説明

電子部品積層体の製造方法

【課題】本発明は、半導体チップ又はウエハの接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量を調整し、小型化しても高精度かつ信頼性の高い電子部品積層体を得ることのできる電子部品積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体チップ又はウエハが、電子部品用接着剤を介して基板、他の半導体チップ又は他のウエハに接合された電子部品積層体の製造方法であって、基板、他の半導体チップ又は他のウエハに電子部品用接着剤を塗布する塗布工程(1)と、加熱及び押圧しながら、前記塗布した電子部品用接着剤を介して、前記基板、他の半導体チップ又は他のウエハ上に半導体チップ又はウエハを積層し、前記電子部品用接着剤の濡れ広がった領域を、前記半導体チップ又はウエハの接合領域の60%以上100%未満とした後、押圧を解除するボンディング工程(2)と、前記電子部品用接着剤を加熱することにより、前記半導体チップ又はウエハの接合領域全体に、前記電子部品用接着剤を均一に濡れ広がらせる工程(3)と、前記電子部品用接着剤を硬化させる硬化工程(4)とを有し、前記塗布工程(1)において、前記電子部品用接着剤を塗布する領域は、前記半導体チップ又はウエハの接合領域の40〜90%であり、前記電子部品用接着剤は、E型粘度計を用いて25℃にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が20〜100Pa・sであり、E型粘度計を用いてボンディング温度にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が4〜25Pa・s、0.5rpmにおける粘度が5rpmにおける粘度の2〜4倍である電子部品積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ又はウエハの接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量を調整し、小型化しても高精度かつ信頼性の高い電子部品積層体を得ることのできる電子部品積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージの小型化への要望に伴い、半導体チップ又はウエハは極めて薄い薄膜となっており、半導体チップに接続されるボンディングワイヤも微細化している。また、極めて薄い半導体チップ又はウエハを作製できることから、複数の半導体チップを積層して多層の半導体チップ積層体とする3次元実装への動きも進んでいる。
【0003】
しかしながら、多層の半導体チップ積層体においては、単に同じサイズの半導体チップを積層しただけでは下層の半導体チップに接続されたボンディングワイヤと上層の半導体チップとが接触してしまい、ワイヤーボンディングすることができないことがある。そこで、従来、大きさの異なる半導体チップを積層する方法、又は、半導体チップの間に空隙を形成する方法等が行われてきたが、半導体チップを損傷なく、かつ、水平を保って積層することは容易ではなかった。
【0004】
これに対して、信頼性の高い半導体チップ積層体を得ることを目的として、下層半導体チップのワイヤを保護する方法、又は、水平を保って積層することを目的として、半導体チップ間にスペーサーチップを介在させる方法等が検討されている。例えば、特許文献1には、複数の半導体チップを積層する際に、一方の半導体チップの他方の半導体チップを積層する面に、スペーサーを散点状に形成した後、他方の半導体チップを積層する方法が開示されている。また、特許文献2には、複数の半導体チップを積層する際に、接続する半導体チップの間にダミーチップ及びスペーサーを積層させる方法が開示されている。
【0005】
しかし、近年、半導体パッケージの小型化はますます進行し、半導体チップからワイヤーボンディングパッドまでの距離が数百μm程度にまで短くなってきていることから、特許文献1又は特許文献2の方法では対処できない新たな問題が生じている。
【0006】
即ち、半導体チップからワイヤーボンディングパッドまでの距離が短くなるのに伴い、半導体チップを接合する接着剤のはみ出した部分、いわゆるフィレットと呼ばれる部分により、ワイヤーボンディングすることが困難になってきている。小型化した半導体パッケージにおいては、接着剤のはみ出した部分の接合領域からの距離は、200μm以下程度であることが求められている。一方、接着剤のはみ出しを防ぐために接着剤の使用量を減らした場合には、半導体チップの接合領域全体に接着剤が濡れ広がらず、モールド封止後に空洞が生じ、充分な信頼性を有する半導体チップ積層体を得ることが困難である。
また、これらの問題を解決するためには、ペースト状の接着剤に代えて接着フィルムを用いることが考えられるが、接着フィルムは製造時にフィルム状に成形する工程を必要とし、接着剤に比べてコストが高いことが問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−179200号公報
【特許文献2】特開2006−66816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、半導体チップ又はウエハの接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量を調整し、小型化しても高精度かつ信頼性の高い電子部品積層体を得ることのできる電子部品積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、半導体チップ又はウエハが、電子部品用接着剤を介して基板、他の半導体チップ又は他のウエハに接合された電子部品積層体の製造方法であって、基板、他の半導体チップ又は他のウエハに電子部品用接着剤を塗布する塗布工程(1)と、加熱及び押圧しながら、前記塗布した電子部品用接着剤を介して、前記基板、他の半導体チップ又は他のウエハ上に半導体チップ又はウエハを積層し、前記電子部品用接着剤の濡れ広がった領域を、前記半導体チップ又はウエハの接合領域の60%以上100%未満とした後、押圧を解除するボンディング工程(2)と、前記電子部品用接着剤を加熱することにより、前記半導体チップ又はウエハの接合領域全体に、前記電子部品用接着剤を均一に濡れ広がらせる工程(3)と、前記電子部品用接着剤を硬化させる硬化工程(4)とを有し、前記塗布工程(1)において、前記電子部品用接着剤を塗布する領域は、前記半導体チップ又はウエハの接合領域の40〜90%であり、前記電子部品用接着剤は、E型粘度計を用いて25℃にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が20〜100Pa・sであり、E型粘度計を用いてボンディング温度にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が4〜25Pa・s、0.5rpmにおける粘度が5rpmにおける粘度の2〜4倍である電子部品積層体の製造方法である。
以下、本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、半導体チップ又はウエハが、電子部品用接着剤を介して基板、他の半導体チップ又は他のウエハに接合された電子部品積層体の製造方法において、所定の粘度特性を有する電子部品用接着剤を用い、かつ、所定の塗布工程(1)、ボンディング工程(2)、電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)及び硬化工程(4)を行うことで、半導体チップ又はウエハの接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量を調整し、小型化しても高精度かつ信頼性の高い電子部品積層体を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の電子部品積層体の製造方法は、半導体チップ又はウエハが、電子部品用接着剤を介して基板、他の半導体チップ又は他のウエハに接合された電子部品積層体の製造方法である。
なお、本発明の電子部品積層体の製造方法では、例えば、基板に対して半導体チップを接合してもよく、例えば基板に接合された半導体チップ等の他の半導体チップに対して更に半導体チップを接合してもよく、ウエハに対して半導体チップを接合してもよく、また、基板に対してウエハを接合してもよく、例えば基板に接合されたウエハ等の他のウエハに対して更にウエハを接合してもよい。
【0012】
本発明の電子部品積層体の製造方法では、まず、基板、他の半導体チップ又は他のウエハに電子部品用接着剤を塗布する塗布工程(1)を行う。
【0013】
上記塗布工程(1)において、上記電子部品用接着剤を塗布する領域は、半導体チップ又はウエハの接合領域(本明細書中、単に、接合領域ともいう)の40〜90%である。
なお、本明細書中、上記電子部品用接着剤を塗布する領域とは、塗布した電子部品用接着剤の最外部を直線で描き、その直線によって形成される1つ以上の多角形の内部の面積及びその面積の和を意味する。
上記電子部品用接着剤を塗布する領域が接合領域の40%未満であると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、上記電子部品用接着剤が接合領域全体に均一に濡れ広がらず、モールド封止後に空洞が生じるため、得られる電子部品積層体は信頼性に欠ける。上記電子部品用接着剤を塗布する領域が接合領域の90%を超えると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量が多くなり、得られる電子部品積層体に対してワイヤーボンディングすることが困難となる。上記電子部品用接着剤を塗布する領域は、接合領域の60%以上、90%以下であることが好ましい。
【0014】
上記塗布工程(1)において、上記電子部品用接着剤の塗布形状は特に限定されず、例えば、クロス形状、ダブルクロス形状、トリプルクロス形状、スノークロス形状、ダブルワイ形状等が挙げられる。なお、本明細書中、クロス形状とは十字型の形状を意味し、ダブルクロス形状とは、2つの十字型の形状が重なった形状を意味し、トリプルクロス形状とは、3つの十字型の形状が重なった形状を意味する。また、本明細書中、スノークロス形状とは、ダブルクロス形状の一方の端部がY字状になった形状を意味し、ダブルワイ形状とは、2つのY字状の端部を結合した形状を意味する。
【0015】
上記電子部品用接着剤をクロス形状又はダブルクロス形状に塗布する場合には、該クロス形状又はダブルクロス形状の対角線の長さが、接合領域の対角線の長さの70〜90%であることが好ましい。上記クロス形状又はダブルクロス形状の対角線の長さが、接合領域の対角線の長さの70%未満であると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、上記電子部品用接着剤が接合領域全体に均一に濡れ広がらず、モールド封止後に空洞が生じるため、得られる電子部品積層体は信頼性に欠けることがある。上記クロス形状又はダブルクロス形状の対角線の長さが、接合領域の対角線の長さの90%を超えると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量が多くなり、得られる電子部品積層体に対してワイヤーボンディングすることが困難となることがある。
【0016】
上記塗布工程(1)における塗布方法は特に限定されず、例えば、精密ノズルを取り付けたシリンジ等とディスペンサ等を組み合わせて用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0017】
上記電子部品用接着剤は、硬化性化合物及び硬化剤を含有する接着組成物を含有することが好ましい。
上記硬化性化合物は特に限定されず、付加重合、重縮合、重付加、付加縮合、開環重合反応により硬化する化合物を用いることができる。上記硬化性化合物として、具体的には、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、キシレン樹脂、アルキル−ベンゼン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、珪素樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性化合物が挙げられる。なかでも、得られる電子部品積層体の信頼性及び接合強度に優れていることから、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が好ましく、イミド骨格を有するエポキシ樹脂がより好ましい。
【0018】
上記エポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、NBR変性エポキシ樹脂、CTBN変性エポキシ樹脂、及び、これらの水添化物等が挙げられる。なかでも、粘度の低い電子部品用接着剤が得られることから、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち、市販品としては、例えば、EXA−830−LVP、EXA−830−CRP(以上、DIC社製)等が挙げられる。また、上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち、市販品としては、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。また、上記ポリエーテル変性エポキシ樹脂のうち、市販品としては、EX−931(ナガセケムテックス社製)、EXA−4850−150(DIC社製)、EP−4005(アデカ社製)等が挙げられる。
【0020】
上記硬化性化合物は、吸湿率の好ましい上限が1.5%であり、より好ましい上限が1.1%である。このような吸湿率を有する硬化性化合物は、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0021】
上記硬化剤は特に限定されず、従来公知の硬化剤を上記硬化性化合物に合わせて適宜選択することができる。上記硬化性化合物としてエポキシ樹脂を用いる場合、上記硬化剤として、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記硬化剤の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物の官能基と等量反応する硬化剤を用いる場合、上記硬化性化合物の官能基量に対して、60〜100当量であることが好ましい。また、触媒として機能する硬化剤を用いる場合、上記硬化剤の配合量は、上記硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。
【0023】
上記接着組成物においては、硬化速度又は硬化物の物性等を調整するために、上記硬化剤に加えて硬化促進剤を添加してもよい。
【0024】
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、硬化速度又は硬化物の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、又は、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、上記硬化促進剤として、例えば、2MZ、2MZ−P、2PZ、2PZ−PW、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNS、2PZCNS−PW、2MZ−A、2MZA−PW、C11Z−A、2E4MZ−A、2MAOK−PW、2PZ−OK、2MZ−OK、2PHZ、2PHZ−PW、2P4MHZ、2P4MHZ−PW、2E4MZ・BIS、VT、VT−OK、MAVT、MAVT−OK(以上、四国化成工業社製)等も挙げられる。
【0027】
上記硬化促進剤の配合量は特に限定されず、上記硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。
【0028】
上記硬化性化合物としてエポキシ樹脂を用い、かつ、上記硬化剤と上記硬化促進剤とを併用する場合、用いる硬化剤の配合量は、用いるエポキシ樹脂中のエポキシ基に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。上記硬化剤の配合量が理論的に必要な当量を超えると、電子部品用接着剤を硬化して得られる硬化物から、水分によって塩素イオンが溶出しやすくなることがある。即ち、硬化剤が過剰であると、例えば、得られる電子部品用接着剤の硬化物から熱水で溶出成分を抽出した際に、抽出水のpHが4〜5程度となるため、エポキシ樹脂から塩素イオンが多量溶出することがある。従って、得られる電子部品用接着剤の硬化物1gを、100℃の純水10gで2時間浸した後の純水のpHが6〜8であることが好ましく、pHが6.5〜7.5であることがより好ましい。
【0029】
上記接着組成物は、粘度を低減させるために希釈剤を含有してもよい。
上記希釈剤は、エポキシ基を有することが好ましく、1分子中のエポキシ基数の好ましい下限が2、好ましい上限が4である。1分子中のエポキシ基数が2未満であると、電子部品用接着剤の硬化後に充分な耐熱性が発現しないことがある。1分子中のエポキシ基数が4を超えると、硬化によるひずみが発生したり、未硬化のエポキシ基が残存したりすることがあり、これにより、接合強度の低下又は繰り返しの熱応力による接合不良が発生することがある。上記希釈剤の1分子中のエポキシ基数のより好ましい上限は3である。
また、上記希釈剤は、芳香環及び/又はジシクロペンタジエン構造を有することが好ましい。
【0030】
上記希釈剤は、120℃又は150℃での重量減少量の好ましい上限が1%である。120℃又は150℃での重量減少量が1%を超えると、電子部品用接着剤の硬化中又は硬化後に未反応物が揮発してしまい、生産性又は得られる電子部品積層体の性能に悪影響を与えることがある。
また、上記希釈剤は、他の硬化性化合物よりも硬化開始温度が低く、硬化速度が大きいことが好ましい。
【0031】
上記接着組成物における希釈剤の配合量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は20重量%である。上記希釈剤の配合量が上記範囲外であると、接着組成物の粘度を充分に低減できないことがある。
【0032】
上記電子部品用接着剤は、CV値が10%以下のスペーサー粒子を含有することが好ましい。
上記CV値が10%以下のスペーサー粒子を含有することにより、例えば、本発明の電子部品積層体の製造方法を用いて多層の電子部品積層体を製造する場合に、ダミーチップ等を介在させることなく電子部品間距離を一定に保つことが可能となる。
【0033】
上記スペーサー粒子のCV値が10%を超えると、粒子径のばらつきが大きいことから、電子部品間距離を一定に保つことが困難となり、スペーサー粒子としての機能を充分に果たせないことがある。上記スペーサー粒子のCV値のより好ましい上限は6%、更に好ましい上限は4%である。
なお、本明細書においてCV値とは、下記式(1)により求められる数値のことである。
粒子径のCV値(%)=(σ2/Dn2)×100 (1)
式(1)中、σ2は粒子径の標準偏差を表し、Dn2は数平均粒子径を表す。
また、本明細書において電子部品間距離とは、基板と半導体チップとの距離と、半導体チップ同士の距離と、基板とウエハとの距離と、ウエハ同士の距離と、半導体チップとウエハとの距離とを意味する。
【0034】
上記CV値が10%以下のスペーサー粒子(以下、単に、スペーサー粒子ともいう)の平均粒子径は特に限定されず、所望の電子部品間距離が達成可能となるような粒子径を選択することができるが、好ましい下限が5μm、好ましい上限が200μmである。上記スペーサー粒子の平均粒子径が5μm未満であると、例えば、本発明の電子部品積層体の製造方法を用いて多層の電子部品積層体を製造する場合に、スペーサー粒子の粒子径程度にまで電子部品間距離を縮めることが困難となり、電子部品同士が水平を保てないことがある。上記スペーサー粒子の平均粒子径が200μmを超えると、例えば、本発明の電子部品積層体の製造方法を用いて多層の電子部品積層体を製造する場合に、電子部品間距離が必要以上に大きくなることがある。上記スペーサー粒子の平均粒子径のより好ましい下限は9μm、より好ましい上限は50μmである。
【0035】
上記スペーサー粒子の平均粒子径は、電子部品用接着剤に添加するスペーサー粒子以外の固体成分の平均粒子径の1.2倍以上であることが好ましい。上記スペーサー粒子の平均粒子径が上記スペーサー粒子以外の固体成分の平均粒子径の1.2倍未満であると、例えば、本発明の電子部品積層体の製造方法を用いて多層の電子部品積層体を製造する場合に、電子部品間距離を確実にスペーサー粒子の粒子径程度にまで縮めることが困難となることがある。上記スペーサー粒子の平均粒子径は、上記スペーサー粒子以外の固体成分の平均粒子径の1.3倍以上であることがより好ましい。
【0036】
上記スペーサー粒子は、下記式(2)で表されるK値の好ましい下限が980N/mm、好ましい上限が4900N/mmである。
K=(3/√2)・F・S−3/2・R−1/2 (2)
式(2)中、F、Sはそれぞれスペーサー粒子の10%圧縮変形における荷重値(kgf)、圧縮変位(mm)を表し、Rは該スペーサー粒子の半径(mm)を表す。
【0037】
なお、上記K値は以下の測定方法により測定することができる。
まず、平滑表面を有する鋼板の上にスペーサー粒子を散布した後、その中から1個のスペーサー粒子を選び、微小圧縮試験機を用いてダイヤモンド製の直径50μmの円柱の平滑な端面でスペーサー粒子を圧縮する。この際、圧縮荷重を電磁力として電気的に検出し、圧縮変位を作動トランスによる変位として電気的に検出する。そして、得られた圧縮変位−荷重の関係から10%圧縮変形における荷重値、圧縮変位をそれぞれ求め、得られた結果からK値を算出する。
【0038】
上記スペーサー粒子は20℃、10%の圧縮変形状態から解放した時の圧縮回復率の好ましい下限が20%である。このような圧縮回復率を有するスペーサー粒子を用いることにより、例えば、本発明の電子部品積層体の製造方法を用いて多層の電子部品積層体を製造する場合であって、かつ、積層された電子部品間に平均粒子径よりも大きなスペーサー粒子が存在する場合にも、圧縮変形により形状を回復してギャップ調整材として働かせることができる。従って、より安定した一定間隔で半導体チップ又はウエハを水平に積層することができる。
【0039】
なお、上記圧縮回復率は、以下の測定方法により測定することができる。
上記K値の測定の場合と同様の手法によって圧縮変位を作動トランスによる変位として電気的に検出し、反転荷重値まで圧縮したのち荷重を減らしていき、その際の荷重と圧縮変位との関係を測定する。得られた測定結果から圧縮回復率を算出する。ただし、除荷重における終点は荷重値ゼロではなく、0.1g以上の原点荷重値とする。
【0040】
上記スペーサー粒子の材質は特に限定されないが、樹脂粒子であることが好ましい。
上記樹脂粒子を構成する樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール等が挙げられる。なかでも、スペーサー粒子の硬さと圧縮回復率を調整しやすく、かつ、耐熱性を向上できることから、架橋樹脂を用いることが好ましい。
【0041】
上記架橋樹脂は特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体、トリアリルイソシアヌレート重合体、ベンゾグアナミン重合体等の網目構造を有する樹脂が挙げられる。なかでも、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体等が好ましい。これらの架橋樹脂を用いた場合、半導体チップ又はウエハをボンディングした後、硬化プロセス、半田リフロープロセス等の熱処理プロセスへの耐性が優れる。
【0042】
上記スペーサー粒子は、必要に応じて表面処理がなされていることが好ましい。上記スペーサー粒子に表面処理を施すことにより、得られる電子部品用接着剤において後述する粘度特性を実現することが可能となる。
上記表面処理の方法は特に限定されないが、例えば、表面に疎水基を付与することが好ましい。また、上記表面処理として表面に親水基を付与する場合、上記表面に親水基を付与する方法は特に限定されず、例えば、親水基を有するカップリング剤で上記樹脂粒子の表面を処理する方法等が挙げられる。
【0043】
上記スペーサー粒子は、球状であることが好ましい。また、上記スペーサー粒子のアスペクト比の好ましい上限は1.1である。アスペクト比を1.1以下とすることで、例えば、本発明の電子部品積層体の製造方法を用いて多層の電子部品積層体を製造する場合に、電子部品間距離を安定して一定に保つことができる。
なお、本明細書においてアスペクト比とは、粒子の長径と短径に関して、短径の長さに対する長径の長さの比(長径の長さを短径の長さで割った値)を意味する。このアスペクト比の値が1に近いほどスペーサー粒子の形状は真球に近くなる。
【0044】
上記電子部品用接着剤における上記スペーサー粒子の配合量の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は5重量%である。上記スペーサー粒子の配合量が0.01重量%未満であると、例えば、本発明の電子部品積層体の製造方法を用いて多層の電子部品積層体を製造する場合に、電子部品間距離を安定して一定に保つことができないことがある。上記スペーサー粒子の配合量が5重量%を超えると、得られる電子部品用接着剤の接着剤としての機能が低下することがある。
【0045】
また、上記電子部品用接着剤が、上記スペーサー粒子以外に、上記スペーサー粒子の平均粒子径以上の粒子径を有する固形成分を含有する場合、このような固形成分の配合量の好ましい上限は1重量%である。
上記スペーサー粒子の平均粒子径以上の粒子径を有する固形成分の融点は、上記電子部品用接着剤の硬化温度以下であることが好ましい。
上記スペーサー粒子の平均粒子径以上の粒子径を有する固形成分の最大粒子径は、上記スペーサー粒子の平均粒子径の1.1〜1.5であることが好ましく、1.1〜1.2であることが更に好ましい。
【0046】
上記電子部品用接着剤は、更に、チキソトロピー付与剤を含有することが好ましい。上記チキソトロピー付与剤を含有することにより、得られる電子部品用接着剤は所望の粘度挙動を達成することができる。
【0047】
上記チキソトロピー付与剤は特に限定されず、例えば、金属微粒子、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、酸化アルミニウム、窒化硼素、窒化アルミニウム、硼酸アルミ等の無機微粒子等が挙げられる。なかでも、ヒュームドシリカが好ましい。
【0048】
上記チキソトロピー付与剤として、必要に応じて、表面処理を行ったチキソトロピー付与剤を用いることができる。また、上記チキソトロピー付与剤として、表面に親水基を有する粒子を用いることが好ましい。上記表面に親水基を有する粒子として、具体的には例えば、表面に親水基を有するヒュームドシリカ等が挙げられる。
【0049】
上記チキソトロピー付与剤として、粒子状のチキソトロピー付与剤を用いる場合、平均粒子径の好ましい上限は1μmである。上記チキソトロピー付与剤の平均粒子径が1μmを超えると、得られる電子部品用接着剤が所望のチキソトロピー性を発現できないことがある。
【0050】
上記電子部品用接着剤における上記チキソトロピー付与剤の配合量は特に限定されないが、上記スペーサー粒子に表面処理がなされていない場合には、好ましい下限が0.5重量%、好ましい上限が20重量%である。上記チキソトロピー付与剤の配合量が0.5重量%未満であると、得られる電子部品用接着剤に充分なチキソトロピー性を付与することができないことがある。上記チキソトロピー付与剤の配合量が20重量%を超えると、本発明の電子部品積層体の製造方法を用いて電子部品積層体を製造する際に、電子部品用接着剤の排除性が低下することがある。上記チキソトロピー付与剤の配合量のより好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0051】
上記電子部品用接着剤は、更に、上記硬化性化合物と反応可能な官能基を有する高分子化合物(以下、単に、反応可能な官能基を有する高分子化合物ともいう)を含有することが好ましい。このような高分子化合物を含有することにより、熱によるひずみが発生する際の接合信頼性が向上する。
【0052】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記硬化性化合物としてエポキシ樹脂を用いる場合には、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。上記エポキシ基を有する高分子化合物を添加することで、電子部品用接着剤の硬化物は、優れた可撓性を発現する。即ち、上記電子部品用接着剤の硬化物は、上記硬化性化合物としての多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた可撓性とを兼備することとなり、耐冷熱サイクル性、耐ハンダリフロー性、寸法安定性等に優れ、高い接着信頼性及び高い導通信頼性を発現することとなる。
【0053】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含む高分子化合物を得ることができ、硬化物の機械的強度及び耐熱性がより優れたものとなることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特に、エポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限が1万である。上記重量平均分子量が1万未満であると、電子部品用接着剤の造膜性が不充分となって、電子部品用接着剤の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。
【0055】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特に、エポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量の好ましい下限が200、好ましい上限が1000である。上記エポキシ当量が200未満であると、電子部品用接着剤の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。上記エポキシ当量が1000を超えると、電子部品用接着剤の硬化物の機械的強度又は耐熱性が不充分となることがある。
【0056】
上記電子部品用接着剤における上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対し、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量が1重量部未満であると、電子部品用接着剤は、熱ひずみに対する充分な信頼性が得られないことがある。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量が30重量部を超えると、電子部品用接着剤の耐熱性が低下することがある。
【0057】
上記電子部品用接着剤は、更に、表面処理されたシリカフィラーを含有することが好ましい。上記表面処理されたシリカフィラーは特に限定されないが、フェニルシランカップリング剤で表面処理されたシリカフィラーが好ましい。
【0058】
上記電子部品用接着剤における上記表面処理されたシリカフィラーの配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対し、好ましい下限が30重量部、好ましい上限が400重量部である。上記表面処理されたシリカフィラーの配合量が30重量部未満であると、得られる電子部品用接着剤が充分な信頼性を保持することができないことがある。上記表面処理されたシリカフィラーの配合量が400重量部を超えると、得られる電子部品用接着剤の粘度が高くなりすぎて、塗布安定性が低下することがある。
【0059】
上記電子部品用接着剤は、必要に応じて、溶媒を含有してもよい。
上記溶媒は特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素類、塩化芳香族炭化水素類、塩化脂肪族炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、グリコールエーテル(セロソルブ)類、脂環式炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0060】
上記電子部品用接着剤は、必要に応じて、無機イオン交換体を含有してもよい。
上記無機イオン交換体のうち、市販品としては、例えば、IXEシリーズ(東亞合成社製)等が挙げられる。上記電子部品用接着剤における上記無機イオン交換体の配合量の好ましい上限は10重量%、好ましい下限は1重量%である。
【0061】
上記電子部品用接着剤は、更に、必要に応じて、ブリード防止剤、イミダゾールシランカップリング剤等の接着性付与剤等のその他の添加剤を含有してもよい。
【0062】
上記電子部品用接着剤は、E型粘度計を用いて25℃にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が20Pa・s以上、100Pa・s以下である。
上記0.5rpmにおける粘度が20Pa・s未満であると、塗布後、後述するボンディング工程(2)までの間に塗布時の形状を維持することが困難となる。上記0.5rpmにおける粘度が100Pa・sを超えると、電子部品用接着剤を所望の形状で塗布することが困難となる。
上記電子部品用接着剤は、E型粘度計を用いて25℃にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が60Pa・s以下であることがより好ましい。
【0063】
上記電子部品用接着剤は、E型粘度計を用いて25℃にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が5rpmにおける粘度の2〜5倍であることが好ましい。
上記0.5rpmにおける粘度が5rpmにおける粘度の2倍未満であると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量が多くなり、得られる電子部品積層体に対してワイヤーボンディングすることが困難となることがある。上記0.5rpmにおける粘度が5rpmにおける粘度の5倍を超えると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、電子部品用接着剤が接合領域全体に均一に濡れ広がらず、モールド封止後に空洞が生じるため、得られる電子部品積層体が信頼性に欠けることがある。
上記電子部品用接着剤は、E型粘度計を用いて25℃にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が5rpmにおける粘度の4倍以下であることがより好ましい。
【0064】
上記電子部品用接着剤は、E型粘度計を用いてボンディング温度にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が4Pa・s以上、25Pa・s以下である。このような粘度特性を有することで、上記電子部品用接着剤は、後述するボンディング工程(2)において押圧を解除した後、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)において、接合領域から大きくはみ出したり、濡れ広がりが不充分となったりすることなく、接合領域全体に均一に濡れ広がることができる。
上記0.5rpmにおける粘度が4Pa・s未満であると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量が多くなり、得られる電子部品積層体に対してワイヤーボンディングすることが困難となる。上記0.5rpmにおける粘度が25Pa・sを超えると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、電子部品用接着剤が接合領域全体に均一に濡れ広がらず、モールド封止後に空洞が生じるため、得られる電子部品積層体は信頼性に欠ける。また、上記0.5rpmにおける粘度が25Pa・sを超えると、例えば、本発明の電子部品積層体の製造方法を用いて多層の電子部品積層体を製造する場合、後述するボンディング工程(2)において、積層した半導体チップ又はウエハの押圧を行っても電子部品間距離をスペーサー粒子の粒子径と実質的に等しい距離にすることが困難である。
【0065】
なお、本明細書中、ボンディング温度とは、後述するボンディング工程(2)において用いられる温度を意味する。上記ボンディング温度として、例えば、25〜80℃の範囲の温度が挙げられる。
【0066】
上記電子部品用接着剤は、E型粘度計を用いてボンディング温度にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が5rpmにおける粘度の2〜4倍である。このような粘度特性を有することで、上記電子部品用接着剤は、後述するボンディング工程(2)においては、加熱及び押圧を行うことによって短時間で接合領域の所定の範囲に均一に濡れ広がることができ、次いで、押圧を解除した後、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)においては、接合領域から大きくはみ出したり、濡れ広がりが不充分となったりすることなく、接合領域全体に均一に濡れ広がることができる。
上記0.5rpmにおける粘度が5rpmにおける粘度の2倍未満であると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量が多くなり、得られる電子部品積層体に対してワイヤーボンディングすることが困難となる。上記0.5rpmにおける粘度が5rpmにおける粘度の4倍を超えると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、電子部品用接着剤が接合領域全体に均一に濡れ広がらず、モールド封止後に空洞が生じるため、得られる電子部品積層体が信頼性に欠ける。
上記電子部品用接着剤は、E型粘度計を用いてボンディング温度にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が5rpmにおける粘度の3倍以下であることが好ましい。
【0067】
上記電子部品用接着剤は、硬化後の−55〜125℃における弾性率Eの好ましい下限が1GPa、好ましい上限が8GPaである。弾性率Eが1GPa未満であると、充分な耐熱性が得られないことがある。弾性率Eが8GPaを超えると、温度の変化によるひずみによって発生した応力が集中し、接合信頼性に悪影響を与えることがある。上記電子部品用接着剤は、硬化後の−55〜125℃における弾性率Eのより好ましい下限が2GPa、より好ましい上限が7GPaである。
【0068】
上記電子部品用接着剤は、20〜120℃の条件で5分間経過した後の反応率が5%未満であることが好ましい。上記反応率が5%以上であると、電子部品用接着剤の濡れ広がりが不充分となったり、目的とするスペース到達度が得られなかったりすることがある。
【0069】
上記電子部品用接着剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記硬化性化合物及び硬化剤を有する接着組成物に、必要に応じて上記硬化促進剤、上記硬化性化合物と反応可能な官能基を有する高分子化合物、上記チキソトロピー付与剤、その他の添加剤等を所定量配合して混合した後、上記スペーサー粒子を配合する方法が挙げられる。
上記混合の方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を使用する方法が挙げられる。
【0070】
本発明の電子部品積層体の製造方法では、次いで、加熱及び押圧しながら、上述のように塗布した電子部品用接着剤を介して、上記基板、他の半導体チップ又は他のウエハ上に半導体チップ又はウエハを積層し、上記電子部品用接着剤の濡れ広がった領域を接合領域の60%以上100%未満とした後、押圧を解除するボンディング工程(2)を行う。
上記ボンディング工程(2)では、塗布した電子部品用接着剤を介して、上記基板、他の半導体チップ又は他のウエハに対し、上記半導体チップ又はウエハを位置合わせすることによって積層し、ボンディングする。
【0071】
上記ボンディング工程(2)においては、上記基板、他の半導体チップ又は他のウエハ上に上記半導体チップ又はウエハを積層する際に、加熱及び押圧を行う。
上記加熱及び押圧を行うことにより、上記電子部品用接着剤が接合領域の所定の範囲に均一に濡れ広がることができる。また、上記押圧を行うことにより、上記電子部品用接着剤が上記スペーサー粒子を含有する場合には、スペーサー粒子により電子部品間の間隔が支持されるように積層することができる。また、加熱を行わず押圧のみを行う場合には、上記電子部品用接着剤が濡れ広がるのに要する時間が長くなるのに対し、上記加熱及び押圧を行うことにより、短時間で、上記電子部品用接着剤が接合領域の所定の範囲に均一に濡れ広がることができる。
【0072】
上記加熱は特に限定されないが、25℃以上、80℃以下の温度で行うことが好ましい。上記加熱を行う温度が25℃未満であると、上記電子部品用接着剤が接合領域の所定の範囲に均一に濡れ広がることができず、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、上記電子部品用接着剤が接合領域全体に均一に濡れ広がらず、得られる電子部品積層体が信頼性に欠けることがある。上記加熱を行う温度が80℃を超えると、上記電子部品用接着剤の硬化が開始してしまい、濡れ広がりが困難になることがあり、また、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量が多くなり、得られる電子部品積層体に対してワイヤーボンディングすることが困難となることがある。
上記加熱は、40℃以上、60℃以下の温度で行うことがより好ましい。
【0073】
上記押圧は特に限定されないが、0.005MPa以上、0.2MPa以下の圧力で行うことが好ましい。上記押圧を行う圧力が0.005MPa未満であると、上記電子部品用接着剤が接合領域の所定の範囲に均一に濡れ広がることができず、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、上記電子部品用接着剤が接合領域全体に均一に濡れ広がらず、得られる電子部品積層体が信頼性に欠けることがある。上記押圧を行う圧力が0.2MPaを超えると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量が多くなり、得られる電子部品積層体に対してワイヤーボンディングすることが困難となることがある。
上記押圧は、0.05MPa以上の圧力で行うことがより好ましい。
なお、上記押圧は、上記電子部品用接着剤を介して上記基板、他の半導体チップ又は他のウエハ上に積層された、半導体チップ又はウエハに対して行う。
【0074】
また、上記押圧は、所望の電子部品間距離の1〜1.5倍に電子部品間距離を縮小させるように行うことが好ましい。これにより、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)において、接合領域全体に上記電子部品用接着剤が均一に濡れ広がり、得られる電子部品積層体において所望の電子部品間距離を達成することができる。
【0075】
上記加熱及び押圧する時間は特に限定さないが、0.1秒以上、5秒以下であることが好ましい。上記加熱及び押圧する時間が0.1秒未満であると、上記電子部品用接着剤が接合領域の所定の範囲に均一に濡れ広がることができず、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、上記電子部品用接着剤が接合領域全体に均一に濡れ広がらず、得られる電子部品積層体が信頼性に欠けることがある。上記加熱及び押圧する時間が5秒を超えると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量が多くなり、得られる電子部品積層体に対してワイヤーボンディングすることが困難となったり、電子部品積層体の生産効率が低下したりすることがある。
上記加熱及び押圧する時間は、1秒以下であることがより好ましい。
【0076】
上記ボンディング工程(2)では、上記電子部品用接着剤の濡れ広がった領域を接合領域の60%以上100%未満とした後、押圧を解除する。このように上記電子部品用接着剤の濡れ広がった領域を上記範囲内とした後で押圧を解除することにより、上記電子部品用接着剤は、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)において、接合領域から大きくはみ出したり、濡れ広がりが不充分となったりすることなく、接合領域全体に均一に濡れ広がることができる。
上記電子部品用接着剤の濡れ広がった領域が接合領域の60%未満であると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、上記電子部品用接着剤が接合領域全体に均一に濡れ広がらず、得られる電子部品積層体が信頼性に欠ける。上記電子部品用接着剤の濡れ広がった領域が接合領域の100%以上であると、後述する電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経たとき、接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量が多くなり、得られる電子部品積層体に対してワイヤーボンディングすることが困難となる。
【0077】
なお、本発明の電子部品積層体の製造方法において、上記ボンディング工程(2)を経た後の状態を、図1に模式的に示す。図1において、半導体チップ又はウエハ2は、塗布した電子部品用接着剤3を介して、基板、他の半導体チップ又は他のウエハ1上に積層されている。
【0078】
本発明の電子部品積層体の製造方法では、次いで、上記電子部品用接着剤を加熱することにより、接合領域全体に上記電子部品用接着剤を均一に濡れ広がらせる工程(3)(本明細書中、単に、電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)ともいう)を行う。
上記電子部品用接着剤を加熱する方法は特に限定されないが、例えば、上記ボンディング工程(2)において用いた温度と同じ温度で加熱する方法が好ましい。
【0079】
本発明の電子部品積層体の製造方法において、上記電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経た後の状態を図2及び3に模式的に示す。
上記電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経た後、上記電子部品用接着剤は、接合領域全体に均一に濡れ広がっていれば、図2に示すように接合領域からはみ出していなくてもよく、図3に示すように接合領域からはみ出してフィレットを形成してもよい。フィレットを形成することにより、得られる電子部品積層体の信頼性を更に高めることができる。
なお、本明細書中、フィレットとは、接合領域からはみ出した電子部品用接着剤の分厚い部分をいう。
【0080】
上記電子部品用接着剤が接合領域からはみ出してフィレットを形成する場合には、フィレットの接合領域からの距離は、好ましい下限が50μm、好ましい上限が300μmである。上記フィレットの接合領域からの距離が50μm未満であると、フィレットを形成する効果が充分に得られないことがある。上記フィレットの接合領域からの距離が300μmを超えると、フィレットがワイヤーボンディングパッドを汚染し、ワイヤーボンディング不良を引き起こすことがある。
上記フィレットの接合領域からの距離のより好ましい下限は100μm、更に好ましい下限は150μmである。
【0081】
本発明の電子部品積層体の製造方法では、次いで、上記電子部品用接着剤を硬化させる硬化工程(4)を行う。これにより、上記電子部品用接着剤を硬化させて、電子部品積層体を得ることができる。
【0082】
上記硬化工程(4)における硬化方法は特に限定されず、上記電子部品用接着剤の硬化特性に合わせた硬化条件を適宜選択して用いることができ、例えば、120℃で30分、170℃で30分加熱する方法等が挙げられる。
【0083】
本発明の電子部品積層体の製造方法では、上述したような粘度特性を有する電子部品用接着剤を用いることにより、上記ボンディング工程(2)において上記加熱及び押圧を行うことによって、短時間で上記電子部品用接着剤が接合領域の所定の範囲に均一に濡れ広がり、次いで、上記電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)において上記電子部品用接着剤を加熱することによって、上記電子部品用接着剤が接合領域全体に均一に濡れ広がる。これにより、接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量を調整し、小型化しても高精度かつ信頼性の高い電子部品積層体を得ることができる。
【0084】
本発明の電子部品積層体の製造方法により得られる電子部品積層体の電子部品間距離は、上記スペーサー粒子の平均粒子径よりも5〜10μm長いことが好ましい。上記電子部品間距離が上記範囲を外れると、電子部品間距離を制御することが困難となることがある。
【0085】
本発明の電子部品積層体の製造方法を用いて多層の電子部品積層体を製造する場合、得られる電子部品積層体の電子部品間距離のばらつきは、3σで5μm未満であることが好ましい。上記電子部品間距離のばらつきが3σで5μm以上であると、得られる電子部品積層体のワイヤーボンディング不良、フリップチップボンディング不良が発生することがある。なお、σは標準偏差を表す。
【0086】
本発明の電子部品積層体の製造方法において、上記ボンディング工程(2)から上記硬化工程(4)までの工程は、例えば、これらの工程を一連の工程として行ってもよく、各々の工程を区別して行ってもよい。いずれの場合であっても、各工程において温度、圧力、時間、昇温速度等を適切に選択することにより、上記電子部品用接着剤が接合領域全体に均一に濡れ広がった状態で硬化させることが重要である。
【0087】
また、本発明の電子部品積層体の製造方法を用いて多層の電子部品積層体を製造する場合、上記ボンディング工程(2)から上記硬化工程(4)までの工程は、半導体チップ又はウエハを1つボンディングする度に行ってもよく、半導体チップ又はウエハの積層を所望の数まで繰り返した後、一度に行ってもよい。
【0088】
本発明の電子部品積層体の製造方法では、例えば、基板に対して半導体チップを接合してもよく、例えば基板に接合された半導体チップ等の他の半導体チップに対して更に半導体チップを接合してもよく、ウエハに対して半導体チップを接合してもよく、また、基板に対してウエハを接合してもよく、例えば基板に接合されたウエハ等の他のウエハに対して更にウエハを接合してもよい。
また、本発明の電子部品積層体の製造方法は、半導体チップを十字状に接合する場合に、特に好適に用いられる。
更に、本発明の電子部品積層体の製造方法を用いて電子部品積層体を製造し、更に、封止剤による封止等の必要な工程を行うことにより、半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0089】
本発明によれば、半導体チップ又はウエハの接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量を調整し、小型化しても高精度かつ信頼性の高い電子部品積層体を得ることのできる電子部品積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、本発明の電子部品積層体の製造方法において、ボンディング工程(2)を経た後の状態の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の半導体チップ積層体の製造方法において、電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経た後の状態の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の半導体チップ積層体の製造方法において、電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)を経た後の状態の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
なお、以下の実施例及び比較例に記載の粒子径の測定には粒子サイズ測定機(コールターカウンターZB/C−1000、コールターエレクトロニクス社製)を使用した。
【0092】
(実施例1)
(1)電子部品用接着剤の製造
表1の実施例1の組成に従って、下記に示すスペーサー粒子以外の各材料を攪拌混合して、接着組成物を作製した。得られた接着組成物にスペーサー粒子を配合し、更に攪拌混合することにより、電子部品用接着剤を製造した。
【0093】
1.エポキシ樹脂
ポリエーテル変性エポキシ樹脂(ポリエーテル型エポキシ樹脂、エポゴーセーPT、四日市合成社製)
2.エポキシ基を有する高分子化合物
エポキシ基含有アクリル樹脂(ブレンマーCP−30、日油社製)
3.硬化剤
酸無水物(YH−306、ジャパンエポキシレジン社製)
4.硬化促進剤
イミダゾール化合物(2MA−OK、四国化成工業社製)
5.接着性付与剤
イミダゾールシランカップリング剤(SP−1000、日鉱マテリアルズ社製)
6.チキソトロピー付与剤
ヒュームドシリカ(表面疎水基含有チキソトロピー付与剤、PM−20L、トクヤマ社製)
7.スペーサー粒子
樹脂粒子(ミクロパールSP−225、積水化学工業社製、平均粒子径25μm、CV値4%)
8.シリカフィラー
球状シリカ(SE−4050−SPE、アドマテックス社製、平均粒子径1μm、最大粒子径5μm)
【0094】
(2)電子部品積層体の製造
(2−1)塗布工程(1)
得られた電子部品用接着剤を10mLシリンジ(武蔵エンジニアリング社製)に充填し、シリンジ先端に精密ノズル(武蔵エンジニアリング社製、ノズル先端径0.6mm)を取り付け、ディスペンサ装置(SuperΣCMII−V5、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、吐出圧30kPa、ガラスエポキシ基板とニードルとのギャップ250μm、塗布量3.0μLにてガラスエポキシ基板上に塗布した。
このとき、電子部品用接着剤を塗布した領域は、接合領域の70%であった。また、電子部品用接着剤の塗布形状はクロス形状であり、該クロス形状の対角線の長さは、接合領域の対角線の長さの70%であった。
【0095】
(2−2)ボンディング工程(2)
塗布後のガラスエポキシ基板を、60℃で加熱しながらダイボンダー(BESTEM−D02、キヤノンマシナリー社製)のボンディング部まで搬送し、塗布した電子部品用接着剤を介して、ベアシリコンチップ(チップ1)(厚さ100μm、9mm×13mm角)を60℃で0.005MPaの圧力で0.5秒間押圧することにより、ガラスエポキシ基板上に積層した。
このとき、電子部品用接着剤の濡れ広がった領域は、接合領域の95%であった。
【0096】
(2−3)電子部品用接着剤を濡れ広がらせる工程(3)
次いで、ベアシリコンチップ(チップ1)積層後のガラスエポキシ基板を、80℃で加熱しながらダイボンダー(BESTEM−D02、キヤノンマシナリー社製)の搬出部まで搬送した。
このとき、電子部品用接着剤の濡れ広がった領域は、接合領域の100%であった。
【0097】
(2−4)硬化工程(4)
その後、熱風乾燥炉内にて80℃から120℃まで60分間かけて昇温処理を行い、120℃で15分間放置することにより保温処理を行った後、170℃で30分間加熱を行い、電子部品用接着剤を硬化させることにより、電子部品積層体を得た。
【0098】
(実施例2)
表1の実施例2の組成に従って接着組成物を作製したこと以外は実施例1と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0099】
(実施例3)
表1の実施例3の組成に従って接着組成物を作製したこと以外は実施例1と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0100】
(実施例4)
表1の実施例4の組成に従って接着組成物を作製したこと以外は実施例1と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0101】
(実施例5)
ボンディング工程(2)において、ベアシリコンチップ(チップ1)をガラスエポキシ基板上に積層する際の圧力を0.05MPaとしたこと以外は実施例2と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0102】
(実施例6)
ボンディング工程(2)において、ベアシリコンチップ(チップ1)をガラスエポキシ基板上に積層する際の圧力を0.2MPaとしたこと以外は実施例2と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0103】
(実施例7)
ボンディング工程(2)において、ベアシリコンチップ(チップ1)をガラスエポキシ基板上に積層する際の圧力を0.05MPaとしたこと以外は実施例4と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0104】
(実施例8)
ボンディング工程(2)において、ベアシリコンチップ(チップ1)をガラスエポキシ基板上に積層する際の圧力を0.2MPaとしたこと以外は実施例4と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0105】
(実施例9)
ボンディング工程(2)において、ベアシリコンチップ(チップ1)をガラスエポキシ基板上に積層する際の温度を40℃としたこと以外は実施例2と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0106】
(実施例10)
ボンディング工程(2)において、ベアシリコンチップ(チップ1)をガラスエポキシ基板上に積層する際の圧力を0.2MPaとしたこと以外は実施例9と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0107】
(実施例11)
ボンディング工程(2)において、ベアシリコンチップ(チップ1)をガラスエポキシ基板上に積層する際の温度を80℃としたこと以外は実施例4と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0108】
(実施例12)
ボンディング工程(2)において、ベアシリコンチップ(チップ1)をガラスエポキシ基板上に積層する際の圧力を0.2MPaとしたこと以外は実施例11と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0109】
(比較例1)
表2の比較例1の組成に従って接着組成物を作製したこと以外は実施例1と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0110】
(比較例2)
表2の比較例2の組成に従って接着組成物を作製したこと以外は実施例1と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0111】
(比較例3)
ボンディング工程(2)において、ベアシリコンチップ(チップ1)をガラスエポキシ基板上に積層する際の温度を90℃としたこと以外は実施例1と同様にして、電子部品用接着剤及び電子部品積層体を得た。
【0112】
(評価)
実施例及び比較例で得られた電子部品用接着剤及び電子部品積層体について、以下の方法により評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0113】
(1)粘度の測定
E型粘度測定装置(商品名「VISCOMETER TV−22」、TOKI SANGYO CO.LTD社製、使用ローターφ15mm、設定温度=25℃)を用いて、得られた電子部品用接着剤の回転数0.5rpmにおける粘度(A)、5rpmにおける粘度(B)を測定した。また、0.5rpmにおける粘度(A)と5rpmにおける粘度(B)との比として(A/B)を求めた。
また、E型粘度測定装置(商品名「VISCOMETER TV−22」、TOKI SANGYO CO.LTD社製、使用ローターφ15mm、設定温度=ボンディング温度)を用いて、得られた電子部品用接着剤の回転数0.5rpmにおける粘度(C)、5rpmにおける粘度(D)を測定した。また、0.5rpmにおける粘度(C)と5rpmにおける粘度(D)との比として(C/D)を求めた。
【0114】
(2)電子部品用接着剤の充填性
ガラスエポキシ基板−ベアシリコンチップ(チップ1)間について、接合領域における電子部品用接着剤の充填性を、超音波探査映像装置(mi−scope hyper II、日立建機ファインテック社製)を用いて下記の基準で評価した。
○ 接合領域全体に電子部品用接着剤が充填されていた。
× 接合領域に電子部品用接着剤が充填されていない部分があった。
【0115】
(3)電子部品用接着剤のはみ出し(フィレット距離)
ガラスエポキシ基板−ベアシリコンチップ(チップ1)間について、接合領域からはみ出した電子部品用接着剤のはみ出し距離(フィレット距離)の最大値を測定することにより、下記の基準で評価した。
◎ はみ出し距離の最大値が1〜100μmであった。
○ はみ出し距離の最大値が101〜200μmであった。
△ はみ出し距離の最大値が201〜300μmであった。
× はみ出し距離の最大値が301μm以上であった、又は、接合領域全体に電子部品用接着剤が充填されておらず、はみ出し距離の最大値が0μmであった。
【0116】
(4)電子部品間距離のばらつき
得られた電子部品積層体について、サンプルを10個作製し、各電子部品積層体の積層状態を、レーザー変位計(KS−1100、KEYENCE社製)を用いて測定した。具体的には、ベアシリコンチップ(チップ1)とガラスエポキシ基板の上面との段差を測定し、測定値からチップ厚みを引くことで、ベアシリコンチップ(チップ1)とガラスエポキシ基板との間の電子部品間距離を求めた後、電子部品間距離のばらつきを3σ(μm)(σ=標準偏差)として算出した。
【0117】
(5)耐リフロー試験
得られた電子部品積層体を125℃で6時間乾燥し、続いて85℃、85%の湿潤条件で48時間処理した後、ハンダリフロー時と同様の260℃、30秒の条件で加熱処理を行った。そして、このような加熱処理を3回行った後の電子部品積層体について、層間剥離が発生しているか否かを観察した。層間剥離の観察は、超音波探査映像装置(mi−scope hyper II、日立建機ファインテック社製)を用いて行った。
層間剥離について下記の基準で評価することにより、電子部品積層体の耐リフロー性評価を行った。
○ 層間剥離がほとんど観察されなかった。
△ 層間剥離がわずかに観察された。
× 層間の目立った剥離が観察された。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明によれば、半導体チップ又はウエハの接合領域からはみ出る電子部品用接着剤の量を調整し、小型化しても高精度かつ信頼性の高い電子部品積層体を得ることのできる電子部品積層体の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 基板、他の半導体チップ又は他のウエハ
2 半導体チップ又はウエハ
3 電子部品用接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ又はウエハが、電子部品用接着剤を介して基板、他の半導体チップ又は他のウエハに接合された電子部品積層体の製造方法であって、
基板、他の半導体チップ又は他のウエハに電子部品用接着剤を塗布する塗布工程(1)と、
加熱及び押圧しながら、前記塗布した電子部品用接着剤を介して、前記基板、他の半導体チップ又は他のウエハ上に半導体チップ又はウエハを積層し、前記電子部品用接着剤の濡れ広がった領域を、前記半導体チップ又はウエハの接合領域の60%以上100%未満とした後、押圧を解除するボンディング工程(2)と、
前記電子部品用接着剤を加熱することにより、前記半導体チップ又はウエハの接合領域全体に前記電子部品用接着剤を均一に濡れ広がらせる工程(3)と、
前記電子部品用接着剤を硬化させる硬化工程(4)とを有し、
前記塗布工程(1)において、前記電子部品用接着剤を塗布する領域は、前記半導体チップ又はウエハの接合領域の40〜90%であり、
前記電子部品用接着剤は、E型粘度計を用いて25℃にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が20〜100Pa・sであり、E型粘度計を用いてボンディング温度にて粘度を測定したとき、0.5rpmにおける粘度が4〜25Pa・s、0.5rpmにおける粘度が5rpmにおける粘度の2〜4倍である
ことを特徴とする電子部品積層体の製造方法。
【請求項2】
電子部品用接着剤は、硬化性化合物及び硬化剤を含有する接着組成物と、CV値が10%以下のスペーサー粒子とを含有することを特徴とする請求項1記載の電子部品積層体の製造方法。
【請求項3】
電子部品間距離が、スペーサー粒子の平均粒子径よりも5〜10μm長いことを特徴とする請求項2記載の電子部品積層体の製造方法。
【請求項4】
塗布工程(1)において、電子部品用接着剤の塗布形状が、クロス形状又はダブルクロス形状であり、前記クロス形状又はダブルクロス形状の対角線の長さが、半導体チップ又はウエハの接合領域の対角線の長さの70〜90%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の電子部品積層体の製造方法。
【請求項5】
ボンディング工程(2)において、押圧を0.005MPa以上、0.2MPa以下の圧力で行うことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の電子部品積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−198953(P2011−198953A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63071(P2010−63071)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】