電子部品
【課題】はんだ濡れ性及び導電性が確保され、Snめっき層に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができる電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品1は、金属材料で形成された本体部11と、本体部11の表面に被覆された下地めっき層12と、下地めっき層12に対してSn又はSn合金が被覆されることで形成されたSnめっき層13と、を備えている。下地めっき層12は、Ni−B合金が被覆されることで形成されたNi−Bめっき層15、及び、Ni−P合金が被覆されることで形成されたNi−Pめっき層16の少なくともいずれかのめっき層を有する。Snめっき層の厚み寸法Tsnの平均寸法が、0.2μm以上で0.6μm以下の範囲に設定される。
【解決手段】電子部品1は、金属材料で形成された本体部11と、本体部11の表面に被覆された下地めっき層12と、下地めっき層12に対してSn又はSn合金が被覆されることで形成されたSnめっき層13と、を備えている。下地めっき層12は、Ni−B合金が被覆されることで形成されたNi−Bめっき層15、及び、Ni−P合金が被覆されることで形成されたNi−Pめっき層16の少なくともいずれかのめっき層を有する。Snめっき層の厚み寸法Tsnの平均寸法が、0.2μm以上で0.6μm以下の範囲に設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Sn又はSn合金が被覆されて構成されたSnめっき層が表面に形成された電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
Pb(鉛)の使用を原則として禁止するRoHS指令が欧州において発動されたことや環境負荷の軽減を図る観点から、近年、電子部品において、めっき層の材料として、Pb(鉛)を含有する従来の材料に代えて、Sn(錫)又はSn合金を主成分とする鉛フリー材料が使用されている。しかしながら、電子部品の表面にSn又はSn合金を被覆するSnめっき層を形成すると、ウィスカと呼ばれる針状結晶が発生し、電気的な短絡を誘発してしまい易いという問題がある。
【0003】
一方、電子部品の表面においてSnめっき層の代わりに金めっき層を形成することで、ウィスカ発生の問題を回避することができる。しかしながら、金は、高価であるため、製造コストの上昇を招いてしまうという問題がある。そのため、Snめっき層においてウィスカの発生を抑制する技術の開発が望まれている。そして、ウィスカの発生が抑制されるとともに、電子部品の性能として、はんだ濡れ性及び導電性も確保されることが必要となる。
【0004】
尚、特許文献1及び特許文献2においては、表面にSn又はSn合金が被覆されて構成されたSnめっき層が形成された電子部品が開示されている。特許文献1では、下地めっき層としてNi(ニッケル)で形成された層とNi−P(ニッケル−リン)合金で形成された層とが設けられ、Ni−P合金で形成された下地めっき層の表面に対してはんだめっき層としてのSnめっき層が設けられた電子部品が開示されている。また、特許文献2では、ホウ素、硫黄及び鉄からなる群より選ばれた元素の少なくとも一種以上を0.01〜3重量%の割合で含有するニッケルで形成された下地めっき層が設けられ、この下地めっき層の表面にSnめっき層が設けられた電子部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−109373号公報
【特許文献2】特開2005−314750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に開示された電子部品は、いずれも、ウィスカの発生を抑制することを目的としている。しかしながら、コネクタ用の端子などの電子部品は、その表面のSnめっき層を外部の他の部材が摺動したり加圧したりする状態で用いられることが多い。このため、Snめっき層に対して作用する外力の影響によって、ウィスカの発生が促進されてしまい易い傾向がある。そして、特許文献1や特許文献2に開示された電子部品のように、ウィスカ発生を抑制する対策が講じられた電子部品であっても、Snめっき層に対して作用する外力の影響によって、ウィスカの発生が促進されてしまい易い傾向があり、更なる抑制が望まれる状況にある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、はんだ濡れ性及び導電性が確保され、Snめっき層に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明に係る電子部品は、表面にめっき層が形成された電子部品であって、金属材料で形成された本体部と、前記本体部の表面に対して被覆された下地めっき層と、前記下地めっき層の表面に対してSn又はSn合金が被覆されることで形成されたSnめっき層と、を備えている。そして、第1発明に係る電子部品は、前記下地めっき層は、Ni−B合金が被覆されることで形成されたNi−Bめっき層、及び、Ni−P合金が被覆されることで形成されたNi−Pめっき層の少なくともいずれかのめっき層を有し、前記Snめっき層の平均厚み寸法が、0.2μm以上で0.6μm以下の範囲に設定されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によると、電子部品の本体部の表面に対して、Ni−Bめっき層及びNi−Pめっき層の少なくともいずれかを含む下地めっき層が形成される。このため、比較的良好なはんだ濡れ性と導電性とを発揮することができるNi−B合金又はNi−P合金を含む下地めっき層を形成することで、電子部品としての性能を確保するために必要となる十分なめっき厚みを確保することができる。そして、その下地めっき層の表面に平均厚み寸法が0.2μm以上で0.6μm以下のSnめっき層が更に形成される。このため、下地めっき層の表面に、はんだ濡れ性及び導電性に非常に優れたSn又はSn合金によるSnめっき層が薄めっき化(薄肉化)された状態で形成される。これにより、はんだ濡れ性及び導電性の更なる向上を図ることができるとともに、Snめっき層が薄肉化されていることによってウィスカの発生を抑制することができる。
【0010】
そして、本発明の電子部品では、Snめっき層が薄肉化されていることで、Snめっき層の変形量が低減されるため、Snめっき層の表面を外部の他の部材が加圧したりする状態が生じてSnめっき層に対して外力が作用する場合であっても、表面のSnめっき層におけるウィスカの発生を抑制することができる。また、外部の他の部材が電子部品の表面を摺動する場合であっても、Snめっき層の変形量が低減されるため、表面のSnめっき層におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【0011】
また、本願発明者が検証したところ、本発明の電子部品によると、Snめっき層の平均厚み寸法が0.2μm以上に設定されることで、十分なはんだ濡れ性及び導電性が確保できることを確認することができた。更に、Snめっき層の平均厚み寸法が0.6μm以下に設定されることで、前述した効果、即ち、Snめっき層に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができることも確認することができた。従って、本発明によると、はんだ濡れ性及び導電性が確保され、Snめっき層に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができる電子部品を提供することができる。
【0012】
第2発明に係る電子部品は、第1発明の電子部品であって、前記Snめっき層の表面に対して接触した他の部材が当該Snめっき層の表面を加圧した状態で、用いられることを特徴とする。
【0013】
この発明によると、Snめっき層の表面に他の部材が加圧接触した状態で電子部品が用いられる場合であっても、Snめっき層におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【0014】
第3発明に係る電子部品は、第2発明の電子部品において、前記他の部材が導体として構成され、前記Snめっき層における前記他の部材と接触する部分が、前記他の部材に対して電気的に接続される電気接点部を構成することを特徴とする。
【0015】
この発明によると、Snめっき層における他の部材が加圧接触する部分が電気接点部を構成する形態で電子部品が用いられる場合であっても、Snめっき層におけるウィスカの発生を抑制することができる。このため、電子部品において、ウィスカが電気的な短絡を誘発してしまう事態が生じることを抑制することができる。
【0016】
第4発明に係る電子部品は、第2発明の電子部品において、前記他の部材が絶縁性材料で形成されたハウジング部材として構成され、前記ハウジング部材に対して圧入されることで、当該ハウジング部材が前記Snめっき層の表面を摺動して加圧することを特徴とする。
【0017】
この発明によると、絶縁性材料で形成されたハウジング部材に対して電子部品が圧入され、Snめっき層に対して摺動状態及び加圧状態で外力が作用する場合であっても、Snめっき層におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、はんだ濡れ性及び導電性が確保され、Snめっき層に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができる電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子部品である端子がコネクタにおいて取り付けられた状態を示す断面図である。
【図2】図1に示す端子の表面における一部の断面について模式的に拡大して示す模式拡大断面図である。
【図3】本発明の効果を検証するための検証試験に用いた試験片としての端子の表面における一部の断面について模式的に拡大して示す模式拡大断面図である。
【図4】本発明の効果を検証するために行った検証試験の結果を示す図であって、最長ウィスカ長さ確認試験の結果を示す図である。
【図5】従来例に係る端子であって最長ウィスカ長さ確認試験が行われた端子の電気接点部のSnめっき層における表面のSEM写真による画像を例示したものである。
【図6】本発明の実施例に係る端子であって最長ウィスカ長さ確認試験が行われた端子の電気接点部のSnめっき層における表面のSEM写真による画像を例示したものである。
【図7】本発明の効果を検証するために行った検証試験の結果を示す図であって、はんだ濡れ性確認試験の結果を示す図である。
【図8】本発明の効果を検証するために行った検証試験の結果を示す図であって、導電性確認試験の結果を示す図である。
【図9】本発明の効果を検証するために行った検証試験の結果を示す図であって、導電性確認試験の結果を示す図である。
【図10】本発明の効果を検証するために行った検証試験の結果を示す図であって、導電性確認試験の結果を示す図である。
【図11】本発明の実施例に係る端子であってリフロー工程が行われた端子の表面部分の断面のSEM写真による画像を例示したものである。
【図12】本発明の実施例に係る端子であってリフロー工程が行われた端子の表面部分の断面のSEM写真による画像を例示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本実施形態の説明においては、コネクタ用の端子として構成された電子部品に対して本発明が適用された場合を例にとって説明するが、この例に限らず、本発明を適用することができる。即ち、本発明は、Sn又はSn合金が被覆されて構成されたSnめっき層が表面に形成された電子部品に関して、広く適用することができるものである。
【0021】
図1は、本実施形態における電子部品として構成されたコネクタ用の端子1がコネクタ100において取り付けられた状態を示す断面図である。コネクタ100は、例えば、フラットケーブル101の端部が接続されるコネクタとして構成されている。尚、図1は、コネクタ100の幅方向に対して垂直な断面を示している。そして、図1においては、コネクタ100におけるハウジング部材102及び回動部材103と、端子1に対して電気的に接続されるフラットケーブル101とについては、断面で図示し、端子1については外形を図示している。
【0022】
図1に示すように、コネクタ100は、ハウジング部材102と、回動部材103と、本実施形態の端子(電子部品)1とを備えて構成されている。尚、端子1は、コネクタ100において複数備えられている。ハウジング部材102及び回動部材103は、絶縁性材料として構成された樹脂材料によって形成されている。端子1の母材(後述する本体部11)は、金属材料で形成され、例えば、リン青銅によって形成されている。そして、後述するように、端子1の表面にはめっき層が形成されている。
【0023】
ハウジング部材102には、複数の端子1のそれぞれが挿入される複数の挿入口102aが形成され、各挿入口102aは、ハウジング部材102の内側の空間領域(後述の開放領域102b)に連通するように形成されている。尚、複数の挿入口102aは、コネクタ100の幅方向に直列に並んで配置されている。そして、ハウジング部材102における複数の挿入口102aと反対側において外部に対して開放されるように形成された開放領域102bは、フラットケーブル101の端部が配置される領域を構成している。
【0024】
また、開放領域102bに配置されるフラットケーブル101の端部は、絶縁被覆が剥がされて導体が露出し、端子1と電気的に接続可能な状態に形成されている。尚、フラットケーブル101は、例えば、フレキシブルフラットケーブル或いはフレキシブルプリント回路基板等として設けられ、平行に配列された複数の導体が一体に絶縁被覆されることで形成されている。
【0025】
端子1は、一方の端部おいて、二股状に突出するように形成された一対の突出片部(1a、1b)が形成され、他方の端部において、図示しない他の機器や基板等に対して実装等によって取り付けられる。そして、端子1は、この一対の突出片部(1a、1b)において、ハウジング部材102の挿入孔102aに挿入される。このとき、端子1は、ハウジング部材102に対して挿入口102aにおいて圧入される状態で挿入される。
【0026】
また、端子1における一方の突出片部1aには、フラットケーブル101の端部における各導体に対して電気的に接続される電気接点部1cが突起状に形成されている。また、端子1における他方の突出片部1bには、後述の回動部材103における各回転軸部103aの外周に対して摺動自在に係止する係止凹部1dが形成されている。
【0027】
回動部材103は、ハウジング部材102及び複数の端子1に対して回動するように操作されるレバー状の部材として設けられるとともに、フラットケーブル101の端部の各導体を各端子1に対して加圧した状態で押し付ける部材として設けられている。そして、この回動部材103は、ハウジング部材102の幅方向に沿って延びるとともにハウジング部材102の開放領域102bを部分的に覆うように形成されている。
【0028】
また、回動部材103は、一方の端部側が回動操作用の操作部103bとして形成され、他方の端部側に複数の溝部103cが幅方向に沿って並んで配置されるように形成されている。各溝部103cは、各端子1における他方の突出片部1bの先端部分が挿入される溝部を構成している。そして、各溝部103cには、この溝部103cに亘って架け渡されるように形成された各回転軸部103aが配置されている。この各回転軸部103aの外周に対しては、前述のように、端子1の他方の突出片部1bにおける係止凹部1dが摺動自在に係止される。これにより、回動部材103は、各回転軸部103aにおいて各端子1の係止凹部1dに係止した状態で、複数の端子1に対して回動自在に支持されるように構成されている。
【0029】
コネクタ100においては、ハウジング部材102に対して、各挿入口102aから各端子1が圧入される。そして、ハウジング部材102に対して複数の端子1が全て圧入された状態で、回動部材103が取り付けられる。このとき、回動部材103は、ハウジング部材103に対して略垂直な姿勢で、各回転軸部103aにおいて各端子1の係止凹部1dに係止される。各回転軸部103aが各係止凹部1dに係止されることで、複数の端子1に対して回動部材103が回動自在に支持されることになる。
【0030】
上記のようにコネクタ100が組み立てられた状態で、フラットケーブル101の端部が、開放領域102bに配置された複数の端子1におけるそれぞれの一対の突出片部(1a、1b)の間に挿入される。このとき、回動部材103がハウジング部材102に対して略垂直な姿勢の状態のコネクタ100において、フラットケーブル101の端部が各一対の突出片部(1a、1b)の間に挿入される。そして、フラットケーブル101の端部が挿入された後、操作部103bが操作されることにより、回動部材103が、各回転軸部103aにおいて各係止凹部1dに摺動しながら複数の端子1に対して回動する。これにより、回動部材103においてフラットケーブル101に対向する面として設けられた加圧面103dによって、フラットケーブル101の端部の各導体が各端子1における電気接点部1cに対して押し付けられて、各導体と各電気接点部1cとが電気的に接続されることになる。そして、フラットケーブル101の端部の各導体が各端子1の電気接点部1cを加圧した状態で、フラットケーブル101の端部がコネクタ1に保持され、コネクタ100とフラットケーブル101とが接続されることになる。
【0031】
次に、本実施形態の電子部品である端子1における表面のめっき層の構造について詳しく説明する。図2は、端子1の表面における一部の断面について模式的に拡大して示す模式拡大断面図である。尚、図2では、ハウジング部材102に圧入された端子1が電気接点部1cにおいてフラットケーブル101の導体と接触する部分における模式拡大断面図を示している。図2に示すように、端子1は、金属材料(本実施形態では、リン青銅)で形成された母材である本体部11と、本体部11の表面に対して被覆された下地めっき層12と、下地めっき層12に対して被覆されたSnめっき層13とを備えている。
【0032】
下地めっき層12は、本体部11の表面に対して被覆されて形成されたNiめっき層14と、Niめっき層14の表面に対して更に被覆されて形成されたNi−Bめっき層15とを備えて構成されている。Niめっき層14は、Ni(ニッケル)又はNi合金が被覆されることで形成され、電解めっき又は無電解めっきによって形成される。一方、Ni−Bめっき層15は、Ni−B合金(ニッケル−ホウ素合金)が被覆されることで形成され、無電解めっきによって形成される。
【0033】
尚、本実施形態では、下地めっき層12として、Niめっき層14とNi−Bめっき層15とが形成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。下地めっき層12は、Ni−Bめっき層15、及び、Ni−P合金(ニッケル−リン合金)が被覆されることで形成されたNi−Pめっき層の少なくともいずれかのめっき層を有していればよい。
【0034】
例えば、下地めっき層12において、Niめっき層14の表面に対して、Ni−Bめっき層15ではなくNi−Pめっき層が形成された形態であってもよい。また、Niめっき層14が備えられていない形態の下地めっき層12を構成してもよい。即ち、Ni−Bめっき層15のみが形成された下地めっき層12、Ni−Pめっき層のみが形成された下地めっき層12、等を構成してもよい。また、Ni−Bめっき層15及びNi−Pめっき層の両方が備えられている下地めっき層12を構成してもよい。尚、Ni−Pめっき層は、電解めっき又は無電解めっきによって形成される。
【0035】
尚、本体部11の表面とNi−Bめっき層15との間、又は、本体部11の表面とNi−Pめっき層との間にNiめっき層14を形成することによって、めっき材料の低コスト化を図ることができる。即ち、後述のSnめっき層13に隣接するめっき層としてNi−Bめっき層15又はNi−Pめっき層を配置するとともに、Niを多く使用してNi−B合金又はNi−P合金の使用量を削減しつつ十分な厚みの下地めっき層12を形成することができる。
【0036】
Snめっき層13は、下地めっき層12のNi−Bめっき層15の表面に対してSn(錫)又はSn合金が被覆されることで形成され、電解めっき又は無電解めっきによって形成される。また、このSnめっき層13は、その厚み寸法(図2において両端矢印Tsnで示す寸法)の平均値である平均厚み寸法が、0.2μm以上で0.6μm以下の範囲に設定されている。尚、Snめっき層13の平均厚み寸法は、めっき条件(例えば、電解めっきにおける電流条件やめっき時間条件等)を適宜設定することによって調整されることになる。また、Snめっき層13の厚み寸法Tsnの計測は、例えば、端子1の表面部分における断面のSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)写真の画像に基づいて行われる。
【0037】
また、端子1は、前述のように、コネクタ100において用いられる。このため、端子1は、Snめっき層13の表面に対して接触した他の部材であるハウジング部材102又はフラットケーブル101の導体がSnめっき層13の表面を加圧した状態で、用いられることになる。
【0038】
そして、上記の他の部材がフラットケーブル101の導体として構成される場合は、端子1は、Snめっき層13における他の部材(フラットケーブル101の導体)と接触する部分が、他の部材に対して電気的に接続される電気接点部1cを構成している。また、上記の他の部材がハウジング部材102として構成される場合は、端子1がハウジング部材102に対して圧入されることで、ハウジング部材102がSnめっき層13の表面を摺動して加圧するように構成されている。
【0039】
次に、本発明の効果を検証するために行った検証試験の結果について説明する。図3は、検証試験に用いた試験片としての端子(1、2、3、4)の表面における一部の断面について模式的に拡大して示す模式拡大断面図である。図3(a)は、本発明の第1実施例として作製した端子1の試験片の表面の一部の模式拡大断面図である。図3(b)は、第1比較例として作製した端子2の試験片の表面の一部の模式拡大断面図である。図3(c)は、本発明の第2実施例として作製した端子3の試験片の表面の一部の模式拡大断面図である。図3(d)は、第2比較例として作製した端子4の試験片の表面の一部の模式拡大断面図である。
【0040】
図3(a)に模式拡大断面図示す第1実施例に係る端子1の作製においては、端子1の形状に形成された本体部11に対して、Niめっき層14を電解めっきで形成し、更に、その表面にNi−Bめっき層15を無電解めっきで形成して、下地めっき層12を形成した。そして、この下地めっき層12の表面に薄めっきのSnめっき層13を電解めっきにより形成した。尚、第1実施例では、端子1について複数作製し、これらの複数の端子1について、SEM写真の画像に基づいて、Snめっき層13の平均厚みが0.2〜0.6μmの範囲に設定されていることを確認した。また、図3(b)に模式拡大断面図を示す第1比較例に係る端子2については、本体部11の表面にNiめっき層14及びNi−Bめっき層15のみが形成されてSnめっき層13が形成されていない形態の端子として作製した。この第1比較例に係る端子2についても複数作成した。
【0041】
図3(c)に模式拡大断面図示す第2実施例に係る端子3の作製においては、端子1と同様の形状に形成された本体部11に対して、Niめっき層14を電解めっきで形成し、更に、その表面にNi−P合金が被覆されることで形成されるNi−Pめっき層16を無電解めっきで形成して、下地めっき層12を形成した。そして、この下地めっき層12の表面に薄めっきのSnめっき層13を電解めっきにより形成した。尚、第2実施例では、端子3について複数作製し、これらの複数の端子3について、SEM写真の画像に基づいて、Snめっき層13の平均厚みが0.2〜0.6μmの範囲に設定されていることを確認した。また、図3(d)に模式拡大断面図を示す第2比較例に係る端子4については、本体部11の表面にNiめっき層14及びNi−Pめっき層16のみが形成されてSnめっき層13が形成されていない形態の端子として作製した。この第2比較例に係る端子4についても複数作成した。
【0042】
また、検証試験においては、後述のように、図4に試験結果を示す最長ウィスカ長さ確認試験、図7に試験結果を示すはんだ濡れ性確認試験、図8乃至図10に試験結果を示す導電性確認試験を行った。以下、これらの試験結果について説明する。
【0043】
図4は、最長ウィスカ長さ確認試験を第1実施例に係る端子1と、第1比較例に係る端子2と、第2実施例に係る端子3と、第2比較例に係る端子4とについて実施した結果を示す図である。最長ウィスカ長さ確認試験においては、第1及び第2実施例にかかる端子(1、3)のSnめっき層13に対して外力が作用する場合におけるSnめっき層13からのウィスカ発生の抑制効果を検証する試験を行った。また、この試験では、第1及び第2比較例に係る端子(2、4)における最外めっき層であるNi−Bめっき層15又はNi−Pめっき層16に対して外力が作用する場合におけるウィスカ発生状況の確認もあわせて行った。
【0044】
最長ウィスカ長さ確認試験では、まず、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とについて、ハウジング部材102に圧入されてフラットケーブル101の端部の導体と電気的に接続される端子として、実際に使用される場合と同様の使用形態でそれぞれ使用し、その後、ウィスカの発生状況を確認した。ウィスカ発生状況の確認では、フラットケーブル101の導体が加圧状態で接触して通電される電気接点部についてSEMによる観察を行った。そして、このSEMによる電気接点部の表面の観察によって発生が確認されたウィスカのうち最も長さが長いウィスカ(最長ウィスカ)の長さを第1実施例と第2実施例と第1比較例と第2比較例とにおいて確認した。
【0045】
また、上記の最長ウィスカ長さ確認試験においては、各端子(1、2、3、4)が、実装用途に用いられる場合を想定し、リフロー炉(基板にはんだペーストを介して載置して実装する際に用いる炉)を通過させるリフロー工程を行った試験片(端子)を作製した。そして、このようにリフロー工程を行った試験片では、基板に実際に実装することなく、試験片単独でリフロー炉を通過させた。尚、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とについては、試験片をそれぞれ複数(120個)作製し、最長ウィスカの長さを確認した。
【0046】
また、従来例に対応する端子も作製し、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とに加え、従来例に係る端子(以下、「端子C」という)に対しても最長ウィスカ長さ確認試験を行った。尚、従来例に係る端子Cは、本体部11の表面に対して直接に厚いSnめっき層を被覆形成することで形成し、リフロー工程を行っていない試験片として作製した。そして、従来例に係る端子Cについても、ハウジング部材102に圧入されてフラットケーブル101の端部の導体と電気的に接続される端子として、実際に使用される場合と同様の使用形態で使用し、その後、ウィスカの発生状況を確認し、最長ウィスカ長さ確認試験を行った。
【0047】
図4の最長ウィスカ長さ確認試験の試験結果に示すように、従来例に係る端子Cでは500μmの長さのウィスカが発生した。しかしながら、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)については、最長ウィスカ長さであっても10μmから15μm程度の長さのウィスカしか発生しなかった。このため、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)においては、Snめっき層13に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができることを確認することができた。一方、第1及び第2比較例に係る端子(2、4)については、Snめっき層13が表面に被覆形成されていないことから、10μm以上の長さのウィスカの発生は確認されなかった。尚、今回の試験では、従来例に係る端子Cで確認されたウィスカの長さは500μmであったが、通常、上記の従来例に係る端子Cと同様に形成された端子では、1〜2mm程度の長さのウィスカが発生することが知られている。
【0048】
ここで、上述した試験片のうち、第1実施例に係る端子1と従来例に係る端子Cとにおける電気接点部のSnめっき層における表面のSEM写真の画像について説明する。図5は、従来例に係る端子Cの電気接点部のSnめっき層における表面のSEM写真による画像を例示したものである。また、図6は、第1実施例に係る端子1であってリフロー工程が行われていない状態の端子1のSnめっき層13における表面のSEM写真による画像を例示したものである。尚、表面のSEM写真による画像を図6に示す端子1についても、ハウジング部材102に圧入されてフラットケーブル101の端部の導体と電気的に接続される端子として、実際に使用される場合と同様の使用形態で使用し、その後、ウィスカの発生状況を確認した。
【0049】
図5のSEM画像に示すように、従来例に係る端子Cでは、500μm程度の長さの長く伸びるウィスカが発生している。これに対して、図6のSEM画像に示すように、第1実施例に係る端子1では、ウィスカの発生がほとんど見られない状態であった。そして、図6において破線で囲んで示すように、第1実施例に係る端子1では、Snめっき層13が薄肉化されて形成されているため、Snめっき層13の変形量が少なく、Snめっき層13における削られている金属の量が非常に少ない状態であることが確認できた。よって、Snめっき層13の表面を外部の他の部材が加圧したりする状態が生じてSnめっき層13に対して外力が作用する場合であっても、表面のSnめっき層13におけるウィスカの発生を抑制できることが確認できた。
【0050】
図7は、はんだ濡れ性確認試験を第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とについて実施した結果を示す図である。このはんだ濡れ性確認試験においては、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とについて、プレッシャークッカーテスター(電子部品の耐湿評価の加速寿命試験機)を用いて温度が105℃、湿度が100%、処理時間が8時間の条件にて処理を行い、その後、メニスコグラフによるはんだ濡れ性確認試験を行った。そして、ゼロクロスタイム(秒)によりはんだ濡れ性を評価した。
【0051】
尚、ゼロクロスタイムは、試験片としての端子の端部がはんだペーストに浸漬されてから、端子に対してはんだから作用する力が一旦プラスマイナスゼロとなる瞬間を経過するまでの時間として測定される。即ち、ゼロクロスタイムは、試験片としての端子の端部がはんだペーストに浸漬されて加熱によるはんだペーストの溶剤の分離による濡れ現象が始まり、フラックス成分の溶解とそれに伴う浮力が生じる現象と濡れが生じる現象とが発生し、更に、はんだ粉の溶解とそれに伴う浮力が生じる現象と濡れが生じる現象とが発生する過程において、端子に対してはんだから作用する力が一旦プラスマイナスゼロとなる瞬間を経過するまでの時間として計測される。
【0052】
また、上記のはんだ濡れ性確認試験では、はんだの材料としては、Sn−3Ag−0.5Cuを用いた。そして、このはんだ濡れ性確認試験では、端子のはんだペーストに対する浸漬深さを0.2mmに設定し、十分なはんだ濡れ性を確保することができるゼロクロスタイムの要求水準が3秒以下であることから、端子をはんだペーストに浸漬してから引き上げるまでの時間である浸漬時間を3秒に設定した。即ち、浸漬時間である3秒以内にゼロクロスタイムが計測されれば、十分なはんだ濡れ性を確保することができることになる。
【0053】
また、上記のはんだ濡れ性確認試験では、第1実施例に係る端子1(図7にて試験結果を「Ni−B+Sn」で表示)と、第1比較例に係る端子2(図7にて試験結果を「Ni−B」で表示)と、第2実施例に係る端子3(図7にて試験結果を「Ni−P+Sn」で表示)と、第2比較例に係る端子4(図7にて試験結果を「Ni−P」で表示)とのそれぞれについて、複数(24個)の試験片を作成してゼロクロスタイムの計測を行った。そして、この計測結果については、平均値と最大値と最小値とで評価した。尚、図7においては、平均値の結果については白抜きで示し、最大値の結果については細かいドットの模様のハッチングで示し、最小値の結果については斜線の模様のハッチングで示している。
【0054】
図7のはんだ濡れ性確認試験結果に示すように、第1及び第2比較例に係る端子(2、4)については、いずれとも、平均値、最大値及び最小値ともに浸漬時間の3秒の間にゼロクロスタイムを計測することができず、はんだ濡れ性の確保が十分でないことが確認された。これに対し、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)については、いずれとも、平均値、最大値及び最小値ともにゼロクロスタイムが3秒以下となり、十分なはんだ濡れ性を確保できることが確認できた。
【0055】
図8乃至図10は、導電性確認試験を第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)ととについて実施した結果を示す図である。図8乃至図10に結果を示す導電性確認試験においては、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とについて、リフロー炉で基板に実装し、その後、後述するような所定の試験をそれぞれ行い、所定の試験を行うことによる抵抗上昇値(mΩ)を測定した。また、第1実施例に係る端子1(図8にて試験結果を「Ni−B+Sn」で表示)と、第1比較例に係る端子2(図8にて試験結果を「Ni−B」で表示)と、第2実施例に係る端子3(図8にて試験結果を「Ni−P+Sn」で表示)と、第2比較例に係る端子4(図8にて試験結果を「Ni−P」で表示)とについては、各試験条件に対応する試験片をそれぞれ複数(24個)作製して(即ち、試験条件ごとにそれぞれ24個の端子を作製して)抵抗上昇値の測定を行った。そして、この測定結果については、各試験条件における抵抗上昇値の最大値である最大抵抗上昇値(mΩ)で評価した。
【0056】
図8に結果を示す導電性確認試験では、ハウジング部材102に圧入された状態の端子における一対の突出片部の間にフラットケーブル101の端部を挿入し、回動部材103を操作して端子とフラットケーブル101の端部の導体とを接続した後に、回動部材103を操作してフラットケーブル101を抜き出す挿抜作業を繰り返し実施する試験を行った。そして、挿抜作業を10回繰り返して実施した条件(挿抜10回)と、挿抜作業を30回繰り返して実施した条件(挿抜30回)と、挿抜作業を50回繰り返して実施した条件(50回)との3つの条件で試験を行い、各試験の後に抵抗上昇値を測定して前述の最大抵抗上昇値(mΩ)を評価した。尚、図8においては、上記の挿抜10回の結果については白抜きで示し、上記の挿抜30回の結果については細かいドットの模様のハッチングで示し、上記の挿抜50回の結果については斜線の模様のハッチングで示している。
【0057】
上記の挿抜作業が繰り返されても良好な導電性を確保できる水準として、通常、挿抜作業が30回繰り返された状態で抵抗上昇値が20mΩ以下であることが要求される。これに対して、図8の導電性試験結果に示すように、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とのいずれについても、挿抜作業が10回、30回、及び50回のいずれにおいても、最大抵抗上昇値が3mΩ以下と、良好な水準を確保できることを確認できた。そして、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)においては、要求される水準(挿抜作業が30回の条件)よりも厳しく過酷な条件(挿抜作業が50回の条件)が課される試験であっても、良好な導電性を維持できることを確認できた。
【0058】
図9及び図10に結果を示す導電性確認試験では、第1実施例に係る端子1(図9及び図10にて試験結果を「Ni−B+Sn」で表示)と、第1比較例に係る端子2(図9及び図10にて試験結果を「Ni−B」で表示)と、第2実施例に係る端子3(図9及び図10にて試験結果を「Ni−P+Sn」で表示)と、第2比較例に係る端子4(図9及び図10にて試験結果を「Ni−P」で表示)とについて、熱衝撃試験、湿度試験、高温試験、硫化水素ガス試験を行った。そして、各試験(熱衝撃試験、湿度試験、高温試験、硫化水素ガス試験)の後に、各試験が行われた各試験片の抵抗上昇値をそれぞれ測定し、最大抵抗上昇値(mΩ)を評価した。尚、図9及び図10においては、熱衝撃試験の結果については白抜きで示し、湿度試験の結果については細かいドットの模様のハッチングで示し、高温試験の結果については斜線の模様のハッチングで示し、硫化水素ガス試験の結果については網掛けの模様のハッチングで示している。
【0059】
図9に結果を示す導電性確認試験における熱衝撃試験では、−55℃から85℃の範囲で温度が変化する熱サイクル(−55℃の温度に30分間設定され、85℃の温度に30分間設定される温度パターンの熱サイクル)を500時間の間に500サイクル繰り返す環境に試験片をさらした。一方、図10に結果を示す導電性確認試験における熱衝撃試験では、上記と同じ温度パターンにて−55℃から85℃の範囲で温度が変化する熱サイクルを1000時間の間に1000サイクル繰り返す環境に試験片をさらした。尚、通常、端子の導電性を確認するために要求される熱衝撃試験の水準としては、上記温度範囲の熱サイクルを25時間の間に25サイクル繰り返す環境に試験片がさらされる条件が設定される。しかし、今回の試験では、より厳しく過酷な条件で試験を行った。
【0060】
図9に結果を示す導電性確認試験における湿度試験では、温度が40℃±2℃で湿度が90%〜95%の環境に500時間に亘って試験片をさらした。一方、図10に結果を示す導電性確認試験における湿度試験では、温度が40℃±2℃で湿度が90%〜95%の環境に1000時間に亘って試験片をさらした。尚、通常、端子の導電性を確認するために要求される湿度試験の水準としては、上記の温度及び湿度の環境に試験片が240時間に亘ってさらされる条件が設定される。しかし、今回の試験では、より厳しく過酷な条件で試験を行った。
【0061】
図9に結果を示す導電性確認試験における高温試験では、温度が85℃±2℃の環境に500時間に亘って試験片をさらした。一方、図10に結果を示す導電性確認試験における高温試験では、温度が85℃±2℃の環境に1000時間に亘って試験片をさらした。尚、通常、端子の導電性を確認するために要求される高温試験の水準としては、上記の温度の環境に試験片が250時間に亘ってさらされる条件が設定される。しかし、今回の試験では、より厳しく過酷な条件で試験を行った。
【0062】
図9に結果を示す導電性確認試験における硫化水素ガス試験では、硫化水素濃度が3ppm±1ppm、温度が40℃±2℃、湿度が80%±5%の環境に500時間に亘って試験片をさらした。一方、図10に結果を示す導電性確認試験における硫化水素ガス試験では、硫化水素濃度が3ppm±1ppm、温度が40℃±2℃、湿度が80%±5%の環境に1000時間に亘って試験片をさらした。尚、通常、端子の導電性を確認するために要求される硫化水素ガス試験の水準としては、上記の温度の環境に試験片が96時間に亘ってさらされる条件が設定される。しかし、今回の試験では、より厳しく過酷な条件で試験を行った。
【0063】
上記の各試験(熱衝撃試験、湿度試験、高温試験、硫化水素ガス試験)が行われても良好な導電性を確保できる水準として、通常、抵抗上昇値が20mΩ以下であることが要求される。しかしながら、図9の導電性試験結果に示すように、第1及び第2比較例に係る端子(2、4)については、一部の試験において最大抵抗上昇値が20mΩを超えてしまい、環境によっては、良好な導電性を得ることが難しいことが確認された。これに対し、第1及び第2実施例に係る端子(2、4)については、いずれとも、各試験(熱衝撃試験、湿度試験、高温試験、硫化水素ガス試験)の試験時間が500時間である条件において、最大抵抗上昇値が4mΩ以下と、良好な水準を確保できることが確認できた。
【0064】
また、図10の導電性試験結果に示すように、第1及び第2比較例に係る端子(2、4)については、半数の試験において最大抵抗上昇値が20mΩを超えてしまい、環境によっては、良好な導電性を得ることが難しいことが確認された。これに対し、第1及び第2実施例に係る端子(2、4)については、いずれとも、各試験(熱衝撃試験、湿度試験、高温試験、硫化水素ガス試験)の試験時間が1000時間である条件において、最大抵抗上昇値が17mΩ以下と、良好な水準を確保できることが確認できた。そして、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)においては、要求される水準よりも厳しく過酷な条件が課される各試験(熱衝撃試験、湿度試験、高温試験、硫化水素ガス試験)であっても、良好な導電性を維持できることが確認できた。
【0065】
ここで、リフロー工程が行われた後の状態におけるSnめっき層13の状態を確認した結果についても説明する。図11は、第1実施例に係る端子1であってリフロー工程が行われた端子1の表面部分の断面のSEM写真による画像を例示したものである。また、図12は、第2実施例に係る端子3であってリフロー工程が行われた端子3の表面部分の断面のSEM写真による画像を例示したものである。
【0066】
図11に示すように、リフロー工程が行われた後の端子1では、本体部11を構成するリン青銅の層の上層にNiめっき層14を構成するNiの層が形成され、更にその上層にNi−Bめっき層15を構成するNi−B合金の層が形成されている。そして、Ni−B合金の層の上層には、Ni−B合金とSnとの合金層が形成されている。しかしながら、Ni−B合金とSnとの合金層の上層には、リフロー工程が行われる前よりも薄くなっているが、Snめっき層13を構成するSnの層が残った状態となっている。よって、リフロー工程が行われても、第1実施例に係る端子1においては、はんだ濡れ性及び導電性に非常に優れたSnめっき層13を維持することができる。尚、Snめっき層13の表面には、リフロー工程で生じたカーボンが付着している。
【0067】
また、図12に示すように、リフロー工程が行われた後の端子3では、本体部11を構成するリン青銅の層の上層にNiめっき層14を構成するNiの層が形成され、更にその上層にNi−Pめっき層16を構成するNi−P合金の層が形成されている。そして、Ni−P合金の層の上層には、Ni−P合金とSnとの合金層が形成されている。しかしながら、Ni−P合金とSnとの合金層の上層には、リフロー工程が行われる前よりも薄くなっているが、Snめっき層13を構成するSnの層が残った状態となっている。よって、リフロー工程が行われても、第2実施例に係る端子3においては、はんだ濡れ性及び導電性に非常に優れたSnめっき層13を維持することができる。尚、Snめっき層13の表面には、リフロー工程で生じたカーボンが付着している。
【0068】
以上説明した本実施形態の端子(1、3)によると、本体部11の表面に対して、Ni−Bめっき層15及びNi−Pめっき層16の少なくともいずれかを含む下地めっき層12が形成される。このため、比較的良好なはんだ濡れ性と導電性とを発揮することができるNi−B合金又はNi−P合金を含む下地めっき層12を形成することで、電子部品である端子(1、3)としての性能を確保するために必要となる十分なめっき厚みを確保することができる。そして、その下地めっき層12の表面に平均厚み寸法が0.2μm以上で0.6μm以下のSnめっき層13が更に形成される。このため、下地めっき層12の表面に、はんだ濡れ性及び導電性に非常に優れたSn又はSn合金によるSnめっき層13が薄めっき化(薄肉化)された状態で形成される。これにより、はんだ濡れ性及び導電性の更なる向上を図ることができるとともに、Snめっき層13が薄肉化されていることによってウィスカの発生を抑制することができる。
【0069】
そして、本実施形態の端子(1、3)では、Snめっき層13が薄肉化されていることで、Snめっき層13の変形量が低減されるため、Snめっき層13の表面を外部の他の部材が加圧したりする状態が生じてSnめっき層13に対して外力が作用する場合であっても、表面のSnめっき層13におけるウィスカの発生を抑制することができる。また、外部の他の部材が端子(1、3)の表面を摺動する場合であっても、Snめっき層13の変形量が低減されるため、表面のSnめっき層13におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【0070】
また、本願発明者が検証したところ、本実施形態の電子部品である端子(1、3)によると、Snめっき層13の平均厚み寸法が0.2μm以上に設定されることで、十分なはんだ濡れ性及び導電性が確保できることを確認することができた。更に、Snめっき層13の平均厚み寸法が0.6μm以下に設定されることで、前述した効果、即ち、Snめっき層13に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができることも確認することができた。従って、本実施形態によると、はんだ濡れ性及び導電性が確保され、Snめっき層13に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができる電子部品としての端子(1、3)を提供することができる。
【0071】
また、本実施形態によると、フラットケーブル101の導体やハウジング部材102のような他の部材がSnめっき層13の表面に加圧接触した状態で端子(1、3)が用いられる場合であっても、Snめっき層13におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態によると、Snめっき層13における他の部材(フラットケーブル101の導体)が加圧接触する部分が電気接点部を構成する形態で端子(1、3)が用いられる場合であっても、Snめっき層13におけるウィスカの発生を抑制することができる。このため、電子部品としての端子(1、3)において、ウィスカが電気的な短絡を誘発してしまう事態が生じることを抑制することができる。そして、フラットケーブル101に接続されるコネクタ100に設けられる端子(1、3)において、隣り合う端子(1、3)同士の間での短絡の発生を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態によると、絶縁性材料で形成されたハウジング部材102に対して電子部品である端子(1、3)が圧入され、Snめっき層13に対して摺動状態及び加圧状態で外力が作用する場合であっても、Snめっき層13におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0075】
(1)上述の実施形態では、端子として構成された電子部品に本発明が適用された場合を例にとって説明したが、端子に限らず、本発明を適用することができる。即ち、Sn又はSn合金が被覆されて構成されるSnめっき層が表面に形成される電子部品であれば、本発明を広く適用することができる。また、端子として構成される電子部品に本発明が適用される場合であっても、上述の実施形態において例示した端子の形態に限らず、種々変更して実施することができる。例えば、ピン状の端子やソケット状の端子など、種々の形態の端子に対して本発明を適用することができる。
【0076】
(2)本体部の表面に被覆されてNi−Bめっき層及びNi−Pめっき層の少なくともいずれかのめっき層を有する下地めっき層と、Snめっき層と、に加え、更に、Snめっき層の表面に防錆剤の層(防錆剤層)が形成された電子部品を実施してもよい。防錆剤層は、電子部品におけるSnめっき層の表面に防錆剤を塗布することによって、或いは、電子部品を防錆剤の液中に浸漬すること等によって形成される。このような防錆剤層を有する電子部品によると、更にはんだ濡れ性を向上させることができる。即ち、Snめっき層の表面に形成された防錆剤層が、耐水効果を奏する有機膜と耐熱効果を奏する無機膜とを構成し、はんだ濡れ性の劣化の原因となる酸化膜の生成を防止する(酸素を遮断する)ことができる。これにより、はんだ濡れ性の更なる向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、Sn又はSn合金が被覆されて構成されたSnめっき層が表面に形成された電子部品に関して、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0078】
1、3 端子(電子部品)
11 本体部
12 下地めっき層
13 Snめっき層
15 Ni−Bめっき層
16 Ni−Pめっき層
【技術分野】
【0001】
本発明は、Sn又はSn合金が被覆されて構成されたSnめっき層が表面に形成された電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
Pb(鉛)の使用を原則として禁止するRoHS指令が欧州において発動されたことや環境負荷の軽減を図る観点から、近年、電子部品において、めっき層の材料として、Pb(鉛)を含有する従来の材料に代えて、Sn(錫)又はSn合金を主成分とする鉛フリー材料が使用されている。しかしながら、電子部品の表面にSn又はSn合金を被覆するSnめっき層を形成すると、ウィスカと呼ばれる針状結晶が発生し、電気的な短絡を誘発してしまい易いという問題がある。
【0003】
一方、電子部品の表面においてSnめっき層の代わりに金めっき層を形成することで、ウィスカ発生の問題を回避することができる。しかしながら、金は、高価であるため、製造コストの上昇を招いてしまうという問題がある。そのため、Snめっき層においてウィスカの発生を抑制する技術の開発が望まれている。そして、ウィスカの発生が抑制されるとともに、電子部品の性能として、はんだ濡れ性及び導電性も確保されることが必要となる。
【0004】
尚、特許文献1及び特許文献2においては、表面にSn又はSn合金が被覆されて構成されたSnめっき層が形成された電子部品が開示されている。特許文献1では、下地めっき層としてNi(ニッケル)で形成された層とNi−P(ニッケル−リン)合金で形成された層とが設けられ、Ni−P合金で形成された下地めっき層の表面に対してはんだめっき層としてのSnめっき層が設けられた電子部品が開示されている。また、特許文献2では、ホウ素、硫黄及び鉄からなる群より選ばれた元素の少なくとも一種以上を0.01〜3重量%の割合で含有するニッケルで形成された下地めっき層が設けられ、この下地めっき層の表面にSnめっき層が設けられた電子部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−109373号公報
【特許文献2】特開2005−314750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に開示された電子部品は、いずれも、ウィスカの発生を抑制することを目的としている。しかしながら、コネクタ用の端子などの電子部品は、その表面のSnめっき層を外部の他の部材が摺動したり加圧したりする状態で用いられることが多い。このため、Snめっき層に対して作用する外力の影響によって、ウィスカの発生が促進されてしまい易い傾向がある。そして、特許文献1や特許文献2に開示された電子部品のように、ウィスカ発生を抑制する対策が講じられた電子部品であっても、Snめっき層に対して作用する外力の影響によって、ウィスカの発生が促進されてしまい易い傾向があり、更なる抑制が望まれる状況にある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、はんだ濡れ性及び導電性が確保され、Snめっき層に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明に係る電子部品は、表面にめっき層が形成された電子部品であって、金属材料で形成された本体部と、前記本体部の表面に対して被覆された下地めっき層と、前記下地めっき層の表面に対してSn又はSn合金が被覆されることで形成されたSnめっき層と、を備えている。そして、第1発明に係る電子部品は、前記下地めっき層は、Ni−B合金が被覆されることで形成されたNi−Bめっき層、及び、Ni−P合金が被覆されることで形成されたNi−Pめっき層の少なくともいずれかのめっき層を有し、前記Snめっき層の平均厚み寸法が、0.2μm以上で0.6μm以下の範囲に設定されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によると、電子部品の本体部の表面に対して、Ni−Bめっき層及びNi−Pめっき層の少なくともいずれかを含む下地めっき層が形成される。このため、比較的良好なはんだ濡れ性と導電性とを発揮することができるNi−B合金又はNi−P合金を含む下地めっき層を形成することで、電子部品としての性能を確保するために必要となる十分なめっき厚みを確保することができる。そして、その下地めっき層の表面に平均厚み寸法が0.2μm以上で0.6μm以下のSnめっき層が更に形成される。このため、下地めっき層の表面に、はんだ濡れ性及び導電性に非常に優れたSn又はSn合金によるSnめっき層が薄めっき化(薄肉化)された状態で形成される。これにより、はんだ濡れ性及び導電性の更なる向上を図ることができるとともに、Snめっき層が薄肉化されていることによってウィスカの発生を抑制することができる。
【0010】
そして、本発明の電子部品では、Snめっき層が薄肉化されていることで、Snめっき層の変形量が低減されるため、Snめっき層の表面を外部の他の部材が加圧したりする状態が生じてSnめっき層に対して外力が作用する場合であっても、表面のSnめっき層におけるウィスカの発生を抑制することができる。また、外部の他の部材が電子部品の表面を摺動する場合であっても、Snめっき層の変形量が低減されるため、表面のSnめっき層におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【0011】
また、本願発明者が検証したところ、本発明の電子部品によると、Snめっき層の平均厚み寸法が0.2μm以上に設定されることで、十分なはんだ濡れ性及び導電性が確保できることを確認することができた。更に、Snめっき層の平均厚み寸法が0.6μm以下に設定されることで、前述した効果、即ち、Snめっき層に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができることも確認することができた。従って、本発明によると、はんだ濡れ性及び導電性が確保され、Snめっき層に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができる電子部品を提供することができる。
【0012】
第2発明に係る電子部品は、第1発明の電子部品であって、前記Snめっき層の表面に対して接触した他の部材が当該Snめっき層の表面を加圧した状態で、用いられることを特徴とする。
【0013】
この発明によると、Snめっき層の表面に他の部材が加圧接触した状態で電子部品が用いられる場合であっても、Snめっき層におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【0014】
第3発明に係る電子部品は、第2発明の電子部品において、前記他の部材が導体として構成され、前記Snめっき層における前記他の部材と接触する部分が、前記他の部材に対して電気的に接続される電気接点部を構成することを特徴とする。
【0015】
この発明によると、Snめっき層における他の部材が加圧接触する部分が電気接点部を構成する形態で電子部品が用いられる場合であっても、Snめっき層におけるウィスカの発生を抑制することができる。このため、電子部品において、ウィスカが電気的な短絡を誘発してしまう事態が生じることを抑制することができる。
【0016】
第4発明に係る電子部品は、第2発明の電子部品において、前記他の部材が絶縁性材料で形成されたハウジング部材として構成され、前記ハウジング部材に対して圧入されることで、当該ハウジング部材が前記Snめっき層の表面を摺動して加圧することを特徴とする。
【0017】
この発明によると、絶縁性材料で形成されたハウジング部材に対して電子部品が圧入され、Snめっき層に対して摺動状態及び加圧状態で外力が作用する場合であっても、Snめっき層におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、はんだ濡れ性及び導電性が確保され、Snめっき層に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができる電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子部品である端子がコネクタにおいて取り付けられた状態を示す断面図である。
【図2】図1に示す端子の表面における一部の断面について模式的に拡大して示す模式拡大断面図である。
【図3】本発明の効果を検証するための検証試験に用いた試験片としての端子の表面における一部の断面について模式的に拡大して示す模式拡大断面図である。
【図4】本発明の効果を検証するために行った検証試験の結果を示す図であって、最長ウィスカ長さ確認試験の結果を示す図である。
【図5】従来例に係る端子であって最長ウィスカ長さ確認試験が行われた端子の電気接点部のSnめっき層における表面のSEM写真による画像を例示したものである。
【図6】本発明の実施例に係る端子であって最長ウィスカ長さ確認試験が行われた端子の電気接点部のSnめっき層における表面のSEM写真による画像を例示したものである。
【図7】本発明の効果を検証するために行った検証試験の結果を示す図であって、はんだ濡れ性確認試験の結果を示す図である。
【図8】本発明の効果を検証するために行った検証試験の結果を示す図であって、導電性確認試験の結果を示す図である。
【図9】本発明の効果を検証するために行った検証試験の結果を示す図であって、導電性確認試験の結果を示す図である。
【図10】本発明の効果を検証するために行った検証試験の結果を示す図であって、導電性確認試験の結果を示す図である。
【図11】本発明の実施例に係る端子であってリフロー工程が行われた端子の表面部分の断面のSEM写真による画像を例示したものである。
【図12】本発明の実施例に係る端子であってリフロー工程が行われた端子の表面部分の断面のSEM写真による画像を例示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本実施形態の説明においては、コネクタ用の端子として構成された電子部品に対して本発明が適用された場合を例にとって説明するが、この例に限らず、本発明を適用することができる。即ち、本発明は、Sn又はSn合金が被覆されて構成されたSnめっき層が表面に形成された電子部品に関して、広く適用することができるものである。
【0021】
図1は、本実施形態における電子部品として構成されたコネクタ用の端子1がコネクタ100において取り付けられた状態を示す断面図である。コネクタ100は、例えば、フラットケーブル101の端部が接続されるコネクタとして構成されている。尚、図1は、コネクタ100の幅方向に対して垂直な断面を示している。そして、図1においては、コネクタ100におけるハウジング部材102及び回動部材103と、端子1に対して電気的に接続されるフラットケーブル101とについては、断面で図示し、端子1については外形を図示している。
【0022】
図1に示すように、コネクタ100は、ハウジング部材102と、回動部材103と、本実施形態の端子(電子部品)1とを備えて構成されている。尚、端子1は、コネクタ100において複数備えられている。ハウジング部材102及び回動部材103は、絶縁性材料として構成された樹脂材料によって形成されている。端子1の母材(後述する本体部11)は、金属材料で形成され、例えば、リン青銅によって形成されている。そして、後述するように、端子1の表面にはめっき層が形成されている。
【0023】
ハウジング部材102には、複数の端子1のそれぞれが挿入される複数の挿入口102aが形成され、各挿入口102aは、ハウジング部材102の内側の空間領域(後述の開放領域102b)に連通するように形成されている。尚、複数の挿入口102aは、コネクタ100の幅方向に直列に並んで配置されている。そして、ハウジング部材102における複数の挿入口102aと反対側において外部に対して開放されるように形成された開放領域102bは、フラットケーブル101の端部が配置される領域を構成している。
【0024】
また、開放領域102bに配置されるフラットケーブル101の端部は、絶縁被覆が剥がされて導体が露出し、端子1と電気的に接続可能な状態に形成されている。尚、フラットケーブル101は、例えば、フレキシブルフラットケーブル或いはフレキシブルプリント回路基板等として設けられ、平行に配列された複数の導体が一体に絶縁被覆されることで形成されている。
【0025】
端子1は、一方の端部おいて、二股状に突出するように形成された一対の突出片部(1a、1b)が形成され、他方の端部において、図示しない他の機器や基板等に対して実装等によって取り付けられる。そして、端子1は、この一対の突出片部(1a、1b)において、ハウジング部材102の挿入孔102aに挿入される。このとき、端子1は、ハウジング部材102に対して挿入口102aにおいて圧入される状態で挿入される。
【0026】
また、端子1における一方の突出片部1aには、フラットケーブル101の端部における各導体に対して電気的に接続される電気接点部1cが突起状に形成されている。また、端子1における他方の突出片部1bには、後述の回動部材103における各回転軸部103aの外周に対して摺動自在に係止する係止凹部1dが形成されている。
【0027】
回動部材103は、ハウジング部材102及び複数の端子1に対して回動するように操作されるレバー状の部材として設けられるとともに、フラットケーブル101の端部の各導体を各端子1に対して加圧した状態で押し付ける部材として設けられている。そして、この回動部材103は、ハウジング部材102の幅方向に沿って延びるとともにハウジング部材102の開放領域102bを部分的に覆うように形成されている。
【0028】
また、回動部材103は、一方の端部側が回動操作用の操作部103bとして形成され、他方の端部側に複数の溝部103cが幅方向に沿って並んで配置されるように形成されている。各溝部103cは、各端子1における他方の突出片部1bの先端部分が挿入される溝部を構成している。そして、各溝部103cには、この溝部103cに亘って架け渡されるように形成された各回転軸部103aが配置されている。この各回転軸部103aの外周に対しては、前述のように、端子1の他方の突出片部1bにおける係止凹部1dが摺動自在に係止される。これにより、回動部材103は、各回転軸部103aにおいて各端子1の係止凹部1dに係止した状態で、複数の端子1に対して回動自在に支持されるように構成されている。
【0029】
コネクタ100においては、ハウジング部材102に対して、各挿入口102aから各端子1が圧入される。そして、ハウジング部材102に対して複数の端子1が全て圧入された状態で、回動部材103が取り付けられる。このとき、回動部材103は、ハウジング部材103に対して略垂直な姿勢で、各回転軸部103aにおいて各端子1の係止凹部1dに係止される。各回転軸部103aが各係止凹部1dに係止されることで、複数の端子1に対して回動部材103が回動自在に支持されることになる。
【0030】
上記のようにコネクタ100が組み立てられた状態で、フラットケーブル101の端部が、開放領域102bに配置された複数の端子1におけるそれぞれの一対の突出片部(1a、1b)の間に挿入される。このとき、回動部材103がハウジング部材102に対して略垂直な姿勢の状態のコネクタ100において、フラットケーブル101の端部が各一対の突出片部(1a、1b)の間に挿入される。そして、フラットケーブル101の端部が挿入された後、操作部103bが操作されることにより、回動部材103が、各回転軸部103aにおいて各係止凹部1dに摺動しながら複数の端子1に対して回動する。これにより、回動部材103においてフラットケーブル101に対向する面として設けられた加圧面103dによって、フラットケーブル101の端部の各導体が各端子1における電気接点部1cに対して押し付けられて、各導体と各電気接点部1cとが電気的に接続されることになる。そして、フラットケーブル101の端部の各導体が各端子1の電気接点部1cを加圧した状態で、フラットケーブル101の端部がコネクタ1に保持され、コネクタ100とフラットケーブル101とが接続されることになる。
【0031】
次に、本実施形態の電子部品である端子1における表面のめっき層の構造について詳しく説明する。図2は、端子1の表面における一部の断面について模式的に拡大して示す模式拡大断面図である。尚、図2では、ハウジング部材102に圧入された端子1が電気接点部1cにおいてフラットケーブル101の導体と接触する部分における模式拡大断面図を示している。図2に示すように、端子1は、金属材料(本実施形態では、リン青銅)で形成された母材である本体部11と、本体部11の表面に対して被覆された下地めっき層12と、下地めっき層12に対して被覆されたSnめっき層13とを備えている。
【0032】
下地めっき層12は、本体部11の表面に対して被覆されて形成されたNiめっき層14と、Niめっき層14の表面に対して更に被覆されて形成されたNi−Bめっき層15とを備えて構成されている。Niめっき層14は、Ni(ニッケル)又はNi合金が被覆されることで形成され、電解めっき又は無電解めっきによって形成される。一方、Ni−Bめっき層15は、Ni−B合金(ニッケル−ホウ素合金)が被覆されることで形成され、無電解めっきによって形成される。
【0033】
尚、本実施形態では、下地めっき層12として、Niめっき層14とNi−Bめっき層15とが形成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。下地めっき層12は、Ni−Bめっき層15、及び、Ni−P合金(ニッケル−リン合金)が被覆されることで形成されたNi−Pめっき層の少なくともいずれかのめっき層を有していればよい。
【0034】
例えば、下地めっき層12において、Niめっき層14の表面に対して、Ni−Bめっき層15ではなくNi−Pめっき層が形成された形態であってもよい。また、Niめっき層14が備えられていない形態の下地めっき層12を構成してもよい。即ち、Ni−Bめっき層15のみが形成された下地めっき層12、Ni−Pめっき層のみが形成された下地めっき層12、等を構成してもよい。また、Ni−Bめっき層15及びNi−Pめっき層の両方が備えられている下地めっき層12を構成してもよい。尚、Ni−Pめっき層は、電解めっき又は無電解めっきによって形成される。
【0035】
尚、本体部11の表面とNi−Bめっき層15との間、又は、本体部11の表面とNi−Pめっき層との間にNiめっき層14を形成することによって、めっき材料の低コスト化を図ることができる。即ち、後述のSnめっき層13に隣接するめっき層としてNi−Bめっき層15又はNi−Pめっき層を配置するとともに、Niを多く使用してNi−B合金又はNi−P合金の使用量を削減しつつ十分な厚みの下地めっき層12を形成することができる。
【0036】
Snめっき層13は、下地めっき層12のNi−Bめっき層15の表面に対してSn(錫)又はSn合金が被覆されることで形成され、電解めっき又は無電解めっきによって形成される。また、このSnめっき層13は、その厚み寸法(図2において両端矢印Tsnで示す寸法)の平均値である平均厚み寸法が、0.2μm以上で0.6μm以下の範囲に設定されている。尚、Snめっき層13の平均厚み寸法は、めっき条件(例えば、電解めっきにおける電流条件やめっき時間条件等)を適宜設定することによって調整されることになる。また、Snめっき層13の厚み寸法Tsnの計測は、例えば、端子1の表面部分における断面のSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)写真の画像に基づいて行われる。
【0037】
また、端子1は、前述のように、コネクタ100において用いられる。このため、端子1は、Snめっき層13の表面に対して接触した他の部材であるハウジング部材102又はフラットケーブル101の導体がSnめっき層13の表面を加圧した状態で、用いられることになる。
【0038】
そして、上記の他の部材がフラットケーブル101の導体として構成される場合は、端子1は、Snめっき層13における他の部材(フラットケーブル101の導体)と接触する部分が、他の部材に対して電気的に接続される電気接点部1cを構成している。また、上記の他の部材がハウジング部材102として構成される場合は、端子1がハウジング部材102に対して圧入されることで、ハウジング部材102がSnめっき層13の表面を摺動して加圧するように構成されている。
【0039】
次に、本発明の効果を検証するために行った検証試験の結果について説明する。図3は、検証試験に用いた試験片としての端子(1、2、3、4)の表面における一部の断面について模式的に拡大して示す模式拡大断面図である。図3(a)は、本発明の第1実施例として作製した端子1の試験片の表面の一部の模式拡大断面図である。図3(b)は、第1比較例として作製した端子2の試験片の表面の一部の模式拡大断面図である。図3(c)は、本発明の第2実施例として作製した端子3の試験片の表面の一部の模式拡大断面図である。図3(d)は、第2比較例として作製した端子4の試験片の表面の一部の模式拡大断面図である。
【0040】
図3(a)に模式拡大断面図示す第1実施例に係る端子1の作製においては、端子1の形状に形成された本体部11に対して、Niめっき層14を電解めっきで形成し、更に、その表面にNi−Bめっき層15を無電解めっきで形成して、下地めっき層12を形成した。そして、この下地めっき層12の表面に薄めっきのSnめっき層13を電解めっきにより形成した。尚、第1実施例では、端子1について複数作製し、これらの複数の端子1について、SEM写真の画像に基づいて、Snめっき層13の平均厚みが0.2〜0.6μmの範囲に設定されていることを確認した。また、図3(b)に模式拡大断面図を示す第1比較例に係る端子2については、本体部11の表面にNiめっき層14及びNi−Bめっき層15のみが形成されてSnめっき層13が形成されていない形態の端子として作製した。この第1比較例に係る端子2についても複数作成した。
【0041】
図3(c)に模式拡大断面図示す第2実施例に係る端子3の作製においては、端子1と同様の形状に形成された本体部11に対して、Niめっき層14を電解めっきで形成し、更に、その表面にNi−P合金が被覆されることで形成されるNi−Pめっき層16を無電解めっきで形成して、下地めっき層12を形成した。そして、この下地めっき層12の表面に薄めっきのSnめっき層13を電解めっきにより形成した。尚、第2実施例では、端子3について複数作製し、これらの複数の端子3について、SEM写真の画像に基づいて、Snめっき層13の平均厚みが0.2〜0.6μmの範囲に設定されていることを確認した。また、図3(d)に模式拡大断面図を示す第2比較例に係る端子4については、本体部11の表面にNiめっき層14及びNi−Pめっき層16のみが形成されてSnめっき層13が形成されていない形態の端子として作製した。この第2比較例に係る端子4についても複数作成した。
【0042】
また、検証試験においては、後述のように、図4に試験結果を示す最長ウィスカ長さ確認試験、図7に試験結果を示すはんだ濡れ性確認試験、図8乃至図10に試験結果を示す導電性確認試験を行った。以下、これらの試験結果について説明する。
【0043】
図4は、最長ウィスカ長さ確認試験を第1実施例に係る端子1と、第1比較例に係る端子2と、第2実施例に係る端子3と、第2比較例に係る端子4とについて実施した結果を示す図である。最長ウィスカ長さ確認試験においては、第1及び第2実施例にかかる端子(1、3)のSnめっき層13に対して外力が作用する場合におけるSnめっき層13からのウィスカ発生の抑制効果を検証する試験を行った。また、この試験では、第1及び第2比較例に係る端子(2、4)における最外めっき層であるNi−Bめっき層15又はNi−Pめっき層16に対して外力が作用する場合におけるウィスカ発生状況の確認もあわせて行った。
【0044】
最長ウィスカ長さ確認試験では、まず、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とについて、ハウジング部材102に圧入されてフラットケーブル101の端部の導体と電気的に接続される端子として、実際に使用される場合と同様の使用形態でそれぞれ使用し、その後、ウィスカの発生状況を確認した。ウィスカ発生状況の確認では、フラットケーブル101の導体が加圧状態で接触して通電される電気接点部についてSEMによる観察を行った。そして、このSEMによる電気接点部の表面の観察によって発生が確認されたウィスカのうち最も長さが長いウィスカ(最長ウィスカ)の長さを第1実施例と第2実施例と第1比較例と第2比較例とにおいて確認した。
【0045】
また、上記の最長ウィスカ長さ確認試験においては、各端子(1、2、3、4)が、実装用途に用いられる場合を想定し、リフロー炉(基板にはんだペーストを介して載置して実装する際に用いる炉)を通過させるリフロー工程を行った試験片(端子)を作製した。そして、このようにリフロー工程を行った試験片では、基板に実際に実装することなく、試験片単独でリフロー炉を通過させた。尚、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とについては、試験片をそれぞれ複数(120個)作製し、最長ウィスカの長さを確認した。
【0046】
また、従来例に対応する端子も作製し、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とに加え、従来例に係る端子(以下、「端子C」という)に対しても最長ウィスカ長さ確認試験を行った。尚、従来例に係る端子Cは、本体部11の表面に対して直接に厚いSnめっき層を被覆形成することで形成し、リフロー工程を行っていない試験片として作製した。そして、従来例に係る端子Cについても、ハウジング部材102に圧入されてフラットケーブル101の端部の導体と電気的に接続される端子として、実際に使用される場合と同様の使用形態で使用し、その後、ウィスカの発生状況を確認し、最長ウィスカ長さ確認試験を行った。
【0047】
図4の最長ウィスカ長さ確認試験の試験結果に示すように、従来例に係る端子Cでは500μmの長さのウィスカが発生した。しかしながら、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)については、最長ウィスカ長さであっても10μmから15μm程度の長さのウィスカしか発生しなかった。このため、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)においては、Snめっき層13に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができることを確認することができた。一方、第1及び第2比較例に係る端子(2、4)については、Snめっき層13が表面に被覆形成されていないことから、10μm以上の長さのウィスカの発生は確認されなかった。尚、今回の試験では、従来例に係る端子Cで確認されたウィスカの長さは500μmであったが、通常、上記の従来例に係る端子Cと同様に形成された端子では、1〜2mm程度の長さのウィスカが発生することが知られている。
【0048】
ここで、上述した試験片のうち、第1実施例に係る端子1と従来例に係る端子Cとにおける電気接点部のSnめっき層における表面のSEM写真の画像について説明する。図5は、従来例に係る端子Cの電気接点部のSnめっき層における表面のSEM写真による画像を例示したものである。また、図6は、第1実施例に係る端子1であってリフロー工程が行われていない状態の端子1のSnめっき層13における表面のSEM写真による画像を例示したものである。尚、表面のSEM写真による画像を図6に示す端子1についても、ハウジング部材102に圧入されてフラットケーブル101の端部の導体と電気的に接続される端子として、実際に使用される場合と同様の使用形態で使用し、その後、ウィスカの発生状況を確認した。
【0049】
図5のSEM画像に示すように、従来例に係る端子Cでは、500μm程度の長さの長く伸びるウィスカが発生している。これに対して、図6のSEM画像に示すように、第1実施例に係る端子1では、ウィスカの発生がほとんど見られない状態であった。そして、図6において破線で囲んで示すように、第1実施例に係る端子1では、Snめっき層13が薄肉化されて形成されているため、Snめっき層13の変形量が少なく、Snめっき層13における削られている金属の量が非常に少ない状態であることが確認できた。よって、Snめっき層13の表面を外部の他の部材が加圧したりする状態が生じてSnめっき層13に対して外力が作用する場合であっても、表面のSnめっき層13におけるウィスカの発生を抑制できることが確認できた。
【0050】
図7は、はんだ濡れ性確認試験を第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とについて実施した結果を示す図である。このはんだ濡れ性確認試験においては、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とについて、プレッシャークッカーテスター(電子部品の耐湿評価の加速寿命試験機)を用いて温度が105℃、湿度が100%、処理時間が8時間の条件にて処理を行い、その後、メニスコグラフによるはんだ濡れ性確認試験を行った。そして、ゼロクロスタイム(秒)によりはんだ濡れ性を評価した。
【0051】
尚、ゼロクロスタイムは、試験片としての端子の端部がはんだペーストに浸漬されてから、端子に対してはんだから作用する力が一旦プラスマイナスゼロとなる瞬間を経過するまでの時間として測定される。即ち、ゼロクロスタイムは、試験片としての端子の端部がはんだペーストに浸漬されて加熱によるはんだペーストの溶剤の分離による濡れ現象が始まり、フラックス成分の溶解とそれに伴う浮力が生じる現象と濡れが生じる現象とが発生し、更に、はんだ粉の溶解とそれに伴う浮力が生じる現象と濡れが生じる現象とが発生する過程において、端子に対してはんだから作用する力が一旦プラスマイナスゼロとなる瞬間を経過するまでの時間として計測される。
【0052】
また、上記のはんだ濡れ性確認試験では、はんだの材料としては、Sn−3Ag−0.5Cuを用いた。そして、このはんだ濡れ性確認試験では、端子のはんだペーストに対する浸漬深さを0.2mmに設定し、十分なはんだ濡れ性を確保することができるゼロクロスタイムの要求水準が3秒以下であることから、端子をはんだペーストに浸漬してから引き上げるまでの時間である浸漬時間を3秒に設定した。即ち、浸漬時間である3秒以内にゼロクロスタイムが計測されれば、十分なはんだ濡れ性を確保することができることになる。
【0053】
また、上記のはんだ濡れ性確認試験では、第1実施例に係る端子1(図7にて試験結果を「Ni−B+Sn」で表示)と、第1比較例に係る端子2(図7にて試験結果を「Ni−B」で表示)と、第2実施例に係る端子3(図7にて試験結果を「Ni−P+Sn」で表示)と、第2比較例に係る端子4(図7にて試験結果を「Ni−P」で表示)とのそれぞれについて、複数(24個)の試験片を作成してゼロクロスタイムの計測を行った。そして、この計測結果については、平均値と最大値と最小値とで評価した。尚、図7においては、平均値の結果については白抜きで示し、最大値の結果については細かいドットの模様のハッチングで示し、最小値の結果については斜線の模様のハッチングで示している。
【0054】
図7のはんだ濡れ性確認試験結果に示すように、第1及び第2比較例に係る端子(2、4)については、いずれとも、平均値、最大値及び最小値ともに浸漬時間の3秒の間にゼロクロスタイムを計測することができず、はんだ濡れ性の確保が十分でないことが確認された。これに対し、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)については、いずれとも、平均値、最大値及び最小値ともにゼロクロスタイムが3秒以下となり、十分なはんだ濡れ性を確保できることが確認できた。
【0055】
図8乃至図10は、導電性確認試験を第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)ととについて実施した結果を示す図である。図8乃至図10に結果を示す導電性確認試験においては、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とについて、リフロー炉で基板に実装し、その後、後述するような所定の試験をそれぞれ行い、所定の試験を行うことによる抵抗上昇値(mΩ)を測定した。また、第1実施例に係る端子1(図8にて試験結果を「Ni−B+Sn」で表示)と、第1比較例に係る端子2(図8にて試験結果を「Ni−B」で表示)と、第2実施例に係る端子3(図8にて試験結果を「Ni−P+Sn」で表示)と、第2比較例に係る端子4(図8にて試験結果を「Ni−P」で表示)とについては、各試験条件に対応する試験片をそれぞれ複数(24個)作製して(即ち、試験条件ごとにそれぞれ24個の端子を作製して)抵抗上昇値の測定を行った。そして、この測定結果については、各試験条件における抵抗上昇値の最大値である最大抵抗上昇値(mΩ)で評価した。
【0056】
図8に結果を示す導電性確認試験では、ハウジング部材102に圧入された状態の端子における一対の突出片部の間にフラットケーブル101の端部を挿入し、回動部材103を操作して端子とフラットケーブル101の端部の導体とを接続した後に、回動部材103を操作してフラットケーブル101を抜き出す挿抜作業を繰り返し実施する試験を行った。そして、挿抜作業を10回繰り返して実施した条件(挿抜10回)と、挿抜作業を30回繰り返して実施した条件(挿抜30回)と、挿抜作業を50回繰り返して実施した条件(50回)との3つの条件で試験を行い、各試験の後に抵抗上昇値を測定して前述の最大抵抗上昇値(mΩ)を評価した。尚、図8においては、上記の挿抜10回の結果については白抜きで示し、上記の挿抜30回の結果については細かいドットの模様のハッチングで示し、上記の挿抜50回の結果については斜線の模様のハッチングで示している。
【0057】
上記の挿抜作業が繰り返されても良好な導電性を確保できる水準として、通常、挿抜作業が30回繰り返された状態で抵抗上昇値が20mΩ以下であることが要求される。これに対して、図8の導電性試験結果に示すように、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)と第1及び第2比較例に係る端子(2、4)とのいずれについても、挿抜作業が10回、30回、及び50回のいずれにおいても、最大抵抗上昇値が3mΩ以下と、良好な水準を確保できることを確認できた。そして、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)においては、要求される水準(挿抜作業が30回の条件)よりも厳しく過酷な条件(挿抜作業が50回の条件)が課される試験であっても、良好な導電性を維持できることを確認できた。
【0058】
図9及び図10に結果を示す導電性確認試験では、第1実施例に係る端子1(図9及び図10にて試験結果を「Ni−B+Sn」で表示)と、第1比較例に係る端子2(図9及び図10にて試験結果を「Ni−B」で表示)と、第2実施例に係る端子3(図9及び図10にて試験結果を「Ni−P+Sn」で表示)と、第2比較例に係る端子4(図9及び図10にて試験結果を「Ni−P」で表示)とについて、熱衝撃試験、湿度試験、高温試験、硫化水素ガス試験を行った。そして、各試験(熱衝撃試験、湿度試験、高温試験、硫化水素ガス試験)の後に、各試験が行われた各試験片の抵抗上昇値をそれぞれ測定し、最大抵抗上昇値(mΩ)を評価した。尚、図9及び図10においては、熱衝撃試験の結果については白抜きで示し、湿度試験の結果については細かいドットの模様のハッチングで示し、高温試験の結果については斜線の模様のハッチングで示し、硫化水素ガス試験の結果については網掛けの模様のハッチングで示している。
【0059】
図9に結果を示す導電性確認試験における熱衝撃試験では、−55℃から85℃の範囲で温度が変化する熱サイクル(−55℃の温度に30分間設定され、85℃の温度に30分間設定される温度パターンの熱サイクル)を500時間の間に500サイクル繰り返す環境に試験片をさらした。一方、図10に結果を示す導電性確認試験における熱衝撃試験では、上記と同じ温度パターンにて−55℃から85℃の範囲で温度が変化する熱サイクルを1000時間の間に1000サイクル繰り返す環境に試験片をさらした。尚、通常、端子の導電性を確認するために要求される熱衝撃試験の水準としては、上記温度範囲の熱サイクルを25時間の間に25サイクル繰り返す環境に試験片がさらされる条件が設定される。しかし、今回の試験では、より厳しく過酷な条件で試験を行った。
【0060】
図9に結果を示す導電性確認試験における湿度試験では、温度が40℃±2℃で湿度が90%〜95%の環境に500時間に亘って試験片をさらした。一方、図10に結果を示す導電性確認試験における湿度試験では、温度が40℃±2℃で湿度が90%〜95%の環境に1000時間に亘って試験片をさらした。尚、通常、端子の導電性を確認するために要求される湿度試験の水準としては、上記の温度及び湿度の環境に試験片が240時間に亘ってさらされる条件が設定される。しかし、今回の試験では、より厳しく過酷な条件で試験を行った。
【0061】
図9に結果を示す導電性確認試験における高温試験では、温度が85℃±2℃の環境に500時間に亘って試験片をさらした。一方、図10に結果を示す導電性確認試験における高温試験では、温度が85℃±2℃の環境に1000時間に亘って試験片をさらした。尚、通常、端子の導電性を確認するために要求される高温試験の水準としては、上記の温度の環境に試験片が250時間に亘ってさらされる条件が設定される。しかし、今回の試験では、より厳しく過酷な条件で試験を行った。
【0062】
図9に結果を示す導電性確認試験における硫化水素ガス試験では、硫化水素濃度が3ppm±1ppm、温度が40℃±2℃、湿度が80%±5%の環境に500時間に亘って試験片をさらした。一方、図10に結果を示す導電性確認試験における硫化水素ガス試験では、硫化水素濃度が3ppm±1ppm、温度が40℃±2℃、湿度が80%±5%の環境に1000時間に亘って試験片をさらした。尚、通常、端子の導電性を確認するために要求される硫化水素ガス試験の水準としては、上記の温度の環境に試験片が96時間に亘ってさらされる条件が設定される。しかし、今回の試験では、より厳しく過酷な条件で試験を行った。
【0063】
上記の各試験(熱衝撃試験、湿度試験、高温試験、硫化水素ガス試験)が行われても良好な導電性を確保できる水準として、通常、抵抗上昇値が20mΩ以下であることが要求される。しかしながら、図9の導電性試験結果に示すように、第1及び第2比較例に係る端子(2、4)については、一部の試験において最大抵抗上昇値が20mΩを超えてしまい、環境によっては、良好な導電性を得ることが難しいことが確認された。これに対し、第1及び第2実施例に係る端子(2、4)については、いずれとも、各試験(熱衝撃試験、湿度試験、高温試験、硫化水素ガス試験)の試験時間が500時間である条件において、最大抵抗上昇値が4mΩ以下と、良好な水準を確保できることが確認できた。
【0064】
また、図10の導電性試験結果に示すように、第1及び第2比較例に係る端子(2、4)については、半数の試験において最大抵抗上昇値が20mΩを超えてしまい、環境によっては、良好な導電性を得ることが難しいことが確認された。これに対し、第1及び第2実施例に係る端子(2、4)については、いずれとも、各試験(熱衝撃試験、湿度試験、高温試験、硫化水素ガス試験)の試験時間が1000時間である条件において、最大抵抗上昇値が17mΩ以下と、良好な水準を確保できることが確認できた。そして、第1及び第2実施例に係る端子(1、3)においては、要求される水準よりも厳しく過酷な条件が課される各試験(熱衝撃試験、湿度試験、高温試験、硫化水素ガス試験)であっても、良好な導電性を維持できることが確認できた。
【0065】
ここで、リフロー工程が行われた後の状態におけるSnめっき層13の状態を確認した結果についても説明する。図11は、第1実施例に係る端子1であってリフロー工程が行われた端子1の表面部分の断面のSEM写真による画像を例示したものである。また、図12は、第2実施例に係る端子3であってリフロー工程が行われた端子3の表面部分の断面のSEM写真による画像を例示したものである。
【0066】
図11に示すように、リフロー工程が行われた後の端子1では、本体部11を構成するリン青銅の層の上層にNiめっき層14を構成するNiの層が形成され、更にその上層にNi−Bめっき層15を構成するNi−B合金の層が形成されている。そして、Ni−B合金の層の上層には、Ni−B合金とSnとの合金層が形成されている。しかしながら、Ni−B合金とSnとの合金層の上層には、リフロー工程が行われる前よりも薄くなっているが、Snめっき層13を構成するSnの層が残った状態となっている。よって、リフロー工程が行われても、第1実施例に係る端子1においては、はんだ濡れ性及び導電性に非常に優れたSnめっき層13を維持することができる。尚、Snめっき層13の表面には、リフロー工程で生じたカーボンが付着している。
【0067】
また、図12に示すように、リフロー工程が行われた後の端子3では、本体部11を構成するリン青銅の層の上層にNiめっき層14を構成するNiの層が形成され、更にその上層にNi−Pめっき層16を構成するNi−P合金の層が形成されている。そして、Ni−P合金の層の上層には、Ni−P合金とSnとの合金層が形成されている。しかしながら、Ni−P合金とSnとの合金層の上層には、リフロー工程が行われる前よりも薄くなっているが、Snめっき層13を構成するSnの層が残った状態となっている。よって、リフロー工程が行われても、第2実施例に係る端子3においては、はんだ濡れ性及び導電性に非常に優れたSnめっき層13を維持することができる。尚、Snめっき層13の表面には、リフロー工程で生じたカーボンが付着している。
【0068】
以上説明した本実施形態の端子(1、3)によると、本体部11の表面に対して、Ni−Bめっき層15及びNi−Pめっき層16の少なくともいずれかを含む下地めっき層12が形成される。このため、比較的良好なはんだ濡れ性と導電性とを発揮することができるNi−B合金又はNi−P合金を含む下地めっき層12を形成することで、電子部品である端子(1、3)としての性能を確保するために必要となる十分なめっき厚みを確保することができる。そして、その下地めっき層12の表面に平均厚み寸法が0.2μm以上で0.6μm以下のSnめっき層13が更に形成される。このため、下地めっき層12の表面に、はんだ濡れ性及び導電性に非常に優れたSn又はSn合金によるSnめっき層13が薄めっき化(薄肉化)された状態で形成される。これにより、はんだ濡れ性及び導電性の更なる向上を図ることができるとともに、Snめっき層13が薄肉化されていることによってウィスカの発生を抑制することができる。
【0069】
そして、本実施形態の端子(1、3)では、Snめっき層13が薄肉化されていることで、Snめっき層13の変形量が低減されるため、Snめっき層13の表面を外部の他の部材が加圧したりする状態が生じてSnめっき層13に対して外力が作用する場合であっても、表面のSnめっき層13におけるウィスカの発生を抑制することができる。また、外部の他の部材が端子(1、3)の表面を摺動する場合であっても、Snめっき層13の変形量が低減されるため、表面のSnめっき層13におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【0070】
また、本願発明者が検証したところ、本実施形態の電子部品である端子(1、3)によると、Snめっき層13の平均厚み寸法が0.2μm以上に設定されることで、十分なはんだ濡れ性及び導電性が確保できることを確認することができた。更に、Snめっき層13の平均厚み寸法が0.6μm以下に設定されることで、前述した効果、即ち、Snめっき層13に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができることも確認することができた。従って、本実施形態によると、はんだ濡れ性及び導電性が確保され、Snめっき層13に対して外力が作用する場合であってもウィスカの発生を抑制することができる電子部品としての端子(1、3)を提供することができる。
【0071】
また、本実施形態によると、フラットケーブル101の導体やハウジング部材102のような他の部材がSnめっき層13の表面に加圧接触した状態で端子(1、3)が用いられる場合であっても、Snめっき層13におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態によると、Snめっき層13における他の部材(フラットケーブル101の導体)が加圧接触する部分が電気接点部を構成する形態で端子(1、3)が用いられる場合であっても、Snめっき層13におけるウィスカの発生を抑制することができる。このため、電子部品としての端子(1、3)において、ウィスカが電気的な短絡を誘発してしまう事態が生じることを抑制することができる。そして、フラットケーブル101に接続されるコネクタ100に設けられる端子(1、3)において、隣り合う端子(1、3)同士の間での短絡の発生を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態によると、絶縁性材料で形成されたハウジング部材102に対して電子部品である端子(1、3)が圧入され、Snめっき層13に対して摺動状態及び加圧状態で外力が作用する場合であっても、Snめっき層13におけるウィスカの発生を抑制することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0075】
(1)上述の実施形態では、端子として構成された電子部品に本発明が適用された場合を例にとって説明したが、端子に限らず、本発明を適用することができる。即ち、Sn又はSn合金が被覆されて構成されるSnめっき層が表面に形成される電子部品であれば、本発明を広く適用することができる。また、端子として構成される電子部品に本発明が適用される場合であっても、上述の実施形態において例示した端子の形態に限らず、種々変更して実施することができる。例えば、ピン状の端子やソケット状の端子など、種々の形態の端子に対して本発明を適用することができる。
【0076】
(2)本体部の表面に被覆されてNi−Bめっき層及びNi−Pめっき層の少なくともいずれかのめっき層を有する下地めっき層と、Snめっき層と、に加え、更に、Snめっき層の表面に防錆剤の層(防錆剤層)が形成された電子部品を実施してもよい。防錆剤層は、電子部品におけるSnめっき層の表面に防錆剤を塗布することによって、或いは、電子部品を防錆剤の液中に浸漬すること等によって形成される。このような防錆剤層を有する電子部品によると、更にはんだ濡れ性を向上させることができる。即ち、Snめっき層の表面に形成された防錆剤層が、耐水効果を奏する有機膜と耐熱効果を奏する無機膜とを構成し、はんだ濡れ性の劣化の原因となる酸化膜の生成を防止する(酸素を遮断する)ことができる。これにより、はんだ濡れ性の更なる向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、Sn又はSn合金が被覆されて構成されたSnめっき層が表面に形成された電子部品に関して、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0078】
1、3 端子(電子部品)
11 本体部
12 下地めっき層
13 Snめっき層
15 Ni−Bめっき層
16 Ni−Pめっき層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にめっき層が形成された電子部品であって、
金属材料で形成された本体部と、
前記本体部の表面に対して被覆された下地めっき層と、
前記下地めっき層の表面に対してSn又はSn合金が被覆されることで形成されたSnめっき層と、
を備え、
前記下地めっき層は、Ni−B合金が被覆されることで形成されたNi−Bめっき層、及び、Ni−P合金が被覆されることで形成されたNi−Pめっき層の少なくともいずれかのめっき層を有し、
前記Snめっき層の平均厚み寸法が、0.2μm以上で0.6μm以下の範囲に設定されていることを特徴とする、電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品であって、
前記Snめっき層の表面に対して接触した他の部材が当該Snめっき層の表面を加圧した状態で、用いられることを特徴とする、電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の電子部品であって、
前記他の部材が導体として構成され、
前記Snめっき層における前記他の部材と接触する部分が、前記他の部材に対して電気的に接続される電気接点部を構成することを特徴とする、電子部品。
【請求項4】
請求項2に記載の電子部品であって、
前記他の部材が絶縁性材料で形成されたハウジング部材として構成され、
前記ハウジング部材に対して圧入されることで、当該ハウジング部材が前記Snめっき層の表面を摺動して加圧することを特徴とする、電子部品。
【請求項1】
表面にめっき層が形成された電子部品であって、
金属材料で形成された本体部と、
前記本体部の表面に対して被覆された下地めっき層と、
前記下地めっき層の表面に対してSn又はSn合金が被覆されることで形成されたSnめっき層と、
を備え、
前記下地めっき層は、Ni−B合金が被覆されることで形成されたNi−Bめっき層、及び、Ni−P合金が被覆されることで形成されたNi−Pめっき層の少なくともいずれかのめっき層を有し、
前記Snめっき層の平均厚み寸法が、0.2μm以上で0.6μm以下の範囲に設定されていることを特徴とする、電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品であって、
前記Snめっき層の表面に対して接触した他の部材が当該Snめっき層の表面を加圧した状態で、用いられることを特徴とする、電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の電子部品であって、
前記他の部材が導体として構成され、
前記Snめっき層における前記他の部材と接触する部分が、前記他の部材に対して電気的に接続される電気接点部を構成することを特徴とする、電子部品。
【請求項4】
請求項2に記載の電子部品であって、
前記他の部材が絶縁性材料で形成されたハウジング部材として構成され、
前記ハウジング部材に対して圧入されることで、当該ハウジング部材が前記Snめっき層の表面を摺動して加圧することを特徴とする、電子部品。
【図5】
【図6】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図6】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−7228(P2012−7228A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146268(P2010−146268)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】
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