説明

電子部品実装装置

【課題】フラックスなどのペーストの転写をコンパクトな装置で精度良く行うことができる電子部品実装装置を提供することを目的とする。
【解決手段】部品供給部から取り出した電子部品にフラックスを転写により塗布して基板に実装する電子部品実装装置に用いられるフラックス転写ユニットにおいて、駆動伝達ピン29を介してロッドレスシリンダ23によって往復駆動され、フラックスの成膜・掻き取り用の第1のブレード21a、第2のブレード21bを備えたブレード保持ヘッド20を、揺動支持ピン28廻りに揺動自在に移動部材25によって保持するとともに、移動部材25を板バネ部材32によって所定の制動力で制動する。これにより、ブレード移動方向を逆転させる度に、ブレード保持ヘッド20が揺動し、第1のブレード21a、第2のブレード21bを専用駆動機構を設けることなく自動的に切り替えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に電子部品を実装する電子部品実装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品の基板への実装に際しては、電子部品と基板との接合面にフラックスやクリーム半田などのペーストの塗布を必要とする場合がある。この塗布は様々な方法で行われ、例えばフラックス塗布の例では、部品供給部からピックアップされた電子部品をフラックスが所定膜厚で塗布されたテーブルに対して下降させ、電子部品の下面にフラックスを転写する方法が多用される。このため、従来よりこのような用途に用いられる電子部品実装装置として、フラックス膜が所定膜厚で形成されたフラックス転写装置を備えたものが知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に示す例においては、掻き取り用と膜形成用の2つのブレードを、平坦な転写ステージ上で往復動させることにより、所定膜圧のフラックス膜を準備する成膜動作と、電子部品をフラックス膜に接触させて転写塗布した後の表面が荒れたフラックス膜を掻き取って回収する掻き取り動作とが交互に反復される。また特許文献2に示す例においては、回転するローラの外周面にフラックス膜を形成させるようにしている。
【特許文献1】特開2000−188498号公報
【特許文献2】特開2000−22394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述の先行技術例においては、電子部品実装装置を高能率かつコンパクト化する上で、次のような難点があった。まず特許文献1に示す先行技術においては、2つのブレードを転写ステージに沿って往復動させるための往復動機構に加え、成膜用と掻き取り用の2つブレードを切り替えるブレード切り替え機構が必要とされていた。このため、フラックス転写装置の機構簡略化が難しく、コンパクトな部品実装装置を実現するためのレイアウト最適化の妨げとなっていた。
【0005】
また特許文献2に示す先行技術においては、ローラ方式の採用によりコンパクト化は可能であるものの、膜厚のコントロールが難しいという点とともに、平坦な転写面を備えていないためバンプ付き電子部品を対象としてフラックス塗布とバンプのレベリングを併せて行いたいような用途には適していないという欠点があった。このように従来の先行技術例においては、フラックスなどのペーストの転写をコンパクトな装置で精度良く行うことが困難であるという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、フラックスなどのペーストの転写をコンパクトな装置で精度良く行うことができる電子部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品実装装置は、部品供給部から移載ヘッドによって電子部品を取り出して基板に移送搭載する電子部品実装装置であって、前記基板を保持して位置決めする基板保持部と、前記移載ヘッドを前記部品供給部と前記基板保持部との間で移動させるヘッド移動機構と、前記ヘッド移動手段による移載ヘッドの移動経路に配設され、前記移載ヘッドに設けられた部品保持部によって保持された電子部品にペーストを転写により塗布するペースト転写装置とを備え、前記ペースト転写装置は、上面にペースト膜を形成するための平滑な膜形成面を備えたベース部と、前記ベース部に沿って水平移動自在に配設された
移動部材と、前記移動部材に揺動支点廻りの揺動が可能に結合され前記移動部材とともに往復動するブレード保持部と、前記ブレード保持部に前記揺動支点を挟んで前記往復動の方向に相隔てて装着された第1のブレードおよび第2のブレードと、前記ブレード保持部に前記揺動支点から隔てられた位置を駆動作用点として往復駆動力を伝達する往復動機構と、前記ブレード保持部の揺動時の揺動抵抗に打ち勝つ大きさの制動抵抗で前記移動部材を前記往復動機構による駆動方向と反対方向に制動する制動手段とを有し、前記移動部材の往動時に前記第1のブレードまたは第2のブレードのいずれか一方のブレードを前記ベース部に摺接させ、復動時に他方のブレードを前記ベース部に摺接させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2つのブレードによってペーストの膜形成と掻き取りを交互に行う構成において、ブレードを水平移動させる往復動機構の駆動力を利用してブレードの切替を行う方式を採用することにより、従来用いられていた別途駆動源を有するブレード切り替え機構を必要とせず、フラックスなどのペーストの転写による塗布をコンパクトな装置で精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の斜視図、図2は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の平面図、図3は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置の構成説明図、図4は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置の部分平面図、図5は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置の部分側面図、図6は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置の部分断面図、図7は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置のブレードおよび転写テーブルの形状説明図、図8は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置のブレード保持ヘッドの動作説明図、図9は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図、図10,図11、図12は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置の動作説明図である。
【0010】
まず、図1,図2を参照して、電子部品実装装置1の構造を説明する。図1において、基台1aの上面には、X方向(基板搬送方向)に搬送路2が配設されている。搬送路2は上流側から搬入された基板3を搬送し、以下に説明する部品実装機構による実装位置に保持して位置決めする。したがって搬送路2は、基板3を保持して位置決めする基板保持部となっている。電子部品実装装置1には、同一構造の2つの部品実装機構4A、4Bが設けられており、搬送路2のそれぞれの実装位置に保持された基板3に対して、部品実装機構4A、4Bによって電子部品が実装される。
【0011】
図2に示すように、部品実装機構4A、4Bはそれぞれ部品供給部5A、5Bを備えており、部品供給部5A、5Bには、複数の電子部品7を格子配列で収納した部品トレイ6aが複数装着されたパレット6が保持される。、部品トレイ6aを装着したパレット6は、トレイフィーダ15A、15Bによって部品供給部5A、5Bに供給され、電子部品7が取り出された後の空の部品トレイ6aは、パレット6とともにトレイフィーダ15A、15Bに回収される。
【0012】
基台1aの上方には、搬送路2および部品供給部5A、5Bを移動範囲に含んで、XYロボット8A、8Bが配設されている。XYロボット8A、8BはいずれもX軸テーブル9X、Y軸テーブル9Yを直交させて組み合わせた構造となっており、X軸テーブル9Xには複数の吸着ノズルユニット11を備えた移載ヘッド10が装着されている。XYロボット8A、8Bを駆動することにより、それぞれの移載ヘッド10はX方向、Y方向に水平移動する。
【0013】
したがって、XYロボット8A、8Bは、移載ヘッド10を部品供給部5A,5Bと搬送路2に設けられた基板保持部との間で移動させるヘッド移動機構となっている。このヘッド移動により、移載ヘッド10は吸着ノズルユニット11に装着された吸着ノズル11a(図11参照)によって部品供給部5A、5Bから電子部品7を取り出して、搬送路2に保持された基板3に移送搭載する。
【0014】
部品供給部5A、5Bから電子部品7を取り出した移載ヘッド10が基板3へ移動する移動経路には、認識部12A、12Bおよびフラックス転写ユニット13が配置されている。認識部12A、12Bはラインカメラを備えており、電子部品7を各吸着ノズルユニット11によって保持した移載ヘッド10が認識部12A、12Bの上方を所定方向へ移動するスキャン動作を行うことにより、移載ヘッド10に保持された状態の電子部品7を下方から撮像する。そして撮像により得られた画像を認識処理することにより、部品供給部5A、5Bから取り出された電子部品7の認識、すなわち電子部品7の識別や位置ずれの検出が行われる。
【0015】
2つの認識部12A、12Bに挟まれた位置には、フラックス転写ユニット13が配置されている。フラックス転写ユニット13は、部品供給部5A、5Bから取り出された電子部品7のバンプ7a(図11参照)に、半田接合用のフラックスを転写により塗布する機能を有しており、転写用のフラックス塗膜を形成する転写テーブル13a、13bおよび膜形成用のブレードを駆動するブレード往復動機構14より成る。
【0016】
転写テーブル13a、13bは、それぞれXYロボット8A,8Bによって移動する2つの移載ヘッド10が干渉することなくアクセスすることができるよう、X方向に直列に配置されている。そしてブレード往復動機構14は、これら転写テーブル13a、13b上でブレードを移動させるための駆動機構を一体に組み込んだ構成となっている。すなわち、フラックス転写ユニット13は、ヘッド移動手段による移載ヘッド10の移動経路に配設され、移載ヘッド10に設けられた部品保持部としての吸着ノズル11aによって保持された電子部品7に、ペーストであるフラックスを転写により塗布するペースト転写装置としての機能を有している。
【0017】
図3に示すように、フラックス転写ユニット13は、上面にフラックス18の塗膜を形成するための平滑な膜形成面17aを備えたベース部17を主体とする転写テーブル13a、13bをX方向に直列に配置し、転写テーブル13a、13bに沿ってブレード往復動機構14を配置した構成となっている。転写テーブル13a、13bの上方には、ブレード保持ヘッド20が、ブレード往復動機構14からそれぞれ延出したブラケット22a、22bに保持されて配置されている。ブレード保持ヘッド20は、水平なホルダ20aの両端部に、いずれも板状の第1のブレード21a、第2のブレード21bを垂直姿勢で摺動端部を下方に向けて保持させた構成となっている。なお、側面図においては、転写テーブル13bに配置されたブレード保持ヘッド20の図示は省略している。
【0018】
ブレード往復動機構14は、ブレード保持ヘッド20を保持するブラケット22a、22bを、それぞれ個別にX方向に水平往復動させるための第1の駆動機構14a、第2の駆動機構14bを,Y方向に並列した配置で備えている。第1の駆動機構14a、第2の駆動機構14bは、水平なベースフレーム16の上面に配設されたロッドレスシリンダ23を駆動源としている。そしてロッドレスシリンダ23によるブラケット22a、22bの水平動は、ガイドレール24によって移動部材25を介してガイドされる。
【0019】
第1の駆動機構14a、第2の駆動機構14bは、細長形状の転写テーブル13a、13b上でブレードを移動させる機構目的上、必然的に細長形状と成らざるを得ない。そし
て上述のように転写テーブル13a、13bを直列配置する場合において、第1の駆動機構14a、第2の駆動機構14bを直列に配置すると、長手方向の占有面積が増大し、装置レイアウトのコンパクト化の妨げとなる。これに対し、本実施の形態に示すように、第1の駆動機構14a、第2の駆動機構14bをY方向に並列させることにより、フラックス転写ユニット13の占有面積を小さくして、装置コンパクト化が可能となる。
【0020】
次に、図4,図5,図6を参照して、フラックス転写ユニット13の詳細構造を説明する。なお転写テーブル13a、13bおよび第1の駆動機構14a、第2の駆動機構14bは、それぞれに備えられたブラケット22a、22bの形状の相違はあるものの、基本的には同一構成であることから、ここでは転写テーブル13aおよび転写テーブル13a上で移動するブレード保持ヘッド20を駆動するための第1の駆動機構14aの構造についてのみ説明する。
【0021】
図4,図5において、ベースプレート16に立設された縦フレーム26の側面には、ガイドレール24がX方向に配設されている。ガイドレール24にスライド自在に嵌着されたスライダ24aは、移動部材25に固着されており(図6参照)、移動部材25はガイドレール24にガイドされてX方向に水平移動自在に配設されている。
【0022】
図5に示すように、移動部材25は左端部の上側部分が左側方に延出した形状となっており、この延出部には揺動支持ピン28を介して揺動リンク27がXZ面内での揺動自在に軸支されている。揺動リンク27は、ブラケット22aの下面に固着されており、揺動リンク27が揺動支点である揺動支持ピン28廻りに揺動することにより、ブラケット22aと結合されたホルダ20aも同様に第1のブレード21a、第2のブレード21bとともに揺動する。また移動部材25がX方向に往復動することにより、ホルダ20aは第1のブレード21a、第2のブレード21bとともに往復動する。
【0023】
したがって、ホルダ20a、ブラケット22aおよび揺動リンク27は、移動部材25に揺動支点廻りの揺動が可能に結合され、移動部材25とともに往復動するブレード保持部を構成する。そして第1のブレード21a、第2のブレード21bは、このブレード保持部のホルダ20aに揺動支点を挟んで往復動の方向に相隔てて装着された形態となっている。そしてフラックス転写ユニット13によるフラックス塗膜形成動作においては、第1のブレード21aと第2のブレード21bとの間の空間に、膜形成面17aから掻き取られたフラックス18を貯留するようにしている。
【0024】
揺動リンク27において揺動支持ピン28から下方に隔てられた位置には、駆動伝達ピン29が設けられており、駆動伝達ピン29は揺動リンク27と連結部材30とを駆動伝達ピン29の軸廻りの相対回転変位を許容する状態で結合している。連結部材30は、ベースプレート16上にX方向に配設されたロッドレスシリンダ23の移動ブロック31に結合されており、ロッドレスシリンダ23を駆動して移動ブロック31をX方向にスライドさせることにより、揺動リンク27には連結部材30および駆動伝達ピン29を介してX方向の水平駆動力が伝達される。したがって、ロッドレスシリンダ23、移動ブロック31、連結部材30は、ブレード保持部に揺動支点としての揺動支持ピン28から隔てられた駆動伝達ピン29の位置を駆動作用点として往復駆動力を伝達する往復動機構となっている。
【0025】
図4に示すように、移動部材25の側面にはバネ鋼などの素材で製作された板バネ部材32が結合されており、板バネ部材32の先端部には樹脂など弾性体で製作された摺動部材33が装着されている。摺動部材33はガイドレール24の側面に当接しており、この装着状態において、摺動部材33は板バネ部材32の弾性力によってガイドレール24に対して所定の押圧力Fで押圧されている。この押圧力Fにより、移動部材25がX方向に
移動する際には、摺動部材33とガイドレール24との摩擦係数に応じた大きさの制動力fが作用する。
【0026】
ここでブレード保持ヘッド20全体が揺動支持ピン28廻りに揺動する際揺動抵抗よりも摺動部材33とガイドレール24との摩擦による制動力fの方が大きくなるような構成が採用される。すなわち、板バネ部材32による押圧力Fと、摺動部材33の材質およびガイドレール24と摺接する部分の表面性状を適宜設定することにより、所望の制動力fが得られるようにする。すなわち、板バネ部材32および摺動部材33は、ブレード保持部の揺動時の揺動抵抗に打ち勝つ大きさの制動抵抗で、移動部材25を往復動機構による駆動方向と反対方向に制動する制動手段となっている。 そして後述するように、この制動力fが駆動方向と反対方向に作用することにより、フラックス塗膜形成時およびフラックス欠き取り時の第1のブレード21a、第2のブレード21bの切替を自動的に行うことができるようになっている。
【0027】
ここで、図7を参照して、ベース部17および第1のブレード21a、第2のブレード21bの形状について説明する。第1のブレード21aは、膜形成面17a上に所定膜厚のペースト膜を形成する成膜用のブレードであり、第2のブレード21bは、膜形成面17a上に存在するペーストを掻き取る掻き取り用のブレードである。
【0028】
図7(a)に示すように、転写テーブル13aには、表面が平滑な膜形成面17aを備えたベース部17が設けられている。第1のブレード21aの下端部において、膜形成面17aとの摺接端部には、所定のフラックス膜厚tに対応した切欠き部21cが設けられており、第1のブレード21aの下端部を膜形成面17aに接触させた状態で第1のブレード21aを水平移動させることにより、膜形成面17aには膜厚tのフラックス18の塗膜が形成される。
【0029】
第2のブレード21bは切り欠きのないフラットな下端部を有しており、この下端部の全面を膜形成面17aに接触させた状態で、すなわち下端部を摺接させて第2のブレード21bを水平移動させることにより、膜形成面17a上に存在するフラックス塗膜を掻き取ることができる。すなわち、ここに示す例では、第1のブレード21aのベース部17との摺接面に、フラックス18の所定膜厚に対応した深さの切欠き部21cが設けられており、また第2のブレード21bは、膜形成面17aに摺接する形態となっている。
【0030】
なお、同様にベース部17上にフラックス18の塗膜を形成し、またフラックス18の塗膜を掻き取るための構成として、図7(b)に示すようなブレード形状およびベース部17の表面形状を採用してもよい。すなわち、ここに示す例では、膜形成用の第1のブレード21a*として、下端部に切り欠き部のない形状のものを用い、転写テーブル13aの膜形成面17aに、上述の膜厚tに対応した深さの凹部17bを設け、凹部17bの底面を膜形成面17cとして用いる。そして第1のブレード21a*の下端部をべース部17の上面に接触させた状態で第1のブレード21aを水平移動させることにより、膜形成面17cには膜厚tのフラックス18の塗膜が形成される。
【0031】
また第2のブレード21b*には、凹部17b内に嵌入可能な凸部21dが設けられており、凸部21dを凹部17b内に嵌入させて下端部を膜形成面17cに接触させた状態で、すなわち下端部を摺接させて第2のブレード21b*を水平移動させることにより、膜形成面17c上に存在するフラックスの塗膜を掻き取ることができる。すなわち、図7(b)に示す例では、ベース部17の上面に、底面が膜形成面17cとして機能しフラックスの塗膜の所定膜厚に対応した深さの凹部17bが設けられており、また第2のブレード21b*は、凹部17bの底面に摺接する形態となっている。
【0032】
次に図8を参照して、ペースト塗膜形成時およびペースト欠き取り時の第1のブレード21a、第2のブレード21bの切替動作について説明する。フラックス転写ユニット13が作業を行っていない停止状態においては、図5に示すように揺動リンク27が直立で、第1のブレード21a、第2のブレード21bがいずれも膜形成面17aから離隔した中立状態にあり、この状態において第1のブレード21aと第2のブレード21bの間の空間には、フラックス18が貯留されている。
【0033】
図8(a)は、上述の状態から成膜動作を開始する際の状態を示している。すなわち、ロッドレスシリンダ23を駆動して、ブレード保持ヘッド20全体を成膜方向(矢印a方向)に移動させる。このとき、移動部材25は前述の制動機構によって駆動方向と反対方向へ制動されており、且つこの制動力fは揺動支持ピン28廻りの揺動時の揺動抵抗に打ち勝つ大きさに設定されていることから、駆動伝達ピン29を駆動作用点として駆動力が伝達されると、まず揺動リンク27は揺動支持ピン28廻りに矢印b方向へ揺動する。これにより第1のブレード21aの下端部が膜形成面17aに当接し、さらに駆動伝達ピン29を介して駆動力が伝達されることにより、第1のブレード21aが膜形成面17aに摺接した状態で、ブレード保持ヘッド20全体が矢印a方向へ水平移動を開始する。
【0034】
図8(b)は、ブレード保持ヘッド20が移動端まで移動して上述の成膜動作が完了した状態から、掻き取り動作を開始する際の状態を示している。すなわちロッドレスシリンダ23を逆方向に駆動して、ブレード保持ヘッド20全体を掻き取り方向(矢印c方向)に移動させる。このとき、前述の制動機構の作用により、まず揺動リンク27は揺動支持ピン28廻りに矢印d方向へ揺動する。これにより第2のブレード21bの下端部が膜形成面17aに当接し、さらに駆動伝達ピン29を介して駆動力が伝達されることにより、第2のブレード21bが膜形成面17aに摺接した状態で、ブレード保持ヘッド20全体が矢印c方向へ水平移動を開始する。
【0035】
すなわち本実施の形態に示すフラックス転写ユニット13においては、ロッドレスシリンダ23を往復駆動源としてブレード保持ヘッド20を移動部材25とともに往復動させる構成において、移動部材25の往動時に第1のブレード21aまたは第2のブレード21bのいずれか一方のブレードをベース部17に摺接させ、復動時に上述のブレード切り替え動作によって他方のブレードをベース部17に摺接させるようにしている。なおブレード保持ヘッド20の往復動においてどちらを往動の方向とするかは任意であり、また第1のブレード21a、第2のブレード21bの装着位置も任意である。
【0036】
次に図9を参照して、制御系の構成を説明する。図9において、制御部19は、部品実装機構4A、4Bを構成する各要素の動作を制御する。すなわち、XYロボット8A、8B、移載ヘッド10、部品供給部5A、5B、フラックス転写ユニット13、認識部12A、12Bを制御する。このとき、認識部12A、12Bによる認識結果に基づいて、XYロボット8A、8Bが制御され、これにより電子部品の位置ずれが補正される。
【0037】
次に、図10,図11,図12を参照して、フラックス転写ユニット13の動作を説明する。図10(a)は、図8(a)に示す状態、すなわち第1のブレード21aを膜形成面17aに当接させて成膜動作が可能な状態を示している。そしてこの状態から図10(b)に示すように、ロッドレスシリンダ23を駆動して移動ブロック31とともにブレード保持ヘッド20全体を成膜動作方向へ移動させることにより、膜形成面17aには第1のブレード21aによって所定の膜厚tのフラックス18の塗膜が形成される。
【0038】
次いでフラックスの転写動作が実行される。すなわち図11(a)に示すように、電子部品7を各吸着ノズルユニット11の吸着ノズル11aによって保持した移載ヘッド10を、予めベース部17上にフラックス18の塗膜が形成された転写テーブル13aもしく
は転写テーブル13bの上方に移動させる。そして、吸着ノズルユニット11に昇降動作を行わせて、電子部品7をベース部17に対して下降させ、電子部品7の下面に形成されたバンプ7aをフラックス18に接触させる。次いで吸着ノズルユニット11を上昇させることにより、電子部品7の各バンプ7aの下面側には、所定量のフラックス18が転写により供給される。この転写動作により、ベース部17上のフラックス18の塗膜は表面が荒れた状態となり、このままでは次の転写動作を正常に行うことができないため、フラックス18の掻き取り動作が実行される。
【0039】
すなわち、図12(a)に示すように、ロッドレスシリンダ23の駆動方向を逆転させることにより、ブレード保持ヘッド20は図8(b)に示す状態、すなわち第2のブレード21bが膜形成面17aに当接して掻き取り動作が可能な状態となる。そしてこの状態から図12(b)に示すように、ロッドレスシリンダ23を駆動して移動ブロック31とともにブレード保持ヘッド20全体を掻き取り動作方向へ移動させることにより、膜形成面17a上のフラックス18は第2のブレード21bによって掻き取られ、新たな成膜動作が可能な状態となる。
【0040】
上記説明したように、本発明は、2つのブレードによってペーストの膜形成と掻き取りを交互に行う構成において、ブレードを水平移動させる往復動機構の駆動力を利用して、2つのブレードの切替を行う方式を行うようにしたものである。このような構成を採用することにより、従来用いられていた別途駆動源を有するブレード切替え機構を必要とせず、機構簡略化・コンパクト化が実現される。また、移載ヘッド10に装着された複数の吸着ノズル11aに同時一括して転写可能なサイズで、平滑な膜形成面17aを備えた転写テーブル13a、13bをそれぞれの移載ヘッド10に対応させた構成としていることから、電子部品7のバンプ7aに所定量のフラックスを効率よく、且つ高精度で転写塗布することが可能となっている。
【0041】
このように本実施の形態によれば、フラックスなどのペーストの転写による塗布をコンパクトな装置で精度良く行うことができる。なお上記実施の形態においては、転写されるペーストがフラックスである例を示したが、転写により塗布される対象としては、クリーム半田や樹脂接着剤などフラックス以外のペースト状の粘性体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の電子部品実装装置は、フラックスなどのペーストの転写による塗布をコンパクトな装置で精度良く行うことができるという効果を有し、移載ヘッドにによって保持された電子部品にペーストを転写により塗布した後に基板に実装する用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の平面図
【図2】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の斜視図
【図3】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置の構成説明図
【図4】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置の部分平面図
【図5】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置の部分側面図
【図6】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置の部分断面図
【図7】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置のブレードおよび転写テーブルの形状説明図
【図8】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置のブレード保持ヘッドの動作説明図
【図9】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図
【図10】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置の動作説明図
【図11】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置の動作説明図
【図12】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるペースト転写装置の動作説明図
【符号の説明】
【0044】
1 電子部品実装装置
2 搬送路
3 基板
4A、4B 部品実装機構
5A、5B 部品供給部
7 電子部品
8A、8B XYロボット(ヘッド移動機構)
10 移載ヘッド
13 フラックス転写ユニット(ペースト転写装置)
14 ブレード往復動機構
17 ベース部
18 フラックス
20 ブレード保持ヘッド
21a 第1のブレード
21b 第2のブレード
23 ロッドレスシリンダ
25 移動部材
27 揺動リンク
28 揺動支持ピン
29 駆動伝達ピン
32 板バネ部材(制動手段)
33 摺動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品供給部から移載ヘッドによって電子部品を取り出して基板に移送搭載する電子部品実装装置であって、
前記基板を保持して位置決めする基板保持部と、前記移載ヘッドを前記部品供給部と前記基板保持部との間で移動させるヘッド移動機構と、前記ヘッド移動手段による移載ヘッドの移動経路に配設され、前記移載ヘッドに設けられた部品保持部によって保持された電子部品にペーストを転写により塗布するペースト転写装置とを備え、
前記ペースト転写装置は、上面にペースト膜を形成するための平滑な膜形成面を備えたベース部と、前記ベース部に沿って水平移動自在に配設された移動部材と、前記移動部材に揺動支点廻りの揺動が可能に結合され前記移動部材とともに往復動するブレード保持部と、前記ブレード保持部に前記揺動支点を挟んで前記往復動の方向に相隔てて装着された第1のブレードおよび第2のブレードと、前記ブレード保持部に前記揺動支点から隔てられた位置を駆動作用点として往復駆動力を伝達する往復動機構と、前記ブレード保持部の揺動時の揺動抵抗に打ち勝つ大きさの制動抵抗で前記移動部材を前記往復動機構による駆動方向と反対方向に制動する制動手段とを有し、
前記移動部材の往動時に前記第1のブレードまたは第2のブレードのいずれか一方のブレードを前記ベース部に摺接させ、復動時に他方のブレードを前記ベース部に摺接させることを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記第1のブレードは前記膜形成面上に所定膜厚のペースト膜を形成する成膜用のブレードであり、前記第2のブレードは前記膜形成面上に存在するペーストを掻き取る掻き取り用のブレードであることを特徴とする請求項1記載の電子部品実装装置。
【請求項3】
前記第1のブレードの前記ベース部との摺接面に前記所定膜厚に対応した深さの切欠き部が設けられ、前記第2のブレードは前記膜形成面に摺接することを特徴とする請求項2記載の電子部品実装装置。
【請求項4】
前記ベース部の上面に、底面が前記膜形成面として機能し前記所定膜厚に対応した深さの凹部が設けられ、前記第2のブレードは前記凹部の底面に摺接することを特徴とする請求項2記載の電子部品実装装置。
【請求項5】
前記第1のブレードと第2のブレードとの間の空間に、前記膜形成面から掻き取られたペーストを貯溜することを特徴とする請求項1乃至4記載の電子部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−250730(P2007−250730A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70616(P2006−70616)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】