井化学(株)製、商品名エポミックR710)50重量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロンEXA830CRP)50重量部、モノエポキサイド(旭電化工業(株)製、商品名グリシロールED―509)50重量部、2−フェニル−4−メチル−イミダゾール(四国化成(株)製、商品名キュアゾール2P4MZ)20重量部とチタネート系カップリング剤0.2重量部を均一に混合してバインダ組成物とした。
一方、導電粒子として、平均粒径が10μm及び長径と短径の比が1.0の略球状銀被覆銅粉70重量%と平均粒径が1.1μmの銀微粉30重量%の混合粉からなる相対充填密度が75%の高充填導電粉を使用した。
上記で得たバインダ組成物6重量部に、上記の高充填導電粉94重量部を除々に加えながら撹拌らいかい機で5分間均一に混合、分散して、導電ペーストを得た。
【0036】
次に、図1に示すパッケージ1及び配線板2を各々100個準備すると共に、上記で得た導電ペーストをシリンジに充填し、次いでパッケージの銅箔ランド4と対向する直径0.2mmの配線板の銅箔ランド3上に、シリンジに充填した導電ペーストを直径が0.2mmで高さが0.12mm(約26μg/個)になるように供給した。その後、前記のパッケージの銅箔ランド4を有するパッケージ1を、前記の配線板2の導電ペーストを供給した配線板の銅箔ランド3上に導電ペーストを介して載置した。
【0037】
次いで、両者(パッケージ1と配線板2)の間隔を100μmになるまで押しつぶし、その後170℃まで13分間で昇温し、170℃で1時間加熱処理して、パッケージ1と配線板2とを導電組成物5を介して接続させて電子部品を得た。
上記で得た電子部品を樹脂で埋めた後、パッケージ1と配線板2との接続部分を切断し、その切断面を観察した結果、略球状銀被覆銅粉同士に挟まれた銀微粉はやや変形して、略球状銀被覆銅粉と強く接合しており、その一部は粒子同士が強く接触していると見なせた。なお、電子部品の導電粒子は96重量%であり、銀微粉の粒径は1μmで、略球状粒子の粒径の1/10であった。
【0038】
また、上記で得た導電ペーストを用いて、図2に示すポリイミドフィルム6上にテストパターン7を印刷し、乾燥機に入れた後185℃まで13分間で昇温し、その温度で1時間加熱処理し、テスト基板を得た。テスト基板のシート抵抗を測定した結果、26mΩ/□であった。
【0039】
さらに、上記で得た導電ペーストを、バーコータを使用して離型フィルム上に厚さ120μmで15mm角に印刷形成した。その後、印刷した導電ペーストの上に他の離型フィルムを置き、両者を厚さが20mmのステンレス板で挟み、圧力を掛けたままで100℃まで30分間で昇温し、次いで170℃まで15分間で昇温し、厚さ100μm導電組成物を作製した。該導電組成物の導電性は16μΩcmであり、熱伝導率は45w/mKであった。
【0040】
実施例2
導電粒子として、平均粒径が11μm及び長径と短径の比が1.0の略球状銀被覆銅粉65重量%と平均粒径が1.0μmの銀微粉35重量%の混合粉からなる相対充填密度が75%の高充填導電粉を使用した。
実施例1で得たバインダ組成物5重量部に、上記の高充填導電粉95重量部を除々に加えながら撹拌らいかい機で5分間均一に混合、分散して、導電ペーストを得た。
上記で得た導電ペーストを用いて、実施例1と同様の工程を経てテスト基板を得た。得られたテスト基板についてのシート抵抗を測定した結果、24mΩ/□であった。
【0041】
次に、実施例1と同様に、パッケージ及び配線板を各々100個準備すると共に、上記で得た導電ペーストをシリンジに充填し、次いでパッケージの銅箔ランドと対向する直径0.2mmの配線板の銅箔ランドに、シリンジに充填した導電ペーストを直径が0.2mmで高さが0.12mm(約27μg/個)になるように供給した。その後、前記のパッケージの銅箔ランドを有するパッケージを、前記の配線板の導電ペーストを供給した配線板の銅箔ランド上に導電ペーストを介して載置した。
【0042】
次いで、両者(パッケージと配線板)の間隔を100μmになるまで押しつぶし、その後170℃まで13分間で昇温し、170℃ で1時間加熱処理して、パッケージと配線板とを導電組成物を介して接続させて電子部品を得た。
上記で得た電子部品を樹脂で埋めた後、パッケージと配線板との接続部分を切断し、その切断面を観察した結果、略球状銀被覆銅粉同士に挟まれた銀微粉はやや変形して、略球状銀被覆銅粉と強く接合しており、その一部は粒子同士が強く接触していると見なせた。なお、電子部品の導電粒子は96重量%であり、銀微粉の粒径は1μmで、略球状粒子の粒径の1/10であった。
【0043】
次に、上記で得た導電ペーストを、バーコータを使用して離型フィルム上に厚さ120μmで15mm角に印刷形成した。その後、印刷した導電ペーストの上に他の離型フィルムを置き、両者を厚さが20mmのステンレス板で挟み、圧力を掛けたままで100℃まで30分間で昇温し、次いで170℃まで15分間で昇温し、厚さ100μm導電組成物を作製した。該導電組成物の導電性は14μΩcmであり、熱伝導率は58w/mKであった。
【0044】
実施例3
導電粒子として、平均粒径が12μm及び長径と短径の比が1.0の略球状銀被覆銅粉75重量%と平均粒径が0.9μmの銀微粉25重量%の混合粉からなる相対充填密度が75%の高充填導電粉を使用した。
実施例1で得たバインダ組成物6重量部に、上記の高充填導電粉94重量部を除々に加えながら撹拌らいかい機で5分間均一に混合、分散して、導電ペーストを得た。
上記で得た導電ペーストを用いて、実施例1と同様の工程を経てテスト基板を得た。得られたテスト基板についてのシート抵抗を測定した結果、25mΩ/□であった。
【0045】
次に、実施例1と同様に、パッケージ及び配線板を各々100個準備すると共に、上記で得た導電ペーストをシリンジに充填し、次いでパッケージの銅箔ランドと対向する直径0.2mmの配線板の銅箔ランドに、シリンジに充填した導電ペーストを直径が0.2mmで高さが0.12mm(約27μg/個)になるように供給した。その後、前記のパッケージの銅箔ランドを有するパッケージを、前記の配線板の導電ペーストを供給した配線板の銅箔ランド上に導電ペーストを介して載置した。
【0046】
次いで、両者(パッケージと配線板)の間隔を100μmになるまで押しつぶし、その後170℃まで13分間で昇温し、170℃で1時間加熱処理して、パッケージと配線板とを導電組成物を介して接続させて電子部品を得た。
上記で得た電子部品を樹脂で埋めた後、パッケージと配線板との接続部分を切断し、その切断面を観察した結果、略球状銀被覆銅粉同士に挟まれた銀微粉はやや変形して、略球状銀被覆銅粉と強く接合しており、その一部は粒子同士が強く接触していると見なせた。なお、電子部品の導電粒子は96重量%であり、銀微粉の粒径は0.8μmで、略球状粒子の粒径の1/13.8であった。
【0047】
次に、上記で得た導電ペーストを、バーコータを使用して離型フィルム上に厚さ120μmで15mm角に印刷形成した。その後、印刷した導電ペーストの上に他の離型フィルムを置き、両者を厚さが20mmのステンレス板で挟み、圧力を掛けたままで100℃まで30分間で昇温し、次いで170℃まで15分間で昇温し、厚さ100μm導電組成物を作製した。該導電組成物の導電性は13μΩcmであり、熱伝導率は52w/mKであった。
【0048】
実施例4
導電粒子として、平均粒径が5.8μm及び長径と短径の比が1.0の略球状銀被覆銅粉70重量%と平均粒径が0.9μmの銀微粉20重量%の混合粉からなる相対充填密度が70%の高充填導電粉を使用した。
実施例1で得たバインダ組成物6重量部に、上記の高充填導電粉94重量部を除々に加えながら撹拌らいかい機で5分間均一に混合、分散して、導電ペーストを得た。
上記で得た導電ペーストを用いて、実施例1と同様の工程を経てテスト基板を得た。得られたテスト基板についてのシート抵抗を測定した結果、37mΩ/□であった。
【0049】
次に、実施例1と同様に、パッケージ及び配線板を各々100個準備すると共に、上記で得た導電ペーストをシリンジに充填し、次いでパッケージの銅箔ランドと対向する直径0.2mmの配線板の銅箔ランドに、シリンジに充填した導電ペーストを直径が0.2mmで高さが0.12mm(約24μg/個)になるように供給した。その後、前記のパッケージの銅箔ランドを有するパッケージを、前記の配線板の導電ペーストを供給した配線板の銅箔ランド上に導電ペーストを介して載置した。
【0050】
次いで、両者(パッケージと配線板)の間隔を100μmになるまで押しつぶし、その後170℃まで13分間で昇温し、170℃で1時間加熱処理して、パッケージと配線板とを導電組成物を介して接続させて電子部品を得た。
上記で得た電子部品を樹脂で埋めた後、パッケージと配線板との接続部分を切断し、その切断面を観察した結果、略球状銀被覆銅粉同士に挟まれた銀微粉はやや変形して、略球状銀被覆銅粉と強く接合しており、その一部は粒子同士が強く接触していると見なせた。なお、電子部品の導電粒子は93重量%であり、銀微粉の粒径は1.0μmで、略球状粒子の粒径の1/6であった。
【0051】
次に、上記で得た導電ペーストを、バーコータを使用して離型フィルム上に厚さ120μmで15mm角に印刷形成した。その後、印刷した導電ペーストの上に他の離型フィルムを置き、両者を厚さが20mmのステンレス板で挟み、圧力を掛けたままで100℃まで30分間で昇温し、次いで170℃まで15分間で昇温し、厚さ100μm導電組成物を作製した。該導電組成物の導電性は23μΩcmであり、熱伝導率は35w/mKであった。
【0052】
比較例1
導電粒子として、平均粒径が11μm及び長径と短径の比が1.0の略球状銀被覆銅粉25重量%と平均粒径が1.1μmの銀微粉75重量%の混合粉からなる相対充填密度が63%の導電粉を使用した。
実施例1で得たバインダ組成物6重量部に、上記の導電粉94重量部を除々に加えながら撹拌らいかい機で3分間混合したが、ぼさぼさの状態でペーストにならなかった。
【0053】
比較例2
実施例1で得たバインダ組成物16重量部に、比較例1で得た導電粉84重量部を除々に加えながら撹拌らいかい機で5分間均一に混合、分散して導電ペーストを得た。
上記で得た導電ペーストを用いて、実施例1と同様の工程を経てテスト基板を得た。得られたテスト基板についてシート抵抗を測定した結果、268mΩ/□であった。
【0054】
次に、実施例1と同様に、パッケージ及び配線板を各々100個準備すると共に、上記で得た導電ペーストをシリンジに充填し、次いでパッケージの銅箔ランドと対向する直径が0.2mmの配線板の銅箔ランド上に、シリンジに充填した導電ペーストを直径が0.2mm及び高さが0.12mm(約20μg/個)になるように供給した。その後、前記のパッケージの銅箔ランドを有するパッケージを、前記の配線板の導電ペーストを供給した配線板の銅箔ランド上に導電ペーストを介して載置した。
【0055】
次いで、両者(パッケージと配線板)間隔を100μmになるまで押しつぶし、その後170℃まで13分間で昇温し、170℃で1時間加熱処理して、パッケージと配線板とを導電組成物を介して接続させて電子部品を得た。
上記で得た電子部品を樹脂で埋めた後、パッケージと配線板との接続部分を切断し、その切断面を観察した結果、略球状銀被覆銅粉同士に挟まれた銀微粉の変形は小さく、略球状銀被覆銅粉と弱く接触しており、金属結合しているとは見なせなかった。なお、電子部品の導電粒子の割合は、導電組成物に対して84重量%であり、銀微粉の平均粒径は1.1μmで、略球状粒子の粒径の1/10であった。
【0056】
次に、上記で得た導電ペーストを、バーコータを使用して離型フィルム上に厚さ120μmで15mm角に印刷した。その後、印刷した導電ペーストの上に離型フィルムを置き、両者を厚さが20mmのステンレス板で挟み、圧力を掛けたままで100℃まで30分間で昇温し、次いで170℃まで15分間で昇温し、厚さが100μm導電組成物を作製した。該導電組成物の厚さ方向の導電性は146mΩcmであり、熱伝導率は2.5w/mKであった。
【0057】
比較例3
導電粒子として、平均粒径が10μm及び長径と短径の比が1.0の略球状銀被覆銅粉35重量%と平均粒径が1.0μmの銀微粉65重量%の混合粉からなる相対充填密度が61%の導電粉を使用した。
実施例1で得たバインダ組成物6重量部に、上記の導電粉94重量部を除々に加えながら撹拌らいかい機で3分間混合したが、ぼさぼさの状態でペーストにならなかった。
【0058】
比較例4
実施例1で得たバインダ組成物15重量部に、比較例3で得た導電粉85重量部を除々に加えながら撹拌らいかい機で5分間均一に混合、分散して導電ペーストを得た。
上記で得たペーストを用いて、実施例1と同様の工程を経てテスト基板を得た。得られたテスト基板についてシート抵抗を測定した結果、195mΩ/□であった。
【0059】
次に、実施例1と同様に、パッケージ及び配線板を各々100個準備すると共に、上記で得た導電ペーストをシリンジに充填し、次いでパッケージの銅箔ランドと対向する直径が0.2mmの配線板の銅箔ランド上に、シリンジに充填した導電ペーストを直径が0.2mm及び高さが0.12mm(約20μg/個)になるように供給した。その後、前記のパッケージの銅箔ランドを有するパッケージを、前記の配線板の導電ペーストを供給した配線板の銅箔ランド上に導電ペーストを介して載置した。
【0060】
次いで、両者(パッケージと配線板)間隔を100μmになるまで押しつぶし、その後170℃まで13分間で昇温し、170℃で1時間加熱処理して、パッケージと配線板とを導電組成物を介して接続させて電子部品を得た。
上記で得た電子部品を樹脂で埋めた後、パッケージと配線板との接続部分を切断し、その切断面を観察した結果、略球状銀被覆銅粉同士に挟まれた銀微粉の変形は小さく、略球状銀被覆銅粉と弱く接触しており、金属結合しているとは見なせなかった。なお、電子部品の導電粒子の割合は、導電組成物に対して85重量% であり、銀微粉の平均粒径は1μmで、略球状粒子の粒径の1/10であった。
【0061】
次に、上記で得た導電ペーストを、バーコータを使用して離型フィルム上に厚さ120μmで15mm角に印刷した。その後、印刷した導電ペーストの上に離型フィルムを置き、両者を厚さが20mmのステンレス板で挟み、圧力を掛けたままで100℃まで30分間で昇温し、次いで170℃まで15分間で昇温し、厚さが100μm導電組成物を作製した。該導電組成物の厚さ方向の導電性は139mΩcmであり、熱伝導率は3.4w/mKであった。
【符号の説明】
【0062】
1 パッケージ
2 配線板
3 配線板の銅箔ランド
4 パッケージの銅箔ランド
5 導電組成物
6 ポリイミドフィルム
7 テストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間をそれぞれ導電粒子及びバインダを含む導電組成物又は熱伝導組成物で接続する電子部品において、該導電組成物又は熱伝導組成物中の導電粒子の相対充填密度が68〜90%であり、かつ主として導電粒子中に含まれる銀微粉を介して相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を接触させるようにした電子部品。
【請求項2】
導電組成物又は熱伝導組成物中の導電粒子の割合が、導電組成物又は熱伝導組成物に対して90〜99重量%である、請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
導電組成物又は熱伝導組成物中の導電粒子が、略球状粒子及び銀微粉を含み、かつ略球状粒子の平均粒径が銀微粉の平均粒径の5〜25倍である請求項1又は2記載の電子部品。
【請求項4】
銀微粉の平均粒径が、0.3〜2.5μmである請求項3記載の電子部品。
【請求項5】
略球状粒子が、略球状銀粉又は略球状銅粉に対して3〜30重量%の銀で略球状銅粉の一部及び銀との合金部分を露出させて表面を被覆した略球状銀被覆銅粉であって、かつ被覆された銀が平滑化処理された略球状銀被覆銅粉である請求項3又は4記載の電子部品。
【請求項6】
相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間をそれぞれ導電粒子及びバインダを含む導電組成物又は熱伝導組成物で接続する電子部品の製造法において、導電組成物又は熱伝導組成物をペースト化した導電ペーストを接続する側の一方の端子に塗布した後、この端子に該導電ペーストを介して他の一方の端子を合わせて相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を接触させることを特徴とする電子部品の製造法。
【請求項7】
相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間をそれぞれ導電粒子及びバインダを含む導電組成物又は熱伝導組成物で接続する電子部品の製造法において、導電組成物又は熱伝導組成物をペースト化した導電ペーストを接続する側の一方の端子に塗布した後、この端子に該導電ペーストを介して他の一方の端子を合わせて相互に接続し、次いでこれを圧縮して導電ペースト中の金属粒子同士を圧接し、相互に向かい合う端子間又は接続を必要とする部品間を接触させることを特徴とする電子部品の製造法。
【請求項8】
導電組成物又は熱伝導組成物中の導電粒子の割合が、90〜99重量%である請求項7記載の電子部品の製造法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−65999(P2011−65999A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216039(P2010−216039)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【分割の表示】特願2004−302767(P2004−302767)の分割
【原出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】