説明

電極シート、二次電池および二次電池の製造方法

【課題】樹脂フィルムの両面に形成された導電層を低コストで接続することができる電極シートを提供する。
【解決手段】本発明の電極シートは、樹脂フィルムの両面上にそれぞれ導電層および正極活物質層がこの順で設けられた正極シートまたは樹脂フィルムの両面上にそれぞれ導電層および負極活物質層がこの順で設けられた負極シートである電極シートであって、前記樹脂フィルムの両面上に前記導電層が設けられかつ前記正極活物質層および前記負極活物質層が設けられていない端部を同方向に2回以上折り返した折り返し部を有し、前記折り返し部において前記樹脂フィルムの両面に設けられた各導電層が電気的に接続していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極シート、二次電池および二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯電話、携帯用パソコン、携帯用カメラ等の小型携帯電子機器の電源として、リチウムイオン二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池等の二次電池が使用されている。このような二次電池において、特に薄型の小型携帯電子機器には二次電池が用いられている。
【0003】
従来の二次電池の内部構造は、図5、図6に示すように正極シート101と負極シート102が微細孔を有するセパレータ105を介して交互に配置され、電解液と共に密封されている(例えば、特許文献1参照)。なお、図5は、従来の積層型二次電池の内部構造の斜視図である。また、図6は、従来の積層型二次電池の概略断面図である。また、図6に示すように正極シート101または負極シート102は、両面に金属層(導電層122)が形成された樹脂フィルム121の両面にそれぞれ正極活物質層123または負極活物質層124が形成されている。また、両面に導電層122が形成された樹脂フィルム121の代わりに金属箔を使用する二次電池も知られている。なお、樹脂フィルム121の両面にそれぞれ正極活物質層123または負極活物質層124が形成されたものでは、電池重量当たりの電池容量密度が増加するなどの利点がある。また、正極シート101および負極シート102は、外部端子と接続するための凸部(111、112)を有しており、この凸部には正極活物質層123および負極活物質層124が形成されていない。このため、導電層122が露出しており、外部端子と接続することができる。
【0004】
また、両面に導電層122が形成された樹脂フィルムを用いた正極シートおよび負極シートでは、両面の導電層122を電気的に接続するさまざまな方法がある。
例えば、特許文献2では、正極シート101または負極シート102の正極活物質層および負極活物質層が形成されていない部分を図6のようにリード(131、132)で挟み込み冷間圧接、超音波溶接等で取り付けることでシート両面の導電層122を電気的に接続している。
【0005】
また、例えば、図7に示したような特許文献3に記載されているように金属膜(メタリコン)の蒸着をする方法でも、シート両面の導電層122を電気的に接続することができる。図7は、引用文献3の二次電池の概略断面図である。なお、図7の二次電池では絶縁性樹脂フィルム135が上記の樹脂フィルムとセパレータの機能をしている。具体的に説明すると、図7のように正極シート101に形成した導電層122と負極シート102に形成した導電層122がそれぞれ積層したシートの両側面に現れるように導電層122を形成し、その両側面全体に金属膜(メタリコン)136を蒸着することにより、導電層122を電気的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−102711号公報
【特許文献2】特開平10−255754号公報
【特許文献3】特開2003−197198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の従来技術には以下の問題がある。図6のように電極シートをリードで挟みこんで接続する場合、各電極シートごとにリードを接続する必要があり、さらに複数のリードを相互に接続する必要がある。そのため、部品点数の増加および接続工数の増加によるコストアップが懸念される。
また、図7のように金属膜(メタリコン)を蒸着する方法では、メタリコン技術が用いられているため、金属膜の形成時には前処理が必要になり、リードタイムの増加や材料によるコストアップが懸念される。また、被溶射体である電極シートなどの積層物が高温に曝される危険性がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、樹脂フィルムの両面に形成された導電層を低コストで接続することができる電極シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電極シートは、樹脂フィルムの両面上にそれぞれ導電層および正極活物質層がこの順で設けられた正極シートまたは樹脂フィルムの両面上にそれぞれ導電層および負極活物質層がこの順で設けられた負極シートである電極シートであって、前記樹脂フィルムの両面上に前記導電層が設けられかつ前記正極活物質層および前記負極活物質層が設けられていない端部を同方向に2回以上折り返した折り返し部を有し、前記折り返し部において前記樹脂フィルムの両面に設けられた各導電層が電気的に接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電極シートは、樹脂フィルムの両面に形成された導電層を低コストで接続することができる。具体的に以下に説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態の電極シートである正極シートの概略断面図であり、図1(b)は、本発明の一実施形態の電極シートである負極シートの概略断面図である。また、図1(c)は図1(a)の点線囲んだ部分Aの拡大図である。また、図2(a)は、本発明の一実施形態の電極シートである正極シートの概略平面図であり(凸部なし)、図2(b)は折り返し部を凸部に形成した本発明の一実施形態の電極シートである正極シートの概略平面図である。
図1(a)(b)のように本発明の電極シート9は、樹脂フィルム1の両面上に導電層2および正極活物質層5又は負極活物質層6がこの順で設けられた電極シートであるため、樹脂フィルム1の両面上のそれぞれの導電層2を電気的に接続する必要がある。このため、本発明の電極シート9は、正極活物質層5および負極活物質層6が設けられていない端部を同方向に2回以上折り返した折り返し部7を有する。この折り返し部7の拡大図である図1(c)を見ると、一点破線で示した両面の導電層の接触部8で樹脂フィルム1の両面上のそれぞれの導電層2が電気的に接続することが分かる。
【0010】
このことにより、本発明の電極シート9では、両面の導電層2を接触させるために特別な部品は必要ではないため、低コストで電極シートを製造することができ、製造コストの低減をすることができる。また本発明の電極シートでは、熱などを加える必要もないため、樹脂フィルムなどが高温に曝されるおそれもない。また、この折り返し部7を外部接続端子に超音波溶接等を用いて容易に接合することができるため、本発明の電極シートを用いる二次電池の製造コストを低減することができる。
【0011】
また、本発明では、本発明の電極シートを備えた二次電池およびこの二次電池の製造方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態の電極シートである正極シートの概略断面図であり、(b)は、本発明の一実施形態の電極シートである負極シートの概略断面図であり、(c)は(a)の点線囲んだ部分Aの拡大図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態の電極シートである正極シートの概略平面図であり(凸部なし)、(b)は折り返し部を凸部に形成した本発明の一実施形態の電極シートである正極シートの概略平面図である。
【図3】本発明の一実施形態の二次電池の概略断面図である。
【図4】(a)は、折り返し部をずらして重ねた本発明の一実施形態の二次電池の内部構造の概略平面図であり、(b)は(a)をS方向から見たときの折り返し部の重なりの概略断面図である。
【図5】従来の積層型二次電池の内部構造の斜視図である。
【図6】従来の積層型二次電池の内部構造の概略断面図である。
【図7】従来の積層型二次電池の内部構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0014】
1.電極シート
本実施形態の電極シート9は、樹脂フィルム1の両面上にそれぞれ導電層2および正極活物質層5がこの順で設けられた正極シート10または樹脂フィルム1の両面上にそれぞれ導電層2および負極活物質層6がこの順で設けられた負極シート11である電極シート9であって、樹脂フィルム1の両面上に導電層2が設けられかつ正極活物質層5および負極活物質層6が設けられていない端部を同方向に2回以上折り返した折り返し部7を有し、折り返し部7において樹脂フィルム1の両面に設けられた各導電層2が電気的に接続していることを特徴とする。
なお、電極シート9には、正極シート10と負極シート11が含まれる。なお、正極シートと負極シートは、活物質層の構成材料が異なるが、それ以外は同じ構成材料を用いることができる。
また、端部とは、電極シート9の端に接する部分である。
また、本実施形態の電極シート9を用いた二次電池は、正極シート10および負極シート11の両方に本発明の電極シート9を用いたものに限定されず、正極シート10または負極シート11のどちらか一方に本発明の電極シート9を用い、そのほかについては従来通りの金属箔の両面に正極活物質または負極活物質を形成した電極シートを用いてもよい。
以下、本実施形態の電極シートについて説明する。
【0015】
1−1.正極シート
正極シート10は、樹脂フィルム1の両面上に導電層2および正極活物質層5がこの順で設けられた電極シート9であって、樹脂フィルム1の両面上に導電層2が設けられかつ正極活物質層5が設けられていない端部を同方向に2回以上折り返した折り返し部7を有し、折り返し部7において樹脂フィルム1の両面に設けられた導電層2が電気的に接続する。正極シート10の形状は特に限定されないが、例えば長方形であってもよい。また、図2(b)のように正極シート10に含まれる折り返し部7を形成した凸部を有してもよい。
【0016】
1−2.負極シート
負極シート11は、樹脂フィルム1の両面上に導電層2および負極活物質層6がこの順で設けられた電極シート9であって、樹脂フィルム1の両面上に導電層2が設けられかつ負極活物質層6が設けられていない端部を同方向に2回以上折り返した折り返し部7を有し、折り返し部7において樹脂フィルム1の両面に設けられた導電層2が電気的に接続する。負極シート11の形状は特に限定されないが、例えば長方形であってもよい。また、図2(b)のように負極シート11に含まれる折り返し部7を形成した凸部を有してもよい。
【0017】
1−3.折り返し部
折り返し部7は、樹脂フィルム1の両面上に導電層2が設けられかつ正極活物質層5および負極活物質層6が設けられていない電極シート9の端部を同方向に2回以上折り返した部分である。つまり、折り返し部分7は、電極シート9の端部を図1(c)のように同方向に2回以上折り返した部分である。図1(c)をみてわかるようにこの端部を同方向に2回以上折り返すと、図1(c)の一点破線で囲んだ部分8で樹脂フィルム1の両面上のそれぞれの導電層2を電気的に接続することができる。
【0018】
このことにより、樹脂フィルム1の両面上のそれぞれの導電層2を特別な部品も必要なく簡素な構造で電気的に接続することができる。また、熱を加える必要もないので、電極シート9が高温に曝されるおそれもない。また、この折り返し部7を外部接続端子に超音波溶接等を用いて容易に接合することができるため、本発明の電極シートを用いる二次電池の製造コストを低減することができる。
【0019】
折り返し部7は、樹脂フィルム1の両面上に導電層2が設けられた端部であって、正極活物質層5および負極活物質層6が設けられていない端部を同方向に2回以上折り返すことにより形成することができる。また、折り返した形状を保持させるために溶接を行い形状を保持させることもできる。また、折り返し部7の屈折部での切断を防止するために、溶接を行う部分と屈折部との間に一定の間隔をおくこともできる。
本明細書において溶接は、特に限定しないが、例えば超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接等が挙げられ、これらのうち冷間圧接、超音波溶接が好ましく、超音波溶接が特に好ましい。
【0020】
なお、図1では、折り返し部7は、同方向に2回折り返した例を示しているが、本発明には、2回の折り返しに限定されず、3回以上の同方向への折り返した場合でも、2回以上同方向へ折り返した後逆方向に折り返した場合も含まれる。
【0021】
また、折り返し部7は、該折り返し部7が含まれる正極シート10または負極シート11の厚さより薄い厚さを有してもよい。このことにより、電極シート9を用いて二次電池を作成した場合であって、電極シート9などの積層体を外装材(ケース)に入れる場合に、積層体の厚さに合わせた外装材(ケース)を用いることができ、二次電池を小さくすることができる。また、製造コストを低減することもできる。
【0022】
また、折り返し部7は、正極シート10または負極シート11の凸部に形成されていてもよい。なお、凸部とは、正極シート10または負極シート11の端部に設けられた同一面上の突起部のことである。例えば図2(b)の折り返し部7が形成された凸部である。凸部に折り返し部7を形成することにより、材料の使用量が軽減出来き、軽量化を図ることが出来る。また、溶接量も低減できる。
【0023】
1−4.樹脂フィルム
樹脂フィルム1は、両面上にそれぞれ導電層2および正極活物質層5または負極活物質層6をこの順で設けることができるものであれば、特に限定されない。また、正極シート10および負極シート11に含まれるそれぞれの樹脂フィルム1は、同じ材料からなってもよく、異なる材料からなってもよい。
樹脂フィルム1の材料は、樹脂フィルムであれば特に限定されないが、例えばポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、二軸延伸ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリアラミド、ポリイミド等が挙げられる。これらの中でも、電池作動中の短絡発熱時(例えば150℃程度)において溶融するポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、ポリスチレン等からなる樹脂フィルムを用いることが、内部短絡により局所的な発熱が生じたときに融解し、短絡電流をシャットダウンできるという効果が得られる上で好ましい。
【0024】
ところで、樹脂フィルム1は、導電層2の支持材であるため、導電層2を形成した樹脂フィルム1の代りに金属フィルムを用いることが考えられる。しかし、樹脂フィルム1を用いることにより二次電池の内部短絡時に短絡電流をシャットダウンできるという利点が得られる。さらに、電極シートの重量を軽減することができるため、電池重量当たりの容量密度が増加するという利点が得られる。このため、本発明では樹脂フィルム上に導電層2を形成した電極シート9を採用している。
樹脂フィルム1の厚さとしては、電極シート9の厚さが厚くなり過ぎないよう、例えば5〜25μm程度が好ましい。
樹脂フィルム2の形状は、特に限定されるものではないが、四角形のものを用いることができ、また、図2(b)のような凸部に折り返し部7を形成するとき、凸部を有する樹脂フィルム1を用いることができる。
【0025】
1−5.導電層
導電層2は、樹脂フィルム1の両面上に設けられ、正極活物質層5または負極活物質層6と電気的に接合するものであれば、特に限定されない。
また、導電層2は、樹脂フィルム1の両面のそれぞれの全面上に形成してもよい。
また、導電層2は、リチウムイオン二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池等の二次電池を作製したときに化学変化を生じないものが好ましい。
以下、導電層2の具体例として、リチウムイオン二次電池の導電層2について具体的に説明する。
【0026】
正極シート10の導電層2の材料は、例えばステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、炭素などの他に、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものを用いることができる。特に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。さらには、これらの材料の表面が酸化したものを用いてもよい。
負極シート11の導電層2の材料は、例えばステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、アルミニウム、炭素などの他に、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの、Al−Cd合金などを用いることができる。特に、銅あるいは銅合金が好ましい。さらには、これらの材料の表面が酸化したものを用いてもよい。
【0027】
導電層2は、例えばメッキ法もしくは蒸着法によって樹脂フィルム1の両面全面に形成することができ、その厚さとしては電池特性における抵抗の面から0.5〜10μmが好ましく、2〜5μm程度がさらに好ましい。
【0028】
1−6.正極活物質層および負極活物質層
正極活物質層5および負極活物質層6は、正極シート10および負極シート11を含む電池の起電反応に関係する物質層であり、樹脂フィルムの両面上にそれぞれ設けられた導電層2の上に設けられたものであれば特に限定されない。また、正極活物質層5および負極活物質層6は、樹脂フィルム1の両面上にそれぞれ設けられた導電層2の全面上に形成されず、正極シート10または負極シート11は、正極活物質層5および負極活物質層6が形成されてない端部の領域を有する。この領域を2回以上同方向に折り返すことにより折り返し部を形成することができる。
また、正極活物質層5および負極活物質層6は、例えばリチウムイオン二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池等の作製しようとする二次電池に応じた公知の材料が用いることができる。
以下、本発明の二次電池の代表的な例としてリチウムイオン二次電池の活物質層について具体的に説明する。
【0029】
リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質層5の活物質としては、リチウムを含有した酸化物を用いることができる。例えばチタン、モリブデン、銅、ニオブ、バナジウム、マンガン、クロム、ニッケル、鉄、コバルトもしくはリン等とリチウムの複合酸化物、硫化物またはセレン化物などが好ましく、具体的には、LiMnO2、LiMn24、LiNiO2、LiCoO2、LiCrO2、LiFeO2、LiVO2およびLiMPO4(MはCo、Ni、Mn、Feから選ばれる少なくとも1種以上の元素)のうちの1つ以上を単独または複数種組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、負極活物質層6の活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、高結晶黒鉛等の黒鉛系物質、非晶質炭素系物質、Nb25およびLiTiO4等の金属酸化物うちの少なくとも1つ以上を単独または複数種組み合わせて用いることができる。
【0031】
さらに、正極活物質層5および負極活物質層6の材料には、上記の活物質に加え、後述の導電剤、増粘剤、結着剤、フィラー、分散剤、イオン導電剤、圧力増強剤およびその他の各種添加剤を用いることができる。
【0032】
導電層2を形成した樹脂フィルム1の両面に活物質および各種添加剤の混合物を塗布し、樹脂フィルム1の変形または溶融が生じない温度(例えば100℃程度以下)で乾燥させることにより正極活物質層5または負極活物質層6を形成することができる。このとき、折り返し部7を形成する端部に正極活物質層5または負極活物質層6を形成しないことができる。このことにより、この端部に折り返し部を形成することができ、樹脂フィルム1の両面の導電層2が電気的に接続することができる。また、この端部は、正極シート10または負極シート11の同一面上の凸部であってもよい。このことにより、凸部に折り返し部7を形成することができる。
【0033】
なお、電池組立時において、積層方向両端に位置する電極シートの最外層の活物質層は省略してもよい。
正極活物質層5または負極活物質層6の厚みとしては例えば20〜150μm程度が適当であり、50〜100μm程度が好ましい。
【0034】
導電剤としては、一般的に電池材料として用いられるものであり、かつ構成された電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば特に限定されない。例えば天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、気相成長黒鉛繊維(VGCF)、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料などを単独またはこれらの混合物として用いることができる。これらの導電剤のなかで、アセチレンブラック、VGCF、グラファイトとアセチレンブラックの併用が特に好ましい。
【0035】
増粘剤としては、少量の添加で液体が高い粘性を持つようになる薬品が好ましく、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダなどのポリカルボン酸系化合物;ポリビニルピロリドンなどのビニルピロリドン構造を有する化合物;ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、カンテン、デンプンなどから選択された1種又は2種以上が使用可能であり、中でもカルボキシメチルセルロース塩が好ましい。
増粘剤がカルボキシメチルセルロース塩である場合は、水への溶解性、保存安定性、製造コストなどの点からエーテル化度は0.3〜2.0であることが好ましく、0.45〜1であることが特に好ましい。
【0036】
結着剤としては、一般的に電池材料として用いられるものであり、かつ多糖類、熱可塑性樹脂およびゴム弾性を有するポリマーのうちの一種またはこれらの混合物として用いることができる。好ましい例としては、でんぷん、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴムおよびポリエチレンオキシドを挙げることができる。
【0037】
フィラーは、一般的に電池材料として用いられるものであり、かつ構成されたリチウム二次電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば特に限定されない。例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維を用いることができる。
【0038】
イオン導電剤は、無機および有機の固体電解質として一般的に知られている。例えばポリエチレンオキサイド誘導体あるいは該誘導体を含むポリマー、ポリプロピレンオキサイド誘導体、該誘導体を含むポリマー、リン酸エステルポリマー等を用いることができる。
【0039】
圧力増強剤は、電池の内圧を上げる化合物であり、炭酸塩などを用いることができる。
【0040】
2.二次電池
図3は、本発明の一実施形態の二次電池の概略断面図である。
本実施形態の二次電池20は、樹脂フィルム1の両面上に導電層2および正極活物質層5がこの順で設けられた本発明の電極シート9である正極シート10ならびに樹脂フィルム1の両面上に導電層2および負極活物質層6がこの順で設けられた本発明の電極シート9である負極シート11がセパレータ12を介して配置され電解液と共に外装材15で密封されている。また、正極シート10の折り返し部7および負極シート11の折り返し部7は、それぞれ異なる接続端子13に電気的に接続してもよい。
また、本実施形態の二次電池20の製造方法は、樹脂フィルム1の両面上に導電層2および正極活物質層5をこの順で形成し樹脂フィルム1の両面上に導電層2が形成されかつ正極活物質層5が形成されていない端部を同方向に2回以上折り返すことにより正極シート10を形成する工程と、樹脂フィルム1の両面上に導電層2および負極活物質層6をこの順で形成し樹脂フィルム1の両面上に導電層2が形成されかつ負極活物質層6が形成されていない端部を同方向に2回以上折り返すことにより負極シート11を形成する工程と、正極シート10と負極シート11をセパレータ12を介して配置し電解液と共に外装材20で密封する工程とを備える。
【0041】
以下、本実施形態の二次電池20について説明する。
本発明の二次電池20は、上記の構造を有するリチウムイオン二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池等の二次電池に適用可能である。また、本発明の二次電池は、積層構造であっても捲回構造であってもよい。
【0042】
2−1.正極シートおよび負極シート
正極シート10および負極シート11は、「1.」〜「1−6.」で説明した電極シートを用いることができる。正極シート10および負極シート11はセパレータ12を介して配置される。また、正極シート10の正極活物質層5が形成された領域と負極シート11の負極活物質層6が形成された領域は、同じ形状のシートであってもよい。
【0043】
また、正極シート10および負極シート11のうち少なくとも一方は複数であり、正極シート10および負極シート11は交互に配置されてもよい。このことにより電池の容量を大きくすることができる。正極シート10および負極シート11の合計枚数は特に限定されないが、例えば、3〜50枚であり、好ましくは5〜20枚である。
【0044】
また、正極シート10と負極シート11の折り返し部7が重ならないように配置することができる。このことにより正極シート10の折り返し部7と負極シートの折り返し部7の接触を防止することができ、リーク電流を防止することができる。例えば、図3のように正極シート10と負極シート11の折り返し部7が重ならないように、それぞれの折り返し部7が反対側になるように配置することができる。
【0045】
また、正極シート10または負極シート11を複数積層する場合、正極シート10または負極シート11がそれぞれ有する折り返し部7が重なるように正極シート10および負極シート11を配置することができる。このことにより複数の正極シート10の導電層2または複数の負極シート11の導電層2をそれぞれ電気的に接続することができる。例えば、図3の負極シート11の折り返し部7のように複数の負極シート11の折り返し部7が重なるように配置することができる。
【0046】
また、正極シート10の折り返し部7または負極シート11の折り返し部7はそれぞれ異なる接続端子13に電気的に接続することができる。このことにより正極シート10と負極シート11の間で生じる起電力を外部で利用することができる。
【0047】
また、複数の折り返し部7または複数の折り返し部7と接続端子13は重ねて溶接し接合することができる。なお、溶接部17とはこの重ねて溶接した部分である。なお溶接部は、接続端子13と折り返し部7を共に溶接してもよく、複数の折り返し部7のみで溶接してもよい。また、正極溶接部18とは、正極シート10の折り返し部7を重ねて溶接した部分であり、負極溶接部19とは、負極シート11の折り返し部7を重ねて溶接した部分である。また、正極溶接部18および負極溶接部19は、折り返し部7と接続端子13を重ねて溶接した部分であってもよい。
溶接の方法は特に限定されないが、例えば超音波溶接である。
また、接続端子13は、導電性物質からなり、正極シート10および負極シート11を含む電池の起電力を外部で利用することができるものであれば特に限定されない。
【0048】
また、溶接部17は、3つ以上の折り返し部7を有し、第1の折り返し部は、隣接する第2の折り返し部の一部と重なり、第2の折り返し部は、第1の折り返し部と重ならない部分で隣接する第3の折り返し部と重なってもよい。溶接部17をこの構成にすることにより、各正極シートまたは各負極シートの導電層2を電気的に接続することができ、さらに各正極シートまたは各負極シートの折り返し部7を直接接続端子13に接続させることが容易であり、安定した接続が出来る。この一例を図面をつかって説明する。図4(a)は、本発明の一実施形態の二次電池の概略平面図であり、図4(b)は、図4(a)の矢印Sの方向から見た溶接部17の概略断面図である。なお、図4の実施形態では、7つの正極シート10と7つの負極シート11をセパレータ12を介して配置した二次電池である。また、各正極シート又は各負極シートは、折り返し部7が形成された凸部を有している。図4(a)(b)のように折り返し部7が3つ以上重なる部分ができないように溶接部17を形成することができる。このように折り返し部7を重ねて接続端子13に溶接することにより各折り返し部7を電気的に接合することができ、また、各折り返し部7を直接接続端子13に溶接することができる。
【0049】
2−2.セパレータ
セパレータ12は、正極シート10と負極シート11の電気的接触を防止することができ、電解液が透過可能であれば特に限定されない。
セパレータ12は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等のオレフィン系樹脂からなる微多孔フィルムを単一あるいは複合して用いることができ、必要に応じて不織布などの安価なセパレータを用いることも可能である。また、例えばアラミド樹脂からなる耐熱性に優れたセパレータを使用すれば、安全性が向上して好ましい。
【0050】
また、セパレータ12の厚みは、例えば5〜100μm程度が適当であり、10〜30μm程度が好ましい。また、セパレータ12の空隙率は、例えば、30〜90%程度が適当であり、40〜80%程度が好ましい。なお、厚みが5μmより薄くなるとセパレータ12の機械的強度が不足し、電池の内部短絡の原因となるので好ましくなく、100μmより厚くなると正極シート10と負極シート11の間の距離が長くなり、電池の内部抵抗が高くなるので好ましくない。また、空隙率が30%より低いと、電解液の含有量が減り電池の内部抵抗が高くなるので好ましくなく、90%より高いと、正極シート10と負極シート11が物理的な接触を起こしてしまい、電池の内部短絡の原因となるので好ましくない。ここで、セパレータ12の厚みおよび空隙率は、マイクロメーターで厚さを、電子天秤で重量を測定して、セパレータの密度を算出し、その樹脂の真密度との比率から測定した値を意味する。
【0051】
また、セパレータ12は、樹脂フィルム1より高い軟化温度を有してもよい。セパレータ12の軟化温度が樹脂フィルムの軟化温度より高い方が、電池内部への異物混入等による内部短絡が発生し電池内で異常電流が流れて異常発熱した際に、樹脂フィルム1が溶断して電流パスが遮断されるため、電池の内部短絡部の拡大を防ぐことが可能であるため好ましい。
【0052】
2−3.外装材
外装材15は、正極シート10および負極シート11をセパレータ12を介して配置したものを電解液と共に密封することができれば特に限定されない。
外装材15(電池ケース)は、例えば鉄、ステンレススチール、アルミニウム、鉄にニッケルメッキしたもの等の金属製の缶を用いることができ、アルミニウム箔を樹脂でラミネートしたフィルムにて角筒型または薄い扁平筒型に形成したものも用いることができる。なお、外装材に金属製の缶など導電性のものを用いる場合、正極シートと負極シートが短絡電流を生じさせないため、絶縁体を間に挟むことができる。
【0053】
2−4.電解液
電解液は、正極活物質層5および負極活物質層6と電池反応をすることができるイオンを含むものであれば特に限定されない。
電解液は、例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池等の作製しようとする二次電池に応じた公知の材料が用いられる。
以下、本発明の二次電池の代表的な例としてリチウムイオン二次電池の電解液について具体的に説明する。
【0054】
電解液は、例えばリチウム塩を含む非水電解液が用いられる。
また、リチウムイオン二次電池で使用されるリチウム塩としては、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、トリフルオロ酢酸リチウム(LiCF3COO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド(LiN(CF3SO22)等のリチウム塩が挙げられ、これら単独もしくは、これらの2種以上を混合して用いることができる。非水電解質の塩濃度は、例えば0.5〜3mol/Lが好適である。
【0055】
また、非水電解液の代わりに前記電解液をポリマーマトリックス中に保持したゲル電解質なども用いることが可能である。ポリマーマトリックスとしては、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体を基本構造とし、末端に多官能アクリレートを有する化合物を架橋したものが好適である。これは、物理架橋ゲルに比べて強固な架橋構造を有するため、ゲルからの非水電解液の染み出し等が少なく、電池の信頼性が高くなるからである。
【0056】
非水電解液用溶媒としては、非水電解質用溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類と、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトン(以下、GBLと略称することがある)、γ−バレロラクトン等のラクトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のフラン類、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチル等が挙げられ、これら単独もしくは、これらの2種以上を混合して用いることができる。特に、γ−ブチロラクトン(GBL)が含まれているのが好ましい。
【0057】
また、安全性向上のためにイオン性液体を用いることも可能である。さらに、電極上に良好な皮膜を形成させるためや、充放電の安定性向上のために、ビニレンカーボネート(VC)やシクロヘキシルベンゼン(CHB)を添加することも可能である。
【0058】
3.効果実証実験
3−1.第1の二次電池作製実験
図3のような内部構造を有する積層構造のリチウムイオン電池を作製した。
【0059】
3−1−1.正極シートの作製
まず、樹脂フィルム1である厚さ20μm、大きさ160mm×70mmのポリプロピレン製のフィルムの両面の全面上にそれぞれ導電層2であるAlの蒸着をおこない、2μmの導電層2を形成した。その後、図2(a)のように導電層2を形成した樹脂フィルムの折り返し部を形成する端部以外の部分の両面に厚さ約80μmの正極活物質層5を塗布法により長方形に形成した。なお、正極活物質層5は、正極活物質であるオリビン型リン酸鉄リチウムに導電剤と結着剤及び増粘材を加えたものを塗布することにより形成した。その後、正極活物質層5が形成されていない部分を5mm幅で2回同方向に折り返し樹脂フィルム1の両面の導電層2を電気的に接続し、超音波溶接により固定した。なお、この効果実証実験における超音波溶接はAmTech製 ULTRASONIC WELDER ATP-2020Eを用い、振幅:36μm、圧力:400k、時間:0.4sとした。
【0060】
3−1−2.負極シートの作製
次に、樹脂フィルム1である厚さ20μm、大きさ169mm×78mmのポリプロピレン製のフィルムの両面の全面上にそれぞれ導電層2であるCuの蒸着をおこない、2μmの導電層2を形成した。その後、図2(a)のように導電層2を形成した樹脂フィルム1の折り返し部を形成する端部以外の部分の両面に厚さ約70μmの負極活物質層を塗布法により形成した。なお、負極活物質層6は、負極活物質である天然黒鉛に導電剤と結着剤及び増粘材を加えたものを塗布することにより形成した。なお、正極活物質層5が形成された領域と負極活物質層6が形成された領域は、重ねたときにほぼ同じ形状になるように形成した。その後、負極活物質層6が形成されていない部分を5mm幅で2回同方向に折り返し樹脂フィルム1の両面の導電層2を電気的に接続し、超音波溶接により固定した。また、同様方法で同一形状の負極シートをもう一枚形成した。
【0061】
3−1−3.発電要素の作製
次に図3のように1枚の正極シート10の両面がセパレータ12を介してそれぞれ負極シート11と隣接するように積層した。また、図3のように正極シート10の正極活物質層5を形成した領域と負極シート11の負極活物質層6を形成した領域とが重なるように積層し、正極シート10の折り返し部7と負極シート11の折り返し部7がそれぞれ反対になるように積層した。なおセパレータ12は、正極シート10と負極シート11が電気的に接触することがないように積層した。また、セパレータ12は、ポリプロピレン製多孔質フィル製で厚み25μm、空隙率50%、大きさ138mm×78mmのものを用いた。その後、図3のように正極シート10と負極シート11の間の2つのセパレータ12を正極シート10を挟みこむように正極シート10の折り返し部7と反対側で熱溶着した。このことにより正極シート10の端部と負極シート11の導電層2との間で短絡電流が流れるのを防止した。その後、正極シート10の折り返し部7を正極の接続端子13に重ねて超音波溶接した。また、2つの負極シート11の各折り返し部7を重ねて負極の接続端子13に超音波溶接した。このことにより発電要素を得た。
【0062】
3−1−4.二次電池の作製
得られた発電要素を外装材20であるアルミニウム製の缶に入れ、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(EC:DEC=30:70(体積比))にLiPF6を1[mol/L]になるように溶かした電解液25[g]を注入し、安全弁付蓋をレーザ溶接してリチウムイオン二次電池を得た。なお、電池のサイズは180[mm]×80[mm]、厚さ5[mm]であった。
また、同様の二次電池を4個作製し、合計5つの二次電池とした。
【0063】
3−1−5.二次電池の容量測定
作製した5つのリチウムイオン二次電池の充放電を以下の条件で行って電池容量を確認したところ、電池容量は、0.4Ahと理論値の95〜98%であった。このことから、二次電池における正極シートおよび負極シートの全てが正負極用の接続端子13と、それぞれ電気的に接続されていること分かった。
充電条件:[CC/CV、終止電圧:4.2V、レート:0.1C、0.1Aで終了]、放電条件:[CC、終止電圧:3.0V、レート:0.1C]、充放電回数:20回
【0064】
3−2.第2の二次電池作製実験
負極シート11の折り返し部7を凸部に形成した積層構造のリチウムイオン電池の作製を行った。
なお、「3−1」で説明した第1の二次電池作製実験についての説明は、以下の説明に矛盾しない限り第2の二次電池作製実験にも当てはまる。
【0065】
3−2−1.正極シートの作製
「3−1−1」の記載と同様の方法により同じ正極シートを合計9枚作製した。なお、正極シート10の折り返し部7は図2(a)のように作製した。
【0066】
3−2−2.負極シートの作製
図2(b)のように折り返し部7を凸部に形成した以外は「3−1−2」の記載と同様の方法で同じ負極シート11を合計10枚作製した。
なお、負極シート11に用いる樹脂フィルム1は折り返し部7を作成することができる凸部を有するものを用いた。また、折り返し部7は、導電層2を形成した凸部を同方向に2回以上折り返すことにより形成した。
【0067】
3−2−3.発電要素の作製
正極シート10を9枚用い、折り返し部7を凸部に形成した負極シート11を10枚用いた以外は「3−1−3」の記載と同様の方法で、発電要素を作製した。
9枚の正極シート10と10枚の負極シート11をセパレータ12を介して積層した。その後、各正極シート10の折り返し部7を重ねて正極の接続端子13に超音波溶接した。また、凸部に形成した負極シート11の折り返し部7を重ねて負極の接続端子13に超音波溶接した。このことにより発電要素を得た。
【0068】
3−2−4.二次電池の作製
得られた発電要素を外装材20であるアルミニウム製の缶に入れ、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(EC:DEC=30:70(体積比))にLiPF6を1[mol/L]になるように溶かした電解液25[g]を注入し、安全弁付蓋をレーザ溶接してリチウムイオン二次電池を得た。なお、電池のサイズは180[mm]×80[mm]、厚さ5[mm]であった。
また、同様の二次電池を4個作製し、合計5つの二次電池とした。
【0069】
3−2−5.二次電池の容量測定
作製した5つのリチウムイオン二次電池の充放電を以下の条件で行って電池容量を確認したところ、電池容量は、4Ahと理論値の95〜98%であった。このことから、二次電池における正極シート10及び負極シート11の全てが正負極用の接続端子13と、それぞれ電気的に接続されていること分かった。
充電条件:[CC/CV、終止電圧:4.2V、レート:0.1C、0.1Aで終了]、放電条件:[CC、終止電圧:3.0V、レート:0.1C]、充放電回数:20回
【0070】
3−3.第3の二次電池作製実験
正極シート10の折り返し部7を凸部に形成した積層構造のリチウムイオン電池の作製を行った。
なお、「3−1」で説明した第1の二次電池作製実験についての説明は、以下の説明に矛盾しない限り第3の二次電池作製実験にも当てはまる。
【0071】
3−3−1.正極シートの作製
図2(b)のように折り返し部7を凸部に形成した以外は「3−1−1」の記載と同様の方法により同じ正極シート10を合計9枚作製した。
なお、正極シート10に用いる樹脂フィルム1は折り返し部7を作成することができる凸部を有するものを用いた。また、折り返し部7は、導電層2を形成した凸部を同方向に2回以上折り返すことにより形成した。
【0072】
3−3−2.負極シートの作製
「3−1−2」の記載と同様の方法で同じ負極シート11を合計10枚作製した。なお、負極シート11の折り返し部7は、図2(a)のように作製した。
【0073】
3−3−3.発電要素の作製
折り返し部7を凸部に形成した正極シート10を9枚用い、負極シート11を10枚用いた以外は「3−1−3」の記載と同様の方法で、発電要素を作製した。
9枚の正極シート10と10枚の負極シート11をセパレータ12を介して積層した。その後、凸部に形成した各正極シート10の折り返し部7を重ねて正極の接続端子13に超音波溶接した。また、負極シート11の折り返し部7を重ねて負極の接続端子13に超音波溶接した。このことにより発電要素を得た。
【0074】
3−3−4.二次電池の作製
得られた発電要素を外装材20であるアルミニウム製の缶に入れ、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(EC:DEC=30:70(体積比))にLiPF6を1[mol/L]になるように溶かした電解液25[g]を注入し、安全弁付蓋をレーザ溶接してリチウムイオン二次電池を得た。なお、電池のサイズは180[mm]×80[mm]、厚さ5[mm]であった。
また、同様の二次電池を4個作製し、合計5つの二次電池とした。
【0075】
3−3−5.二次電池の容量測定
作製した5つのリチウムイオン二次電池の充放電を以下の条件で行って電池容量を確認したところ、電池容量は、4Ahと理論値の95〜98%であった。このことから、二次電池における正極シート10及び負極シート11の全てが正負極用の接続端子13と、それぞれ電気的に接続されていること分かった。
充電条件:[CC/CV、終止電圧:4.2V、レート:0.1C、0.1Aで終了]、放電条件:[CC、終止電圧:3.0V、レート:0.1C]、充放電回数:20回
【0076】
3−4.第4の二次電池作製実験
捲回構造のリチウムイオン二次電池の作製を行った。
なお、「3−1」で説明した第1の二次電池作製実験についての説明は、以下の説明に矛盾しない限り第4の二次電池作製実験にも当てはまる。
【0077】
3−4−1.正極シートの作製
「3−1−1」の記載と同様の方法により正極シート10を作製した。なお、正極シート10の折り返し部7は図2(a)のように作製した。また、正極シート10の樹脂フィルム1は1430mm×70mmの大きさのものを用いた。
【0078】
3−4−2.負極シートの作製
「3−1−2」の記載と同様の方法により負極シート11を作製した。なお、負極シート11の折り返し部7は図2(a)のように作製した。また、負極シート11の樹脂フィルム1は1440mm×72mmの大きさのものを用いた。
【0079】
3−4−3.発電要素の作製
次に、正極シート10と負極シート11をセパレータ12を介して積層し、さらにもう一枚のセパレータ12を正極シート10を挟み込むように積層した。この積層体を捲回させ、発電要素を作製した。なお、セパレータ12は、1440mm×78mmの大きさのものを用いた。
【0080】
3−4−4.二次電池の作製
得られた発電要素を外装材20であるアルミニウム製の缶に入れ、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(EC:DEC=30:70(体積比))にLiPF6を1[mol/L]になるように溶かした電解液30[g]を注入し、安全弁付蓋をレーザ溶接してリチウムイオン二次電池を得た。なお、電池のサイズは85[mm]×50[mm]、厚さ25[mm]であった。
また、同様の二次電池を4個作製し、合計5つの二次電池とした。
【0081】
3−4−5.二次電池の容量測定
作製した5つのリチウムイオン二次電池の充放電を以下の条件で行って電池容量を確認したところ、電池容量は、4Ahと理論値の95〜98%であった。このことから、二次電池における正極シート10及び負極シート11の全てが正負極用の接続端子と、それぞれ電気的に接続されていること分かった。
充電条件:[CC/CV、終止電圧:4.2V、レート:0.1C、0.1Aで終了]、放電条件:[CC、終止電圧:3.0V、レート:0.1C]、充放電回数:20回
【0082】
3−5.第5の二次電池作製実験
正極シート10および負極シート11の折り返し部7を凸部に形成した積層構造のリチウムイオン二次電池の作製を行った。
なお、「3−1」で説明した第1の二次電池作製実験についての説明は、以下の説明に矛盾しない限り第5の二次電池作製実験にも当てはまる。
【0083】
3−5−1.正極シートの作製
図2(b)のように折り返し部7を凸部に形成したこと、および凸部が図4(a)(b)のようになること以外は「3−1−1」の記載と同様の方法により同じ正極シート10を合計5枚作製した。
なお、正極シート10に用いる樹脂フィルム1は折り返し部7を作成することができる凸部を有するものを用いた。また、凸部は、図4(a)(b)のように隣接する凸部同士は重なるが、3つの凸部が重ならないような位置関係のものを用いた。また、折り返し部7は、導電層2を形成した凸部を同方向に2回以上折り返すことにより形成した。
【0084】
3−5−2.負極シートの作製
図2(b)のように折り返し部7を凸部に形成したこと、および凸部が図4(a)(b)のようになること以外は「3−1−2」の記載と同様の方法で同じ負極シート11を合計6枚作製した。
なお、負極シート11に用いる樹脂フィルム1は折り返し部7を作成することができる凸部を有するものを用いた。また、凸部は、図4(a)(b)のように隣接する凸部同士は重なるが、3つの凸部が重ならないような位置関係のものを用いた。また、折り返し部7は、導電層2を形成した凸部を同方向に2回以上折り返すことにより形成した。
【0085】
3−5−3.発電要素の作製
折り返し部7を凸部に形成した正極シート10を5枚用い、負極シート11を6枚用い、正極シート10および負極シート11の折り返し部7が図4(a)(b)のように重なるようにした以外は「3−1−3」の記載と同様の方法で、発電要素を作製した。
5枚の正極シート10と6枚の負極シート11をセパレータ12を介して積層した。その後、凸部に形成した各正極シート10の折り返し部7を図4(a)(b)のように重ねて正極の接続端子13に超音波溶接した。また、負極シート11の折り返し部7を図4(a)(b)のように重ねて負極の接続端子13に超音波溶接した。このことにより発電要素を得た。
【0086】
3−5−4.二次電池の作製
得られた発電要素を外装材20であるアルミニウム製の缶に入れ、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(EC:DEC=30:70(体積比))にLiPF6を1[mol/L]になるように溶かした電解液25[g]を注入し、安全弁付蓋をレーザ溶接してリチウムイオン二次電池を得た。なお、電池のサイズは180[mm]×80[mm]、厚さ5[mm]であった。
また、同様の二次電池を4個作製し、合計5つの二次電池とした。
【0087】
3−5−5.二次電池の容量測定
作製した5つのリチウムイオン二次電池の充放電を以下の条件で行って電池容量を確認したところ、電池容量は、2Ahと理論値の95〜98%であった。このことから、二次電池における正極シートおよび負極シートの全てが正負極用の接続端子13と、それぞれ電気的に接続されていること分かった。
充電条件:[CC/CV、終止電圧:4.2V、レート:0.1C、0.1Aで終了]、放電条件:[CC、終止電圧:3.0V、レート:0.1C]、充放電回数:20回
【0088】
3−6.振動実験
振動試験は、第1〜第5の二次電池作製実験それぞれの得られたリチウムイオン二次電池を満充電にし、3軸方向(x軸方向、y軸方向、z軸方向)に、それぞれ、周波数:5〜200〜5[Hz]、加速ピーク:1〜8〜1[gn]の条件で、15分間×12回(合計9時間)に亘って振動を与える試験を実施した。振動試験の結果および第1〜第5の二次電池作製実験の結果を表1に示す。
振動試験の結果では、いずれの二次電池でも異常は見られず、すべての正極シート10および負極シート11は、正負極用の接続端子13と、それぞれが電気的に接続されていることが分かった。
【0089】
【表1】

【符号の説明】
【0090】
1:樹脂フィルム 2:導電層 5:正極活物質層 6:負極活物質層 7:折り返し部 8:両面の導電層の接触部 9:電極シート 10:正極シート(電極シート) 11:負極シート(電極シート) 12:セパレータ 13:接続端子 15:外装材 17:溶接部 18:正極溶接部 19:負極溶接部 20:二次電池
101:正極シート 102:負極シート 105:セパレータ 111:凸部(正極) 112:凸部(負極) 121:樹脂フィルム 122:導電層 123:正極活物質層 124:負極活物質層 131:リード(負極) 132:リード(正極) 135:絶縁性樹脂フィルム 136:金属膜(メタリコン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの両面上にそれぞれ導電層および正極活物質層がこの順で設けられた正極シートまたは樹脂フィルムの両面上にそれぞれ導電層および負極活物質層がこの順で設けられた負極シートである電極シートであって、
前記樹脂フィルムの両面上に前記導電層が設けられかつ前記正極活物質層および前記負極活物質層が設けられていない端部を同方向に2回以上折り返した折り返し部を有し、前記折り返し部において前記樹脂フィルムの両面に設けられた各導電層が電気的に接続していることを特徴とする電極シート。
【請求項2】
前記折り返し部は、該折り返し部が含まれる前記正極シートまたは前記負極シートの厚さより薄い厚さを有する請求項1に記載の電極シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の前記正極シートおよび前記負極シートがセパレータを介して配置され電解液と共に外装材で密封された二次電池。
【請求項4】
前記正極シートおよび前記負極シートのうち少なくとも一方は複数であり、前記正極シートおよび前記負極シートは交互に配置された請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
複数の前記折り返し部を重ねて溶接した溶接部をさらに有する請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記溶接部と共に溶接された接続端子をさらに含む請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極シートおよび前記負極シートは複数でありかつ各正極シートおよび各負極シートが前記折り返し部を有し、
前記溶接部は、各正極シートの前記折り返し部を重ねて溶接した正極溶接部および各負極シートの前記折り返し部を重ねて溶接した負極溶接部を含む請求項5または6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記正極シートまたは前記負極シートは前記折り返し部が形成された凸部を有する請求項5〜7のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項9】
前記溶接部は、3つ以上の前記折り返し部を有し、
第1の折り返し部は、隣接する第2の折り返し部の一部と重なり、第2の折り返し部は、第1の折り返し部と重ならない部分で隣接する第3の折り返し部と重なる請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記セパレータは、前記樹脂フィルムより高い軟化温度を有する請求項3〜9のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項11】
請求項3〜10のいずれか1つに記載の二次電池であるリチウムイオン二次電池。
【請求項12】
樹脂フィルムの両面上にそれぞれ導電層および正極活物質層をこの順で形成し前記樹脂フィルムの両面上に前記導電層が形成されかつ前記正極活物質層が形成されていない端部を同方向に2回以上折り返すことにより該樹脂フィルムの両面上の各導電層が電気的に接続した正極シートを形成する工程と、
樹脂フィルムの両面上にそれぞれ導電層および負極活物質層をこの順で形成し前記樹脂フィルムの両面上に前記導電層が形成されかつ前記負極活物質層が形成されていない端部を同方向に2回以上折り返すことにより該樹脂フィルムの両面上の各導電層が電気的に接続した負極シートを形成する工程と、
前記正極シートと前記負極シートをセパレータを介して配置し電解液と共に外装材で密封する工程とを備える二次電池の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−186697(P2010−186697A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31463(P2009−31463)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】