説明

電子部品搭載用の基材への樹脂塗布方法およびその装置

【課題】装置コストが低減し、液状樹脂の塗布均一性に優れ、塗布速度を高速化することが可能な電子部品基材への樹脂塗布方法およびその装置を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂塗布方法は、基材の所定領域に液状樹脂を塗布する方法であって、搬送されている基材を、上方に設けられたワーク固定手段により固定し、搬送されている基材より下方に配置された樹脂タンクに浸漬された樹脂転写部を、液面より上へ上昇させるとともに、前記樹脂転写部の先端に保持された液状樹脂を、前記電子部品基材に接触させ転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品搭載用の基材に液状の樹脂を塗布する方法に関するものであり、特にフィルムキャリアテープの製造工程における裏止め方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコン等の電子機器の小型化、薄型化が進み、搭載される半導体素子等の電子部品も微細化されている。電子部品を搭載する基材として、例えば、フレキシブルで薄膜なテープ部材を用いたテープキャリアが利用されている。
【0003】
一般に、テープキャリアの基材であるテープ部材は、樹脂フィルムに金属箔が貼りあわされて形成されるものであり、テープ部材を搬送機構で搬送するのに用いる貫通孔(以下、スプロケットホールとも示す)と、電子部品を実装するのに用いる貫通孔(以下、デバイスホールとも示す)とが設けられている。
【0004】
このテープ部材に配線を形成する工程において、特定の配線パターンを形成するためエッチング処理を行うが、このとき、エッチング液が上述のデバイスホールからエッチングが不要な領域まで回り込み、必要な配線まで破壊してしまう場合がある。
【0005】
そこで、これを防止するため、デバイスホール付近に樹脂を局部的に塗布してデバイスホールを閉塞する(裏止めする)方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
図3は、前記特許文献1に記載された塗布装置100の断面図を示している。図3(a)、(b)に示すように、この塗布装置100は、正方形突起102群を有する塗布治具101と、ガイドレールで案内されて移動する可動ベース106と、可動ベース106を移動させるステッピングモータ105と、塗布治具101を上下に移動させるステッピングモータ108と、を備えており、塗布治具101がヘッドプレートを介して可動ベース106に取り付けられている構成である。
【0007】
上記構成の塗布装置100は、テープ部材103の貫通孔104(デバイスホール)を閉塞するために、まず、ステッピングモータ105を駆動して、塗布治具101を上昇させた状態で可動ベース106を移動させることにより、テーブル107の位置からレジスト保管槽(図示せず)の上方まで、塗布治具101を移動させる。
【0008】
次に、塗布装置100は、ステッピングモータ108を駆動して、塗布治具101を上下に移動させ、塗布治具101の正方形突起102群の先端に、テ−プ部材103の貫通孔104よりも大きな液玉のレジストを付着する。
【0009】
レジスト付着後、再び、塗布装置100は、ステッピングモータ105を駆動して可動ベ−ス106を移動させることにより、テ−ブル107の上方の位置まで塗布治具を移動させる。その後、図3(c)に示すように、塗布装置100は、ステッピングモ−タ108を駆動して塗布治具101を降下させ、突起102に付着した略球形状のレジストを貫通孔104の周縁に接触させることで、貫通孔104にレジストを付着する。
【0010】
このようにして、塗布装置100は、貫通孔104付近にレジストを局部的に塗布して貫通孔104を閉塞することができるものである。
【0011】
【特許文献1】特開平4−130744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記従来の塗布装置を用いた塗布方法は、一連の塗布動作を行うために、塗布治具101を上下方向(垂直方向)に移動させる工程と、塗布治具101をテープ部材103の搬送方向に対して直交方向に移動させる工程とが繰り返し必要となるため、塗布治具101の移動距離が長くなり、塗布速度の向上が図りにくいものであった。
【0013】
また、前記従来の塗布装置は、塗布治具101を上下方向(垂直方向)に移動させる機構に加えて、可動ベース106やステッピングモータ105等により、塗布治具101をテープ部材103の搬送方向に対して直交方向に移動させる機構を設ける必要があり、部品点数が増加し、装置コストが上昇してしまうものであった。
【0014】
また、前記従来の塗布装置では、塗布治具101の突起102の形状を、テープ部材103の貫通孔104に対応する形状にする必要がある。例えば、テープ部材103の貫通孔104の形状が長方形であれば、塗布治具101の突起102の形状も略同一形状にする必要がある。
【0015】
突起102の形状が長方形状である場合、突起102の先端に形成される液玉は、重力およびレジスト液の表面張力により長方形の中心に集まる作用を受けるため、球状ではなく雫状に形成されてしまうことがある。
【0016】
液玉が雫状に形成されてしまうと、突起102の中心部分でレジストのボリュームが多くなるため、テープ部材103にレジストを塗布する際、長方形状である貫通孔104の中心部分にレジスト量が多く塗布されてしまい、均一な塗布ができず、レジストを不必要に使用してしまう。
【0017】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、装置コストが低減し、液状樹脂の塗布均一性に優れ、塗布速度を高速化することが可能な電子部品基材への樹脂塗布方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の樹脂塗布方法は、基材に液状樹脂を塗布する方法であって、搬送される基材より下方に配置された樹脂タンクに浸漬された樹脂転写部を、液面より上へ上昇させるとともに、前記樹脂転写部の先端に保持された液状樹脂を、前記基材に接触させ転写する方法である。
【0019】
また、本発明の樹脂塗布方法は、基材の所定領域に液状樹脂を塗布する方法であって、搬送される基材を、上方に設けられたワーク固定手段により固定し、搬送される基材より下方に配置された樹脂タンクに浸漬された樹脂転写部を、液面より上へ上昇させるとともに、前記樹脂転写部の先端に保持された液状樹脂を、前記基材に接触させ転写する方法である。
【0020】
このような方法によれば、重力方向に逆らうように塗布動作が行われるので、樹脂転写部の先端の形状に限らず、従来の課題であった雫状の液玉は発生せず、樹脂転写部の上部先端の液状樹脂は重力作用によって平滑化され、均一な塗布ができる。
【0021】
また、従来の塗布方法と比較して、樹脂転写部の移動範囲・動作範囲が短縮されるので、塗布動作が高速化する。
【0022】
また、本発明の樹脂塗布方法は、基材の所定領域に液状樹脂を塗布する方法であって、搬送される基材を、上方に設けられたワーク固定手段により固定し、搬送される基材と前記基材より下方に配置された樹脂タンクとの間に配置された複数の突起部を有する樹脂転写部を、回転動作および上下動作することにより、前記突起部の先端を前記樹脂タンク内に浸漬させるとともに、前記突起部の先端に保持された液状樹脂を、前記基材に接触させて転写する方法である。
【0023】
この方法によれば、複数の突起部を有する樹脂転写部を回転動作と上下動作を組み合わせて動作させることで、電子部品基材に対し、連続して次々と樹脂を塗布することができ、さらに高速な動作が可能となる。
【0024】
また、本発明の樹脂塗布方法は、半導体素子搭載用の貫通穴を有する樹脂フィルムの一方の面に金属箔が貼り合わされてなるテープ部材に液状樹脂を塗布する樹脂塗布方法であって、前記テープ部材の樹脂フィルム側を下面にして搬送される前記テープ部材を、前記金属箔が貼り合わされている側から固定し、搬送される前記テープ部材より下方に配置された樹脂タンクに浸漬された樹脂転写部を、液面より上へ上昇させるとともに、前記樹脂転写部の先端に保持された液状樹脂を、前記テープ部材の穴に接触させて転写する方法である。
【0025】
この方法によれば、重力方向に逆らうように塗布動作が行われるので、従来の課題であった雫状の液玉は発生せず、樹脂転写部の上部先端の液状樹脂は重力の作用によって平滑化されるので、テープ部材の電子部品搭載用の穴に均一に液状樹脂を塗布することができる。また、従来の塗布方法と比較して、樹脂転写部の移動範囲・動作範囲が短縮されるので、塗布動作が高速化する。
【0026】
また、本発明の樹脂塗布方法は、半導体素子搭載用の貫通穴を有する樹脂フィルムの一方の面に金属箔が貼り合わされてなるテープ部材に液状樹脂を塗布する樹脂塗布方法であって、前記テープ部材の樹脂フィルム側を下面にして搬送される前記テープ部材を、前記金属箔が貼り合わされている側から固定し、搬送されるテープ部材と前記テープ部材より下方に配置された樹脂タンクとの間に配置された複数の突起部を有する樹脂転写部を、回転動作および上下動作することにより、前記突起部の先端を前記樹脂タンク内に浸漬させるとともに、前記突起部の先端に保持された液状樹脂を、前記テープ部材の穴に接触させて転写する方法である。
【0027】
この方法によれば、複数の突起部を有する樹脂転写部を回転動作と上下動作を組み合わせて動作させることで、テープ部材の電子部品搭載用の穴に対し、連続して次々と液状樹脂を塗布することができ、さらに高速な動作が可能となる。
【0028】
本発明の塗布装置は、基材に液状樹脂を塗布する塗布装置であって、前記基材を搬送する搬送部と、搬送される基材より下方に配置された樹脂タンクと、を備え、前記樹脂タンクの内部には、前記基材に樹脂を転写する樹脂転写部が配置され、前記樹脂転写部は、上下方向に動作することにより、前記樹脂転写部の先端部に前記樹脂タンク内の液状樹脂が保持されるとともに、前記基材に前記液状樹脂を転写するものである。
【0029】
また、本発明の塗布装置は、半導体素子搭載用の貫通穴を有する樹脂フィルムの一方の面に金属箔が貼り合わされてなるテープ部材に液状樹脂を塗布する塗布装置であって、前記テープ部材を、前記テープ部材の樹脂フィルム側を下面にして搬送する搬送部と、前記テープ部材を、前記金属箔が貼り合わされている側から固定するテープ固定部と、搬送されるテープ部材より下方に配置された樹脂タンク部と、を備え、前記樹脂タンクの内部には、前記テープ部材の穴に樹脂を転写する樹脂転写部が配置され、前記樹脂転写部は、上下方向に動作することにより、前記樹脂転写部の先端部に前記樹脂タンク内の液状樹脂が保持されるとともに、前記テープ部材の穴に前記液状樹脂を転写するものである。
【0030】
この構成により、重力方向に逆らうように塗布動作が行われるので、樹脂転写部の先端の形状に限らず、従来の課題であった雫状の液玉は発生せず、樹脂転写部の上部先端の液状樹脂は重力作用によって平滑化されるので、テープ部材の電子部品搭載用の穴に均一に液状樹脂を塗布することができる。また、従来の塗布方法と比較して、樹脂転写部の移動範囲・動作範囲が短縮されるので、塗布動作が高速化する。
【0031】
また、従来の塗布装置と比較して樹脂転写部の移動範囲・動作範囲が短縮され、機構が簡素化するため、装置コストが安くでき、ひいてはテープキャリア商品のコストダウンを図ることができる。
【0032】
また、本発明の塗布装置は、半導体素子搭載用の貫通穴を有する樹脂フィルムの一方の面に金属箔が貼り合わされてなるテープ部材に液状樹脂を塗布する塗布装置であって、前記テープ部材を、前記テープ部材の樹脂フィルム側を下面にして搬送する搬送部と、前記テープ部材を、前記金属箔が貼り合わされている側から固定するテープ固定部と、前記搬送部により搬送されるテープ部材より下方に配置された樹脂タンク部と、前記搬送部により搬送されるテープ部材と前記樹脂タンク部との間に配置されるとともに、前記テープ部材の穴に液状樹脂を転写する樹脂転写部と、を備え、前記樹脂転写部は、複数の突起部を有し、回転動作および上下動作をすることにより、前記突起部の先端部に前記樹脂タンク内の液状樹脂が保持されるとともに、前記テープ部材の穴に液状樹脂を転写するものである。
【0033】
この構成により、複数の突起部を有する樹脂転写部を回転動作と上下動作を組み合わせて動作させることで、テープ部材の電子部品搭載用の穴に対し、連続して次々と液状樹脂を塗布することができ、さらに高速な動作が可能となる。
【0034】
また、本発明の塗布装置は、上述の塗布装置の構成に、さらに、樹脂を一時保管するリザーブタンクと、前記リザーブタンクから前記樹脂タンクに樹脂を供給するポンプと、前記ポンプと前記樹脂タンクとを接続する供給経路と、前記樹脂タンクと前記リザーブタンクとに接続して、前記樹脂タンク内の液面を一定に制御するオーバーフロー経路と、を備えるものとしても良い。
【0035】
この構成により、リザーブタンク内の液状樹脂は、ポンプによって樹脂タンクに供給される一方で、樹脂タンク内の液状樹脂のうち所定の液面高さを超えた液状樹脂は、オーバーフロー経路によりリザーブタンク11に回収される。よって、樹脂タンク内の液面は、一定レベルに安定して保つことができる
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、装置コストが低減し、液状樹脂の塗布均一性に優れ、塗布速度を高速化することが可能な電子部品基材への樹脂塗布方法およびその装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、TAB(Tape Automated Bonding)用テープキャリアの製造における配線形成ステップの内、デバイスホールへの裏止め樹脂形成に本発明を適用している。
【0038】
図1(a)は、本実施の形態1の塗布装置の正面図であり、図1(b)は、図1中のY−Y´線の断面図である。
【0039】
図1に示すように、本実施の形態1の塗布装置は、テープ部材1を搬送する搬送機構と、テープ部材1をテープ固定機構(ワーク固定手段6)と、液状樹脂を蓄えるための樹脂タンク8と、を有するものである。
【0040】
テープ部材1は、長尺の長方形状の樹脂フィルムに、銅又は銅合金からなる金属箔が貼りあわされたものであり、テープ部材1を搬送機構で搬送するのに用いる複数の貫通孔(以下、スプロケットホールとも示す)と、半導体部品を実装するのに用いる穴(以下、デバイスホールとも示す)とを有している。
【0041】
スプロケットホールは、樹脂フィルムの両長辺側に一定間隔で周期的に形成されている。一方、デバイスホールは、樹脂フィルムの中央付近に一定間隔で周期的に形成されている。デバイスホールの形状は、半導体部品の形状に対応する形状にすれば良く、例えば、正方形状、長方形状などがある。
【0042】
搬送機構は、テープ部材1を水平に保持する複数の支持ロール2と、回転駆動する駆動ロール3と、駆動ロールに取り付けられているピン4と、駆動ロール5からテープ部材1が脱落しないように補助する補助ロール5と、を備えるものである。ピン4は、テープ部材1のスプロケットホールに着脱可能な程度に余裕を有して嵌る形状である。
【0043】
テープ部材1は、金属箔が貼られていない側を下面に、すなわちデバイスホールが樹脂タンク8の液面に露出するように、支持ロール2により水平に保持されている。また、テープ部材1は、複数あるスプロケットホールの一部が、駆動ロール3のピン4に嵌合しており、搬送機構は、駆動ロール3が回転することで、テープ部材1が、図1(a)中のX方向に搬送することができる機構となっている。
【0044】
なお、搬送機構の上流側にはテンション機構(図示せず)などが設けられ、テープ部材1が搬送中に撓みなどを生じさせない構造としている。
【0045】
ワーク固定手段6は、搬送されるテープ部材1の上方に配置されており、ユニット上下機構(図示せず)によって、上下に可動する構造となっている。ワーク固定手段6のうち、テープ部材1と接触する接触面には複数の負圧発生穴(図示せず)が設けられており、テープ部材1と近接させた状態から、負圧発生によって、吸着固定できる構造となっている。
【0046】
ワーク固定手段6が、負圧を解除すると、テープ部材1はワーク固定手段6から切り離され、元の支持ロール2に保持された状態に戻る。この構成により、樹脂塗布時においてテープ部材1を安定して固定することができる。また、駆動ロール3とワーク固定手段6の動作を連動させることで、搬送と固定を瞬時に切り替えることができる。
【0047】
樹脂タンク8は、デバイスホールを裏止めするために用いる液状樹脂を蓄えるものであり、搬送されるテープ部材1の下方に配置されている。また、図1(b)に示すように、樹脂タンク8は、オーバーフローポート9と供給ポート10とが設けられ、供給経路16および回収経路17を介してリザーブタンク11にそれぞれ接続されている。
【0048】
リザーブタンク11内の液状樹脂7は、ポンプ12によって樹脂タンク8に供給され、オーバーフローポート9よりリザーブタンク11に回収される。この構成により、樹脂タンク8内の液面は常時一定レベルに安定して保つことができる構造となっている。
【0049】
樹脂タンク8の内部には、デバイスホールに樹脂を転写する部材である塗布ヘッド13(樹脂転写部)が配置され、塗布ヘッド保持部材14を介して昇降装置15と連結されている。
【0050】
昇降装置15により、塗布ヘッド13の上部先端の移動範囲は、最下降位置が、樹脂タンク8内の液状樹脂7の液面より約5mm程度下がるように設定され、また、最上昇位置がテープ部材1に接触する位置、あるいはテープ部材1と近接した位置に停止するように設定されている。この構成により、塗布ヘッド13を液面下よりテープ部材1に向けて上下自在に突き出すことができる。
【0051】
次に、以上の構成の塗布装置を用いた樹脂塗布方法について、工程順に説明する。
【0052】
テープ部材1が支持ロール2に水平保持された状態において、まず、駆動ロール3の回転によって、塗布ヘッド13の中心とテープ部材1に形成されたデバイスホールの中心とが合致する位置、すなわち、樹脂塗布位置まで搬送し、その後、搬送を停止する。
【0053】
次に、テープ部材1の上昇位置に待機していたワーク固定手段6を、テープ部材1と近接する位置まで下降させ、負圧発生手段(図示せず)によって吸着固定する。
【0054】
そして、塗布ヘッド13を液面下約5mm程度の位置から昇降装置15の上昇動作によって突き上げる。このとき、塗布ヘッド13の上部先端には表面張力や重力などの作用によって、一定量の液状樹脂7が均一に付着した状態となる。
【0055】
塗布ヘッド13を、そのままさらに上昇させ続け、テープ部材1と接触させる位置あるいはテープ部材1と近接した位置まで到達させ、塗布ヘッド13の上部先端に付着した一定量の液状樹脂を、テープ部材1に形成されたデバイスホール部に転写する。
【0056】
その後、塗布ヘッド13を昇降装置15の下降動作によって引き下げ、ワーク固定手段6の負圧発生手段(図示せず)を解除する。これにより、テープ部材1は元の支持ロール2に保持された状態に戻り1サイクル動作が終了する。以上の動作を繰り返すことで、長尺状のテープ部材1に対し、連続して裏止めのための液状樹脂を塗布することができる。
【0057】
このように、重力方向に逆らうように塗布動作を行うことで、従来の課題であった雫状の液玉は発生せず、塗布ヘッド13上部先端の液状樹脂は重力作用によって平滑化され、さらに均一な塗布が出来るという効果を発揮する。
【0058】
また、従来の裏止め装置と比較して塗布ヘッドの移動範囲・動作範囲が短縮され、高速動作が可能となる。さらに、機構が簡素化するため、装置コストが安くでき、ひいてはテープキャリア商品のコストダウンを図ることができる。
【0059】
(実施の形態2)
次に、本実施の形態2について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、上述した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施の形態2の塗布装置の特徴は、実施の形態1の塗布装置と比べてさらに高速動作を可能とした点にある。
【0060】
図2(a)は本発明における第2の実施形態を示す正面図であり、図2(b)は、図2(a)中のZ−Z´線の断面図である。上述のように、搬送機構の構成と、テープ固定手段6の構成と、樹脂タンク8およびリザーブタンク11の構成については第1の実施形態と同様であるため省略する。
【0061】
本実施の形態2の塗布装置では、樹脂転写部の部材として、樹脂タンク8内に多段塗布ヘッド18が配置されている。図2(b)に示すように、多段塗付ヘッド18は、円形の中心部材と、その中心部材の周囲に形成された複数の突起部25とから形成されており、その多段塗布ヘッド18は、多段塗布ヘッド保持部材19と、第1のプーリー20と、第2のプーリー21と、モーター22と、ブラケット23とを介して昇降装置15に連結されている。
【0062】
第1のプーリー20と第2のプーリー21は、回転伝達手段24によって連結され、モーター22の回転によって多段塗布ヘッド18が回転できるように構成されている。
【0063】
モーター22は、任意の回転角で停止することができるものが望ましく、パルスモーターなどを使用することで容易に回転および停止制御を行うことができる。
【0064】
多段ヘッド18は、搬送されるテープ部材1と樹脂タンク8との間に配置されており、多段塗布ヘッド18に設けられている突起部25は、液状樹脂7の液面およびテープ部材1のどちらにも接触しない状態を上下方向の中間位置として昇降装置15により上下自在に動作する構成となっている。
【0065】
多段塗布ヘッド18は、いずれかの突起部25の先端が真下にあるときに昇降装置15によって最下降位置に到達すると、突起部25の先端が、樹脂タンク8内の液状樹脂7の液面に接触する。
【0066】
また、多段塗布ヘッド18は、いずれかの突起部25が真上にあるときに昇降装置15によって最上位置に達すると、突起部25の先端が、テープ部材1と接触する位置あるいはテープ部材1と近接した位置になるように構成されている。
【0067】
次に、以上の構成の塗布装置を用いた樹脂塗布方法について、工程順に説明する。テープ部材1の搬送動作と、テープ固定手段6の動作については、第1の実施形態と同様であるため省略する。
【0068】
テープ部材1をテープ固定手段6によって吸着固定した後、多段塗布ヘッド18の突起部25を、テープ部材1と接触する位置あるいは近接する位置まで上昇させると、突起部25の先端に付着している液状樹脂7がテープ部材1に形成されたデバイスホール部に転写される。
【0069】
転写終了後、多段塗布ヘッド18を最下降位置まで下降することで、樹脂タンク8液面に突起部25を浸漬し、次々回に転写する液状樹脂7を突起部25に付着させる。
【0070】
続いて、多段塗布ヘッド18を90°回転させ次回転写する突起部25を真上に回転移動させる。次に、テープ固定手段6の負圧発生手段(図示せず)を解除して、テープ部材1を元の支持ロール2に保持された状態に戻し1サイクルが終了する。以上の動作を繰り返すことで、長尺状のテープ部材1に対し、連続して裏止めのための液状樹脂を塗布することができる。
【0071】
このように、突起部25を設けた多段塗布ヘッド18の回転動作と上下動作を組み合わせることで、長尺状のテープ部材1に対し、連続して次々と樹脂を塗布することができ、また、第1の実施形態に比べて、さらに高速な動作が可能となる。
【0072】
また、実施の形態1と同様に、重力方向に逆らうように塗布動作を行うことで、従来の課題であった雫状の液玉は発生せず、多段塗布ヘッド18に設けられた突起部25先端の液状樹脂7は重力作用によって平滑化され、さらに均一な塗布が出来るという効果を発揮する。
【0073】
また、従来の塗布装置および第1の実施形態と比較して動作範囲が短縮され、さらなる高速動作が可能となる。また、機構がシンプルであるため、装置コストが安くでき、ひいてはテープキャリア商品のコストダウンを図ることができる。
【0074】
なお、上述の実施の形態1〜2の説明では、搬送機構が停止した状態で塗布動作を行う例について説明したが、これに限らず、テープ固定機構により固定しつつテープ部材を搬送方向に一定距離だけ移動させるとともに塗布を行うものとしても良い。これにより、樹脂転写部の先端の形状より幅広の領域に樹脂を転写することができる。また、本発明は、フレキシブル配線基板の他、リジッドの基板に用いることも可能である。
【0075】
なお、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、装置コストが低減し、液状樹脂の塗布均一性に優れ、塗布速度を高速化することが可能な電子部品基材への樹脂塗布方法およびその装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】(a)本実施の形態1の塗布装置の正面図、(b)図1中のY−Y´線の断面図
【図2】(a)本発明における第2の実施形態を示す正面図、(b)図2(a)中のZ−Z´線の断面図
【図3】(a)従来の塗布装置の部分断面図、(b)従来の塗布装置の部分平面図、(c)塗布部分の拡大図
【符号の説明】
【0078】
1 テープ部材
2 支持ロール
3 駆動ロール
4 ピン
5 補助ロール
6 ワーク固定手段
7 裏止め樹脂
8 樹脂タンク
9 オーバーフローポート
10 供給ポート
11 リザーブタンク
12 ポンプ
13 塗布ヘッド
14 塗布ヘッド保持部材
15 昇降装置
16 供給経路
17 回収経路
18 多段塗布ヘッド
19 多段塗布ヘッド保持部材
20 第1のプーリー
21 第2のプーリー
22 モーター
23 ブラケット
24 回転伝達手段
25 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に液状樹脂を塗布する方法であって、
搬送される基材より下方に配置された樹脂タンクに浸漬された樹脂転写部を、液面より上へ上昇させるとともに、前記樹脂転写部の先端に保持された液状樹脂を、前記基材に接触させ転写する樹脂塗布方法。
【請求項2】
基材の所定領域に液状樹脂を塗布する方法であって、
搬送される基材を、上方に設けられたワーク固定手段により固定し、
搬送される基材より下方に配置された樹脂タンクに浸漬された樹脂転写部を、液面より上へ上昇させるとともに、前記樹脂転写部の先端に保持された液状樹脂を、前記基材に接触させ転写する樹脂塗布方法。
【請求項3】
基材の所定領域に液状樹脂を塗布する方法であって、
搬送される基材を、上方に設けられたワーク固定手段により固定し、
搬送される基材と前記基材より下方に配置された樹脂タンクとの間に配置された複数の突起部を有する樹脂転写部を、回転動作および上下動作することにより、前記突起部の先端を前記樹脂タンク内に浸漬させるとともに、前記突起部の先端に保持された液状樹脂を、前記基材に接触させて転写する樹脂塗布方法。
【請求項4】
半導体素子搭載用の貫通穴を有する樹脂フィルムの一方の面に金属箔が貼り合わされてなるテープ部材に液状樹脂を塗布する樹脂塗布方法であって、
前記テープ部材の樹脂フィルム側を下面にして搬送される前記テープ部材を、前記金属箔が貼り合わされている側から固定し、
搬送される前記テープ部材より下方に配置された樹脂タンクに浸漬された樹脂転写部を、液面より上へ上昇させるとともに、前記樹脂転写部の先端に保持された液状樹脂を、前記テープ部材の穴に接触させて転写する樹脂塗布方法。
【請求項5】
半導体素子搭載用の貫通穴を有する樹脂フィルムの一方の面に金属箔が貼り合わされてなるテープ部材に液状樹脂を塗布する樹脂塗布方法であって、
前記テープ部材の樹脂フィルム側を下面にして搬送される前記テープ部材を、前記金属箔が貼り合わされている側から固定し、
搬送されるテープ部材と前記テープ部材より下方に配置された樹脂タンクとの間に配置された複数の突起部を有する樹脂転写部を、回転動作および上下動作することにより、前記突起部の先端を前記樹脂タンク内に浸漬させるとともに、前記突起部の先端に保持された液状樹脂を、前記テープ部材の穴に接触させて転写する樹脂塗布方法。
【請求項6】
基材に液状樹脂を塗布する塗布装置であって、
前記基材を搬送する搬送部と、
搬送される基材より下方に配置された樹脂タンクと、
を備え、
前記樹脂タンクの内部には、前記基材に樹脂を転写する樹脂転写部が配置され、
前記樹脂転写部は、上下方向に動作することにより、前記樹脂転写部の先端部に前記樹脂タンク内の液状樹脂が保持されるとともに、前記基材に前記液状樹脂を転写する塗布装置。
【請求項7】
半導体素子搭載用の貫通穴を有する樹脂フィルムの一方の面に金属箔が貼り合わされてなるテープ部材に液状樹脂を塗布する塗布装置であって、
前記テープ部材を、前記テープ部材の樹脂フィルム側を下面にして搬送する搬送部と、
前記テープ部材を、前記金属箔が貼り合わされている側から固定するテープ固定部と、
搬送されるテープ部材より下方に配置された樹脂タンク部と、
を備え、
前記樹脂タンクの内部には、前記テープ部材の穴に樹脂を転写する樹脂転写部が配置され、
前記樹脂転写部は、上下方向に動作することにより、前記樹脂転写部の先端部に前記樹脂タンク内の液状樹脂が保持されるとともに、前記テープ部材の穴に前記液状樹脂を転写する塗布装置。
【請求項8】
半導体素子搭載用の貫通穴を有する樹脂フィルムの一方の面に金属箔が貼り合わされてなるテープ部材に液状樹脂を塗布する塗布装置であって、
前記テープ部材を、前記テープ部材の樹脂フィルム側を下面にして搬送する搬送部と、
前記テープ部材を、前記金属箔が貼り合わされている側から固定するテープ固定部と、
前記搬送部により搬送されるテープ部材より下方に配置された樹脂タンク部と、
前記搬送部により搬送されるテープ部材と前記樹脂タンク部との間に配置されるとともに、前記テープ部材の穴に液状樹脂を転写する樹脂転写部と、
を備え、
前記樹脂転写部は、複数の突起部を有し、回転動作および上下動作をすることにより、前記突起部の先端部に前記樹脂タンク内の液状樹脂が保持されるとともに、前記テープ部材の穴に液状樹脂を転写する塗布装置。
【請求項9】
樹脂を一時保管するリザーブタンクと、
前記リザーブタンクから前記樹脂タンクに樹脂を供給するポンプと、
前記ポンプと前記樹脂タンクとを接続する供給経路と、
前記樹脂タンクと前記リザーブタンクとに接続され、前記樹脂タンク内の液面を一定に制御するオーバーフロー経路と、
を備える請求項7または請求項8に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−188516(P2008−188516A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24263(P2007−24263)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】