説明

電子部品

【課題】本体の底面に第1の外部電極及び第2の外部電極が設けられている電子部品が正常な実装位置からずれた状態で実装されることを抑制することである。
【解決手段】外部電極14a,14bは、積層体12の底面S2において互いに平行な長辺L1,L2間に設けられている。ダミー電極15a,15bは、積層体12の側面S5,S6に設けられ、かつ、長辺L1,L2に外部電極14aが接している接触部分P1,P2のそれぞれにおいて外部電極14bに最も近い近接部分p1,p2のそれぞれに接している。ダミー電極15c,15dは、積層体12の側面S5,S6に設けられ、かつ、長辺L1,L2に外部電極14bが接している接触部分P3,P4のそれぞれにおいて外部電極14aに最も近い近接部分p3,p4のそれぞれに接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、より特定的には、本体の底面に第1の外部電極及び第2の外部電極が設けられている電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1に記載の積層型インダクタが知られている。特許文献1に記載の積層型インダクタでは、積層体の底面に2つの外部電極が設けられている。2つの外部電極は、積層体の側面には設けられていない。
【0003】
以上のような、積層体の底面のみに外部電極が設けられた積層型インダクタは、回路基板上において正常な実装位置からずれた状態で実装されるおそれがある。以下に図面を参照しながら説明する。図10は、ディッピングにより外部電極が形成された電子部品500が回路基板550上に実装されたときの図である。図11は、特許文献1に記載の積層インダクタ600が回路基板650上に実装されたときの図である。
【0004】
図10に示す電子部品500では、積層体502の端面に外部電極504a,504bが設けられている。外部電極504a,504bは、端面から上面、底面及び側面に対して折り返されている。このような電子部品500が回路基板550に搭載されると、はんだは、側面及び端面に設けられている外部電極504a,504bに沿って上昇し、フィレットF1,F2を形成するようになる。ここで、電子部品500が回路基板550上において正常な実装位置から外部電極504b側にずれた状態で搭載されると、フィレットF1の表面積がフィレットF2の表面積よりも大きくなる。これにより、フィレットF1は、表面張力により相対的に大きな力で縮もうとし、フィレットF2は、表面張力により相対的に小さな力で縮もうとする。その結果、電子部品500は、外部電極504a側に引っ張られる。すなわち、電子部品500は、フィレットF1,F2により、正常な実装位置に戻される。
【0005】
一方、図11に示す積層インダクタ600では、積層体602の底面にのみ外部電極604a,604bが設けられている。すなわち、積層体602の側面及び端面には外部電極604a,604bが設けられていない。そのため、フィレットF1,F2が形成されない。その結果、積層インダクタ600が回路基板650上において正常な実装位置からずれた状態で搭載された場合に、積層インダクタ600を正常な実装位置に戻す力が発生しない。すなわち、積層型インダクタ600は、回路基板650上において正常な実装位置からずれた状態で実装されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−265823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、本体の底面に第1の外部電極及び第2の外部電極が設けられている電子部品が正常な実装位置からずれた状態で実装されることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る電子部品は、直方体状をなす本体と、前記本体の底面において互いに平行な第1の辺と第2の辺との間に設けられ、かつ、該底面に隣接する面には設けられていない第1の外部電極及び第2の外部電極であって、互いに対向している第1の外部電極及び第2の外部電極と、前記本体の側面に設けられ、かつ、前記第1の辺及び前記第2の辺に前記第1の外部電極が接している部分のそれぞれにおいて前記第2の外部電極に最も近い第1の近接部分及び第2の近接部分のそれぞれに接している第1のダミー電極及び前記第2のダミー電極と、前記本体の側面に設けられ、かつ、前記第1の辺及び前記第2の辺に前記第2の外部電極が接している部分のそれぞれにおいて前記第1の外部電極に最も近い第3の近接部分及び第4の近接部分のそれぞれに接している第3のダミー電極及び第4のダミー電極と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本体の底面に第1の外部電極及び第2の外部電極が設けられている電子部品が正常な実装位置からずれた状態で実装されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電子部品の外観斜視図である。
【図2】電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図3】回路基板上に電子部品が実装されたときの図である。
【図4】電子部品をz軸方向の正方向側から平面視した図である。
【図5】変形例に係る電子部品の構成図である。
【図6】変形例に係る電子部品の構成図である。
【図7】変形例に係る電子部品の構成図である。
【図8】変形例に係る電子部品の構成図である。
【図9】変形例に係る電子部品の構成図である。
【図10】ディッピングにより外部電極が形成された電子部品が回路基板上に実装されたときの図である。
【図11】特許文献1に記載の積層インダクタが回路基板上に実装されたときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係る電子部品について説明する。
【0012】
(電子部品の構成)
以下に、本発明の一実施形態に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る電子部品10の外観斜視図である。図2は、実施形態に係る電子部品10の積層体12の分解斜視図である。以下、電子部品10の積層方向をz軸方向と定義し、電子部品10の短辺に沿った方向をx軸方向と定義し、電子部品10の長辺に沿った方向をy軸方向と定義する。x軸、y軸及びz軸は互いに直交している。
【0013】
電子部品10は、図1及び図2に示すように、積層体(本体)12、外部電極14(14a,14b)、ダミー電極15(15a〜15d)、ダミー導体20(20a〜20c),22(22a〜22c),24(24a〜24c),26(26a〜26c)(図1には図示せず)、コイルL及びビアホール導体V1,V2(図1には図示せず)を備えている。
【0014】
積層体12は、直方体状をなしており、ダミー導体20,22,24,26、コイルL及びビアホール導体V1,V2を内蔵している。以下では、積層体12のz軸方向の正方向側の面を上面S1と定義し、積層体12のz軸方向の負方向側の面を底面S2と定義する。積層体12のy軸方向の負方向側の面を端面S3と定義し、積層体12のy軸方向の正方向側の面を端面S4と定義する。積層体12のx軸方向の正方向側の面を側面S5と定義し、積層体12のx軸方向の負方向側の面を側面S6と定義する。また、図1に示すように,底面S2において、x軸方向の正方向側に位置している長辺を長辺L1と定義し、x軸方向の負方向側に位置している長辺を長辺L2と定義する。長辺L1と長辺L2とは互いに平行である。
【0015】
外部電極14a,14bはそれぞれ、ビアホール導体V1,V2を介してコイルLに対して電気的に接続されており、積層体12の底面S2に設けられている。本実施形態では、外部電極14aは、積層体12の底面において、長辺L1と長辺L2とをつなぐように、y軸方向の正方向側に位置する辺に沿って設けられている。外部電極14bは、積層体12の底面において、長辺L1と長辺L2とをつなぐように、y軸方向の負方向側に位置する辺に沿って設けられている。これにより、外部電極14a,14bは、y軸方向において互いに対向している。また、外部電極14a,14bは、図1に示すように、底面S2にのみ設けられており、底面S2に隣接する端面S3,S4及び側面S5,S6には設けられていない。
【0016】
積層体12は、図2に示すように、絶縁体層16(16a〜16l)がz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並ぶように積層されることにより構成されている。絶縁体層16はそれぞれ、長方形状をなしており、磁性体材料により作製されている。以下では、絶縁体層16のz軸方向の正方向側の面を表面と称し、絶縁体層16のz軸方向の負方向側の面を裏面と称す。
【0017】
コイルLは、図2に示すように、コイル導体18(18a〜18j)及びビアホール導体v12〜v20により構成されている。すなわち、コイルLは、コイル導体18a〜18jがビアホール導体v12〜v20により接続されることにより構成されている。コイルLは、z軸方向に延在するコイル軸を有しており、時計回り方向(矢印A方向)に旋廻しながらz軸方向の正方向側に向かって進行する螺旋状をなしている。
【0018】
コイル導体18a〜18jはそれぞれ、図2に示すように、絶縁体層16b〜16kの表面上に設けられている。コイル導体18a〜18jはそれぞれ、導電性材料からなり、7/8ターンのターン数を有しており、線状導体が折り曲げて形成されている。ただし、コイル導体18aは、5/8ターンのターン数を有している。すなわち、コイル導体18a〜18jは、環状の軌道の一部(コイル導体18aでは3/8、コイル導体18b〜18jでは1/8)が切り欠かれた形状をなしている。また、コイルLのz軸方向の正方向側の端部t1は、コイル導体18aの矢印Aの方向の下流側の端部であり、コイルLのz軸方向の負方向側の端部t2は、コイル導体18jの矢印Aの方向の上流側の端部である。
【0019】
ビアホール導体v12〜v20はそれぞれ、絶縁体層16b〜16jをz軸方向に貫通しており、コイル導体18a〜18jを接続している。より詳細には、ビアホール導体v12は、コイル導体18aの矢印Aの方向の上流側の端部とコイル導体18bの矢印Aの方向の下流側の端部とを接続している。ビアホール導体v13は、コイル導体18bの矢印Aの方向の上流側の端部とコイル導体18cの矢印Aの方向の下流側の端部とを接続している。ビアホール導体v14は、コイル導体18cの矢印Aの方向の上流側の端部とコイル導体18dの矢印Aの方向の下流側の端部とを接続している。ビアホール導体v15は、コイル導体18dの矢印Aの方向の上流側の端部とコイル導体18eの矢印Aの方向の下流側の端部とを接続している。ビアホール導体v16は、コイル導体18eの矢印Aの方向の上流側の端部とコイル導体18fの矢印Aの方向の下流側の端部とを接続している。ビアホール導体v17は、コイル導体18fの矢印Aの方向の上流側の端部とコイル導体18gの矢印Aの方向の下流側の端部とを接続している。ビアホール導体v18は、コイル導体18gの矢印Aの方向の上流側の端部とコイル導体18hの矢印Aの方向の下流側の端部とを接続している。ビアホール導体v19は、コイル導体18hの矢印Aの方向の上流側の端部とコイル導体18iの矢印Aの方向の下流側の端部とを接続している。ビアホール導体v20は、コイル導体18iの矢印Aの方向の上流側の端部とコイル導体18jの矢印Aの方向の下流側の端部とを接続している。
【0020】
ビアホール導体v1〜v11はそれぞれ、図2に示すように、絶縁体層16b〜16lをz軸方向に貫通しており、一直線に繋がることにより1本のビアホール導体V1を構成している。ビアホール導体V1は、積層体12内に設けられ、かつ、コイルLの端部t1と外部電極14aとを接続している。すなわち、ビアホール導体V1のz軸方向の正方向側に位置する端部は、コイル導体18aの矢印Aの方向の下流側の端部に接続され、ビアホール導体V1のz軸方向の負方向側に位置する端部は、外部電極14aに接続されている。
【0021】
ビアホール導体v21,v22はそれぞれ、図2に示すように、絶縁体層16k,16lをz軸方向に貫通しており、ビアホール導体V2を構成している。ビアホール導体V2は、積層体12内に設けられ、かつ、コイルLの端部t2と外部電極14bとを接続している。すなわち、ビアホール導体V2のz軸方向の正方向側に位置する端部は、コイル導体18jの矢印Aの方向の上流側の端部に接続され、ビアホール導体V2のz軸方向の負方向側に位置する端部は、外部電極14bに接続されている。
【0022】
ところで、電子部品10は、正常な実装位置からずれた状態で実装されることを抑制するための構成を有している。具体的には、電子部品10は、ダミー電極15及びダミー導体20,22,24,26を備えている。以下に、ダミー電極15及びダミー導体20,22,24,26について詳細に説明する。
【0023】
まず、図1に示す電子部品10において、長辺L1,L2に外部電極14aが接している部分をそれぞれ接触部分P1,P2と定義する。また、長辺L1,L2に外部電極14bが接している部分をそれぞれ接触部分P3,P4と定義する。更に、接触部分P1,P2のそれぞれにおいて、外部電極14bに最も近い部分を近接部分p1,p2と定義する。また、更に、接触部分P3,P4のそれぞれにおいて、外部電極14aに最も近い部分を近接部分p3,p4と定義する。
【0024】
更に、図1に示す電子部品10において、近接部分p1と近接部分p3との中点を点M1と定義し、近接部分p2と近接部分p4との中点を点M2と定義する。そして、点M1を通過し、かつ、底面S2に対して垂直な直線を直線L10と定義し、点M2を通過し、かつ、底面S2に対して垂直な直線を直線L11と定義する。
【0025】
ダミー導体20a〜20cは、図2に示すように、絶縁体層16i〜16kの表面上に設けられている。より詳細には、ダミー導体20a〜20cは、z軸方向から平面視したときに、近接部分p1と重なるように設けられており、絶縁体層16h〜16kの間から側面S5に露出している。ダミー導体20a〜20cが側面S5から露出している部分のy軸方向の幅は、ダミー導体20a〜20cの順に短くなっていく。
【0026】
ダミー導体22a〜22cは、図2に示すように、絶縁体層16i〜16kの表面上に設けられている。より詳細には、ダミー導体22a〜22cは、z軸方向から平面視したときに、近接部分p2と重なるように設けられており、絶縁体層16h〜16kの間から側面S6に露出している。ダミー導体22a〜22cが側面S6から露出している部分のy軸方向の幅は、ダミー導体22a〜22cの順に短くなっていく。
【0027】
ダミー導体24a〜24cは、図2に示すように、絶縁体層16i〜16kの表面上に設けられている。より詳細には、ダミー導体24a〜24cは、z軸方向から平面視したときに、近接部分p3と重なるように設けられており、絶縁体層16h〜16kの間から側面S5に露出している。よって、ダミー導体24a〜24cは、ダミー導体20a〜20cよりもy軸方向の負方向側において側面S5に露出している。ダミー導体24a〜24cが側面S5から露出している部分のy軸方向の幅は、ダミー導体24a〜24cの順に短くなっていく。
【0028】
ダミー導体26a〜26cは、図2に示すように、絶縁体層16i〜16kの表面上に設けられている。より詳細には、ダミー導体26a〜26cは、z軸方向から平面視したときに、近接部分p4と重なるように設けられており、絶縁体層16h〜16kの間から側面S6に露出している。よって、ダミー導体26a〜26cは、ダミー導体22a〜22cよりもy軸方向の負方向側において側面S6に露出している。ダミー導体26a〜26cが側面S6から露出している部分のy軸方向の幅は、ダミー導体26a〜26cの順に短くなっていく。
【0029】
ダミー電極15aは、図1に示すように、積層体12の側面S5に設けられ、かつ、近接部分p1に接している。より詳細には、ダミー電極15aは、二等辺三角形状をなしており、頂点がz軸方向の負方向側に位置し、底辺がz軸方向の正方向側に位置するように設けられている。そして、ダミー電極15aの頂点は、図1に示すように、近接部分p1に接している。これにより、ダミー電極15aは、その頂点において外部電極14aに接している。更に、ダミー電極15aは、z軸方向から平面視したときに、外部電極14aからy軸方向の負方向側にはみ出している。また、ダミー電極15aは、ダミー導体20a〜20cが側面S5に露出している部分を覆っている。
【0030】
ダミー電極15bは、図1に示すように、積層体12の側面S6に設けられ、かつ、近接部分p2に接している。より詳細には、ダミー電極15bは、二等辺三角形状をなしており、頂点がz軸方向の負方向側に位置し、底辺がz軸方向の正方向側に位置するように設けられている。そして、ダミー電極15bの頂点は、図1に示すように、近接部分p2に接している。これにより、ダミー電極15bは、その頂点において外部電極14aに接している。更に、ダミー電極15bは、z軸方向から平面視したときに、外部電極14aからy軸方向の負方向側にはみ出している。また、ダミー電極15bは、ダミー導体22a〜22cが側面S6に露出している部分を覆っている。
【0031】
ダミー電極15cは、図1に示すように、積層体12の側面S5に設けられ、かつ、近接部分p3に接している。より詳細には、ダミー電極15cは、二等辺三角形状をなしており、頂点がz軸方向の負方向側に位置し、底辺がz軸方向の正方向側に位置するように設けられている。そして、ダミー電極15cの頂点は、図1に示すように、近接部分p3に接している。これにより、ダミー電極15cは、その頂点において外部電極14bに接している。更に、ダミー電極15cは、z軸方向から平面視したときに、外部電極14bからy軸方向の正方向側にはみ出している。また、ダミー電極15cは、ダミー導体24a〜24cが側面S5に露出している部分を覆っている。
【0032】
ダミー電極15dは、図1に示すように、積層体12の側面S6に設けられ、かつ、近接部分p4に接している。より詳細には、ダミー電極15dは、二等辺三角形状をなしており、頂点がz軸方向の負方向側に位置し、底辺がz軸方向の正方向側に位置するように設けられている。そして、ダミー電極15dの頂点は、図1に示すように、近接部分p4に接している。これにより、ダミー電極15dは、その頂点において外部電極14bに接している。更に、ダミー電極15dは、z軸方向から平面視したときに、外部電極14bからy軸方向の正方向側にはみ出している。また、ダミー電極15dは、ダミー導体26a〜26cが側面S6に露出している部分を覆っている。
【0033】
更に、図1に示すように、ダミー電極15aとダミー電極15cとは、直線L10に対して、互いに線対称な形状を有している。同様に、ダミー電極15bとダミー電極15dとは、直線L11に対して、互いに線対称な形状を有している。
【0034】
(電子部品の製造方法)
以下に、電子部品10の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、以下では、複数の電子部品10を同時に作成する際の電子部品10の製造方法について説明する。
【0035】
まず、図2の絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、酸化第二鉄(Fe23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化銅(CuO)及び酸化ニッケル(NiO)を所定の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を800℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、フェライトセラミック粉末を得る。
【0036】
このフェライトセラミック粉末に対して結合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)と可塑剤、湿潤材、分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、キャリアシート上にシート状に形成して乾燥させ、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを作製する。
【0037】
次に、図2に示すように、絶縁体層16b〜16lとなるべきセラミックグリーンシートのそれぞれに、ビアホール導体v1〜v22を形成する。具体的には、絶縁体層16b〜16lとなるべきセラミックグリーンシートにレーザビームを照射してビアホールを形成する。次に、このビアホールに対して、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などの導電性ペーストを印刷塗布などの方法により充填する。
【0038】
次に、図2に示すように、絶縁体層16b〜16kとなるべきセラミックグリーンシートの表面上にコイル導体18a〜18j及びダミー導体20a〜20c,22a〜22c,24a〜24c,26a〜26cを形成する。具体的には、絶縁体層16b〜16kとなるべきセラミックグリーンシートの表面上に、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、コイル導体18a〜18j及びダミー導体20a〜20c,22a〜22c,24a〜24c,26a〜26cを形成する。なお、コイル導体18a〜18j及びダミー導体20a〜20c,22a〜22c,24a〜24c,26a〜26cを形成する工程とビアホールに対して導電性ペーストを充填する工程とは、同じ工程において行われてもよい。
【0039】
また、図2に示すように、絶縁体層16lとなるべきセラミックグリーンシートの裏面上に外部電極14a,14bとなるべき銀電極を形成する。具体的には、絶縁体層16lとなるべきセラミックグリーンシートの裏面上に、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、外部電極14a,14bとなるべき銀電極を形成する。
【0040】
次に、図2に示すように、絶縁体層16a〜16lとなるべきセラミックグリーンシートをこの順に並ぶように積層・圧着して、未焼成のマザー積層体を得る。絶縁体層16a〜16lとなるべきセラミックグリーンシートの積層・圧着は、1枚ずつ積層して仮圧着してマザー積層体を得た後、未焼成のマザー積層体を静水圧プレスなどにより加圧して本圧着を行う。
【0041】
次に、マザー積層体をカット刃により所定寸法の積層体12にカットする。これにより未焼成の積層体12が得られる。
【0042】
次に、未焼成の積層体12に、脱バインダー処理及び焼成を施す。脱バインダー処理は、例えば、低酸素雰囲気中において500℃で2時間の条件で行う。焼成は、例えば、800℃〜900℃で2.5時間の条件で行う。
【0043】
次に、積層体12の側面S5,S6上に、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布後、焼付け処理することにより、ダミー電極15となるべき銀電極を形成する。
【0044】
最後に、外部電極14となるべき銀電極及びダミー電極15となるべき銀電極に対して、Ni/Snめっきを施して、外部電極14及びダミー電極15を形成する。以上の工程により、図1に示すような電子部品10が完成する。
【0045】
(効果)
以上のような電子部品10によれば、以下に説明するように、電子部品10が正常な実装位置からずれた状態で実装されることを抑制できる。図3は、回路基板100上に電子部品10が実装されたときの図である。図3(a)では、電子部品10は、正常な実装位置に実装されており、図3(b)では、電子部品10は、正常な実装位置からずれた状態で実装されている。
【0046】
電子部品10は、図3(a)に示すように、ランド102a,102bを有する回路基板100上にはんだ104a,104bにより実装される。より詳細には、回路基板100上のランド102a,102bもしくは電子部品10の外部電極14a,14bのそれぞれにはんだ104a,104bを塗布する。そして、外部電極14aとランド102aとが一致し、かつ、外部電極14bとランド102bとが一致するように、回路基板100上に電子部品10を搭載する。この際、外部電極14aのy軸方向の負方向側の端部とランド102aのy軸方向の負方向側の端部とが一致し、外部電極14bのy軸方向の正方向側の端部とランド102bのy軸方向の正方向側の端部とが一致する。この後、リフロー工程を行って、はんだ104a,104bを硬化させることにより、電子部品10が回路基板100上に実装される。
【0047】
ここで、リフロー工程の前に外部からの衝撃などにより、電子部品10は、図3(b)に示すように、正常な実装位置からずれてしまうことがある。図3(b)では、電子部品10は、正常な実装位置からy軸方向の正方向側にずれている。このような場合においても、電子部品10は、図3(a)に示すように、正常な実装位置に復帰する。より詳細には、ダミー電極15a〜15dは、外部電極14a,14bに接触している。そのため、リフロー工程前の液状のはんだ104a,104bは、表面張力によってダミー電極15a〜15dの表面を覆うように広がる。
【0048】
図3(b)に示すように、電子部品10が正常な実装位置からy軸方向の正方向側にずれると、外部電極14bはランド102bからy軸方向の正方向側にはみ出してしまう。この際、ダミー電極15c,15d上のはんだ104bが、わずかにz軸方向の負方向側に移動する。これにより、図3(b)のBの部分に示すように、外部電極14bのy軸方向の正方向側の端部とランド102bのy軸方向の正方向側の端部とがはんだ104bによりつながる。そして、Bの部分におけるはんだ104bは、表面張力により、縮もうとする。その結果、電子部品10は、y軸方向の負方向側に力をうける。よって、電子部品10は、図3(a)に示すように、正常な実装位置に復帰する。以上のように、電子部品10によれば、電子部品10が正常な実装位置からずれた状態で実装されることを抑制できる。
【0049】
なお、前記説明では、電子部品10は、正常な実装位置からy軸方向の正方向側にずれた場合について説明を行った。しかしながら、電子部品10は、z軸方向周りに回転するようにずれた場合においても、正常な実装位置に復帰することが可能である。図4は、電子部品10をz軸方向の正方向側から平面視した図である。なお、図4では、z軸方向から平面視したときに、電子部品10が反時計回りに正常な実装位置からわずかに回転している。
【0050】
図4に示すように電子部品10が回転すると、ダミー電極15b及びダミー電極15cにおいて力が発生する。より詳細には、ダミー電極15bは、ランド102aからy軸方向の負方向側にはみ出すようにずれている。そのため、ダミー電極15bには、y軸方向の正方向側に力が働く。一方、ダミー電極15cは、ランド102aからy軸方向の正方向側にはみ出すようにずれている。そのため、ダミー電極15cには、y軸方向の負方向側に力が働く。以上のような2つの力が働くと、電子部品10の上面S1の対角線の交点を中心として、電子部品10を時計回りに回転させるモーメントが発生する。その結果、電子部品10が正常な実装位置に復帰する。なお、電子部品10が時計回りに正常な実装位置からわずかに回転した場合には、ダミー電極15a,15dに力が働くことにより、電子部品10が正常な実装位置に復帰する。以上のように、近接部分p1〜p4の4箇所にダミー電極15a〜15dが設けられることにより、電子部品10は、回転により正常な実装位置からずれたとしても、正常な実装位置に復帰できる。
【0051】
また、電子部品10では、ダミー電極15は、三角形状をなし、かつ、頂点において外部電極14に対して接している。これにより、外部電極14とランド102との間のはんだ104がダミー電極15上に広がりやすくなる。その結果、電子部品10が正常な実装位置に復帰するための力が大きくなる。よって、電子部品10が正常な実装位置により確実に復帰するようになる。
【0052】
また、電子部品10では、はんだ104がダミー電極15上に広がっているので、ダミー電極15上のはんだ104と外部電極14及びランド102間のはんだ104との間で表面張力による引っ張り応力が発生する。これにより、電子部品10が回路基板100に引きつけられるようになる。その結果、電子部品10が回路基板100により強固に実装されるようになる。
【0053】
また、図1に示すように、ダミー電極15aとダミー電極15cとは、直線L10に対して、互いに線対称な形状を有している。同様に、ダミー電極15bとダミー電極15dとは、直線L11に対して、互いに線対称な形状を有している。これにより、ダミー電極15a,15b上のはんだ104aの量とダミー電極15c,15d上のはんだ104bの量とを近づけることができる。したがって、電子部品10が正常な実装位置からy軸方向の正方向側にずれた場合に該電子部品10に働く力の大きさと、電子部品10が正常な実装位置からy軸方向の負方向側にずれた場合に該電子部品10に働く力の大きさとを近づけることができる。その結果、電子部品10が正常な実装位置からずれた状態で実装されることがより効果的に抑制される。
【0054】
(変形例)
以下に、第1の変形例に係る電子部品10a及び第2の変形例に係る電子部品10bについて説明する。図5は、変形例に係る電子部品10aの構成図である。図6は、変形例に係る電子部品10bの構成図である。
【0055】
図5及び図6に示すように、ダミー電極15は、直角三角形状であってもよい。図5では、ダミー電極15は、z軸方向から平面視したときに、外部電極14と重ならずにはみ出している。一方、図6では、ダミー電極15は、z軸方向から平面視したときに、外部電極14と重なっておりはみ出していない。以上のような構成を有する電子部品10a,10bにおいても、電子部品10と同様に、正常な実装位置からずれた状態で実装されることがより効果的に抑制される。
【0056】
次に、第3の変形例に係る電子部品10cについて説明する。図7は、変形例に係る電子部品10cの構成図である。
【0057】
図7に示すように、ダミー電極15は、頂点のみで外部電極14に接するのではなく、一つの辺全体において外部電極14に接していてもよい。以上のような構成を有する電子部品10cにおいても、電子部品10と同様に、正常な実装位置からずれた状態で実装されることがより効果的に抑制される。
【0058】
次に、第4の変形例に係る電子部品10d及び第5の変形例に係る電子部品10eについて説明する。図8は、変形例に係る電子部品10dの構成図である。図9は、変形例に係る電子部品10eの構成図である。
【0059】
図8及び図9に示すように、ダミー電極15は、四角形状であってもよい。図8では、ダミー電極15は、z軸方向から平面視したときに、外部電極14と重ならずにはみ出している。一方、図9では、ダミー電極15は、z軸方向から平面視したときに、外部電極14と重なっておりはみ出していない。以上のような構成を有する電子部品10d,10eにおいても、電子部品10と同様に、正常な実装位置からずれた状態で実装されることがより効果的に抑制される。
【0060】
なお、電子部品10,10a〜10eは、コイルLを回路素子として内蔵している。しかしながら、回路素子は、コイルLに限らず、コンデンサや抵抗等その他の素子であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明は、電子部品に有用であり、特に、本体の底面に第1の外部電極及び第2の外部電極が設けられている電子部品が正常な実装位置からずれた状態で実装されることを抑制できる点において優れている。
【符号の説明】
【0062】
L コイル
L1,L2 長辺
L10,L11 直線
M1,M2 点
P1〜P4 接触部分
S1 上面
S2 底面
S3,S4 端面
S5,S6 側面
p1〜p4 近接部分
10,10a〜10e 電子部品
12 積層体
14a,14b 外部電極
15a〜15d ダミー電極
16a〜16l 絶縁体層
20a〜20c,22a〜22c,24a〜24c,26a〜26c ダミー導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体状をなす本体と、
前記本体の底面において互いに平行な第1の辺と第2の辺との間に設けられ、かつ、該底面に隣接する面には設けられていない第1の外部電極及び第2の外部電極であって、互いに対向している第1の外部電極及び第2の外部電極と、
前記本体の側面に設けられ、かつ、前記第1の辺及び前記第2の辺に前記第1の外部電極が接している部分のそれぞれにおいて前記第2の外部電極に最も近い第1の近接部分及び第2の近接部分のそれぞれに接している第1のダミー電極及び前記第2のダミー電極と、
前記本体の側面に設けられ、かつ、前記第1の辺及び前記第2の辺に前記第2の外部電極が接している部分のそれぞれにおいて前記第1の外部電極に最も近い第3の近接部分及び第4の近接部分のそれぞれに接している第3のダミー電極及び第4のダミー電極と、
を備えていること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記第1のダミー電極及び前記第2のダミー電極はそれぞれ、三角形状をなしていると共に、頂点において前記第1の外部電極に接し、
前記第3のダミー電極及び前記第4のダミー電極はそれぞれ、三角形状をなしていると共に、頂点において前記第2の外部電極に接していること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1のダミー電極と前記第3のダミー電極とは、前記第1の近接部分と前記第3の近接部分との中点を通過し、かつ、前記底面に垂直な直線に対して、互いに線対称な形状を有し、
前記第2のダミー電極と前記第4のダミー電極とは、前記第2の近接部分と前記第4の近接部分との中点を通過し、かつ、前記底面に垂直な直線に対して、互いに線対称な形状を有していること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子部品。
【請求項4】
前記第1のダミー電極及び前記第2のダミー電極はそれぞれ、上面を平面視したときに、前記第1の外部電極からはみ出しており、
前記第3のダミー電極及び前記第4のダミー電極はそれぞれ、上面を平面視したときに、前記第2の外部電極からはみ出していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−228326(P2011−228326A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93801(P2010−93801)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】